JP5344225B2 - 二次電池 - Google Patents
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Description
さらに、本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充放電可能な蓄電デバイスをいう。
電荷担体を吸蔵放出する負極活物質と金属製の筐体との間に設けられた導電性バリアは、電極間の伝導パス(導電経路)を形成する共に、液化した負極活物質と筐体との直接接触を阻み得るものであることが求められるが、電気伝導性に優れる導電性無機質繊維(特に好ましくは炭素繊維)を用いた織布または不織布によってバリア層が形成された二次電池では、導電性を保持しつつ、液化した負極活物質との物理的な接触が阻止される。これにより、該筐体の脆化による容量維持率の低下が抑制された長期使用を実現し得る二次電池が提供される。
融点が200℃以下の低融点金属及び/又は合金からなる負極活物質が固化しているときに、上記炭素繊維を用いた織布または不織布により該負極活物質全体が被覆(あるいは、袋状のもので密封)されて該筐体に収容された二次電池では、負極活物質が加熱されて液化しても、該筐体内壁に液化した負極活物質が付着することがないため、該筐体を構成する金属を脆化させる虞がない。その結果、長期使用を実現し得る品質に優れた二次電池を提供することができる。
上記導電性バリアは、電極間の伝導パスを効率よくするため、バリアの厚みはより薄い方が好ましい。そのため、上記筐体の内壁面のうちの少なくとも負極活物質と対向する内壁面に形成された導電性のバリア被膜層は、より薄く導電性に優れたバリアとなり得る。その結果、該筐体の脆化および容量維持率の低下がより一層抑制された二次電池を提供することができる。なお、かかる被膜は、スパッタリングやめっき、物理蒸着(PVD)法、あるいは化学蒸着(CVD)法等の種々の手段が用いられて形成され得る。
なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略又は簡略化することがある。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。
図1は、本発明の一実施形態に係るコイン型のリチウム二次電池100を模式的に示す断面図である。
図1に示されるように、リチウム二次電池100は、大まかにいって、電池100の外装を形成する筐体として外装蓋10および外装缶12を備え、その内部には、正極活物質層34および正極集電体32からなる正極30と、負極活物質44(40)とが、非水電解液を含浸させたセパレータ50を介して収容されており、上記負極活物質44と筐体(ここでは外装蓋10)との間には、導電性バリア42Aが設けられた構成を備える。
筐体の外装蓋10および外装缶12の材質は、金属製である限り特に限定されないが、軽量で熱伝導性が良い金属が適当である。例えば、ステンレス鋼、ニッケルめっき鋼等の鉄材やアルミニウム又はその合金が挙げられる。本実施形態では、外装蓋10は負極40側の外部端子として、外装缶12は正極30側の外部端子として、外部との電気的接続の一端を担う。
また、外装蓋10および外装缶12の形状は、特に制限されないが、本実施形態では、それぞれ開口部を有する扁平な円柱状に形成されており、外装缶12の開口部に外装蓋10の開口部を対向させて装着されることにより、所謂コイン型電池の外装を構成する。
かかる低融点金属及び/又は合金としては、特に限定するものではないが、周期表12族、13族、14族、および15族のうち融点が200℃以下の低融点金属が好ましい。
または、上記周期表12族、13族、14族、および15族から選択される2種以上の金属元素から構成される融点が200℃以下の低融点合金が好ましく、より好ましくは、ガリウム(Ga),ビスマス(Bi),鉛(Pb),スズ(Sn),カドミウム(Cd),亜鉛(Zn),およびインジウム(In)よりなる群から選択される二種以上の金属元素からなる合金である。
なお、かかる合金に強度を向上させるため銀(Ag)、銅(Cu)、あるいは金(Au)を僅少添加することができる。例えば、上記Bi−Sn合金(重量%比 58:42)にAgを添加したBi−Sn−Ag合金(重量%比 57:42:1)等が挙げられる。
ここで、一般的な二次電池の負極では、過度な充放電の繰り返しで負極活物質層の体積変化(微粉化)により活物質層が剥離したり、また、負極活物質の構成材料によってはデンドライト状の電荷担体の結晶が析出し、内部短絡を引き起こす虞があった。しかし、上述のようなこの種の低融点金属及び/又は合金を負極活物質として負極に備える二次電池は、該負極を融点以上に加熱して一時的に液化させ、その後冷却して固化させることによって、電荷担体を吸蔵放出する負極活物質の細孔を好適な状態に回復させることができるため、負極の導電性能の劣化(微粉化)が防止される。しかしながら、他方では、液化(若しくは軟化)した状態の負極活物質が、電池ケースの内部に拡散して電池を構成する金属製部材(例えば、筐体や負極集電体)に付着し、金属間相互作用で長期に亘る使用により該金属を脆化させるため、容量維持率や導電性を低下させる虞があった。本実施形態では、該負極活物質44と該筐体(外装蓋10)の内壁との間に直接接触を阻む導電性バリア42Aが設けられているため、液化した負極活物質が筐体の内壁に付着して金属が脆化するのを防止することができる。
ここで、リチウムニッケル系複合酸化物とは、リチウム(Li)とニッケル(Ni)とを構成金属元素とする酸化物のほか、リチウムおよびニッケル以外に他の少なくとも一種の金属元素(すなわち、LiとNi以外の遷移金属元素および/または典型金属元素)を典型的にはニッケルよりも少ない割合(原子数換算。LiおよびNi以外の金属元素を二種以上含む場合にはそれらの合計量としてNiよりも少ない割合)で構成金属元素として含む酸化物をも包含する意味である。また、リチウムコバルト系複合酸化物、リチウムマンガン系複合酸化物についても、上記と同様の意味である。
なお、一般式がLiMPO4(MはCo、Ni、Mn、Feのうちの少なくとも一種以上の元素;例えばLiFePO4、LiMnPO4)で表記されるオリビン型リン酸リチウムを上記正極活物質として用いてもよい。
他方、水性ポリマー、即ち有機溶剤に対して不溶性であり且つ水に可溶又は分散する水溶性ポリマーまたは水分散性ポリマーが用いられていてもよい。例えば、水に溶解するポリマーとしては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)等、種々のセルロース誘導体が挙げられる。また、水に分散するポリマーとしては、ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重含体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)等のフッ素系樹脂、酢酸ビニル共重合体、スチレンブタジエンブロック共重合体(SBR)、アクリル酸変性SBR樹脂(SBR系ラテックス)、アラビアゴム等のゴム類が挙げられる。
なお、上記例示したポリマーから適宜選択される一種または二種以上のポリマー材料は結着材として用いられる他、増粘材、各種添加材として使用されることもあり得る。
まず、上記負極活物質44を円形状にポンチで打ち抜き負極40を調製する。また、正極集電体32表面に正極活物質層34を形成した正極シートを円形状にポンチで打ち抜き、正極30を調製する。
正極30および負極40を調製した後、正極側の外装を形成する外装缶12の内部に厚み調整用の板バネ14と、上記調製した正極と、セパレータ50とを積層させて配置し、電解質を注入して含浸させる。さらに、負極40と、導電性バリア42Aとを、セパレータ50の上に順番に配置する。そして、ガスケット20でセパレータ50および導電性バリア42Aの周縁を押さえた後、外装缶12の内部を外装蓋10で塞ぎ、外装缶12および外装蓋10の周縁部を封缶(かしめ等)することにより、本実施形態に係るリチウム二次電池100を構築することができる。
まず、図2は、本発明の第二実施形態に係るコイン型のリチウム二次電池110を模式的に示す断面図である。
図2に示されるように、リチウム二次電池110は、上記導電性バリア42Bが負極活物質44からなる負極40の全体を被覆するように形成されている。かかる導電性バリア42Bによる被覆は、融点が200℃以下の低融点金属及び/又は合金からなる負極活物質44が融点以下の環境下で固化しているときに、袋状の導電性無機質繊維の織布または不織布(例えば炭素繊維を用いたカーボンクロス)に負極活物質44を封入し、開口部を封止(典型的は接着)することにより該負極活物質44をバリア42Bで被覆(密封)することができる。あるいは、負極活物質44を2枚の導電性無機質繊維の織布または不織布の間に挟み込んで周縁を接着した後、ガスケット20でセパレータ50とともに導電性バリア42Aの周縁部を押さえて外装蓋10を装着し、圧着機でかしめて封缶することにより、該活物質44を被覆してもよい。
なお、本実施形態に係るリチウム二次電池110のその他の材料および部材自体は、上記第一実施形態と同様であり、特に制限はない。
図3に示されるように、リチウム二次電池120は、筐体(ここでは、外装蓋10)の内壁面のうちの少なくとも負極活物質44と対向する内壁面に導電性のバリア被膜層42Cが形成され、負極活物質44と外装蓋10との直接接触を阻んでいる。
上記バリア被膜層42Cの形成方法は、特に限定されず、例えば、スピンコート、ディッピング、噴霧塗装、静電塗装、電着塗装等の塗装、電解めっき、浸漬めっき、無電解めっき等の湿式めっき法や、熱CVD、プラズマCVD、レーザーCVD等の化学蒸着法(CVD;Chemical Vapor Deposition)、および、真空蒸着、溶射、スパッタリング、イオンプレーティング等の物理蒸着法(PVD;Physical Vapor Deposition)法等の乾式めっき法が挙げられる。
なお、本実施形態に係るリチウム二次電池120のその他の材料および部材自体は、上記第一実施形態と同様であり、特に制限はない。
本実施例1では、以下のようにして上述の第一実施形態と同様の構成の2032型(径20mm,厚さ3.2mm)のコイン型リチウム二次電池を構築した(図1参照)。
まず、環境温度23℃に設定された雰囲気下で、負極活物質としてのガリウム金属のナゲットを2枚の厚さ50μmのテフロン(登録商標)製フィルムに挟み込み、ローラプレス機にて板厚約50μmになるようにシート状に引き伸ばし、直径16mmのポンチで打ち抜いて負極(負極活物質)を調製した。
なお、上記電解質としては、プロピレンカーボネート(PC)溶媒に1mol/LのLiClO4を溶解させた組成の非水電解液を用いた。
本実施例2では、以下のようにして上述の第二実施形態と同様の構成の2032型(径20mm,厚さ3.2mm)のコイン型リチウム二次電池を構築した(図2参照)
予め、上記実施例1で調製した負極活物質を2枚のカーボンクロス(厚さ0.15mm、直径19mm)の間に挟み込み、該カーボンクロスの周縁部をプラスチック用接着材を用いて接着し、該カーボンクロスで負極活物質全体を被覆した。
そして、上記実施例1と同様の手順で電解質を注入した後、上記カーボンクロスで全体を被覆した負極活物質をセパレータの上に配置した。そして、セパレータおよびカーボンクロスの周縁をガスケットで押さえながら外装缶の開口部を外装蓋で塞ぎ、上記実施例1と同様の手順で封缶することにより、本実施例2に係るリチウム二次電池を構築した。
本実施例3では、以下のようにして上述の第三実施形態と同様の構成の2032型(径20mm,厚さ3.2mm)のコイン型リチウム二次電池を構築した(図3参照)
予め、用意した外装蓋の内壁面全体に、スパッタリングにより炭素による導電性のバリア被膜層を形成した。
そして、上記実施例1と同様の手順で電解質を注入した後、セパレータの上に上記実施例1で調製した負極活物質を配置した。そして、セパレータの周縁をガスケットで押さえながら、上記被膜層を形成した外装蓋で外装缶の開口部を塞ぎ、上記実施例1と同様の手順で封缶することにより、本実施例3に係るリチウム二次電池を構築した。
本比較例1では、以下のようにして2032型(径20mm,厚さ3.2mm)のコイン型リチウム二次電池を構築した。
上記実施例1で用いたカーボンクロスを使用しない構成のリチウム二次電池を構築した。すなわち、該カーボンクロスを負極活物質と外装蓋との間に何も配置しないことを除き、実施例1と同様の手順により、本比較例1に係るリチウム二次電池を構築した。
本比較例2では、以下のようにして2032型(径20mm,厚さ3.2mm)のコイン型リチウム二次電池を構築した。
上記実施例1で用いたカーボンクロスに代えて、ポリプロピレン製の多孔質膜を用いて比較例2に係るリチウム二次電池を構築した。すなわち、該ポリプロピレン製の多孔質膜を実施例1の該カーボンクロスの代わりに負極活物質と外装蓋との間に配置したことを除き、実施例1と同様の手順により、本比較例2に係るリチウム二次電池を構築した。
本比較例3では、以下のようにして2032型(径20mm,厚さ3.2mm)のコイン型リチウム二次電池を構築した。
上記実施例1で用いたカーボンクロスに代えて、銅箔を用いて比較例3に係るリチウム二次電池を構築した。すなわち、該銅箔を実施例1の該カーボンクロスの代わりに負極活物質と外装蓋との間に配置したことを除き、実施例1と同様の手順により、本比較例3に係るリチウム二次電池を構築した。
本比較例4では、以下のようにして2032型(径20mm,厚さ3.2mm)のコイン型リチウム二次電池を構築した。
上記実施例2で用いたカーボンクロスに代えて、ポリプロピレン製の多孔質膜を用いて本比較例4に係るリチウム二次電池を構築した。すなわち、上記実施例2と同様の手順により、負極活物質を2枚のポリプロピレン製の多孔質膜の間に挟み込み、該多孔質膜の周縁部をプラスチック用接着材を用いて接着し、負極活物質全体を被覆した。かかるポリプロピレン製の多孔質膜で全体を被覆した負極活物質をセパレータの上に配置したことを除き、実施例2と同様の手順により、本比較例4に係るリチウム二次電池を構築した。
25℃の温度条件下において、各電池を電流密度2mA/cm2で対極であるリチウム金属に対し作用極(負極)の電位が0.1Vになるまで放電し、次いで2mA/cm2で1.0Vまで充電し、容量を測定した。そして、実施例1に係るリチウム二次電池の容量を100%として、各電池の容量を評価した。
25℃の温度条件下において、各電池を電流密度4mA/cm2で対極であるリチウム金属に対し作用極(負極)の電位が0.1Vになるまで放電し、次いで4mA/cm2で1.0Vまで充電した。このサイクル(4mA/cm2の定電流で0.1Vまで放電し、1.0Vまで充電するサイクル)を50回繰り返した。そして、1サイクル目における電池容量に対する、50サイクル目における電池容量の割合を電池容量維持率として算出した。
さらに、50サイクル後の各電池を、それぞれ50℃に設定された油浴に5分間浸漬した。浸漬後、油浴から取り出した電池を自然放冷させた。その後、25℃の温度条件下において、各電池を電流密度4mA/cm2で0.1Vになるまで放電し、次いで4mA/cm2で1.0Vまで充電した。そして、1サイクル目における電池容量に対する、50℃の油浴で5分間浸漬した後における電池容量の割合を電池容量維持率として算出した。
各電池の負極からリチウムを放出した状態にし、45℃に設定された恒温槽に電池を静置した。1週間後、電池を解体し、外装蓋および銅箔(比較例3のみ)を取り出し1mol/LのNaOH水溶液に浸漬して負極活物質として用いたガリウムを溶解させた。ガリウムを十分に除去した後に、走査型電子顕微鏡にて外装蓋および銅箔の表面状態を観察し、金属の腐食の有無について確認した。
その結果を表1に示す。なお、脆化評価の基準は、以下のように設定した。
◎;腐食は認められない
○;腐食はほとんど認められない
×;腐食が認められる
また、50サイクル後の各電池の容量維持率においては、いずれの電池(比較例2および4を除く)も凡そ30%前後であり、再生後の各電池の容量維持率は、凡そ60%前後であった。このことから、いずれの電池(比較例2および4を除く)も、負極活物質を加温して液化されることによって、負極活物質の導電性能が回復したことが確認された。
さらに、脆化評価の結果をみると、実施例1〜3に係る電池では、金属(外装蓋)の腐食が確認されなかった。しかし、比較例1および3に係る電池では、金属の腐食が確認された。
以上の評価結果から、実施例1〜3に係る電池では、二次電池の電極の容量維持率を回復すると共に、金属の腐食が防止されることが示された。
10 外装蓋
12 外装缶
14 板バネ
20 ガスケット
30 正極
32 正極集電体(スペーサ)
34 正極活物質
40 負極
42A,42B 導電性バリア
42C バリア被膜層(導電性バリア)
44 負極活物質
50 セパレータ
100,110,120 リチウム二次電池
Claims (6)
- 融点が200℃以下の低融点金属及び/又は合金からなる負極活物質が金属製の筐体に収容された二次電池であって、
前記筐体に収容された前記負極活物質と前記筐体内壁との間には、該負極活物質と該金属筐体との接触を阻む導電性バリアが設けられており、
前記導電性バリアは、導電性を有する炭素繊維、または金属元素あるいは非金属元素の酸化物、炭化物、珪化物、窒化物を用いた織布または不織布によって形成されている、二次電池。 - 前記導電性バリアは、炭素繊維からなる、請求項1に記載の二次電池。
- 前記バリアは、前記負極活物質の全体を被覆するように形成されている、請求項1または2に記載の二次電池。
- 前記バリアとして、前記筐体の内壁面のうちの少なくとも前記負極活物質と対向する内壁面に導電性のバリア被膜層が形成されている、請求項1に記載の二次電池。
- 前記負極活物質は、リチウムを吸蔵放出可能な金属及び/又は合金からなる、請求項1〜4のいずれかに記載の二次電池。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の二次電池を備える車両。
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