JP3813138B2 - 静電容量型加速度センサ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は互いに直行する3軸方向の加速度を検出することができる静電容量型加速度センサに関し、特に広い温度範囲に渡ってゼロ点変動を少なくした静電容量型加速度センサを提供しようとするものである。
【0002】
【従来の技術】
図4乃至図8を用いて従来の静電容量型加速度センサの構造及び動作について説明する。図4は平面構造、図5は図4に示したA−A線上の断面を示す。図中10は例えばシリコンのような半導体板を示す。半導体板10はほぼ正四角形状の形とされ、四周に肉厚部が形成されて枠部11が形成される。枠部11で囲まれた中央部分に断面形状が台形の錘接合部12を具備する。
【0003】
錘接合部12と枠部11との間に図5に示すように溝13を形成し、溝13の形成によって肉薄部を形成し、この肉薄部によってダイヤフラム14を構成する。
枠部11の裏側の位置に絶縁基板20を接合し合体する。絶縁基板20は半導体板10の熱膨張係数に可及的に近い熱膨張係数を持つガラスで構成される。絶縁基板20も外周形状は半導体板10と同等の形とされ、その四周に凸条21が形成され、この凸条21の頂面に半導体板10を接合する。凸条21の高さ寸法を所定値に設定することにより半導体板10の裏面と絶縁基板20の表面との間の空隙が均一に揃えられる。
【0004】
絶縁基板20の表面には錘接合部12の底面と対向する位置にZ軸方向(半導体板10の板面に対して鉛直方向)の加速度検出用固定電極22Zを被着形成する。また、錘接合部12の四辺の外周と対向する絶縁基板20の表面に半導体板10の板面と平行する互いに直行する2軸方向(X軸及びY軸)の加速度を検出する2組の電極22X、22Xと22Y、22Yを形成する。
錘接合部12の頂面に錘30を装着する。錘30も半導体板10の熱膨張係数に可及的に近い熱膨張係数を持つ、一般にはガラスが用いられる。
【0005】
錘30を錘接合部12の頂面に装着したことにより、錘30にかかる加速度により、ダイアフラム14に変形を与え、その変形に応じて、どの方向の加速度かを測定することができる。つまり、半導体板10は全体が可動電極として作用し、固定電極22Zと可動電極との間の静電容量及び固定電極22X及び22Xと可動電極との間の静電容量、固定電極22Y及び22Yと可動電極との間の静電容量のそれぞれを測定し、各静電容量の変化を検出してどの方向の加速度かを測定する。
【0006】
図6と図7に加速度が印加された場合にダイヤフラム14が変形する様子を示す。図6に示す例ではX軸方向に加速度Pが印加された場合を示す。加速度Pとは逆向に慣性力Dが発生する。この慣性力Dによって、加速度Pで移動する進行方向の後方に位置するダイヤフラム14に下向の力が印加され、この位置のダイヤフラムは下向に移動する。進行方向の前側に位置するダイヤフラムには上向の力が与えられ、この位置のダイヤフラムは上向きに移動する。このダイヤフラムの変形によって可動電極と固定電極22Xの間の静電容量は小さくなり、可動電極と固定電極22Xとの間の静電容量は大きくなる方向に差動的に変化し、この静電容量の差動変化の極性と変化量とから加速度の印加方向と、その大きさを測定することができる。尚、このとき、Y軸方向の静電容量の変化も測定され、Y軸方向の静電容量の変化とX軸方向の静電容量の変化を合成して加速度の向と、大きさが測定される。
【0007】
図7は垂直方向(Z軸)に加速度Pが印加された場合にダイヤフラム14が変形する様子を示す。加速度Pが上向きである場合には錘接合部12が慣性力Dによって均等に下向に移動し、固定電極22Zとの間の間隙が小さくなる方向に変位する。この結果、可動電極とZ軸方向の加速度検出用固定電極22Zとの間の静電容量は増加方向に変化し、この増加方向の変化により、上向きの加速度であることが解り、その容量変化の量により加速度の大きさを測定することができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで上述したダイヤフラム14で錘接合部12を支持した構造の静電容量型加速度センサでは温度変化に対してZ軸方向の加速度検出用の固定電極と可動電極との間に形成される静電容量が変化し、温度係数を持つ現象が発生することが知られている(尚、X,Y軸に関しては固定電極22X,22X及び22Y,22Yと可動電極との間の静電容量を差動で検出するので温度変化による変動は相殺される。)。この現象は半導体板10と絶縁基板20との熱膨張係数に差が存在することにより発生するものと考えられている。半導体基板10と絶縁基板20との膨張係数を完全に一致させることは困難であり、ある程度の温度係数の発生は容認せざるを得ない状況にある。このため、従来はセンサの温度係数が可及的に小さくなるように半導体板10と絶縁基板20の材質を選定しているが、製造過程のわずかな違い等によって必ずしも熱膨張係数の差を最小の状態に維持することは難しく歩溜が悪い欠点がある。
この発明の目的は、半導体板と絶縁基板との熱膨張係数に差が存在しても、センサとして組立てられた状態で温度係数を可及的に小さくすることができる静電容量型加速度センサを提供しようとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明では、所定の厚みを有し、形状の半導体板で構成され、外周縁に枠部を有し、枠部で囲まれた中央部に島状の錘接合部を有し、この錘接合部の外周と枠部との間に溝が形成され、この溝によって溝の底面に肉薄のダイヤフラムが形成され、枠部の位置で裏側に絶縁基板が所定の空隙を介して接合され、絶縁基板の錘接合部の裏面と対向して半導体板の板面に対して鉛直方向に印加される加速度を検出するための固定電極が形成され、錘接合部の四辺の外側の部分と対向する絶縁基板の面に半導体板の板面に平行する方向の互いに直交する2方向の加速度を検出するための2組の固定電極とを具備して構成される静電容量加速度センサにおいて、
【0010】
錘接合部の四隅に切欠部を形成し、この切欠部の形成によって錘接合部の平面形状を略々正八角形状とし、切欠部と対向する絶縁基板の面に切欠部の面積を含む形状で鉛直方向の加速度検出用固定電極に電気的に接続した温度補正用固定電極を設けた構造とした静電容量型加速度センサを提案する。
【0011】
作用
この発明によれば錘接合部の四隅に切欠部を形成し、この切欠部と対向する絶縁板の表面に温度補正用の固定電極を設け、切欠部の裏面と絶縁基板との間に静電容量を形成する。この静電容量の温度係数はセンサ自身が持つ温度係数と逆極性となる。
つまり本願発明者は図4に示した静電容量型加速度センサにおける温度変化に対するダイヤフラム14の変位を測定した。図8にその測定結果を示す。図中AA(固定電極22Zと対向する領域)で示す領域は温度上昇によりダイヤフラム14が下向に変位する部分、B1、B2、B3、B4は温度上昇によりダイヤフラム14が上向に変位する部分を示す。部分B1〜B4は錘接合部12の4隅に形成される切欠部15と対向する領域である。この測定結果から領域B1〜B4の変位を利用することにより領域AAで発生する温度係数を相殺可能であるものと推測することができる。従って、以下領域B1〜B4を補正領域と称することにする。
【0012】
図8に示した測定結果から見ると、領域AAの面積と領域B1〜B4の面積は明らかに領域AAの方が大きい。従って、図8に示す状態のままでは領域B1〜B4の変位を利用して領域AAの温度係数を完全に相殺することはできない。このため、本発明者は領域B1〜B4の面積を大きくする方法を考察した。
錘接合部12に切欠15が形成されることは本来望ましいものでなかった。つまり、錘接合部12と溝13及び枠11等はエッチングにより形成しているが、エッチングによって平面形状が正四角形の錘接合部12を形成することは難しく、必ず切欠部15が形成されることになる。その理由は、四辺に露出するエッチング面と四隅に形成されるエッチング面のエッチング速度が異なることにある。
【0013】
従来は、切欠部15の切欠量が可及的に小さくなるように図9に示すように四角形のマスク16の外に各四隅にツノ状マスク17を付加し、このツノ状マスク17の形状、特に長さLを調節して切欠量が小さくなるように制限していた。
この発明ではこの制限を解消し、積極的に切欠部15の切欠量を増大させ錘接合部12の平面形状をほぼ正八角形に近い形状に形成し、切欠部15と対向して形成される補正領域B1〜B4の面積を拡大して温度係数を相殺することを可能とした点を特徴するものである。
【0014】
錘接合部12の平面形状をほぼ正八角形に近い形状に形成することにより、本来四角形となるべき四辺の長さが短くなることから、温度上昇により下向に変位する領域AAの面積を小さくすることができる。代わって切欠部15の辺の長さが大きくなることにより補正領域B1〜B4の面積が拡張されるため、温度係数の相殺量を大きく採ることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1にこの発明による静電容量型加速度センサの実施例を示す。この発明による静電容量型加速度センサの特徴とする構造は錘接合部12の平面形状をほぼ正八角形に近い形状(八角形の各辺の長さが互いにほぼ等しい形状とし、切欠部15の辺の長さを従来と比較して増大させる)とした点と、この錘接合部12の形状と共に、切欠部15と対向する補正領域B1、B2、B3、B4と対向する絶縁基板20の表面に、補正領域B1〜B4の面積を含む形状の温度補正用固定電極22C、22C、22C、22Cを形成し、更に、これら温度補正用固定電極22C〜22CをZ軸方向の加速度検出用固定電極22zに接続した構造とした点である。
【0016】
図1に示す実施例では正四角形状のZ軸方向の加速度検出用固定電極22zの各角に四角形の温度補正用固定電極22C〜22Cの各角を重ね合わせて電気的に接続した形状に形成した場合を示す。固定電極22zの各四辺と対向してX軸方向の加速度検出用固定電極22X、22Xと、Y軸方向の加速度検出用固定電極22Yと22Yを絶縁基板20の上面に形成する。
【0017】
このように、補正用電極22C〜22Cを設け、この補正用電極22C〜Cを固定電極22Zに電気的に接続したことにより、温度上昇時に、切欠部15と対向する補正領域B1〜B4の部分のダイヤフラム14が上向きに変位するため、補正用電極22C〜22Cとダイヤフラム14との間に形成されている静電容量は容量値が減少する。この結果、本来センサの温度係数の発生要因である錘接合部12の各辺A、B、C、Dと対向する部分で発生する温度上昇に下向に変位する領域AA(図8参照)の容量値の増加を相殺することができ、センサの持つ温度係数を小さい値に補正することができる。
【0018】
この点で、この発明では特に錘接合部12の四隅に形成する切欠部15の切欠量を、従来止む無く形成されていた切欠部の切欠量より積極的に大きく形成したから、温度上昇に伴って、ダイヤフラム14が上向に変位する補正領域B1〜B4の面積を従来より大きくすることができる。
この結果、温度上昇によって下向に変位する領域AAの総面積と補正領域B1〜B4の総面積を近づけることができ、これによりセンサが持つ温度係数を極めて小さい値にすることができる。
【0019】
図2にこの発明による静電容量型加速度センサと従来の静電容量型加速度センサの温度係数の実施例を示す。図2に示す曲線Aはこの発明による静電容量型加速度センサの温度係数、曲線Bは従来の静電容量型加速度センサの温度係数を示す。図から明らかなように、この発明によれば従来のものより、約1/3程度に温度係数を小さくすることができた。
図3は補正用固定電極22C〜22Cの形状の変形実施例を示す。この実施例では固定電極22Zの四隅から細状導体23を延長して形成し、この細状導体23の先端に補正用固定電極22C〜22Cを接続した構造とした場合を示す。
【0020】
この構造によれば補正領域B1〜B4の発生位置が固定電極22Zの四隅から離れた位置に発生する場合、又は固定電極22Zの形状を小さく取る場合に適用することができる。図3に示した実施例は電極22Zを図1の場合より小さく形成した場合を示す。このように電極22Zの形状を小さく採ることにより、Z軸方向の検出感度が多少低下するが、水平面上のX及びY軸方向の加速度検出とZ軸方向の加速度検出の分離度を向上させることができる。
【0021】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば錘30を錘接合部12を介してダイヤフラム14に搭載し、錘30に発生する慣性力によりダイヤフラム14を変位させ、その変位量を静電容量の変化量で検出してX、Y、Zの3軸方向の加速度を検出する静電容量型加速度センサにおいて、温度変化に伴って疑似的な加速度検出信号を発生し、ゼロ点を変動させる温度係数を充分小さくすることができる。この結果、例えば自動車の車内のように温度上昇が著しい環境下でも安定して実用することができる静電容量型加速度センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1にこの発明の要部の構造を説明するための平面図。
【図2】図1に示した静電容量型加速度センサの温度係数と従来のセンサの温度係数を比較するための特性曲線図。
【図3】この発明の変形実施例を説明するための平面図。
【図4】従来の技術を説明するための平面図。
【図5】図4に示したA−A線上の断面図。
【図6】静電容量型加速度センサの動作を説明するための断面図。
【図7】図6と同様の断面図。
【図8】従来の静電容量型加速度センサが温度係数を持つ理由を説明するための平面図。
【図9】静電容量型加速度センサの要部となる錘接合部の製造方法を説明するための平面図。
【符号の説明】
10 半導体板
11 枠部
12 錘接合部
13 溝
14 ダイヤフラム
15 切欠部
20 絶縁基板
21 凸条
22X、22X X軸方向の加速度検出用固定電極
22Y、22Y Y軸方向の加速度検出用固定電極
22Z Z軸方向の加速度検出用固定電極
22C〜22C 温度補正用固定電極
AA 固定電極22Zと対向する領域
B1〜B4 補正領域

Claims (1)

  1. 周縁に枠部を有し、この枠部で囲まれた中央部に島状の錘接合部を有し、この錘接合部の外周と上記枠部との間に溝が形成され、この溝によって溝の底面に形成された肉薄のダイヤフラムを有する矩形状の半導体板と、
    上記半導体板の上記溝形成面と反対の面と空隙を介して対向し、周縁部に形成された凸条により上記枠部の位置で上記半導体板と接合された絶縁基板と、
    上記絶縁基板の上記半導体板の対向面に形成され、中央部に位置し、上記半導体板の板面に対して鉛直方向に印加される加速度を検出するための正方形状固定電極と、上記ダイヤフラムと対向し、上記正方形状固定電極を挟んで上記絶縁基板の面に形成され、上記半導体板の板面平行し、互いに直交する2方向の加速度を検出するための2組の各一対の固定電極とを具備して構成される静電容量型加速度センサにおいて、
    上記錘接合部は正八角錐台形状であり、その上記絶縁基板側の面は、この面と垂直な方向から見て、1つ置きの各辺が上記正方形状固定電極の4つの辺の対応する1つとそれぞれ平行であり、
    上記正方形状固定電極の4隅とそれぞれ電気的に接続され、固定電極の対角線方向にそれぞれ延長され、正方形状の補正用固定電極が上記ダイヤフラムと対向して上記絶縁基板に形成され、
    上記各補正用固定電極は、温度上昇時に上記ダイヤフラム中の上記絶縁基板から離れる方向に変位する領域と対向している
    とを特徴とする静電容量型加速度センサ。
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