JP3818808B2 - セメント混和材及びセメント組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に、土木・建築業界において使用されるセメント混和材及びセメント組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
セメントは安価でしかも、大きなコンクリート構造物を任意の形に造れる優れた材料である。更に、セメント混和材を併用することによって、構造物の強度や耐久性を向上させることが可能である。此までにセメント混和材は数多く提案されているが、最も使用されているものとしては、コンクリートに膨張性を付与するセメント混和材がある。ここで、コンクリートとは、セメントペースト、モルタル及びコンクリートを総称するものである。
【0003】
コンクリート構造物に膨張性を付与するセメント混和材としては、例えば、CaO−Al2O3−SO3系化合物を有効成分とするものが知られている(特公昭42-21840号公報、特公昭42-19473号公報、特公昭53-16007号公報等)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらセメント混和材は、生コンプラントにおいて開袋投入されてコンクリートへ混和されているため、場合によってはセメント混和材が充分に混練されないままに出荷されてしまうことがある。このような場合には、セメント混和材がコンクリート中へ均一に分散せずに塊状になっていることが多く、硬化後のコンクリートにおいて、この塊状のセメント混和材が局所的に異常膨張を起こし、硬化体表面が巨視的に膨れ上がったり、剥離、落下したりする、いわゆるポップアウト現象を引き起こすことが問題視されている。
【0005】
ポップアウト現象を防止する方法としては、膨張材に予め不活性な無機粉末等を混和しておき、セメント混和材が充分に混練されなくても、膨張成分同志が凝集して塊にならず、ある程度の分散が期待できるようにしておく方法が考えられるが、不活性な無機粉末を混和することにより、膨張成分が希釈され、要求性能を付与するためのセメント混和材の配合量が増加してしまうという問題が生じる。
【0006】
最近では、膨張性を付与するセメント混和材に要求される性能は益々高まってきている。即ち、配合量が少なくても優れた膨張性能を付与できるセメント混和材の開発が待たれているのが実状である。従って、ポップアウト現象を防止するためとはいえ、セメント混和材の配合量が増加してしまう方法は有益ではなく、配合量を増加させずにポップアウト現象を防止できる方法を見出す必要がある。
【0007】
一方、コンクリートに防水性を与えるセメント混和材も求められている。そこで、本発明者らは、このような状況を鑑み、前記課題を解消すべく種々検討した結果、特定の膨張物質と、シリカ質微粉末及び/又は石灰石微粉末とを配合することによって前記課題を解消できるセメント混和材が得られるという知見を得て、本発明を完成するに至った。
【0008】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、遊離石灰、カルシウムフェライト、及び無水セッコウを構成化合物とする膨張物質であって、膨張物質 100 重量部中、遊離石灰が 30 〜 60 重量部、カルシウムフェライトが 10 〜 40 重量部、及び無水セッコウが 10 〜 40 重量部である膨張物質と、シリカ質微粉末及び/又は石灰石微粉末とを含有してなるセメント混和材であり、膨張物質が、セメント混和材 100 重量部中、 50 〜 95 重量部である該セメント混和材であり、セメントと、該セメント混和材とを含有してなるセメント組成物であり、セメント混和材が、セメント組成物 100 重量部中、3〜 12 重量部である該セメント組成物であり、セメントと、遊離石灰、カルシウムフェライト、及び無水セッコウを構成化合物とする膨張物質であって、膨張物質 100 重量部中、遊離石灰が 30 〜 60 重量部、カルシウムフェライトが 10 〜 40 重量部、及び無水セッコウが 10 〜 40 重量部である膨張物質と、シリカ質微粉末及び/又は石灰石微粉末とを含有してなるセメント組成物である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
【0010】
本発明の膨張物質は、遊離石灰、カルシウムフェライト及び無水セッコウを含有してなるものであり、その割合については特に限定されるものではないが、膨張物質100重量部中、遊離石灰は30〜60重量部が好ましく、40〜50重量部がより好ましい。カルシウムフェライトは10〜40重量部が好ましく、15〜30重量部がより好ましい。無水セッコウは10〜40重量部が好ましく、20〜35重量部がより好ましい。膨張物質中の各化合物の組成割合が前記の範囲外であると、優れた膨張性能が得られない場合がある。
【0011】
本発明のカルシウムフェライトとは、CaO−Fe2O3系化合物を総称するものであり、特に限定されるものではないが、一般的に、CaOをC、Fe2O3をFとすると、C2FやCF等の化合物がよく知られている。本発明では、膨張性能が良好となることから、C2Fを使用することが好ましく、カルシウムフェライトを以下、C2Fという。
【0012】
本発明の膨張物質を製造する際、CaO原料、Fe2O3原料及びCaSO4原料を熱処理して、遊離石灰、C2F及び無水セッコウからなるクリンカーを合成し、これを粉砕して製造される。遊離石灰、C2F及び無水セッコウを別々に合成し、これらを混合して製造することもできるが、CaO原料、Fe2O3原料及びCaSO4原料を熱処理して製造する方が好ましい。CaO原料、Fe2O3原料及びCaSO4原料を熱処理して、遊離石灰、C2F及び無水セッコウからなるクリンカーを合成してこれを粉砕して製造されたものか否かを確認する方法としては、例えば、粉砕物中の100μm以上の粗粒子について顕微鏡観察等を行い、粒子中に遊離石灰、C2F及び無水セッコウが混在していることを確認することによって判別できる。
【0013】
本発明の膨張物質を製造する際の熱処理温度であるが、1100〜1600℃の範囲が好ましく、1200〜1500℃の範囲がより好ましい。1100℃未満では、得られた膨張物質の膨張性能が十分でなく、1600℃を超えると無水セッコウが分解する場合がある。
【0014】
CaO原料としては、石灰石や消石灰等が挙げられ、Fe2O3原料としては、銅カラミや鉄粉及び市販の酸化鉄等が挙げられ、CaSO4原料としては、二水セッコウ、半水セッコウ及び無水セッコウ等が挙げられる。これら原料中には、各種の不純物が存在し、その具体例としては、SiO2、Al2O3、MgO、TiO2、P2O5、Na2O、K2O等が挙げられ、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲では特に問題とはならないが、これらのうちで、特に、SiO2は珪酸率で0.5未満の範囲であることが好ましい。珪酸率が0.5以上では優れた膨張性能が得られない場合がある。本発明でいう珪酸率とは、膨張物質中のSiO2量、Al2O3量及びFe2O3量より次式から算出される。
珪酸率=SiO2/(Al2O3+Fe2O3)
【0015】
また、膨張物質中のSiO2量は、5.0重量%以下が好ましく、3.0重量%以下がより好ましい。5.0重量%を超えると優れた膨張性能が得られない場合がある。
【0016】
本発明の膨張物質の粒度は、特に限定されるものではないが、通常、ブレーン比表面積で1500〜6000cm2/gが好ましく、2500〜4000cm2/gがより好ましい。1500cm2/g未満では、強度発現性が悪くなる場合があり、6000cm2/gを超えると優れた膨張性能が得られない場合がある。
【0017】
本発明のシリカ質微粉末とは、特に限定されるものではないが、シリカフューム、高炉スラグ、フライアッシュ、ケイソウ土、溶融シリカ等のシリカダスト等を総称するものである。シリカ質微粉末は、ポップアウト現象の抑制効果の他に、コンクリートの防水性を向上させる効果も有する。
【0018】
本発明の石灰石微粉末とは、特に限定されるものではないが、天然に産出する炭酸カルシウムを主成分とする鉱石を総称するものである。石灰石微粉末は、シリカ質微粉末のように、防水性を向上させる効果は有しないが、ポップアウト現象の抑制効果は十分に有し、更に、地域によっては安価に入手できるという利点がある。
【0019】
本発明のシリカ質微粉末及び/又は石灰石微粉末の粒度は、特に限定されるものではないが、通常、ブレーン比表面積で3000cm2/g以上が好ましく、3500cm2/g以上がより好ましい。3000cm2/g未満では、十分なポップアウト現象の抑制効果が得られない場合がある。
【0020】
本発明のセメント混和材中の膨張物質と、シリカ質微粉末及び/又は石灰石微粉末の配合割合は、特に限定されるものではないが、通常、セメント混和材100重量部中、膨張物質は50〜95重量部が好ましく、60〜90重量部がより好ましい。膨張物質が50重量部未満では、十分な膨張性能が得られない場合があり、95重量部を超えると、十分なポップアウト現象の抑制効果や、防水性の向上の効果が得られない場合がある。シリカ質微粉末及び/又は石灰石微粉末は5〜50重量部が好ましく、10〜40重量部がより好ましい。5重量部未満では、十分なポップアウト現象の抑制効果や、防水性の向上の効果が得られない場合があり、50重量部を超えると十分な膨張性能が得られない場合がある。
【0021】
本発明のセメント混和材の配合量は、特に限定されるものではないが、通常、セメントとセメント混和材からなるセメント組成物100重量部中、3〜12重量部が好ましく、5〜9重量部がより好ましい。3重量部未満では本発明の効果が十分に得られない場合があり、12重量部を超えて使用すると、強度発現性が悪くなる場合がある。
【0022】
本発明のセメント組成物とは、JIS R 5210に規定される各種ポルトランドセメント、JIS R 5211、JIS R 5212、或いはJIS R 5213に規定される各種混合セメント、JISに規定された以上の混和材混合率にて作製した高炉セメント、フライアッシュセメント及びシリカセメント、石灰石粉末等を混合したフィラーセメント、並びにアルミナセメント等のうちの1種又は2種以上と、本発明のセメント混和材とを併用したものである。
【0023】
本発明のセメント混和材及びセメント組成物に、砂、砂利等の骨材の他、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、防凍剤、収縮低減剤、高分子エマルジョン、凝結調整剤、セメント急硬材、ベントナイトやゼオライト等の粘土鉱物、ハイドロタルサイト等のイオン交換体のうちの1種又は2種以上を、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で使用することが可能である。
【0024】
本発明において、各材料の混合方法は、それぞれの材料を予め全部混合しておけば特に限定されるものではない。混合装置としては、既存の如何なる装置も使用可能であり、例えば、傾胴ミキサ、オムニミキサ、ヘンシェルミキサ、V型ミキサ及びナウターミキサ等の使用が可能である。
【0025】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
【0026】
実施例1
CaO原料、Fe2O3原料及びCaSO4原料を配合し混合粉砕した後、電気炉を用いて、1350℃で2時間熱処理して表1に示す様々な組成の膨張物質を製造し、ブレーン比表面積3500±200cm2/gに粉砕した。これら膨張物質75重量部と、石灰石微粉末25重量部とを混合してセメント混和材とし、セメントとセメント混和材からなるセメント組成物100重量部中、セメント混和材を7重量部配合し、単位セメント組成物量=300kg/m3、水/セメント組成物比=62%、s/a=45%のコンクリートを調製して膨張率の測定及びポップアウト試験を行った。試験結果を表2に示す。尚、膨張物質を粉末X線回折法(XRD)により同定し、遊離石灰、C2F及び無水セッコウを主要な構成化合物とすることを確認した。また、化学組成は化学分析の結果により求め、化合物組成は化学分析の結果より、計算によって算出した。
【0027】
<使用材料>
CaO原料:試薬特級炭酸カルシウム
Fe2O3原料:試薬1級酸化鉄
CaSO4原料:試薬特級無水セッコウ
セメント:市販普通ポルトランドセメント
石灰石微粉末:新潟県青海鉱山産石灰石をブレーン比表面積5000cm2/gに粉砕したもの。
水:水道水
砂:新潟県姫川産、比重2.62
砂利:新潟県姫川産、比重2.64
【0028】
<測定方法>
化学分析:JIS R 5202に準じて測定。
化合物組成:遊離石灰含有量をJIS R 5202に準じて測定し、それ以外の化合物については計算によって求めた。即ち、Fe2O3量からC2F量を算出し、次いで、SO3量から無水セッコウ量を算出した。
膨張率:JIS A 6202 Bに準じて測定。
ポップアウト試験:セメント混和材以外の材料で予めコンクリートを調製しておき、傾胴ミキサにこのコンクリートを入れ、12回転/分の速さでミキサをアジテートしながらセメント混和材を後添加し、10分間後に排出して、縦1m、横50cm、高さ10cmの型枠内へ打設しポップアウト現象を観察した。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
表2より、本発明のセメント混和材は、膨張性能に優れ、しかもポップアウト現象を防止していることが判る。
【0032】
実施例2
工業原料であるCaO原料、Fe2O3原料及びCaSO4原料を配合して、ロータリーキルンを用いて、焼点温度1400℃で熱処理することによって、表3に示す組成の膨張物質を製造したこと以外は、実施例1と同様に行った。表4に膨張物質の化学組成から算出した化合物組成を示し、モルタルの膨張率の測定結果を表5に示す。尚、比較のために、市販の2種類の膨張材についても同様の実験を行った。
【0033】
<使用材料>
CaO原料:新潟県青海鉱山産石灰石
Fe2O3原料:工業用酸化鉄
CaSO4原料:タイ産天然無水セッコウ
膨張材A:市販カルシウムサルホアルミネート系膨張材
膨張材B:市販生石灰系膨張材
【0034】
【表3】
【0035】
【表4】
【0036】
【表5】
【0037】
表5より、本発明のセメント混和材は、膨張性能に優れ、しかもポップアウト現象を防止していることが判る。
【0038】
実施例3
実施例2の本発明の膨張物質を使用し、表6に示すシリカ質微粉末の種類と量を変えてセメント混和材としたこと以外は、実施例2と同様に行った。尚、防水性試験も併せて実施した。その結果を表6に併記する。
【0039】
<使用材料>
シリカ質微粉末▲1▼:市販の高炉スラグをブレーン比表面積5000cm2/gに粉砕したもの。
シリカ質微粉末▲2▼:市販のシリカフューム、ブレーン比表面積200000cm2/g。
シリカ質微粉末▲3▼:市販のフライアッシュをブレーン比表面積5000cm2/gに粉砕したもの。
シリカ質微粉末▲4▼:市販のケイソウ土をブレーン比表面積5000cm2/gに粉砕したもの。
シリカ質微粉末▲5▼:シリカ質微粉末▲1▼とシリカ質微粉末▲2▼の等量混合物、ブレーン比表面積102500cm2/g。
シリカ質微粉末▲6▼:シリカ質微粉末▲2▼と実施例1で使用した石灰石微粉末の等量混合物、ブレーン比表面積102500cm2/g。
【0040】
<測定方法>
防水性試験:φ15×30cm、中心孔の直径2.0cmの円空供試体を作製し、材齢1日で脱型後、材齢7日までの6日間水中養生を施した後、透水性試験を実施した。試験はアウトプット方法とし、試験体外側から水圧10kg/cm2を48時間加え、中心孔からにじみ出る水量を測定し、セメント混和材を混和しないコンクリートの透水量を100とした時の相対値を透水比として表した。
【0041】
【表6】
【0042】
表6より、本発明のセメント混和材は、膨張性能に優れ、しかもポップアウト現象を防止し、防水性が高いことが判る。
【0043】
実施例4
実施例3の本発明の膨張物質75重量部とシリカ質微粉末▲2▼25重量部からなるセメント混和材を使用し、セメント組成物100重量部中、セメント混和材の配合量を表7に示すように変えたこと以外は、実施例3と同様に行った。その結果を表7に併記する。
【0044】
【表7】
【0045】
表7より、本発明のセメント混和材を配合したコンクリートは、配合量が増加するに伴い膨張率は高まり、ポップアウト現象を防止すると共に、防水性が向上することが判る。
【0046】
【発明の効果】
本発明のセメント混和材は、配合量が少なくても、優れた膨張性能を付与し、ポップアウト現象の防止、防水性の向上が可能である。
Claims (5)
- 遊離石灰、カルシウムフェライト、及び無水セッコウを構成化合物とする膨張物質であって、膨張物質 100 重量部中、遊離石灰が 30 〜 60 重量部、カルシウムフェライトが 10 〜 40 重量部、及び無水セッコウが 10 〜 40 重量部である膨張物質と、シリカ質微粉末及び/又は石灰石微粉末とを含有してなるセメント混和材。
- 膨張物質が、セメント混和材 100 重量部中、 50 〜 95 重量部である請求項1記載のセメント混和材。
- セメントと、請求項1又は請求項2記載のセメント混和材とを含有してなるセメント組成物。
- セメント混和材が、セメント組成物 100 重量部中、3〜 12 重量部である請求項3に記載のセメント組成物。
- セメントと、遊離石灰、カルシウムフェライト、及び無水セッコウを構成化合物とする膨張物質であって、膨張物質 100 重量部中、遊離石灰が 30 〜 60 重量部、カルシウムフェライトが 10 〜 40 重量部、及び無水セッコウが 10 〜 40 重量部である膨張物質と、シリカ質微粉末及び/又は石灰石微粉末とを含有してなるセメント組成物。
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