JP3819663B2 - リチウム二次電池の充放電方法及びリチウム二次電池 - Google Patents

リチウム二次電池の充放電方法及びリチウム二次電池 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、リチウム二次電池の充放電方法及びリチウム二次電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、高出力でかつ高エネルギー密度を示す二次電池として、リチウム二次電池が実用化されているが、さらなる高エネルギー密度化を目指して研究開発が盛んに行われている。リチウム二次電池用負極として、リチウム金属を用いると、最も高い理論容量3.86Ah/gを得ることができる。
【0003】
しかしながら、負極にリチウム金属を用いるリチウム二次電池の場合、充放電に伴うリチウム金属の溶解析出過程で、負極上でのリチウム金属のデンドライトの生成や、リチウム金属と電解質との反応が起こるため、充放電効率が悪く、充放電サイクル特性に劣るという問題があった。このような問題を解決するため、負極活物質としてリチウム−アルミニウム合金を用いたリチウム二次電池が提案されているが、充放電を繰り返すことにより負極の体積が膨張収縮し、負極が微粉化するため、電池のサイクル特性が悪いという問題があった。
【0004】
特開昭57−98978号公報及び特開昭58−111265号公報においては、このような問題を解決するため、負極活物質としてリチウム−水銀合金を用いたリチウム二次電池が提案されている。しかしながら、これらのリチウム二次電池においては、リチウムを含まない化合物が正極活物質として用いられているため、大気中で扱うことができないリチウム−水銀合金を負極活物質として用いなければならず、大気中での電池の作製が不可能であるという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、充放電に伴う負極の微粉化を抑制することができ、充放電サイクル特性を向上させることができるリチウム二次電池の充放電方法及びリチウム二次電池を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、正極と負極と非水電解質を備え、正極活物質としてリチウム含有遷移金属酸化物を含み、負極活物質としてガリウム金属または融点が60℃以下のガリウム合金を含むリチウム二次電池を充放電する方法であり、放電後、充放電を停止した状態で負極をガリウム金属またはガリウム合金の融点以上の温度に保つことにより、ガリウム金属またはガリウム合金を液化させて電池のサイクル特性を回復することを特徴としている。
【0007】
本発明では、負極活物質としてガリウム金属または融点が60℃以下のガリウム合金を含んでいるので、100%放電した際に負極からリチウムが抜け、負極が液体金属または液体合金となるため、微粉化した負極が放電時に液化し一体化する。このため、負極の微粉化による劣化が抑制され、充放電効率を高めることができる。
【0008】
本発明においては、放電後、負極をガリウム金属またはガリウム合金の融点以上の温度に保つことにより、負極のガリウム金属またはガリウム合金を液化させ、電池のサイクル性能を回復することできる。例えば放電状態において、外気温が低く、融点より低い場合には、例えば人体の体温などの適切な低温熱源に電池を接触させ、電池を加温することにより液体化できる。通常、民生用途に用いられる電池は、−20℃〜60℃程度が使用温度の範囲であるので、本発明においては、融点が60℃以下のガリウム金属またはガリウム合金を用いている。
【0009】
携帯機器の大半は、動作時において内部で発熱し、60℃程度の温度に達するものが多いので、融点が60℃以下であれば、使用時に負極が液体化してサイクル特性を改善することができる。さらに、電池が用いられる携帯機器は通常人間が持ち運ぶものであるので、体温以下の融点を有するものであれば、より好ましい。
【0010】
リウムは毒性がなく、融点が29.78℃であり、常温でも過冷却液体として存在するので実用的である。また、インジウム(In)や錫(Sn)などの金属と合金化することにより、融点を制御することが可能である。例えば、15.7℃(Ga−Sn−Zn合金82:12:6)〜17℃(In−Ga合金24:76)程度に融点を制御することができる。
【0011】
これらのガリウム金属及びガリウム合金は、Liを含まない状態では、常温で液体であるが、Liと合金化することにより、一般に固体となる。すなわち、完全に放電した状態において液体となる。上述のように、液体となることによって微粉化が抑制され、サイクル性能が改善される。融点が比較的高い合金を用いる場合には、放電後、融点よりやや高い温度(例えば+5℃以内)に保つことにより、同様の効果を期待することができる。但し、電池全体を融点以上の温度にする必要があるので、電解液などの他の電池構成材料の劣化が促進されない温度とする必要があり、このような観点から融点は60℃以下であることが望ましい。
【0012】
また、本発明においては、正極活物質としてリチウム含有遷移金属酸化物を含んでいる。正極活物質がリチウムを含んでいるので、負極活物質中にはリチウムを含有させる必要がなく、大気中で容易に電池を作製することが可能となる。
【0013】
また、正極活物質としてリチウム含有遷移金属酸化物を含んでいるので、充放電電圧を高めることができ、高いエネルギー密度のリチウム二次電池とすることができる。
【0014】
リチウム含有遷移金属酸化物としては、Ni、Co、及びMnから選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素を含む金属酸化物が好ましく用いられる。このようなリチウム含有遷移金属酸化物としては、例えば、LiCoO2 、LiNiO2 、LiMn2 4 などが挙げられる。
【0015】
本発明において、非水電解質を構成する溶媒は、リチウム二次電池に用いることができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、スルホラン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソランなどを挙げることができ、これらを単独であるいは複数成分を混合して使用することができる。
【0016】
本発明において、非水電解質を構成する溶質は、リチウム二次電池に用いることができる溶質であれば特に限定されるものではないが、例えば、LiPF6 ,LiBF4 ,LiClO4 ,LiAsF6 ,LiN(CF3SO2)2 ,LiN(C25SO2)2 ,LiN(CF3SO2)(C49SO2),LiC(CF3SO2)3 ,LiCF3(CF2)3SO3 などが挙げられ、これらを単独あるいは複数成分を混合して使用することができる。
【0017】
また、本発明においては、固体電解質あるいはゲル状電解質として多く用いられているポリエチレンオキシドを含む非水電解質を使用してもよい。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において、適宜変更して実施することが可能なものである。
【0019】
(実施例1及び2)
本発明に従うコイン型リチウム二次電池を作製した。図1は、作製したコイン型リチウム二次電池を示す模式的断面図である。
【0020】
図1に示すように、負極1及び正極5は、非水電解質を含浸した隔膜8及びセパレータ6を介して対向しており、負極缶2及び正極缶3からなる電池ケース内に収納されている。負極缶2及び正極缶3は、ステンレス鋼から形成されている。セパレータ6としては、ポリエチレンやポリプロピレンなどの、電解液や電極と反応しない微多孔膜や不織布を用いることができ、電池容量の観点からは薄い程望ましいものである。本実施例では、ポリエチレン製の不織布を用いている。隔膜8は、負極1が放電時に液化した際に負極の拡散を抑制するための膜である。隔膜8としては、セパレータ6として用いることができる材料を使用することができるが、液化した負極を遮断する性能を考慮すれば、微多孔性のものが望ましく用いられる。本実施例では、ポリエチレン製の微多孔膜を用いている。
【0021】
正極5は、アルミニウムからなる正極集電体4を介して正極缶3に接続され、負極1は、直接負極2に接続され、電池内部に生じた化学エネルギーを正極缶3及び負極缶2の両端子から電気エネルギーとして外部へ取り出し得るようになっている。負極缶2と正極缶3との間には、電池内部を密閉するためのポリプロピレンからなる絶縁パッキング7が設けられている。
【0022】
電池を組み立てる順序としては、負極缶2の上に、ガリウム(Ga)または水銀(Hg)の液体金属からなる負極を載せ、この上に隔膜8を覆うように載せた後、絶縁パッキング7を嵌め込む。これにより液体金属からなる負極1は、隔膜8と絶縁パッキング7によって押し付けられ、直径18mmの円板状負極となる。次に、隔膜8の上に、非水電解質を含浸したセパレータ6、正極集電体4の上に形成した正極5、及び正極缶3を順次積み重ね、封口金型によって正極缶3の端部を内側にかしめて封口し、電池を作製する。
【0023】
上記正極5としては、LiCoO2 を活物質とした正極を用いた。具体的には、正極活物質としてのLiCoO2 と、導電剤としての人造黒鉛と、結着剤としてのフッ素樹脂粉末とを85:10:5の重量比で混合し、これを直径18mm、厚み1mmにプレス加工し、150℃で2時間真空乾燥したものを用いた。
【0024】
上記非水電解質としては、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを体積比1:1の割合で混合させた混合溶媒にLiPF6 を1.0mol/kgの割合で溶解させたものを使用した。
【0025】
(比較例1)
負極1としてアルミニウム板を用い、隔膜8を設けないこと以外は、上記実施例と同様にしてコイン型リチウム二次電池を作製した。
【0026】
〔充放電特性の評価〕
以上のようにして作製した実施例1及び2並びに比較例1の各電池について、充放電電流1.0mA、充電終止電圧4.2V、放電終止電圧1.0Vとして充放電試験を行い、50サイクル目の容量残存率を測定した。なお、サイクル試験中は放電後、34℃にて5分間放置した後充電を行い、充電後すぐに放電した。50サイクル目の放電容量を1サイクル目の放電容量で除し、50サイクル目の容量残存率(%)とした。測定結果を表1に示す。
【0027】
【表1】
Figure 0003819663
【0028】
表1に示す結果から明らかなように、本発明に従う実施例1及び2の各電池は、比較例1の電池に比べ、高い容量残存率を示している。このように、本発明によれば、良好な充放電サイクル特性が得られる。
【0029】
上記実施例では、コイン型リチウム二次電池を例にして示したが、本発明はこのようなタイプのリチウム二次電池に限定されるものではなく、円筒型電池やその他の各種形状の電池にも適用することができる。
【0030】
【発明の効果】
本発明によれば、充放電に伴う負極の微粉化を抑制することができ、充放電サイクル特性に優れると共に、大気中での電池の作製が容易なリチウム二次電池とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従う実施例において作製したコイン型リチウム二次電池を示す模式的断面図。
【符号の説明】
1…負極
2…負極缶
3…正極缶
4…正極集電体
5…正極
6…セパレータ
7…絶縁パッキング
8…隔膜

Claims (3)

  1. 正極と負極と非水電解質を備え、正極活物質としてリチウム含有遷移金属酸化物を含み、負極活物質としてガリウム金属または融点が60℃以下のガリウム合金を含むリチウム二次電池を充放電する方法であって、
    放電後、充放電を停止した状態で負極を前記ガリウム金属またはガリウム合金の融点以上の温度に保つことにより、前記ガリウム金属またはガリウム合金を液化させて電池のサイクル特性を回復することを特徴とするリチウム二次電池の充放電方法。
  2. 前記リチウム含有遷移金属酸化物が、Ni、Co、及びMnから選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素を含む金属酸化物であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池の充放電方法。
  3. 請求項1または2に記載の方法で充放電させるためのリチウム二次電池であって、正極と負極と非水電解質とセパレータとを備え、前記負極活物質が放電時に液化した際に前記負極活物質の拡散を抑制するための隔膜をさらに備えることを特徴とするリチウム二次電池。
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