JP3811211B2 - 原皮の加工用の水性系液剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、蛋白質分解及び/又は脂肪分解酵素の溶液、高濃度の糖蜜及び有利にはハイドロトロピカ並びに場合によりその他の分散、膨潤蒸煮、脱毛又は石灰溶解作用を有する添加物を含有する、混合製剤の形の水処理場で皮革を製造するための安定な水性液剤に関する。この液剤は特に浸漬における水戻し及び汚物除去、石灰漬けにおける脱毛及び膨潤蒸煮の改善及び酵解における皮の表面精製の改善に役立つ。
【0002】
【従来の技術】
水処理場の皮革製造法、即ち全て鞣の準備を行う浸漬、石灰漬け及び酵解には処理液に様々に試薬及び添加物を添加することを含む多くの処理工程が必要である。酵素、ハイドロトロピカ、界面活性剤、膨潤蒸煮、石灰分散及び脱毛作用を有する作用物質を添加する。これらは一般に個々に添加する;種々の試薬を一つの薬剤中に合わせることは一般的ではない。これは特に水処理場における酵素使用に当てはまる:酵素は多くの場合に単独製剤として使用される。
【0003】
酵素機能をその他の例えば水和機能と一つの調剤中で合わせ持つ混合製剤は工業的実地では採用されていない。
【0004】
酵素の使用
“柔軟技術(sanfte Technologie)”の原型としての酵素法が今日では種々の技術分野で有利である。即ち、皮革工業だけでなく、洗剤工業、飼料−及び食料製造で既に確立された酵素法が存在する;定量的に及び定性的に拡大することが一般に努力されている。酵素工業の今日の技術及び将来展望はウルマン エンサイクロペデイア オブ インダストリアル ケミストリー(Ullmann、Encyclopedia of Industrial Chemistry)第5版、A15巻、VCH(1990年)、390〜434頁に記載されている。
【0005】
皮革加工、特に水処理場における酵素使用には広範な従来の技術がある。皮革製造で特定の目的に合わせた酵素の使用は、1907年にオットー レーム博士(Dr.Otto Rohm)による酵素による酵解の導入により始まった(DE−PS200519)。この時から−エコロジー意識の高まりの背景により−水処理場の種々の部分操作でプロテアーゼを使用することが提案され、実際に実現された(E.Pfleiderer及びR.Reiner著Biotechnology Ed.H.-J.Rehm 第6b巻、729〜743頁、VCH1988年参照)。
【0006】
蛋白質分解酵素
蛋白質分解酵素を浸漬、石灰漬け及び酵解で使用する。
【0007】
浸漬:
皮を乾燥状態で供給し、引き続き処理するために水戻し(軟化)し、前もって洗浄し、脂肪除去する。その際蛋白質分解酵素は下記の働きがある:
1.残留血液のアルブミン及びグロブリンを加水分解し、表面から除去する。
【0008】
2.コラーゲン繊維を包むプロテオグリカンを同じく除去する。
【0009】
3.それによって最上部皮層(上皮)がより透過性になり、水及び水と一緒に添加された界面活性剤が迅速かつ深く浸透する。従って後者はその作用部位に迅速に到達し、そこで良好な脂肪除去が行われることになる。
【0010】
酵素の作用は、皮を素早く水戻しをし、完全に脂肪除去し、浸漬後に平滑で汚れがなく、柔軟であることにより判断される。
【0011】
石灰漬け法
引き続き、脱毛を強アルカリ(石灰液“Ascher”)及び還元剤、例えば硫化物の使用により行う。プロテイナーゼの使用は脱毛を助け、石灰漬けした皮の平滑性及び清浄度を良くする。中和(脱石灰“Entkalken”)は有機酸を用いて行われる。
【0012】
酵解:
この処理工程は、集中的な表面洗浄を含み、良好な柔軟性及び弾性を得る配慮も必要である。その際酵素は下記の機能を満たす:
1.皮革を形成しない蛋白質を取り除く。毛根及び脂肪残分を取り除く。
【0013】
2.銀面のエラスチンを部分的に破壊除去し、これは柔軟性を高める。
【0014】
3.コラーゲン骨格も繊維のテロペプチド範囲に分割することによって軽く弛緩させる。皮革は柔軟になり、基層弛緩が改善される。
【0015】
さて原皮は更に処理するために準備加工される:次の工程として鞣を行う。うまく行われた浸漬及び酵解による清浄で傷のない表面によって、初めて均一な染色が可能になる。前記工程で水処理場で使用されるプロテイナーゼには、中性(E.C.3.4.24)及び特にアルカリ性プロテアーゼ(E.C.3.4.21)が該当する[Kirk−Othmer、第3版、199〜202頁、J.wiley1990年;Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、第5版、第A9巻409〜414頁、VCH1987年;L.Keay “Process Biochemistry”17〜21頁(1971年)]。詳細には8.5〜13のpH−範囲で作用最適値を発揮し、大抵はセリン型に属するアルカリ性バチルス−プロテアーゼ及びアルカリ性菌プロテアーゼである。
【0016】
特に、バチルス−株からのプロテアーゼ、例えばB.スブチリス(B.subtilis)、B.リケニホルミス(licheniformis)、B.フィルムス(firmus)、B.アルカロフィルス(alcalophilus)、B.ポリミキサ(polymixa)、B.メセンテリクス(mesentericus)、更にストレプトマイセス−株、例えばS.アルカロフィルス(alcalophilus)が挙げられる。アルカリ性細菌−プロテアーゼ用の有利な操作温度は一般に40〜60℃、菌プロテアーゼでは20〜40℃である。アルカリ性菌プロテアーゼとしては下記のものが挙げられる:アスペルギルス−株からのようなもの、例えばA.オリザエ(orizae)、ペニシリウム−株からのようなもの、例えばP.シアノフルブム(cyanofulvum)又はペシロマイセス ペルシチヌス(Paecilomyces persicinus)等。アルカリ性菌プロテアーゼの活性は主としてpH−範囲8.0〜11.0である。pH6.0〜9.0の範囲の作用最適値を有する中性プロテアーゼは、高アルカリ性範囲では作用が僅かとなるが、同様に使用することができる。これには、一般にメタロ酵素に属する中性の細菌プロテアーゼ、例えば中性バチルス−プロテアーゼ、例えばB.スブチリス、B.リケニホルミス、B.ナット−(natto)及びB.ポリミキサ(polymixa)、プソイドモナス(Pseudomonas)−プロテアーゼ、ストレプトマイセス−プロテアーゼが属するが、しかし菌プロテアーゼ、例えばA.オリザエ、A.パラシチクス(parasiticus)からのアルペルギルス−プロテアーゼ及びペニシリウム−プロテアーゼ、例えばP.グラウクム(glaucum)が属す。中性の細菌プロテアーゼは操作温度20〜50℃で最適にその活性は発揮するが、一方中性菌プロテアーゼの最も有利な操作温度は35〜40℃である。酵素の蛋白質分解効力は一般に、アンソン−ヘモグロビン−法(M.L.Anson、J.Gen.Physiol、第22巻、79頁以降、1939年)又はレーライン−フォルハルド−法(TEGEWAにより修正、Leder22、121〜126頁、1971年)により測定される。その際レーライン−フォルハルド−単位(LVE)は、試験条件(1時間、37℃、pH=8.3)下で、カゼイン−濾液20ml中で0.1nNaOH5.75×10-3mlの等量に相応する加水分解生成物の上昇を惹起する酵素量に相応する。
【0017】
その他の酵素及び酵素混合物
オットー レーム博士により皮革工業に導入された膵臓酵素錯体は酵素混合−製剤とみなされる。それは既に多数の酵素活性物、即ちアミラーゼ、リパーゼ、エンド−及びエキソ−プロテイナーゼを含有するからであり、その際もちろん後者の代表的な活性が使用で優勢である。
【0018】
アミラーゼは、特にプロテアーゼと組み合わせて、水処理場の酵解法で採用されている(US−A4273876)。デソキシコール酸の存在におけるリパーゼ及びアミラーゼ(パンクレアチンの形の)の同時使用は、ハンガリー特許第3325号明細書(Chem.Abstr.77、7341k)から公知である。最近酵素により手助けされた原皮の浸漬法が推奨されているが、その際、浸漬処理液はpH−範囲9〜11で作用最適値を有するリパーゼ、pH−値範囲9〜11で効力を有するプロテアーゼ及び界面活性試薬を含有し、その際、浸漬処理液のpH−値は9〜11の範囲である(ドイツ特許出願P3922748.0参照)。従ってリパーゼも作用を有する。その際、アスペルギルス−種から得られ、特に特定の遺伝子変化させた菌株、例えば再結合により得られたアスペルギルス−オリザエ株からの著しい活性最適値がpH9〜11であるアルカリ性リパーゼが特に有利であると判明した(USP5082585に記載されている)。これは名称“LIPOLASE100TR”で市販されているリパーゼ(NOVO INDUSTRIA/S、DK2880Bagsvaerd)に相応する。その他挙げられるリパーゼは、例えばクモノスカビ、例えばRh.ジャバニクス(javanicus)、ケカビ、例えばM.ミヘイ(mihei)又はM.ジャパニクス(javanicus)又はプソイドモナス、例えばPs.フルオレセンス(fluorescens)又はアスペルギルス ニゲルに起因する。
【0019】
慣用の方法では、リパーゼの活性測定は基質としてトリアセチン及びトリブチリンを用いて実施され(M.Semerivaその他著、Biochemistry第10巻、2143頁以降、1971年参照)、その他オリーブ油を用いて(Bruno Stellmach、BestimmungsmethodenEnzyme fuer Pharmazie、Lebensmittelchemie、Technik、Biochemie、Biologie、Medizin、Steinkopf−Verlag、1988年、169頁以降:Lipase nach FIP、Einheit=FIP/g参照)行われる。酸中の脂肪脱離活性を測定すべき場合には、基質としてトリブチレンを用いて分析する。(単位=LCA/g)。標準条件は40℃、pH=5.5(M.Semeriva、前記文献箇所参照)。本発明の目的のためには、リパーゼ活性は主としてFIP(FIP/g)により記載し、その際、pH9.0及び37℃で測定する。西ドイツ特許(DE−A)第4109826号明細書では、プロテイナーゼ及びリパーゼはアルカリ性範囲で同時使用する原則を部分操作で石灰漬け及び酵解に適用する。この場合にも特に有効である二つの活性の組み合わせである。2種類の酵素は個々に添加し、二つの活性を合わせた完成した混合製剤は明白である理由から詳説しないが、しかしこの種の組み合わせは酵素の“共食い”を覚悟せねばならない。
【0020】
糖蜜の使用
皮革加工における糖蜜の使用は公知である。糖蜜は僅かな濃度で水処理場の全ての工程で添加することができる。この添加は脱石灰で特に貴重である。それは処理液中の消石灰の溶解を著しく改善し、従って石灰残分の完全な除去に有利に働くからである。“ビブリオテーク デス レーダーズ(Bibliothekdes Leders)”第2巻、115頁(H.Herfeld出版、1989年)で、1%の糖溶液中に純粋な水中とほぼ同じ量の石灰が溶解することが確認されている。
【0021】
皮革加工におけるハイドロトロピカの使用
ハイドロトロピカとは、難溶性の物質がそれ自体溶剤ではない第2の成分の存在で可溶性になる現象である。この種の溶解改良作用を生じる物質はハイドロトロピカと呼称される。これは種々の作用機序を有する溶解助剤として作用する。従ってその科学的組成は全く様々である。F.シュターテル(Stather)著“ゲルベライヒェミー ウント ゲルベライテヒノロギー(Gerbereichemie und Gerbereitechnologie)”(Akademieverlag Berlin、1951年)、70及び71頁には、非電解質及び電解質で区別している。最初のものには、有機アミノ化合物、例えば尿素、チオ尿素、ホルムアミド、アセトアミドなどが属す。後者には芳香族系のスルホン酸及びカルボン酸が属すが、脂肪族系のものも、特にその塩も属す。無機中性塩、例えばロダン化物又は塩化カリウムも−そのホフマイスター系(Hoffmeister’schen Reihe)の位置の応じて−ハイドロトロピック作用を有する。ハイドロトロピカは蛋白質、例えば皮膚のコラーゲン骨格でペプチド鎖間の水素橋を分離し、それによって膨潤を引き起こし、この膨潤によりコラーゲンの場合には特に酵素攻撃が容易になるが、また洗浄性も改善される[“Bibliothek des Leders”第2巻、H.Herfeld出版、(1989年)、63頁及びY.Nozaki、Ch.Tanford in J.Biol.Chem.,第238巻(1963年)、4075〜4081頁参照]。
【0022】
石灰漬けでは、ハイドロトロピカは明白な脱毛及び基礎弛緩を引き起こす。
【0023】
種々の可溶性及び不溶性蛋白質の酵素加水分解におけるハイドロトロピカの使用は多数の特許に記載されている。ハイドロトロピカ、特に尿素は、加水分解性蛋白質を変性させることによって、蛋白質分解攻撃を容易にする。西ドイツ特許(DE−P)第2643012号明細書には、尿素の存在における機械サイジング皮革の蛋白質分解性加水分解が記載されており、西ドイツ特許2705669号明細書には、細毛及び毛の加水分解、西ドイツ特許第2756739号明細書には屑肉の加水分解、西ドイツ特許第2842918号明細書には血液の蛋白質の加水分解が記載されている。全ての保護法で、酵素蛋白質自体が変性され、その活性を失うことを防ぐために、加水分解バッチ中の尿素含量を<1モル/l−有利には<0.1モル/lに制限している。従ってプロテイナーゼ活性の作用侵害の閾値は尿素1モル/lより上に定められる。従ってかなりの制限が存在し、尿素を比較的高い濃度で、酵素含有液体製剤に添加する。尿素又はその他のハイドロトロピカを含有する酵素液体製剤は公知ではない。
【0024】
同様のことがドイツ特許第2813075号明細書にも当てはまる。ここでは処理液にアルカリ性プロテイナーゼの他に尿素又は塩酸グアニジンを添加する酵素石灰漬け法が記載されている。処理液中のハイドロトロピカの含量は1%より下である。酵素製剤と別々に添加する。
【0025】
水処理場の皮革加工におけるその他の添加物
これには先ず、界面活性物質、例えば常用の乳化剤が挙げられる。これは皮に付着した脂肪を分散させ、このようにして皮表面を洗浄する。これに関する公知技術は、例えば欧州特許出願(EPA)第0505920号明細書に記載されている。非イオン性乳化剤、例えばポリグリコール誘導体及びグリセリン誘導体が挙げられ、更に陰イオン性乳化剤、例えばアルキル−又はアリール−スルフェート及び−スルホネート、並びにアミン塩及び第四アンモニウム塩が挙げられる。これらは全てHLB−値8〜18、有利には9〜15、特に12〜15である。種々の種類の乳化剤の組み合わせ物も上記EPAに記載されている。
【0026】
水処理場の皮革加工における処理液へのその他の添加物は、石灰分散性又は石灰溶解性薬剤であり、皮から不所望な沈積物を表面洗浄除去するのに役立ち、石灰石鹸の精製を阻止する、金属イオン封鎖剤も挙げられる。金属イオン封鎖剤は例えばポリホスフェート、ポリホスホネート、ポリカルボキシレート、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ニトリロトリ酢酸、ジエチレントリアミノペンタ酢酸及び後者の塩である。
【0027】
脱毛剤は石灰漬けの加工工程で同様に処理液に添加される。アルカリ化添加物の他に特にチオ化合物、例えばナトリウム−メルカプトエタノール又はヒドロキシ官能性アミン、例えばモノ−、ジ−又はトリ−エタノールアミンである。特に後者はその他に卓越した膨潤蒸煮作用を有し、即ち皮は石灰漬けでアルカリ作用で僅かな膨潤しか示さず、それによって銀ずれが僅かである。
【0028】
皮革加工で処理液への記載した全ての添加物は公知技術であり;これらは個々に処理液に添加される。酵素との組み合わせ製剤は一般的ではない。
【0029】
酵素製剤の安定化
液体酵素製剤用の安定化剤としての糖蜜の使用は公知ではない。食品工業用の酵素製剤で糖蜜の使用に対してただ美的外観だけでも、即ち処理された製品における暗い色調の増大及びそれに伴う変色だけでも不利である。標準化可能でない組成及び特に糖蜜中に含有される、活性減少を引き起こす恐れのある不特定の熱分解生成物のためには専門家は使用をためらう。これに対して糖蜜はしばしばC−源としての微生物を発酵させるために使用される。M.ベーカーズ(Bekers)及びA.ユーピット(Upit)はミクロビオロギヤ(Mikrobiologiya)第41(5)巻、830〜833頁(1970年)で、糖蜜で発酵した酵母の乾燥生成物としての生存能力に対する安定化作用を報告している。米国特許第4201564号明細書では、糖蜜をC−源として、従って土壌細菌の良好で連続的な生育用の安定化剤として肥料に添加する。公知技術は、液体酵素製剤中に糖蜜を使用することは全く示唆してない。
【0030】
これに対して、種々の炭化水素及び一定の組成のその他のポリオールを液体酵素製剤中に安定化剤として使用することは公知技術である。即ち欧州特許(EP−A)第74237号明細書にはラクターゼ溶液を安定化するためにソルビットを使用すること、米国特許第4011169号明細書では極めて一般的に酵素製剤を調製するために多糖類を使用することが記載されており、米国特許第3133001号明細書ではこのために特に蔗糖、乳糖及び麦芽糖を挙げている。日本国特許第262339号明細書には液体製剤、特にプロテイナーゼの安定化用にアルコールも提案されている。酵素皮革処理剤中に賦形剤液体として溶解した炭化水素を使用することはこれまで記載されていなかった。炭化水素をその他の添加物、例えばハイドロトロピカ、金属イオン封鎖剤、界面活性剤又は脱毛剤と組み合わせる酵素製剤は公知ではない。スイス特許第677798号明細書には、専ら工業用途用の、例えば皮革工業の酵素液体処方物が特許請求されている。ここに記載の製剤は主として無水の有機液体及び無機の粉末状分散剤を含有する。
【0031】
【発明が解決しようとする課題】
酵素製剤は、その都度使用することができる場合には、有利には水性の液体形で提供される。液体形は酵素反応の標準環境、水性媒体に相応する。従って水性の液体酵素製剤は迅速に直接適用される。これは−親油化された酵素製剤と比較して−長びく恐れのある溶解工程がない。また、例えば親油化された酵素製剤(特にこれが塵を含有する)の使用で起こる可能性のあるアレルギー接触反応も容易に排除することができる。液体酵素製剤は連続的酵素添加でも有利である。従って本発明の課題は、液体酵素製剤を提供することである。
【0032】
他方液体酵素製剤の使用で一連の問題が考えれる。第一にこの種の製剤の安定性、しかも二通りの観点からの安定性である:
1.微生物学的安定性:
例えば1年以上の放置時間を有するかもしれない酵素製剤は、この期間中微生物に感染してはならない。この危険性は製剤の組成により生じる。それは大抵は微生物の培養液の必要成分を含有するからである。微生物の生育は種々の保存剤により抑制することができる。非常に僅かな添加量、一般に<1%で十分である。公知技術による保存剤の組成は、K.H.バールホイザー(Wallhausser)著ステリゼーション、デスインフェクション、コンザビールング(Sterilisation、Desinfektion、Konservierung、Georg Thieme Verlag 1978年、380頁)に記載されている。保存剤は各々の微生物生育を防止するために絶対に確実な薬剤ではなく、その上酵素を損なう場合が多い。従って微生物安定化するための代用物、製剤中でできる限り低い水活性の代用物が多くの場合に有利である。含水量が少なければ少ないほど、−高い浸透圧により−微生物生育の危険性は僅かである。従って酵素製剤は多くの場合に、高い濃度の全ての種類の水溶性化合物:塩、炭水化物、例えば糖及びその他のポリヒドロキシ化合物、例えばグリセリンを含有するように調製する。
【0033】
2.活性不変
酵素は水溶液中で残りの存在する媒体の成分、例えば酸、塩基、塩、界面活性及び錯体活性成分、その他の巨大分子及び特にその他の酵素による影響を受ける。これらの成分は安定化作用並びに脱安定化作用を有する。脱安定化の機序は複雑であり、熱、化学、蛋白質分解性性質でありうる。文献に記載のどの安定化剤が各々の使用例で作用し、どれが作用しないのか、一般的に明言することはできない。ある薬剤が一方では特定の酵素を安定化するが、他方ではその他の酵素を脱安定化する(Torchlin、Martinek、Enzyme Microb.Technol.、1979年、第1巻、74頁参照)。このことから酵素−液体製剤用に好適な安定化剤を見いだす課題が困難になる。
【0034】
本発明の課題は、液体を基礎とする皮革製造用の酵素製剤を調製することであり、その際微生物安定性の観点並びに活性不変を十分に考慮すべきである。
【0035】
賦形剤液体を調製する場合に本発明は、できる限り費用面で有利であり、十分に供給可能であり、並びに生物により良好に分解可能であり、従って環境に優しい安定化剤を使用することを目標とした。これは良水溶性であり、従って高い濃度で使用することができる。
【0036】
本発明のもう一つの課題は、皮革処理の異なる機能を一つの液体混合製剤に合体させることである。公知技術によれば、広範囲の受容体用の成分を処理液に主として個々に添加する。この場合に操作費用は多く、添加ミスの危険性は高い。
【0037】
この製法を簡単にし、添加される薬剤の数を減少させる全ての手段は、公知技術に対して進歩である。
【0038】
その際、個々の成分の作用を損なうことなしに皮革処理の多くの機能を一つの薬剤に集約することは、著しい困難を意味する。その際、特別な目標を酵素活性に向けるべきである。それは酵素は賦形剤液体中の内容物質に特に敏感に反応するからである。その際酵素以外のその他の作用物質を配合するための重要点は、ハイドロトロピカ及びその他の脱毛剤である。
【0039】
【課題を解決するための手段】
この課題は、自体公知の酵素作用物質を溶解して含有する、水処理場で原皮を加工するための水性系の液剤により解決されるが、これは少なくとも10重量%から最高(100−x)重量%の糖蜜を含有するが、その際、xが酵素作用物質の重量%含分であることを特徴とする。その際、Xは0.001〜90重量%の値であってよい。有利には酵素作用物質の量は0.1〜10重量%である。
【0040】
糖蜜はますます重要となる原料であり、生物学的に分解可能であり、廃物として非常に費用面で有利である。これはもはや結晶化することができない糖製造のシロップ状の濃褐色の残分である(Kirk−Othmer、Encyclopedia of Chemical Technology第3版、第22巻、J.Wiley1985年、514〜517頁参照)。粗糖からの糖蜜は蔗糖30〜40%、転化糖15〜25%、アスコニット酸5%までを含有し、ベタインは殆ど含まない。含水量は30〜40%である。
【0041】
甜菜糖からの糖蜜は、レンプ ヒェミー レキシコン(Roempp Chemie Lexikon)(第9版、G.Thieme−Verlag、1991年)によれば、蔗糖50%、非糖物質(デキストリン、ベタイン、乳酸)20%、窒素化合物2%、転化糖及び希糖、例えばラフィノーゼ及びケトーゼ1%並びに水23%を含有する。多くの場合に内容物質の濃度は比較的僅かである。従って含水量は著しく高く、35%までである。
【0042】
糖蜜は確かに非常に粘性が高いが、しかしそれ自体酵素の賦形剤液体として使用することができる。この種の製剤を製造するために、液状又は固体であってよい酵素を直接糖蜜中に溶解させる。酵素が例外的に純粋な状態で供給可能である限り、そのものとして糖蜜中に混入することができる。この場合には0.001〜0.1重量%の酵素量で十分であり、残りは糖蜜である。大抵は酵素を種々の賦形剤とブレンドするか又は賦形剤液体中に溶解させる。これは本発明による皮革処理製剤の調製で甘受しなければならない;従ってこれは液剤の成分である。従って酵素作用物質の添加量は、0.1〜10重量%であるが、本発明による製剤の90重量%までであってもよい。
【0043】
多くの場合に、希液体製剤を製造するために糖蜜に水を添加する。その他の作用物質を添加する場合にも、事情によっては前もって水中に溶解させ、糖蜜の最終含量が必然的により低くなるようにすべきである。糖蜜が大抵の場合に本発明による製剤の主要賦形剤液体であるが、比較的僅かな濃度で、極端な場合には10%だけ、含有されていてもよい。しかし有利には50〜80%製剤中に含有されている。残りの25〜50%は多くの場合にその他の成分、例えば酵素、種々の作用物質及び水から成る。
【0044】
意外にも、糖蜜が製剤中に含有される酵素活性を極めて良好に安定化させることを見出した。これは液体製剤の調製直後だけでなく、比較的長時間、例えば6ヶ月貯蔵する場合の活性の保持にもいえる。当業者にとって、糖蜜を一般にこの目的に使用するという前記制限があった。最もよい場合には、糖蜜中に含有される糖含量に相応する安定化作用を期待することができるであろう。糖、例えば蔗糖に関して公知技術から主として水反応性の減少に基づく安定化作用が公知である。しかし糖蜜が、その他の非糖内容物質に基つくであろう糖含量を越える安定化作用を有することが立証された。従って酵素製剤における賦形剤液体としての糖蜜の使用は、本発明の主な特徴である。
【0045】
本発明による液剤に公知技術により一般的な酵素を一緒にすることができる。多数の供給可能なプロテイナーゼ、リパーゼ、アミラーゼ及びその他のヒドロラーゼ−ここでは包含されている−から量及び種類に応じて自由に選択することができる。特にプロテイナーゼには、本来酵素混合物である膵臓酵素、枯草菌及びB.リケニホルミスからのプロテイナーゼ並びにアスペルギルス−プロテイナーゼからのプロテイナーゼが挙げられ、リパーゼには、高アルカリ性遺伝子工学により得られたアルペルギルス−オリザエ−リパーゼが挙げられる。酵素の種類の選択は意図される使用分野に左右される。液剤を有利には酵解で使用する場合には、中性から弱アルカリ性pH−範囲のpH−最適値を有するプロテイナーゼ又はリパーゼを選択する。普遍的に使用するため、即ち、付加的になお石灰漬け及び浸漬でも使用するためには、9及びそれ以上のpH−最適値を有する酵素を使用することが推奨される。pH−最適値=>9を有するプロテイナーゼ又はリパーゼが本発明による有利な態様である。本発明による液剤中に含有される酵素は、例えばドイツ特許出願(DE−A)第3922748号明細書及び第4109826号明細書中に記載されている様に、−実際の公知技術の使用下で−、種々の異なる酵素活性、有利にはプロテイナーゼとリパーゼの混合物を含有することもでき、その際この両者はpH−最適値=>9を有することができる。意外にも、酵素混合物中で糖蜜の存在でプロテイナーゼがその他の酵素を僅かしか攻撃せず、プロテイナーゼ溶液中で懸念される自己消化作用を十分に抑制することが見出された。
【0046】
蛋白質分解酵素は本発明による製剤中に大抵は100〜20000LVE/gの活性で含有され、リパーゼはFIPによるリパーゼ単位10〜1000/gの活性で含有される。
【0047】
本発明によるその他の有利な特徴は、液体製剤中のハイドロトロピカの含量である。ハイドロトロピカ、例えば尿素はより高い濃度で蛋白質に対して変性作用を有する。これに対して特許文献には、酵素の活性を損なう影響に関して=>1モル/尿素l(=60g/l=6重量%)の閾値が存在する。本発明では、糖蜜含有の液体製剤中のハイドロトロピカの含量はこれより著しく高くてもよく、即ち3〜40重量%、特に10〜20%であってもよい。意外にも、これより高い添加量のハイドロトロピカでも活性損失は全く観察されなかった。相応して調製された液体製剤は貯蔵後でも活性安定である。ハイドロトロピカの選択に関しては−酵素の種類の場合と同じく−公知技術を完全に使用することができる。しかし尿素、塩酸グアニジン、硫酸クモール及び塩化カルシウムが特に有利である。
【0048】
最後に本発明による液体製剤は、なおその他の分散性、膨潤蒸煮、脱毛及び石灰溶解作用を有する作用物質を含有することもできる。この場合にも意外にも酵素含量の活性損失は全く認められなかった。その際、添加量は0.1〜20重量%である。この添加物の選択に関しては、前記したような全ての公知技術を使用することができる。
【0049】
その際多数の可能な数の作用物質の代表として、例えば石灰溶解作用剤の例としては、ポリホスフェート、脱毛剤としてナトリウム−メルカプトエタノール及びチオグリコール酸、分散剤としてアルカンスルホネート及びアルキルポリグリコールエーテル並びに膨潤蒸煮剤としてヒドロキシ官能性アミンが挙げられる。
【0050】
これらの作用物質は、単独で糖蜜含有の酵素製剤に添加又は既に1種類又は数種類のハイドロトロピカと混合して添加することができるが、しかし各々任意の作用物質の混合物でも添加することができる。
【0051】
種々の添加物により水溶液中で、酵素のための状況下で活性を損なわないpH−値が調整される。これは一般に12より上で4より下のpH−値に当てはまる。各々に使用される酵素の酸−及びアルカリ安定性は公知であるので、pH−値をそれに応じて調整する。即ち例えばバチルス−プロテイナーゼに関しては、液体製剤中で弱アルカリ性pH−値(pH=7〜9)が選ばれ、5より下のpH−値は回避される。多くの場合に、酵素活性に関してpH−値7〜9が有利である。酸、アルカリ溶液又は緩衝剤添加によるpH−値の調整は、これらが極端なpH−負荷に曝されないように、有利には既に酵素添加の前に行う。
【0052】
本発明による液体製剤中の含水量は、一般に20〜80重量%であるが、有利には25〜50重量%だけである。糖蜜の安定化作用は低い含水量又は高い固体含量で特に有効である。高い含水量は糖蜜の内容物質だけでなく、含量で状況によりむしろ糖蜜の内容物質より高いその他の作用物質にも起因する。しかし多くの場合に後者が重要である。意外にも液体製剤の内容物質は全て溶解している。しかし、粘性が高く、それによって分散液の沈殿が十分に阻止することができる場合には、水に不溶性の添加物を糖蜜含有の溶液中に分散させることも可能である。液体製剤中の固体含分を高めるたけに、付加的に塩、例えば食塩、硫酸アンモニウム又は硫酸ナトリウム並びにその他の水に易溶性物質、例えば炭化水素、アミノ酸又は蛋白質を添加することもできる。製剤中のその含分は、多くの場合に20重量%を越えない。
【0053】
高い固体含量又は僅かな水活性は活性安定性に関してだけでなく、微生物安定性に関する重要な基準でもある。これは大抵は50重量%より上の固体含量で得られる。それにも拘わらず、液体製剤に直ちに付加的に保存剤を常用量、主として<1%で添加することができる。これはいずれにせよ製剤中の含水量が高い場合に、例えば80%より上の含水量の場合に推奨される。
【0054】
本発明による液体製剤の使用は、一般に処理液に添加することによる皮革加工の各操作の前に行われる。添加量は一般に皮重量に対して0.1〜5重量%、であり、0.5〜2%が有利である。
【0055】
【実施例】
本発明による酵素製剤1〜15は、
1.糖蜜の使用がほぼ同じ固体含量で蔗糖より比較的高い酵素安定性を生じること及び
2.種々の添加物、例えば尿素(ハイドロトロピカ)、メルカプトエタノール−ナトリウム塩(脱毛剤)、ジエタノールアミン(膨潤抑制剤及び石灰分散剤として)は全く又はただ第二次的な活性減少作用しか有さないことを実証する(第1表)。
【0056】
製剤は下記方法により製造した:
必要な水の一部、安定化剤(糖蜜及び比較用に蔗糖)並びに相応する添加物(ハイドロトロピカ−、分散−、乳化助剤、脱毛剤、膨潤蒸煮作用を有する物質等)を均一に攪拌する。溶液のpH値を2%NaOH又は10%蟻酸を用いて約7の値に調整する。微生物の抑制できない生育を阻止するためにパラ−クロル−メタ−クレゾール及びイソチアゾリン誘導体(Riedel de Haen製MergalKM80)を基礎とする保存剤0.1%を添加する。引き続き酵素(枯草菌からのアルカリ性プロテアーゼ、パンクレアチン、アスペルギルス オリザエからのリパーゼ、アスペルギルス ソーヤエからの菌プロテアーゼ)を添加する。有利には酵素を少量の水中に前もって溶解させる。酵素量は、プロテアーゼで1000LVE/gの標準出発活性、リパーゼでFIT単位100/g(pH=9)の活性を生じるように決める。酵素の添加量は一般に1重量%より下である。最後に水で補充して100重量部(=重量%)にする。
【0057】
注意:使用する糖蜜には蔗糖約40%の糖含分及び含水量33%を有する甜菜糖糖蜜が該当する。同様の結果が糖含量50%及び含水量25%を有する糖蜜を用いて得られる。
【0058】
安定性試験:
新たに調製した酵素製剤で、直ちにプロテイナーゼ−出発酵素活性を測定する。試料を引き続き7日間45℃で貯蔵し、次いで酵素活性を新たに測定する。その際測定されたプロテイナーゼの活性減少は、室温で9ヶ月間酵素製剤を貯蔵したものに相応する。リパーゼは大抵なお安定である。
【0059】
結果を第1表にまとめる。結果から、糖蜜が同じ固体含量で純粋な蔗糖より酵素活性をより良好に安定化することが示される。その際、前記組成の糖蜜を60部の代わりに75部使用する場合に、プロテイナーゼ−活性に関して更に良好な安定性特性が得られることが注目される。
【0060】
【表1】
Claims (14)
- 自体公知の酵素作用物質を含有する、水処理場における原皮加工用の水性系液剤において、少なくとも10重量%から最高(100−x)重量%の糖蜜を含有し、その際、xが酵素作用物質の重量%含分であり、0.001〜90の値であることを特徴とする、原皮加工用の水性系液剤。
- 糖蜜が液剤中に50〜80重量%含有されていることを特徴とする請求項1に記載の液剤。
- 糖蜜が甜菜加工からのものであることを特徴とする、請求項1又は2のいずれか1項に記載の液剤。
- 溶解助剤3〜40重量%が含有されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項又は数項に記載の液剤。
- 溶解助剤の群から選択した作用物質1種類又は数種類、即ち:尿素、塩酸グアニジン、スルホン酸クモ−ル、塩化カルシウムを含有することを特徴とする請求項4に記載の液剤。
- 膨潤蒸煮、脱毛又は石灰溶解作用を有するその他の作用物質又は2種類又は数種類のこれら作用物質の混合物を含有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項又は数項に記載の液剤。
- 含水量が20〜80重量%であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項又は数項に記載の液剤。
- 酵素作用物質が蛋白質分解活性を有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項又は数項に記載の液剤。
- 酵素作用物質が脂肪分解活性を有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項又は数項に記載の液剤。
- 液剤が蛋白質分解活性を有する酵素作用物質並びに脂肪分解活性を有する酵素作用物質を有する、請求項1から7までのいずれか1項又は数項に記載の液剤。
- 蛋白質分解活性が作用最適値が9を上回るpH−値である細菌プロテイナーゼに起因することを特徴とする、請求項8又は10のいずれか1項に記載の液剤。
- 脂肪分解活性が作用最適値が9を上回るpH−値であるリパーゼに起因するものであることを特徴とする、請求項9又は10のいずれか1項に記載の液剤。
- 蛋白質分解活性100〜20000LVE/gを有することを特徴とする、請求項1から8又は10から11のいずれか1項に記載の液剤。
- 皮重量に対して0.1〜5重量%の濃度で使用することを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項に記載の水処理場における原皮加工用の液剤。
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