JP3818067B2 - ケース振動低減構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ケース振動低減構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、FF(フロントドライブフロントエンジン)用マニュアルトランスミッションなどでは、図7に示すようなケースに塗装された鉄板ケースカバー1が使用される場合があるが、図6の有限要素法(FEM)による振動モード図(符号2を付した盛り上がり部がとくに大きく振動する部分)に示すように、共振しやすいためにギヤノイズが問題になりやすい。
ケースの振動を抑える構造として実開平5−6254号公報等がある。実開平5−6254号公報は、変速機のケースカバーの振動を抑えることを目的とし、カバーの中央付近の直角方向部位にあるケース周縁部に一対のノックピンを設け、ケースの横方向への変形、振動を低減した構造を開示している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、ケースを周縁部でノックピン等で押さえる構造は、ケースの横方向変形を抑えるには有効であるが、共振上問題となるケースの膜振動を抑える上には大きな効果をもたず、騒音低減効果が小さい。また、ノックピン等の押さえ手段が必要となり、部品点数増加などの問題を招く。
本発明の目的は、ケースの膜振動を効果的に押さえることができ、これを部品点数増加を伴うことなく達成できるケース振動低減構造を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明はつぎの通りである。
ケースと、該ケースに固着された固着体とからなるケース体において、固着体の固有振動数をケースの固有振動数に一致するように設定し、固着体をケースの振動モードのほぼ腹の部分に固着し、
前記ケースがトランスミッションケースカバーであり、前記固着体がオイルレシーバであり、オイルレシーバの座面を延長して片持ちの板とし、
前記オイルレシーバの片持ちの板と前記トランスミッションケースカバーとの交わり部は断面がくさび形状となっており、該くさび形状断面の少なくとも一部はオイルレシーバおよびトランスミッションケースカバーに付着する塗料によって埋められていることを特徴とするケース振動低減構造。
【0005】
上記のケース振動低減構造では、固着体の固有振動数をケースの固有振動数に一致するように設定し、固着体をケースの振動モードのほぼ腹の部分に固着させる構造であるので、固着体がダイナミックダンパーとして作動し、ケースの膜振動を効果的に低減することができる。また、固着体の固有振動数を設定させる方法、構造のため、ノックピンなどのカバー押さえ手段が必要でなく、部品点数増加を招かない。
また、オイルレシーバを延長して片持ち板部を形成することによりトランスミッションケースカバーの振動を低減することができる。
また、オイルレシーバの延長によりくさび形状断面が形成されそこの付着塗料が多くなることにより、減衰作用も増大し、トランスミッションケースカバーの振動を一層低減することができる。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明のケース振動低減構造の実施例を図1〜図5を参照して、説明する。
本発明実施例のケース振動低減方法は、ケース11と、ケース11に固着された固着体12とからなるケース体10の、ケース11の振動を低減する方法であって、ケース11の固有振動数および振動モードを求める工程と、固着体12の固有振動数を、求めたケース11の固有振動数に一致するように設定する工程と、固着体12をケース11の振動モードのほぼ腹の部分13(固着体12の固着前に最も大きな膜振動を生じる部分)に固着させる工程、とからなる。
上記ケース振動低減方法の作用はつぎの通りである。図6は、固着体を固着する前のケースの、したがって従来のケースの振動モード図であり、図7は、固着体12を固着した後のケース11の振動モード図である。そして、図6の最も大きな膜振動を生じる部分に、固着体12を固着させると、固着体12がダイナミックダンパとなって働き、図7において符号13で示すように、ケース11の振動が低減される。
【0007】
また、本発明実施例のケース振動低減構造は、ケース11と、ケース11に固着された固着体12とからなるケース体10において、固着体12の固有振動数をケース11の固有振動数に一致するように設定し、固着体12をケース11の振動モードのほぼ腹の部分13(固着体12の固着前に最も大きな膜振動を生じる部分)に固着させたケース振動低減構造からなる。
上記方法で述べたと同じ作用が、ケース振動低減構造においても得られる。すなわち、図6は、固着体を固着する前のケースの、したがって従来のケースの振動モード図であり、図7は、固着体12を固着した後のケース11の振動モード図である。そして、図6の最も大きな膜振動を生じる部分に、固着体12を固着させると、固着体12がダイナミックダンパとなって働き、図7において符号13で示すように、ケース11の振動が低減される。
【0008】
上記ケース振動低減構造は、車両の鉄板からなるトランスミッションケースカバーに適用できる。
その場合の構成は、図1〜図3に示すように、ケース11はトランスミッションケースカバー(以下、ケースと同じ符号11を付す)であり、固着体12がオイルレシーバ(以下、固着体と同じ符号12を付す)である。オイルレシーバ12は、座面12aとそこから直角に延びる2本のパイプ状のオイル入口12b、オイル出口12cを有し、オイル入口12bから流入したオイルはオイルレシーバ12とケース11との間の通路12dを通った後オイル出口12cから出て、トランスミッションのインプットシャフト18内に流出する。
【0009】
そして、オイルレシーバ12の座面を延長して片持ちの板14(図1で編み目を施した部分)とし、この片持ち板14の部分の固有振動数をトランスミッションケースカバー11の固有振動数に近づける。片持ち板14の長さLを、片持ち板14の部分の固有振動数がトランスミッションケースカバー11の固有振動数に一致するか、またはほぼ一致するように、決定する。
そして、長さLが上記のように決定された片持ち板14をもつオイルレシーバ12をトランスミッションケースカバー11に溶接部15にて溶接固定する。
【0010】
また、オイルレシーバ12の片持ちの板14とトランスミッションケースカバー11との交わり部16は断面がくさび形状となっており、該くさび形状断面の少なくとも一部はオイルレシーバ12およびトランスミッションケースカバー11に付着する塗料17によって埋められている。図1において、点線Aはトランスミッションケースカバー11の凹みが始まる線、実線Bはトランスミッションケースカバー11の凹みが終わる線であり、線A,B間が凹んでいて、オイルレシーバ12との間に空間がある部分である。そして、この空間がある部分上に、図3に示すように、オイルレシーバ12の片持ちの板14が延び出している。
【0011】
トランスミッションケースカバーに適用された上記振動低減構造の作用は、つぎの通りである。
トランスミッションのギヤの振動は、シャフト、ベアリング、本体ケース19を介してトランスミッションケースカバー11に伝わり、トランスミッションケースカバー11を振動させる。
【0012】
トランスミッションケースカバー11の固有振動数は、たとえば1200Hzであるので、オイルレシーバ12の片持ちの板14の固有振動数を1200Hzに設定して、オイルレシーバ12をトランスミッションケースカバー11に固着しておくことにより、ギヤの振動がトランスミッションケースカバー11に伝わった時、オイルレシーバ12の方がダイナミックダンパーとなって振動し、振動エネルギーを吸収して、トランスミッションケースカバー11の振動を抑える。 したがって、オイルレシーバ12の片持ちの板14が無い時は、図6のように大きな膜振動を起こしていたトランスミッションケースカバー11は、図5に示すように、振動の腹部13の振幅が抑えられ、騒音も低減する。
【0013】
図4において、図6の場合(従来)の面直振動レベルを実線で示してあり、図5の場合(本発明)の面直振動レベルを破線で示してある。図4からわかるように、周波数1200Hz近傍において、約10dB(デシベル)もの騒音低減が得られる。
【0014】
また、塗料17が、オイルレシーバ12の片持ちの板14とトランスミッションケースカバー11との交わり部16の断面くさび形状部の少なくとも一部を埋めているので、塗料17が振動減衰(振動の速度にかかる減衰係数)を大きくして、より一層、トランスミッションケースカバー11の振動を抑える。また、断面くさび形状部に入ったオイルも同様に減衰として働く。
上記の振動抑制においては、従来の構造に対し、別の部材を設けているのではなく、オイルレシーバ12に片持ちの板14を延長して設けるだけであるから、部品点数増加はない。
【0015】
【発明の効果】
請求項1のケース振動低減構造によれば、固着体の固有振動数をケースの固有振動数に一致するように設定し、固着体をケースの振動モードのほぼ腹の部分に固着させるので、固着体がダイナミックダンパーとして作動し、ケースの膜振動を効果的に低減することができる。また、固着体の固有振動数を設定する構造であるため、部品点数増加を招かない。
また、オイルレシーバを延長して片持ち板部を形成することによりトランスミッションケースカバーの振動を低減することができる。
また、オイルレシーバの延長によりくさび形状断面が形成され、そこの付着塗料が多くなることにより、減衰作用も増大し、トランスミッションケースカバーの振動を一層低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明実施例のケース振動低減構造の正面図である。
【図2】 本発明実施例のケース振動低減構造の断面図である。
【図3】 本発明実施例のケース振動低減構造の一部の断面図である。
【図4】 本発明実施例のケース振動低減構造による振動低減を示すグラフ(面直振動レベル対周波数図)である。
【図5】 本発明実施例のケース振動低減構造の、FEMによる振動モード図である。
【図6】 従来のケース振動低減構造(トランスミッションケースカバー)の、FEMによる振動モード図である。
【図7】 従来のケース振動低減構造(トランスミッションケースカバー)の正面図である。
【符号の説明】
10 ケース本体
11 ケース(トランスミッションケースカバー)
12 固着体(オイルレシーバ)
12a 座面
12b オイル入口
12c オイル出口
12d 通路
13 振動モードのほぼ腹の部分
14 片持ち板
15 溶接部
16 交わり部
17 塗料
18 インプットシャフト
19 本体ケース
Claims (1)
- ケースと、該ケースに固着された固着体とからなるケース体において、固着体の固有振動数をケースの固有振動数に一致するように設定し、固着体をケースの振動モードのほぼ腹の部分に固着し、
前記ケースがトランスミッションケースカバーであり、前記固着体がオイルレシーバであり、オイルレシーバの座面を延長して片持ちの板とし、
前記オイルレシーバの片持ちの板と前記トランスミッションケースカバーとの交わり部は断面がくさび形状となっており、該くさび形状断面の少なくとも一部はオイルレシーバおよびトランスミッションケースカバーに付着する塗料によって埋められていることを特徴とするケース振動低減構造。
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