JP3819609B2 - 補間制御手段を備えたエンジン制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、補間制御手段を備えたエンジンの制御装置に係り、特に、異なる運転状態に対するそれぞれの対応要求制御値への切り換え制御時に、その切換えを滑らかに変化させるようにした補間制御手段を備えたエンジンの制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
エンジン制御においては、車両の走行状態等の要求運転状態の変更によって、エンジンの運転状態を切り換える必要があり、その場合には、それぞれのエンジンの運転状態で、要求される制御値が異なるので、それぞれのエンジンの運転状態に見合う要求制御値を、予めマップ等に設定しておいて、そのマップ等を検索することにより、エンジンの運転状態を切り換えることが、一般に、行われている。
【0003】
前記のことを、エンジンの燃焼制御を例にして説明する。筒内燃料噴射エンジンにおいては、エンジンの要求負荷の変更等の運転状態の変更に伴って燃焼状態を変更するリーンバーン燃焼運転、つまり、理論空燃比近辺のストイキ運転(均質燃焼)と希薄空燃比運転(成層燃焼)とを選択して燃焼させる運転が行われている。
【0004】
前記リーンバーン燃焼運転のエンジンは、超希薄空燃比で燃焼運転することで、大幅な燃費と排気ガス性能を向上させることができるが、超希薄空燃比でエンジンを燃焼運転するためには、エンジンの筒内に高圧の燃料を噴射させる必要がある。エンジンの筒内に燃料を噴射させるための燃料圧力は、所定の一定圧力値を取ることが多いが、燃焼性能を充分に引き出す観点からみれば、燃焼状態に応じて燃料圧力を可変にすることが必要である。そのために、従来は、制御装置内のマップ等に各燃焼運転状態での要求燃料圧力値を予め設定しておき、切換えの必要が発生すると、前記マップ等を検索することにより要求燃料圧力値を選択し、該要求燃料圧力値をステップ的に変化させることで、燃焼運転の状態を変更させる方式が、一般に採用されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、エンジンの筒内に噴射する燃料圧力を可変にした場合には、燃焼切換え時に、マップ等に設定されたその異なる要求燃料圧力値を、一方の圧力値から他方の圧力値に滑らかに切り換え変更(変化させる)させることが必要であり、特にそれは燃焼安定性の面から要求される。前記のように、要求燃料圧力値の変更がステップ的であると、実燃料圧力の挙動も激しくなり、制御性が低下すると共に、燃焼の切換え時での失火やエンジンショック等が発生する虞がある。
【0006】
本発明は、前記のことに鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、エンジンの燃焼運転を含む種々の運転において、その運転状態の変更に当たって、各々の異なる運転状態に対するそれぞれの対応要求制御値を選択して切り換えする制御時に、その切換えを滑らかに変化させる補間制御手段を備えたエンジンの制御装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成すべく、本発明の補間制御手段を備えたエンジンの制御装置は、該エンジンの制御装置が、エンジン負荷相当量もしくは該エンジン負荷相当量とエンジン回転数より各燃焼運転状態での目標燃料圧力値を算出する手段と、前記燃焼運転状態の切換わりを判定する手段と、該切換わり状態を内分比して置き換える前記目標燃料圧力値の補間係数を算出する手段と、前記目標燃料圧力値と前記補間係数とから最終的な目標燃料圧力値を算出する手段とを有する補間制御手段を備え、前記目標燃料圧力値を算出する手段が、切換え前の目標燃料圧力値と切換え後の目標燃料圧力値を、前記燃焼運転状態の切換わり状態に応じて算出される補間係数で補間して、目標燃料圧力値の切換えを行なうことを特徴としている。
【0008】
前述の如く構成された本発明のエンジン制御装置は、補間制御手段を備えたことで、一つの制御値から他の制御値への切換え移行制御に当たって、切換わる状態を内分比して置き換える前記制御値の補間係数を設定し、該補間係数によって切換え移行を補間して、その移行を滑らかに変化させることができるので、前記二つの制御値間の切換え移行時の制御性が不安定等になる不具合を解消することができる。
【0010】
前述の如きエンジンの燃焼運転制御への態様によって、本発明の補間制御手段を備えたエンジンの制御装置は、リーンバーン燃焼運転等において、ストイキ運転(均質燃焼)や希薄空燃比運転(成層燃焼)等を選択して燃焼運転させる場合に、エンジンの筒内に燃料を噴射させるための燃料圧力を変更するに当たって、一つの目標燃圧値から他の目標燃圧値への移行を滑らかに変化させることができ、前記二つの目標燃圧値間の切換え移行時の失火やエンジンショック等の発生を防ぐことができる。
【0011】
また、本発明の補間制御手段を備えたエンジンの制御装置の具体的態様は、前記補間係数が、前記運転切換わり状態に応じて、初期値に任意に設定された所定値を付加して算出されるものであり、前記所定値が、前記運転状態に応じてマップもしくはテーブル検索で設定され、前記補間係数に所定値を付加するタイミングが、任意にテーブルあるいはマップ検索で設定でき、前記補間係数が、前記切換え前の状態と切換え後の状態において、上限値及び下限値を備えており、前記補間係数が、所定のスライスレベルを越えたときは、前記所定値とは別の刻み値を付加して補間係数を算出し、前記補間係数が前記運転状態の切換え開始より所定の遅れ時間で算出されることを特徴としている。
【0012】
更に、本発明の補間制御手段を備えたエンジンの制御装置の他の具体的態様は、前記切換え前の前記目標燃料圧力値と切換え後の目標燃料圧力値の2つの値が、制御パラメータを、又は、エンジン負荷相当量もしくは該エンジン負荷相当量とエンジン回転数を、軸とするマップもしくはテーブル検索で設定できることを特徴としている。
更にまた、本発明の補間制御手段を備えたエンジンの制御装置の他の具体的態様は、前記運転状態切換判定手段が、状態切換え中において、その状態の移行方向がどちらかであるかを判定し、前記補間係数算出手段が、前記移行方向を考慮して補間係数を算出し、前記目標燃料圧力値を最終的に常に連続的に変化させることを特徴としている。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る補間制御手段を備えたエンジン制御装置の一実施形態を、図面に基づいて用いて詳細に説明する。
図1は、本実施形態の補間制御手段を備えたエンジン制御装置のエンジン107の制御システムの全体構成を示したものである。図1において、エンジン107に吸入される空気は、エアクリーナ102の入口部102aから取り入れられ、エアフローセンサ103を通り、吸入空気量を制御するスロットル弁105aを設置したスロットル弁ボディ105を通り、コレクタ106に入る。該コレクタ106に吸入された空気は、エンジン107の各シリンダ107bに接続された各吸気管101に分配され、該シリンダ107bの燃焼室107c内に導かれる。前記吸気管101には、それぞれにスワールコントロールバルブ(図示省略)が設けられており、吸入空気に偏向力を与えている。またスロットル弁105aは、モータ(図示省略)によって開弁・閉弁が可能となっている。
【0014】
一方、ガソリンなどの燃料は、燃料タンク114から低圧燃料ポンプ110により1次加圧され、さらに高圧燃料ポンプ111で2次加圧された上で、インジェクタ109、燃料圧力センサ123、電制プレッシャレギュレータ113が配管されている燃料系に供給される。
前記燃料系に供給された燃料は、前記電制プレッシャレギュレータ113により所定の圧力に調圧され、それぞれのシリンダ107bの燃焼室107c内に、燃料噴射口を開口しているインジェクタ109から前記燃焼室107c内に噴射される。インジェクタ109から噴射された燃料は、点火コイル122で高電圧化された点火信号により点火プラグ108で着火される。
【0015】
また、前記エアフローセンサ103からは、吸気流量を示す信号が出力され、第一コントロールユニット115に入力されるようになっている。
更に、前記スロットルボディ105には、スロットル弁105aの開度を検出するスロットルセンサ105bが取り付けられており、その出力も第一コントロールユニット115に入力されるようになっている。
【0016】
次に、クランク角センサ116が、カム軸(図示省略)によって回転駆動されており、該クランク角センサ116の出力信号も、第一コントロールユニット115に入力されるようになっている。前記クランク角センサ116の出力信号により燃料の噴射タイミングおよび点火のタイミングが制御される。
また、エンジン107には、排気管119が接続され、該排気管119には、触媒120が接続されると共に、該触媒120の上流にはA/Fセンサ118が配設され、該A/Fセンサ118は、排ガスの酸素濃度を検出してその検出信号を前記第一コントロールユニット115に出力するようになっている。
【0017】
更に、前記エンジン107により発生する回転駆動力は、該エンジン107に連動連結される自動変速機126を介してタイヤ129への駆動力として伝達される。第二コントロールユニット124は、車速センサ127及び車輪速センサ128からの入力信号と、エンジン107側を制御する第一コントロールユニット1115からの信号により油圧機構等から構成される自動変速機126の変速制御装置125を制御する。
【0018】
図2は、前記第一コントロールユニット115の内部主要構成部を示すもので、MPU,ROM,RAM及びA/D変換器を含むI/OLSI201等で構成され、エンジン107の運転状態を検出する各種センサ等からの信号を入力として取り込み、所定の演算処理を実行し、この演算結果として算定された各種の制御信号を出力し、前記インジェクタ109や点火コイル122やスロットル弁操作のモータに所定の制御信号を出力し、燃料供給制御、点火時期制御、吸入空気量制御等を実行する。また、第二コントロールユニット124の基本構成も前記第一コントロールユニット115と同様で、車速センサ127や車輪速センサ128からの信号と、前記第一コントロールユニット1115からの信号とを入力して変速制御装置125に出力して変速制御する。
【0019】
図3は、本実施形態の制御装置(第一コントロールユニット115)の補間制御手段300の制御ブロック図であって、該補間制御手段300の制御の概略を示すものである。制御値A算出手段301は、エンジン負荷相当量やエンジン回転数等のエンジン制御パラメータX1及びX2を用いて特定の状態Aでの目標燃圧値等の要求制御値Y1を算出するものであり、同様に、制御値B算出手段302は、特定の状態Bでの要求制御値Y2を算出するものである。
【0020】
また、状態判定手段304は、エンジンからの入力信号及び運転パラメータであるX3に基づいて、前記特定状態A、Bを判定するものであり、制御量補間係数算出手段305は、前記状態判定手段304の判定結果をもとに、状態A→B、B→Aへの状態移行を、内分比に置き換えて前記制御値Y1,Y2の割合を補間係数Kとして算出するものである。状態移行中でないとき、また移行終了時点では補間係数Kは、上限値もしくは下限値となるようにしておく。最終制御値算出手段303は、前記算出した制御値Y1,Y2,Kを用いて、最終制御値Cを算出するものである。
【0021】
前記制御を行うことで、状態Aでの制御要求値Y1と状態Bでの制御要求値Y2との切り換え移行時、前記状態の内分比で補間計算を行なうことで、前記二つの制御要求値Y1、Y2間の滑らかな移行変化を実現できる。
図4は、図3の制御ブロックの構成手段の内、制御値A算出手段301と制御値B算出手段302での制御値Aと制御値Bの算出の一例を示したものである。ここでは、エンジン制御パラメータX1、X2として、エンジン負荷相当値TEとエンジン回転数NEの二つの信号を入力し、該二つの信号に基づきマップでの検索によって、要求制御値Y1、Y2となる目標燃圧値TFPを算出するものである。
【0022】
図5は、図3の制御ブロックの構成手段の内、制御値A算出手段301と制御値B算出手段302での制御値Aと制御値Bの算出の一例を示したものである。ここでは、エンジン制御パラメータX1としてのエンジン負荷相当値TE基づきテーブルを検索することによって、要求制御値Y1となる目標燃圧値TFPを算出するものである。
【0023】
図6は、エンジン回転数とエンジン負荷相当量とから目標燃圧値TFPを算出するためのマップ設定値の一例を示したものである。ストイキ空燃比燃焼では、目標燃圧は、5,7,9MPaの三つの燃圧としているが、希薄空燃比燃焼においては、目標燃圧は、一律に6MPaとしている。このストイキ及び希薄空燃比での要求燃圧値を、前記の制御値A算出手段301と制御値B算出手段302でそれぞれ設定する。
【0024】
図7は、図3の制御ブロックの構成手段の内、状態判定手段304、制御量補間係数算出手段305、及び最終制御値算出手段303での制御の制御フローチャートを示したものである。
ステップ801では、状態判定手段304での判定結果より状態切換え中か否か及び状態の移行方向がどちらであるかを判定する。状態切換え中でないときは、ステップ809に進み、補間係数Kを前回値K(old)に保持する。基本的には補間係数Kは切り換え中のみ変化することとする。
【0025】
状態がB→Aへの切換え中の場合は、ステップ802に進み、補間係数Kを前回値K(old)から所定刻み値Dで減算して求める。ステップ804では、補間係数Kが下限値(仮に0 hex)であるか否かを判定す、下限値(仮に0 hex)であるときは、ステップ807に進み、状態移行終了と判定して、最終制御値Cを制御値A算出手段301で求めた要求制御値Y1として処理を終了する。
【0026】
同様に、ステップ801で、状態がA→Bの切換え中と判定された場合は、ステップ803に進み、補間係数Kを前回値K(old)に所定刻み値Dを加算して求め、ステップ805に進む。ステップ805で、補間係数Kが上限値(仮に2バイト変数とした場合FFFFhex)であるときは、ステップ806で状態移行終了と判定して、最終制御値Cを制御値B算出手段302で求めた要求制御値Y2として処理を終了する。
【0027】
前記ステップ804、805で補間係数Kが、下限値もしくは上限値でないと判定された場合(状態移行中)は、ステップ808で、C=(FFFFh−K)×Y1+K×Y2/FFFFhの演算式に基づいて最終制御値Cを求める。前記演算式は、切換わりの全過程を1として、その中で切換えの状態を模擬する内分比による重み付けを、2つの要求制御値Y1,Y2に施す方式を示したものである。
【0028】
本制御フローチャートでは、補間係数Kに、所定刻み値Dを加減算にて算出した場合を示したが、前回値K(old)に、所定刻み値Dを付加する操作であれば、他の演算処理を組み合わせでもよい。
図8は、前記制御における状態移行中のタイムチャートの一例として、状態AからBに変化したときの動作を示すものである。状態Aでは、補間係数Kは、仮に下限とする00hex値であり、最終制御値Cは、要求制御値Y1をトレースしておく。状態移行を判定すると、補間係数Kは、所定刻み値Dにより増加し、その値を用いて、要求制御値Y1,Y2を補間して最終制御値Cを算出し図に示すような軌跡で変化する。
【0029】
補間係数Kが上限値FFFFhexとなると、移行終了として、最終制御値Cは、要求制御値Y2をトレースするようになり、制御値の切換えを終了する。
図9は、状態移行を繰り返し時のタイムチャートの一例として、状態AからBに変化した後、補間係数Kが切換わり終了を仮定するFFFFHとなる前に、再度状態Aに戻ったときの動作を示すものである。状態Aでは、補間係数Kは仮に下限とする00hex値であり、最終制御値Cは、要求制御値Y1をトレースしたものとなる。
【0030】
状態移行を判定すると、補間係数Kは、所定刻み値Dにより増加し、前記同様に要求制御値Y1,Y2を補間して最終制御値Cを算出するが、その途中で状態の移行方向が逆転した場合でも、補間係数Kの算出は、移行方向を考慮した構成になっているため、図中に示すように、最終制御値Cに段差を生じさせることなく、連続的に変化させることが可能である。
【0031】
このように、運転状態などが頻繁に変化したときでも、補正係数Kをその変化に対応させておくことで、最終制御値Cは、常に要求制御値Y1と要求制御値Y2の間の値を連続的に変化するため、値の急激な変化を防止できる。
図10は、補間係数Kを算出するための一例を示している。前記したように、補間係数Kは、運転状態などの変化を検出後、その移行方向により増加減していくが、その算出タイミングT1、即ち補間係数Kに、所定刻み値Dを付加するタイミング(演算タイミング)及びその付加する所定刻み値Dを切換えることで、補間係数Kの傾きを自由に設定可能となり、制御性の向上が図れる。
【0032】
図11は、所定刻み値Dを算出するためのマップ設定の一例を示したものである。ここでは、エンジン制御パラメータとして、エンジン負荷相当値TEとエンジン回転数NEよりマップ検索をすることによって、所定刻み値Dを算出することで、運転条件及び状態によって切換えを行なうものである。また、所定刻み値Dの設定方式は、テーブル検索でも良い。更に、前記マップもしくはテーブルに設定される所定刻み値Dの形態は、補間係数Kに付加する絶対値または所定時間での変化率(傾き)でも良い。
【0033】
図12は、補間係数算出のためのタイミングT1を求めるマップ設定の一例を示したものである。ここでは、エンジン制御パラメータとして、エンジン負荷相当量値TEとエンジン回転数NEよりマップ検索をすることによって、補間係数算出タイミングT1を算出している。これにより各運転条件下で、補間係数Kに所定刻み値Dを付加するタイミング(演算周期)を、可変にすることができる。ここで、補間係数算出タイミングT1の設定方式は、テーブル検索でも良い。
図13は、補間係数Kを演算するためのタイミングフローの一例を示したもので、LSIのクロック(周期)などにより設定される基本周期で、演算補間係数Kが算出される場合、その演算の前処理として、算出タイミングの判定を行なう。
【0034】
T1タイマは、前記補間係数算出タイミングT1で0となるものとし、ステップ14aでは、演算周期毎にT1タイマが0であるか否かを判定する。T1タイマが0でない場合は、ステップ14cで、補間係数Kの更新は行なわずに前回値を保持し、同時に、ステップ14dで、T1タイマ値をダウンカウントして処理を終了する。ステップ14aで、T1タイマが0と判定された場合には、即ち前記マップ及びテーブル等で設定された算出タイミングT1分の時間が経過した時点では、ステップ14bで、補間係数Kの算出し、値の更新を行なう。更に、ステップ14eで、次回の補間係数算出タイミングT1をT1タイマに初期化処理を実施する。
【0035】
図14は、ディレイ付き補間係数K演算のタイムチャートを示したものである。図中に示すように、演算ディレイなし時には、状態A及び状態Bに応じて破線の軌跡で動作する。これに対してディレイ付きとした場合には、状態がA→BまたはB→Aに切換わった時点から図中に示す演算ディレイZ1が経過するまで補間係数Kの更新は行なわない。図中で実線で示す動作であり、これにより頻繁に状態移行方向が変化した場合においても、最終制御値Cの応答性を可変にすることが可能となり、また最終制御値Cの変化幅についても小さく抑えることができる。
【0036】
図15は、ディレイ付き補間係数Kを演算するための制御フローチャートを示したものである。最初に、ステップ16aで、状態判定により状態移行方向が反転したか否かを判定する。判定結果より反転したと判定された場合には、その時点で、ステップ16cで演算ディレイをカウントするT2タイマに、演算ディレイ初期値Z1を設定する。ステップ16aで、反転が発生していないと判定された場合には、ステップ16bに進み、T2タイマに設定されたディレイ値をダウンカウントしていく。次に、ステップ16dでは、演算ディレイをカウントするT2タイマが0であるか否か、即ち、状態移行方向が反転してから演算ディレイZ1が経過したかを判定する。
【0037】
ここで、ステップ16b、16cでのT2タイマの処理は、初期値0設定のアップカウント処理とし、処理16dは、演算ディレイZ1との比較としてもよい。ステップ16dで、ディレイZ1が、未経過と判定された場合(T2タイマ≠0)は、ステップ16jで、補間係数Kへの所定刻み値Dの付加を行なわずに、前回値を保持しておく。ステップ16dで、ディレイZ1経過後と判定した場合(T2タイマ=0)は、ステップ16eにて、状態の移行方向を判定する。状態の移行方向が判定された場合は、判定結果によりステップ16f、16hにて、補間係数Kに、所定刻み値Dを減算もしくは加算して補間係数Kの値を更新する。ステップ16gとステップ16iでは、付加処理として補間係数Kがその上下限値を越えないように、アンダーフロー処理もしくはオーバーフロー処理を実施する。これにより、図14で示したディレイ付きの補間係数Kの演算が実現可能となる。
【0038】
図16は、スライスレベル付き補間係数Kの動作例を示したものである。補間係数Kは、演算タイミングで所定刻み値Dを付加して更新していくが、その値が所定のスライスレベルを超えた、あるいは下回ったときは、別設定されている刻み値を用いて、補間係数Kの更新を行なうものである。図中に示すスライスレベルSL1とSL2の間の領域では、所定刻み値Dを用いるが、その領域以外では、所定刻み値Dに替えて、別設定の刻み値D1,D2を用いて補間係数Kを算出する。補間係数Kの傾き(変化率)は、所定刻み値Dにより一定であるが、このスライスレベルを設けることにより可変にでき、制御自由度を向上することが可能である。
【0039】
図17は、エンジンの燃焼状態の変更に伴う燃料圧力の変化の状態の一例を示したものである。筒内噴射エンジンにおいては、ストイキ(均質燃焼)と希薄空燃比(成層燃焼)との燃焼状態の差異により、要求燃料圧力値は異なることとなる。
そこで、図17に示すように、燃焼状態が、均質から成層燃焼に切換わった場合、前記補間係数Kを用いて、目標の燃圧(燃料圧力)値を滑らかに変化させる。これにより急激な燃圧(実燃圧)の切換わりを回避することができ、発生する失火及びショック等を抑えることが可能となる。また、燃圧の変化が滑らかであれば、燃料噴射量に与える燃圧分の補正率に関しても真値を検出しやすくなるため、制御性の向上が図れる。
【0040】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明の補間制御手段を備えたエンジン制御装置は、前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、設計において種々の変更ができるものである。
例えば、前記実施形態においては、エンジンの燃焼運転制御について説明したが、本発明の補間制御手段を備えたエンジン制御装置は、該燃焼運転制御に限らず、エンジンの他の運転制御において一つの制御値から他の制御値への選択移行を行う制御にも当然適用できるものであり、かつ、エンジンのみならず、図1に示す車両等の走行駆動の変速機126の制御装置125の制御にも適用できるものである。
【0041】
【発明の効果】
以上の記載から理解されるように、本発明の補間制御手段を備えたエンジン制御装置は、要求の異なる二つの制御値間を補間する補間制御手段を備えたので、運転状態の違いにより制御値を変更するエンジン制御において、運転状態が切換わるとき、前記異なる二つの制御値間の変更を、滑らかに且つ連続的に変化させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の補間制御手段を備えたエンジン制御装置の一実施形態のエンジンシステムの全体構成図。
【図2】図1のエンジン制御装置(第一コントロールユニット)の内部の主要構成部を示す図。
【図3】図1のエンジン制御装置の補間制御手段の概略制御ブロック図。
【図4】図3のエンジン制御装置の制御値A,B算出手段の制御マップの一例を示す図。
【図5】図3のエンジン制御装置の制御値A,B算出手段の制御マップの他の一例を示す図。
【図6】図3のエンジン制御装置の目標燃圧値TFPのマップ設定値の一例を示す図。
【図7】図3のエンジン制御装置の制御フローチャート。
【図8】図3のエンジン制御装置の状態移行中のタイムチャート。
【図9】図3のエンジン制御装置の状態移行中の他のタイムチャート。
【図10】図3のエンジン制御装置の補間係数Kの算出例を示す図。
【図11】図3のエンジン制御装置の所定刻み値Dのマップ設定の一例を示す図。
【図12】図3のエンジン制御装置の補間係数算出タイミングT1のマップ設定の一例を示す図。
【図13】図3のエンジン制御装置の補間係数K演算タイミングのフローの一例を示す図。
【図14】図3のエンジン制御装置のディレイ付き補間係数K演算のタイムチャートを示す図。
【図15】図3のエンジン制御装置のディレイ付き補間係数Kを演算する制御フローチャート。
【図16】図3のエンジン制御装置のスライスレベル付き補間係数Kの動作例を示す図。
【図17】図3のエンジン制御装置のエンジンの燃焼状態の変更に伴う燃料圧力の変化の状態を示す図。
【符号の説明】
115 第一コントロールユニット(エンジン制御装置)
300 補間制御手段
301 制御値算出手段(制御値A、目標燃圧値)
302 制御値算出手段(制御値B、目標燃圧値)
303 最終制御値算出手段(最終目標燃料圧力値算出手段)
304 状態判定手段
305 制御量補間係数算出手段
Claims (9)
- エンジン負荷相当量もしくは該エンジン負荷相当量とエンジン回転数より各燃焼運転状態での目標燃料圧力値を算出する手段と、前記燃焼運転状態の切換わりを判定する手段と、該切換わる燃焼運転状態を内分比して置き換える前記目標燃料圧力値の補間係数を算出する手段と、前記目標燃料圧力値と前記補間係数とから最終的な目標燃料圧力値を算出する手段とを有する補間制御手段を備え、前記目標燃料圧力値を算出する手段は、切換え前の目標燃料圧力値と切換え後の目標燃料圧力値を、前記燃焼運転状態の切換わり状態に応じて算出される補間係数で補間して、目標燃料圧力値の切換えを行なうことを特徴とする補間制御手段を備えたエンジン制御装置。
- 前記補間係数は、前記運転切換わり状態に応じて、初期値に任意に設定された所定値を付加して算出されるものであることを特徴とする請求項1に記載の補間制御手段を備えたエンジン制御装置。
- 前記補間係数に付加していく所定値は、前記運転状態に応じてマップもしくはテーブル検索で設定されることを特徴とする請求項1に記載の補間制御手段を備えたエンジン制御装置。
- 前記補間係数に所定値を付加するタイミングは、任意にテーブルあるいはマップ検索で設定できることを特徴とする請求項1に記載の補間制御手段を備えたエンジン制御装置。
- 前記切換え前の目標燃料圧力値と切換え後の目標燃料圧力値の2つの値は、エンジン負荷相当量もしくは該エンジン負荷相当量とエンジン回転数を軸とするマップもしくはテーブル検索で設定できることを特徴とする請求項1に記載の補間制御手段を備えたエンジン制御装置。
- 前記運転状態の切換え開始より所定の遅れ時間を用いて補間係数を算出することを特徴とする請求項1に記載の補間制御手段を備えたエンジン制御装置。
- 前記補間係数は、前記切換え前の状態と切換え後の状態において、上限値及び下限値を備えていることを特徴とする請求項1に記載の補間制御手段を備えたエンジン制御装置。
- 前記補間係数は、所定のスライスレベルを越えたときは、前記所定値とは別の刻み値を付加して補間係数を算出することを特徴とする請求項2に記載の補間制御手段を備えたエンジン制御装置。
- 前記運転状態切換判定手段は、状態切換え中において、その状態の移行方向がどちらであるかを判定し、前記補間係数算出手段は、前記移行方向を考慮して補間係数を算出し、前記目標燃料圧力値を最終的に常に連続的に変化させることを特徴とする請求項1に記載の補間制御手段を備えたエンジン制御装置。
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