JP3811984B2 - 折り曲げパイプの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば宇宙用・工業用・家庭用の熱交換器、排熱装置として用いられるヒートパイプ用管材のような、折り曲げパイプの製造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図7は一般的に行われている、曲げ部分におけるパイプ断面の変形を小さくする曲げ方法の例である。図において、7はパイプであり、パイプ7の内部に8の砂を詰め、9の栓により砂8がパイプ7から流出するのを防いでいる。このパイプ7を10の曲げ治具に当てて曲げを行なう。
【0003】
次に作用について説明する。パイプ7に対して鎖線で示したような曲げを行なうと、曲げ中心に近い側では圧縮応力、遠い側では引張応力が発生する。この応力により、曲げの外周側は伸び、内周側は縮む。さらにポアソン効果により断面を変形させる応力が発生する。内部の砂8はこの変形に対する拘束の役割を果たすため、断面の塑性ひずみを小さく抑えた曲げ加工が可能になる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来のパイプの曲げ方法は以上のような手順を踏んでいたので、曲げ工程前にパイプ7内に砂8を封入し、曲げ終了後に砂8を取り出してパイプ7の内部を洗浄することが必要であった。このため、曲げ加工に非常に時間がかかる、さらにはパイプ内壁が砂で傷付けられるといった欠点があった。またパイプ内部の清浄度が必要となる高純度の流体用の配管や、導波管、あるいは内部にウィックと呼ばれる特殊な構造を持つヒートパイプ用管材などでは、内部に残った砂を完全に除去するのが困難であり、適用が難しかった。
【0005】
この発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、曲げ工程時にパイプ内部への砂の封入を不要にすると共に、曲げ部分におけるパイプ断面の変形を小さくする曲げ方法の確立を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明による折り曲げパイプの製造方法は、高純度の流体用の配管、導波管、あるいは内部にウィックと呼ばれる特殊な構造を持つヒートパイプ用等のパイプを、断面形状の変形が小さくなるように折り曲げて成形される折り曲げパイプの製造方法において、上記パイプの外周面に複数のリブを設けて製作する第一の工程と、上記パイプの焼きなましを行う第ニの工程と、上記第二の工程で焼きなましされたパイプを、上記第一の工程で製作された複数のリブを曲げの外周側として曲げる第三の工程と、上記第三の工程で曲げられたパイプから、機械加工によって複数のリブを設けた部分を除去する第四の工程とから製造するものである。
【0010】
さらにまた、この発明による折り曲げパイプの製造方法は、高純度の流体用の配管、導波管、あるいは内部にウィックと呼ばれる特殊な構造を持つヒートパイプ用等のパイプを、断面形状の変形が小さくなるように折り曲げて成形される折り曲げパイプの製造方法において、上記パイプの焼きなましを行う第一の工程と、上記第一の工程で焼きなましたパイプの曲げ方向の外周側に、パイプ表面に樹脂を注型する第二の工程と、上記第二の工程で樹脂を注型されたパイプを、上記第二の工程で注型した樹脂を曲げの外周側として曲げる第三の工程と、上記第三の工程で曲げられたパイプから、有機溶媒を使って当該樹脂を除去する第四の工程とから製造するものである。
【0011】
なお、この発明による折り曲げパイプ製造方法は、上記第三の工程において、パイプの曲げられる方向に対して垂直な方向からパイプの曲げ部分を押さえることを特徴とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1を示す概念図であり、図において1は管内が複雑な形状を持つパイプ、2はパイプ1を曲げる時に補強として貼り付けた補強材、3はパイプ1と補強材2を貼り付ける接着剤、Aはパイプ1を曲げた時の内周面、Bは外周面を示す。パイプ1は曲げ加工をしやすくするために焼きなましてある。
【0013】
このパイプ1に対して曲げを行なうと、面Aには圧縮応力、面Bには引張応力が生じる。面Bは補強材2により補強されているため面Aよりも剛性が高く、従って曲げモーメントを加えた時の中立軸が面B側に移動することになり、面Bの発生応力は面Aのそれよりも小さくなる。したがって曲げ工程は圧縮による塑性ひずみの割合が高い状態で進行する。圧縮による塑性ひずみは引張による塑性ひずみよりも小さいため、補強材2がない場合に比べて曲げ部分における断面の変形が小さくなる。補強材2と接着剤3は曲げ作業後に有機溶媒を使って除去する。
【0014】
補強材2と接着剤3はパイプ1の形状、材質、曲げ半径に応じて選ぶ。例えば、高さ/幅が14.73mm、内径13.2mmのA6061−O製パイプ1に対して内周面での曲げ半径が43.4mmの90゜曲げを行なうとする。厚さ1.6mm〜2mmのA6061−O製補強材2を瞬間接着剤3を用いてパイプ1に接着して曲げることにより、パイプ1の曲げ外周側の面Bのへこみを補強材2を用いない場合に比べて10分の1以下に抑えることが出来た。曲げ完了後、接着剤3をアセトンで除去し、補強材2をパイプ1から取り外す。この例の場合、補強材2の厚さを3mm以上にすると面Bのへこみは抑えられるが曲げの内周側の面Aの変形が無視できなくなる。また補強材2の材質はA6061−Oと似た物質をもつリン青銅でも同じ効果が得られるし、接着剤3は瞬間接着剤よりも剪断強度の高いエポキシ系接着剤を使用しても良い。
【0015】
実施の形態2.
図2はこの発明の実施の形態2を示す概念図である。図2において、1は管内が複雑な形状を持つパイプ、Aはパイプ1を曲げた時の内周面、Bは外周面を示す。パイプ1は面Bの肉厚が面Aの肉厚よりも厚くなるように製造されている。パイプ1は曲げ加工しやすくするために焼きなましてある。
【0016】
このパイプ1に対して曲げを行なうと、面Aには圧縮応力、面Bには引張応力が生じる。面Bは面Aよりも肉厚が厚いために剛性が高く、従って曲げモーメントを加えた時の中立軸が面B側に移動することになり、面Bの発生応力は面Aのそれよりも小さくなる。したがって曲げ工程は圧縮による塑性ひずみの割合が高い状態で進行する。圧縮による塑性ひずみは引張による塑性ひずみよりも小さいため、面Bの肉厚が面Aと等しい場合に比べて曲げ部分における断面の変形が小さくなる。実施の形態1と同様、面Bの肉厚はパイプ1の形状、材質、曲げ半径に応じて選ぶ。また航空宇宙用などの軽量化が要求される場合には、曲げ加工後に面Bを機械加工して肉厚の不均衡を解消する。
【0017】
実施の形態3.
図3は、この発明の実施の形態3を示す概念図である。図3において、1は管内が複雑な形状を持つパイプ、Aはパイプ1を曲げた時の内周面、Bは外周面、Lは面B上にある剛性を高めるためのリブを示す。パイプ1は曲げ加工をしやすくするために焼きなましてある。
【0018】
このパイプ1に対して曲げを行なうと、面Aには圧縮応力、面Bには引張応力が生じる。面BはリブLを持つために面Aよりも剛性が高く、従って曲げモーメントを加えた時の中立軸が面B側に移動することになり、面Bの発生応力は面Aのそれよりも小さくなる。したがって曲げ工程は圧縮による塑性ひずみの割合が高い状態で進行する。圧縮による塑性ひずみは引張による塑性ひずみよりも小さいため、リブCがない場合に比べて曲げ部分における断面の変形が小さくなる。実施の形態2に比べて軽量に仕上がる利点もある。実施の形態1と同様、リブLの形状、数量はパイプ1の形状、材質、曲げ半径に応じて選ぶ。また航空宇宙用などの軽量化が要求される場合には、曲げ加工後に機械加工などによりリブLを削除する。
【0019】
実施の形態4.
図4は実施の形態4を示す概念図である。図4において、1は管内が複雑な形状を持つパイプ、4はパイプ1の外周面に注形された樹脂、Aはパイプ1を曲げた時の内周面、Bは外周面を示す。パイプ1は曲げ加工をしやすくするために焼きなましてある。
【0020】
このパイプ1に対して曲げを行なうと、面Aには圧縮応力、面Bには引張応力が生じる。面Bは樹脂4により補強されているため面Aよりも剛性が高く、従って曲げモーメントを加えた時の中立軸が面B側に移動することになり、面Bの発生応力は面Aのそれよりも小さくなる。したがって曲げ工程は圧縮による塑性ひずみの割合が高い状態で進行する。圧縮による塑性ひずみは引張による塑性ひずみよりも小さいため、樹脂4がない場合に比べて曲げ部分における断面の変形が小さくなる。樹脂4は曲げ作業後に有機溶媒を使って除去する。実施の形態1と同様、樹脂4の形状はパイプ1の形状、材質、曲げ半径に応じて選ぶ。
【0021】
実施の形態5.
図5は実施の形態5を示す概念図である。図5において、1は管内が複雑な形状を持つパイプ、5はパイプ1を局部的に加熱するための高周波加熱コイル、Aはパイプ1を曲げた時の内周面、Bは外周面を示す。パイプ1は曲げ加工をしやすくするために焼きなましてある。
【0022】
このパイプ1に対して曲げを行なうと、面Aには圧縮応力、面Bには引張応力が生じる。パイプの内周面となる部分に高周波加熱コイル5を置き、パイプ1を高周波加熱コイル5で短時間で局部的に加熱し、面Aを材料の強度が劣化する程度の高温にする。この状態で曲げを行なえば、材料劣化により面Aが面Bよりも先に降伏を起こす。したがって曲げ工程は圧縮による塑性ひずみの割合が高い状態で進行する。圧縮による塑性ひずみは引張による塑性ひずみよりも小さいため、高周波加熱コイル5による加熱がない場合に比べて曲げ部分における断面の変形が小さくなる。実施の形態1と同様、高周波加熱コイル5による加熱時間、加熱量はパイプ1の形状、材質、曲げ半径に応じて選ぶ。
【0023】
実施の形態6.
図6は実施の形態6を示す概念図であり、実施の形態1と併用した場合を示している。図6において、1は管内が複雑な形状を持つパイプ、2はパイプ1を曲げる時に補強として貼り付けた補強材、3はパイプ1と補強材2を貼り付ける接着剤、6はパイプ1の上下方向に密着した剛体、Aはパイプ1を曲げた時の内周面、Bは外周面、CおよびDは剛体6により変位を拘束される面を示す。パイプ1は曲げ加工をしやすくするために焼きなましてある。
【0024】
このパイプ1に対して曲げを行なうと、面Aには圧縮応力、面Bには引張応力が生じる。面Bは補強材2により補強されているため面Aよりも剛性が高く、従って曲げモーメントを加えた時の中立軸が面B側に移動することになり、面Bの発生応力は面Aのそれよりも小さくなる。したがって曲げ工程は圧縮による塑性ひずみの割合が高い状態で進行する。圧縮による塑性ひずみは引張による塑性ひずみよりも小さいため、補強材2がない場合に比べて曲げ部分における断面の変形が小さくなる。補強材2と接着剤3は曲げ作業後に有機溶媒を使って除去する。また、曲げを行なうと、ポアソン効果により面Aと面Bの距離は縮み、面Cと面Dの距離は伸びる。しかし面Cと面Dの変位を拘束する剛体6の存在によりパイプ断面変形はさらに抑制され、実施の形態1〜5に示した曲げ方法に比べてさらに断面の変形が小さくなる。
【0025】
実施の形態1で示した例の場合、剛体6を併用することで面Cと面Dの距離の伸びを10分の1以下に抑えることが出来た。
【0028】
【発明の効果】
この発明によれば、曲げ工程においてパイプの曲げ外周側にリブを設けてパイプの曲げ外周側の剛性を高め、圧縮変形の割合を高めて曲げることにより、パイプ断面の変形が小さい折り曲げパイプが得られる効果がある。
【0030】
また、この発明によれば、曲げ工程においてパイプの曲げ内周側を加熱してパイプの曲げ内周側の材料を強度を劣化させ、圧縮変形の割合を高めて曲げることにより、パイプ断面の変形が小さい折り曲げパイプが得られる効果がある。
【0031】
なお、この発明によれば、曲げ工程においてパイプを上下から剛体で抑えるためにパイプの断面の変形が拘束され、パイプ断面の変形が小さい折り曲げパイプが得られる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1による複雑形状の内壁を持つ折り曲げパイプの製造方法を示す。
【図2】 この発明の実施の形態2による複雑形状の内壁を持つ折り曲げパイプの製造方法を示す。
【図3】 この発明の実施の形態3による複雑形状の内壁を持つ折り曲げパイプの製造方法を示す。
【図4】 この発明の実施の形態4による複雑形状の内壁を持つ折り曲げパイプの製造方法を示す。
【図5】 この発明の実施の形態5による複雑形状の内壁を持つ折り曲げパイプの製造方法を示す。
【図6】 この発明の実施の形態6による複雑形状の内壁を持つ折り曲げパイプの製造方法を示す。
【図7】 従来の折り曲げパイプの製造方法を示す。
【符号の説明】
1 複雑形状の内壁を持つ折り曲げパイプ、2 補強材、3 接着剤、4 樹脂、5 高周波加熱コイル、6 剛体、7 パイプ、8 砂、9 栓、10 曲げ治具、A パイプ1の曲げ内周面、B パイプ1の曲げ外周面、C パイプ1の変位を拘束される面、D パイプ1の変位を拘束される面、L リブ。
Claims (3)
- 高純度の流体用の配管、導波管、あるいは内部にウィックと呼ばれる特殊な構造を持つヒートパイプ用等のパイプを、断面形状の変形が小さくなるように折り曲げて成形される折り曲げパイプの製造方法において、
上記パイプの外周面に複数のリブを設けて製作する第一の工程と、
上記パイプの焼きなましを行う第ニの工程と、
上記第二の工程で焼きなましされたパイプを、上記第一の工程で製作された複数のリブを曲げの外周側として曲げる第三の工程と、
上記第三の工程で曲げられたパイプから、機械加工によって複数のリブを設けた部分を除去する第四の工程と、
から製造することを特徴とする、折り曲げパイプの製造方法。 - 高純度の流体用の配管、導波管、あるいは内部にウィックと呼ばれる特殊な構造を持つヒートパイプ用等のパイプを、断面形状の変形が小さくなるように折り曲げて成形される折り曲げパイプの製造方法において、
上記パイプの焼きなましを行う第一の工程と、
上記第一の工程で焼きなましたパイプの曲げ方向の外周側に、パイプ面に樹脂を注型する第二の工程と、
上記第二の工程で樹脂を注型されたパイプを、上記第二の工程で注型した樹脂を曲げの外周側として曲げる第三の工程と、
上記第三の工程で曲げられたパイプから、有機溶媒を使って当該樹脂を除去する第四の工程と、
から製造することを特徴とする、折り曲げパイプの製造方法。 - 上記第三の工程において、パイプの曲げられる方向に対して垂直な方向からパイプの曲げ部分を押さえることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の折り曲げパイプの製造方法。
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1996
- 1996-03-25 JP JP06820696A patent/JP3811984B2/ja not_active Expired - Fee Related
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