JP3820325B2 - 放電灯点灯回路 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、放電灯点灯回路を構成する直流電源回路及び直流−交流変換回路の構成を改良することで部品点数やコストの削減を図るための技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
放電灯(メタルハライドランプ等)の点灯回路については、直流電源回路、直流−交流変換回路、起動回路(所謂スタータ回路)を備えた構成が知られている。例えば、直流電源回路にDC−DCコンバータの構成を用い、直流−交流変換回路にはフルブリッジ型回路(4つの半導体スイッチ(あるいはスイッチング)素子をそれぞれ2組にしてスイッチング制御を行うように構成された回路)及びそのドライバ回路を使用した構成では、DC−DCコンバータの出力する正極性の電圧(正電圧)がフルブリッジ型回路において矩形波状電圧に変換された後、放電灯に供給される。
【0003】
尚、放電灯をより確実に点灯させるためには、放電灯が点灯する前に放電灯にかかる電圧を、一時的にある程度高い電圧にしておく必要がある。これは起動回路によって発生する起動パルスが放電灯に印加されて当該放電灯がブレークダウンした時に放電灯の管電圧が低下することにより直流電源回路内の平滑コンデンサの電荷あるいは直流電源回路の後段に設けられる電流補助回路(例えば、特開平9−223591号公報を参照。)内のコンデンサの電荷が放電灯への電流となってアーク放電への移行をより確実に行うことができるからである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来の点灯回路によって複数の放電灯を点灯させた場合には、各放電灯に対して直流電源回路やフルブリッジ型構成の直流−交流変換回路がそれぞれ必要となり、また、各直流電源回路の後段に上記の電流補助回路がそれぞれ必要となるため回路構成が複雑化してしまうという問題がある。
【0005】
例えば、放電灯を自動車用前照灯の光源に使用する場合を例にすると、車輌前部の左右にそれぞれ前照灯が付設される場合に、左右2つの放電灯とそれぞれの点灯回路が必要となる。また、ハイビーム(あるいは走行ビーム)とロービーム(あるいはすれ違いビーム)とを別個の放電灯によってそれぞれ照射する構成を採用した場合(所謂4灯式照明)には、左右に2個ずつの放電灯及びその点灯回路が必要である。
【0006】
そこで、本発明は、複数の放電灯に係る点灯回路において回路構成の簡単化及びコスト削減を図ることを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記した課題を解決するために、直流入力電圧を受けて所望の直流電圧を出力する直流電源回路と、該直流電源回路の出力電圧を交流電圧に変換した後にこれを複数の放電灯にそれぞれ供給するための直流−交流変換回路と、放電灯に係る電圧又は電流を検出するための検出回路と、該検出回路からの検出信号に応じて放電灯の電圧若しくは電流又は供給電力を制御するための制御回路とを備えた放電灯点灯回路において、下記の(イ)乃至(ホ)に示す構成を有するものである。
【0008】
(イ)直流電源回路の2つの出力端子からそれぞれ各別に出力される正極性及び負極性の電圧が上記直流−交流変換回路に送出されること。
【0009】
(ロ)直流電源回路の出力電圧を切り換えるために直流−交流変換回路内に設けられた2対のスイッチ素子がフルブリッジ型の回路構成をなしており、第1乃至第4のスイッチ素子のうち、互いに直列接続とされる第1及び第2のスイッチ素子の接続点に対して第1の放電灯が接続され、また、互いに直列接続とされる第3及び第4のスイッチ素子の接続点に対して第2の放電灯が接続されていること。
【0010】
(ハ)第1及び第2の放電灯のそれぞれの端子のうち、上記(ロ)の接続点に接続されない方の端子が直接に又は電流検出手段を介してグランドに接続されていること。
(ニ)上記第1乃至第4のスイッチ素子のオン/オフ動作によって、第1の放電灯に正極性の電圧が供給される間、第2の放電灯には負極性の電圧が供給され、逆に、第1の放電灯に負極性の電圧が供給される間、第2の放電灯には正極性の電圧が供給されること。
(ホ)第1及び第2の放電灯に対して同時に点灯指示が出された場合には、その一方の放電灯を優先して点灯させるために、制御回路から直流−交流変換回路に送出される信号によって、当該放電灯に対してその起動前に直流−交流変換回路から供給される電圧の極性が正極又は負極のいずれか一方に規定されるように上記第1乃至第4のスイッチ素子の状態が固定され、当該放電灯の点灯後に、制御回路から直流−交流変換回路に送出される信号によって、他方の放電灯に対してその起動前に直流−交流変換回路から供給される電圧の極性が正極又は負極のいずれか一方に規定されるように上記第1乃至第4のスイッチ素子の状態が固定されること。
【0011】
従って、本発明によれば、複数の放電灯に対して直流−交流変換回路内に2対のスイッチ素子を設けてフルブリッジ型回路を構成してこれらのスイッチ素子が交番動作するように駆動制御を行えば良いので回路構成が簡単になり、しかも放電灯の点灯前に当該放電灯に供給される電圧の極性を一方の極性に固定することで放電灯の点灯性を良好なものにすることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1は本発明に係る放電灯点灯回路の基本構成を示すものであり、1つの放電灯に関する回路構成を示している。
【0013】
放電灯点灯回路1は、電源2、直流電源回路3、直流−交流変換回路4、起動回路5を備えている。
【0014】
直流電源回路3は、電源2からの直流入力電圧(これを「Vin」と記す。)を受けて所望の直流電圧を出力するものであり、後述する制御回路からの制御信号に応じてその出力電圧が可変制御される。この直流電源回路3には、スイッチングレギュレータの構成を有するDC−DCコンバータ(チョッパー式、フライバック式等。)が用いられるが、正極性の電圧出力(正電圧出力)を得るための第1の回路部(DC−DCコンバータ3A)と負極性の電圧出力(負電圧出力)を得るための第2の回路部(DC−DCコンバータ3B)とが互いに並列の関係をもって配置されている。
【0015】
図2は直流電源回路3の構成例を示したものである。
【0016】
トランスTの1次巻線Tpの一端が直流入力端子「ta」に接続されることで電圧Vinが入力されるようになっており、1次巻線Tpの他端は半導体スイッチ素子SW(図には単にスイッチの記号で示すが、電界効果トランジスタ等が用いられる。)及び電流検出用抵抗Rsを介して接地されている(この抵抗Rsについては任意であり、特に設けなくても良い)。尚、半導体スイッチ素子SWの制御端子(FETの場合にはゲート)には図示しない制御回路からの信号「Sc」が供給されてそのスイッチング制御が行われる。
【0017】
トランスTの2次巻線Tsは、その一端がダイオードD1のアノードに接続され、該ダイオードD1のカソードがコンデンサC1を介して接地されている。そして、コンデンサC1の端子電圧が端子「to1」を介して出力電圧(これを「Vdcp」と記す。)となる。また、2次巻線Tsの他端は、ダイオードD2のカソードに接続されており、該ダイオードD2のアノードがコンデンサC2を介して接地されるとともに端子「to2」に接続されており、当該端子を介して出力電圧(これを「Vdcn」と記す。)が得られる。
【0018】
このように直流電源回路3は、正極性及び負極性の電圧Vdcp(>0)、Vdcn(<0)を2つの出力端子「to1」、「to2」から各別に出力する構成となっている。
【0019】
尚、トランスTの巻線に付した「・」印は巻き始めを示しており、例えば、2次巻線TsについてはダイオードD2との接続端及び接地された中間タップにおける巻き始端にそれぞれ「・」印が付されている。
【0020】
直流−交流変換回路4は直流電源回路3の後段に配置されており(図1参照。)、該直流電源回路3の出力電圧を交流電圧に変換した後にこれを放電灯6に供給するために設けられており、直流電源回路3の2つの出力端子からそれぞれ各別に出力される正極性及び負極性の電圧が送出されてくる。そして、DC−DCコンバータ3Aの出力電圧Vdcpと、DC−DCコンバータ3Bの出力電圧Vdcnとを切り換えるために、直流−交流変換回路4内に設けられた1対の半導体スイッチ素子sw1、sw2(これらの素子には電界効果トランジスタ等が用いられるが、図には単にスイッチの記号で示す。)がそれらの駆動回路DRVによって交番動作され、これによって生成される交流電圧が放電灯6に供給される。
【0021】
つまり、直流電源回路3の出力段において直列に接続された2つのスイッチ素子sw1、sw2については、その一方sw1がDC−DCコンバータ3Aの出力端子に接続されるとともに、sw2を介してDC−DCコンバータ3Bの出力端子に接続されている。そして、これらのスイッチ素子をそれぞれ相反的にスイッチング制御する駆動回路DRVについては、例えば、ハーフブリッジドライバとして既知のIC(集積回路)が使用される。つまり、駆動回路DRVからの各スイッチ素子の制御端子にそれぞれ供給される信号により、素子sw1がオン状態のとき、素子sw2がオフ状態となり、逆に素子sw1がオフ状態のとき、素子sw2がオン状態となるようにハーフブリッジの交番動作が行われて直流電圧が交流電圧に変換される。
【0022】
尚、図1に示すように、駆動回路DRVは電圧Vdcnの負極性電圧に基づいて動作させる。従って、このために駆動回路DRV用の電源電圧が必要になる。また、駆動回路DRVに入力される制御信号(クロック信号)についても同様の配慮が必要である。
【0023】
起動回路5は、放電灯6の点灯初期に起動信号(高電圧パルス)を発生させて放電灯6に起動をかけるために設けられており、当該起動信号は直流−交流変換回路4の出力する交流電圧「Vout」に重畳されて放電灯6に印加される。つまり、起動回路5内には誘導性負荷(インダクタンス成分)が含まれており、放電灯6の一方の電極端子が誘導性負荷を介して2つのスイッチ素子sw1、sw2同士の接続点Aに接続され、他方の電極端子がグランド(GND)に直接又は電流検出手段(電流検出用の抵抗やコイル等)を介して接続されることで接地されている。
【0024】
放電灯6に係る電圧又は電流を検出するための検出回路としては、例えば、上記電流検出手段(図1には電流検出用抵抗「Ri」を示す。)によって放電灯に流れる電流を直接的に検出する構成の他、直流電源回路3の後段において電流検出信号又は電圧検出信号を取得する構成が挙げられる。例えば、後者の例としては、図1に示すように、DC−DCコンバータ3A、3Bの直後に電圧検出手段7A、7B(例えば、分圧抵抗等を使って出力電圧を検出する回路)をそれぞれ設け、当該手段によって検出される出力電圧の検出信号を放電灯6にかかる電圧の検出信号の代替信号として用いることができる。
【0025】
制御回路8は上記検出回路からの検出信号に応じて放電灯6の電圧若しくは電流又は供給電力を制御するために設けられており、直流電源回路3に対して制御信号を送出することでこれらの出力電圧を制御したり、あるいは上記駆動回路DRVに制御信号を送出してブリッジの極性切換についての制御を行う。尚、放電灯6の点灯前には当該放電灯への供給電圧をあるレベルまで高めておくことで、放電灯の点灯を確実にするための出力制御を行うことも制御回路8の役目である。
【0026】
直流電源回路3と直流−交流変換回路4との間に設けられた電流補助回路9は、当該回路内に設けられた容量性負荷に蓄積されたエネルギーを放電灯6の起動時に当該放電灯に供給することによってグロー放電からアーク放電への移行が確実に行われるように補助するために設けられている。尚、図1では電流補助回路9がDC−DCコンバータ3Aの後段に設けられているが、これは放電灯6の起動前に当該放電灯に供給される電圧の極性が正極に規定されるためである(つまり、供給電圧の極性が負極に規定される場合には、図1に1点鎖線で示すように、DC−DCコンバータ3Bの後段に電流補助回路9′を付設すれば良い。)。
【0027】
図3は電流補助回路9の構成例を示すものであり、図中のコンデンサが上記容量性負荷に相当する。
【0028】
図の(a)に示す構成では抵抗RaとコンデンサCaとの直列回路とされ、抵抗Raの一端がDC−DCコンバータ3Aの出力端子to1に接続されるとともに、当該抵抗の他端がコンデンサCaを介して接地されている。
【0029】
また、(b)に示す構成ではコンデンサCbとツェナーダイオードZDとの直列回路とされ、コンデンサCbの一端がDC−DCコンバータ3Aの出力端子to1に接続されるとともに、その他端がツェナーダイオードZDのカソードに接続されており、該ツェナーダイオードZDのアノードが接地されている。
【0030】
(c)に示す構成では、抵抗Rcの一端がDC−DCコンバータ3Aの出力端子to1に接続されるとともに、その他端がコンデンサCcと抵抗Rdとの直列回路を介して接地されており、該抵抗Rdに対してダイオードDが並列に接続されている(ダイオードDのカソードがコンデンサCcと抵抗Rdとの間に接続され、そのアノードが接地されている。)。
【0031】
しかして、上記した点灯回路1によれば、1つの放電灯に対して1対のスイッチ素子及びそれらの駆動回路を用いたハーフブリッジ型の構成で済むことになり、また、電流補助回路についてはDC−DCコンバータ3A又は3Bのうち、いずれか一方の後段に設けるだけで良い。
【0032】
次に、この点灯回路を、複数の放電灯を点灯させる構成へと拡張する場合の回路構成(制御回路についてはその要部だけを示す。)を図4に従って説明する。尚、以下では、2つの放電灯61、62を例にして説明するが、より一般には、61が第1の放電灯群、62が第2の放電灯群を表すと考えれば良い。
【0033】
図1に示した点灯回路1では1つの放電灯に対して1対のスイッチ素子sw1、sw2と1個の駆動回路DRVが必要とされたが、2つの放電灯61、62に対する点灯回路1Aにおいてはその倍の構成要素、つまり、2対のスイッチ素子と2個の駆動回路が必要である。
【0034】
この場合、直流電源回路3を構成する2つのDC−DCコンバータ3A、3Bについては、2つの放電灯の間で共用されており、これらの後段に設けられる直流−交流変換回路4については、4つのスイッチ素子sw1、sw2、sw3、sw4(図には単にスイッチの記号で示す。)からなるフルブリッジ型の回路構成を有している。
【0035】
即ち、4つのスイッチ素子のうち、互いに直列接続とされることにより第1の組をなすスイッチ素子sw1、sw2については、その一方sw1の一端がDC−DCコンバータ3Aの後段に設けられた電流補助回路9の出力端子に接続され、当該スイッチ素子sw1の他端がスイッチ素子sw2を介してDC−DCコンバータ3Bの出力端子to2に接続されている。そして両スイッチ素子同士の接続点αに対して第1の放電灯61が起動回路51(の誘導性負荷)を介して接続されている。
【0036】
また、互いに直列接続されることで第2の組をなすスイッチ素子sw3、sw4については、その一方sw3の一端が電流補助回路9の出力端子に接続され、当該スイッチ素子sw3の他端がスイッチ素子sw4を介してDC−DCコンバータ3Bの出力端子to2に接続されている。そして、両スイッチ素子同士の接続点βに対して第2の放電灯62が起動回路52(の誘導性負荷)を介して接続されている。
【0037】
直流−交流変換回路4の後段において、第1及び第2の放電灯61、62のそれぞれの端子のうち、上記接続点αやβに接続されない方の端子についてはこれを直接グランドに接続するか、又は電流検出手段(図には電流用検出抵抗Ri1、Ri2を示す。)を介してグランドに接続する。
【0038】
駆動回路DRV1、DRV2についてはともにハーフブリッジドライバ用のICが使用され、その一方の駆動回路DRV1がスイッチ素子sw1、sw2のオン/オフ制御を担当し、他方の駆動回路DRV2がスイッチ素子sw3、sw4のオン/オフ制御を担当している。即ち、ある時刻において、駆動回路DRV1によりスイッチ素子sw1がオン状態、スイッチ素子sw2がオフ状態となるように各素子の状態を規定されたとすると、このとき、駆動回路DRV2によりスイッチ素子sw3がオフ状態、スイッチ素子sw4がオン状態となるように各素子の状態が規定される。また、別の時刻において、駆動回路DRV1によりスイッチ素子sw1がオフ状態、スイッチ素子sw2がオン状態となるように各素子の状態を規定されたとすると、このとき、駆動回路DRV2によりスイッチ素子sw3がオン状態、スイッチ素子sw4がオフ状態となるように各素子の状態が規定される。このようにしてスイッチ素子sw1とsw4とが同じ状態、スイッチ素子sw2とsw3とが同じ状態となって、これらが相反的に交番動作する。
【0039】
従って、2組のスイッチ素子のオン/オフ動作によって、例えば、第1の放電灯61に正極性の電圧が供給される間、第2の放電灯62には負極性の電圧が供給され、逆に、第1の放電灯61に負極性の電圧が供給される間、第2の放電灯62には正極性の電圧が供給されることになる。
【0040】
電流検出・点灯判別回路10は、上記電流検出用抵抗Ri1、Ri2によって電圧変換された各放電灯の電流検出信号を受けて電流値を検出するとともに、放電灯が点灯したか否かを判別するための回路であり、電流検出回路10aと点灯判別回路10bとにより構成される。
【0041】
尚、電流検出にあたっては下記に示す事項について注意を要する。
【0042】
つまり、放電灯の片方の電極端子とグランドとの間に、放電灯に流れる電流を検出するための電流検出手段としてシャント抵抗(Ri1やRi2)を介挿したとすると、当該抵抗に生じる電圧降下を検出することで放電灯の電流検出を行うことができるが、その際の検出信号(図4では放電灯61に係る検出信号を「Si1」と記し、放電灯62に係る検出信号を「Si2」と記す。)の向きが問題となる。即ち、放電灯に流れる電流の向きが矩形波の極性に応じて交番するために検出信号が正値になったり負値となってしまう(例えば、矩形波の正極(性)電圧が放電灯に供給されたときに流れる電流の検出信号値を正値とすると、極性反転によって矩形波の負極(性)電圧が放電灯に供給されたときに流れる電流の検出信号値は負値となる。)。
【0043】
このような検出信号の極性(あるいは符号)の時間的変化(反転)は、これを利用する制御回路にとって取り扱いが面倒であるため好ましくないので、検出信号の極性を一定化させるには、例えば、絶対値回路や、図5に示すように電流検出用抵抗Ri1(又はRi2)による電圧降下に対して非反転増幅回路及び反転増幅回路を互いに並列に設け、両者の出力電圧を選択的に出力する回路構成が挙げられる。
【0044】
同図において、演算増幅器OP1は非反転増幅回路を構成しており、その非反転入力端子が抵抗R1aを介して放電灯61(又は62)と電流検出用抵抗Ri1(又はRi2)との間に接続されている。尚、ダイオードD1aはそのカソードが演算増幅器OP1の非反転入力端子に接続され、そのアノードが接地されている(当該ダイオードD1aや後述するダイオードD2aは演算増幅器への入力電圧が負値に反転したときに当該演算増幅器を保護する目的で付設される。)。
【0045】
演算増幅器OP1の出力端子はダイオードD1bのアノードに接続され、該ダイオードD1bのカソードが電流検出端子「tDET」に接続されている。そして、演算増幅器OP1の反転入力端子は抵抗R1bを介して接地されるとともに抵抗R1cを介してダイオードD1bのカソードに接続されている。尚、抵抗R1a、R1b、R1cの各抵抗値は同じ値に設定されている。
【0046】
演算増幅器OP2は反転増幅回路を構成しており、その反転入力端子が抵抗R2aを介して放電灯61(又は62)と電流検出用抵抗Ri1(又はRi2)との間に接続されている。尚、ダイオードD2aはそのカソードが演算増幅器OP2の反転入力端子に接続され、そのアノードが接地されている。
【0047】
演算増幅器OP2の出力端子はダイオードD2bのアノードに接続され、該ダイオードD2bのカソードが電流検出端子tDETに接続されるとともに抵抗R2cを介して接地されている。尚、演算増幅器OP2の反転入力端子は抵抗R2b(その抵抗値は抵抗R2aの抵抗値の2倍に設定されている。)を介してダイオードD2bのカソードに接続されており、また、演算増幅器OP2の非反転入力端子は接地されている。
【0048】
しかして、本回路では電流検出用抵抗Ri1(又はRi2)による電圧降下が、演算増幅器OP1による非反転増幅回路によって2倍の電圧に増幅され、他方、演算増幅器OP2による反転増幅回路によって「−2」倍の電圧に増幅される。そして、各演算増幅器の出力端子に設けられたダイオードD1b、D2bによって両者のうち高い方の電圧が選択されて、これが電流検出端子tDETに取り出される。即ち、放電灯6への正極電圧(あるいは矩形波における正電圧)の供給時には、演算増幅器OP1による非反転増幅回路の出力電圧が電流検出端子tDETに得られ、また、放電灯6への負極電圧(あるいは矩形波における負電圧)の供給時には、演算増幅器OP2による反転増幅回路の出力電圧が電流検出端子tDETに得られることになる。尚、こうして得られる検出電圧は放電灯が点灯したか否かを判断するための信号や、放電灯の点灯状態を判別して供給電力を規定するための信号等に用いることができる。
【0049】
点灯判別回路10bについては、各放電灯に対してそれぞれ設けられた電流検出回路からの信号(放電灯61に係る信号を「SI1」、放電灯62に係る信号を「SI2」と記す。)を受けて、これらの信号レベルを所定の基準電圧と比較することで、各放電灯の点消灯状態を示す判別信号を2値(化)信号として得ることができる。
【0050】
図6はそのような回路例を示すものであり、電流検出回路10aからの信号SI1がコンパレータCMP1のプラス入力端子に供給され、該コンパレータのマイナス入力端子には定電圧源「Eref1」で示す基準電圧が供給される。よって、信号SI1のレベルがその基準電圧より高い場合にコンパレータCMP1の出力するH(ハイ)レベル信号が出力端子tc1から出力される。また、電流検出回路10aからの信号SI2がコンパレータCMP2のプラス入力端子に供給され、該コンパレータのマイナス入力端子には定電圧源「Eref2」で示す基準電圧が供給される。よって、信号SI2のレベルがその基準電圧より高い場合にコンパレータCMP2の出力するHレベル信号が出力端子tc2から出力される。尚、図では出力端子tc1から得られる信号を「S1」(S1がHレベル信号であるとき放電灯61が点灯状態、S1がL(ロー)レベル信号のとき放電灯61が消灯状態と識別される。)と記し、出力端子tc2から得られる信号を「S2」(S2がHレベル信号であるとき放電灯62が点灯状態、S2がLレベル信号のとき放電灯62が消灯状態と識別される。)と記している。また、各コンパレータの出力端子と電源電圧「Vcc」の電源端子との間に介挿された抵抗はプルアップ抵抗である。
【0051】
極性切換制御回路11(図4参照。)は、放電灯61、62に対するそれぞれの点灯指示信号(これは手動点灯の場合には操作スイッチにより生成され、自動点灯の場合には自動点灯制御回路により生成される信号であり、61に対する点灯指示信号を「LT1」、62に対する点灯指示信号を「LT2」と記す。)及び上記した点灯判別回路10bからの点灯判別信号S1、S2を受けて直流−交流変換回路4内の駆動回路DRV1、DRV2にそれぞれ送出する制御信号を生成するために設けられており、図7にその回路例(論理ゲートを使った構成例)を示す。
【0052】
図中の信号「CK」は図示しないクロック信号生成回路から送られて来る信号であり、放電灯の点灯周波数(例えば、250〜500Hz程度)に対応する基本周波数の矩形波状信号である。当該信号CKは抵抗Rx及びコンデンサCxの直列回路を経て2入力AND(論理積)ゲート「AD1」、2入力NOR(否定論理和)ゲート「NR1」にそれぞれ送出される。つまり、抵抗Rx及びコンデンサCxからなる時定数回路は、信号CKの立ち上がり時点と立ち下がり時点で短い幅のパルスを作り出すために設けられており(抵抗Rxの抵抗値及びコンデンサCxの静電容量で決まる時定数は極く小さな値に設定されている。)、コンデンサCxの端子電圧がNOT(論理否定)ゲート「NT1」を介してゲートAD1及びNR1の一方の端子にそれぞれ送られる(これらのゲートの他方の入力端子には信号CKがそれぞれ入力される。)。
【0053】
そして、ゲートAD1の出力信号が後段の2入力ANDゲート「AD2」の一方の入力端子に送出され、その他方の入力端子には後述するDフリップフロップのQバー出力信号(Q出力信号の反転信号)が入力される。このゲートAD2の出力信号は後段の2入力ANDゲート「AD3」における一方の入力信号となる。
【0054】
また、ゲートNR1の出力信号が後段の2入力ANDゲート「AD4」の一方の入力端子に送出され、その他方の入力端子には後述するDフリップフロップのQ出力信号が入力される。このゲートAD4の出力信号は後段の2入力ANDゲート「AD5」における一方の入力信号となる。
【0055】
上記した点灯指示信号LT1は2入力ANDゲート「AD6」の一方の入力端子に供給され、当該ゲートの他方の入力端子には上記点灯判別信号S1がNOTゲート「NT2」を介して入力される。そして、このゲートAD6の出力信号はNOTゲート「NT3」を介して上記ゲートAD5への入力信号とされる。
【0056】
また、上記した点灯指示信号LT2は2入力ANDゲート「AD7」の一方の入力端子に供給され、当該ゲートの他方の入力端子には上記点灯判別信号S2がNOTゲート「NT4」を介して入力される。そして、このゲートAD7の出力信号はNOTゲート「NT5」を介して2入力OR(論理和)ゲート「OR1」の一方の入力端子に供給される。該ゲートOR1の他方の入力端子には上記ゲートAD6の出力信号が供給されるようになっており、ゲートOR1の出力信号は上記ゲートAD3への入力信号となる。
【0057】
ゲートAD3やAD5の後段に設けられた2入力ORゲート「OR2」の入力端子には、AD3、AD5の出力信号がそれぞれ入力されるようになっており、該ゲートOR2の出力信号が、Dフリップフロップ「D−FF」のクロック信号入力端子(CLK)に入力される。
【0058】
Dフリップフロップは、そのD入力端子がQバー出力端子(図にはQの上にバー記号「−」を付して示す。)に接続されることでT型フリップフロップの構成となっており、Q出力信号が信号「Sdrv1」として上記駆動回路DRV1に送出され、また、Qバー出力信号が信号「Sdrv2」として上記駆動回路DRV2に送出される。
【0059】
しかして、この回路ではゲートAD1やNR1によって得られる、信号CKの立ち上がりや立ち下がりの時点での生成パルスが後段のゲートAD3、AD5、OR2を介してDフリップフロップ「D−FF」のクロック信号入力端子CLKに送出されるためには、ゲートNT3やOR1の出力信号がHレベル信号とされる必要がある。
【0060】
今、放電灯61が点灯状態であって(信号S1がHレベル信号)、放電灯62が消灯状態である(信号S2がLレベル信号)とした場合に、放電灯62に対して信号LT2がHレベル信号になった(つまり、放電灯62の点灯指示が出された)とする。
【0061】
この場合、信号S1のレベルがHレベルであるためにゲートAD6の出力信号がLレベルであり、これに対してNT3での否定により得られるHレベル信号がゲートAD5に送出される。
【0062】
また、信号S2のレベルがLレベルであり、これに対するNT4での否定信号と、LT2(Hレベル信号)とがゲートAD7に入力された後、NT5で否定された信号(Lレベル信号)がゲートOR1に送出される。その際、ゲートAD6からOR1に送られる信号のレベルがLレベルであるため、ゲートOR1の出力信号はLレベル信号となる。
【0063】
ゲートAD4においては、信号CKの立ち下がり時点に同期して生成されるパルスが入力されるが、仮にDフリップフロップのQ出力信号がHレベル信号である場合には、当該パルスがゲートAD5に送られる。このゲートAD5にはNT3からのHレベル信号が入力されることになるため、当該ゲート及び後段ゲートOR2を素通りしてDフリップフロップの端子CLKにパルスが送られる結果、フリップフロップの状態が反転してQ出力信号がLレベル信号となる。尚、ゲートAD4に入力されるDフリップフロップのQ出力信号がLレベル信号である場合にはAD4ゲートの出力信号がLレベルとなるので、Dフリップフロップの状態はそのままとなってQ出力信号はLレベル信号のままである。従って、信号Sdrv1のレベルがLレベルの状態に固定される。
【0064】
その後、放電灯62が点灯した場合には、信号S2がHレベル信号となるので、NT4からの否定信号によりゲートAD7の出力信号がLレベル信号となる。よって、ゲートNT5における否定により得られるHレベル信号がゲートOR1を素通りしてゲートAD3に送出される。これにより、信号CKの立ち上り時点に同期して生成されるパルスがゲートAD1からAD2、AD3、OR2を通ってDフリップフロップの端子CLKに入力されるため、Dフリップフロップの状態反転が継続的に行われ、信号Sdrv1やSdrv2として所定の基本周波数(例えば、500Hz)をもった矩形波状信号が得られることになる。
【0065】
尚、放電灯62が点灯しており、放電灯61が消灯状態である場合に、当該放電灯61に対する点灯指示が出されたときには、放電灯61が点灯するまでの間、信号Sdrv1のレベルがHレベルに固定されることは容易に確かめられる(ゲートAD3にはOR1からのHレベル信号が入力され、ゲートAD5にはNT3からのLレベル信号が入力されているので、仮にDフリップフロップのQバー出力信号がHレベル信号であるとするとゲートAD1の出力するHレベル信号によってDフリップフロップの状態反転が行われ、Q出力信号がHレベル信号に規定されてしまうから。)。
【0066】
以上の動作を簡単にまとめると下記のようになる(「H」はHレベル信号、「L」はLレベル信号をそれぞれ示す。)。
【0067】
(a)LT1=「H」、S1=「L」のときには、Sdrv1=「H」、Sdrv2=「L」となる
(b)LT2=「H」、S2=「L」のときには、LT1=「L」又はS1=「H」の場合に、Sdrv1=「L」、Sdrv2=「H」となる
(c)それ以外は信号Sdrv1、Sdrv2には矩形波状信号が得られる(ゲートNT3とOR1の出力信号がともにLレベル信号になることはありえないことに注意を要する。)。
【0068】
しかして、信号Sdrv1=「H」のときに上記したスイッチ素子sw1がオン状態、素子sw2がオフ状態に規定され、また、信号Sdrv2=「L」のときに素子sw3がオフ状態、素子sw4がオン状態に規定されるように構成されている場合において、上記(a)では放電灯61への供給電圧が正極性の電圧に規定され、放電灯62への供給電圧が負極性の電圧に規定される。また、上記(b)では放電灯61への供給電圧が負極性の電圧に規定され、放電灯62への供給電圧が正極性の電圧に規定される。
【0069】
尚、(a)、(b)において放電灯61に係る信号と放電灯62に係る信号とが対称的にはなっていないが、これは放電灯61の点灯を優先させる機能を採用したためである。即ち、両放電灯がともに消灯状態(S1=「L」、S2=「L」)であって、これらに点灯指示信号が出された場合(LT1=「H」、LT2=「H」)には、上記(a)により、先ずSdrv1=「H」となって放電灯61への供給電圧の極性が正極に固定され、その後に放電灯61が点灯した時点で(S1=「H」)、上記(b)により、Sdrv2=「H」となって放電灯62への供給電圧極性が正極に固定される。このように放電灯の点灯前には供給電圧の極性を固定した後、制御回路によって直流電源回路の出力電圧(この場合には「Vdcp」)を必要十分なレベルまで高めておいてから起動パルスを放電灯に印加することによって放電灯の点灯性を確実なものにすることができる。
【0070】
以上のように、2つの放電灯のうち、一方の放電灯を点灯させる場合に当該放電灯の起動前に直流−交流変換回路から放電灯に供給される電圧の極性が正極又は負極のいずれか一方に規定されるようにスイッチ素子の状態を固定しておき(上記の例では、点灯させたい放電灯への供給電圧の極性が正極となるように規定されている。勿論、この極性を負極にするためには、信号Sdrv1やSdrv2と各スイッチ素子のオン/オフ状態との規定関係を逆転させれば良い。)、当該放電灯の点灯後に各スイッチ素子の交番動作が行われるように制御することが望ましい。例えば、放電灯の点灯前にこのような極性規定を行わない場合には上記したDC−DCコンバータ3A、3Bのそれぞれに電流補助回路が必要となる(∵極性が定まっていないために一方のコンバータについてのみ電流補助回路を設けたのでは、当該回路内のコンデンサを十分に充電できないか又はコンバータの昇圧能力を高くしなければならないため。)が、本発明によれば上記電流補助回路についてはDC−DCコンバータ3A又は3Bのいずれか一方の後段にだけ設ければ良いので構成が簡単になる。
【0071】
即ち、一方の放電灯の起動前に直流−交流変換回路4から放電灯に供給される電圧の極性に対応した直流電源回路3の一方の出力端子to1(又はto2)に対してのみ電流補助回路を付設すれば良い。例えば、上記したように、放電灯への供給電圧の極性を正極に規定する場合には、電圧「Vdcp」を出力するDC−DCコンバータ3Aの後段にのみ電流補助回路9(図4参照。)が付設される。その際、他方のDC−DCコンバータ3Bの出力電圧については、放電灯の点灯前にDC−DCコンバータ3Aにおいて必要とされる電圧まで高くする必要がなくなる。換言すれば、上記フルブリッジ型回路を構成する2対のスイッチ素子のうち、負極性の電圧を放電灯に供給する側のスイッチ素子(低段側のスイッチ素子sw2、sw4)の耐圧を下げることができるということである。つまり、当該スイッチ素子の耐圧については、下記に示す範囲が好ましい。
【0072】
・放電灯がその寿命末期になり得る電圧以上であること
・点灯前における放電灯への供給電圧の極性が一時的に正極に固定される場合において、DC−DCコンバータ3Aによって放電灯に対して一時的に供給される電圧を「Vovc」とするとき、「Vovc」より小さいこと(望ましくはVovcの2分の1以下であること。)。
【0073】
このように、放電灯の起動前に直流−交流変換回路から放電灯に供給される電圧の極性とは逆極性の電圧を出力する直流電源回路の出力端子(極性を正極に規定する場合にはVdcnの出力端子to2、また、極性を負極に規定する場合にはVdcpの出力端子to1である。)については、当該出力端子から得られる出力電圧を、直流電源回路の他の出力端子から得られる出力電圧に比して常に低い電圧となるように規定するか、あるいは当該電圧を制限する(具体的には図2におけるスイッチ素子SWへの制御信号Scのデューティーサイクルについて上限を規定する等。)ことによって回路素子の耐圧設計に余裕をもたせることができる。
【0074】
尚、前記した起動回路51、52についてはこれらを別々の回路として付設するよりは、2つの放電灯61、62の間で回路の共通化を図ることが部品点数やコストの削減にとって好ましい。
【0075】
図8は、そのような起動回路の構成例5Aを示したものである。
【0076】
起動回路5A内のトランス12には、1つの1次巻線12aに対して2次巻線12b1、12b2が設けられており、各2次巻線がそれぞれに対応する放電灯61、62に対して各別に接続されている。
【0077】
尚、トランス12の1次巻線12aを含む1次側回路には、コンデンサCS及びスイッチ素子SWgが設けられており、1次用電圧「Vp」によってコンデンサCSが充電された後、スイッチ素子SWgの導通(あるいは降伏)によってコンデンサCSが放電し、この時の発生電圧がトランス12によって昇圧された後、各2次巻線12b1、12b1を介して放電灯61、62にそれぞれ印加される。
【0078】
尚、1次用電圧「Vp」の供給方法には、例えば、下記に示すようにいくつかの方法が挙げられるがその如何は問わない。
【0079】
(I)直流電源回路又は直流−交流変換回路の出力電圧から得る方法
(II)直流電源回路又は直流−交流変換回路の出力電圧を倍電圧回路等を通して昇圧することにより1次用電圧を得る方法
(III)直流電源回路内に設けられるコンバータトランスの2次側に巻線を付設して、該2次巻線の出力を整流・平滑することで1次用電圧を得る方法。
【0080】
また、上記トランス12の2次巻線12b1、12b2については、それらの巻き始め(又は巻き終わり)を放電灯との接続端子側に規定することにより接続関係を統一することが好ましい(図には巻き始めを「・」印で示す。)。尚、その理由の詳細は省略するが、放電灯への起動信号の極性を統一することでトランスの耐圧設計を有利にすること及び1次エネルギーの供給の向きを揃えることで再点孤電圧発生時における2次巻線間の電磁結合の影響を低減すること、そして放電灯の点灯後における極性の切り換わり時に放電灯が消灯し易くなるのを防止することが目的である。
【0081】
2つの放電灯61、62がともに消灯した状態から両放電灯を同時に点灯させる場合には、各放電灯に同様の起動(パルス)信号が印加されるため、同時(あるいはほぼ同時)に放電灯を起動することができる。尚、一方の放電灯61が問題なく点灯し、他方の放電灯62についてはその点灯を仮に失敗したとしても、再び起動信号を発生させて後者の放電灯62に起動をかけることで当該放電灯を点灯させることができる。その際、点灯している放電灯61に対しても起動信号が印加されることになるが、点灯時の放電灯のインピーダンスが低いため、発生電圧は直に減衰するので何等影響を与えない。他方、点灯していない方の放電灯62については、これに接続された2次巻線12b2に発生する電圧が高周波の電圧であるため、他の放電灯61に接続された2次巻線12b1での電圧減衰にはほとんど影響を受けることなく、予定した起動信号が放電灯62に印加される。
【0082】
【実施例】
図9は本発明の実施の一例を示すものであり、車輌用前照灯への適用例(2つの放電灯を使用する場合の回路構成例)を示している。
【0083】
点灯回路13において、バッテリー14の端子電圧が入力フィルタ部15を介して2つのDC−DCコンバータ16P、16N(その一方16Pが正極電圧出力用、他方16Nが負極電圧出力用とされる。)に供給される。
【0084】
これらのDC−DCコンバータに対しては、それらの出力電圧を制御するために制御回路17が設けられており、該制御回路17の発する制御信号が各コンバータにそれぞれ送出される(つまり、この場合にはトランス内の2つの1次巻線に対してそれぞれ接続されたスイッチ素子が制御信号を受けてオン/オフ制御されることで各コンバータの出力電圧が制御される。)。
【0085】
尚、制御回路17は、放電灯の管電圧や管電流の検出信号又はそれらの相当信号(DC−DCコンバータ16Pの後段に設けられた検出部からの検出信号等)に基づいて放電灯への電力供給について制御を行うために設けられており、例えば、放電灯の管電圧−管電流特性図における制御曲線に従って、放電灯初期には定格電力を越える過大な電力を供給した後、供給電力を徐々に低減して定格電力での定電力制御へと移行させるための信号を演算増幅器等を使って構成した回路(特開平4−141988号公報等を参照。)が挙げられる。
【0086】
DC−DCコンバータ16Pの後段には電流補助回路18が設けられている(つまり、本実施例では点灯前の放電灯に対して供給される電圧の極性が一時的に正極に固定される。)。
DC−ACコンバータ19は、フルブリッジ型回路19a(2つのハーフブリッジドライバを含む。)と、そのブリッジ駆動回路19b(その内部は図7を参照。)から構成され、図4の直流−交流変換回路4に相当する。つまり、フルブリッジ型回路19a内に設けられた4つの半導体スイッチ素子を2組に分けて相反的にスイッチング制御することで直流入力電圧を矩形波状電圧に変換する。そのために各スイッチ素子への制御信号を発生するのがブリッジ駆動回路19bであり、上記した制御回路17から送られてくる信号を受けて動作する。
【0087】
起動回路20はDC−ACコンバータ19の後段において、2つの放電灯61、62に対して共通に設けられている。尚、各放電灯については、その一方61が車輌前部の左側に付設される前照灯の光源、他方62が右側に付設される前照灯の光源としてそれぞれ用いられると考えても良いし、あるいは、その一方61がハイビーム用光源、他方62がロービーム用光源の光源としてそれぞれ用いられると考えても良い(その場合には、ビームの切換に応じて使用しない方の放電灯が点灯してしまわないように制御する必要がある。)。
【0088】
起動回路20の構成については、図8に示した通りであるので説明の重複を避けるために、その詳細は割愛するが、本例ではスイッチ素子としてスパークギャップ素子を使用している。つまり、当該素子の降伏時にコンデンサの放電電流によって発生する電圧が2次巻線を介して放電灯に印加される。
【0089】
尚、放電灯61、62がともに消灯した状態から、一方の放電灯61だけを点灯させたい場合には、当該放電灯に対して正極電圧が供給されるようにフルブリッジ型回路19a内の各スイッチ素子のオン/オフ状態を規定し、その期間内における放電灯61への供給電圧(Vdcp)をDC−DCコンバータ16Pにより必要なレベル(Vovc)まで高めた上で、起動信号を発生させて放電灯61に起動をかければ良い。また、他方の放電灯62だけを点灯させたい場合には、当該放電灯に対して正極電圧が供給されるようにフルブリッジ型回路19a内の各スイッチ素子のオン/オフ状態を規定し、その期間内における放電灯61への供給電圧(Vdcp)をDC−DCコンバータ16Pにより必要なレベル(Vovc)まで高めた上で、起動信号を発生させて放電灯62に起動をかければ良い。このような制御方法に従うシーケンスを採ることにより、電流補助回路18についてはこれをDC−DCコンバータ16Pの後段にのみ設けるだけで済むので、回路構成が簡単になる。
【0090】
【発明の効果】
以上に記載したところから明らかなように、請求項1に係る発明によれば、複数の放電灯に対して2対のスイッチ素子を直流−交流変換回路内に設けて当該素子からなるフルブリッジ型回路の交番動作により各放電灯の点灯制御が可能になるので、回路構成が簡単になり、部品点数やコストの削減、装置の小型化、省スペース化を図ることができる。そして、放電灯の点灯前に当該放電灯に供給される電圧の極性を一方の極性に固定することで放電灯の点灯性を良好なものにすることができる。
【0091】
請求項2に係る発明によれば、2つの放電灯を点灯させる点灯回路において直流電源回路を共用化し、かつ4つのスイッチ素子を用いたフルブリッジ型構成の直流−交流変換回路を採用することによって回路構成を簡単化することができる(従来の構成に比べてスイッチ素子及びその駆動回路の数が半分で済む。)。
【0092】
請求項3に係る発明によれば、直流電源回路の2つの出力端子についてその一方の出力端子に対してのみ電流補助回路を設けるだけで良いので、従来の回路に比して電流補助回路を1個削減できる。
【0093】
請求項4に係る発明によれば、直流電源回路の2つの出力端子のうち一方の出力端子から得られる出力電圧を、他方の出力端子から得られる出力電圧より常に低い電圧に制限することによって、直流−交流変換回路を構成するスイッチ素子の耐圧を低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る放電灯点灯回路の基本構成を示す回路ブロック図である。
【図2】直流電源回路の構成例を示す回路図である。
【図3】電流補助回路の構成例を示す回路図である。
【図4】2つの放電灯を点灯させる場合の構成例を示す図である。
【図5】放電灯に係る電流検出信号の極性を一定化させるための回路構成例を示す図である。
【図6】放電灯の点灯判別回路の構成例を示す図である。
【図7】 直流−交流変換回路内の駆動回路に送出する制御信号を生成する回路の構成例を示す回路図である。
【図8】2つの放電灯の間で共通化された起動回路の構成例を示す回路図である。
【図9】本発明の実施の一例を示す回路ブロック図である。
【符号の説明】
1、1A…放電灯点灯回路、3…直流電源回路、3A、3B…回路部、4…直流−交流変換回路、6、61、62…放電灯、7A、7B、10a…検出回路、8…制御回路、9、9′…電流補助回路、sw1、sw2、sw3、sw4…スイッチ素子、DRV、DRV1、DRV2…駆動回路、Ri、Ri1、Ri2…電流検出手段、Ca、Cb、Cc…容量性負荷
Claims (4)
- 直流入力電圧を受けて所望の直流電圧を出力する直流電源回路と、該直流電源回路の出力電圧を交流電圧に変換した後にこれを複数の放電灯にそれぞれ供給するための直流−交流変換回路と、放電灯に係る電圧又は電流を検出するための検出回路と、該検出回路からの検出信号に応じて放電灯の電圧若しくは電流又は供給電力を制御するための制御回路とを備えた放電灯点灯回路において、
(イ)上記直流電源回路の2つの出力端子からそれぞれ各別に出力される正極性及び負極性の電圧が上記直流−交流変換回路に送出されること、
(ロ)上記直流電源回路の出力電圧を切り換えるために直流−交流変換回路内に設けられた2対のスイッチ素子がフルブリッジ型の回路構成をなしており、
第1乃至第4のスイッチ素子のうち、互いに直列接続とされる第1及び第2のスイッチ素子の接続点に対して第1の放電灯が接続され、また、互いに直列接続とされる第3及び第4のスイッチ素子の接続点に対して第2の放電灯が接続されていること、
(ハ)上記第1及び第2の放電灯のそれぞれの端子のうち、上記(ロ)の接続点に接続されない方の端子が直接に又は電流検出手段を介してグランドに接続されていること、
(ニ)上記第1乃至第4のスイッチ素子のオン/オフ動作によって、上記第1の放電灯に正極性の電圧が供給される間、上記第2の放電灯には負極性の電圧が供給され、逆に、上記第1の放電灯に負極性の電圧が供給される間、上記第2の放電灯には正極性の電圧が供給されること、
(ホ)上記第1及び第2の放電灯に対して同時に点灯指示が出された場合には、その一方の放電灯を優先して点灯させるために、上記制御回路から上記直流−交流変換回路に送出される信号によって、当該放電灯に対してその起動前に上記直流−交流変換回路から供給される電圧の極性が正極又は負極のいずれか一方に規定されるように上記第1乃至第4のスイッチ素子の状態が固定され、当該放電灯の点灯後に、上記制御回路から上記直流−交流変換回路に送出される信号によって、他方の放電灯に対してその起動前に上記直流−交流変換回路から供給される電圧の極性が正極又は負極のいずれか一方に規定されるように上記第1乃至第4のスイッチ素子の状態が固定されること、
を特徴とする放電灯点灯回路。 - 請求項1に記載の放電灯点灯回路において、
上記直流電源回路が、正極性の電圧を出力する第1の回路部と、負極性の電圧を生成する第2の回路部とを有しており、
上記第1の回路部の出力端子が上記第1及び第3のスイッチ素子に接続され、上記第2の回路部の出力端子が上記第2及び第4のスイッチ素子に接続される
ことを特徴とする放電灯点灯回路。 - 請求項1又は請求項2に記載の放電灯点灯回路において、
(イ)直流電源回路と直流−交流変換回路との間には、回路内に設けられた容量性負荷に蓄積されたエネルギーを放電灯の起動時に供給することによってグロー放電からアーク放電への移行が確実に行われるように補助するための電流補助回路が設けられていること、
(ロ)放電灯の起動前に直流−交流変換回路から放電灯に供給される電圧の極性に対応した直流電源回路の一方の出力端子に対してのみ上記電流補助回路が設けられていること、
を特徴とする放電灯点灯回路。 - 請求項3に記載の放電灯点灯回路において、
放電灯の起動前に直流−交流変換回路から放電灯に供給される電圧の極性とは反対極性の電圧を出力する直流電源回路の出力端子については、当該出力端子からの出力電圧が、直流電源回路の他方の出力端子からの出力電圧より常に低い電圧となるように規定されている
ことを特徴とする放電灯点灯回路。
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