JP3812657B2 - 水系難燃処理組成物及び難燃化材料 - Google Patents
水系難燃処理組成物及び難燃化材料 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、難燃化した材料、特に難燃木材を得るために好適に用いられる水系難燃処理組成物及びこの組成物で処理された難燃化材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
木材を利用するにあたって、その特徴である「燃える」、「腐る」、「寸法が狂う」といった性質が欠点となり、そのため利用に制限されていることが多い。特に、平成2年6月に建築基準法が改正され、開口部に木材が使用できるようになったが、甲種で60分、乙種で20分という耐火炎貫通遮炎基準をクリアーせねばならず、木をそのまま使用してもこの基準を超えることは難しい。
【0003】
このような観点から過去多くの試みがなされている。例えば、日本木材学会誌38(11)、1043(1992)では、木材にケイ素アルコキシドを含浸させ、加水分解・重縮合により、ケイ素無機質化した難燃木材を見出している。しかし、この方法におけるケイ素無機質化だけでは難燃性はまだ不十分であり、更にケイ素アルコキシドはそのままかあるいは溶剤に希釈した状態で使用しなくてはいけないので、安全性、環境性からも好ましい方法ではない。
【0004】
また、一般的な木材の難燃化剤として知られているものにホウ酸があり、好適に用いられている。しかし、ホウ酸は水に3〜4%程度しか溶解しないため、ただ単にホウ酸を水に溶解したものを木材に処理しても難燃性は弱い。更に、ホウ酸が徐々にリークし、有効成分量が減少したり、処理面が白化してしまうという問題があった。
【0005】
また、特開平9−38915号公報及び特開平9−300312号公報では、メチルシロキサンオリゴマーとホウ素及び/又はリンを組み合わせた処理剤を開示しているが、これらも多量のホウ素、リンを組み込むことは困難であり、しかも水系ではなく、溶剤系であった。更に、特開2001−252908号公報では、ケイ素アルコキシド、ホウ素アルコキシド、リンアルコキシドから選ばれる1種とアルカリ金属化合物とを混合した溶液を木材に処理して難燃化処理を行っているが、これは難燃性に関しては良好な性能を与えるが、薬剤が溶剤系であり、これらは安全性、操作性、環境特性からみて好ましい方法とはいえなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、特に木材のような中性の材料に対して、難燃性を付与可能であり、安全性、環境特性から水系で処理できる難燃処理組成物、またその処理された難燃化材料を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者らは、特に木材に対する難燃性を付与できる水系処理剤を鋭意探索した結果、特定の有機ケイ素化合物を含有する化合物と、ホウ素及び/又はリンを含有する化合物と、水とを組み合わせた処理剤が優れた性能を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明者らは、(A)下記一般式(1)
YR1 mSiR2 3-m (1)
(式中、R1は炭素数1〜8の置換又は非置換の一価炭化水素基、R2は炭素数1〜4のアルコキシ基又はアシロキシ基、Yは窒素含有有機基であり、mは0又は1である。)
で表される窒素原子含有有機基を含有する加水分解性シラン又はその部分加水分解物100重量部と、
(B)下記一般式(2)
R3 nSiR4 4-n (2)
(式中、R3は炭素数1〜8の置換又は非置換の一価炭化水素基、R4は炭素数1〜4のアルコキシ基又はアシロキシ基、nは0、1又は2である。)
で表される加水分解性シラン又はその部分加水分解物5〜200重量部との混合物を水中あるいは加水分解に必要である以上の水を含む有機溶剤中で加水分解するという非常にシンプルな方法により得られる有機ケイ素化合物に、ホウ素成分及び/又はリン成分を混合するだけで、ホウ素及び/又はリンを高含有率で保持でき、その水溶液中での安定性も非常に高く、これを木材に処理することにより、良好な難燃性をも付与可能であり、更に難燃成分を強く固定化できる水系難燃組成物を見出した。
【0009】
従って、本発明は、
[I](A)上記式(1)の窒素原子含有有機基を含有する加水分解性シラン又はその部分加水分解物100重量部と、(B)上記式(2)の加水分解性シラン又はその部分加水分解物5〜200重量部とを加水分解することによって得られる有機ケイ素化合物、
[II]ホウ素を含有する化合物及び/又はリンを含有する化合物、
[III]水
を含有することを特徴とする水系難燃処理組成物、及びこの組成物にて処理されてなる難燃化材料を提供する。
【0010】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明の水系難燃処理組成物を得るために用いる有機ケイ素化合物の窒素原子含有有機基を含有する加水分解性シラン(A)は、系を水溶性にするため及び特に水溶解性の少ないホウ素化合物を溶解させるために用いられる成分であり、下記一般式(1)で表されるもので、目的とする有機ケイ素化合物に水溶性及びホウ素高溶解性を付与させるために、その1種又は2種以上を適宜選定して用いられる。また、その部分加水分解物を用いることもできる。
【0011】
YR1 mSiR2 3-m (1)
(式中、R1は炭素数1〜8の置換又は非置換の一価炭化水素基、R2は炭素数1〜4のアルコキシ基又はアシロキシ基、Yは窒素含有有機基であり、mは0又は1である。)
【0012】
ここで、R1は炭素数1〜8の窒素原子を含まない置換又は非置換の一価炭化水素基であり、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基などや、これらの基の水素原子の一部又は全部をハロゲン原子などで置換した例えばハロゲン化アルキル基などが挙げられる。具体的には、−CH3、−CH2CH3、−CH2CH2CH3、−CH(CH3)2、−CH2CH2CH2CH3、−CH(CH3)CH2CH3、−CH2CH(CH3)CH3、−C(CH3)3、−C6H5、−C6H13などが例示される。
【0013】
また、R2は炭素数1〜4のアルコキシ基又はアシロキシ基であり、具体的には、−OCH3、−OCH2CH3、−OCH2CH2CH3、−OCH(CH3)2、−OCH2CH2CH2CH3、−OCH(CH3)CH2CH3、−OCH2CH(CH3)CH3、−OC(CH3)3、−OCOCH3、−OCOCH2CH3などが例示されるが、中でも−OCH3、−OC2H5が好ましい。
【0014】
Yは窒素含有有機基であり、例えば下記式(3)〜(6)で示されるものが挙げられる。
【0015】
【化1】
(式中、R5、R6、R9〜R13は水素原子又は炭素数1〜8の一価炭化水素基で、R5とR6、R9とR10とR11、R12とR13は互いに同一であっても異なっていてもよい。Rはハロゲン原子を示す。R7、R8は炭素数1〜8の二価炭化水素基で、R7とR8は互いに同一であっても異なっていてもよい。pは0又は1〜3の整数である。)
【0016】
なお、炭素数1〜8の一価炭化水素基は、R1で説明したものと同様である。炭素数1〜8の二価炭化水素基としては、アルキレン基などが挙げられる。
【0017】
Yとして具体的には、下記式で示されるものを挙げることができる。
H2NCH2−、H(CH3)NCH2−、H2NCH2CH2−、H(CH3)NCH2CH2−、H2NCH2CH2CH2−、H(CH3)NCH2CH2CH2−、(CH3)2NCH2CH2CH2−、H2NCH2CH2HNCH2CH2CH2−、H(CH3)NCH2CH2HNCH2CH2CH2−、(CH3)2NCH2CH2HNCH2CH2CH2−、H2NCH2CH2HNCH2CH2HNCH2CH2CH2−、H(CH3)NCH2CH2HNCH2CH2HNCH2CH2CH2−、Cl-(CH3)3N+CH2CH2CH2−、Cl-(CH3)2(C6H5−CH2−)N+CH2CH2CH2−、
【化2】
これらの中で以下のものが好ましい。
H2NCH2CH2HNCH2CH2CH2−、
【化3】
【0018】
なお、mは0又は1で、0が好ましい。
【0019】
上記式(1)の窒素原子含有有機基を含有する加水分解性シランとしては、下記のものを例示することができる。
H2NCH2Si(OCH3)3、H2NCH2Si(OCH2CH3)3、H2NCH2SiCH3(OCH3)2、H2NCH2SiCH3(OCH2CH3)2、H2NCH2CH2Si(OCH3)3、H2NCH2CH2Si(OCH2CH3)3、H2NCH2CH2SiCH3(OCH3)2、H2NCH2CH2SiCH3(OCH2CH3)2、H2NCH2CH2CH2Si(OCH3)3、H2NCH2CH2CH2Si(OCH2CH3)3、H2NCH2CH2CH2SiCH3(OCH3)2、H2NCH2CH2CH2SiCH3(OCH2CH3)2、H(CH3)NCH2CH2CH2Si(OCH3)3、H(CH3)NCH2CH2CH2Si(OCH2CH3)3、H(CH3)NCH2CH2CH2SiCH3(OCH3)2、H(CH3)NCH2CH2CH2SiCH3(OCH2CH3)2、(CH3)2NCH2CH2CH2Si(OCH3)3、(CH3)2NCH2CH2CH2Si(OCH2CH3)3、Cl-(CH3)3N+CH2CH2CH2Si(OCH3)3、Cl-(CH3)3N+CH2CH2CH2Si(OCH2CH3)3、Cl-(CH3)2(C6H5−CH2−)N+CH2CH2CH2Si(OCH3)3、Cl-(CH3)2(C6H5−CH2−)N+CH2CH2CH2Si(OCH2CH3)3、H2NCH2CH2HNCH2CH2CH2Si(OCH3)3、H2NCH2CH2HNCH2CH2CH2Si(OCH2CH3)3、H2NCH2CH2HNCH2CH2CH2SiCH3(OCH3)2、H2NCH2CH2HNCH2CH2CH2SiCH3(OCH2CH3)2、H2NCH2CH2HNCH2CH2HNCH2CH2CH2Si(OCH3)3、H2NCH2CH2HNCH2CH2HNCH2CH2CH2Si(OCH2CH3)3、H2NCH2CH2HNCH2CH2HNCH2CH2CH2SiCH3(OCH3)2、H2NCH2CH2HNCH2CH2HNCH2CH2CH2SiCH3(OCH2CH3)2、
【化4】
【化5】
これらの中で特に好ましくは、
H2NCH2CH2HNCH2CH2CH2Si(OCH3)3、H2NCH2CH2HNCH2CH2CH2Si(OCH2CH3)3
であり、これらの部分加水分解物を用いてもよい。
【0020】
一方、上記(A)加水分解性シラン又はその部分加水分解物と混合して用いられる(B)加水分解性シランは、下記一般式(2)で表され、その1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ、その部分加水分解物を使用してもよい。
【0021】
R3 nSiR4 4-n (2)
(式中、R3は炭素数1〜8の置換又は非置換の一価炭化水素基、R4は炭素数1〜4のアルコキシ基又はアシロキシ基、nは0、1又は2である。)
【0022】
ここで、R3は炭素数1〜8の窒素原子を含まない置換又は非置換の一価炭化水素基であり、上記R1で説明したものと同様である。具体的には、−CH3、−CH2CH3、−CH2CH2CH3、−CH(CH3)2、−CH2CH2CH2CH3、−CH(CH3)CH2CH3、−CH2CH(CH3)CH3、−C(CH3)3、−C6H5、−C6H13などが例示される。
【0023】
また、R4は炭素数1〜4のアルコキシ基又はアシロキシ基であり、具体的には、−OCH3、−OCH2CH3、−OCH2CH2CH3、−OCH(CH3)2、−OCH2CH2CH2CH3、−OCH(CH3)CH2CH3、−OCH2CH(CH3)CH3、−OC(CH3)3、−OCOCH3、−OCOCH2CH3などが例示されるが、中でも−OCH3、−OC2H5が好ましい。
【0024】
なお、nは0、1又は2で、0又は1が好ましい。
【0025】
この式(2)の加水分解性シランとしては、下記のものを例示することができる。
Si(OCH3)4、Si(OCH2CH3)4、Si(OCH2CH2CH3)4、Si(OCH2CH2CH2CH3)4、CH3Si(OCH3)3、CH3Si(OCH2CH3)3、CH3Si(OCH2CH2CH3)3、CH3Si(OCH2CH2CH2CH3)3、(CH3)2Si(OCH3)2、(CH3)2Si(OCH2CH3)2、(CH3)2Si(OCH2CH2CH3)2、(CH3)2Si(OCH2CH2CH2CH3)2、
【化6】
これらの中で特に好ましくは、Si(OCH3)4、Si(OCH2CH3)4、CH3Si(OCH3)3、CH3Si(OCH2CH3)3及びこれらの部分加水分解物である。
【0026】
上記(A)窒素原子含有有機基を含有する加水分解性シラン又はその部分加水分解物に(B)式(2)の加水分解性シラン又はその部分加水分解物を混合して用いる場合、その混合比は、(A)窒素原子含有有機基を含有する加水分解性シラン又はその部分加水分解物100重量部に対し(B)加水分解性シラン又はその部分加水分解物5〜200重量部の割合であり、より好ましくは(B)加水分解性シラン又はその部分加水分解物の量が10〜150重量部である。この量が200重量部を超えると水溶液安定性が悪化する。
【0027】
上記(A)、(B)の加水分解性シラン又はそれらの部分加水分解物を用いて加水分解し、本発明の有機ケイ素化合物を得る場合、溶媒は主として水を使用するが、必要に応じて、水と溶解する有機溶媒であるアルコール、エステル、ケトン、グリコール類を水に添加する形で用いることができる。有機溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、1−プロピルアルコール、2−プロピルアルコール等のアルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル、アセト酢酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、グリセリン、ジエチレングリコール等のグリコール類などを挙げることができる。
【0028】
溶媒の量は原料シラン100重量部に対して400〜5,000重量部が好ましい。更に好ましくは1,000〜3,000重量部である。溶媒の量が400重量部より少ないと反応が進行しすぎ、系が均一にならない場合がある。また液の保存安定性も悪くなる場合がある。一方、5,000重量部より多いと経済的に不利な場合が生じる。
【0029】
また、溶媒中の水の量は、水/原料シランのモル比率で5〜50が好ましい。このモル比率が5より少ないと加水分解が完全に進行しにくく、液の安定性が悪化する場合がある。一方、50を超えると経済的に不利な場合が生じる。
【0030】
反応方法としては、(1)混合シランを水中あるいは加水分解に必要である以上の量の水を含む有機溶剤中に滴下する方法、(2)混合シランあるいは有機溶剤含有混合シラン中に水を滴下する方法、(3)(B)加水分解性シラン又はその部分加水分解物を水中あるいは加水分解に必要である以上の量の水を含む有機溶剤中に滴下し、その後、(A)窒素原子含有有機基を含有する加水分解性シラン又はその部分加水分解物を滴下する方法、(4)(A)窒素原子含有有機基を含有する加水分解性シラン又はその部分加水分解物を水中あるいは加水分解に必要である以上の量の水を含む有機溶剤中に滴下し、その後、(B)加水分解性シラン又はその部分加水分解物を滴下する方法などが挙げられるが、有機ケイ素化合物の安定性の点から、特に(1)の反応方法が好ましい。
【0031】
なお、得られた有機ケイ素化合物は水溶液の形で得られるが、必要に応じて、更に水を加えたり、除去したりして、有機ケイ素化合物100重量部に対して水10〜2,000重量部、好ましくは10〜1,000重量部の比率に調整することにより、有機ケイ素化合物を形成することができる。この場合、水の量が10重量部より少ないと有機ケイ素化合物自体の保存安定性が悪化する場合がある。また、2,000重量部より多いと有機ケイ素化合物を加える量が多くなってしまい、コスト的に好ましくない。
【0032】
このようにして得られた有機ケイ素化合物は、水溶液中での保存安定性が非常に高いものである。得られたこの有機ケイ素化合物に更にホウ素成分及び/又はリン成分を加えることにより、本発明の水系難燃処理組成物を得ることができる。
【0033】
この水系難燃処理組成物は、[I]上記有機ケイ素化合物、[II]ホウ素成分及び/又はリン成分、[III]水を含有するものであって、上記水系難燃処理組成物全体を100重量部とした場合に、上記有機ケイ素化合物が0.1〜40重量部(好ましくは5〜30重量部)、ホウ素成分が0〜40重量部(好ましくは5〜30重量部)及び/又はリン成分が0〜30重量部(好ましくは0.1〜10重量部)、水が0.1〜99重量部(好ましくは10〜80重量部)であり、ホウ素成分とリン成分が同時に0重量部でないことが必要である。この有機ケイ素化合物が0.1重量部未満の場合には、ホウ素成分を溶解させる効果が不足となり、40重量部を超えるとコスト的に高価となる場合がある。また、ホウ素成分が40重量部を超えると希釈液が不安定となる場合があり、リン成分が30重量部を超えても水溶液安定性が悪くなる場合がある。また、水が0.1重量部未満だと安定性が悪くなり、また99重量部を超えると難燃性能が低くなるおそれがある。
【0034】
上記ホウ素成分としては、ホウ酸、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリプロピル、ホウ酸トリブチル等のホウ酸トリアルキルを挙げることができる。これらの中でホウ酸が特に好ましい。
【0035】
また、リン成分としては、亜リン酸、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリプロピル、亜リン酸トリブチル等の亜リン酸トリアルキル、リン酸、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリブチル等のリン酸トリアルキルなどが挙げられる。特に好ましくはリン酸、リン酸トリメチルである。
【0036】
また、本組成物には、界面活性剤、防腐剤、消泡剤、及びその他の添加剤(例えば、防食剤、粘度指数向上剤、酸化防止剤、着色剤、香料、UV吸収剤、タンニン、抗菌剤、調味料、防炎剤、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール(PVA)、水溶性アクリル樹脂、SBRラテックス、コロイダルシリカ等を適宜配合して使用できる。
【0037】
特に基材内部まで深く水系難燃処理組成物を浸透させたい場合、その水系難燃処理組成物の浸透性をより高めるために界面活性剤を加えるとより好ましい。
【0038】
添加量は水系難燃処理組成物固形分に対して0.01〜5重量%加えることが好ましい。より好ましくは0.2〜2.5重量%である。その量が0.01重量%未満だと水系難燃処理組成物単独処理と殆ど変化がなく、添加する意味がない。また5重量%を超えて加えると、コスト的に高価となってしまう場合がある。
【0039】
用いる界面活性剤に特に限定はないが、従来公知のノニオン系、カチオン系、アニオン系の各種界面活性剤が適用可能である。具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンカルボン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエーテル変性シリコーンなどのノニオン系界面活性剤、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルアンモニウムクロライドなどのカチオン系界面活性剤、アルキル又はアルキルアリル硫酸塩、アルキル又はアルキルアリルスルフォン酸塩、ジアルキルスルフォコハク酸塩などのアニオン系界面活性剤、アミノ酸型、ベタイン型などの両性イオン型界面活性剤などを示すことができる。これらの中で、特にポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が好ましい。
【0040】
また、界面活性剤をあらかじめ水系難燃処理組成物に添加するのでなく、水系難燃処理組成物を処理する前に、基材に界面活性剤希釈溶液を前処理した後に、水系難燃処理組成物を処理してもよい。その場合、水あるいは有機溶剤に0.01〜5重量%の濃度で界面活性剤を希釈した溶液を調整し、ローラー、刷毛、スプレー等を用い、場合によっては浸漬法によって前処理し、その後水系難燃処理組成物を処理することにより、基材内部まで深く浸透させることができる。
【0041】
上記防腐剤としては、(1)フェノール系化合物(o−フェニルフェノール、Na−o−フェニルフェノール、2,3,4,6−テトラクロロフェノール等)、(2)ホルムアルデヒド供与体化合物(2−ハイドロキシメチル−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、ヘキサハイドロ−1,3,5−トリス(2−ハイドロキシエチル)−(s)−トリアジン等)、(3)その他(トリブロモサリチルアニリドとジブロモサリチルアニリドの混合物等)を挙げることができる。
【0042】
上記消泡剤としては、シリコーンのエマルジョン、高級アルコール等を挙げることができる。
【0043】
また、この水系難燃処理組成物がアルカリ性領域である場合、基材によっては基材が痛んでしまう場合、酸性物質により適宜中和してpHを6〜7に調整して用いてもよい。この場合の酸性物質は、酢酸、蟻酸、プロピオン酸、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸などであり、特に好ましくは酢酸である。
【0044】
ここで、この発明で用いられる基材は中性基材がよく、木材、各種繊維製品、紙などであり、特に好ましくは木材製品である。例えば原木丸太、製材品、スライス単板、合板、パーティクル状又は繊維状のもの、もしくはそれらを用いてパーティクルボードやファイバーボードにしたもの、さらには木材を代表とする林産資源及びその廃棄物や、農産及び水産資源及びその廃棄物など地球上に存在するすべてのセルロース系及びリグノセルロース系資源などが挙げられ、それらを加工するために用いる樹脂などの種類についても限定されない。
【0045】
本発明の水系難燃処理組成物を上記材料に塗布するには、ローラー、刷毛、スプレー等を用い、場合によっては浸漬法によってもよいし、常圧下又は減圧下で処理してもよい。また乾燥方法としては、室温下に放置してもよいし、天日乾燥、加熱乾燥によってもよい。
【0046】
このようにして基材に含浸された本発明の水系難燃処理組成物は、加水分解反応、縮合反応により、強固にかつ優れた難燃層を形成する。また、難燃成分であるホウ素、リン成分をシリコーンマトリックス中に固定化するため、リークすることもなく長期に渡って優れた難燃性、耐熱性を発現する。
【0047】
【実施例】
以下、合成例及び実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
(1)有機ケイ素化合物の合成
[合成例1]
水246g(13.7mol)を撹拌機、温度計及び冷却器を備えた500mlの反応器に入れ、撹拌した。ここにH2NCH2CH2HNCH2CH2CH2Si(OCH3)344.4g(0.2mol)及びSi(OCH2CH3)420.8g(0.1mol)を混合したものを室温で10分間かけて滴下したところ、25℃から56℃に内温が上昇した。更にオイルバスにて60〜70℃に加熱し、そのまま1時間撹拌を行った。次にエステルアダプターを取り付け、内温99℃まで上げ、副生したメタノール、エタノールを除去することにより、有機ケイ素化合物−1を250g得た。このものの不揮発分(105℃/3時間)は14.9%であった。
【0048】
[合成例2]
水278g(15.4mol)を撹拌機、温度計及び冷却器を備えた500mlの反応器に入れ、撹拌した。ここにH2NCH2CH2HNCH2CH2CH2Si(OCH3)355.6g(0.25mol)及びSi(OCH2CH3)410.4g(0.05mol)を混合したものを室温で10分間かけて滴下したところ、27℃から49℃に内温が上昇した。更にオイルバスにて60〜70℃に加熱し、そのまま1時間撹拌を行った。次にエステルアダプターを取り付け、内温98℃まで上げ、副生したメタノール、エタノールを除去することにより、有機ケイ素化合物−2を274g得た。このものの不揮発分(105℃/3時間)は15.1%であった。
【0049】
[合成例3]
水202g(11.2mol)を撹拌機、温度計及び冷却器を備えた500mlの反応器に入れ、撹拌混合した。ここにH2NCH2CH2HNCH2CH2CH2Si(OCH3)333.3g(0.15mol)及びSi(OCH2CH3)431.2g(0.15mol)を混合したものを室温で10分間かけて滴下したところ、25℃から51℃に内温が上昇した。更にオイルバスにて60〜70℃に加熱し、そのまま1時間撹拌を行った。次にエステルアダプターを取り付け、内温99℃まで上げ、副生したメタノール、エタノールを除去することにより、有機ケイ素化合物−3を210g得た。このものの不揮発分(105℃/3時間)は15.3%であった。
【0050】
[合成例4]
水308g(17.1mol)を撹拌機、温度計及び冷却器を備えた500mlの反応器に入れ、撹拌混合した。ここにH2NCH2CH2HNCH2CH2HNCH2CH2CH2Si(OCH3)353.1g(0.2mol)及びSi(OCH3)415.2g(0.1mol)を混合したものを室温で10分間かけて滴下したところ、28℃から53℃に内温が上昇した。更にオイルバスにて60〜70℃に加熱し、そのまま1時間撹拌を行った。次にエステルアダプターを取り付け、内温99℃まで上げ、副生したメタノールを除去することにより、有機ケイ素化合物−4を300g得た。このものの不揮発分(105℃/3時間)は15.4%であった。
【0051】
[合成例5]
水253g(14.1mol)を撹拌機、温度計及び冷却器を備えた500mlの反応器に入れ、撹拌混合した。ここにH2NCH2CH2HNCH2CH2CH2Si(OCH3)344.4g(0.2mol)及びCH3Si(OCH3)313.6g(0.1mol)を混合したものを室温で10分間かけて滴下したところ、26℃から42℃に内温が上昇した。更にオイルバスにて60〜70℃に加熱し、そのまま1時間撹拌を行った。次にエステルアダプターを取り付け、内温99℃まで上げ、副生したメタノールを除去することにより、有機ケイ素化合物−5を244g得た。このものの不揮発分(105℃/3時間)は15.6%であった。
【0052】
[合成例6]
水241g(13.4mol)を撹拌機、温度計及び冷却器を備えた500mlの反応器に入れ、撹拌混合した。ここにH2NCH2CH2HNCH2CH2CH2Si(OCH3)344.4g(0.2mol)、Si(OCH2CH3)418.7g(0.09mol)及びCH3Si(OCH3)31.4g(0.01mol)を混合したものを室温で10分間かけて滴下したところ、26℃から49℃に内温が上昇した。更にオイルバスにて60〜70℃に加熱し、そのまま1時間撹拌を行った。次にエステルアダプターを取り付け、内温99℃まで上げ、副生したメタノールを除去することにより、有機ケイ素化合物−6を241g得た。このものの不揮発分(105℃/3時間)は15.7%であった。
【0053】
[合成例7]
水246g(13.7mol)を撹拌機、温度計及び冷却器を備えた500mlの反応器に入れ、撹拌混合した。ここにH2NCH2CH2HNCH2CH2CH2Si(OCH3)344.4g(0.2mol)を室温で10分間かけて滴下したところ、25℃から52℃に内温が上昇した。このまま30分間撹拌混合した後、Si(OCH2CH3)420.8g(0.1mol)を更に滴下した。滴下後、オイルバスにて60〜70℃に加熱し、そのまま1時間撹拌を行った。次にエステルアダプターを取り付け、内温98℃まで上げ、副生したメタノール、エタノールを除去することにより、有機ケイ素化合物−7を248g得た。このものの不揮発分(105℃/3時間)は14.7%であった。
【0054】
(2)水系難燃処理組成物の組成
本発明の水系難燃処理組成物の性能を明らかにするために、表1,2に示す各成分を有する実施例1〜10、比較例1〜6及び7(未処理品)に係る試料液(単位は重量部)について、以下に述べる性能試験とその評価を行った。なお、表1,2において、界面活性剤としてはポリエーテル変性シリコーン界面活性剤である信越化学工業(株)製KF618を使用した。
【0055】
(3)性能評価
基材への処理方法及び難燃性能評価方法は、以下の通りである。
処理方法
基材はパーティクルボード材試験片(22cm×22cm×2cm)を使用し、刷毛により200g/m2の量を塗布した。それを室温で1ヶ月乾燥し、40℃デシケーターで24時間、更にデシケーター中で24時間乾燥したものを使用した。
【0056】
難燃性及び保存安定性
難燃性試験は、上記処理パーティクルボード材試験片(22cm×22cm×2cm)を、JIS−A−1321規格の難燃3級評価試験を実施した。
難燃3級評価は、副熱源(ガスバーナー)3分加熱後→副熱源+主熱源(ヒーター)3分加熱して以下3つを判定する。▲1▼加熱終了後30秒以上残炎なし、▲2▼CA(単位面積当たりの発煙係数)120以下、▲3▼Tdθ(排気温度曲線が標準温度曲線を超えた部分の面積)350以下を満たすものが難燃3級合格判定である。その結果を表3に示す。
また、実施例及び比較例で調製した水系難燃処理組成物を60℃で1ヶ月保存後に再度上記と同様な難燃性試験を行った。その結果も表3に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
* 比較例1,2は60℃/1ヶ月後ゲル化したため評価不能。
【0060】
【発明の効果】
本発明の水系難燃処理組成物は、より高い難燃性を中性基材、特に木材に付与することができる。また、本発明では木材固有の多孔性、低比重、易加工性(切削性、保釘力、接着性、塗装性等)を阻害することなく耐腐朽性能及び寸法安定性も付与することができる。更に本組成物は水系組成物であるため、安全性、環境性にも優れ、長期間難燃性能を持続させることが可能である。本発明に係る難燃化材料は、新建築基準法に適合した開口部の部材として、あるいは建築内装材や外装材としても使用し得る難燃かつ耐熱化された木材を安全に大量生産することができる等の特徴を有するものである。
Claims (7)
- [I](A)下記一般式(1)
YR1 mSiR2 3-m (1)
(式中、R1は炭素数1〜8の置換又は非置換の一価炭化水素基、R2は炭素数1〜4のアルコキシ基又はアシロキシ基、Yは窒素含有有機基であり、mは0又は1である。)
で表される窒素原子含有有機基を含有する加水分解性シラン又はその部分加水分解物100重量部と、
(B)下記一般式(2)
R3 nSiR4 4-n (2)
(式中、R3は炭素数1〜8の置換又は非置換の一価炭化水素基、R4は炭素数1〜4のアルコキシ基又はアシロキシ基、nは0、1又は2である。)
で表される加水分解性シラン又はその部分加水分解物5〜200重量部と
を加水分解することによって得られる有機ケイ素化合物、
[II]ホウ素を含有する化合物及び/又はリンを含有する化合物、
[III]水
を含有することを特徴とする水系難燃処理組成物。 - 式(1)の加水分解性シランが、H2NCH2CH2HNCH2CH2CH2Si(OCH3)3又はH2NCH2CH2HNCH2CH2CH2Si(OCH2CH3)3であることを特徴とする請求項1記載の水系難燃処理組成物。
- 式(2)の加水分解性シランが、Si(OCH3)4、Si(OCH2CH3)4、CH3Si(OCH3)3又はCH3Si(OCH2CH3)3であることを特徴とする請求項1又は2記載の水系難燃処理組成物。
- ホウ素を含有する化合物が、ホウ酸又はホウ酸トリアルキルである請求項1、2又は3記載の水系難燃処理組成物。
- リンを含有する化合物が、リン酸、亜リン酸、リン酸トリアルキル又は亜リン酸トリアルキルである請求項1、2又は3記載の水系難燃処理組成物。
- 請求項1乃至5のいずれか1項記載の水系難燃処理組成物にて処理されてなる難燃化材料。
- 被処理物が木材である請求項6記載の難燃化材料。
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