JP3813877B2 - 基板の処理方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,基板の処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
多層配線構造の半導体デバイスの製造工程では,ウェハ上に層間絶縁膜を形成し,その後当該層間絶縁膜を処理する工程が行われる。層間絶縁膜とは,多層配線構造内の電気的に絶縁性を有する絶縁層であり,その絶縁材料として,例えばMSQ(メチルシルセスキオキサン),HSQ(ハイドロゲンシルセスキオキサン)が用いられている。
【0003】
かかる層間絶縁膜に関する処理は,例えばSOD(Spin on Dielectric)装置で行われ,このSOD装置では,ゾル−ゲル法,シルク法,スピードフィルム法,およびフォックス法等の膜形成方法が用いられ,かかる膜形成方法では,前記MSQ等の塗布液をウェハ表面に塗布することによって層間絶縁膜が形成される。そして,ゾル−ゲル法以外の上記方法では,ウェハ上に層間絶縁膜が形成された後に,エッチング対象材料の選択比を向上させるために層間絶縁膜を硬化させる硬化処理(アニール処理)が行われる。
【0004】
かかる硬化処理は,従来よりバッチ式の大型加熱炉で行われており,複数枚のウェハをまとめて加熱炉内に搬入し,高温で所定時間加熱することによって行われている。そして,当該硬化処理では,加熱による熱エネルギーによって,絶縁材料のMSQが重合,架橋といった高分子化反応を起こし,層間絶縁膜が硬化される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら,かかる加熱炉での硬化処理は,通常500℃程度の高温度で行われるが,それでもMSQ等の高分子化反応が終了するまでに30分〜60分程度の長時間を要していた。このように硬化処理に長時間を要すると,ウェハの多品種,変量生産で求められるウェハ処理時間の短縮化,すなわち短TAT(Turn Around Time)化の実現が困難となる。また,高温度での処理となるため,高温に弱い絶縁材料は使用できないという欠点があった。
【0006】
また,加熱炉での硬化処理では,複数枚のウェハをまとめて処理していたため,先に絶縁膜が形成されたウェハは,後のウェハを待つ必要があり(すなわち「待ち時間」が生じる),絶縁膜が形成されてから硬化されるまでのトータルの処理時間がウェハ毎に異なってくる。これによって,例えば塗布後に一旦溶剤を蒸発させるための加熱処理が施された場合には,ウェハ間の熱履歴が異なってしまい,層間絶縁膜の品質にばらつきが生じることがある。
【0007】
さらに,加熱炉での硬化処理は,スループットを向上させるために高分子反応が完了する最小限の時間で行われており,層間絶縁膜の膜厚が厚いような場合には,層間絶縁膜の深部において高分子化反応が十分に行われていないことがある。
【0008】
本発明は,かかる点に鑑みてなされたものであり,より短時間でかつ低温度で上記硬化処理を行い,ウェハ等の基板の総処理時間を短縮し,当該総処理時間を基板間で一定にする基板の処理方法を提供することをその目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
参考例としての基板の処理方法であって,基板に層間絶縁膜を形成する工程と,処理室内の前記基板上の層間絶縁膜に対して電子線を照射し,当該層間絶縁膜を硬化させる工程とを有する基板の処理方法が提案される。
【0010】
電子線による照射は,極めて高いエネルギーを有する電子線を照射対象物に対して効果的に照射することができる。請求項1によれば,当該高エネルギーの電子線を基板上の層間絶縁膜に照射することによって,層間絶縁膜の高分子化反応が短時間で開始され,層間絶縁膜の硬化速度が向上される。これによって硬化処理時間が大幅に短縮され,全処理時間も短縮される。また,従来のように高温に加熱する必要がないため,硬化処理を比較的低温度で行うことができ,耐熱性の弱い絶縁材料も用いることができる。さらに,電子線の照射は,枚葉式で行えるので,層間絶縁膜が形成されてから硬化処理されるまでのトータルの処理時間がほぼ一定に維持できる。また,電子線は,透過性に優れているので,層間絶縁膜の膜厚が厚い場合においても,均一な硬化処理を行うことができる。
【0011】
前記層間絶縁膜の硬化処理において,基板を所定温度に加熱するようにしてもよい。このように,基板を加熱することによって,基板がより高いエネルギを有することになるため,層間絶縁膜の高分子化反応が促進され,硬化処理時間をより短縮することができる。これによって基板の全処理時間もより短縮される。
【0012】
また,前記層間絶縁膜の硬化処理を大気よりも酸素濃度の低い低酸素雰囲気で行うようにしてもよい。このように,かかる硬化処理を低酸素雰囲気内で行うことによって,放射された電子線が酸素分子等に衝突して,電子線が散乱したりエネルギーを損失したりすることを抑制できる。これによって,電子線が基板に適切に照射され,層間絶縁膜の硬化処理が好適に行われる。また,電子線の照射をより低出力で,より遠くから行うことができる。
【0013】
少なくとも前記基板周辺の雰囲気を酸素よりも分子量の小さい気体に置換することによって前記低酸素雰囲気を作り出すようにしてもよい。このように,酸素よりも分子量の小さい気体に置換することによって,酸素分子の作る電場によって引き起こされる電子線の散乱を抑制できるので,層間絶縁膜の硬化処理が好適に行われる。なお,酸素よりも分子量の小さい気体とは,例えばヘリウム,窒素等である。
【0014】
また,前記低酸素雰囲気は,前記処理室を減圧することによって作り出してもよい。このように処理室を減圧することによって,酸素分子等が減少され,放射された電子線の散乱が抑制できる。
【0015】
本発明によれば,基板の処理方法であって,基板に層間絶縁膜を形成する工程と,処理室内で前記基板上の層間絶縁膜に対して電子線を照射し,当該層間絶縁膜を硬化させる工程とを有し,前記層間絶縁膜を形成する工程は,基板に層間絶縁膜となる塗布液を塗布する工程を有し,当該塗布工程と前記層間絶縁膜を硬化させる工程との間に,基板を加熱するプレ加熱工程が行われ,電子線を照射して層間絶縁膜を硬化させた後,前記処理室内でプラズマを発生させる工程をさらに有し,前記プラズマは高周波電力の供給によって発生させることを特徴とする基板の処理方法が提供される。このように,基板をプレ加熱することによって,層間絶縁膜内に残存する溶剤等を蒸発させることができる。これによって,後の硬化処理の際に電子線等の高エネルギを受けて溶剤等が蒸発することを防止できるので,硬化処理が適切に行われなかったり,当該溶剤によって電子線の光源が汚染されたりすることが防止される。電子線の照射によって基板の電位が上昇(いわゆるチャージアップ)した場合,かかるプラズマに曝すことによって,電位を下げることができる。
【0016】
プレ加熱工程が終了してから基板に電子線が照射されるまでの時間を一定に制御するようにしてもよい。このように,かかる時間を一定に制御することによって,プレ加熱から電子線の照射までにおける基板の熱履歴が一定になる。これによって,基板間の熱履歴のばらつきが抑制されるので,各基板に所定の熱量が提供され,一定の品質を有する適切な絶縁膜が形成される。
【0017】
前記プレ加熱は,層間絶縁膜の硬化処理時の基板の温度よりも低い温度で行われるようにしてもよい。これによって,基板温度を段階的に上昇させることができるので,急激な温度上昇によるクラックの発生,絶縁材料の変質及び絶縁性の低下等が抑制される。また,比較的低温度でも層間絶縁膜中の溶剤を蒸発させることができるので,このプレ加熱によって当該溶剤の蒸発工程も好適に行うことができる。
【0018】
また,層間絶縁膜の硬化処理の後に,ポスト加熱を行ってもよく,当該ポスト加熱は,前記層間絶縁膜の硬化処理時の基板の温度よりも高い温度で行うようにしてもよい。かかる加熱を行うことによって,層間絶縁膜の下層域における電子線によるダメージを復帰させることができるので,層間絶縁膜の絶縁性が向上し,より良質な層間絶縁膜が形成できる。
【0020】
また,別の観点による参考例として,基板に層間絶縁膜となる塗布液を塗布する塗布工程と,前記塗布工程の後,基板を加熱するプレ加熱工程とを繰り返し行い,最終の塗布工程の後,処理室内で前記基板上の複数の層間絶縁膜に対して電子線を照射して当該複数の層間絶縁膜を同時に硬化する工程とを有する基板の処理方法が提案される。かかるによれば,複数の層間絶縁膜の硬化時間を従来よりも短縮することが可能である。
【0021】
別の観点による参考例として,処理室内で基板を載置する載置台と,前記載置台上の基板に電子線を照射する装置と,前記載置台と電子線を照射する装置との間に配置されるグリッド電極とを有する基板の処理装置が提案される。
かかる基板の処理装置によれば,電子線がグリッド電極を通過する際に,電子線のスピードが弱められたり,通過する電子の数が減少され,基板に到達する電子線のエネルギーを制御することができる。
【0022】
また別の観点による参考例としての基板の処理装置は,処理室内で基板を載置する載置台と,前記載置台上の基板に電子線を照射する装置と,前記処理室内にプラズマを発生させるプラズマ発生装置とを有していてもよい
かかる基板の処理装置によれば,電子線の照射によって基板の電位が上昇(いわゆるチャージアップ)した場合,かかるプラズマに曝すことによって,電位を下げることができる。
【0023】
前記した各基板の処理装置における載置台は,基板に対して逆バイアス電圧を印加することが可能なように構成してもよい。これによって電子線の入射速度を弱めて基板に対する電子線のエネルギーを制御することが可能である。
参考例としての基板の処理装置は,基板に絶縁膜を形成する基板の処理装置であって,基板に絶縁膜となる塗布液を塗布する塗布ユニットと,前記絶縁膜が塗布された基板を加熱処理する加熱ユニットとを有する第1処理ステーションと,前記加熱ユニットで加熱処理された基板の絶縁膜に対し電子線を照射して当該絶縁膜を硬化させる硬化処理ユニットを有する第2処理ステーションと,前記第1処理ステーションと前記第2処理ステーションとの間で基板を搬送する基板搬送体と,を備えている。
上記基板の処理装置の前記硬化処理ユニットは,処理室内の雰囲気を少なくとも大気の酸素濃度よりも低い所定の低酸素雰囲気に維持できるように構成されていてもよい。
また,前記硬化処理ユニットは,処理室内で基板を載置する載置台と,電子線を照射する電子線管に対向する位置で前記載置台を回転させる回転手段を備えていてもよい。
さらに,前記載置台には,前記載置台を前記加熱ユニットの加熱処理の温度よりも高い所定温度に昇温し維持する加熱手段が設けられていてもよい。
前記載置台は,前記電子線管との距離を調節可能にする距離調節手段を備えていてもよい。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下,本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は,本実施の形態にかかるウェハWの処理方法が実施される絶縁膜形成装置1の概略を示す平面図であり,図2は,絶縁膜形成装置1の正面図であり,図3は,絶縁膜形成装置1の背面図である。
【0025】
絶縁膜形成装置1は,図1に示すように,例えば25枚のウェハWをカセット単位で外部から絶縁膜形成装置1に対して搬入出したり,カセットCに対してウェハWを搬入出したりするカセットステーション2と,絶縁膜形成工程の中で枚葉式に所定の処理を施す各種処理ユニットを備えた第1処理ステーション3と,当該第1処理ステーション3に隣接して設けられ,ウェハWの受け渡し等を行うインターフェイス部4と,層間絶縁膜の硬化処理を行う後述する硬化処理ユニット55を備えた第2処理ステーション5とを一体に接続した構成を有している。
【0026】
カセットステーション2では,載置部となるカセット載置台6上の所定の位置に,複数のカセットCをX方向(図1中の上下方向)に一列に載置自在となっている。そして,このカセット配列方向(X方向)とカセットCに収容されたウェハWのウェハ配列方向(Z方向;鉛直方向)に対して移送可能なウェハ搬送体7が搬送路8に沿って移動自在に設けられており,各カセットCに対して選択的にアクセスできるようになっている。
【0027】
ウェハ搬送体7は,ウェハWの位置合わせを行うアライメント機能を備えている。このウェハ搬送体7は後述する第1処理ステーション3側の第3の処理ユニット群G3に属する受け渡し部41に対してもアクセスできるように構成されている。
【0028】
第1処理ステーション3では,その中心部に主搬送装置13が設けられており,主搬送装置13の周辺には各種処理ユニットが多段に配置されて処理ユニット群を構成している。当該絶縁膜形成装置1においては,4つの処理ユニット群G1,G2,G3,G4,が配置されており,第1及び第2の処理ユニット群G1,G2は絶縁膜形成装置1の正面側に配置され,第3の処理ユニット群G3は,カセットステーション2に隣接して配置され,第4の処理ユニット群G4は,インターフェイス部4に隣接して配置されている。さらにオプションとして破線で示した第5の処理ユニット群G5を背面側に別途配置可能となっている。前記主搬送装置13は,これらの処理ユニット群G1,G2,G3,G4に配置されている後述する各種処理ユニットに対して,ウェハWを搬入出可能である。なお,処理ユニット群の数や配置は,ウェハWに施される処理の種類によって異なり,処理ユニット群の数は,1つ以上であれば4つで無くてもよい。
【0029】
第1の処理ユニット群G1には,図2に示すようにウェハWに対して絶縁膜となる塗布液を塗布する塗布ユニット15,16が2段に配置されている。第2の処理ユニット群G2には,薬液のバッファタンク等を内蔵したケミカル室17及び塗布ユニット18が2段に積み重ねられている。
【0030】
第3の処理ユニット群G3では,例えば図3に示すようにウェハWを冷却するクーリングユニット40,カセットステーション2との間でウェハWの受け渡しを行う受け渡し部41,ウェハWを低温で加熱する低温加熱ユニット42,43,ウェハWを高温で加熱する高温加熱ユニット44等が下から順に例えば5段に積層されている。
【0031】
第4の処理ユニット群G4では,例えばクーリングユニット45,インターフェイス部4との間でウェハWの受け渡しを行う受け渡し部46,低温加熱ユニット47,高温加熱ユニット48,49等が下から順に例えば5段に積み重ねられている。なお,硬化処理前のプレ加熱は,低温加熱ユニット42,43又は47及び高温加熱ユニット44,48又は49の二段階で行われる。
【0032】
インターフェイス部4には,ウェハ搬送体50が設けられている。ウェハ搬送体50は,X方向(図1中の上下方向),Z方向(垂直方向)の移動とθ方向(Z軸を中心とする回転方向)の回転が自在にできるように構成されており,第4の処理ユニット群G4に属する受け渡し部46と後述する第2処理ステーション5の載置部56,57に対してアクセスできるように構成されている。
【0033】
第2処理ステーション5は,インターフェイス部4に隣接して設けられている。第2処理ステーションは,層間絶縁膜の硬化処理が行われる硬化処理ユニット55と,インターフェイス部4と硬化処理ユニット55間で搬送されるウェハWを一旦載置する載置部56,57と,当該載置部56,57と硬化処理ユニット55間のウェハWの搬送を行う搬送アーム58とを有している。
【0034】
次に,上述した硬化処理ユニット55の構成について詳しく説明する。図4は,硬化処理ユニット55の構成の概略を示す縦断面の説明図である。
【0035】
硬化処理ユニット55は,その全体を覆い,処理室Sを形成するケーシング55aを有しており,硬化処理ユニット55内の雰囲気を所定の雰囲気に維持できるようになっている。ケーシング55aの中央部には,ウェハWを載置する載置台60が設けられている。載置台60は,厚みのある円盤状に形成されており,その材質には,熱伝導性の優れたもの,例えばセラミックである炭化ケイ素や窒化アルミニウム等が用いられている。
【0036】
載置台60には,載置台60を昇温させる加熱手段である,例えばヒータ61が内蔵されている。ヒータ61は,図示しないコントローラによってその発熱量が制御されており,載置台60の温度を所定温度に維持できるようになっている。
【0037】
また,載置台60の下部には,載置台60を回転可能させるための回転手段である,例えばモータ等を備えた駆動機構63が設けられている。これによって,後述する電子線管66から電子線を照射する際に載置台60を回転させ,載置台60上のウェハW全面に均一に電子線を照射することができる。なお,後述する電子線管66との距離を調節可能にする距離調節手段として,駆動機構63に,載置台60を上下動可能とする昇降機構を設けてもよい。
【0038】
載置台60には,載置台60上に突出自在で,ウェハWを支持して昇降させる複数,例えば3本の昇降ピン64が設けられている。これによって,昇降ピン64が上昇してウェハWを受け取り,昇降ピン64が下降してウェハWを載置台60上に載置することができる。
【0039】
硬化処理ユニット55は,載置台60上のウェハWに対して電子線を照射する照射装置65を有している。照射装置65は,電子線を照射する複数の電子線管66と電子線の出力や照射時間を制御する照射制御装置67とを有している。電子線管66は,ケーシング55aの上面であって,載置台60と対向する位置に設けられており,ウェハWの上方から層間絶縁膜に向けて電子線を照射できるようになっている。各電子線管66からの電子線は,ウェハWに近づくにつれ広がり,全電子線管66からの照射によって,ウェハW全面に照射できるようになっている。
【0040】
また,ケーシング55aの上面には,酸素以外の気体,例えば不活性気体,ヘリウムガス,窒素ガス等を供給する供給管68a,68bが設けられている。供給管68aは,後述する搬送口71側に設けられ,供給管68bは,後述する搬送口71の反対側に設けられる。これによって,図示しない供給源からの不活性気体がケーシング55a内に供給され,ケーシング55a内を不活性気体に置換し,硬化処理の行われる雰囲気を低酸素雰囲気にすることができる。また,供給管68a,68bには,不活性気体の供給量を調節するバルブ68c,68dがそれぞれ設けられており,ケーシング55a内に供給される不活性気体の供給量を調節することができる。一方,ケーシング55aの下面には,硬化処理ユニット55外部に配置された吸引ポンプ69に接続された排気管70a,70bが設けられており,ケーシング55a内をパージできるようになっている。
【0041】
また,排気管70a,70bには,排気量を調節するバルブ70c,70dがそれぞれ設けられている。上述のバルブ68c,68dとバルブ70c,70dは,制御部Gによってその開閉度が操作可能に構成されている。ケーシング55a内には,ケーシング55a内の気圧や酸素濃度を検出する検出センサKが設けられており,その検出データを制御部Gに送信可能になっている。かかる構成によって,検出センサKによって検出されたデータが制御部Gに送信され,かかるデータに基づいて制御部Gがバルブ68c,68dとバルブ70c,70dとを操作することができる。したがって,ケーシング55a内に供給される不活性気体の供給量とケーシング55a外に排気される排気量が調節可能となり,ケーシング55a内の気圧や酸素濃度を所定の値に制御することができる。また,ウェハWを搬送口71から搬入出する際に,搬送口71側の供給管68aからの供給量を増大させることができ,これによって,搬送口71から漏れた不活性気体分を補充し,ケーシング55a内を所定の雰囲気に維持することができる。
【0042】
ケーシング55aの搬送アーム58側には,ウェハWを搬入出するための搬送口71が設けられている。この搬送口71には,当該搬送口71を開閉自在とするシャッタ72が設けられている。これによって,ケーシング55a内の雰囲気と外部雰囲気とを遮断し,ケーシング55a内を所定の雰囲気に維持できるようになっている。
【0043】
次に,以上のように構成された絶縁膜形成装置1で行われるウェハWの処理プロセスについて説明する。
【0044】
先ず,ウェハ搬送体7によってカセットステーション2から取り出されたウェハWは,受け渡し部42に搬送され,そこから主搬送装置13によって温度管理が行われるクーリングユニット41に搬送される。そして,主搬送装置13によって塗布ユニット15,16又は18に搬送され,ウェハWに層間絶縁膜となる所定の塗布液,例えばMSQを含む塗布液が塗布される。当該塗布処理は,例えばウェハを所定速度で回転させ,当該回転されたウェハWの中央部に塗布液を供給することによって行われ,当該供給された塗布液は,遠心力によってウェハW全面に広げられる。
【0045】
そして,塗布液が塗布されたウェハWは,例えば低温加熱ユニット42に搬送され,例えば150℃で2分間の加熱処理が行われる。その後,ウェハWは高温加熱ユニット48に搬送され,例えば200℃で1分間加熱される。この低温加熱ユニット42及び高温加熱ユニット48でのプレ加熱によって,塗布液中の溶剤が蒸発,除去され,ウェハW上に層間絶縁膜が形成される。
【0046】
次に,ウェハWは主搬送装置13によって受け渡し部46に搬送される。そして,インターフェイス部4のウェハ搬送体50によって,第2処理ステーション5の載置部57に搬送される。次いで,ウェハWは,搬送アーム58に保持され,硬化処理ユニット55のシャッタ72が開放されると同時に硬化処理ユニット55内に搬送される。
【0047】
ここで,ウェハW上の層間絶縁膜を硬化処理する硬化処理ユニット55の作用について説明する。先ず,ウェハWが硬化処理ユニット55内に搬送される前に,例えば図示しないコントローラによってヒータ61の発熱量を制御し,載置台60の温度を,上述した高温加熱ユニット48の加熱温度よりも高い,例えば250℃に維持しておく。
【0048】
そして,搬送アーム58によってウェハWが搬送口71からケーシング55a内に搬入されると,ウェハWは,載置台60の中央部上方まで移動され,予め上昇して待機していた昇降ピン64に受け渡される。その後,搬送アーム58がケーシング55a内から退避し,シャッタ72が閉鎖される。次いで,ウェハWは,昇降ピン64の下降と共に下降され,載置台60上に載置される。これによって,ウェハWが昇温され始める。このとき供給管68a,68bからケーシング55a内に,例えばヘリウムガスが供給され,排気管70a,70bからはケーシング55a内の雰囲気が排気される。これによって,ケーシング55a内がヘリウムガスに置換される。そして,検出センサKによってケーシング55a内の酸素濃度がモニターされ,その検出データに基づいて制御部Gがバルブ68c,68d及びバルブ70c,70dを操作する。これによって,ケーシング55a内の雰囲気が低酸素濃度,例えば酸素濃度が3ppm以下の雰囲気に維持される。なお,ウェハWが搬入出される際に,バルブ68cを調節して供給管68からのヘリウムガスの供給量を増大させてもよい。
【0049】
その後所定時間が経過し,載置台60上のウェハWの温度が250℃に安定すると,駆動機構63によってウェハWが低速度で回転される。次に,図4に示すように各電子線管66からウェハW表面の層間絶縁膜に対して所定出力,例えば10keVの電子線が所定時間,例えば2分照射される。これによって,電子線のエネルギーが層間絶縁膜に提供され,層間絶縁膜を形成するMSQ(メチルシルセスキオキサン)の高分子重合を誘発して,層間絶縁膜が硬化される。なお,このときの電子線の出力,照射時間は,膜厚,処理雰囲気等によって定められる。
【0050】
2分間の電子線の照射が終了すると,載置台60の回転が停止され,再び昇降ピン64によって上昇される。このとき,ヘリウムガスの供給と排気が停止される。そして,シャッタ72が開放され,搬送アーム58がケーシング55a内に進入し,ウェハWが搬送アーム58に受け渡される。
【0051】
次いで,ウェハWは,硬化処理ユニット55から載置部56に搬送され,載置される。そして,ウェハWは,例えばウェハ搬送体50及び主搬送装置13によってカセットステーション2まで搬送され,カセットCに戻されて,一連のウェハW処理が終了する。
【0052】
以上の実施の形態では,ウェハW上の層間絶縁膜に対して高エネルギーの電子線を照射することによって,層間絶縁膜の硬化処理を行ったので,従来に比べて硬化処理に要する時間が著しく短縮される。また,電子線は,透過性に優れているため層間絶縁膜の内部まで行き渡り,層間絶縁膜全体に渡って均一な硬化処理が行われる。
【0053】
また,ウェハW処理を枚葉式で行えるので,バッチ式で見られたようなウェハWの待ち時間が無くなり,従来に比べて一連のウェハ処理の総処理時間が短縮される。また,待ち時間が無いため,プレ加熱から電子線が照射されるまでの時間がほぼ一定に維持され,ウェハWの熱履歴がウェハ間において一定に維持される。
【0054】
さらに,層間絶縁膜の硬化処理において,載置台60によってウェハWを加熱するようにしたので,ウェハWに熱エネルギーも与えられ,硬化処理が促進され,より短時間で硬化処理を行うことができる。
【0055】
また,硬化処理において,ケーシング55a内をヘリウムガスによって低酸素雰囲気に維持したので,酸素分子による電子線の散乱,エネルギーの減衰等が抑制され,電子線の照射を好適に行うことができる。
【0056】
硬化処理が行われる前に,低温加熱ユニット42及び高温加熱ユニット48においてプレ加熱を行うようにしたので,塗布液中の溶剤が十分に蒸発される。これによって硬化処理時に溶剤が蒸発して電子線管66等を汚染することを防止できる。また,プレ加熱の温度を硬化処理時の加熱温度よりも低くすることによって,ウェハWを徐々に昇温していくことができる。これによって,ウェハWを急激に昇温したときに発生するクラックや,層間絶縁膜の変質等を防止することができる。なお,本実施の形態におけるプレ加熱は,低温処理ユニット42と高温処理ユニット48とで二段階に分けて行われたが,プレ加熱を,塗布液が塗布されたウェハWを所定温度で一回のみ加熱することによって行ってもよい。このときの所定温度は,加熱処理時の加熱温度よりも低くする方が望ましい。
【0057】
以上の実施の形態では,硬化処理ユニット55内の低酸素雰囲気を,ヘリウムガスを供給することによって実現していたが,硬化処理ユニット55の処理室Sを減圧することによって実現してもよい。この場合,例えばケーシング55a内の気密性を確保しておき,吸引ポンプ69によって排気管70a,70bからケーシング55a内の雰囲気を吸引する。これによって,硬化処理ユニット55内が減圧され,低酸素雰囲気に維持される。また,ケーシング55a内を酸素以外の気体に置換しつつ,減圧して低酸素雰囲気を実現してもよい。
【0058】
また,上述の実施の形態においてプレ加熱から電子線照射までの時間をより一定になるように制御してもよい。このような場合,例えば図5に示すように高温加熱ユニット48に,ウェハWが当該高温加熱ユニット48から搬出されたことを検出するセンサ80を設ける。センサ80のかかる検出信号は,搬送アーム58を制御する制御装置81に出力されるようにする。また,制御装置81には,予め設定された所定時間をカウントするタイマー機能が設けられる。そして,センサ80から制御装置81に前記検出信号が出力されると,タイマー機能のカウントが開始され,その間にウェハWは,載置部57まで搬送される。そして,設定時間が経過しタイマー機能がOFFになった時に,搬送アーム58が載置部上のウェハWを保持し,硬化処理ユニット55内に当該ウェハWを搬送する。これによって,プレ加熱終了から電子線が照射されるまでの時間がより一定に制御され,ウェハWの熱履歴が一定に保たれる。
【0059】
また,以上の実施の形態では,硬化処理の終了したウェハWは,そのままカセットステーション2に戻されていたが,硬化処理後にポスト加熱を行ってもよい。この場合,例えば硬化処理の終了したウェハWを,一旦受け渡し部46に戻し,そこから主搬送装置13によって例えば高温加熱処理44に搬送し,加熱処理を行うようにする。当該加熱処理は,硬化処理時の加熱温度よりも高い温度,例えば300℃で行うようにする。これによって,層間絶縁膜の下層における電子線によるダメージを復帰することができるので,層間絶縁膜の絶縁性が向上し,より良質な層間絶縁膜が形成される。
【0060】
次に他の図6は基板の処理装置としての硬化処理ユニット55の他の例を示しており,この例では,処理室Sを形成するユニットケーシング55a内に,グリッド電極101が配置されている。グリッド電極101は電子線管66と載置台60との間に位置している。グリッド電極101に対しては電源102から所定の電力が供給される。載置台60には電源103から所定の電圧が印加され,載置台60上のウエハWに対して逆バイアスの電圧が印加される。
【0061】
かかる硬化処理ユニット55によれば,電子線管66からの電子線はグリッド電極を通過する際に,電子線のスピードが弱められたり,通過する電子の数が減少してウエハWに到達する電子線のエネルギーを制御することができる。これによってウエハW上に塗布されている絶縁膜の厚さの如何に関わらず,所定の深度のところの絶縁膜を適切に硬化することができる。例えば硬化すべき絶縁膜が薄い場合にはエネルギーを弱め,硬化すべき絶縁膜が熱い場合にはエネルギーを弱めないように制御することで,適切な硬化処理が可能になる。かかるコントロールは,多層絶縁膜の硬化処理に有効である。
【0062】
また載置台60にウエハWに対する逆バイアス電圧を印加することによっても,電子線の入射速度を弱めることができる。したがって電源103の調整によってウエハWに到達する電子線のエネルギーを制御することができる。
以上のことから,グリッド電極101と電源103の双方の制御によって,より精密なコントロールが可能である。
【0063】
ところで電子線によって硬化処理した際,ウエハWがチャージアップされることがある。許容範囲を超えてウエハWがチャージアップした場合には,製品不良の原因となるおそれがある。したがって必要に応じて電子線による硬化処理が終了した後,ユニットケーシング55a内にプラズマを発生させ,このプラズマによってチャージアップしたウエハWの電位を下げることが好ましい。
【0064】
プラズマを発生させるソースとしては,電子線管66をそのまま用いることができる。またプラズマをより発生しやすくするためユニットケーシング55a内に,Ar(アルゴン)ガスを導入するとよい。
【0065】
さらに電子線によってプラズマを発生させた際にウエハWへの直接照射を嫌うなら,電子線の照射角度を変えたり,あるいは図7に示したように,高周波電源111からの高周波によってプラズマを発生させる電極やアンテナ等のプラズマ発生装置112をユニットケーシング55a内に配置してもよい。
【0066】
ところで通常の硬化処理は,多層絶縁膜の場合であっても,従来は絶縁膜の材料となる塗布液の塗布した後,加熱して硬化処理し,その後再度絶縁膜の材料となる他の塗布液を塗布し,その後再び加熱して硬化処理している。そして既述したように,従来はバッチ式の加熱炉内に硬化処理すべきウエハをその都度搬入して,長時間加熱による硬化処理をしていた。
この点本願発明によれば,既述したように電子線によって硬化処理するので従来より遙かに短い時間で硬化処理が行える。
【0067】
しかしながら電子線による硬化処理は,電子線のエネルギーの調整により,膜厚と硬化時間とは直接比例しない。したがって,例えば第1の塗布液を塗布した後,ソフトベーキングとも言える溶剤を蒸発させるだけのプレ加熱を行った後,直ちに次の塗布液を塗布し,後はそのまま電子線による硬化処理を行えば,多層絶縁膜の硬化についてさらに効率のよい処理が実行できる。
なお現像処理が終わった後のウエハWに対して,電子線を照射することにより,リソグラフィ工程によって形成された膜を強化することができる。
【0068】
なお,以上の実施の形態は,SODの層間絶縁膜について適用したものであったが,本発明は他の層間膜,例えばSOG(spin on glass),Low―k膜(有機シリコン酸化膜),レジスト膜等のウェハ処理においても適用できる。
【0069】
また,以上で説明した実施の形態は,半導体ウェハデバイス製造プロセスの層間絶縁膜形成工程におけるウェハの処理方法について適用したものであったが,本発明は半導体ウェハ以外の基板例えばLCD基板の処理方法においても適用できる。
【0070】
【発明の効果】
本発明によれば,基板の処理時間を大幅に短縮することができ,スループットが向上し,短TAT化が図られる。また,一連の基板の処理が枚葉式で行えるので,基板処理時間が安定し,一定となり,これによって品質のばらつきが抑制されるので,歩留まりの向上が図られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態にかかるウェハの処理方法が実施される絶縁膜形成装置の構成の概略を示す横断面の説明図である。
【図2】図1の絶縁膜形成装置の正面図である。
【図3】図1の絶縁膜形成装置の背面図である。
【図4】硬化処理ユニットの縦断面の説明図である。
【図5】絶縁膜形成装置の他の構成例を示す横断面の説明図である。
【図6】硬化処理ユニット内にグリッド電極を配置した構成を示す縦断面の説明図である。
【図7】硬化処理ユニット内にプラズマ発生装置を配置した構成を示す縦断面の説明図である。
【符号の説明】
1 絶縁膜形成装置
15,16,18 塗布ユニット
42,43,47 低温加熱ユニット
44,48,49 高温加熱温度
55 硬化処理ユニット
64 照射装置
66 電子線管
68a,68b 供給管
70a,70b 排気管
S 処理室
W ウェハ

Claims (5)

  1. 基板の処理方法であって,
    基板に層間絶縁膜を形成する工程と,
    処理室内で前記基板上の層間絶縁膜に対して電子線を照射し,当該層間絶縁膜を硬化させる工程とを有し,
    前記層間絶縁膜を形成する工程は,基板に層間絶縁膜となる塗布液を塗布する工程を有し,
    当該塗布工程と前記層間絶縁膜を硬化させる工程との間に,基板を加熱するプレ加熱工程が行われ,
    電子線を照射して層間絶縁膜を硬化させた後,前記処理室内でプラズマを発生させる工程をさらに有し,
    前記プラズマは高周波電力の供給によって発生させることを特徴とする,基板の処理方法。
  2. 前記プレ加熱工程が終了してから基板に電子線が照射されるまでの時間が一定に制御されることを特徴とする,請求項1に記載の基板の処理方法。
  3. 前記プレ加熱は,前記層間絶縁膜を硬化させる工程における基板の温度よりも低い温度で行われることを特徴とする,請求項1又は2のいずれかに記載の基板の処理方法。
  4. 前記層間絶縁膜を硬化させる工程後に,基板を加熱するポスト加熱工程を有することを特徴とする,請求項1〜3のいずれかに記載の基板の処理方法。
  5. 前記ポスト加熱は,前記層間絶縁膜を硬化させる工程における基板の温度よりも高い温度で行われることを特徴とする,請求項4に記載の基板の処理方法。
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