JP3813302B2 - 自動2輪車の車体フレーム構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は自動2輪車の車体フレーム構造に係り、特に、鋳造フレームを用いてエンジンへ締結するものに関する。
【0002】
【従来の技術】
実用新案登録第2512877号公報には、ヘッドパイプとメインフレームを一体のフレーム前部として中空モノコック構造に形成し、その内部へエアクリーナエレメントを収容することにより、フレーム前部をエアクリーナケースとし、かつエアクリーナの吸入口をメインフレームの側面に形成し、吐出口を底部に形成した自動2輪車の車体フレーム構造が示されている。
【0003】
また、特公平3−19827号公報には、ヘッドパイプと左右一対のメインフレームを備えるとともに、ヘッドパイプを含む車体フレーム前端部を平面視略三角形をなす中空体の鋳造部材(以下、ヘッド部材という)とし、この中空体の天板部に設けた穴より内部空間へエアクリーナエレメントを挿入することにより、ヘッド部材自体をエアクリーナケースにした自動2輪車の車体フレーム構造が示されている。
【0004】
この場合のエアクリーナ構造は、天板部の穴を覆う蓋部材に設けられた吸入ダクトから外気を導入し、吸入ダクトの中空部内へ入る部分に取付けられたエアクリーナエレメントにより浄化し、底部に設けた吐出口より導出管を介して気化器へ清浄空気を吐出するようになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記実用新案登録第2512877号のモノコック構造フレームはプレス成形品やパイプ材を溶接、接着又はボルト締結により一体的に組み付けて得られるものである。したがってこのような構造のフレームは、製造時の工数が多くなり、かつ溶接時の熱影響による修正等の手間がかかる。
【0006】
そのうえ、仮にモノコック部分に中空の押し出し成形部材を用いたとしても、エアクリーナエレメントの着脱用開口部を別に形成しなければならないので、やはり製造に手間がかかることになる。
【0007】
一方、特公平3−19827号のように、エアクリーナケースを構成するヘッド部材を中空体に鋳造するものでは、金型を単純に上下合わせしただけでは成形できないから成形工数が多くなる。
【0008】
そのうえ、車体フレームの前部上面に吸入ダクトを突出させるから、外観性や燃料タンク等の隣接する他部品との配置を考慮したレイアウトが難しくなる。
【0009】
しかも、この車体フレームは、ヘッド部材と別体の部材である左右一対のメインフレームを必要とし、このメインフレームはそれぞれが比較的太くて重量のある角パイプ材であり、かつ適当ヶ所間にクロスパイプを溶接して連結しなければならず、さらに各前端部とヘッド部材とも溶接しなければならないので、車体フレーム全体としての重量が増加し、かつ前記実用新案同様に製造工数が多いものになる。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本願発明に係る自動2輪車の車体フレーム構造は、前輪を操向自在に支持するヘッドパイプと、このヘッドパイプから後方へ延びるメインフレームとを備えた車体フレームを有する自動2輪車において、
前記ヘッドパイプと前記メインフレームを一体に鋳造し、かつ前記メインフレーム部分が上向きに開放された略皿状をなす鋳造フレームを成形するとともに、
この鋳造フレームの前記略皿状部を上方から蓋部材で覆うことにより閉空間を形成し、この閉空間をエアクリーナエレメントの収容空間としたことを特徴とする。
【0011】
このとき、前記略皿状部の底面に、エアクリーナの吸入口及び吐出口並びに排水口を開口させ、これらの開口部へ直接ダクト部材を取付けることもできる。
【0012】
【発明の効果】
略皿状部はメインフレームと一体に形成されているから、この略皿状部によって鋳造フレーム全体の剛性を高めることができ、車体フレームの剛性を従来と同程度にする場合には、鋳造フレーム全体をより軽量化できる。
【0013】
したがって、前記従来例のように、左右別々のメインフレームを用いる必要がなく、かつクロスパイプで補強する必要もないので、車体フレーム全体を可及的に軽量化でき、かつ製造工数を削減できる。
【0014】
しかも、ヘッドパイプとメインフレームが一体で、かつメインフレーム部分が上向きに開放された略皿状をなすように鋳造フレームを成形したので、この鋳造フレームを金型の単純な上下合わにより成形できるため成形工数を削減でき、成形が容易になる。
【0015】
そのうえ、略皿状部と蓋部材による閉空間をエアクリーナエレメントの収容部とすることにより、略皿状部をエアクリーナケースに兼用できるので、その大容量化並びにエアクリーナエレメントの支持部や蓋部材の取付ボス等の形成も容易になる。
【0016】
また、略皿状部の底面に、エアクリーナの吸入口及び吐出口並びに排水口を開口させ、これらの開口部へ直接ダクト部材を取付ければ、比較的広い略皿状部の底面を有効に利用してこれらダクト部材を配設できるとともに、外観にあまり影響のない部分へ配設するのでレイアウトの自由度も高くなる。
【0017】
【発明の実施の形態】
図1は、本願発明に係る鋳造フレームの外観側面図(これを搭載する自動2輪車を併せて示す)、図2は図3の2−2線に沿う鋳造フレームの断面図、図3は図4の3−3線に沿うリッドを取付けた状態における車体フレームの断面図、図4はその図3におけるX矢示方向図(リッド及びエアフィルタは除去してある)、図5は図3の5−5線断面図である。
【0018】
これらの図において、アルミ等の適宜軽合金を用いて、成形された鋳造フレーム1は、前輪のヘッドパイプ2と、その後方へ左右一対で斜め下がりに延出するメインフレーム3と、左右のメインフレーム3間に位置する略皿状部4とが一体に形成されている。
【0019】
左右のメインフレーム3の各後端部には、鋳造等適宜手段により別体で製作されたエンジンブラケット5が後述する要領で締結されている。
【0020】
略皿状部4は上方が開放された略皿状をなし、その開口部には別体のリッド6が取付けられることにより、内部空間をエアクリーナ用空間7とし、ここにエアフィルタ8が取付けられている。リッド6の周縁部は略皿状部4側の開口縁部へシールされて取付けられる。
【0021】
エアクリーナ用空間7の内部は、略皿状部4の内部中央部に形成された環状壁9へエアフィルタ8を着脱自在に取付けることにより、ダーテイルーム7aとクリーンルーム7bに区画されている。
【0022】
クリーンルーム7bには略皿状部4の底部に支持された気化器10の吸気管11が収容され、かつダーテイルーム7aには、略皿状部4の底部で気化器10より前方位置へ下向きに開口して設けられた吸気ダクト12の上端部が突出されている。
【0023】
吸気ダクト12からダーテイルーム7a内へ吸入された外気は、エアフィルタ8で浄化された後、クリーンルーム7bから吸気管11及び気化器10を通ってエンジン13へ送られるようになっている。
【0024】
エンジン13は水平対向2気筒形式の水冷エンジンであり、クランクケースの後端部から後方へ突出する取付部14に、後輪懸架装置を構成するリヤアーム15の前端が揺動自在に取付けられている(図1)。
【0025】
エンジン13の後部は、メインフレーム3及びエンジンブラケット5に対して締結部材16、17及び18で締結されている。また、エンジン13の上部がメインフレーム3の中間部に取付けられたエンジンハンガ19によって支持されている。
【0026】
図3乃至5に明らかなように、左右のメインフレーム3は、それぞれが上方へ開放された略U字状断面をなし、外壁20、内壁21及び底壁22を有している。このうち内壁21は外壁20よりも高く、略皿状部4の周壁の一部を兼ねている。
【0027】
メインフレーム3の底壁22の中間部には取付穴22aが形成されており、ここにエンジンハンガ19の屈曲された上部19aを重ねてボルト23a及びナット23bで締結されている。上部19aは、内壁21の下部に形成された穴21aから内部へ入れられる(図5)。
【0028】
メインフレーム後部の底壁22には、ボス24、25が一体に突出形成され、それぞれに車体完成時の鉛直方向へ軸線を向けたボルト通し穴24a、25aが形成されている。また締結部材16が締結される部分の内壁21には、ボス26が車体中心方向へ一体に突出形成されている(図4)。
【0029】
略皿状部4の周壁は、これら左右の内壁21と、鋳造フレームと一体の前壁27及び後壁28を連続して形成したものであり、底部29にはリッド6を取付けるためのボス30が環状壁9を挟んで前後に上方へ突出形成されている。
【0030】
底部29の後部には一部を下方へ屈曲して最低部31を設け、ここにドレンパイプ32を取付け、このドレンパイプ32により、内部へ溜まる水を略皿状部4の下方へ排出するようになっている。
【0031】
なお、底部29には、吸入口29a、吐出口29b及び排水口29cが形成され、これら開口部へ本願発明のダクト部材を構成する吸入ダクト12、吸気管11及びドレンパイプ32がそれぞれ直接取付けられている(図3及び4参照)。
【0032】
また、図3乃至図5に示すように、ヘッドパイプ2の軸穴2a、メインフレーム3の内外壁20、21及びこれらの間に形成される凹部空間3a、環状壁9及びそのリブ9a、9b、略皿状部4の前壁27及び後壁28、前壁27とヘッドパイプ2間の凹部空間27a、ボス30及びそのリブ30a、30b並びに底部29から上方へ一体に突出するリブ29d、29eさらには凹部空間3a内のボス24及び25は、それぞれ同一の型抜き方向に沿って形成され、この型抜き方向はヘッドパイプ2の軸穴2aの中心線C(図3)と平行である。
【0033】
エンジンブラケット5は上部ほど車体中央部側へより深く入り込むような全体として略階段状をなし(図4)、その中間部はメインフレーム3を構成する底壁22の後端部と上下に重なり合う段部33をなし、ここでボルト34a及びナット34bで締結されている(図2)。
【0034】
さらに、上部35は、内壁21の内側をボス26の高さまで延びて、ここに通し穴35aがボス26の軸穴と一致するように形成されている。この通し穴35aはエンジン13の後部上側取付部13aを車幅方向へ横断して形成された内面にねじ切りされた締結穴13b(図2)にも一致するようになっている。
【0035】
エンジン13の後部上側取付部13a及びその左右側に添えられた一対のエンジンブラケット5を左右のボス26の間へ入れ、各穴をそれぞれ一致させて締結部材16をボス26の一方から他方へ通してナット36で締結することにより、メインフレーム3とエンジンブラケット5がエンジン13へ共締めされ、この締結部が直接取付部になっている。
【0036】
左右のエンジンブラケット5の間に下部37は、エンジン13の下部に形成された後部下側取付部13cの両側に位置し、ここに形成された通し穴37aが、後部下側取付部13cの車幅方向へ形成された左右の締結穴13dと一致するようになっている。
【0037】
そこで、後部下側取付部13cの締結穴13dと左右の通し穴37aを一致させ、それぞれ締結部材18にて締結することにより、左右のエンジンブラケット5の下部37がエンジン13の後部下側取付部13cと締結されている。
【0038】
締結部材17による締結構造も同様であり、これらの締結部材17及び18による各締結部は間接取付部を構成している。
【0039】
ここで、メインフレーム3とエンジンブラケット5のボルト34aによる締結方向は、メインフレーム3及びエンジンブラケット5をエンジン13に対して締結する締結部材16乃至18の各締結方向と直交している。
【0040】
なお、図1に示すように、ヘッドパイプ2はハンドル軸40を回動自在に支持し、その上部にハンドル41を支持するとともに、下部はボトムブリッジ42に取付けられた左右一対のフロントフォーク43を介して前輪44が支持されている。符号45はラジエタ、46はフロントカウル、47はシート、48はサイドボックス、49は後部カバーである。
【0041】
次に、本実施形態の作用を説明する。図3において、ヘッドパイプ2の軸穴2aの中心線Cに沿って、図示を省略した上型及び下型を単純に上下から型合わせすることにより成形でき、このとき、上型は略皿状部4のエアクリーナ用空間7側及びメインフレーム3の内外壁20、21間の凹部空間3a並びにヘッドパイプ2の外周部等を形成できる。
【0042】
また下型は、メインフレーム3の外壁20や略皿状部4の底部29並びにヘッドパイプ2の軸穴等を形成できる。また、各開口部(29a、29b及び29c)もこの上下型による鋳造時において同時に形成される。
【0043】
したがって、ヘッドパイプ2、メインフレーム3及び略皿状部4を一体にした鋳造フレーム1を、金型の単純な上下合わにより成形できるため成形工数を削減でき、成形が容易になる。
【0044】
しかも、この略皿状部4はメインフレーム3と一体に鋳造されているから、略皿状部4によって鋳造フレーム1全体の剛性を高めることができ、従来と同程度の剛性にした場合には全体をより軽量化できる。
【0045】
このため、前記従来例のように、左右別々のメインフレームを用いる必要がなく、かつクロスパイプで補強する必要もないので、車体フレーム全体を可及的に軽量化でき、かつ製造工数を削減できる。
【0046】
そのうえ、略皿状部4の底部29に、エアクリーナの吸入口29a及び吐出口29b並びに排水口29cを開口させ、これらの開口部へ直接ダクト部材(12,11,32)を取付けたので、比較的広い略皿状部4の底部29を有効に利用してこれらダクト部材を配設できるとともに、外観にあまり影響のない部分へ配設するのでレイアウトの自由度も高くなる。
【0047】
また、鋳造フレーム1を締結部材17による直接取付部並びに別体のピボットブラケット5を介在させた同17、18による間接取付部にてエンジン13へそれぞれ締結すると、車体フレーム全体における剛性バランスを適正に保つことができる。
【0048】
さらに、別体のピボットブラケット5の介在により、鋳造フレーム1の成形歪を吸収できるため、鋳造フレーム1をエンジン13へ締結することが可能になる。そのうえ、鋳造フレーム1により品質が安定し、作業工程を削減できる。
【0049】
さらにまた、直接取付部を、鋳造フレーム1とピボットブラケット5の共締め構造にしたので、締結ヶ所を削減できるとともに、締結剛性を確保し易くなる。
【0050】
そのうえさらに、鋳造フレーム1とピボットブラケット5の締結方向であるボルト34aの締結方向を、それぞれのエンジン13に対する締結方向である締結部材16乃至18の各締結方向と直交させたので、ピボットブラケット5の剛性がアップするため、剛性バランスがさらに良好になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明に係る鋳造フレームの外観側面図
【図2】図3の2−2線に沿う鋳造フレームの断面図
【図3】リッドを取付けた車体フレームの断面図
【図4】その平面図
【図5】図3の5−5線断面図
【符号の説明】
1:鋳造フレーム、2:ヘッドパイプ、3:メインフレーム、4:略皿状部、6:リッド(蓋部材)、7:エアクリーナ用空間、8:エアクリーナエレメント、9:環状壁、10:気化器、11:吸気管(ダクト部材)、12:吸入ダクト(ダクト部材)、29:底部、29a:吸入口、29b:吐出口、29c排水口、32:ドレンパイプ(ダクト部材)
Claims (2)
- 前輪を操向自在に支持するヘッドパイプと、このヘッドパイプから後方へ延びるメインフレームとを備えた車体フレームを有する自動2輪車において、
前記ヘッドパイプとメインフレームを一体に鋳造し、このメインフレーム部分が上向きに開放された略皿状をなす鋳造フレームを成形するとともに、
この鋳造フレームの前記略皿状部を上方から蓋部材で覆うことにより閉空間を形成し、
この閉空間をエアクリーナエレメントの収容空間としたことを特徴とする自動2輪車の車体フレーム構造。 - 前記略皿状部の底面に、エアクリーナの吸入口及び吐出口並びに排水口を開口させ、これらの開口部へ直接ダクト部材を取付けたことを特徴とする請求項1に記載した自動2輪車の車体フレーム構造。
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