JP3811813B2 - 一方向クラッチ付きプーリユニット - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば、内燃機関の始動時および内燃機関による補機駆動時の回転力をベルトによって伝達するベルト伝動システムにおいて、ベルト駆動スタータに使用される一方向クラッチ付きプーリユニットに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、一方向クラッチ付きプーリユニットとしては、図8に示すように、エンジンスタータ(50)の前端部を形成しているフレーム(51)と、軸部(52a)、円板部(52b)および外側円筒部(52c)からなりフレーム(51)の前部と軸部(52a)との間に配された軸受(53)を介してフレーム(51)に回転自在に支持されたクラッチ出力軸(52)と、クラッチ出力軸(52)の軸部(52a)の後方突出部に軸受(55)を介して回転自在に支持されたクラッチ入力軸(54)と、クラッチ出力軸(52)の外側円筒部(52c)とクラッチ入力軸(54)との間に配され入力軸(54)と出力軸(52)とが一の方向(ロック方向)に相対回転することにより両軸(52)(54)間に噛み込み、他の方向(フリー方向)に相対回転したとき噛み込みを解除する複数のスプラグ(56)と、クラッチ出力軸(52)の軸部の先端にナット(58)で固定されたプーリ(57)とを備えているものが特開2001−99197号公報に記載されている。
【0003】
この一方向クラッチ付きプーリユニットによると、エンジンスタータ(50)の直流モータ(59)が高速回転すると、この回転が遊星歯車減速装置(60)によって減速されてクラッチ入力軸(54)に伝達され、このクラッチ入力軸(54)の回転運動がスプラグ(56)を介してクラッチ出力軸(52)に伝達される。クラッチ出力軸(52)に伝達された回転運動は、プーリ(57)に伝達され、プーリ(57)がベルトを介してエンジンを回転駆動することによって、エンジンが駆動される。エンジンが始動して、クラッチ出力軸(52)の回転数がクラッチ入力軸(54)の回転数を超えると、スプラグ(56)は、クラッチ入力軸(54)から離れ、これにより、クラッチ出力軸(52)およびプーリ(57)は、以後クラッチ入力軸(54)からの抵抗を受けずに回転することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この発明による一方向クラッチ付きプーリユニットは、例えば、ベルトを介して始動トルクをクランク軸に伝達する内燃機関用ベルト伝動システムにおいて、スタータ用に使用することをその目的としている。
【0005】
上記従来の一方向クラッチ付きプーリユニットでは、プーリ(57)の回転中は、クラッチ出力軸(52)がプーリ(57)と一体となって回転することになるが、クラッチ出力軸(52)はエンジンの駆動に寄与しない部分であるので、軸部(52a)だけでなく、その円板部(52b)および外側円筒部(52c)までもが回転することは、エネルギロスの大きな要因となっていた。
【0006】
そこで、軸とこれの周囲に同心状に配されたプーリとの間に、内輪、外輪およびこれらの間に配された作動部材(例えば、スプラグ、ばねなど)を備えた一方向クラッチを設け、プーリに伴って回転する部分を減少することが考えられる。
【0007】
しかしながら、プーリと一方向クラッチの外輪が別体でかつ軸と一方向クラッチの内輪とが別体の場合、部品点数が多くなるとともに、軸とプーリとの間に一方向クラッチを配置するための寸法が確保されないという問題が生じることになる。
【0008】
また、プーリが回転して軸が回転しない空転時においては、噛み込み部材と内輪との接触によって内輪の外周面が摩耗し、耐久性が低下するという問題があり、また、空転状態が極めて長時間行われる場合には、熱によってグリスが劣化して、これによっても耐久性が低下するという問題があった。
【0009】
この発明の目的は、耐久性を向上させることができ、自動車エンジンのベルト駆動スタータとして好適に使用することができる一方向クラッチ付きプーリユニットを提供することにある。
【0010】
この発明の他の目的は、上記プーリユニットにおいて、部品点数を減少するとともに、一方向クラッチのための寸法の確保が可能とすることにある。
【0011】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
この発明による一方向クラッチ付きプーリユニットは、軸とこれの周囲に同心状に配されたプーリとの間に、内輪、外輪、両輪の間に配された噛み込み部材および噛み込み部材を噛み込み方向に付勢する付勢部材を備えた一方向クラッチが設けられている一方向クラッチ付きプーリユニットにおいて、一方向クラッチは、噛み込み部材および付勢部材が外輪と一体になって回転し、外輪の所定回転速度以上による遠心力によって噛み込み部材が噛み込み解除方向に移動し、付勢部材の付勢力がこの移動を許容する大きさを有しているものであり、外輪と内輪との間にグスが封入されており、グリスは、基油がエーテル系で増ちょう剤がウレア系であり、その圧力粘度係数が10G/Pa以上とされていることを特徴とするものである。
【0012】
一方向クラッチとしては、噛み込み部材としてのスプラグおよびこれを付勢するばねを作動部材として備えているスプラグ式のものであってもよく、また、噛み込み部材としてのころおよびこれを付勢するばねを作動部材として備えているころ式のものであってもよい。
【0013】
一方向クラッチは、好ましくは、外輪としてのプーリの内周面に設けられたカム面と、カム面と内輪としての軸の外周面とによって形成された楔状空間内に配置され、軸とプーリとが一の方向に相対回転することにより軸とプーリとの間に噛み込み、他の方向に相対回転したとき噛み込みを解除する複数の噛み込み部材としてのころと、ころを噛み込み方向(楔状空間の狭い側)に付勢する付勢部材としてのコイルばねとを備えた構成(外輪カム式)とされる。
【0014】
エーテル系の基油としては、アルキルジフェニルエーテルが例示される。グリスには、酸化防止剤、さび止め添加剤、極圧添加剤、固体潤滑剤などが適宜添加される。そして、グリスの圧力粘度係数は、10G/Pa以上とされる。
【0015】
また、グリスの増ちょう剤は、ウレア系であることが好ましい。グリスを構成しているエーテル系の基油は、熱安定性が良く、しかも、これがウレア系増ちょう剤と組み合わされることによってグリスの耐摩耗性も優れていることから、空転状態が極めて長時間行われる自動車エンジンのベルト駆動スタータとして使用した場合に、より優れた耐久性を発揮することができる。
【0016】
この発明の一方向クラッチ付きプーリユニットによると、エーテル系の基油は、熱安定性が良く、空転状態が極めて長時間行われる自動車エンジンのベルト駆動スタータとして使用した場合に、優れた耐久性を発揮することができる。
【0017】
プーリと一方向クラッチの外輪とが一体とされていることが好ましい。このようにすると、プーリの外径を抑えながら、一方向クラッチの噛み込み部材(スプラグ、ころ)のP.C.Dを大きくすることができ、この結果、噛み込み部材に働く遠心力が大きくなり、空転時における噛み込み部材と軸との非接触状態を確保することができる。
【0018】
また、一方向クラッチは、軸とプーリの軸方向中間部との間に設けられており、軸とプーリとの間に、ころ軸受および玉軸受が一方向クラッチを挟んで設けられていることが好ましい。このようにすると、プーリの高速回転が可能となり、このユニットを自動車エンジンのベルト駆動スタータとして好適に使用することができる。
【0019】
さらにまた、プーリと一方向クラッチの外輪と軸受の外輪とが一体とされ、軸と一方向クラッチの内輪と軸受の内輪とが一体とされていることが好ましい。このようにすると、部品点数を減少するとともに、プーリの外径を抑えることが容易となり、また、一方向クラッチの内輪の外径を抑えることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
この発明の実施の形態を、以下図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、この発明による一方向クラッチ付きプーリユニットを示している。この一方向クラッチ付きプーリユニット(1)は、エンジンの駆動部とスタータモータの回転軸とを連結する部分に配置されるもので、スタータモータの回転軸(2)に嵌められ中空軸(3)とこれと同心に配置されたプーリ(4)との間に、一方向クラッチ(5)が設けられている。プーリ(4)の外周には、Vリブドベルト(B)が掛け渡されるベルト掛け渡し部(4a)が設けられている。
【0022】
一方向クラッチ(5)は、中空軸(3)とプーリ(4)の軸方向中間部との間に設けられており、中空軸(3)とプーリ(4)の各端部寄り部分との間には、ころ軸受(6)および玉軸受(7)が一方向クラッチ(5)を挟んで設けられている。ころ軸受(6)および玉軸受(7)のさらに軸方向外側には、シール部材(8)(9)がそれぞれ配置されており、さらに、プーリユニットの自由端側(図の左端側)には、プーリユニット内部に泥水等の侵入を防止するために、さらに、シール部材(10)が配置されている。
【0023】
一方向クラッチ(5)は、図2に示すように、プーリ(4)の内周面に設けられたカム面(11)と、カム面(11)と中空軸(3)の外周面とによって形成された楔状空間(12)内に配置され、中空軸(3)とプーリ(4)とが一の方向(ロック方向)に相対回転することにより中空軸(3)とプーリ(4)との間に噛み込み、他の方向(フリー方向)に相対回転したとき噛み込みを解除する複数の噛み込み部材としてのころ(13)と、ころ(13)を噛み込み方向(楔状空間(12)の狭い側)に付勢する付勢部材としてのコイルばね(14)と、ころ(13)を楔状空間(12)内に位置させる保持器(15)とを備えている。
【0024】
カム面(11)は、軸心を挟んで対向する平行2面(11a)(11b)(11c)(11d)が周方向に複数組(この実施形態では4組)設けられることによって構成されている。平行2面(11a)(11b)(11c)(11d)の各面は、ころ(13)の中心および軸心を通る法線(19)に対して直角ではなく、図2の一部を拡大した図3にθで示す角は、直角よりも若干小さい鋭角とされている。こうして、プーリ(4)にカム面(11)が設けられることにより、プーリ(4)には、一方向クラッチ(5)の外輪としての機能が付与され、プーリ(4)と一方向クラッチ(5)の外輪との一体化が果たされている。これにより、プーリ(4)の外径を抑えながら、ころ(13)のP.C.Dを大きくすることができ、ころ(13)に働く遠心力が大きいものとなっている。
【0025】
平行2面(11a)(11b)(11c)(11d)の楔状空間(12)の広い側の端部には、横断面が円弧状で遠心力を受けたころ(13)を停止させるころ保持用凹面部(16)が設けられている。凹面部(16)は、ころ(13)の外周面の半径とほぼ同じ半径の円弧状とされている。
【0026】
図1に示すように、プーリ(4)の内径は段付状とされており、プーリ(4)が有しているころ軸受の外輪、一方向クラッチの外輪および玉軸受の外輪の各機能に対応する寸法に関して、ころ軸受の外輪軌道部内径をD1、一方向クラッチの外輪の最小内径(この実施形態では、外輪カム面(11)の平行2面間距離)をD2、玉軸受の外輪軌道肩部内径をD3として、D1>D2≧D3とされている。
【0027】
中空軸(3)の外径に関しては、溝を除いて一定とされており、ころ軸受(6)の内輪軌道部外径=一方向クラッチ(5)の内輪外径=玉軸受(7)の外輪軌道肩部外径となっている。
【0028】
また、ベルト掛け渡し部(4a)におけるプーリ外周の最内径部と噛み込み開始位置におけるころ(13)の中心部との径方向距離T1が、噛み込み開始位置におけるころ(13)の中心部と中空軸(3)内周の最小内径部との径方向距離T2よりも小さくされている。すなわち、プーリ(4)および中空軸(3)の実質的な厚みを比較すると、プーリ(4)の厚みが薄くなされている。これにより、プーリ(4)の外径を抑えながら、ころ(13)のP.C.Dを大きくすることができ、ころ(13)に働く遠心力がより大きくなっている。
【0029】
コイルばね(14)は、横断面内に中心軸を有し、長径の方向が一方向クラッチ(5)の軸方向に一致させられた楕円形のものとされている。そして、その短径の長さしたがってばねのころに当接している部分の径方向寸法は、ころ(13)の直径よりも小さくなされている。
【0030】
保持器(15)は、合成樹脂製で、カム面(11)にほぼ沿った外周形状と中空軸(3)外周面に沿った内周形状を有しており、カム面(11)内に圧入されている。保持器(15)と中空軸(3)の外周との間には若干の間隙が設けられている。保持器(15)には、コイルばね(14)を位置決めするばね受け凹所(17)が設けられている。ばね受け凹所(17)には、グリスが封入されている。
【0031】
ばね受け凹所(17)は、カム面(11)のころ保持用凹面部(16)に連なってプーリ(4)の内周に設けられたばね位置決め面(18)とによってコイルばね(14)の中心軸方向を一定に保っている。コイルばね(14)の中心軸は、コイルばね(14)に遠心力が作用した際にころ(13)に対する付勢力を減少させる方向に変形させられるように、中空軸(3)の外周面の接線方向に対して傾斜させられている。プーリ(4)のばね位置決め面(18)は、カム面(11)と同様に、一方向クラッチ(5)の軸心を挟んで対向して平行に形成された2面が周方向に4組設けられることによって構成されている。
【0032】
ばね受け凹所(17)は、図3および図4に符号(17a)(17b)で示すように、コイルばね(14)がばね軸方向へ移動することを阻止するばね端部位置決め面(17a)と、コイルばね(14)がばね軸に直交する内向きに移動することを阻止するばね内側位置決め面(17b)とを有しており、プーリ(4)のばね位置決め面(18)は、コイルばね(14)がばね軸に直交する外向きに移動することを阻止するばね外側位置決め面となっている。これらのばね位置決め面(17a)(17b)(18)によって、コイルばね(14)の中心軸は、図3に示すように、ころ(13)の中心軸と直交し、カム面(11)の平行2面(11a)(11b)(11c)(11d)と平行に保たれている。
【0033】
図5は、保持器(15)の一部を径方向外方から見た図であり、同図に符号(17d)(17e)で示すように、ばね受け凹所(17)は、コイルばね(14)が一方向クラッチ(5)の軸心方向へ移動することを阻止する軸心方向位置決め面(17d)(17e)を有している。
【0034】
ばね受け凹所(17)のばね内側位置決め面(17b)に連なって、ころ保持用傾斜面(17c)が設けられている。この傾斜面(17c)の他端は、中空軸(3)の外周面に対してわずかに間隙を有するようになされている。プーリ(4)のころ保持面であるころ保持用凹面部(16)と保持器(15)のころ保持面であるころ保持用傾斜面(17c)とによって、噛み込み解除方向に移動したころ(13)を受け止めて保持する横断面略ハの字状のころ保持部が形成されている。
【0035】
図2および図3は、ころ(13)およびコイルばね(14)に遠心力が働いていない状態を示しており、この状態で中空軸(3)が反時計方向に回転させられると、ころ(13)が中空軸(3)とプーリ(4)との間に噛み込み、中空軸(3)とプーリ(4)とは、一体となって回転する。そして、プーリ(4)が高速回転となり、中空軸(3)の回転が停止させられると、ころ(13)に働く遠心力の方向(符号(19)で示す線の外向きの方向)ところ(13)が平行2面(11a)(11b)(11c)(11d)と接触している点における法線方向とがずれていることにより、ころ(13)には平行2面(11a)(11b)(11c)(11d)に沿った方向の力が掛かり、これにより、ころ(13)は、図4に矢印で示すように、楔状空間(12)の広い側に移動する。
【0036】
この状態では、プーリ(3)のころ保持面である凹面部(16)がころ(13)の外周面の半径とほぼ同じ半径の横断面円弧状の凹面とされているので、円筒面を有するころ(13)の外周部分がこの凹面部(16)にちょうど収まり、また、径方向内側からは、保持器(15)のころ保持面である傾斜面(17c)があてがわれるので、ころ(13)が傾くようなことはなく、中空軸(3)外周ところ(13)との間隙が確保され、中空軸(3)ところ(13)との非接触状態が達成される。
【0037】
上記の一方向クラッチ付きプーリユニットをベルト駆動スタータに使用する場合、グリスには、噛み合い性、耐摩耗性および熱安定性が優れていることが要求される。噛み合い性および噛み合いに対する耐摩耗性は、一方向クラッチ全般に要求される特性であるが、熱安定性および滑りに対する耐摩耗性は、空転時が多用される場合に必要となる特性であり、耐摩耗性および熱安定性が両立することによって、一方向クラッチ付きプーリユニットの耐久性が確保される。また、ベルト駆動スタータにおける使用条件では、角加速度が300〜400rad/sec程度であり、温度は、10〜200℃程度である。
【0038】
次に、この一方向クラッチ付きプーリユニットで使用されているグリスの構成について説明する。
【0039】
表1は、グリスの基油の種類と特性との関係を示している。この表から熱安定性に関しては、エーテル系のポリフェニルエーテルが最も優れているが、ポリフェニルエーテルは、耐摩耗性が劣っており、耐久性の向上のためには、耐摩耗性の向上が必要となる。
【0040】
【表1】
Figure 0003811813
【0041】
空転が長時間行われるような一方向クラッチにおいては、空転時の摩耗を低減することが特に重要である。したがって、油膜厚さが大きく、かつ噛み合い性が良好なグリスを選定する必要がある。油膜厚さは、耐摩耗性の指標として使用可能なものであり、これが大きいと摩耗が低減する。表2に、くさび角9°、ばね荷重1N、温度100℃、エンジン回転500rpmにおけるそれぞれの基油を有するグリスと油膜厚さの比較を示す。
【0042】
【表2】
Figure 0003811813
【0043】
表2から、アルキルジフェニルエーテルを基油としたグリスが油膜厚さが大きく空転時の一方向クラッチにおけるカム面(11)ところ(13)の摩耗の低減に効果が高いことが分かる。
【0044】
表3に、5種類のグリースの特性と摩耗評価結果を、図6に、グリスの圧力粘度係数と摩耗深さとの関係を2種のグリス(基油がエーテル系で増ちょう剤がウレアとLi石けんの2種)について測定した結果をそれぞれ示す。
【0045】
【表3】
Figure 0003811813
【0046】
図6の結果において、実線は、ウレア系増ちょう剤を使用したものの回帰曲線であり、表3および図6の結果から、ウレア系増ちょう剤を使用するとともに、圧力粘度係数が10G/Pa以上となるようにすることにより、基油単独での耐摩耗性でポリオールエステルに劣っているエーテル系(この例では、アルキルジフェニルエーテル)の基油を用いても、ポリオールエステルを基油として用いたものに比べて、噛み込み時の一方向クラッチにおけるころ(13)のカム面(11)への噛み込みによる摩耗深さで遜色ないことが分かる。ポリフェニルエーテルは、上述のように、ポリオールエステルに比べて熱安定性に優れており、アルキルジフェニルエーテルを基油とし、ウレア系化合物を増ちょう剤としたグリスは、耐摩耗性と熱安定性とが相まって、極めて優れた耐久性を発揮することが分かる。
【0047】
図7に、本発明に用いられる基油をエーテル系としたグリスの一例である基油をアルキルジフェニルエーテルとし、増ちょう剤をウレア系化合物としたグリ(破線で示す)と基油をポリオールエステルとし、増ちょう剤をウレア系化合物としたグリ(実線で示す)とにおける温度と噛み合い滑りが発生する加速度との関係を示す。
【0048】
図7から、全温度域において、グリース2(ポリオールエステル+ウレア)は、グリース1(アルキルジフェニルエーテル+ウレア)より噛み合い性が優れていることが分かる。しかし、ベルト駆動スタータにおける使用条件100℃以上の温度においては、グリース1は300〜400rad/secを満たしていることが分かる。したがって、基油をエーテル系としたグリスは、熱安定性、噛み合いに対する耐摩耗性、空転時の耐摩耗性に優れ、かつ、例えばベルト駆動スタータの使用条件において、良好な噛み合い性を有し、空転が長時間行われるような一方向クラッチのグリスに適している。
【0049】
この一方向クラッチ付きプーリユニットは、次のように動作する。
【0050】
まず、始動時においては、スタータモータの回転軸(2)と一体の中空軸(3)が反時計回りに回転させられる。これにより、一方向クラッチ(5)の楔状空間(12)の狭い側にころ(13)が噛み込まれ、駆動力が伝達されて、中空軸(3)とプーリ(4)とが一体となって回転する。プーリ(4)はベルトを介してクランクシャフトに接続されており、プーリ(4)の回転によってエンジンが始動する。エンジンが始動すると、スタータが停止し、プーリ(4)は反時計方向の回転を続ける。これにより、ころ(13)の噛み込みが解除され、プーリ(4)だけが回転する状態が継続される。特にエンジンの高速回転時、ころ(13)は、ころ(13)とほぼ同じ曲率の凹面部(16)によって位置決めされ、中空軸(3)と非接触状態となる。また、コイルばね(14)は、プーリ(4)の所定回転速度以上による遠心力によって縮む方向の力を受け、ころ(13)を噛み込み方向に付勢する弾性力が減少させられ、ころ(13)と中空軸(3)との間の非接触状態が確保される。遠心力が作用したときのころ(13)の移動方向とコイルばね(14)の中心軸方向とが一致していることから、ころ(13)が移動する際にコイルばね(14)がずれて、プーリ(4)が停止した際のコイルばね(14)の付勢力方向が変化することはなく、ころ(13)をうまく噛み込み側へ移動させることができないという問題が起こることはない。
【0051】
このプーリユニット(1)を組み立てる際には、玉軸受(7)の玉および保持器、一方向クラッチ(5)のコイルばね(14)およびころ(13)、ころ軸受(6)のころおよび保持器の順に、プーリ(4)と中空軸(3)との間に挿入すればよい。上述したように、ころ軸受(6)の外輪軌道部内径(D1)>一方向クラッチ(5)の外輪カム面(11)の平行2面間距離(一方向クラッチの外輪の最小内径)(D2)≧玉軸受(7)の外輪軌道肩部内径(D3)であるので、各挿入作業時において径方向外側に作業用のスペースが確保され、組立て作業を容易に行うことができる。
【0052】
中空軸(3)は、その外径が溝を除いて一定とされているので、削り出しでなく、冷間鍛造によって加工することが可能であり、これにより、一方向クラッチ付きプーリユニットの加工コストを低減することができる。
【0053】
上記において、ころ(13)を付勢する手段として、コイルばねを示したが、コイルばねに代えて板ばね等を用いることも可能である。また、一方向クラッチとしては、噛み込み部材がころ(13)である場合を示したが、噛み込み部材および付勢部材が外輪と一体になって回転し、外輪の所定回転速度以上による遠心力によって噛み込み部材が噛み込み解除方向に移動し、付勢部材の付勢力がこの移動を許容する大きさを有している一方向クラッチであれば、噛み込み部材がスプラグであるものを使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、この発明による一方向クラッチ付きプーリユニットを示す縦断面図である。
【図2】 図2は、同横断面図である。
【図3】 図3は、図2の一部を拡大した図で、一方向クラッチの噛み合い状態を示している。
【図4】 図4は、図2の一部を拡大した図で、一方向クラッチの噛み合い解除状態を示している。
【図5】 図5は、保持器を径方向外側から見た図であり、図の上下方向が一方向クラッチの軸方向と一致している。
【図6】 図6は、グリスの温度と噛み合い加速度との関係を2種のグリスについて測定した結果を示すグラフである。
【図7】 図7は、グリスの粘度と摩耗深さとの関係を2種のグリスについて測定した結果を示すグラフである。
【図8】 図8は、従来の一方向クラッチ付きプーリユニットを示す横断面図である。
【符号の説明】
(3) 中空軸
(4) プーリ
(5) 一方向クラッチ
(6) ころ軸受
(7) 玉軸受
(12) カム面
(13) ころ(作動部材)
(14) コイルばね(作動部材)

Claims (4)

  1. 軸とこれの周囲に同心状に配されたプーリとの間に、内輪、外輪、両輪の間に配された噛み込み部材および噛み込み部材を噛み込み方向に付勢する付勢部材を備えた一方向クラッチが設けられている一方向クラッチ付きプーリユニットにおいて、一方向クラッチは、噛み込み部材および付勢部材が外輪と一体になって回転し、外輪の所定回転速度以上による遠心力によって噛み込み部材が噛み込み解除方向に移動し、付勢部材の付勢力がこの移動を許容する大きさを有しているものであり、外輪と内輪との間にグスが封入されており、グリスは、基油がエーテル系で増ちょう剤がウレア系であり、その圧力粘度係数が10G/Pa以上とされていることを特徴とする一方向クラッチ付きプーリユニット。
  2. プーリと一方向クラッチの外輪とが一体とされている請求項1の一方向クラッチ付きプーリユニット。
  3. 一方向クラッチは、軸とプーリの軸方向中間部との間に設けられており、軸とプーリとの間に、ころ軸受および玉軸受が一方向クラッチを挟んで設けられている請求項1または2の一方向クラッチ付きプーリユニット。
  4. プーリと一方向クラッチの外輪と軸受の外輪とが一体とされ、軸と一方向クラッチの内輪と軸受の内輪とが一体とされている請求項の一方向クラッチ付きプーリユニット。
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