JP3819614B2 - 光ファイバ用石英ガラス母材の製造方法 - Google Patents

光ファイバ用石英ガラス母材の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、光ファイバ用石英ガラス母材の製造方法、さらに詳しくは、楕円度の小さい、大型の光ファイバ用母材を生産性よく、低コストで製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、光ファイバ特にシングルモ−ド用光ファイバの実用化に伴い大量の光ファイバが利用されるようになってきたが、光ファイバが長距離幹線から一般加入者系へとその利用範囲を拡大するに従い更に大量の光ファイバが必要となることが予測される。かかる利用範囲の拡大には光ファイバの量産化、低コスト化が不可欠であるが、それには大型の光ファイバ用母材を作成し、それを線引きするのが最も簡便な方法である。従来実用化されてきた軸付け法(VAD法)や外付け法(OVD法)による光ファイバの製造方法では、コア部もクラッド部も全てVAD法やOVD法で作成するところから、さらなる大型化を図ろうとすると、光ファイバ用母材の生産性を低下させかねないという欠点があった。また、該母材が透明ガラス化される前の多孔質体(シリカガラス微粒子が堆積したスート体のことで、以下「多孔質スート体」という)そのものを大きく形成しようとすると、クラックが生じたり、多孔質スート体の落下等のトラブルが発生し生産性を著しく低下する虞れもある。これらの欠点を解消する光ファイバの製造方法として断面積の80%以上を占めるクラッド部を形成する石英ガラス管を高性能で低コスト化が可能な方法で作成し、この管とVAD法やOVD法等で作成したコアガラスロッドとを加熱し溶着一体化する、いわゆるロッドインチューブ法で製造する方法が特開平7−109136号公報等で提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記公報記載の製造方法は光ファイバの高品質化及び低コスト化に大きく寄与するものであるが、さらなる高品位な光ファイバの製造のためには、光ファイバ用母材の楕円度等に関するより一層の改良が必要となる。そこで、本発明者等は、前記母材の楕円度の悪化の原因について鋭意研究を続けたところ、楕円度が大きくなるのは、前記母材製造時の母材用石英ガラス管の不均一加熱に起因することが分かった。そして前記石英ガラス管を均一に加熱するには加熱状態をリアルタイムでモニターし、石英ガラス管の加熱が不均一になった都度、その位置を移動し、均熱状態を確保すればよいと考えたが、ロッドインチューブ装置の送り機構に固定されている石英ガラス管をこのように位置を変更することは技術的に困難である上に、加熱炉の作製費用も高いものとなり実用的ではなかった。そのため、本発明者等はさらに研究を続けた結果、加熱炉の円筒形ヒーターの内径が光ファイバ用母材の楕円度を大きく左右し、加熱炉の円筒形ヒーターの内径と光ファイバ母材用石英ガラス管の外径との比を特定の範囲にすることで、楕円度の小さい光ファイバ用母材が製造できることを見出して本発明を完成したものである。すなわち
【0004】
本発明は、大型で、楕円度の小さい光ファイバ用母材の製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明は、光ファイバ母材用石英ガラス管に光ファイバ母材用コアガラスロッドを挿入し、加熱炉内で母材用石英ガラス管と母材用コアガラスロッドとを同一方向に回転しながらで加熱し溶着一体化する光ファイバ用石英ガラス母材の製造方法において、前記加熱炉の円筒形ヒーターの内径(d)を、母材用石英ガラス管の外径(D)との比(d/D)が1.5〜2.0の範囲になるように設定することを特徴とする光ファイバ用石英ガラス母材の製造方法に係る。
【0006】
上記母材用石英ガラス管は、高純度の四塩化珪素を気化し、酸水素炎中で火炎加水分解し、生成したシリカガラス微粒子を基体の周囲に堆積させて多孔質スート体を作成し、それを電気炉内で、1600℃に加熱して透明ガラス化して石英ガラスインゴットを作成したのち、外径を研削し、その外径の円中心に合わせてコアドリル穴開け装置で開孔し、さらに必要に応じて機械的研磨し、フッ酸によるエッチング処理、純水による水洗処理等を行って製造される。
【0007】
一方、母材用コアガラスロッドとしては、光の伝送部であって、石英ガラスロッドまたはその周囲に光学的クラッド部が形成された石英ガラスロッドが挙げられる。すなわち、本発明にあっては「コアガラスロッド」とは、コアロッドとクラッド付きコアロッドとを総称する。クラッド部を有さないコアロッドは、公知のVAD法やOVD法等により形成することができ、また、クラッド付きコアロッドを作成する手段としては、コアロッドに石英ガラス管をジャケットする方法や、コアロッドの周囲にOVD法等によりクラッド部を形成する方法が挙げられる。
【0008】
上記母材用石英ガラス管と母材用コアガラスロッドとの溶着一体化に使用する加熱炉としては、抵抗炉や誘導炉が使用されるが、前記抵抗炉とは、ヒーターと呼ばれる熱源(発熱体)に電流を流して発熱させ、加熱する炉であって、多くの場合は円筒形状のヒーターが用いられる。また、誘導炉とは、ヒーターと呼ばれる熱源(発熱体)の近傍で高周波電流等を流すことにより誘導電流を発生させてヒーターを発熱させる炉であって、多くの場合は円筒形状のヒーターが用いられる。本発明「加熱炉の円筒形ヒーターの内径」前記抵抗炉や誘導炉をも含めた加熱炉の円筒形ヒーターの内径をいう。
【0009】
本発明にあっては、上記加熱炉の円筒形ヒーターの内径を母材用石英ガラス管の外径の1.5倍以上とすることを必須とする。加熱炉の円筒形ヒーターの内径を前記範囲に設定することにより楕円度の小さい光ファイバ用母材が製造でき、それを線引きすることでクラッド非円率が1%以下のシングルモード光ファイバが得られる。前記楕円度とは、光ファイバ用母材を円周方向に回転させ、その断面の外径を連続的に測定し、その最大値と最小値を求め、(最大値−最小値)の計算式で求めた値である。また、クラッド非円率とは、光ファイバの楕円度を表わす基準として慣用されており、クラッド非円率1%以下がシングルモード光ファイバの規格品とされる。
【0010】
次に、本発明の製造方法の1態様として、縦型加熱炉を用いた光ファイバ用母材の製造方法における光ファイバ用母材の概略断面図を図1に示す。図1において、dは加熱炉の円筒形ヒーターの内径、Dは母材用石英ガラス管の外径、Dは前記母材用石英ガラス管の内径、Dは母材用コアガラスロッドの外径を示す。また、加熱炉の円筒形ヒーターの内径(d)と母材用石英ガラス管の外径(D)の比d/Dを変えた時の楕円度の変化を図2に示す。図2において、楕円度は外径125μm光ファイバのクラッド換算で表わしているが、この換算は、光ファイバ用母材の外径が使用する母材用石英ガラス管や溶着一体化時の延伸等により変わるため、外径125μmのシングルモード光ファイバを基準として換算した。図2から明らかなようにd/Dが1.5以上では楕円度が1.25μm以下となる。この楕円度1.25μm以下は前記クラッド非円率1%以下に相当する。しかし、d/Dが2.0を超えても楕円度に向上が見れない上に、加熱炉の製作費用等が高くなるので、加熱炉の円筒形ヒーターの内径と母材用石英ガラス管の外径の比が2.0を超えるのは好ましくない。
【0011】
このように加熱炉の円筒形ヒーターの内径を母材用石英ガラス管の外径との比d/D=1.5〜2.0に設定することで楕円度の小さい光ファイバ用母材を低コストで製造できるが、さらに加熱炉内の母材用石英ガラス管と母材用コアガラスロッドとを同一方向に回転しながら溶融一体化することで母材用石英ガラス管の加熱が一段と均一になり、楕円度はさらに小さくなる。特に、加熱炉が横型加熱炉の場合、母材用石英ガラス管と母材用コアガラスロッドとを同一方向に回転しながら加熱すると、大型の母材用石英ガラス管であってもその自重による撓みがなく均一な加熱ができ、楕円度の小さい大型光ファイバ用母材が製造できる。前記回転速度は5rpm以上がよく、回転速度が前記範囲未満では光ファイバの125μmクラッド換算楕円度が1.25μm以下にならないため好ましくない。
【0012】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施例について述べるがこれによって本発明はなんら限定されるものではない。
【0013】
【実施例】
実施例1
OVD法を用い、四塩化珪素を気化し、酸水素炎中で火炎加水分解し、回転する基体の周囲に堆積して大型多孔質スート体を作成し、それを1600℃で透明ガラス化して石英ガラスインゴットを製造した。この円筒状石英ガラスインゴットの外径を研削し、次いでレーザ外径測定機で寸法測定を行い、外径の円中心を求め、この外径の円中心に合わせてコアドリル穴開け装置で開孔した。得られた石英ガラス管をフッ酸によるエッチング処理、純水による水洗、及び乾燥を行った。この石英ガラス管についてレーザ内外径測定機で寸法測定を行ったところ、長さは3500mm、外径は200mm、内径は50mmであった。
【0014】
一方、VAD法によりクラッド付きのコアロッドを製造し、外径制御付き精密自動延伸機で石英ガラス管の内径に対して外径を45mmに合わせて延伸し、これを上記大型の石英ガラス管内に注意深く挿入し、コアロッド及び石英ガラス管の各円中心を合わせて固定し、下端部より縦型加熱炉に上部から入れ、下端部を溶融させたのち、真空ポンプで管内を減圧して溶着一体化した。前記縦型加熱炉は抵抗炉であり、円筒形ヒーターは外径360mm、内径340mm、長さ350mmのカーボン製で、ヒーター温度を2100℃に設定した。したがって、前記溶着一体化時の加熱炉の円筒形ヒーターの内径と母材用石英ガラス管の外径比(d/D)は1.7である。得られた光ファイバ用母材を線引きして125μmのシングルモード光ファイバを製造し、そのクラッド換算楕円度を測定したところ0.80μmであった。
【0015】
実施例2
実施例1において、加熱炉を横型誘導炉として外径と長さが異なるヒーターを用い、かつ母材用石英ガラス管と母材用コアガラスロッドとを同一方向に5rpmで回転しながら溶着一体化した以外、実施例1と同様にして光ファイバ用母材を製造した。前記横型加熱炉は誘導炉であり、円筒形ヒーターは外径380mm、内径340mm、長さ500mmのカーボン製で、ヒーター温度を2100℃に設定した。したがって、前記d/Dは1.7である。得られた光ファイバ用母材の125μmクラッド換算楕円度は1.12μmであった。
【0016】
比較例1
実施例1において、外径と内径が異なる円筒形ヒーターを用いた以外、実施例1と同様にして光ファイバ用母材を製造した。前記縦型加熱炉は抵抗炉であり、円筒形ヒーターは、外径280mm、内径260mm、長さ350mmのカーボン製で、ヒーター温度を2100℃に設定した。したがって、前記d/Dは1.3である。また、得られた光ファイバ用母材の125μmクラッド換算楕円度は1.50μmであり、一般規格を充たすものではなかった。
【0017】
比較例2
実施例2において、母材用石英ガラス管と母材用コアガラスロッドとの回転速度を3rpmとした以外、実施例2と同様にして光ファイバ用母材を製造した。得られた光ファイバ用母材の125μmクラッド換算楕円度は1.50μmであり、一般規格を充たすものではなかった。
【0018】
【発明の効果】
本発明の製造方法では、母材用石英ガラス管と母材用コアガラスロッドとを加熱し溶着一体化する加熱炉の円筒形ヒーターの内径を母材用石英ガラス管の外径に対して一定の範囲にすることで楕円度の小さい大型の光ファイバ用母材が製造できる。そして、この光ファイバ用母材を線引きすることで、クラッド非円率の小さい高品質の光ファイバが低コストで得られ、工業的価値は高いものがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 縦型加熱炉内で溶着一体化した光ファイバ用母材の断面図である。
【図2】 加熱炉の円筒形ヒーターの内径と光ファイバ用母材の楕円度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
D : 母材用石英ガラス管の外径
: 母材用石英ガラス管の内径
: 母材用コアガラスロッドの外径
d : 加熱炉の円筒形ヒーターの内径

Claims (3)

  1. 光ファイバ母材用石英ガラス管に光ファイバ母材用コアガラスロッドを挿入し、加熱炉内で母材用石英ガラス管と母材用コアガラスロッドとを同一方向に回転しながら加熱し溶着一体化する光ファイバ用石英ガラス母材の製造方法において、前記加熱炉の円筒形ヒーターの内径(d)を、母材用石英ガラス管の外径(D)との比(d/D)が1.5〜2.0の範囲になるように設定することを特徴とする光ファイバ用石英ガラス母材の製造方法。
  2. 加熱炉が横型加熱炉であり、その炉内の母材用石英ガラス管と母材用ガラスロッドとを同一方向に5rpm以上で回転することを特徴とする請求項記載の光ファイバ用石英ガラス母材の製造方法。
  3. 加熱炉が抵抗炉または誘導炉であることを特徴とする請求項1又は2記載の光ファイバ用石英ガラス母材の製造方法。
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