JP3818495B2 - 磁気記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は磁気記録媒体に関する。さらに詳しくは、表面平滑性に優れるとともに、非磁性層(非磁性下層、下層)の分散性に優れ、高周波領域の電磁変換特性、耐久走行性に優れ、特に低湿環境下での出力劣化の改善性に優れた塗布型の磁気記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、大容量の記憶装置の普及に伴い、磁気記録媒体の高密度化が要望されるようになり、磁性層の高充填化、薄層化、および平滑化が求められている。しかしながら、磁性層の高充填化、薄層化、平滑化は、他方で磁気記録媒体としての物性の劣化をもたらすという問題がある。これに対する方策として、磁性層の下層として非磁性層を別途設け、上記不具合を防止しようとすることが一般に行われている。
【0003】
例えば特開昭59−207027号公報では、放射線感応硬化樹脂と充填剤を含有したものを放射線により硬化させた下層を用いることにより、層間粘着を防止し、磁性層の高充填化、耐摩耗性向上、媒体の表面性の向上を図ろうとする技術が開示されている。しかしながら該公報のものは、下層の分散性、表面性が十分でなく、また、上・下層の塗膜の物性についても、高温から低温までの環境で十分に高い信頼性が得られない。
【0004】
特開平11−213379号公報では、極性基をもつ二種類の電子線(EB)硬化樹脂を組み合わせて下層に用いること、および上・下層の塗膜のガラス転移温度(Tg)を規定することにより、下層でのカーボンブラック等の無機顔料の分散性向上、上層での電磁変換特性の向上、エラーレートの低下を図った高信頼性の磁気記録媒体を得る技術が開示されている。しかし、今日のさらなる高分散性、高表面性を要求される磁気記録媒体においては、より一層の分散性の向上、高表面性への対応が求められている。
【0005】
特開平5−182177号公報では、非磁性下層に用いる無機質粉末を酸化物で表面処理することにより分散性を高め、かつ塗料物性を安定化させることで高電磁変換特性と高信頼性の磁気記録媒体を得る技術が開示されている。しかしながら該公報の技術では、無機質粉末の粒径(針状粉末では短軸長)が30nm程度以下の微小粉末(例えば、短軸長30nm以下程度の針状α−酸化鉄)を用いた場合、無機物の表面処理だけでは十分な効果が得られないことが多い。
【0006】
特開平8−306032号公報では、非磁性下層の分散剤としてリン含有の有機化合物を用いて下層の分散性を上げ、電磁変換特性を向上させ、かつ遊離の脂肪酸の量をふやして磁気記録媒体の物性の向上を図った技術が開示されている。しかしながら、電気抵抗を得るために必須の成分であるカーボンブラックは、他の無機顔料と分散性が異なる場合が多い。該公報ではこれら分散性の違いについての考慮はなされておらず、用いるカーボンブラックの種類によっては下層の分散性が劣ってしまう場合がある。
【0007】
特許第2602273号公報では、塩基性末端基を有する有機色素を分散剤として用い、該分散剤とカーボンブラックを結合剤中に含むカーボンブラック分散体を、バック層または中間層として設けた磁気記録媒体が開示されている。そして同公報に具体的に示される中間層は、カーボンブラックの単独配合で他の非磁性粉末を含まない構成をなし、結合剤としてニトロセルロース樹脂を含むものである。しかしながら、カーボンブラックの単独配合で他の非磁性粉末を含まない中間層(下層)は、それ自体の表面粗さは良好でも、その上に重層される磁性層の加工性が劣り、磁気記録媒体特性にとって特に重要な磁性層の表面粗さに劣ったり、媒体のヤング率(媒体のコシ)が低くなってしまうなど十分な電磁変換特性や物性が得られない。また、中間層に結合剤としてニトロセルロース樹脂を結合剤全量に対して20重量%程度以上配合した場合、中間層塗料の分散性が十分とはいえず、近年の高密度磁気記録媒体に求められるレベルの表面平滑性を得ることは困難である。
【0008】
このように、支持体上に下層を設けること、および該下層に含まれる物質を検討することにより磁気記録媒体の特性向上を図るという方策においては、種々の方法が提示されているが、近年の磁気記録媒体の高密度化の要望に応えるべく、非磁性下層の分散性をさらに上げることにより、電磁変換特性を向上させ高記録密度化を図り、かつ走行耐久性に優れる磁気記録媒体の開発が望まれている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、表面平滑性に優れるとともに、非磁性層(下層)の分散性に優れ、高周波領域の電磁変換特性、耐久走行性に優れ、さらに低湿環境下での出力劣化の改善性にも優れる磁気記録媒体を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、磁気記録媒体の非磁性層(非磁性下層、下層)中に、カルボキシル基を含有する分子量200以下の芳香族系化合物を配合することにより非磁性層の分散性を向上させることができ、これにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち上記課題を解決するために下記の各発明が提供される。
【0012】
(1)非磁性支持体の少なくとも一方の面上に、非磁性粉末(ただし、α−FeOOH粒子を含まない)を含有する無機顔料を結合剤中に分散してなる非磁性層と、該非磁性層上に鉄(Fe)を主成分とする磁性粉末を含む磁性層を設けてなる磁気記録媒体であって、
前記非磁性粉末としてα−酸化鉄を用い、
前記非磁性層中に、ニトロ安息香酸、フタル酸、サリチル酸、フェノキシ酢酸の中から選ばれる1種または2種以上の、カルボキシル基を含有する分子量200以下の芳香族系化合物を含有することを特徴とする磁気記録媒体。
また、無機顔料がカーボンブラックを含む、上記磁気記録媒体。
また、カルボキシル基を含有する分子量200以下の芳香族系化合物がフタル酸である、上記磁気記録媒体。
【0013】
(2)カルボキシル基を含有する分子量200以下の芳香族系化合物を無機顔料に対し1〜10重量%の割合で含有する、上記磁気記録媒体。
【0014】
(3)非磁性層中に、さらに塩基性末端基を有する有機色素化合物を含有する、上記磁気記録媒体。
【0015】
(4)非磁性層中の結合剤が、電子線硬化性樹脂を少なくとも含む、上記磁気記録媒体。
【0016】
(5)前記電子線硬化性樹脂として、塩化ビニル系樹脂とウレタン樹脂を少なくとも含む、上記磁気記録媒体。
【0017】
(6)前記塩化ビニル系樹脂がイオウ(S)含有極性基を有する電子線硬化性の塩化ビニル系樹脂である、上記磁気記録媒体。
【0018】
(7)前記ウレタン樹脂がリン(P)含有極性基を有する電子線硬化性のウレタン樹脂である、上記磁気記録媒体。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
【0020】
本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体の少なくとも一方の面上に、無機顔料を結合剤中に分散してなる非磁性層(下層)と、該非磁性層上に鉄(Fe)を主成分とする磁性粉末を含む磁性層(上層)を設けている。そして、上記非磁性層中に、分散剤として、カルボキシル基を含有する分子量200以下の芳香族系化合物を分散剤として含有する。
【0021】
カルボキシル基を含有する分子量200以下の芳香族系化合物としては、特に限定されるものでないが、一般に分散剤として要求される特性を満たす必要がある。このような特性として、例えば(i)高固形分濃度での混練が可能であること、および、(ii)分散工程後半で投入される潤滑剤等の添加剤、例えばステアリン酸やミリスチン酸等の高級脂肪酸より非磁性粉末(無機顔料)への吸着能が高く、吸着スピードが早いこと、等が挙げられる。
【0022】
上記(i)を満足するには、芳香族系化合物の場合、ベンゼン環を有していれば混練助剤となり得る。しかし上記(ii)を満足するには、分子量がステアリン酸やミリスチン酸の高級脂肪酸より小さいことや、pKa(酸解離定数)がこれら高級脂肪酸より低いことが必要である。
【0023】
このような点から、本発明では、上記芳香族系化合物としてニトロ安息香酸、フタル酸(o−、m−、p−)、サリチル酸、フェノキシ酢酸が用いられる。中でもフタル酸(o−、m−、p−)が特に好ましい。
【0024】
上記のカルボキシル基を含有する分子量200以下の芳香族系化合物は、非磁性層に含まれる非磁性粉末、カーボンブラック、研磨剤等の無機顔料の分散性向上およびそれによる磁気記録媒体の特性向上のために非磁性層中に配合されるが、その目的達成のためには、該芳香族系化合物を、無機顔料に対し1〜10重量%の割合で配合するのが好ましく、特には2〜8重量%である。
【0025】
カルボキシル基を含有する分子量200以下の芳香族系化合物を分散剤として配合することによる磁気記録媒体の特性向上の理由については、その詳細については定かではないが、おそらく以下のようなことであろうと推測される。すなわち、上記特定の芳香族化合物を分散剤として配合すると、非磁性下層に含まれる無機顔料の反応点に上記特定の芳香族化合物(分散剤)が堅固にかつ数多く吸着する。さらに、分散の後工程で添加される潤滑剤(脂肪酸)等のカルボキシル基よりも上記芳香族化合物のカルボキシル基の方が無機顔料に対する吸着能が高いため、これら潤滑剤が無機顔料の反応点に吸着できなくなる(競争吸着)。そのため、非磁性層の分散状態が安定するのみならず、上記競争吸着による遊離の脂肪酸が非磁性層中にふえ、これが上層磁性層に滲出して上層で潤滑剤として作用し、これにより摩擦力が低下し、出力劣化を抑えられるからであろうと思われる。
【0026】
特に、非磁性下層は磁性層に比べて膜厚が厚いため、カルボキシル基を含有する分子量200以下の芳香族化合物の非磁性下層への配合は、磁気記録媒体中の遊離脂肪酸の絶対量をふやすこととなり、それだけ上記効果をより一層顕著に奏することとなる。
【0027】
本発明では、非磁性層中に分散剤としてさらに塩基性末端基を有する有機色素化合物を配合するのが好ましい。
【0028】
塩基性末端基を有する有機色素化合物としては、塩基性の極性基を末端に有する有機色素化合物であれば特に限定されることなく、任意に用いることができる。
【0029】
有機色素化合物の原料となる有機色素としては、一般に使用されている染料または顔料を使用することができる。例えばアントラキノン系色素、アゾ系色素、フタロシアニン系色素、キナクリドン系色素などである。
【0030】
塩基性末端基を有する有機色素化合物は、例えば特許第2602273号公報に示されるものなどを用いることができ、具体的には下記一般式(I)、一般式(II)で示すものが好ましいものとして例示される。
【0031】
[一般式(I)で表される有機色素化合物]
【0032】
【化1】
【0033】
上記一般式(I)中、各符号は以下の意味を示す。
【0034】
Q:有機色素残基
X:直接結合、−CONH−Y2−、−SO2NH−Y2−、または−CH2NHCOCH2NH−Y2−(ただしY2は置換基を有してもよいアルキレン基またはアリーレン基)
Y1:−NH−または−O−
Z:水酸基、アルコキシ基、または下記化2で示す基(化2の式中、Y3は−NH−または−O−)、あるいはn=1の場合Q−X−NH−であってもよい
【0035】
【化2】
【0036】
R1、R2:それぞれ独立に置換若しくは非置換のアルキル基、またはR1とR2とで少なくともヘテロ環を形成してもよい
m:1〜6の整数
n:1〜4の整数
[一般式(II)で表される有機色素化合物]
【0037】
【化3】
【0038】
上記一般式(II)中、各符号は以下の意味を示す。
【0039】
Q:有機色素残基
X:直接結合、−CONH−Y2−、−SO2NH−Y2−、または−CH2NHCOCH2NH−Y2−(ただしY2は置換基を有してもよいアルキレン基またはアリーレン基)
Y:下記化4で示す基(化4の式中、R1、R2:それぞれ独立に置換若しくは非置換のアルキル基、またはR1とR2とで少なくともヘテロ環を形成してもよい。mは1〜6の整数)
【0040】
【化4】
【0041】
n:1〜4の整数
上記一般式(I)、(II)中、Qはそれぞれ用いる有機色素によって異なるが、本発明ではアゾ系色素、フタロシアニン系色素等が特に好ましい。
【0042】
上記において、好ましい塩基性末端基の具体例として、以下の化5〜7で示す基が例示的に挙げられる。
【0043】
【化5】
【0044】
【化6】
【0045】
【化7】
【0046】
本発明に用いられる塩基性末端基を有する有機色素化合物の代表例としては、下記の化8で示す化合物(アゾ系有機色素化合物)や、化9で示す化合物(フタロシアニン系有機色素化合物)等が例示される。
【0047】
【化8】
【0048】
【化9】
【0049】
なお、塩基性末端基を有する有機色素化合物は、別分散(後述)を行う場合、無機顔料の中の特にカーボンブラックの分散剤として好ましく用いられること等から、カーボンブラックとのなじみ性が高いパイ電子を多くもつ有機色素系顔料や染料を骨格にもつものが好ましい。この場合、パイ電子により該有機色素化合物がカーボンブラック間に進入し、続いて塩基性極性基により分散に寄与することとなる。
【0050】
塩基性末端基を有する有機色素化合物を配合する場合、カルボキシル基を含有する分子量200以下の芳香族系化合物と塩基性末端基を有する有機色素化合物は、カルボキシル基を含有する分子量200以下の芳香族系化合物と、塩基性末端基を有する有機色素化合物を、25:1〜2:1(重量比)、特には20:1〜3:1(重量比)の割合で非磁性層中に配合するのが好ましい。
【0051】
非磁性層中には、非磁性粉末、カーボンブラック、研磨剤等の無機顔料のほか、溶剤、潤滑剤等が結合剤中に分散されている。
【0052】
本発明では、非磁性層中の結合剤が、電子線硬化性樹脂を少なくとも含むものであるのが好ましい。分散剤としてカルボキシル基を含有する分子量200以下の芳香族系化合物を用いることから、該分散剤を無機顔料の反応点より過剰に添加した場合、余剰分の分散剤の−COOHと硬化剤(イソシアネート基含有化合物、等)の−NCOが反応する可能性がある。そのため上記分散剤の配合量は上述した好適範囲内とするのが望ましく、さらには、分散剤としてのカルボキシル基を含有する分子量200以下の芳香族系化合物は、イソシアネート基含有の硬化剤を添加しない電子線硬化型樹脂を用いたバインダー系への適用が好ましい。
【0053】
かかる電子線硬化性樹脂としては、塩化ビニル系樹脂とウレタン樹脂を少なくとも含有するのが好ましい。本発明では特に、イオウ(S)含有極性基を有する電子線硬化性の塩化ビニル系樹脂と、リン(P)含有極性基を有する電子線硬化性ウレタン樹脂を少なくとも含有するものが好ましく用いられる。
【0054】
上記塩化ビニル系樹脂が含有するイオウ含有極性基(「S含有極性基」)としては、特に硫酸基および/またはスルホ基が望ましい。
【0055】
硫酸基およびスルホ基としては、−SO4Y、−SO3Y(YはHまたはアルカリ金属)において、−SO4K、−SO3K(すなわちY=カリウム)のものが特に望ましい。これら硫酸基、スルホ基は、いずれか一方を含有するものであっても、あるいは両者を含有するものであってもよく、両者を含むときにはその比は任意である。
【0056】
これらS含有極性基は、S原子換算で分子中に0.01〜10重量%、特には0.1〜5重量%含まれていることが好ましい。
【0057】
これらのS含有極性基が結合する樹脂骨格は塩化ビニル系樹脂である。塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニル含有量が60〜100重量%、特には60〜95重量%のものが好ましい。
【0058】
このような塩化ビニル系樹脂としては、例えば塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体等が挙げられる。中でも、塩化ビニルとエポキシ基を含有する単量体との共重合体が特に好ましい。そして、その平均重合度は100〜900程度が好ましい。
【0059】
また、この塩化ビニル系樹脂は、S含有極性基に加え、不飽和二重結合を有するが、不飽和二重結合としては、アクリル基CH2=CH−COO−、メタクリル基CH2=CHCH3COO−を含有するのが好ましい。これらの(メタ)アクリル基は、分子中に平均で1〜20個、特には2〜10個程度存在することが好ましい。また、この(メタ)アクリル基は1つのウレタン結合を介して塩化ビニル系樹脂骨格に結合するのが好ましい。
【0060】
このようなS含有極性基を有する塩化ビニル系樹脂を電子線硬化性のものとするためには、以下のようにするのが好ましい。
【0061】
すなわち、まず、S含有極性基を有し、さらに水酸基を含有する原料塩化ビニル系樹脂を用意する。この原料塩化ビニル系樹脂の水酸基の数は1分子中に3〜60個、好ましくは2〜30個である。極性基としては、S含有極性基のほかに必要に応じ、−OPO3Y、−PO3Y、−COOY(Yは、Hまたはアルカリ金属)、アミノ基(−NR3)、−NR3Cl(RはH、メチル基、エチル基)等を含有させることもできる。
【0062】
このような原料塩化ビニル系樹脂としては、例えば、特開昭60−238371号公報、同60−101161号公報、同60−235814号公報、同60−238306号公報、同60−238309号公報等に開示されたものが好適である。
【0063】
これら原料塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニル、エポキシ基を有する単量体、さらに必要に応じて、これらと共重合可能な他の単量体を過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等のSを含む強酸根を有するラジカル発生剤の存在下に重合して得ることができる。このラジカル発生剤は、単量体に対して通常は0.3〜9.0重量%、好ましくは1.0〜5.0重量%の割合で用いられる。
【0064】
なお、Sを含む強酸根を有するラジカル発生剤は水溶性のものが多いので、乳化重合あるいはメタノール等のアルコールを重合媒体とする懸濁重合やケトン類を溶媒とする溶液重合が好適である。
【0065】
ここで、Sを含む強酸根を有するラジカル発生剤に加えて、一般に塩化ビニルの重合に用いられるラジカル発生剤を用いてもよい。これらのラジカル発生剤としては、例えばラウロイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカーボネト、ジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルペルオキシジカーボネート、t−ブチル−ペルオキシピパレート、t−ブチル−ペルオキシネオデカノエート等の有機過酸化物;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルパレロニトリル、4,4’−アゾビス−4−シアノパレリン酸等のアゾ化合物等が挙げられる。また、強酸根を有するラジカル発生剤に、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム等の還元剤を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
上記の重合反応において用いられ得る懸濁安定剤としては、例えばポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルの部分ケン化物、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、マレイン酸−スチレン共重合体、マレイン酸−メチルビニルエーテル共重合体、マレイン酸−酢酸ビニル共重合体等の合成高分子物質;デンプン、ゼラチン等の天然高分子物質等が挙げられる。
【0067】
また乳化剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等のアニオン性乳化剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル等の非イオン性乳化剤等が挙げられる。
【0068】
また、必要に応じてトリクロルエチレン、チオグリコール等の分子量調整剤を用いることもできる。
【0069】
上記のエポキシ基を有する単量体としては、アリルグリシジルエーテル、メタクリルグリシジルエーテル等の不飽和アルコールのグリシジルエーテル類;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジル−P−ビニルベンゾエート、メチルグリシジルイタコネート、グリシジルエチルマレート、グリシジルビニルスルホネート、グリシジル(メタ)アリルスルホネート等の不飽和酸のグリシジルエステル類;ブタジエンモノオキシド、ビニルシクロヘキセンモノオキシド、2−メチル−5,6−エポキシヘキセン等のエポキシドオレフィン類等が挙げられる。このエポキシ基を有する単量体は、一般に共重合体中のエポキシ基の量が0.5重量%以上となる範囲で使用される。
【0070】
塩化ビニルとエポキシ基を有する単量体のほかに、必要に応じて用いることのできる単量体としては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル;メチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテル等のビニルエーテル;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のビニリデン;マレイン酸ジエチル、マレイン酸ブチルベンジル、マレイン酸ジ−2−ヒドロキシエチル、イタコン酸ジメチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル等の不飽和カルボン酸エステル;エチレン、プロピレン等のオレフィン;(メタ)アクリロニトリル等の不飽和ニトリル;スチレン、α−メチルスチレン、P−メチルスチレン等の芳香族ビニル等が挙げられる。
【0071】
このようにして得られる原料塩化ビニル系樹脂は、平均重合度が100〜900、特には200〜500で、塩化ビニルの含有量が60重量%以上のものが好ましい。なお、このような原料塩化ビニル系樹脂は、例えば「MR−110」(日本ゼオン(株)製)等として市販されている。
【0072】
かかる原料塩化ビニル系樹脂は、その後、電子線変性を施される。
【0073】
一般的に熱硬化型の塩化ビニル系樹脂を電子線硬化型に変性する方法としては、水酸基やカルボン酸基を有する樹脂に対し、(メタ)アクリル基とカルボン酸無水物あるいはジカルボン酸を有する化合物を反応させてエステル変性する方法と、トリレンジイソシアネート(TDI)と2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(2−HEMA)との反応物(アダクト)とを反応させてウレタン変性する方法がよく知られている。
【0074】
しかし、エステル変性は一般に塗膜が脆くなってしまうため、塩化ビニル系樹脂に適用するのは好ましくない。また、従来からよく用いられている上記のイソシアネートとアクリレートとのアダクト(TDI−2−HEMA)は分子内にすでにウレタン結合を有するため、アクリル二重結合を末端にもつ分岐分子鎖中にはウレタン結合が2個存在してしまう。そして、この2個のウレタン結合の存在と、長い鎖長とが分散性を低下させてしまうため、高分散性が必要な場合不適である。
【0075】
上記のような理由から、本発明において電子線変性を行うには、エチレン性不飽和二重結合を1個以上およびイソシアネート基1個を1分子中に有し、かつウレタン結合を分子中にもたないモノマーを用いることが好ましい。このようなモノマーとしては、2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレート等がある。イソシアネートエチルアクリレートは分子内にウレタン結合をもたないので、電子線変性した塩化ビニルの分岐分子鎖中には1つのウレタン結合が存在するのみであり、分岐鎖も短いので、本来持っている骨格の塩化ビニルの分散性を低下させない。しかも分子主鎖内にはウレタン結合が存在するので、塩化ビニル系樹脂の混合比率を上げても塗膜が脆くなることもない。
【0076】
このように、水酸基およびS含有極性基を有する原料塩化ビニル系樹脂とモノマーとの反応によるウレタン結合によりエチレン性不飽和二重結合を導入するが、原料塩化ビニル系樹脂とモノマーのモル比によって電子線硬化性を自由に設計することができる。しかしながら上述したようにウレタン結合濃度を上げすぎると分散性の低下を生じる。そこで分散性と硬化性のバランスをとると、原料塩化ビニル系樹脂1分子あたり1〜20個、好ましくは2〜10個のモノマーを反応させることにより分散性、硬化性ともに優れた電子線硬化性塩化ビニル系樹脂を得ることができる。
【0077】
原料塩化ビニル系樹脂とモノマーとの反応は、必要に応じて反応に関与しない公知の有機溶剤に水酸基およびその他の極性基を有する塩化ビニル系共重合体を溶解させ、公知のウレタン化反応触媒を用い、公知のラジカル重合禁止剤、例えばハイドロキノンを用い、反応温度60℃以下で行われる。
【0078】
なお、このようなS含有極性基を有する電子線硬化性塩化ビニル系樹脂は、例えば「TB−0246」(東洋紡績(株)製)等として市販されている。
【0079】
上記塩化ビニル系樹脂と併用されるウレタン樹脂はリン含有極性基(「P含有極性基」)を含有するものが好ましく用いられる。
【0080】
P含有極性基としては、ホスホン酸基=PO3Y、ホスフィン酸基=PO2Y、亜ホスフィン酸基=POY(YはHまたはアルカリ金属)の中から選ばれるいずれか1種以上が好ましい。Yとしては特にNaが好ましい。これらの極性基のうち=PO3Naのみを含むか、=PO3Naを主成分として含むものが好ましい。これらのP含有極性基は、P原子換算で分子中に0.01〜10重量%、特には0.02〜3重量%含まれていることが好ましい。これらは骨格樹脂の主鎖中に存在しても、分岐中に存在してもよい。
【0081】
これらのP含有極性基を結合する樹脂骨格は、好ましくは電子線硬化性のウレタン樹脂である。すなわち、分子内にアクリル系二重結合を少なくとも1個有し、後述のリン(P)化合物の少なくとも1種を反応させたP含有電子線硬化性樹脂であって、アクリル系二重結合含有化合物とウレタン結合を介して結合しているポリウレタンアクリレート樹脂である。
【0082】
ここでいうアクリル系二重結合とは、アクリル酸、アクリル酸エステル、アクリル酸アミド、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、メタクリル酸アミド等の残基(アクリロイル基またはメタクリロイル基)をいう。
【0083】
アクリル系二重結合含有化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ヘキサメチレングリコール等のグリコールのモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン、グリセリン、トリメチロールエタン等のトリオール化合物のモノ(メタ)アクリレートおよびジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の4価以上ポリオールのモノ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート、グリセリンモノアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル等のヒドロキシ基含有アクリル系化合物等が好適である。
【0084】
これらのアクリル系二重結合は樹脂分子内に少なくとも1個以上、好ましくは2〜20個存在する。
【0085】
ポリウレタンアクリレート樹脂は、一般にヒドロキシ基含有樹脂およびヒドロキシ基含有アクリル系化合物とポリイソシアネート含有化合物との反応により得られる。
【0086】
ヒドロキシ基含有樹脂としては、ポリエチレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、各種のグリコールおよびヒドロキシル基を分子鎖末端に有するポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0087】
中でもポリエステルポリオールを1成分として得られるポリウレタンアクリレート樹脂が好ましい。
【0088】
ポリエステルポリオールのカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、1,5−ナフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸、p−(ヒドロキシエトキシ)安息香酸等の芳香族オキシカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等の不飽和脂肪酸および脂環族ジカルボン酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等のトリおよびテトラカルボン酸等を挙げることができる。
【0089】
また、ポリエステルポリオールのグリコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA等のエチレンオキシド付加物およびプロピレンオキシド付加物、水素化ビスフェノールAのエチレンオキシドおよびプロピレンオキシド付加物、ポリエチレングリコール、ポプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
【0090】
また、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等のトリおよびテトラオールを併用してもよい。
【0091】
ポリエステルポリオールとしてはほかに、カプロラクトン等のラクトン類を開環重合して得られるラクトン系ポリエステルジオール類が挙げられる。
【0092】
上記ポリイソシアネート含有化合物としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ビフェニルメタンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、2,4−ナフタレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニレンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアネート−ジフェニルエーテル、1,5’−ナフタレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、1,3−ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、1,4−ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、4,4’−ジイソシアネートジシクロヘキサン、4,4’−ジイソシアネートシクロヘキシルメタン、イソホロンジイソシアネート等のイソシアネート化合物、あるいは全イソシアネート基のうち7モル%以下の2,4−トリレンジイソシアネートの三量体、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体等のトリイソシアネート化合物が挙げられる。
【0093】
上記ポリウレタンアクリレート樹脂製造に用いられるリン(P)化合物としては、下記の一般式(III)〜(VII)で表される化合物が好ましいものとして例示される。
【0094】
【化10】
【0095】
【化11】
【0096】
【化12】
【0097】
【化13】
【0098】
【化14】
【0099】
上記一般式(III)〜(VII)において、X1、X2はエステル形成官能基を表す。R3は炭素原子数8〜10の8価の炭化水素基を表す。R4は炭素原子数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基またはアリールオキシ基を表す。アリール基およびアリールオキシ基はハロゲン原子、ヒドロキシ基、−OM’(M’はアルカリ金属)またはアミノ基が結合したものでもよい。R5、R6はそれぞれ独立に炭素原子数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、−(CH3OR7)mで表される基(ただし、R7は炭素原子数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基を表し;mは1〜4の整数である)を表す。Y4はアルカリ金属原子、水素、1価の炭化水素基、またはアミノ基を表すが、特にNaが好ましい。
【0100】
上記リン化合物の具体例としては、例えば特開平6−131652号公報に記載のものが好適に挙げられる。
【0101】
これらのリン化合物は、ポリウレタンアクリレート樹脂製造において種々の過程で導入させることができる。例えば、ポリエステルポリオール、ポリアルキレングリコールの原料樹脂を製造する際に、その1成分として用いることができる。特に、ポリエステルポリオールを製造する際、上記のリン化合物をポリエステルポリオールの重合完結前の任意の段階で添加し、反応させることができる。
【0102】
また、これらのリン化合物は、ポリウレタンアクリレート樹脂の原料の1成分として用いることができる。例えば、ヒドロキシ基を含有するリン化合物は、直接イソシアネート化合物やポリエステルポリオールやアクリレート化合物と反応させることにより、ポリウレタンアクリレート樹脂を製造することができる。
【0103】
P含有極性基を有する電子線硬化性のウレタン樹脂は、公知の方法により、アクリル系二重結合含有化合物と特定のリン化合物および/また特定のリン化合物と反応させた原料樹脂等を含む原料とを溶剤中、または無溶剤中で反応させることにより得られる。得られる樹脂の分子量は500〜100,000であることが望ましい。なお、これらの製法は特開昭62−43830号公報、同61−77134号公報、同62−40615号公報、同62−195720号公報等に記載されている。
【0104】
なお、これらP含有極性基を有する電子線硬化性のウレタン樹脂は、例えば「TB−0242」(東洋紡績(株)製)等として市販されている。
【0105】
これらS含有極性基を有する電子線硬化性の塩化ビニル系樹脂とP含有極性基を有する電子線硬化性のウレタン樹脂は、本発明の十分な効果を得るためには、前者:後者の混合比が69:31〜10:90(重量比)の範囲であるのが好ましく、より好ましくは60:40〜40:60である。なお、これらの樹脂に加えて、非磁性層含有成分全体の20重量%以下の範囲で公知の各種樹脂を含有してもよい。
【0106】
なお、本発明において、非磁性層中の結合剤にニトロセルロース樹脂を含まないか、あるいは含有させる場合その配合量が結合剤全量に対し20重量%程度以下に抑えるのが好ましい。ニトロセルロース樹脂は剛性が高いため、その配合により、得られる磁気記録媒体の表面粗さが大きくなり、出力も低下し、電磁変換特性の低下を招く。ただし、非磁性層中の結合剤の主成分が電子線硬化性樹脂の場合、ニトロセルロース樹脂を混合させて電子線を照射すると発煙(若しくは発火)するため、ニトロセルロース樹脂は用いられない。
【0107】
非磁性層に含有される非磁性粉末として、酸化チタン、硫酸バリウム、ZnS、MgCO3、ZnO、CaO、γ−酸化鉄、二硫化タングステン、二硫化モリブデン、窒化ホウ素、MgO、SnO2 、SiO2、Cr2O3、α−Al2O3、SiC、酸化セリウム、コランタム、人造ダイアモンド、α−酸化鉄、ザクロ石、ガーネット、ケイ石、窒化ケイ素、窒化ホウ素、炭化ケイ素、炭化モリブデン、炭化ホウ素、炭化タングステン、チタンカーバイト、トリポリ、ケイソウ土、ドロマイト等が挙げられる。本発明ではα−酸化鉄が用いられる。本発明では非磁性粉末としてα−FeOOH粒子を含まない。
【0108】
これら非磁性層に用いられる非磁性粉末の形状は、球状、粒状、針状等、通常用いられる形状であれば特に限定されるものでないが、球状、粒状等の形状よりも、針状の形状の方が重層にした場合の平滑性が高くなり好ましい。具体的には、非磁性粉末の形状が針状のときは、平均長径80〜200nm、平均軸比3〜10程度程度が好ましく、より好ましくは平均長径80〜150nm、平均軸比5〜10程度のである。平均長径が大きすぎると下層の表面平滑性が劣化し、一方小さすぎると針状のメリットが見込めない。なお、粒状の場合は、平均粒径は10〜70nm程度が好ましく、より好ましくは10〜30nm程度である。
【0109】
非磁性粉末としては、針状のα−酸化鉄が特に好ましい。この針状α−酸化鉄を用いる場合は、シリカおよび/またはアルミで表面処理されているのが好ましい。特に結晶制御剤としてシリカを使用し、表面処理剤としてアルミを使用し、アルミが表層より5nm以内に分布しているものが好ましい。
【0110】
非磁性層にはさらにカーボンブラックが好ましく含まれる。本発明では分散剤として上記したカルボキシル基を含有する分子量200以下の芳香族系化合物と、ここにさらに好ましくは塩基性末端基を有する有機色素化合物を用いることにより、非磁性粉末との併用系において、カーボンブラックを高配合しても分散性を良好に保つことができ、導電性と表面性の両者を満足させることができる。カーボンブラックとしてはファーネスカーボンブラック、サーマルカーボンブラック、アセチレンブラック等を用いることができる。
【0111】
本発明では、カーボンブラックは、上述した分散剤の効果をより引き出すために、分散剤の吸着サイトの多いBET法による比表面積100〜250m2/g程度のものが好ましい。また非磁性下層の表面性を良好なものとするには、二次粒径が大きくならないように平均一次粒径10〜25nm程度のものが好ましい。DBP吸油量は50〜100ml/100g程度が好ましい。なお、平均粒径は透過型電子顕微鏡(TEM)観察によって求められる。
【0112】
カーボンブラックは、無機顔料全量に対して5〜50重量%、特には15〜30重量%の範囲で用いられるが、媒体の要求特性と塗料における分散特性、流動特性とにより実験的に選定することが必要である。発明ではカーボンブラックを高配合(例えば無機顔料全量に対して15〜30重量%程度)しても分散性を良好に保つことができる。
【0113】
また、カーボンブラックを配合する場合、非磁性粉末とカーボンブラックとの配合比(重量比)は、90:10〜60:40程度とするのが好ましく、特には90:10〜70:30程度である。
【0114】
本発明で使用できるカーボンブラックは、例えば「カーボンブラック便覧」(カーボンブラック協会編)を参考にすることができる。具体的には、BP800、BP900(いずれもキャボット社製)、#900、#950、#960、#970、#980、#45B、#47B(いずれも三菱化学社製)、Raven 2000、Raven 1500(いずれもコロンビアン社製)等が市販されており、好ましく用いられる。
【0115】
本発明では、非磁性層中にさらに、導電性物質として磁気記録媒体に通常用いられ得るものを任意に配合することができ、例えば、SnO2、TiO2、SnO2(Sbドープ)、黒色導電性酸化チタン(TiOx;1≦x≦2)等が例示される。
【0116】
研磨剤としては、一般的な無機化合物が使用できるが、モース硬度6以上のCr2O3、α−Al2O3、SiC等の材料が好ましい。また、粒径は0.05〜0.5μm程度のものを使用することが好ましい。
【0117】
溶剤としては特に制限はないが、バインダーの溶解性および相溶性等を考慮して適宜、選択される。例えばアセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メタノール、エタノール、イソプロパロール、ブタノール等のアルコール類、イソプロピルエーテル、エチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類、テトヒドロフラン、フルフラール等のフラン類等、ジメチルホルムアミド、ビニルピロリドン等の希釈剤ないし溶剤を、単一またはこれらの混合溶剤として用いる。これらの溶剤は、バインダーに対して10〜10000重量%、特には100〜5000重量%の割合で用いるのが好ましい。
【0118】
潤滑剤としては、公知の種々の潤滑剤の中で、特に脂肪酸および/または脂肪酸エステルを用いるのが好ましい。
【0119】
脂肪酸としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアロール酸等の炭素原子数8以上の脂肪酸(RCOOH、Rは炭素原子数11以上のアルキル基)等が挙げられ、中でもミリスチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアロール酸等が好ましい。
【0120】
また、脂肪酸エステルとしては、炭素原子数10〜22の飽和ないし不飽和の脂肪酸と炭素原子数4〜22の飽和ないし不飽和のアルコールや、ソルビタン等の環状若しくは多糖類還元アルコール等からなる脂肪酸エステルが好ましく、例えばステアリン酸ブチル、オレイン酸オレイル、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート等が特に好適である。エステルにおける脂肪酸および/またはアルコールの脂肪族鎖は飽和でも不飽和であってもよく、n−体、i−体等種々のものであってもよい。
【0121】
その他の潤滑剤として、前記脂肪酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属からなる金属石鹸、シリコーンオイル、フッ素オイル、パラフィン、流動パラフィン、界面活性剤等も用いることができる。
【0122】
用いる潤滑剤の量は、無機顔料100重量%に対して総計20重量%以下、特には0.1〜15重量%が好ましい。
【0123】
非磁性層は、好ましくは電子線硬化される。非磁性層塗膜の電子線硬化において、電子線の照射量は1〜10Mradが好ましく、特には3〜7Mradが好ましい。またその照射エネルギー(加速電圧)は100kV以上とするのがよい。
【0124】
なお、非磁性層の塗膜への電子線の照射は、非磁性支持体上に上記分散剤、結合剤、非磁性粉末、カーボンブラック等の配合成分を含む非磁性下層塗料を塗布して塗膜を形成した後であればいつでもよい。非磁性層を加工した後に電子線硬化を行うのが、下層の表面性が出やすく最も望ましいが、非磁性層の加工前や磁性層の塗布、乾燥後に電子線照射してもよい。また、磁性層塗布前、後に分けてそれぞれ電子線を照射してもよい。
【0125】
なお、非磁性下層塗料の調製は、非磁性層成分に含有される上記分散剤、非磁性粉末、カーボンブラックのほか、他添加成分を一度に結合剤中で混合、分散(同時分散)して塗料を調製してもよく、あるいは、カーボンブラックと非磁性粉末とを別々に結合剤中で分散(別分散)させた後、これらを混合、分散して調製してもよい。別分散により得られる非磁性下層塗料を用いて非磁性層を形成した場合、得られる磁気記録媒体の表面平滑性、電磁変換特性、走行耐久性、低湿劣化の改善の点においていずれも特に優れた効果が得られるので好ましい。
【0126】
別分散の場合、特に好ましくは、結合剤としてS含有極性基を有する電子線硬化性塩化ビニル系樹脂を用い、該塩化ビニル系樹脂中に非磁性粉末(α−酸化鉄)をカルボキシル基を含有する分子量200以下の芳香族系化合物を分散剤として用いて分散させたもの(非磁性下層塗料1)と、結合剤としてP含有極性基を有する電子線硬化性ウレタン樹脂を用い、該ウレタン樹脂中にカーボンブラックを塩基性末端基を有する有機色素化合物を分散剤として用いて分散させたもの(非磁性下層塗料2)とをつくり、これら非磁性下層塗料1、2を混合、分散させて非磁性下層塗料とするのが好ましい。
【0127】
なお、無機顔料のpHは中性からやや酸性(具体的にはpH5〜6程度)が、混練性に優れ、かつ脂肪酸(潤滑剤)等の吸着量が少なく好ましい。酸性に過ぎると活性点が少なく分散性に劣り、さらには上層磁性層を酸化するおそれがある。一方、アルカリ性に偏ると脂肪酸吸着量が増加し、遊離の脂肪酸をつくり出すのが困難となる。
【0128】
また、非磁性下層塗料中の無機顔料の可溶性イオン量は、分散性を損なわない範囲で少ないほうが好ましい。可溶性イオン量は、無機顔料中の可溶性イオンとしてのアルカリ金属、アルカリ土類金属の量は100ppm以下、さらには、可溶性Naイオン量が50ppm以下、可溶性Caイオン量が30ppm以下が好ましい。可溶性イオンが多い状態で遊離の脂肪酸をふやすと、保存でのDO劣化やエラーレート増加、摩擦の上昇等の問題が生じる。非磁性粉末をシリカやアルミで表面処理することは、同時に水洗、ろ過工程を要し、可溶性イオンの低減の点からも好ましい。
【0129】
上層である磁性層は、鉄(Fe)を主成分とする磁性粉末を含有する。
【0130】
本発明で用いる磁性粉末は鉄(Fe)を主成分とし、以下の組成のものを用いるのが好ましい。
【0131】
Fe :100重量%
Co :18〜40重量%
Al :5〜15重量%
Yおよび希土類元素:10〜30重量%
【0132】
Fe磁性粉末に含まれるCo量は、18重量%未満では磁気エネルギーの向上が期待できず、一方、40重量%超では磁性粉末の特性が均一になりにくい。さらに、Alが含まれない場合には、Fe磁性粉末が焼結したり、強度が低下し保存特性が劣化したり、また塗料分散性、塗料安定性にも悪影響を及ぼす。Yまたは希土類元素が含まれない場合には、Alと同様にFe磁性粉末が焼結し、形状が崩れSFD(Switching Field Distribution;反転磁界分布)の低下を招くおそれがある。
【0133】
このFe磁性粉末には、さらにSi、Cr、Mn、Ni、Zn、Cu、Zr、Ti、Bi、Ag、Pt、B、C、P、N、S、Sc、V、Mo、Rh、Pd、Sn、Sb、Te、Ba、Ca、Ta、W、Re、Au、Hg、Sr、Pb等の元素が含まれていてもよい。
【0134】
また、これらのFe磁性粉末には、Al、Si、Pまたはこれらの酸化物膜で覆ったものでも、Si、Al、Ti等のカップリング剤や各種の界面活性剤等で表面処理したものでも、分散剤、潤滑剤、界面活性剤、帯電防止剤等で分散前にあらかじめ処理を行ったものでもよい。
【0135】
Fe磁性粉末に含まれるNa、K、Ca等の可溶性の無機イオンの量は、好ましくは500ppm以下、より好ましくは100ppm以下である。
【0136】
Fe磁性粉末の含水量は0.1〜2%であればよいが、結合剤の種類等により最適化させるのが好ましい。
【0137】
Fe磁性粉末のpHは用いる結合剤との組み合わせにより最適化することが好ましく、その範囲は7〜11であり、さらに好ましくは8〜10である。
【0138】
Fe磁性粉末は、BET法による比表面積で25〜70m2/gであるのが好ましく、より好ましくは35〜60m2/gである。
【0139】
Fe磁性粉末の飽和磁化量は130Am2/kg以上が好ましく、さらには140〜170Am2/kgであることが好ましい。長軸長は200nm以下であることが好ましく、さらには50〜150nmであることが好ましい。結晶サイズ(Dx)は20nm以下が好ましく、さらには9〜18nmが好ましい。
【0140】
Fe磁性粉末を分散する結合剤としては一般的に公知のものが使用できる。例えば熱可塑性樹脂、熱硬化性ないし反応型樹脂、電子線感応型変性樹脂等が用いられる。これらは1種あるいは2種以上を組み合わせて用いられるが、その組み合わせは磁気記録媒体の特性、工程条件に合わせて適宜選択使用される。
【0141】
熱可塑性樹脂としては、軟化温度が150℃以下、平均分子量5,000〜20,000、重合度100〜2,000程度のものが好ましい。
【0142】
熱硬化性樹脂、反応型樹脂等も、上記と同様の平均分子量、重合度のものが用いられ、塗布、乾燥、カレンダー加工後に加熱、および/または電子線照射することにより、縮合、付加等の反応により分子量は無限大のものとなる。
【0143】
これらの樹脂の中で、樹脂が熱分解または溶融しないものが好ましい。
【0144】
上記樹脂の例としては塩化ビニル系共重合体が挙げられる。具体的には、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル−ビニルアルコール−プロピオン酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール−マレイン酸共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−末端OH側鎖アルキル共重合体等が挙げられる。
【0145】
またウレタン化合物も好ましく用いられる。ウレタン化合物の例としては、ポリウレタンエラストマーおよびプレポリマーおよびテロマーがあり、ポリウレタンの使用は、耐摩耗性およびPETフィルム等支持体への接着性がよい点で特に有効である。ウレタンの合成原料のイソシアネートとして、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、4−4’ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−または1,4−キシレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、m−またはp−フェニレンジイソシアネート、3,3−ジメチル−4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3−ジメチルビフェニレンジイソシアネート、4,4−ビフェニレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、デスモジュールL、デスモジュールN等の各種多価イソシアネートが挙げられる。
【0146】
さらに、線状飽和ポリエステル(エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ペンタエリスリット、ソルビートル、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の多価アルコールとフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等の飽和多価塩基酸との縮重合物によるもの)、線状飽和ポリエーテル(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等)やカプロラクタム、ヒドロキシル含有アクリル酸エステル、ヒドロキシル含有メタクリル酸エステル等の各種ポリエステル類の縮重合によりなるポリウレタンエラストマー、プレポリマーが有効である。
【0147】
このほかに、飽和ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ブチラール樹脂、アセタール樹脂、ホルマール樹脂等のポリビニルアルコール系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノキシ系樹脂、繊維素誘導体、多官能ポリエステル樹脂、ポリエーテルエステル樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂および誘導体(PVPオレフィン共重合体)、ポリエーテル樹脂、ポリカプロラクトン等の多官能性ポリエーテル類、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、スピロアセタール樹脂、水酸基を含有するアクリルエステルおよびメタクリルエステルを重合成分として少なくとも1種含むアクリル系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合エラストマー、ポリブタジエンエラストマー、塩化ゴム、アクリルゴム、イソプレンゴムおよびその他環化物、エポキシ変性ゴム、内部可塑性飽和線状ポリエステル等のエラストマーも使用することができる。
【0148】
熱硬化性樹脂としては、縮重合するフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、ブチラール樹脂、ポリマール樹脂、メラニン樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、アクリル系反応樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、飽和ポリエステル樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。
【0149】
反応型樹脂としては、前記の縮重合系樹脂とイソシアネート化合物等の架橋剤との混合物;高分子量ポリエステル樹脂とイソシアネートプレポリマーの混合物;メタクリル酸塩共重合体とジイソシアネートプレポリマーの混合物;ポリエステルポリオールとポリイソシアネートの混合物;低分子量多価アルコール/高分子量多価アルコール/トリフェニルメタントリイソシアネートの混合物等が挙げられる。また、塩化ビニル−酢酸ビニル(カルボン酸含有も含む)、塩化ビニル−ビニルアルコール−酢酸ビニル(カルボン酸含有も含む)、塩化ビニル−塩化ビニリデン、塩化ビニル−アクリロニトリル、ビニルブチラール、ビニリホルマール等のビニル系共重合体樹脂と架橋剤との混合物;セルロースアセトブチレート等の繊維素系樹脂と架橋剤との混合物;ブタジエン−アクリロニトリル等の合成ゴム系と架橋剤との混合物等が挙げられる。これらの重合体は、単独あるいは2種以上併用して用いられる。
【0150】
また、上記共重合体は末端および/または側鎖に水酸基を有するものがイソシアナートを使用した架橋や電子線架橋等を容易に利用できるため好適である。さらに、末端や側鎖に極性基として、−COOY、−SO3Y、−OSO3Y、−OPO3Y、−PO3Y、−PO2Y、−N+R3Cl-、−NR2(ただし、YはHまたはアルカリ金属、RはH、メチル基、エチル基)等をはじめとする酸性極性基、塩基性極性基等を含有していてもよく、これらの含有は分散性の向上に好適である。
【0151】
これらの共重合体をイソシネートアダクト体を使用して架橋させる場合の硬化剤としては、イソシネートとして、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の各種多価イソシアネートとトリメチロールプロパンのような多価アルコールとのアダクト体を使用すればよい。具体的には、コロネートL、HL、3041(以上、いずれも日本ポリウレタン(株)製)、24A−100、TPI−100(以上、いずれも旭化成工業(株)製)、デスモジュールL、N(以上、いずれもB. F. Goodrich社製)等が挙げられ、上記重合体に対して1〜50重量%添加して使用する。
【0152】
一般にこのような反応性または熱硬化性樹脂を硬化するには、加熱オーブン中で50〜80℃にて6〜100時間加熱すればよい。
【0153】
Fe磁性粉末に対する結合剤の量は、Fe磁性粉末100に対して10から100(重量比)が好ましい。結合剤が少なすぎるとFe磁性粉末の結合性が悪く、走行耐久で粉落ちによる目詰まりが発生しやすい。一方、結合剤が多すぎると高い電磁変換特性が得られない。結合剤の量はハード側の要求する特性に合うように、電磁変換特性と物性のバランスを考慮し、決めることが好ましい。
【0154】
磁性層には上記磁性粉末の他、研磨剤、カーボンブラック、潤滑剤等、他の添加成分が配合されるが、これらは非磁性層での説明の中で示したものが同様に使用できる。
【0155】
本発明では特に、非磁性下層の分散剤としてカルボキシル基を含有する分子量200以下の芳香族系化合物を含有することから、磁性層中に存在するときのカーボンブラックの粒径、すなわち一次粒径若しくは二次粒径が0.20μm以上、より好ましくは0.20〜0.35μm程度の大粒径のカーボンブラックを使用しても、低湿環境でヘッド焼付きを起こさないので、物性の安定化のために大粒径のカーボンブラックを用いるのが好ましい。本発明では、このように大粒径のカーボンブラックを配合しても、上述したように、非磁性下層でのカルボキシル基の競争吸着により余剰分の潤滑剤(脂肪酸)が遊離の脂肪酸となって上層磁性層へ滲出することから、ヘッド焼付きの少ない磁気記録媒体を得ることができる。
【0156】
磁性層の厚さは、厚み損失を減らし、磁性層の塗布性を高め、非磁性層からの潤滑剤の供給しやすさ等のために、極力薄い方が好ましく、1μm以下が好ましく、0.5μm以下が特に好ましい。
【0157】
なお、本発明において磁性層塗料は、非磁性層を支持体上に塗布後、乾燥し、ついでカレンダー加工、さらに硬化した後に、この上に塗布するのが好ましい。なお、磁性層の硬化は、用いる結合剤の種類等に応じて、熱硬化、電子線硬化等、任意の方法が用いられ得る。
【0158】
このような非磁性層、磁性層が設けられる非磁性支持体としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル類、ポリオレフィン類、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルホンセルローストリアセテート、ポリカーボネート等の公知のフイルムを使用することができ、好ましくは、PET、PEN、芳香族ポリアミドであり、さらに好ましくは、PETないしPENの2種ないし3種による多層共押出しによる複合化フイルムまたは芳香族ポリアミドであり、これらのフィルムを使用すると電磁変換特性、耐久性、摩擦特性、フィルム強度、生産性のバランスが得やすい。
【0159】
また、これらの非磁性支持体には、フィラーとしてAl、Ca、Si、Ti等の酸化物や炭酸塩等の無機化合物、アクリル樹脂系微粉末等の有機化合物等を添加することが好ましく、これらの量と大きさにより表面性を自由にコントロールすることが可能となり、電磁変換特性、耐久性、摩擦特性等をコントロールすることが可能である。
【0160】
さらに、これら非磁性支持体には、あらかじめコロナ放電処理、プラズマ放電および/または重合処理、易接着剤塗布処理、除塵処理、熱および/または調湿による緩和処理等を行ってもよい。
【0161】
本願における非磁性層、磁性層は、支持体の片面に設けられても、両面に設けられてもよく、また磁性層を複数層設けるものであってもよく、特に磁性層を片面のみに設けるときには、磁性層とは反対の面にバックコート層を設けることが好ましく、磁性層上に、磁性層の潤滑、保護のために、潤滑剤、プラズマ重合膜、ダイヤモンドライクカーボン膜等の保護潤滑層を設けてもよい。
【0162】
バックコート層は、30〜80重量%のカーボンブラックを含有すること好ましい。カーボンブラックの含有量が少なすぎると帯電防止効果が低下する傾向があり、さらに走行安定性が低下しやすくなる。一方、カーボンブラックの含有量が多すぎるとバックコート層の強度が低下し、走行耐久性が悪化しやすくなる。バックコート層に配合されるカーボンブラックは、通常使用されるものであればどのようなものであってもよく、その平均粒径は、5〜500nm程度が好ましい。平均粒径は、通常、透過型電子顕微鏡により測定する。
【0163】
バックコート層には、前記カーボンブラック以外に、機械的強度を高めるために、非磁性層の説明において挙げた各種研磨剤、非磁性粉末等の無機顔料を含有させてもよい。
【0164】
この他、必要に応じ、界面活性剤等の分散剤、高級脂肪酸、脂肪酸エステル、シリコンオイル等の潤滑剤、その他の各種添加物を添加してもよい。
【0165】
バックコート層に用いる結合剤、架橋剤、溶剤等は前述した非磁性層、磁性層に用いるものと同様のものでよい。結合剤としては、特に塩化ビニル、ポリウレタン樹脂、ニトロセルロース、エポキシ系樹脂、フェノキシ系樹脂等が挙げられる。結合剤の含有量は、固形分の合計100重量部に対し、好ましくは15〜200重量部、より好ましくは50〜180重量部である。結合剤の含有量が多すぎると、媒体摺接経路との摩擦が大きくなりすぎて走行安定性が低下し、走行事故を起こしやすくなる。また、磁性層とのブロッキング等の問題が発生する。結合剤の含有量が少なすぎると、バックコート層の強度が低下して走行耐久性が低下しやすくなる。
【0166】
バックコート層の厚さ(カレンダー加工後)は、1.0μm以下、好ましくは0.1〜1.0μm、より好ましくは0.2〜0.8μmである。バックコート層が厚すぎると、媒体摺接経路との間の摩擦が大きくなりすぎて、走行安定性が低下する傾向にある。一方、薄すぎると、非磁性支持体の表面性の影響でバックコート層の表面性が低下する。このため、バックコートを熱硬化する際にバックコート層表面の粗さが磁性層表面に転写され、高域出力、S/N、C/Nの低下を招く。また、バックコート層が薄すぎると、媒体の走行時にバックコート層の削れが発生する。
【0167】
本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体の少なくとも一方の面上に、非磁性層塗布後、乾燥させた後、磁性層を設けるウェット・オン・ドライ法や、あるいは、上、下層とも湿潤状態で重層されるウェット・オン・ウェット法のいずれの方法でも得ることができる。本発明では、下層分散剤としてカルボキシル基を含有する分子量200以下の芳香族系化合物と、さらに好ましくはここに塩基性末端基含有有機色素化合物を配合することにより、表面特性に優れ、かつ、磁性層表面の脂肪酸がふえ、低湿環境下でのヘッド焼付きやスチル特性の優れた磁気記録媒体が得られる。
【0168】
また、本発明では非磁性下層から適切な量の遊離な脂肪酸を磁性層表面に供給できるようになったため、さらに磁性層に大粒径のカーボンブラックを添加しても低湿環境下でのヘッド焼付きを防ぐことができるようになった。そのため、摩擦特性、さらには他の特性(ヘッド摩耗、スチル特性)等のより一層の改善が可能となった。
【0169】
本発明の磁気記録媒体は、具体的には、例えば以下の方法により製造する。
【0170】
まず、非磁性支持体に非磁性下層塗料を塗布する。本発明では、無機顔料としてカーボンブラックを含有する場合、上述したように、非磁性下層塗料として、非磁性粉末を結合剤中に分散した非磁性下層塗料1と、カーボンブラックを結合剤中に分散した非磁性下層塗料2とをあらかじめ別々につくっておき、これら塗料1と塗料2とを混合して調製した非磁性下層塗料(別分散下層塗料)を用いるのが好ましい。別分散したものを混合して調製した塗料を用いた場合、磁気記録媒体の表面平滑性、電磁変換特性(出力、C/N)、走行耐久性、低湿劣化防止のいずれの効果も極めて優れる。
【0171】
非磁性層の厚さは非磁性支持体の表面粗さや媒体の要求特性により適宜決めればよいが、一般的には0.5〜3.0μmである。さらに非磁性層のメリットを引き出そうとすると、好ましくは0.8μm以上である。非磁性下層塗料を塗布後、乾燥し、好ましくはカレンダー加工処理を施した後、好ましくは電子線照射により硬化する。非磁性層は、硬化前にカレンダー加工した方がカレンダーの温度、加工圧等が低くても良好な非磁性層の表面が得られ好ましい。また、非磁性層は磁性層塗布前にカレンダー加工した方が好ましい。
【0172】
カレンダー加工ロールとしてはエポキシ、ポリエステル、ナイロン、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等の耐熱性のあるプラスチックロール(カーボン、金属やその他の無機化合物を練り込んであるものでもよい)と金属ロールの組合せ(3ないし7段の組合せ)、または金属ロールどうしで処理することもできる。処理温度は、好ましくは70℃以上、さらに好ましくは80℃以上であり、その線圧力は好ましくは2×103N/cm以上、さらに好ましくは3×103N/cm以上であり、その速度は20〜700m/分の範囲である。
【0173】
カレンダー加工すると次のような利点がある。
【0174】
(1)磁性層の塗布後の表面性が良好になり、磁性層の加工条件を低くでき、物性に有利な媒体を作りやすい。
【0175】
(2)非磁性層をあらかじめ加工、硬化しておくと、磁性層中の研磨剤が非磁性層に潜ることが少ないため、磁性層厚が1.0μm以下、さらには0.5μm以下の場合、現在存在する研磨能が高い一般的な研磨剤の粒径が0.1〜0.5μmと膜厚と一致し、研磨能の高い媒体を作りやすい。すなわち、加工しない非磁性層に上層を塗布する場合に比べ、研磨剤の粒径は小さく、かつ少量で同様の研磨能の媒体ができるため、電磁変換特性を高くすることができる。
【0176】
(3)先に非磁性層を加工することで、上層である磁性層はベースのフィラーの影響を受けづらくなり、電磁変換特性に有利である。
【0177】
(4)上層である磁性層塗布時の塗布ノズルの摩耗の程度を低下させることができる。
【0178】
また、非磁性層を電子線硬化する場合、磁性層塗布前に電子線照射等により硬化させないと、非磁性層が磁性層の溶剤の影響を受け、上層である磁性層の塗布が難しい。
【0179】
電子線照射量は1〜10Mradが好ましく、特には3〜10Mradが好ましい。3Mrad未満では磁性層の塗布面の安定性を得るのに十分でなく、一方、10Mradを超える照射量で照射しても媒体物性に差が現れない。
【0180】
磁性層の塗布性には電子線照射量が多い方が、磁性層の加工性には電子線照射量の少ない方が、磁気記録媒体物性としては電子線照射量の多い方が、それぞれ好ましい。そのため、磁性層塗布前後に分けて電子線を照射するのが最もバランスをとりやすく、好ましい。
【0181】
また、非磁性層に従来用いられている熱硬化性樹脂を用いた場合、熱硬化性の硬化剤が必要となるが、これは一般にTgが高く、上層磁性層の加工性が上がりにくくなるのに対し、電子線硬化性樹脂を用い、これを電子線で硬化させた場合にはこのような傾向がなく、磁性層の塗布性と加工性のバランスをとりやすい。
【0182】
また、非磁性層塗布から加工、電子線照射、巻き取りまで1工程ですることが好ましい。特にベース厚が7μm以下になると、走行による帯電の影響で巻き取りが乱れ、生産性が低下してしまうが、巻き取り前に電子線照射することで帯電量が減少し、巻き取りを良好に行うことができる。同様に、磁性層塗布、加工、電子線照射、巻取りも1工程で行った方が巻き取りを良好に行うことができ好ましい。
【0183】
次いで、この電子線硬化後の非磁性層上に、磁性層塗料を塗布する。
【0184】
磁性層塗布後は一般的な磁気媒体の製造方法に準じ、乾燥、カレンダー加工、バックコート塗布、乾燥、熱硬化を行う。また、磁性層やバックコート層の結合剤種によっては複数回電子線照射できない場合もあるので注意が必要である。
【0185】
特にバックコート層の結合剤がニトロセルロース系樹脂を含む場合には、電子線照射により発火するおそれがあるため、バックコート層塗布前に電子線照射を終らせておくべきである。
【0186】
また、バックコート層塗布前に電子線照射することで、バックコート層の接着性が向上するため、バックコート塗布前に電子線照射することが好ましい。
【0187】
このようにして非磁性層、磁性層を形成した後に、必要に応じて表面平滑化処理として好ましくはカレンダー加工を行う。カレンダー加工の方法は、上記非磁性層での加工で説明したのと同じように行うことができる。
【0188】
カレンダー加工後、非磁性層、磁性層、バックコート層の硬化を促進するために、40℃〜80℃の熱硬化処理および/または電子線照射処理を施す。
【0189】
次いで、スリッタまたはプレス機で所定のテープあるいはディスク形状にし、さらに磁性面および/またはバックコート面に研磨、クリーニング等の二次加工を行い、本発明の磁気記録媒体を作製する。
【0190】
【実施例】
以下に本発明を実施例によって説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものでないことはいうまでもない。
【0191】
なお、本実施例における磁気記録媒体の特性評価は、下記基準に従った。
【0192】
[テープ表面粗さ(中心線平均粗さ:Ra)]
「TALYSTEPシステム」(テーラーホブソン社製)を用い、JIS B0601に基づいてRaの測定を行った。なお測定機の条件は、フィルター0.18〜9Hz、触針0.1×2.5μmスタイラス、触針圧2mg、測定スピード0.03mm/sec、測定長さ500μmである。
【0193】
[電磁変換特性(出力、C/N)]
松下DVC−PROデッキAJD−750にて20.96MHz(1/2Tb)の信号を記録し、この信号を再生したときの出力、およびその信号と19.96MHz再生信号の比をC/Nとして測定した。このときテープポジションはMPモードで、0dBはTDK DVC−refテープである。
【0194】
[目詰まり、付着、焼付き]
20℃、湿度60%の環境に松下DVC−PROデッキAJD−650を3台設置し、記録時間60分テープ全長を繰り返し再生、24時間走行させ、走行中のRF出力をモニターし、目詰まりの有無を調べた。目詰まりが発生した場合はその台数を表示した(例えば3台のうち1台のみ発生した場合は、1/3と表示した)。また、走行後のヘッドの付着、焼付き状態を調べ、小〜中〜大で示した。
【0195】
[低湿劣化]
40℃、湿度8%の環境に松下DVC−PROカメラAJD−700を設置し、記録時間60分テープを24時間再生を行い、走行中のRF出力をモニターし、1パス目の初期の出力を0dBとしたとき、最も出力の低下したときの出力をdBで示した。
【0196】
上記の材料の全部と溶剤の一部を、ニーダーで混練後縦型のピンミル(メディアは結晶ガラス)にて滞留時間30分間で分散し、最後に溶剤で粘度調整を行った。
【0197】
まずポリエステルポリウレタンと分散剤とを、ハイパーミキサーにて10分間撹拌後、カーボンブラックを添加した。3時間撹拌後横型のピンミル(メディアはアルミナビーズ)にて滞留時間120分間で分散し、最後に溶剤で粘度調節を行った。
【0198】
次にバスケットミル(メディアはジルコニアビーズ)にて、非磁性下層塗料−1と非磁性下層塗料−2とを以下の配合比で混合した。
【0199】
上記の材料全部と溶剤の一部を、ニーダーで混練後、横型のピンミルにて分散し、最後に溶剤で粘度調整を行った。
【0200】
上記材料の全部と溶剤の一部を、高速ディスパーにて撹拌後、縦型のピンミルにて分散し、最後に溶剤で粘度調整を行った。
【0201】
(塗布)
6.3μm厚のポリエチレンテレフタレート支持体〔東レフィルム7AN23Ra:3〜4nm、裏面Ra:10nm、ヤング率(長手方向/幅方向)〕:5880/5880N/mm2)上に、カレンダー加工後の厚みが1.4μmになるように非磁性下層をリバースコーターで塗布した。その後カレンダー加工を行い、さらに3MradでEB照射を行った。このとき下層の表面粗さ(Ra)は3.5nmであった。
【0202】
こうして形成した非磁性下層上に、上層磁性層を加工後の厚みが0.21μmになるようにノズルで塗布を行い、配向、乾燥、カレンダー加工、再EB照射(4Mrad)を行った。さらにバックコート乾燥厚0.5μmとなるようにグラビアシリンダーで塗布し、乾燥した。
【0203】
こうして作製したテープ原反を60℃で48時間熱硬化を行った後、6.35mm幅に切断し、DVC−PRO用テープを作製した。
【0204】
(比較例1)
実施例1において、非磁性下層塗料−1の分散剤としてo−フタル酸(川崎化学工業)5.0重量部の代わりにアゾ系有機色素化合物(化8に示す化合物)5.0重量部を用いた以外は、実施例1と同様にしてテープを作製した。
【0205】
(実施例2)
実施例1において、非磁性下層塗料−2の分散剤としてアゾ系有機色素化合物(化8に示す化合物)2.5重量部の代わりにo−フタル酸(川崎化学工業)2.5重量部を用いた以外は、実施例1と同様にしてテープを作製した。
【0206】
(比較例2)
実施例1において、非磁性下層塗料−1の分散剤としてo−フタル酸(川崎化学工業)2.5重量部の代わりにミリスチン酸(MA)(日本油脂)2.0重量部を用いた以外は、実施例1と同様にしてテープを作製した。
【0207】
(実施例3)
実施例1において、非磁性下層塗料−1の結合剤として「TB−0246」(東洋紡)12.5重量部の代わりに「TB−0246」/「TB−0242」=50/50(いずれも東洋紡)12.5重量部を用い、かつ、非磁性下層塗料−2の結合剤として「TB−0242」(東洋紡)40.0重量部の代わりに「TB−0246」/「TB−0242」=50/50(いずれも東洋紡)40.0重量部を用いた以外は、実施例1と同様にしてテープを作製した。
【0208】
(実施例4)
実施例1において、非磁性下層塗料−2の分散剤としてアゾ系有機色素化合物(化8に示す化合物)2.5重量部の代わりに「トリデシルアミン」(和光純薬工業)2.5重量部を用いた以外は、実施例1と同様にしてテープを作製した。
【0209】
(実施例5)
実施例1において、非磁性下層塗料−1の結合剤として「TB−0246」(東洋紡)12.5重量部の代わりにカルボキシル基含有極性基を有する電子線硬化性塩化ビニル樹脂[EBCVC(COOH)]12.5重量部を用いた以外は、実施例1と同様にしてテープを作製した。
【0210】
EBCVC(COOH)
塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール−マレイン酸共重合体
平均重合度:400
COOH基含有:1重量%
アクリル含有量:6モル/1モル
【0211】
(実施例6)
実施例1において、非磁性下層塗料−2の結合剤として「TB−0242」(東洋紡)40.0重量部の代わりにカルボキシル基含有極性基を有する電子線硬化性ウレタン樹脂[EBCU(COOH)]40.0重量部を用いた以外は、実施例1と同様にしてテープを作製した。
【0212】
EBCU(COOH)
ヒドロキシ含有アクリル化合物−カルボキシル基含有化合物−ヒドロキシル基含有ポ リエステルポリオール−ジフェニルメタンジイソシアネート
平均分子量:2.5万
COOH基含有:1重量%
アクリル含有量:6モル/1モル
【0213】
(比較例3)
実施例1において、非磁性下層塗料−1の分散剤としてo−フタル酸(川崎化学工業)5.0重量部の代わりにP含有有機化合物「GAFAC RE610」(東邦化学)5.0重量部を用いた以外は、実施例1と同様にしてテープを作製した。
【0214】
上記材料の全部を、加圧ニーダーで混練後、横型ピンミル(メディアはジルコニアビーズ)にて滞留時間120分間で分散した。
【0215】
(実施例8)
実施例1において、上層磁性層のカーボンブラック#10(三菱化学、一次粒径:84nm、二次粒径:240nm)0.2重量部の代わりに、セバカーブMT(一次粒径350nm)0.2重量部を用いた以外は、実施例1と同様にしてテープを作製した。
【0216】
(比較例4)
比較例2において、上層磁性層の分散剤「GAFAC RE610」(東邦化学)3.0重量部の代わりにo−フタル酸(川崎化学工業)3.0重量部を用いた以外は、比較例2と同様にしてテープを作製した。
【0217】
(実施例9)
実施例1において、上層磁性層の分散剤「GAFAC RE610」(東邦化学)3.0重量部の代わりにo−フタル酸(川崎化学工業)3.0重量部を用いた以外は、実施例1と同様にしてテープを作製した。
【0218】
上記実施例1〜9、比較例1〜4で作製した各テープを用いて、テープ表面粗さ(Ra)、電磁変換特性(出力、C/N)、耐久性(目詰まり、付着、焼付き)、低湿劣化の評価を行った。結果を表1〜3に示す。
【0219】
なお、表1〜3中、αはα−酸化鉄を示し;AzoNR2は化8に示す化合物を示し;P1はPO(OH)2とPO(OH)の混合物を示し;P2はPO(OH)2を、それぞれ示す。
【0220】
【表1】
【0221】
【表2】
【0222】
【表3】
【0223】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、非磁性下層の分散剤として特定の化合物を用いることにより、表面平滑性に優れ、高分散性を保ち、電磁変換特性が高く、付着・焼付き、低湿劣化の少ない磁気記録媒体を提供することができる。
Claims (9)
- 非磁性支持体の少なくとも一方の面上に、非磁性粉末(ただし、α−FeOOH粒子を含まない)を含有する無機顔料を結合剤中に分散してなる非磁性層と、該非磁性層上に鉄(Fe)を主成分とする磁性粉末を含む磁性層を設けてなる磁気記録媒体であって、
前記非磁性粉末としてα−酸化鉄を用い、
前記非磁性層中に、ニトロ安息香酸、フタル酸、サリチル酸、フェノキシ酢酸の中から選ばれる1種または2種以上の、カルボキシル基を含有する分子量200以下の芳香族系化合物を含有することを特徴とする磁気記録媒体。 - 無機顔料がカーボンブラックを含む、請求項1記載の磁気記録媒体。
- カルボキシル基を含有する分子量200以下の芳香族系化合物がフタル酸である、請求項1または2記載の磁気記録媒体。
- カルボキシル基を含有する分子量200以下の芳香族系化合物を無機顔料に対し1〜10重量%の割合で含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
- 非磁性層中に、さらに塩基性末端基を有する有機色素化合物を含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
- 非磁性層中の結合剤が、電子線硬化性樹脂を少なくとも含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
- 前記電子線硬化性樹脂として、塩化ビニル系樹脂とウレタン樹脂を少なくとも含む、請求項6記載の磁気記録媒体。
- 前記塩化ビニル系樹脂がイオウ(S)含有極性基を有する電子線硬化性の塩化ビニル系樹脂である、請求項7記載の磁気記録媒体。
- 前記ウレタン樹脂がリン(P)含有極性基を有する電子線硬化性のウレタン樹脂である、請求項7記載の磁気記録媒体。
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