JP3812568B2 - 車両の駆動力制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、前後輪の少なくとも一方を内燃機関によって駆動すると共に、その内燃機関で駆動される発電機を有する車両の駆動力制御装置に係り、特に、前後輪の一方が内燃機関で他方が電動機で駆動される四輪駆動の車両に有用な駆動力制御装置に関する。
前後輪の一方をエンジンで駆動し他方をモータで駆動する車両の駆動力制御装置としては、例えば特許文献1に開示されているものがある。
特許文献1に開示されている車両の駆動力制御装置は、エンジンによって発電機を駆動し、その発電機が発生する電気エネルギーによって上記モータを駆動するものであって、車両の走行状態に応じて、発電機からモータに供給される電気エネルギーを制御するものである。
特開平7−231508号公報
ここで、発電機による発電は、エンジンにとって負荷となる。このため、エンジンのトルクをベルト伝動で発電機に伝達する構成を採用した場合にあっては、モータで回転駆動する車輪のトルクが大きくなるように過剰な発電を行うと、上記ベルトがスリップするおそれがあり、ベルトがスリップすると異音発生の原因となる他、ベルトスリップが大きいとベルト劣化の原因ともなる。
これに対して、特開2003−193877号公報に記載の技術では、エンジンに対する発電機の負荷トルクが、予め設計から求められるベルトスリップ限界閾値を越えないように制御することで、ベルトスリップを防止する技術が開示されている。
通常の使用においては、設計から求められるベルトスリップ限界閾値を越えないように発電負荷を制限することでベルトのスリップは抑えられる。しかし、ベルトが劣化したり規定外の製品であったり、また、ベルトの組み付けトルク(テンション)が規定より小さかったりするときなど、本来の設定条件から外れた場合、また、ベルトにオイル等が付着し滑り易くなった場合には、上記ベルトスリップ限界閾値より小さい発電負荷でもベルトスリップが発生する場合が想定される。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、ベルトスリップを確実に抑える若しくは小さくすることを課題としている。
上記課題を解決するために、本発明のうち請求項1に記載した発明は、前後輪の少なくとも一方を駆動する内燃機関と、その内燃機関の動力がベルト伝動により伝達される発電機と、その発電機の発電した電力で作動する作動装置とを備えた車両の駆動力制御装置において、
上記ベルトの伝動トルクを該ベルトがスリップしないと推定される伝動トルク上限値以下となるように上記発電機の発電を制限する伝動トルク調整手段と、
上記ベルトの実際のスリップを検出するスリップ検出手段と、スリップ検出手段がベルトスリップを検出すると上記発電機の発電を制限する発電制限手段とを備え
上記発電制限手段で発電を制限して上記スリップが収まったときのトルク値に基づき上記伝動トルク上限値を設定変更することを特徴とするものである。
本発明によれば、実際のベルトスリップを抑制することができる結果、ベルトの劣化を防止することが可能となる。
次に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
本実施形態は、図1に示すように、左右前輪1L、1Rが内燃機関であるエンジン2によって駆動され、左右後輪3L、3Rが電動機であるモータ4によって駆動可能となっている四輪駆動可能な車両の場合の例である。モータ4が作動装置を構成する。
まず、構成について説明すると、図1に示すように、エンジン2の出力トルクTeが、トランスミッション及びディファレンスギア5を通じて左右前輪1L、1Rに伝達される。また、エンジン2の回転トルクTeの一部は、無端ベルト6を介しベルト伝動で発電機7に伝達される。
上記発電機7は、エンジン2の回転数Neにプーリ比を乗じた回転数Nhで回転し、4WDコントローラ8によって調整される界磁電流Ifhに応じて、エンジン2に対し負荷となり、その発電負荷トルクに応じた電力を発電する。その発電機7が発電した電力は、電線9を介してモータ4に供給可能となっている。その電線9の途中にはジャンクションボックス10が設けられている。上記モータ4の駆動トルクは、減速機11及びクラッチ12を介して後輪3L、3Rに伝達される。符号13はデフを表す。
また、発電機7の入力軸の回転は、発電機回転数検出センサ30で検出され、その検出信号は4WDコントローラ8に出力される。
上記エンジン2の吸気管路14(例えばインテークマニホールド)には、スロットルバルブ15が介装されている。スロットルバルブ15は、アクセルペダル17の踏み込み量等に応じてスロットル開度が調整制御されるアクセルバイワイヤー方式である。すなわち、上記スロットルバルブ15は、ステップモータ19をアクチュエータとし、そのステップモータ19のステップ数に応じた回転角により開度が調整制御される。そのステップモータ19の回転角は、エンジンコントローラ18からの開度信号によって調整制御される。
アクセルペダル17の踏み込み量を検出するアクセルセンサ20を有し、該アクセルセンサ20は、検出した踏み込み量に応じた検出信号を、エンジンコントローラ18及び4WDコントローラ8に出力している。
また、エンジン2の回転数を検出するエンジン回転数検出センサ21を備え、エンジン回転数検出センサ21は、検出した信号をエンジンコントローラ18及び4WDコントローラ8に出力する。
エンジンコントローラ18では、所定のサンプリング時間毎に、入力した各信号に基づき、ステップモータ19を通じて運転者の要求する目標出力トルクTeNとなるようにエンジン出力トルクTeを制御する。
また、上記発電機7は、図2に示すように、出力電圧Vを調整するための電圧調整器22(レギュレータ)を備え、界磁電流Ifhを調整することで、エンジン2に対する発電負荷トルクTh及び発電する電圧Vが制御される。電圧調整器22は、4WDコントローラ8から発電機制御指令c1を入力し、その発電機制御指令c1(デューティ比)に応じた値に発電機7の界磁電流Ifhを調整すると共に、発電機7の出力電圧Vを検出して4WDコントローラ8に出力可能となっている。なお、発電機7の回転数Nhは、エンジン2の回転数Neからプーリ比に基づき演算することができる。
また、上記ジャンクションボックス10内には電流センサ23が設けられ、該電流センサ23は、発電機7からモータ4に供給される電力の電流値Iaを検出し、当該検出した電機子電流信号を4WDコントローラ8に出力する。また、電線9を流れる電圧値(モータ4の電圧)が4WDコントローラ8で検出される。符号24は、リレーであり、4WDコントローラ8から指令によってモータ4に供給される電力(電流)の遮断及び接続が制御される。
また、モータ4は、4WDコントローラ8からの指令によって界磁電流Ifmが制御され、その界磁電流Ifmの調整によって駆動トルクTmが調整される。なお、符号25はモータ4の温度を測定するサーミスタである。
上記モータ4の駆動軸の回転数Nmを検出するモータ用回転数センサ26を備え、該モータ用回転数センサ26は、検出したモータ4の回転数信号を4WDコントローラ8に出力する。
また、上記クラッチ12は、油圧クラッチや電磁クラッチ等から構成され、4WDコントローラ8からのクラッチ制御指令に応じたトルク伝達率でトルクの伝達を行う。
また、各車輪1L、1R、3L、3Rには、車輪速センサ27FL、27FR、27RL、27RRが設けられている。各車輪速センサ27FL、27FR、27RL、27RRは、対応する車輪1L、1R、3L、3Rのエンジン回転数Neに応じたパルス信号を車輪速検出値として4WDコントローラ8に出力する。
ここで、図2中符号40は発電機20に電力を供給する線に設けられたリレーである。
4WDコントローラ8は、図3に示すように、発電機制御部8A、リレー制御部8B、モータ制御部8C、クラッチ制御部8D、余剰トルク演算部8E、目標トルク制限部8F、余剰トルク変換部8G、及びベルトスリップ判定部8Hを備える。
上記発電機制御部8Aは、電圧調整器22を通じて、発電機7の発電電圧Vをモニターしながら、当該発電機7の界磁電流Ifhを調整することで、発電機7の発電電圧Vを所要の電圧に調整する。
リレー制御部8Bは、発電機7からモータ4への電力供給の遮断・接続を制御する。
モータ制御部8Cは、モータ4の界磁電流Ifmを調整することで、当該モータ4のトルクを所要の値に調整する。
また、所定のサンプリング時間毎に、入力した各信号に基づき、図3に示すように、余剰トルク演算部8E→目標トルク制限部8F→余剰トルク変換部8Gの順に循環して処理が行われる。
上記余剰トルク演算部8Eの処理を、図4を参照して説明する。
すなわち、先ず、ステップS10において、車輪速センサ27FL、27FR、27RL、27RRからの信号に基づき演算した、前輪1L、1R(主駆動輪)の車速から後輪3L、3R(従駆動輪)の車速を減算することで、前輪1L、1Rの加速スリップ量であるスリップ速度ΔVFを求め、ステップS20に移行する。なお、加速スリップの有無、及びその加速スリップ量を路面反力トルク等から推定して求めても良い。
ステップS20では、上記求めたスリップ速度ΔVFが所定値例えばゼロより大きいか否かを判定する。スリップ速度ΔVFが0以下と判定した場合には、前輪1L、1Rが加速スリップしていないと推定されるので、ステップS30に移行して、Thに0を代入した後に復帰する。
一方、ステップS20において、スリップ速度ΔVFが0より大きいと判定した場合には、前輪1L、1Rが加速スリップしていると推定されるので、ステップS40に移行する。
ステップS40では、前輪1L、1Rの加速スリップを抑えるために必要な吸収トルクTΔVFを下記式に基づき演算してステップS50に移行する。
TΔVF = K1×ΔVF
ここで、K1は実験などによって求めたゲインである。
ステップS50では、現在の発電機7の発電負荷トルクTGを、下記式に基づき演算したのち、ステップS60に移行する。
TG =K2×(V × Ia)/(K3 × Nh)
ここで、
V :発電機7の電圧
Ia:発電機7の電機子電流
Nh:発電機7の回転数
K3:効率
K2:係数
である。
ステップS60では、下記式に基づき、余剰トルクつまり発電機7で負荷すべき目標の発電負荷トルクThを求め、復帰する。
Th = TG + TΔVF
次に、目標トルク制限部8Fの処理について、図5に基づいて説明する。
すなわち、まず、ステップS110で、上記目標発電負荷トルクThが、発電機7の最大負荷容量HQより大きいか否かを判定する。目標発電負荷トルクThが当該発電機7の最大負荷容量HQ以下と判定した場合には、ステップS130に移行する。一方、目標発電負荷トルクThが発電機7の最大負荷容量HQよりも大きいと判定した場合には、ステップS120に移行する。
ステップS120では、目標の発電負荷トルクThを最大負荷容量HQに制限した後にステップS130に移行する。
ステップS130では、エンジン回転数検出センサ21及びスロットルセンサからの信号に基づいて現在のエンジン出力トルクTeを演算してステップS140に移行する。
ステップS140では、現在のエンジン回転数Neなどからエンジン2が停止しない最低の許容トルクTkを求め、ステップS150に移行する。なお、許容トルクTkを求める代わりに所定値としても構わない。
ステップS150で、下記式に基づき、偏差トルクΔTeを演算して、ステップS160に移行する。
ΔTe = Te −Tk
ステップS160では、偏差トルクΔTeが目標の発電負荷トルクThよりも小さいか否かを判定する。ΔTe≧Thと判定した場合には、ステップS180に移行する。一方、ΔTe<Thと判定した場合には、ステップS170に移行する。
ステップS170では、下記式によって目標の発電負荷トルクThを偏差トルクΔTeに低減した後に、ステップS180に移行する。
Th = ΔTe −α
αは余裕代である。もっとも、α=0としても良い。
ステップS180では、ベルトスリップ判定部を起動し、実際のベルトスリップの有無を検出する。
ステップS180では、ベルトスリップ判定部で設定したスリップ判定フラグFBLslipに基づき、実際のスリップの有無を判定する。スリップ判定フラグFBLslipが「0」つまりベルト6がスリップしていないと判定した場合には、ステップS200にて、Th0に大きな値(図5では、最大負荷容量HQを設定する場合を例示。)を設定した後にステップS250に移行する。
一方、ベルト6が実際にスリップしている(FBLslip=1)と判定すると、ステップS210にて、目標発電負荷トルクThが前回の減少値Th0よりも大きいか否かを判定し、加速スリップ量に応じた目標発電負荷トルクThの方が大きい場合には、ステップS220にて当該目標発電負荷トルクThを前回の減少値Th0に変更した後にステップS230に移行する。また、目標発電負荷トルクThの方が小さいか等しい場合には、そのままステップS230に移行する。
ステップS230では、目標発電負荷トルクThを所定トルク分だけ小さくし、その減少した値をTh0に格納したのち復帰する。このステップS230の処理は、ベルト6のスリップが継続している限り実施される。この結果、ベルト6のスリップが抑制されるまで、目標発電負荷トルクThは、加速スリップ量に無関係に徐々に小さくなっていく。
一方、ステップS190にてベルト6がスリップしていないと判定されるとステップS250に移行する。ステップS250では、伝動トルク上限値BTslipをエンジン回転数Neなどに基づき演算して、ステップS260に移行する。
ここで、図6に示すように、同じ発電電圧であってもエンジン回転数Neが高いほど伝動トルクが大きくなりスリップしやすい。これをエンジン回転数Neと伝動トルクとの関係で示すと図7のようになり、エンジン回転数Neが高いほど伝動トルクが高くなる傾向にある。図7中の複数の線は、各発電電圧値によるグラフを示している。このため、本実施形態では、設計から求められる閾値である伝動トルク上限値BTslipを、エンジン回転数Neが高くなるにつれて段階的に小さく設定している。
そして、ステップS260では、図7に基づき目標発電負荷トルクThが伝動トルク上限値BTslipよりも大きいか否かを判定する。目標発電負荷トルクThが伝動トルク上限値BTslipよりも小さいか等しいと判定した場合には、復帰する。一方、目標発電負荷トルクThが伝動トルク上限値BTslipよりも大きいと判定したら、ステップS270に移行する。
ステップS270では、下記式によって目標発電負荷トルクThを伝動トルク上限値BTslipに低減した後に、復帰する。
Th = BTslip
ここで、ステップS180〜ステップS270が発電機制限手段を構成し、またステップS250〜S270が伝動トルク調整手段を構成する。
次に、スリップ検出手段であるベルトスリップ判定部を、図8に基づき説明する。まず、ステップS510にて、発電機回転検出センサ30による検出信号に基づいて発電機7の入力軸の回転数を求め、その回転数を、ベルト伝動のプーリー比に基づき、エンジン回転数に換算した発電機側回転数Ngを算出してステップS520に移行する。
ステップS520では、上記求めた発電機側回転数Ngが、エンジン回転数Neと比較してβ以上低くなるだけの回転数差が有るかどうか判定し、β以上の回転数差が有ると判定すると、ベルト6がスリップしているとしてステップS540に移行し、スリップ判定フラグFBLslipに「1」を代入して復帰する。一方、回転数差がβ未満であると、ベルトスリップしていないと判定して、スリップ判定フラグFBLslipに「0」を代入して復帰する。
なお、ベルト6のスリップは、正常時はゼロであるので、上記βは、低速走行時のエンジン回転数の5〜10%程度の値に設定すればよい。
次に、余剰トルク変換部8Gの処理について、図9に基づいて説明する。
まず、ステップS300で、Thが0より大きいか否かを判定する。Th>0と判定されれば、前輪1L、1Rが加速スリップしているので、ステップS310に移行する。また、Th=0と判定されれば、前輪1L、1Rは加速スリップしていないので、以降の処理をすることなく復帰する。
ステップS310では、モータ用回転数センサ21が検出したモータ4の回転数Nmを入力し、そのモータ4の回転数Nmに応じた目標モータ界磁電流Ifmを算出し、当該目標モータ界磁電流Ifmをモータ制御部8Cに出力した後、ステップS320に移行する。
ここで、例えば、上記モータ4の回転数Nmに対する目標モータ界磁電流Ifmは、回転数Nmが所定回転数以下の場合には一定の所定電流値とし、モータ4が所定の回転数以上になった場合には、公知の弱め界磁制御方式でモータ4の界磁電流Ifmを小さくする。すなわち、モータ4の回転数Nmが所定値以上になったらモータ4の界磁電流Ifmを小さくして誘起電圧Eを低下させることでモータ4に流れる電流を増加させて所要モータトルクTmを得るようにする。
ステップS320では、上記目標モータ界磁電流Ifm及びモータ4の回転数Nmからモータ4の誘起電圧Eを算出して、ステップS330に移行する。
ステップS330では、上記余剰トルク演算部8Eが演算した発電負荷トルクThに基づき対応するモータトルクTmを算出して、ステップS340に移行する。
ステップS340では、上記目標モータトルクTm及び目標モータ界磁電流Ifmを変数として対応する目標電機子電流Iaを算出して、ステップS350に移行する。
ステップS350では、下記式に基づき、上記目標電機子電流Ia、抵抗R、及び誘起電圧Eから発電機7の目標電圧Vを算出し、当該発電機7の目標電圧Vを求め、続いてステップS360にて上記目標電圧Vに応じた発電機制御指令値c1を求め発電機制御部8Aに出力したのち、復帰する。
V=Ia×R+E
なお、抵抗Rは、電線9の抵抗及びモータ4のコイルの抵抗である。
次に、上記構成の装置における作用などについて説明する。
路面μが小さいためや運転者によるアクセルペダル17の踏み込み量が大きいなどによって、エンジン2から前輪1L、1Rに伝達されたトルクが路面限界トルクよりも大きくなると、つまり、主駆動輪である前輪1L、1Rが加速スリップすると、その加速スリップ量に応じた発電負荷トルクThで発電機7が発電することで、前輪1L、1Rに伝達される駆動トルクが、当該前輪1L、1Rの路面反力限界トルクに近づくように調整される。この結果、主駆動輪である前輪1L、1Rでの加速スリップが抑えられる。
しかも、発電機7で発電した余剰の電力によってモータ4が駆動されて従駆動輪である後輪3L、3Rも駆動されることで、車両の加速性が向上する。
このとき、主駆動輪の路面反力限界トルクを越えた余剰のトルクでモータ4を駆動するため、エネルギー効率が向上し、燃費の向上に繋がる。すなわち、本実施形態では、滑り易い路面等では前輪1L、1Rに全てのエンジン2の出力トルクTeを伝達しても全てが駆動力として使用されないことに鑑みて、前輪1L、1Rで有効利用できない駆動力を後輪3L、3Rに出力して加速性を向上させるものである。
さらに、発電負荷トルクTGが過剰となって無端ベルト6でスリップが発生するおそれがある場合には、目標発電負荷トルクThを伝動トルク上限値BTslipにまで低減することで、ベルトスリップによる異音発生が防止される。
このとき、上記伝動トルク上限値BTslipを、図7のようにエンジン回転数Neに応じて変化させることで、エンジン回転数Neに応じた適切な伝動トルク上限値BTslipに設定される。この結果、確実にベルトスリップが防止できると共に、エンジン回転数Neが低い状態での伝動トルク上限値BTslipを高めに設定可能となる。
例えば、アクセル開度が小さくて車輪に加速スリップが発生しにくい状態にあっては、余り発電することなくベルトスリップは発生しない。一方、急発進などによって、所定のエンジン回転数Neになると共に発電負荷トルクTGが増加して、目標発電負荷トルクThが伝動トルク上限値BTslipを越えると、実際の発電負荷トルクTGが伝動トルク上限値BTslipを越えないように制御されることで、ベルト6のスリップが防止される。
また、上述のように目標発電負荷トルクThを伝動トルク上限値BTslipより小さな値に調整していても、ベルト6が劣化してベルト6の張力が緩くなったり、エンジンクランクプーリに油などが付着することで、ベルト6がスリップして、発電機7へのベルト伝動が小さく若しくは出来ないで発電機の回転数が低下することがある。この場合には、本実施形態では、実際のベルトスリップが抑えられるトルク値まで目標発電負荷トルクThを小さくすることで、駆動性能は少し落ちるものの、比較的路面μなどが高い場所での4WD発進機能が継続可能になるなど、4WD機能を確保可能となる。図10に、本実施形態によるベルトスリップ時のタイムチャート例を示す。
ここで、本実施形態では、一旦ベルト6が滑ると目標発電負荷トルクThを下げてスリップを抑制するが、スリップが抑制すると、ステップS270にて、仕様から求められる伝動トルク上限値BTslipを上限とした目標発電負荷トルクThになることで、場合によっては、またベルトスリップが発生することでまた滑らない発電負荷トルクまでトルクを下げる処理(ステップS210〜S230の処理)が行われる。すなわち、何らかの不具合でベルト6が滑ると、ベルト駆動はスリップとグリップを微妙に繰り返すことも想定される。この処理によるベルト6の加熱等の作用でベルト6に付着した油や埃等が飛ぶことでグリップ力が復活して、スリップしていたベルト6が通常状態に復帰して元のベルト駆動が可能となる場合がある。すなわち、油や埃等の付着による一時的なベルト不具合の場合には、その原因となるものが除去されて元のベルト駆動状態に戻れる可能性を有する。
もっとも、これに限定されるわけでなく、ステップS270で採用する伝動トルク上限値BTslip自体をスリップが収まったときのトルク値に設定変更して、再スリップを防ぐようにしても良い。この場合に、伝動トルク上限値BTslipを、スリップが収まったときのトルク値を基にして現在のエンジン回転数Neによる重み付した値としても良い。またこのとき、4輪駆動状態から2輪駆動状態に移行したときや、停車時のタイミングで伝動トルク上限値BTslipを初期値に戻すような処理をしても良い。
ここで、上記実施形態では、エンジン回転数Neに応じて伝動トルク上限値BTslipを変更するようにしているが、これに限定されない。車体速度を検出し、該車体速度に応じて伝動トルク上限値BTslipを変更するようにしても良い。上記変更は、図14に示すように、車体速度が大きくなるほど、伝動トルク上限値BTslipを連続的若しくは段階的に低くするように設定する。
この場合には、発進時など車体速度が遅い状態であると、伝動トルク上限値BTslipが高めに設定されるので、例えば、発進時などでエンジン2で駆動される前輪1L、1Rが加速スリップしてエンジン回転数Neが高回転となった場合には、ベルト6でのスリップを許容して加速性が確保される。
また、本実施形態では、発電機7の発電した電圧でモータ4を駆動して四輪駆動を構成する場合で説明しているが、これに限定されない。発電機7が発電した電力をエアコンなどの他の負荷装置に供給して、当該負荷装置で消費するようにしても良い。
また、図11のように、共通のベルト6によって上記モータを駆動する発電機7と共に、他の補機(冷却系のウォータポンプ、パワーステアリングのオイルポンプ、エアコンのコンプレッサなど)がベルト駆動されるようになっていても良い。この場合には、発電機7の負荷トルクを落としてベルトスリップを抑えることで、他の補機は正常にベルト駆動することが可能となる。
また、上記実施形態では、ベルト6がスリップすると滑らない値までトルクを下げるように発電を制限しているが、トルクを下げる代わりに発電機7自体の駆動を停止することで発電を制限しても良い。この場合であっても、ベルト劣化は抑えられ、また、共通のベルト6で駆動される他の補機を正常に駆動させることが可能となる。
また、上記実施形態では、後輪3L、3Rに対し主駆動輪である前輪1L、1Rのスリップ量に基づいて発電負荷トルクThを決定し、その発電負荷トルクThとなるように発電機7で発電する電力、つまりモータ4に供給する電力を設定しているが、この構成に限定されない。例えば、後輪3L、3Rで必要な駆動トルクを別途計算し、前輪1L、1Rの加速スリップとは独立して、必要な駆動トルクに応じた電力となるように発電機7の発電を調整して、当該発電機7で所定の発電負荷トルクを生じるように構成しても良い。
また、上記実施形態では、発電負荷トルクThを伝動トルクとみなして説明しているが、実際の伝動トルクに変換して上記処理を行うようにしても良い。
また、上記実施形態では、前輪の加速スリップ量に応じて発電機7による発電負荷トルクを設定しているので、ベルト6がスリップしたら、発電機7の目標発電負荷トルクThを落としながら、アクセル開度とは無関係にエンジン2の出力自体も徐徐に小さくするようにして、早期にベルトスリップを抑えると共に前輪の加速スリップも抑えるようにしても良い。
本発明に基づく実施形態に係る概略装置構成図である。 本発明に基づく実施形態に係るシステム構成図である。 本発明に基づく実施形態に係る4WDコントローラを示すブロック図である。 本発明に基づく実施形態に係る余剰トルク演算部の処理を示す図である。 本発明に基づく実施形態に係る目標トルク制限部の処理を示す図である。 発電機の出力電圧と伝動トルクとの関係を示す図である。 エンジン回転数と伝動トルクとの関係及び伝動トルク上限値を示す図である。 本発明に基づく実施形態に係るベルトスリップ判定部の処理を示す図である。 本発明に基づく実施形態に係る余剰トルク変換部の処理を示す図である。 本発明に基づく実施形態に係るタイムチャート例を示す図である。 本発明に基づく実施形態に係るベルト伝動の他の構成を示す図である。
符号の説明
1L、1R 前輪
2 エンジン
3L、3R 後輪
4 モータ
6 ベルト
7 発電機
8 4WDコントローラ
9 電線
10 ジャンクションボックス
11 減速機
12 クラッチ
14 吸気管路
15 スロットルバルブ
18 エンジンコントローラ
20 アクセルセンサ
21 エンジン回転数センサ
22 電圧調整器
23 電流センサ
26 モータ用回転数センサ
27FL、27FR、27RL、27RR
車輪速センサ
30 発電機回転検出センサ
Ifh 発電機の界磁電流
V 発電機の電圧
Nh 発電機の回転数
Ng 発電機側回転数
Ia 電機子電流
Ifm モータの界磁電流
E モータの誘起電圧
Nm モータの回転数
TG 発電機負荷トルク
Th 目標発電機負荷トルク
Th0 減少値
Tm モータのトルク
Te エンジンの出力トルク
TeM 制限出力トルク
TeN 目標出力トルク
Tk 許容トルク
ΔTe 偏差トルク
BTslip 伝動トルク上限値

Claims (8)

  1. 前後輪の少なくとも一方を駆動する内燃機関と、その内燃機関の動力がベルト伝動により伝達される発電機と、その発電機の発電した電力で作動する作動装置とを備えた車両の駆動力制御装置において、
    上記ベルトの伝動トルクを該ベルトがスリップしないと推定される伝動トルク上限値以下となるように上記発電機の発電を制限する伝動トルク調整手段と、
    上記ベルトの実際のスリップを検出するスリップ検出手段と、スリップ検出手段がベルトスリップを検出すると上記発電機の発電を制限する発電制限手段とを備え
    上記発電制限手段で発電を制限して上記スリップが収まったときのトルク値に基づき上記伝動トルク上限値を設定変更することを特徴とする車両の駆動力制御装置。
  2. 上記スリップ検出手段は、内燃機関の回転数と発電機の入力軸の回転数とからベルトスリップを検出することを特徴とする請求項1に記載した車両の駆動力制御装置。
  3. 上記発電制限手段は、発電を禁止することで発電の制限を実施することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した車両の駆動力制御装置。
  4. 上記発電制限手段は、上記ベルト伝動のベルトがスリップしない伝動トルク上限値以下となるように、ベルト伝動の伝動トルクを調整する伝動トルク調整手段を備えることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載した車両の駆動力制御装置。
  5. 上記発電制限手段は、スリップ検出手段のベルトスリップ検出に基づき、フィードバック制御によって、ベルトのスリップが抑えられる値まで内燃機関に対する発電機の負荷トルクを低減することで、上記発電の制限を行うことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載した車両の駆動力制御装置。
  6. 上記発電機の発電で作動する作動装置は、モータであって、該モータは、上記内燃機関が駆動する車輪とは異なる車輪を駆動可能となっていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載した車両の駆動力制御装置。
  7. 上記ベルトは、上記発電機と共に上記モータとは異なる作動装置にも動力を伝達することを特徴とする請求項6に記載した車両の駆動力制御装置。
  8. 内燃機関で駆動される車輪の加速スリップ量に応じた発電負荷トルクに発電機のトルクを制御する発電機制御手段と、運転者のアクセル操作とは無関係に内燃機関の出力トルクを低減制御する内燃機関出力制限手段とを備え、
    上記発電制限手段は、発電を制限する場合に、上記内燃機関出力制限手段を介して、内燃機関の出力トルクの上記制限に応じて制限することを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載した車両の駆動力制御装置。
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