JP3816678B2 - 画像形成装置等の静音化機構 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば複写機、普通紙ファクシミリ、レーザプリンタ等の画像形成装置、OA機器、家電製品等における静音化機構の改良に関し、特にモータ等の駆動源や駆動機構の稼働によって発生する騒音を静音化する機構を、機器、製品の構造体を構成するベース部材内に設けることにより、装置の大型化、大幅な改造、コスト増等を招くことなく極めて効率的に静音化することを可能ならしめた画像形成装置等の静音化機構に関する。
【0002】
【従来の技術】
複写機、普通紙ファクシミリ、レーザプリンタ等の画像形成装置や、OA機器、家電製品等は、モータ等の駆動源や、モータ等によって駆動される機構を備えている為、稼働時に騒音が発生し易く、騒音は職場、家庭等の機器設置環境を悪化させるため、従来から騒音を低減させるための静音化技術が種々提案されている。
画像形成装置の分野においては、装置から発生する騒音を静音化するための技術は数多く提案されており、例えば特開平4−315161号公報「防音装置」には、対向する位置関係で少なくとも一対設けた遮音部材と吸音部材とを一体にしたものを筐体の底板に固着または着脱可能に配置して装置の静音化を図る技術が開示されている。これは、遮音材と吸音材を組み合わせて装置筐体の床下部分を遮蔽するものであり、床下部分から騒音が放射している場合には非常に高い静音化効果がある。
しかし、この従来技術にあっては、本来存在していない静音化のための部材をわざわざ筐体の床下に付加する必要がある為に組み付け作業性が悪化するばかりでなく、機器をキャスターで移動させる時にはこの静音化部材を取り外す必要があるので面倒である。
また、構造体(骨格体)に関する技術として特開平6−175419号公報の「画像形成装置の構造体」には、底面を構成するベース部材の上にチャンネル状の複数の骨組部材を組付け、これらを溶接によって固着することにより下部骨格体を構成し、更に複数の骨組部材を組付けて溶接によって固着することにより上部骨格体を構成し、最後に上部骨格体と下部骨格体をピンによって位置決めして連結する技術が開示されている。この結果、剛性が高く、低コストで製造できる複写機の構造体が提案できるとされている。しかし、この従来技術にあっては、剛性の高い構造体を得ることができるものの、静音化に対する考慮は一切なされていない。
【0003】
次に、画像形成装置のメーカーがシリーズ機を開発する場合、駆動モータの回転数(画像形成速度)を異ならせた複数機種から成るシリーズ機を、装置の構造体(骨格体)を共通使用して製造することにより、開発効率の向上を図る方策がしばしば採られる。この場合、機種に応じて駆動モータの回転数が違うことに起因して、騒音の発生周波数が変化することになる。従って、ある機種の画像形成装置から発生する騒音の周波数に対応して設けられた静音化機構は、同シリーズ中の他の機種から発生する騒音を静音化する機構としては使用できなくなる。
これに対して、特開平6−208385号公報「複写機の騒音吸収装置」には、周波数の変化に応じて可動機構を用いることにより体積を変化させることができる共鳴箱と、騒音の周波数を解析する装置と、共鳴箱の壁を周波数に合わせて可変させる制御装置とから構成され、共鳴周波数を騒音周波数に合わせて共鳴箱の壁を変化させて騒音を吸収する騒音吸収装置を複写機本体の外装板に配置した技術が開示されているが、周波数の解析装置や共鳴箱の体積を変化させる手段などが必要となり、コストアップとなる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、新たに部材を追加したり、大幅な改造を加えること無く、従来の画像形成装置等の底部を構成する既存のベース部材の剛性を保ったまま、格別の占有スペースをとることなく、ベース部材の構造を少し変更するだけで簡単に周波数レベルの高い騒音を静音化できる画像形成装置等の静音化機構を提供することを目的とする。
また、本発明は、同一構造の構造体を用いかつ駆動モータの回転数を異ならせた複数の機種から成るシリーズ機などにおいて、機種ごとに騒音の発生周波数が異なる場合であっても、低コストで、従来の装置のベース部材の剛性を保ったまま、まったく占有スペースを取らずに、ベース部材を共通使用して簡単に周波数レベルの高い騒音を静音化できる画像形成装置の静音化機構を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する為、請求項1の発明は、底部に板金からなる箱体状のベース部材を備えた構造体と、該構造体に組み付けられて構造体を覆う為の外装材と、を備えた画像形成装置等において、上記ベース部材は、少なくとも一つの中空の共鳴空間と、該共鳴空間とベース部材外部とを連通する通路とを備え、上記ベース部材に設けられ、上記通路を介して画像形成装置等の内部に連通する上記共鳴空間は、上記ベース部材の上面と下面のそれぞれ対称な位置に設けた同形状の補強用の絞り加工部間に形成される空間であり、上記通路は、上記画像形成装置等の稼動時に発生する騒音の周波数に対応した形状を有すると共に、画像形成装置等の内部に連通し、上部板金部材の上面に形成した絞り加工部に形成した穴であることを特徴とする。
請求項2の発明は、底部に板金からなる箱体状のベース部材を備えた構造体と、該構造体に組み付けられて構造体を覆う為の外装材と、を備えた画像形成装置等において、上記ベース部材は、少なくとも一つの中空の共鳴空間と、該共鳴空間とベース部材外部とを連通する通路とを備え、上記通路は、上記画像形成装置等の稼動時に発生する騒音の周波数に対応した形状を有すると共に、画像形成装置等の内部に連通し、上記共鳴空間を構成する上記ベース部材の上面には、断面積の異なる通路を一つ以上設け、画像形成装置等の稼働時に発生する騒音の周波数に応じて選択した一つの通路以外は遮蔽することを特徴とする。
請求項3の発明は、底部に板金からなる箱体状のベース部材を備えた構造体と、該構造体に組み付けられて構造体を覆うための外装材と、を備えた画像形成装置等において、上記ベース部材は、少なくとも一つの中空の共鳴空間と、該共鳴空間とベース部材外部とを連通する通路とを備え、上記ベース部材に設けられ、上記通路を介して画像形成装置等の内部に連通する上記共鳴空間は、上記ベース部材の上面と下面のそれぞれ対称な位置に設けた同形状の補強用の絞り加工部間に形成される空間であり、上記通路は、上記ベース部材の上面に形成した絞り加工部に形成した穴であり、上記画像形成装置等の稼動時に発生する騒音の周波数を消音するに適した長さ、断面積を備えることを特徴とする。
請求項4の発明は、底部に板金からなる箱体状のベース部材を備えた構造体と、該構造体に組み付けられて構造体を覆うための外装材と、を備えた画像形成装置等において、上記ベース部材は、少なくとも一つの中空の共鳴空間と、該共鳴空間とベース部材外部とを連通する通路とを備え、上記通路は、上記ベース部材の上面に形成した穴であり、上記画像形成装置等の稼動時に発生する騒音の周波数を消音するに適した長さ、断面積を備え、上記共鳴空間を構成する上記ベース部材の上面には、断面積の異なる通路を一つ以上設け、画像形成装置等の稼働時に発生する騒音の周波数に応じて選択した一つの通路以外は遮蔽することを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に示した実施の形態に従って詳細に説明する。
図1は本発明の静音化機構を適用せんとする画像形成装置の一例としての電子複写機の概略を示す構成図であり、まずこの複写機の全体構成と作用について簡単に説明する。
図1に示した複写機は、一般にコンソールタイプの複写機と称せられているものであって、床面に載置して使用できるように全高が高く設定され、上部1と、下部2とから構成されている。上部1は、ケース3内に光学要素を収容した光学ユニット4と、その下方に位置する作像系の各ユニットを有する。下部2は、複数の給紙装置5を有している。この複写機の上部1の上面には自動原稿搬送装置(ADF)6が搭載されている。
自動原稿搬送装置6の上部に位置する原稿台7上に載置された原稿(図示せず)が、光学ユニット4のケース3に支持されたコンタクトガラス8上に自動給送されて停止する。次いで、光学ユニット4の光源9が図1に示した位置から右方に移動し、このとき原稿面が光源9により照明され、その原稿画像が結像光学系10によって感光体11上に結像される。
感光体11は図1の時計方向に回転し、このとき帯電チャージャ12によって表面を一様に帯電され、その帯電面に上述の如く原稿画像が結像される。これによって感光体11上に静電潜像が形成され、この潜像は現像ユニット13から供給されるトナーによってトナー像として可視像化される。
一方、下部2に配置されたいずれかの給紙装置5から転写紙14が感光体11に向けて給送され、転写チャージャ15によって感光体11上のトナー像が転写紙14に転写される。この転写紙が定着ユニット16を通る際に、転写されたトナー像が転写紙上に定着され、次いで転写紙はコピー済み用紙として機外に排出される。図1に示した複写機は、両面コピーもとれるように構成されているが、ここではその説明を省略する。
トナー像を転写した後に感光体11上に残留するトナーは、クリーニングユニット53によって除去される。
上述のように、図1に示した複写機は各種部品やユニットを有しているが、駆動部品は一つ以上の駆動モータからの駆動力により駆動する。また、これら部品やユニットは構造体(骨格体)に支持されている。
【0007】
図2は製造工程中の構造体の一例を示す斜視図である。
図2に示した構造体は、上部骨格体17と下部骨格体18とを有し、上部骨格体17は上部1用の構造体であって、前述の感光体11、現像ユニット13、クリーニングユニット53及び定着ユニット16などを支持する手段である。また下部骨格体18は複写機の下部2用の構造体であって、給紙装置5などを支持する手段である。
先ず、下部骨格体18は、その底部に位置する板状のベース部材19と、チャンネル状に形成された複数の骨組部材20,21,22,23,24,25,26,27,28とから成り、これらを溶接によって一体に固着した構成を備えている。
ベース部材19は、後述の図3に示すように、絞り加工を施された上部板金部材29と下部板金部材30とを互いに組付け、これらを溶接によって一体に固着した構成を有し、上部板金部材29の四隅のコーナ部に図2に示す如く垂直に立った4本の骨組部材20,21,22,23の下部が溶接によって固着されている。後述するように、ベース部材19は絞り加工を施した上下の板金部材29、30の開口側同士を弁当箱状に組み付けた上で溶着したので、一部が中空構造でありながら十分な剛性を有した構成となっている。
なお、図2に矢印Aで示した向きが、複写機の手前側、すなわち通常オペレータと向き合う側となり、矢印Bで示した側が奥側となる。またオペレータが複写機に向き合ったときに、左右方向となる向きは、図2に矢印Cで示してある。
【0008】
前述のようにベース部材19に固定された4本の骨組部材20,21,22,23のうちの手前側の2本の部材20,22の上部と、奥側の2本の部材21,23の上部には、それぞれ左右方向に延びる骨組部材24,25が溶接によって固着され、また手前側の1本の骨組部材20と奥側の1本の骨組部材21には、前後に延びる骨組部材26の各端部が溶接によって固着されている。同様に前後の骨組部材24,25にも、前後に延びる2本の骨組部材27,28の各端部が溶接によって固着されている。実際の製造時には、4本の骨組部材24,25,27,28を図2のように一体に組付けて結合したものを、4本の垂直な骨組部材20,21,22,23の上部に固着すると作業能率がよい。
一方、上部骨格体17は、底部を構成する4本の骨組部材31,32,33,34を矩形環状に組付け、これに必要に応じて補強用の骨組部材35を組付けると共に、これらを溶接によって互いに固着することによって構成した下部構造体部分を備える。更に、この下部構造体部分の四隅に溶接によって垂直に立った4本の骨組部材36,37,38,39を固着し、奥側の部材38,39の上部に骨組部材40を溶着し、手前側の骨組部材36,37の上部に骨組部材50を差し渡した状態で溶着し、前後の骨組部材36と38、37と39との間に夫々骨組部材41,42を差し渡して溶着した構成を備えている。
【0009】
構造体を構成する各骨組部材は、スポット溶接とプラグ溶接の少なくとも一方の溶接法によって結合される。溶接電極が挿入可能な箇所についてはスポット溶接とし、そうではないところは、締結すべき一方の骨組部材に例えば長穴をあけてプラグ溶接を行えばよい。図2に例示した骨組部材は、いずれもプラグ溶接によって簡単に固着することができる。
また下部骨格体18の奥側の骨組部材25の上部左右には、上方に突出する少なくとも2つのピン46が固定され、これらのピン46が上部骨格体17の骨組部材31,33の奥側の部位に穿設された取付孔47(図2にはその一方だけを示してある)に嵌合する。このように、両骨格体17,18は、ピン46を介して互いに連結され、かつ位置決めされる。その際、一対の取付孔47の一方の孔を、長孔とすることが位置決め作業において好ましい。
上記各骨格体18、17の組付けが完了した後で、夫々に対して外装材を組み付けることにより筐体が完成する。
一般的に、構造体(骨格体)に外装材を取り付けて外観をよくしたり、ユーザーヘの安全性を高めたり、装置内に粉塵が入る事を防いだり、騒音が外部へ漏れることを防いでいる。しかし、筐体内部に配置された駆動モータ等から発生する駆動系の騒音は、外装材を透過して外部に漏れる場合が多く、騒音を静音化することは容易ではない。
【0010】
次に、図3は発明のベース部材19の一例の構成を説明する為の分解斜視図であり、図4はベース部材の要部断面図である。
図3はベース部材19を上部板金部材29と下部板金部材30に分解した状態を示しており、この状態から両板金部材を弁当箱状に組み付けて溶接によって一体に固着する。なお、弁当箱状とは、一面が開口した2つの箱体の開口側同士をつき合わせて嵌合させた状態を指称する。
上下の板金部材29、30は、所定肉厚の金属板に対して外周フランジ絞り加工と、張り出し絞り加工と、絞り反し加工を施したものであり、それぞれ1枚の板金から図3のような形状に成形されている(絞り加工部を備え、かつ一面が開口した箱体)。このように、べース部材19を2つの箱体状の板金部材29,30の開口側同士をつき合わせて嵌合させることにより弁当箱状に構成すれば、各部材29,30を、スポット溶接とプラグ溶接の少なくとも一方の溶接法によって固着することができ、従って大規模な溶接設備を用いることなく、簡単かつ低コストでベース部材19を製造することができる。両板金部材29,30に対する溶接個所は、図3中に×印で示してあり、図3の場合には、両部材29,30がスポット溶接とプラグ溶接とによって弁当箱状に一体に締結されている。上部板金部材29に示した溶接個所は絞り加工によって凹所化された低面に添った部分であり、下部板金部材30に示した溶接個所は外周の側壁に添った部分である。
【0011】
次に、図4は、上部板金部材29と下部板金部材30を組み合わせて弁当箱状に構成した状態の断面図である。
図3において、上部板金部材29の陥没部(溶接面となる凹所)の下面Dと、下部板金部材30の突出部の上面Eを面接触するように合わせ×印で示した溶接個所をスポット溶接する。下面Dと上面Eが平面のみから成ると強度が落ちるので、上部板金部材29と下部板金部材30に対称な形状で絞り反し部分(補強用の絞り加工部)44、45を設ける。上部板金部材29の上面に形成した絞り反し部分44は上方に向けて突出した三角形状の凸部であり、下部板金部材30の底面に形成した絞り反し部分45は下方へ向けて突出した三角形状の凸部である。本実施例では絞り反し部分44、45を各板金部材29、30について4個所づつ設け、上下位置関係にある各絞り反し部分44と45とが夫々一つの空洞(共鳴空間)49を形成する結果、ベース部材19として組みあがった時に、同形状の密閉された空洞49(体積V1)を4つ形成することになる。今回は、密閉された空洞49は4つとも同じ体積V1を有するものとするが、必ずしも常に同じ体積である必要はない。
本発明は、この空洞(共鳴空間)49を利用して、ヘルムホルツ共鳴器57をベース部材19に形成した点が特徴的である。
【0012】
本形態例では、上部板金部材29の板面(上面)だけに、空洞49一つに対応して穴51、52、54、55をそれぞれ一つ設ける。ヘルムホルツ共鳴器57は、図4に示すように、体積V1の空洞49に、長さTb(板金板厚)、断面積(開口面積)Sbの短管(本実施例では穴)51が結合することにより構成されており、この短管51の開口部は外部空間(機械内部)につながっている。今、機械内部の騒音源より短管51の入口に音圧が作用したとすると、短管51内の媒質(空気)が一体運動を行い、空洞49内の媒質に圧力変動を生じさせる。このような現象は、短管51内の媒質を質点、空洞49内の空気の体積変化による圧力変化をバネと仮定すると、力学系の質点−バネモデルと等価となり、ある周波数(以下、ヘルムホルツ共鳴周波数と呼ぶ)に対して共振(共鳴)が生じる。このヘルムホルツ共鳴周波数において空洞49内部への音響エネルギーが閉じ込められ、外部空間(機接内部)にとっては消音状態となる。よって、機械内部のその周波数は共鳴器に閉じ込められるので機械外部に漏れなくなる。
この場合、ヘルムホルツ共鳴周波数Fhは、(1)式で示される。
h (Hz)=C/2π(Sb/V1・Tb)1/2 ・・・・(1)
C:音速(340000mm/s)
(その他の長さの単位はmm)
式(1)より、短管51の断面積Sb、長さTb、空洞49の体積V1を変化させることによってヘルムホルツ共鳴周波数を変えることが出来ることが判る。本形態例では4つの空洞49(体積V1)に対して、夫々断面積Sbの異なる短管51、52、54、55を4通り設置しているので、4通りの騒音周波数に対応することができるが、長さTb,空洞49の体積を種々変更させることにより、異なった周波数の騒音に対応できるようにしてもよい。
【0013】
図5は、画像形成装置の周波数分布の一例を示す図であり、周波数のピークとなる部分は、駆動モータの回転に起因する周波数であることが多く、駆動モータ自身から発生する周波数、モータ初段ギヤの噛み合い周波数、及びこれらの周波数の高調波である場合が多い。
図5の場合は、レベルの高い周波数を4つ選ぶと290Hz、365Hz、465Hz、1200Hzとなる。ヘルムホルツ共鳴器57は4個に限らず、目立つ周波数の数と同数だけ設置すれば、目立つ周波数を全て消すことができるが、その個数と空洞体積は絞り加工の制約条件を受ける。
実際にこの4つの周波数を消音するヘルムホルツ共鳴器を設計してみる。
式(1)より、短管の断面積Sbは、次式(2)により求められる。
Sb=V1・Tb・(Fh ・2π/C)2 ‥・・(2)
ベース部材19の厚さTを、T=30mmとすると、
ヘルムホルツ共鳴器57の空洞49の厚さTh=14mm程度である。
空洞49の三角形の面積(底辺×高さ÷2)を250×170/2=21,250mm2 とすると、体積V1は、
V1=21,250×14=297,500mm3 となり、
式(2)より、短管の断面積Sbとその円の半径をSb=πr2 から求めると、表1の様になる。
Figure 0003816678
従って、各共鳴空間(共鳴空間)49を構成する上部板金部材の板面に夫々表1に示した半径rの断面積をもつ穴(短管)を形成することにより、レベルの高い4つの周波数290Hz、365Hz、465Hz、1200Hzを消音できることとなる。
【0014】
次に、図6及び図7は、本発明の他の形態例のヘルムホルツ共鳴器62を組み込んだベース部材29の構成を示す分解斜視図、及び組み付け状態の縦断面図である。
この形態例のベース部材29は、上部板金部材58と下部板金部材30を弁当箱状に組み合わせた構成を備えており、個々のヘルムホルツ共鳴器62を構成する上部板金部材の板面に短管が複数形成されている点のみ図3、図4の例と異なっている。短管の数を除いた他の構成は図3、図4と同等である為、図3、図4と共通部分には同じ符号を付し、重複した構成の説明は省略する。
電子写真複写機のメーカーサイドにおいては、同じ構造体を共通使用して画像形成速度の異なるシリーズ機を製作することがよくある。画像形成速度が異なるということは、一般的に駆動モータの回転数が異なるということであり、騒音の発生周波数も回転数に比例して変化する。
【0015】
図8は、図5に示した例よりも回転数が1.5倍速くなった時の周波数分布の例を示す図である。図5の場合に比べて、騒音レベルも周波数も高い側にシフトしている。図5でレベルが高かった周波数である290Hz、365Hz、465Hz、1200Hzは、それぞれ435Hz、547.5Hz、697.5Hz、1800Hzにシフトしている。よって、ベース部材29を複数機種間で共通使用せんとする場合、ヘルムホルツ共鳴器の周波数も発生周波数に応じて変化させない限り静音化が不可能となる。
このような問題に対応する為に、本発明では図6、図7に示したように、一つの周波数に対して、例えば290Hzを基準とする周波数に対して、予めヘルムホルツ共鳴器62に、シリーズ機のモータ回転数に対応する断面積Sbの短管を形成しておく。モータ回転数が3通りに異なるシリーズ機に対応する場合は、一つの絞り反し部分44に対して3通りの断面積(Sb1、Sb2、Sb3)を有した短管59、60、61を形成する。つまり、290Hz:基本,435Hz:1.5倍,580Hz:2倍の如く、各周波数に対応して共鳴する短管59、60、61を形成する。
【0016】
ところで、共鳴周波数Fh が変化した時の円形の短管の断面積Sbの半径rの変化の割合は、空洞(共鳴空間)49の体積V1と通路長さTbが一定の場合、式(2)より、
SbA =πrA2 =V1・Tb・(FhA・2π/C)2 ‥・式(3)
SbB =πrB2 =V1・Tb・(FhB・2π/C)2 ・・・式(4)
式(3)を式(4)で割ると、
A 2/rB 2=FhA 2 /FhB 2
となり、正の解を選ぶと
A /rB =FhA/FhB
である。
よって、共鳴周波数Fh と短管の断面積Sbの半径rは比例関係にあり、一度モータの回転数に合う短管の断面積Sbの半径rを設定した後は、モータの回転数の変化に比例させて半径rを変えた穴を開けておけばよい。モータの回転数が1.5になったら、半径rも1.5倍すれば共鳴周波数が合致する。
このようにしてモータ回転数が例えば3通りに異なるシリーズ機の場合は、図6、図7のように3通りの面積Sb1、Sb2、Sb3を備えた短管59、60、61を形成する。
【0017】
空洞49を構成する絞り反し部分44に、予め上記の如き半径rの断面積を有した円形の短管59、60、61等を開けておき、消音しようとする周波数にあわせて不要な短管を遮音材等で塞いでおけば、このベース部材29をシリーズ機中の異機種間に共通使用して静音化できる。
上記においては一つのヘルムホルツ共鳴器62について説明したが、本形態例ではヘルムホルツ共鳴器62が4つ形成されている。これによって、表1に示される騒音レベルの高い4つの周波数について、駆動モータの回転数の変化によって発生周波数が変化することに対応できる。つまり、実使用時には、個々のヘルムホルツ共鳴器62には一つの通路(短管)しか開口していないが、異なった半径の通路を4つのヘルムホルツ共鳴器に形成しておくことにより、騒音レベルの高い4つの周波数について消音することができるわけである。
本発明においては、短管の断面積Sb、長さTb、空洞49の体積V1を変化させることによってヘルムホルツ共鳴周波数を変えることが出来る。本発明の場合、長さTbは板金の厚さなのでこの部分はシリーズ機では共通使用する。よって、必要に応じて短管の断面積Sbと空洞49の体積V1を両方変化させることによってヘルムホルツ共鳴周波数を自由に変えることも可能である。
以上のように本発明にあっては、画像形成装置、OA機器、家電製品等の筐体を構成する構造体(骨格体)に本来備わっているベース部材を利用し、ベース部材の内部に空洞と通路とから成るヘルムホルツ共鳴器を1つ以上形成したので、新たに部材を追加したり、大幅な改造を加えること無く、従来の画像形成装置等の底部を構成する既存のベース部材の剛性を保ったまま、格別の占有スペースをとることなく、ベース部材の構造を少し変更するだけで簡単に周波数レベルの高い騒音を静音化できる画像形成装置等の静音化機構を提供することができる。
【0018】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、新たな部材の追加や大幅な改造を加えること無く、画像形成装置等の構造体の底部を構成する既存のベース部材の剛性を保ったまま、格別の占有スペース増大を招くことなく、ベース部材の構造を少し変更するだけで簡単に周波数レベルの高い騒音を静音化できる画像形成装置等の静音化機構を提供することができる。
また、本発明は、同一構造の構造体を用いかつ駆動モータの回転数を異ならせた複数の機種から成るシリーズ機などにおいて、機種ごとに騒音の発生周波数が異なる場合であっても、低コストで、従来の装置のベース部材の剛性を保ったまま、まったく占有スペースを取らずに、ベース部材を共通使用して簡単に周波数レベルの高い騒音を静音化できる画像形成装置の静音化機構を提供することを目的とする。
即ち、請求項1、2及び3記載の発明においては、画像形成装置等の箱状のベース部材の中に共鳴装置を一体に組み込むことによって、従来と比較してまったく場所を取らずに吸音したい周波数を吸音できる。また、この共鳴空間は、ベース部材の補強のために施された絞り加工によって形成される空間なので、強度を保ったまま共鳴器を組み込める。
請求項4記載の発明においては、画像形成装置等の弁当箱状のベース部材の中に共鳴空間を一体に組み込み、共鳴空間と画像形成装置内部をつなぐ短管を複数設け、必要な短管以外は遮音して使用しないようにする事により、吸音する周波数を選択でき、駆動モータの回転数が異なるシリーズ機にもベース部材を共通使用して静音化できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用する画像形成装置の概略構成説明図。
【図2】図1の画像形成装置の構造体の構成を示す分解斜視図。
【図3】本発明の一形態例に係るベース部材の分解図。
【図4】ベース部材の組み付け状態の要部断面図。
【図5】ある機種の画像形成装置の騒音周波数を示す図。
【図6】本発明の他の形態例に係るベース部材の分解図。
【図7】図6のベース部材の組み付け状態の要部断面図。
【図8】他の機種の画像形成装置の騒音周波数を示す図。
【符号の説明】
1 上部、2 下部、3 ケース、4 光学ユニット、5 給紙装置、6 自動原稿搬送装置(ADF)、7 原稿台、8 コンタクトガラス、9 光源、10結像光学系、11 感光体、12 帯電チャージャ、13 現像ユニット、14 転写紙、15 転写チャージャ、16 定着ユニット、17 上部骨格体、18 下部骨格体、19 ベース部材、20,21,22,23,24,25,26,27,28 骨組部材、29 上部板金部材、30 下部板金部材、31,32,33,34、36,37,38,39 骨組部材、44、45 絞り反し部分(補強用の絞り加工部)、49 空洞(共鳴空間)、51、52、54、55 穴(短管)、57 ヘルムホルツ共鳴器、58 上部板金部材、59、60、61 短管、62 ヘルムホルツ共鳴器。

Claims (4)

  1. 底部に板金からなる箱体状のベース部材を備えた構造体と、該構造体に組み付けられて構造体を覆う為の外装材と、を備えた画像形成装置等において、上記ベース部材は、少なくとも一つの中空の共鳴空間と、該共鳴空間とベース部材外部とを連通する通路とを備え、上記ベース部材に設けられ、上記通路を介して画像形成装置等の内部に連通する上記共鳴空間は、上記ベース部材の上面と下面のそれぞれ対称な位置に設けた同形状の補強用の絞り加工部間に形成される空間であり、上記通路は、上記画像形成装置等の稼動時に発生する騒音の周波数に対応した形状を有すると共に、画像形成装置等の内部に連通し、上部板金部材の上面に形成した絞り加工部に形成した穴であることを特徴とする画像形成装置等の静音化機構。
  2. 底部に板金からなる箱体状のベース部材を備えた構造体と、該構造体に組み付けられて構造体を覆う為の外装材と、を備えた画像形成装置等において、上記ベース部材は、少なくとも一つの中空の共鳴空間と、該共鳴空間とベース部材外部とを連通する通路とを備え、上記通路は、上記画像形成装置等の稼動時に発生する騒音の周波数に対応した形状を有すると共に、画像形成装置等の内部に連通し、上記共鳴空間を構成する上記ベース部材の上面には、断面積の異なる通路を一つ以上設け、画像形成装置等の稼働時に発生する騒音の周波数に応じて選択した一つの通路以外は遮蔽することを特徴とする画像形成装置等の静音化機構。
  3. 底部に板金からなる箱体状のベース部材を備えた構造体と、該構造体に組み付けられて構造体を覆うための外装材と、を備えた画像形成装置等において、上記ベース部材は、少なくとも一つの中空の共鳴空間と、該共鳴空間とベース部材外部とを連通する通路とを備え、上記ベース部材に設けられ、上記通路を介して画像形成装置等の内部に連通する上記共鳴空間は、上記ベース部材の上面と下面のそれぞれ対称な位置に設けた同形状の補強用の絞り加工部間に形成される空間であり、上記通路は、上記ベース部材の上面に形成した絞り加工部に形成した穴であり、上記画像形成装置等の稼動時に発生する騒音の周波数を消音するに適した長さ、断面積を備えることを特徴とする画像形成装置等の静音化機構。
  4. 底部に板金からなる箱体状のベース部材を備えた構造体と、該構造体に組み付けられて構造体を覆うための外装材と、を備えた画像形成装置等において、上記ベース部材は、少なくとも一つの中空の共鳴空間と、該共鳴空間とベース部材外部とを連通する通路とを備え、上記通路は、上記ベース部材の上面に形成した穴であり、上記画像形成装置等の稼動時に発生する騒音の周波数を消音するに適した長さ、断面積を備え、上記共鳴空間を構成する上記ベース部材の上面には、断面積の異なる通路を一つ以上設け、画像形成装置等の稼働時に発生する騒音の周波数に応じて選択した一つの通路以外は遮蔽することを特徴とする画像形成装置等の静音化機構。
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