JP3812888B2 - パネル孔用カバー - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、パネルに形成された孔、例えば、自動車のボディーパネルに形成された種々の孔を覆うパネル用カバーに関し、より詳細には、ステアリングシャフト等が挿通する孔を覆うのに用いられて好適なパネル用カバーに関するものものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車の外郭を構成するボディーパネルには数多くの孔が形成されているが、多くの孔は、雨水や飛散水等の侵入を防ぐためにカバーで覆われている。ステアリングシャフトが車室外へ延びる孔もそうであり、この孔は運転席の前方を斜めに延びるパネルに形成されているから、飛散水等が特に侵入し易い。このため、シャフトが挿通する孔との隙間をカバーで覆うことは不可欠であるが、このステアリングカバーの場合、パネルの孔に嵌合される嵌合部をゴム等の弾性体で形成してこの嵌合部を弾性変形させて孔に一方向から内嵌めする構造をとっている。具体的には、弾性体の外周に溝を形成し、溝の両壁で孔周辺のパネルを弾性的に挟着する構造にしている。
【0003】
この場合におけるステアリングカバーの取付けは、嵌合部を孔の一方側(車室側)から引っ張り又は押し込んで嵌め込んでいるが(一人の作業者がパネルの両側に同時に位置することができないから)、径が比較的大きいことやゴムと金属とは滑り難いことから、一度に嵌め込むことができず、部分的に引っ張り又は押し込んで嵌め込むようにしている。例えば、嵌合部の挿入方向前側に複数の引っ張り用の舌片等を突出させてこれを順次引っ張る等して嵌め込んでいる。しかし、嵌合部はゴムであることから変形し易く、嵌め込んだ後に溝の全周を孔に押し付けて変形を直す作業が必要であったし、滑り難いことから引っ張るのに力を要するといったことがあって、組付けに時間と熟練さを要求されていた。又、この構成のものであると、外力がかかると、変形してシール性が損なわれるということもあった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、特開平11−132828号公報には、挿入方向後側よりパネルに添着するゴム面から孔通過のときには内方に弾性変形し、通過後は外方に拡がってゴム面とで孔外周のパネルを挟着する爪状部材を前方に突出させたものが示されている。しかし、爪状部材が弾性変形して孔を通過した後に後方のゴム面とで効果的にパネルを弾性挟着するには、爪状部材の弾性力を適正に設定する必要があり、弾性力が弱いと、弾性が失われてゴム面との弾性挟着が十分でない上に使用中のへたりも生ずる。一方、強すぎると、通過させる際に大きな力を要するといったことがある。更に、爪状部材とゴム面とによるパネルへの押圧は部分的なものであるから、ゴム面が全周に亘って均等に押圧しないという問題もある。本発明は、このような課題を解決したもので、嵌め込みが容易であるとともに、十分なシール性も確保できるようにしたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
以上の課題の下、本発明は、請求項1に記載した、パネルに形成された孔に外周に溝を形成した弾性体の嵌合部を一方向から内嵌めして溝の前壁と後壁とで孔外周のパネルを挟着して孔を覆うパネル孔用カバーにおいて、前壁の一部を剛体で構成してこの剛体前壁の前部に先端が孔に入り込む一定幅の舌片を突設するとともに、弾性体前壁の前部に最小径が孔の径よりも小さい前方ほど径小となったテーパ部を形成したことを特徴とするパネル孔用カバーを提供したものである。
【0006】
以上の手段をとることにより、剛体前壁による第一次装着と、弾性体前壁による第二次装着の二段階装着をとることで、装着が可能になるとともに、このときの作業の容易性が確保される。即ち、第一次装着において、舌片を手で引っ張ることができるとともに、このとき、孔の外周のパネルに舌片を滑らせることで、舌片とパネルとの相対的移動がスムーズになって溝へのパネルの嵌め込みが容易になる。そして、装着後においても、弾性体同士の前壁と後壁とによる弾性挟着によってシール性が確保される。
【0007】
又、請求項2に記載した、剛体前壁と弾性体前壁とがそれぞれ孔の半周弱に亘って形成されるものであり、孔への装着時、剛体前壁が上方に位置するものであれば、第一装着操作及び第二次装着操作共に作業が容易になるし、更に、請求項3に記載した、剛体前壁と弾性体前壁との境界部分を欠落させると、これらの装着作業が一層容易になる。
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明するが、図1は本発明の一例を示すステアリングカバー(以下、カバー)を孔へ装着した状態の断面図、図2はカバーの正面図、図3はカバーの斜視図、図4は孔へカバーを装着するときの要部断面図である。自動車において、室内と室外とを仕切るパネル1の相当個所にステアリングシャフト2が通過する孔3が形成されており、この孔3のステアリングシャフト2以外の部分を閉塞するのが上記したカバー4である。このカバー4は、ゴム等の弾性体を主部材として製作され、孔3に装着される嵌合部5と、嵌合部5からステアリングシャフト2を覆ってその室外側に連繋されるギアハウジング6との間に張設されるジャバラブーツ7とで構成される。
【0009】
嵌合部5の外周には溝8が形成され、この溝8の前壁9と後壁10とで孔3外周のパネル1を前後から弾性挟着してシール性を図りながら固定する。嵌合部5の孔3への装着は、ステアリングシャフト2やギアハウジング6を所定の位置にセットした後(このとき、ジャバラブーツ7はギアハウジング6に結合されている)、作業者が室内側からこれを引っ張って行う。本発明は、以上の前壁9の一部を剛体で形成して剛体前壁9aとするとともに、残りの部分は弾性体のままで残して弾性体前壁9bとしたものである。これに対して、後壁10は全周に亘って弾性体で構成されている。
【0010】
本例では、剛体前壁9aと弾性体前壁9bとをそれぞれ孔3の半周弱に亘って形成してあり、カバー4を孔3へ装着したとき、剛体前壁9aが上方に位置するようにしている。具体的には、剛体前壁9aについては、断面がU字形をした金属板のうちの前板を嵌合部5を形成する弾性体リングの前面に一定の間隙を確保して存在させ、後板を弾性体リングの中に埋入した形態とし、この間隙を溝8とするとともに、後板から弾性体リングの前方部分を後壁10とするのである。従って、金属板からなる前板が剛体前壁9aを構成することになる。更に、剛体前壁9aの中央には、その外周端から径小方向に傾斜して装着時に先端が孔3の中に入り込む一定幅の舌片11を突設している。
【0011】
一方、弾性体前壁9bについては、断面が前板が存在しないL字形をした金属板を用い、後板の前方に所定の間隔を隔てて弾性体を存在させており、この間隔を溝8にするとともに、溝8より前方を弾性体前壁9b、溝8と後板までを弾性体の後壁10としている。更に、弾性体前壁9bの前部は、最小径が孔3の径よりも小さい前方ほど径小となったテーパ部12に形成されている。本例のテーパ部12は、弾性体前壁9bの全周に亘って形成されている。
【0012】
ところで、本例のカバー4は、上下にやや長い楕円形をしているが、剛体前壁9aと弾性体前壁9bとの境界、即ち、左右両側では、この両前壁9a、9bを適当な範囲で欠落させている。更に、剛体前壁9aの端を上方に垂直に切り上げている(図2)。この他、溝8に臨む後壁10の外周付近にはシールのためのリップ13を全周に亘って突設している。
【0013】
以上のカバー4を孔3へ装着する場合について説明すると、まず、孔3から覗いた舌片11を手で手前側へ引っ張り、剛体前壁9a後方の溝8をパネル1に嵌め込む第一装着を行う。このとき、舌片11は剛体であるとともに、前方が孔3に入り込むように突設されているから、孔3の外周を構成するパネル1に対する滑りが良くて引き込みがスムーズに行われるし、剛体前壁9aは円周の半分弱に形成されていて弾性体前壁9bとの境界には前壁9a、9bが存在しない部分があるから、この嵌め込みが可能である上に容易である。
【0014】
次いで、弾性体前壁9bのテーパ部12を手で持ち(必要なら、この部分にも引っ張り用の舌片等を適宜形成しておく)、この部分を孔3に引っ張り込んで弾性体前壁9b後方の溝8をパネル1に嵌め込む第二次装着を行う。このときも、テーパ部12は、弾性体で構成されているとともに、最小径が孔3の径よりも小さい前方が径小のテーパに形成されているから、パネル1に対してテーパ部12が弾性変形しつつ、前方への移動が許容されて溝8に嵌まり込むから、嵌め込みが可能である上に容易である。
【0015】
この場合、孔3の径に対して溝8の外径を若干小さくしておくと、嵌合部5は孔3に対して若干上下に動くことができるから、この二段階による嵌め込みが一層スムーズになる。尚、このようにしたとしても、パネル1を剛体前壁9a及び弾性体前壁9bと後壁10とで弾性挟着するのであるから、シール性は確保されるし、必要なら、嵌合部5(後壁10)の外周にパネル1に押圧するリップ14を形成してもよい。このリップ14は、1枚でもよいが、3枚程度設けると、シール性はより完全になる。
【0016】
図5は関連する参考例を示すカバー15を孔3へ装着した状態の断面図、図6はカバー15の正面図であるが、本例は、溝16の前後を構成する前壁17と後壁18を共に弾性体で構成するとともに、前壁17の前部に全周に亘って最小径が孔3の径よりも小さい前方ほど径小となったテーパ部17aを形成したものである。
【0017】
加えて、本例のものは、溝16の底部にも弾性体の底壁19を設けており、この底壁19の内周を溝16の前方のテーパ部17aから後壁18の後方へかけて通される剛体20を存在させたものである。そして、この剛体20が、底壁19の内周に存在するものは筒体20aであり、後壁18の後方に存在するものは鍔20bである鍔付き筒体20で構成され、鍔20bの後方に、鍔付き筒体20の前端が後壁15の後壁面15aに当接する範囲で後退できる空間21を形成したものである。
【0018】
このカバー15の孔3への装着及びそのときにテーパ部17aが弾性変形してパネル1に対する通過を許容し、通過後は復帰してその前壁17と後壁18とでパネル1を弾性挟着する点も上記と同じであるが、只、テーパ部17aの孔3への引き込みは、手を孔3へ突っ込んで鍔付き筒体20の鍔20bの後面にあてがい、これを手前へ引き寄せることで溝16へ挿入するものである。この場合、手による挿入は部分的に行って全周を嵌め込むことになるが、両手を用いて二カ所同時に行えば、その作業がやり易くて早い。
【0019】
このとき、底壁19の内周側に存在する剛体の筒体20aは、テーパ部17aの過度の径小変形を抑える作用があり、鍔20bは、後壁18を確実に押す作用がある。そして、空間21の存在は、手による鍔20bの後面へのあてがいを容易にする。又、カバー15を孔3へ装着するときには、鍔付き筒体20が確実に前進位置に存在している必要があるから、筒体20aの外周とこれに対応するテーパ部17aの内周とに相互に嵌合する凹凸22を全周に亘って設けている。この凹凸22は、全周均一でもよいし、最初に嵌め合う部分は大きく、後に嵌め合う部分は小さく、といったようにしてもよい。
【0020】
以上のようにして孔3のパネル1に嵌合部5の溝16の全周が嵌め込まれると、鍔付き筒体20をその筒体20aの前端が後壁18の後壁面18aに当接するまで空間21の向こう側に押し付けると装着は完了する。本例のものは、パネル1を共に弾性体の前壁17と後壁18及び底壁19とで弾性挟着するものであるから、シール性が向上するとともに、鍔付き筒体20の向こうへの押しやりによって、シール性を一層高めるとともに、嵌合部5の張りも保たれ、形状維持性にも優れるものとなる。
【0021】
図7は鍔付き筒体20の他の例を示す要部断面図であるが、本例のものは、鍔20bの付け根を径小にするとともに、これに対応する後壁18の後壁面18aの部分も径小にしたものである。これによると、鍔付き筒体20を向こう側へ押しやったとき、筒体20aの前端は後壁面18aと重合するから、鍔付き筒体20が後壁18から外れて前方へ移動しない利点がある。
【0022】
【発明の効果】
以上、本発明によると、孔外周のパネルへの挟着は、一部では剛体の前壁と弾性体の後壁となり、他部では弾性体同士の前壁と後壁とになるから、剛体による挿入時の滑りの良さや変形が抑制されるものとなるとともに、弾性体同士による弾性挟着に基づくシール性に優れるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一例を示すカバーを孔へ装着した状態の断面図である。
【図2】 本発明の一例を示すカバーの正面図である。
【図3】 本発明の一例を示すカバーの斜視図である。
【図4】 本発明の一例を示す孔へカバーを装着するときの要部断面図である。
【図5】 参考例を示すカバーを孔へ装着した状態の断面図である。
【図6】 参考例を示すカバーの正面図である。
【図7】 他の参考例を示すカバーを孔へ装着した状態の要部断面図である。

Claims (3)

  1. パネルに形成された孔に外周に溝を形成した弾性体の嵌合部を一方向から内嵌めして溝の前壁と後壁とで孔外周のパネルを挟着して孔を覆うパネル孔用カバーにおいて、前壁の一部を剛体で構成してこの剛体前壁の前部に先端が孔に入り込む一定幅の舌片を突設するとともに、弾性体前壁の前部に最小径が孔の径よりも小さい前方ほど径小となったテーパ部を形成したことを特徴とするパネル孔用カバー。
  2. 剛体前壁と弾性体前壁とがそれぞれ孔の半周弱に亘って形成されるものであり、孔への装着時、剛体前壁が上方に位置するものである請求項1のパネル孔用カバー。
  3. 剛体前壁と弾性体前壁との境界部分を欠落させた請求項1又は2のパネル孔用カバー。
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