JP3811186B2 - 線虫から抽出されるセリンプロテアーゼ阻害剤および抗凝固性タンパク質 - Google Patents
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Description
この出願は、1995年10月18日に出願された米国特許出願第08/326,110号の一部継続出願である下記の米国特許出願(出願日はいずれも1995年6月5日である)の一部継続出願である:第08/461,965号、第08/465,380号、第08/486,397号および第08/486,399号。これらの特許出願の開示内容も本明細書の一部を成すものである。
発明の分野
この発明は特異的タンパク質およびセリンプロテアーゼ阻害剤であるこれらのタンパク質の組換え体(ヒト血漿の強力な抗凝固剤を含む)に関する。これらのタンパク質には線虫から抽出される特定のタンパク質が含まれる。別の観点によれば、本発明は、生体外および生体内における血液凝固酵素の強力な特異的阻害剤として有用なこれらのタンパク質を含有する組成物並びに血液凝固を防止するための生体外診断剤または生体内治療剤としての該組成物の使用法に関する。さらに別の観点によれば、本発明はmRNAおよびDNAを含みタンパク質をコードする核酸配列並びにベクター内において宿主細胞をトランスフェクトするか、または形質転換させるための該配列の使用および他の種や生物において特定の関連遺伝子を単離するプローブとしての該配列の使用に関する。
発明の背景と序論
正常な止血はクロットの形成過程(血液凝固)とクロットの溶解過程(線維素溶解)の間の複雑なバランスの結果もたらされる。血球、特異的血漿タンパク質および血管表面の間の複雑な相互作用によって、けががおこらない限り血液の流動性は保持される。血液壁を裏打ちする内皮壁が損傷を受けると、その下部組織はこれらの血液成分にさらされる。これが引き金となって、血液凝固を優先させる止血バランスを変化させる一連の生化学反応が誘発され、該生化学反応によって出血を止める望ましい血栓形成または損傷器官への血液の低減もしくは停止をもたらす望ましくない血管内での閉塞性血栓形成がもたらされる。
血液凝固反応は、血漿中のセリンプロテアーゼの数種の特異的酵素前駆体が限定的なタンパク質分解によって活性化される一連の増幅反応の完結である。この一連の反応により、初期の止血栓もしくは血栓の安定化に必要なフィブリンと細胞成分から成る不溶性マトリックスの形成がもたらされる。タンパク質分解活性反応の開始と伝搬は、血管損傷部位の膜状表面に局在化された一連の増幅経路を経ておこなわれる[マン(Mann、K.G.)、ネスハイム(Nesheim、M.E.)、チャーチ(Church、W.R.)、ハレイ(Haley、P.)およびクリシュナスワミイ(Krishnaswamy、S.)、Blood、第76巻、第1頁〜第16頁(1990年);ロウソン(Lawson、J.H.)、カラファチス(Kalafatis、M.)、ストラム(Stram, S.)およびマン(Mann、K.G.)、J. Biol. Chem.、第269巻、第23357頁〜第23366頁(1994年)]。
血管損傷に対する血液凝固反応の開始後、セリンプロテアーゼ第VIIa因子および非酵素補因子である組織因子(TF)から成る触媒複合体が形成される[ラッパポルト(Rappaport、S.I.)およびラオ(Rao、L.V.M.)、Arteriosclerosis and Thrombosis、第12巻、第1112頁〜第1121頁(1992年)]。血管の局部的損傷後、この反応は循環する微量の第VIIa因子とそのチモーゲン第VII因子に内皮下TFがさらされることによってもっぱら調節されると考えられる。自己賦活によって、セリンプロテアーゼ第Xa因子の形成の原因となる第VIIa/TF複合体の数が増加する。第VIIa因子/TF複合体のほかに、生成する少量の第Xa因子が第IX因子の第IXα因子へのタンパク質分解性修飾によって凝固反応を開始させ、第IXα因子は第VIIa因子/TF複合体によって活性セリンプロテアーゼ第IXaβに変換されると考えられている[マン、クリシュナスワミイおよびロウソン、Sem. Hematology.第29巻、第213頁〜第226頁(1992年)]。第Xa因子を多量に生成させる原因と考えられるのは活性化第VIIIa因子と複合した第IXaβであり、該第Xa因子は次いで血液凝固カスケードの最後から2番目のステップ(セリンプロテアーゼトロンビンの生成ステップ)を触媒する。
第Xa因子はプロトロンビナーゼ複合体の形成後にトロンビンの形成を触媒する(該複合体は、大抵の場合は損傷部位に付着する活性化血小板の表面上に形成される基質プロトロンビン(第II因子)、非酵素補因子Vaおよび第Xa因子から成る)[フスター(Fuster、V.)、バジモン(Badimon、L.)、バジモン(Badimon、J.J.)およびケセブロ(Chesebro、J.H.)、New Engl. J. Med.、第326巻、第310頁〜第318頁(1992年)]。動脈管構造においては、プロトロンビナーゼによって触媒されたトロンビンの突発的な増幅的生成に起因してこのプロテアーゼが局部的に高濃度で生成し、これによってフィブリンの生成と付加的な血小板の漸増およびトランスグルタミナーゼチモーゲン第XIII因子の活性化によるクロットの共有結合的安定化がもたらされる。さらに、凝固反応はトロンビンによって仲介される非酵素補因子VとVIIIのタンパク質分解性フィードバック活性によって伝播され、これによってプロトロンビナーゼの生成とその後のトロンビン生成が促進される[ヘムカー(Hemker、H.C.)およびケッセルズ(Kessels、H.)、Haemostasis、第21巻、第189頁〜第196頁(1991年)]。
血液凝固過程を妨げる物質(抗凝固剤)は血栓性障害の治療と予防における重要な治療剤になることが明らかにされている[ケスラー(Kessler、C.M.)、Chest、第99巻、第97頁〜第112頁(1991年);ケイルンス(Cairns、J.A.)、ヒルシュ(Hirsh、J.)、ルイス(Lewis、H.D.)、レスネコフ(Resnekov、L.)およびセロー(Theroux、P.)、Chest、第102巻、第456頁〜第481頁(1992年)]。現在、臨床的な使用が承認されている抗凝固剤は血液凝固カスケードに対する作用効果が相対的に非特異的であるために多くの副作用をもたらしている[レビン(Levine、M.N.)、ヒルシュ(Hirsh、J.)、ランデフェルト(Landefeld、S.)およびラスコブ(Raskob、G.)、Chest、第102巻、第352頁〜第363頁(1992年)]。このため、抗凝固治療の合併症を低減させる正の効果をもたらすこのプロセスにおける特異的反応による選択的阻害によって凝固カスケードの活性をより効果的に調節できるより有効な抗凝固剤の開発が要請されるようになっている[ヴァイツ(Weitz、J.)およびヒルシュ、J. Lab. Clin. Med.、第122巻、第364頁〜第373頁(1993年)]。別の観点によれば、このような開発研究は、血液凝固カスケードの活性調節において内因性抗凝固剤として作用する正常なヒトタンパク質に注目している。さらに、種々の食血性生物についての研究がなされている。これは、この種の生物が宿主に依存して生存している間およびその後で血液食を有効に凝固させる能力を有するからであり、このことは、この種の生物が治療剤として有用な有効な抗凝固剤成分を保有していることを示唆する。
血漿タンパク質である組織因子経路阻害剤(TFPI)は3つの連続したクニッツドメイン(Kunitz domain)を有しており、該阻害剤は第Xa因子の酵素活性を直接的に阻害し、また、第Xa因子に依存して第VIIa因子−組織因子複合体の酵素活性を阻害することが報告されている[サルベンセン(Salvensen、G.)およびピッツォ(Pizzo、S.V.)著、「プロテイナーゼ阻害剤:α−マクログロブリン、セルピンおよびクニス」、「止血と血栓症」、第3版、第251頁〜第253頁、J.B.リッピンコット社(J.B. Lippincott Company)1994年発行、コルマン(R.W.Colman)ら編]。TFPIをコードするcDNA配列が報告されており、また、31,950ダルトンの分子量と276個のアミノ酸を有するクローン化タンパク質が報告されている[ブロツェ(Broze、G.J.)およびギラード(Girad、T.J.)、米国特許第5,106,833号明細書、第1欄(1992年)]。TFPIから誘導された種々のリコンビナントタンパク質が報告されている[ギラードおよびブロツェ、ヨーロッパ特許第439,442号明細書(1991年);ラスムッセン(Rasmussen、J.S.)およびノルトファント(Nordfand、O.J.)、WO91/02753号(1991年);ブロツェおよびギラード、米国特許第5,106,833号明細書、第1欄(1992年)]。
メキシコヒル(Haementeria officinalis)の唾液腺から抽出された119個のアミノ酸から成るタンパク質であるアンチスタシンが第Xa因子の酵素活性を阻害することが報告されている[ツスジンスキー(Tuszynski)ら、J. Biol. Chem.、第262巻、第9718頁(1987年);ヌッツ(Nutt)ら、J. Biol. Chem.、第263巻、第10162頁(1988年)]。アンチスタシンのアミノ末端のアミノ酸1〜58に対して高度の相同性を示す58個のアミノ酸と6,000ダルトンの分子量を有するリコンビナントタンパク質が第Xa因子の酵素活性を阻害することが報告されている[ツング(Tung、J.)ら、ヨーロッパ特許第454,372号明細書(1991年10月30日);ツングら、米国特許第5,189,019号明細書(1993年2月23日)]。
ヒメダニ(Ornithodoros moubata)から単離された60個のアミノ酸から成るタンパク質であるマダニ(Tick)抗凝固ペプチド(TAP)が第Xa因子の酵素活性は阻害するが、第VIIa因子の酵素活性は阻害しないことが報告されている[ワックスマン(Waxman、L.)ら、Science、第248巻、第593頁(1990年)]。リコンビナント法によって調製されたTAPも報告されている[ブラウスク(Vlausk、G.P.)ら、ヨーロッパ特許第419,099号明細書(1991年);ブラウスクら、米国特許第5,239,058号明細書(1993年)]。
ヒトにも感染するイヌの鉤虫(Ancylostoma caninum)が生体外で血液凝固を阻害する強力な抗凝固性物質を保有していることが報告されている[ロエブ(Loeb、L.)およびスミス(Smith、A.J.)、Proc. Pathol. Soc. Philadelphia、第7巻、第173頁〜第187頁(1904年)]。該鉤虫の抽出物がヒト血漿中のプロトロンビン時間と部分トロンボプラスチン時間を延長し、その抗凝固効果がトロンビンではなくて第Xa因子の阻害に起因することが報告されている[スペルマン(Spellman、Jr.J.J.)およびノッセル(Nossel、H.L.)、Am.J.Physiol.、第220頁、第922頁〜第927頁(1971年)]。比較的最近になって、該鉤虫の可溶性タンパク質抽出物が生体外のヒト血漿中のプロトロンビン時間と部分トロンボプラスチン時間を延長することが報告されており、また、この抗凝固効果はトロンビンではなくてヒト第Xa因子の阻害[キャッペロ(Cappello、M.)ら、J. Infect. Diseases、第167巻、1474頁〜第1477頁(1993年)]および第Xa因子と第VIIa因子の阻害[WO94/25000号;米国特許第5,427,937号]に起因するとされている。
ヒト鉤虫(Ancylostoma ceylanicum)も抗凝固性成分を保有することが報告されている。該鉤虫の抽出物が生体外のイヌとヒトの血漿中のプロトロンビン時間と部分トロンボプラスチン時間を延長することが報告されている[キャロル(Carroll、S.M.)ら、Thromb. Haemostas.(スツットガルト)、第51巻、第222頁〜第227頁(1984年)]。
非食血性寄生虫アスカリス・スウム(Ascaris suum)の可溶性抽出物が抗凝固性成分を含有することが報告されている。この種の抽出物は全血の凝固を遅延させ、また、カオリン活性化部分トロンボプラスチン時間テストにおける凝血時間を延長させるが、プロトロンビン時間テストにおける凝血時間は延長させないことが報告されている[クロウフォード(Crawford、G.P.M.)ら、J.Parasitol.、第68巻、第1044頁〜第1047頁(1982年)]。
アスカリス・スウムから単離されたキモトロプシン/エラスターゼ阻害剤−1とその主要なイソ型トリプシン阻害剤−1およびキモトリプシン/エラスターゼ阻害剤−4がセリンプロテアーゼ阻害剤であって、5つのジスルフィド架橋を共通のパターンとして有していることが報告されている[ベルナード(Bernard、V.D.)およびピーナスキー(Peanasky、R.J.)、Arch. Biochem. Biophys.、第303巻、第367頁〜第376頁(1993年);ファング(Huang、K.)ら、Structure、第2巻、第679頁〜第689頁(1994年);グラスベルガー(Grasberger、B.L.)ら、Structure、第2巻、第669頁〜第678頁(1994年)]。しかしながら、報告されていいるセリンプロテアーゼ阻害剤が抗凝固活性を有するという教示はなされていない。
アメリカ鉤虫の分泌物がヒト血漿の凝血時間を延長させ、蛍光性(fluorogenic)成分によりヒトFXaのアミド分解活性を阻害し、マルチプルアゴニスト(multiple agonist)で誘発される血小板の濃密顆粒(dense granule)放出を阻害し、また、フィブリノーゲンを分解させることが報告されている[プリチャード(Pritchard、D.J.)およびファーミッジ(Furmidge、B.)、Thromb. Haemost.、第73巻、第546頁(1995年);WO95/12615号]。
発明の概要
本発明はセリンプロテアーゼ阻害活性および/または抗凝固活性を有しており、少なくとも一つのNAPドメインを含有する単離されたタンパク質に関する。本明細書においてかかるタンパク質を、線虫抽出抗凝固タンパク質(Nematode-extracted Anticoagulant Proteins)またはNAPと呼ぶことにする。「NAPドメイン」とは単離されたタンパク質またはNAPの配列であって、阻害活性を有すると考えられる部分をいい、これについては以下に説明する。かかるタンパク質の抗凝固活性は、プロトロンビン時間(PT)および活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)アッセイによって示されるヒト血漿凝血時間の増加によって評価され、また同様に当該物質の血液凝固第Xa因子または第VIIa因子/TF因子に対する阻害活性によっても評価される。NAPドメインはこれらのタンパク質に認められる抗凝固活性を担っていると考えられている。これらのタンパク質のいくつかはは少なくとも1のNAPドメインを有しており、このドメインは約120アミノ酸残基より短いアミノ酸配列であり、10個のシステイン残基を有している。
他に、本発明は抗凝固活性を示し、NAPドメインを有するタンパク質をコード化するcDNA分子を調製、単離する方法、およびこの方法により得られるリコンビナントcDNA分子に関する。この方法は以下の工程:
(a)cDNAライブラリーを線虫から構築する;
(b)該cDNAライブラリーを適当なクローニングベクターへ連結させる;(c)該cDNAライブラリーを含有する該クローニングベクターを適当な宿主細胞内へ導入する;
(d)該宿主細胞のcDNA分子を、AAR GCi TAY CCi GAR TGY GGi GAR AAY GAR TGG[配列番号94](式中RはAまたはGであり、YはTまたはC、そしてiはイノシンである)の核酸配列のハイブリダイゼーションプローブを含有する溶液と接触させる;
(e)該プローブとハイブリダイズするリコンビナントcDNA分子を検出する;そして
(f)該リコンビナントcDNA分子を単離する、
を有する。
他に、本発明は該cDNAによってコード化されるリコンビナントタンパク質であって、抗凝固活性を有し、NAPドメインを含有しているものの製法、および該製法によって製造されるリコンビナントタンパク質に関する。この方法には以下の工程:
(a)cDNAライブラリーを線虫から構築する;
(b)該cDNAライブラリーを適当なクローニングベクターへ連結させる;(c)該cDNAライブラリーを含有する該クローニングベクターを適当な宿主細胞内へ導入する;
(d)該宿主細胞のcDNA分子を、AAR GCi TAY CCi GAR TGY GGi GAR AAY GAR TGG[配列番号94]の核酸配列のハイブリダイゼーションプローブを含有する溶液と接触させる;
(e)該プローブとハイブリダイズするリコンビナントcDNA分子を検出する;
(f)該リコンビナントcDNA分子を単離する;
(g)該リコンビナントタンパク質をコード化する該cDNA分子の核酸配列を、適当な発現クローニングベクター内に連結する;
(h)第2の宿主細胞を、該リコンビナントタンパク質をコード化する該核酸配列を含有する発現クローニングベクターにて形質転換する;
(i)形質転換された第2の宿主細胞を培養する;そして
(j)第2の宿主細胞にて発現された該リコンビナントタンパク質を単離する、を含有する。本明細書において、リコンビナントタンパク質の、COS細胞のごとき適当な発現系における産生について述べる際、「トランスフェクション」という用語は通常「形質転換」の語に代えて(時には交換可能に)使用するものとする。
他に本発明は、抗凝固活性を有し、NAPドメインを有しているリコンビナントタンパク質をコード化するリコンビナントcDNAの調製方法であって、以下の工程:
(a)線虫からcDNAライブラリーを単離する;
(b)該cDNAライブラリーをクローニングベクターに連結させる;
(c)該cDNAライブラリーを含有する該クローニングベクターを宿主細胞内へ導入する;
(d)該宿主細胞のcDNA分子を第1および第2ハイブリダイゼーションプローブを含有する溶液と接触させる、ここで第1ハイブリダイゼーションプローブは以下の核酸配列:
第2ハイブリダイゼーションプローブは以下の核酸配列
を有する;
(e)該プローブの混合物とハイブリダイズするリコンビナントcDNA分子を検出する;そして
(f)該リコンビナントcDNA分子を単離する;
からなる方法を提供する。
さらにその他には本発明は抗凝固活性を有し、NAPドメインを含有するタンパク質をコード化するリコンビナントcDNAを製造する、以下の工程:
(a)線虫からcDNAライブラリーを単離する;
(b)該cDNAライブラリーを適当なファージミド発現クローニングベクターへ連結する;
(c)宿主細胞を該cDNAライブラリーを含有する該ベクターにて形質転換する;
(d)該宿主細胞を培養する;
(e)該宿主細胞をヘルパーファージにて感染させる;
(f)該cDNAライブラリーを含有するファージを、該宿主細胞から分離する;
(g)該cDNAライブラリーを含有する該ファージとビオチニル化ヒト第Xa因子の溶液を合わせる;
(h)ストレプトアビジンで被覆した固相を、該cDNAライブラリーを含有する該ファージ、および該ビオチニル化したヒト第Xa因子を含有する該溶液へ接触させる;
(i)該ストレプトアビジン−被覆固相へ結合したファージを単離する;そして
(j)リコンビナントcDNA分子を該ストレプトアビジン−被覆固相結合ファージから単離する;
を含有する方法に関する。
好ましい態様において本発明は、図1、図3、図7Aから7F、図9、図13Aから図13Hおよび図14に示した核酸配列から選択した核酸配列を有するリコンビナントcDNAに関する。
本発明はまた、第Xa因子の触媒活性を阻害するNAP、第VIIa因子/TF因子複合体の触媒活性を阻害するNAPおよびセリンプロテアーゼの触媒活性を阻害するNAPに関し、さらに該NAPをコード化する核酸およびその使用法に関する。
定義
「アミノ酸」は天然のL-アミノ酸を示す;D-アミノ酸は、かかるD−アミノ酸を含有するタンパク質が生理活性を保持している場合にのみこの語に含まれるものとする。天然のL−アミノ酸には、アラニン(Ala)、アルギニン(Arg)、アスパラギン(Asn)、アスパラギン酸(Asp)、システイン(Cys)、グルタミン(Gln)、グルタミン酸(Glu)、グリシン(Gly)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、リジン(Lys)、メチオニン(Mety)、フェニルアラニン(Phe)、プロリン(Pro)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)およびバリン(Val)を含む。
「アミノ酸残基」は以下の構造:(1)-NH-CH(R)-C(=O)-(式中、RはL-プロリン以外のL-アミノ酸のα炭素側鎖基を示す);または(2)L-プロリンの場合には
を有する基である。
「ペプチド」はアミノ酸がそのαアミノおよびカルボキシレート基がペプチド結合を生成して結合している配列をいう。本明細書においてペプチド配列は、左から右へアミノ基からカルボキシ方向に向かうよう記載する。
「タンパク質」は1またはそれ以上のペプチドを有する分子を示す。
「cDNA」はコンプリメンタリーDNAを示す。
「核酸」は塩基(すなわちプリンまたはピリミジン類)が糖リン酸骨格に結合しているポリマーを示す。核酸にはDNAおよびRNAを含む。
「核酸配列」は核酸を含有するヌクレオシドの配列を示す。本明細書では核酸配列は左から右へ、5’から3’に向かって記載する。
「リコンビナントDNA分子」は、天然には隣接しないDNAの断片を連結させて創造されるDNA分子をいう。
「mRNA」はメッセンジャーリボ核酸を示す。
「ホモロジー」はDNAまたはペプチド配列の類似の程度を示す。
「第Xa因子またはfXaもしくはFXa」は全て同じ意味であり、通常血液凝固カスケード内の酵素であって、プロトロンビナーゼ複合体の一部として機能して酵素トロンビンを生成させるセリンプロテアーゼを示すことが知られている。
「第Xa因子阻害活性」の表現は、第Xa因子のその基質に対する触媒活性を阻害する活性を示す。
「第Xa因子選択的阻害活性」の表現は、他のセリンプロテアーゼなどの他の関連酵素と比して第Xa因子に選択的な阻害活性を意味する。
「第Xa因子阻害剤」という表現は、第Xa因子阻害活性を有する化合物を示す。
「第VIIa因子/組織因子」または「第VIIa因子/TF」は同じ意味であり、通常触媒的に活性なセリンプロテアーゼ凝固因子VIIa(第VIIa因子)と非酵素タンパク質組織因子(TF)の複合体であり、該複合体が定義された組成物のリン脂質膜上で組み立てられているものをいう。
「第VIIa因子/TF阻害活性」の表現は第Xa因子または触媒不活性な第Xa因子誘導体の存在下における、第VIIa因子/TFの触媒活性を阻害する活性を意味する。
「第VIIa因子/TF選択的阻害活性」の表現は、第VIIa因子および第Xa因子を含む他のセリンプロテアーゼなどの他の関連酵素と比して第VIIa因子/TFに対して選択的である阻害活性を意味する。
「第VIIa因子/TF阻害剤」という表現は、第Xa因子または触媒不活性な第Xa因子誘導体の存在下における、第VIIa因子/TFの触媒活性を阻害する活性を有する化合物である。
「セリンプロテアーゼ」は通常、ヒスチジン、アスパラギン酸およびセリンの三つ組み(triad)アミノ酸を有し、触媒的にアミド結合を切断する、この三つ組み内のセリン残基は触媒による切断において共有結合的に含まれる。セリンプロテアーゼは触媒性三つ組み内のセリン残基へ共有結合的な修飾がジイソプロピルフルオロホスフェート(DFP)によりなされた場合には不活性化される。
「セリンプロテアーゼ阻害活性」はセリンプロテアーゼの触媒活性を阻害する活性を意味する。
「セリンプロテアーゼ選択的阻害活性」は一つのセリンプロテアーゼに対して、他のセリンプロテアーゼと比して選択的に示される阻害活性を意味する。
「セリンプロテアーゼ阻害剤」はセリンプロテアーゼ阻害活性を有する化合物である。
「プロトロンビナーゼ」は、セリンプロテアーゼ凝固因子Xaと非酵素タンパク質第Va因子の触媒活性複合体を意味すると一般に知られている語であり、複合体は規定された組成物のリン脂質膜上で組み立てられる。
「抗凝固活性」は血液の凝固を阻害する活性を意味し、これには血漿の凝血も含まれる。
「選択的」、「選択的に」およびこれらと置換し得る語は、特定の酵素に対するNAP活性の場合には、NAPが特定の酵素を、他の関連酵素の阻害より少なくとも10倍の強度で阻害することを意味する。この場合に、NAP活性はこの特定の酵素に対して選択的である。
「実質的に同一」の語はタンパク質、アミノ酸配列、cDNA、ヌクレオチド配列等に用いる場合には、少なくとも約90%のホモロジーを他のタンパク質、cDNAまたは配列に対して示すことを意味する。
「NAP」または「NAPタンパク質」は少なくとも1のNAPドメインを含有しており、セリンプロテアーゼ阻害活性をおよび/または抗凝固活性を有する単離されたタンパク質を意味する。
【図面の簡単な説明】
図1はAcaNAP5 cDNA[配列番号3]のヌクレオチド配列を示す。番号付はcDNAの最初のヌクレオチドから始めている。翻訳の開始は最初のATGコドン(第14位);第2枠内ATGは20位に存在する。
図2は成熟AcaNAP5[配列番号4]のアミノ酸配列を示す。
図3はAcaNAP6 cDNA[配列番号5]のヌクレオチド配列を示す。番号付はcDNAの最初のヌクレオチドから始めている。翻訳は最初のATGコドン(第14位)から開始する;第2枠内ATGは20位に存在する。
図4は成熟AcaNAP6のアミノ酸配列[配列番号6]を示す。AcaNAP5と異なるアミノ酸には下線を付している。かかるアミノ酸の置換に加えて、AcaNAP6はAcaNAP5と比較した場合に2つのアミノ酸の欠失(プロ−プロ)を含む。
図5はプロ−AcaNAP5のアミノ酸配列[配列番号7]を示す。
図6はプロ−AcaNAP6のアミノ酸配列[配列番号8]を示す。プロ−AcaNAP5と異なるアミノ酸に下線を付した。かかるアミノ酸の置換に加えて、プロ−AcaNAP6はプロ−AcaNAP5と比較した場合に2つのアミノ酸の欠失(プロ−プロ)を含む。
図7Aから図7Fはアンサイロストマ セイラニカム(Ancylostoma ceylanicum)、アンサイロストマ デュオデナール(Ancylostoma duodenale)およびヘリグモソモイデス ポリギルス(Heligmosomoides polygyrus)から単離された特定のNAPタンパク質cDNAのヌクレオチド配列および演繹されるアミノ酸配列を示す。図7Aは、アンサイロストマ セイラニカムから単離されたAcaNAP4のリコンビナントcDNA分子[配列番号9]を示す。図7Bは、アンサイロストマ セイラニカムから単離されたAcaNAP5のリコンビナントcDNA分子[配列番号10]を示す。図7Cは、アンサイロストマ セイラニカムから単離されたAcaNAP6のリコンビナントcDNA分子[配列番号11]を示す。図7Dは、アンサイロストマ デュオデナールから単離されたAduNAP4のリコンビナントcDNA分子[配列番号12]を示す。図7Eは、アンサイロストマ デュオデナールから単離されたAduNAP7のリコンビナントcDNA分子[配列番号13]を示す。図7Fは、ヘリグモソモイデス ポリギルスから単離されたHpoNAP5のリコンビナントcDNA分子[配列番号14]を示す。リコンビナントcDNA分子の5'−末端に対応するEcoRI部位はすべての配列において同一である(下線)。各配列の番号付けはこのEcoRI部位より開始している。AceNAP4およびAduNAP7はそれぞれ2つのNAPドメインを有するタンパク質をコードする;この図に示した他のすべてのクローンは1個のNAPドメインを有するタンパク質をコードする。AduNAP4cDNAクローンは全長ではない、というのは他のアイソフォームにはある、コード領域の5’−末端部分をこのリコンビナントcDNAは欠いている。
図8Aから図8CはそれぞれベクターpDONG61(図8A)[配列番号15]、pDONG62(図8B)[配列番号16]、およびpDONG63(図8C)[配列番号17]のヌクレオチド配列を示す。図示されているHindIII−BamHIフラグメントはpUC119のHindIII部位とBamHI部位の間に存在している。これらのベクターはcDNAをSfiI−NotIフラグメントとして、糸状ファージ遺伝子6の下流の3つの異なるリーディングフレーム内へとクローニングすることができる。すべての関連制限部位を示している。373〜375位にあるAAAのLysをコードするトリプレットが遺伝子6の最後のコドンである。遺伝子6にコードされるタンパク質にはGly−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly[配列番号18]リンカー配列が続いている。
図9はリコンビナントcDNAのヌクレオチド配列、AcaNAPc2 cDNA[配列番号19]を示す。cDNAの5'−末端に対応するEcoRI部位を示した(下線部分)。番号付けはこのEcoRI部位から開始している。演繹されたアミノ酸配列もまた示した;翻訳リーディングフレームは遺伝子6融合パートナーにより決定された。AcaNAPc2 cDNAはコーディング領域の5’末端部分を欠いている;AcaNAP5およびAcaNAP6とのホモロジーにより最初の7つのアミノ酸残基が分泌シグナルに属することが示唆される。
図10Aおよび10Bは特定のNAPタンパク質がクエン酸化正常ヒト血漿のプロトロンビン時間(PT)(図10A)および活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)(図10B)の測定値に及ぼす影響を調べたものである。黒丸(●)はPro−AcaNAP5を;白抜き三角(△)はAcaNAP5を(表2のAcaNAP5a);白抜き丸(○)は天然のAcaNAP5の値を示す。
図11は様々な線虫から単離されたNAP cDNAによりコードされる一連のアミノ酸配列を示す。AcaNAP5[配列番号20]、AcaNAP6[配列番号21]、およびAcaNAPc2[配列番号128]はアンサイロストマ カニナム(Ancylostoma caninum)から単離されたものである。AceNAP5[配列番号22]、AceNAP7[配列番号23]、およびAceNAP4(AceNAP4d1[配列番号24]およびAceNAP4d2[配列番号25])はアンサイロトマ セイラニカムから単離されたものである。AduNAP4[配列番号26]およAduNAP7(AduNAP7d1[配列番号27]およびAduNAP7d2(配列番号28])はアンサイロストマ デュオデナールから単離されたものである。HpoNAP5[配列番号29]はヘリグモソモイデス ポリギルスから単離されたものである。この図に示されたアミノ酸配列は、図1、3、7Aから7Fおよび9に開示されたものである。成熟AcaNAP5[配列番号4]およびAcaNAP6[配列番号6](図2及び図4参照)は、10個のシステイン残基(1から10まで番号を付し、太字で記載している)によってその性質の一部が決定されている。この図のすべてのアミノ酸配列には少なくとも1のNAPドメインを含有する。AceNAP4 cDNAは2つの隣接領域、AceNAP4d1[配列番号24]とAceNAP4d2[配列番号25]からなり、これらは第1(d1)および第2(d2)NAPドメインをコードする;同様に、AduNAP cDNAも2つの隣接領域AduNAP7d1[配列番号27]およびAduNAP7d2[配列番号28]からなり、それぞれ第1(d1)および第2(d2)のNAPドメインをコードする。すべてのNAP−ドメインの一連のアミノ酸配列をシステインによって整理する;システインの列を保持するために特定の部位へダッシュ(---)を導入しているが、この記号は当該部位にアミノ酸が無いことを示している。cDNAがコードするタンパク質のカルボキシ末端の残基の後に「end」という語を付した。
図12Aおよび12BはPパストリス(P.pastoris)pYAM7SP8発現/分泌ベクター(図12A)の地図およびこのベクター内に含まれる配列(図12B)を示す[配列番号30]。図12Aに示されるように、このプラスミドは以下の要素が、メタノール誘導性AOX1プロモーター(5'AOX非翻訳領域内の濃矢印)およびAOX1転写終結シグナル(3'T)の間に挿入されている:酸ホスファターゼ分泌シグナル(S)をコードする合成DNAフラグメント、Lys−Argプロセシング部位とともにKEX2プロテアーゼおよびマルチクローニング部位をコードする合成19−アミノ酸プロ配列(P)。GS115形質転換において選択マーカーとなるHIS4遺伝子は部位特異的変位誘発によってStu1認識配列(HIS4*)が除去されるよう、修飾されている。pBR322配列にはBla遺伝子およびE.coli内で増幅するための起点(Ori)を含有しており、これは一本線として示されている。図12BはpYAM7SP8内に導入される以下の連続的なDNA配列を示している:酸ホスファターゼ(PH01)分泌シグナル配列、プロ配列およびマルチクローニング部位(MCS)配列。PH01分泌シグナルのATG開始コドンに下線を付した。
図13Aから図13Hはアンサイロストマ カニナムから単離された特定のNAPタンパク質のcDNAのヌクレオチド配列および演繹アミノ酸配列を示す。図13AはリコンビナントcDNA分子AcaNAP23[配列番号31]を示す。図13BはリコンビナントcDNA分子AcaNAP24[配列番号32]を示す。図13CはリコンビナントcDNA分子AcaNAP25[配列番号33]を示す。図13DはリコンビナントcDNA分子AcaNAP31、AcaNAP42およびAcaNAP46を示し、これらのすべては同一である[配列番号34]。図13EはリコンビナントcDNA分子AcaNAP44[配列番号35]を示す。図13FはリコンビナントcDNA分子AcaNAP45[配列番号36]を示す。図13GはリコンビナントcDNA分子AcaNAP47[配列番号37]を示す。図13HはリコンビナントcDNAAcaNAP48[配列番号38]を示す。EcoRI部位はリコンビナントcDNA分子の5’−末端に対応するが、すべての配列において下線をひいて示している。各配列の番号付はこのEcoRI部位から始めた。AcaNAP45およびAcaNAP47はそれぞれ2つのNAPドメインを含有するタンパク質をコードする;この図における他のすべてのクローンは一個のNAPドメインのみをコードする。
図14はリコンビナントcDNA分子NamNAPのヌクレオチドおよび演繹アミノ酸配列を示す[配列番号39]。
図15はAcaNAP5および低分子量ヘパリン(LMWH;エノキサパリン(登録商標))の抗血栓活性活性を、FeCl3人工血栓モデルによって調べた結果を示す。活性のデータは頸動脈における閉塞性血栓生成の発生率(%)によって示す(白丸)。血栓生成は被験剤の皮下投与(s.c.)の150分後から認められた。深部傷出血をFeCl3を加える以外は同様に処理した別のグループの動物において調べた(四角)。首の深部手術傷における血液の消失は、化合物の皮下投与から210分の間の合計として定量した。
図16は以下の方法により単離された成熟NAP一連のアミノ酸配列を示す:即ちAcaNAP5[配列番号40]、AcaNAP6[配列番号41]、AcaNAP48[配列番号42]、AcaNAP23[配列番号43]、AcaNAP24[配列番号44]、AcaNAP25[配列番号45]、AcaNAP44[配列番号46]、AcaNAP31、42、46[配列番号47]、AceNAP4d1[配列番号48]、AceNAP4d2[配列番号49]、AceNAP45d1[配列番号50]、AceNAP47d1[配列番号51]、AduNAP7d1[配列番号52]、AcaNAP45d2[配列番号53]、AcaNAP47d2[配列番号54]、AduNAP4[配列番号55]、AduNAP7d2[配列番号56]、AceNAP5[配列番号57]、AceNAP7[配列番号58]、AcaNAPc2[配列番号59]、HpoNAP5[配列番号60]およびNamNAP[配列番号61]である。各NAPドメインには10個のシステイン残基を含み、これらの基準に配列を一列に並べており、そしてシステインの間のアミノ酸を規定している。A1からA10はシステイン残基の間のアミノ酸配列を示す。
図17は2つのNAPドメインを有する成熟AceNAP4[配列番号62]のアミノ酸配列を示す。
図18は2つのNAPドメインを有する成熟AcaNAP45[配列番号63]のアミノ酸配列を示す。
図19は2つのNAPドメインを有する成熟AcaNAP47[配列番号64]のアミノ酸配列を示す。
図20は2つのNAPドメインを有する成熟AduNAP7[配列番号65]のアミノ酸配列を示す。
発明の詳細な説明
本発明はタンパク質のファミリーに関する。正確には線虫抽出抗凝固タンパク質(Nematode-extracted Anticoagulant Proteins:NAP)に関する。これらのタンパク質は最初に単離された成分が線虫である犬鉤虫(canine hookworm)アンサイロストマ カニナムから抽出されたことからこう呼ばれるようになった。しかしながらNAPまたはNAPドメインの名前から本発明のタンパク質が、この源または他の天然の源に限定されるものと考えるべきではない。
各NAPタンパク質は少なくとも1のNAPドメインを有し、そしてセリンプロテアーゼ阻害および/または抗凝固活性を有していることにより特徴付けられる。かかる抗凝固活性は、第Xa因子または第VIIa因子/TF活性の阻害による本明細書にて述べるPTおよびaPTTアッセイの両方において凝血時間の増加によって、またはインビボによる活性により評価される。好ましくは、かかるアッセイにおいて用いられる血液または血漿は線虫に感染することが知られている種、例えば豚、ヒト、霊長類等のものを用いる。NAPドメインは、アミノ酸配列である。このNAPドメインが観察される阻害および/または抗凝固活性に関与していると考えられている。代表的なNAPドメインは図11および16に記載のアミノ酸配列を有しており、特にこれらの図においてシステイン1とシステイン10と名付けられているシステイン残基の間のアミノ酸配列、およびシステイン10の後に続く配列を有している。このタンパク質のファミリーの性質を大まかに規定する性質、さらにかかるタンパク質をコードするmRNA配列およびDNA配列を含む核酸分子を提供する。これらのタンパク質の調製方法およびかかるタンパク質をコードする核酸分子の調製方法もまた提供する。特定の実施例においては、例示のためのみ、タンパク質の他のNAPファミリーおよびそれをコードする核酸配列が、実施例および以下に概略した方法にて得られる。
本発明のタンパク質には単離されたNAPを含み、これららは抗凝固活性を有し少なくとも1のNAPドメインを含むタンパク質を含む。
「抗凝固活性」については、本発明の精製タンパク質は抗凝固剤として有用であり、抗凝固剤は血漿の凝固を含む、血液の凝固阻害活性により特徴付けられる。ある観点においては、好ましい本発明の単離されたタンパク質には、プロトロンビン時間(PT)および活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)の両方により示されるヒト血漿の凝固時間を増加させるものを含む。
PTアッセイにおいて、凝固は一定量の組織因子−ホスフォリピドミセル複合体(トロンボプラスチン)をヒト血漿に添加することにより開始される。抗凝固剤はこの複合体表面における特定の相互作用を妨害し、抗凝固剤を含有しない系で認められる凝血に対して、凝血に達するために必要とされる時間が増加する。PTの測定は特にNAP抗凝固活性の評価に適している、というのはこのアッセイにおいて凝血に必要な一連の特定の生化学的事象は、天然において鉤虫が栄養摂取を容易にするための機構と同一だからである。従って、このアッセイにおいてNAPが阻害剤として作用する能力は天然におけるその作用とパラレルであり得、これはインビボにおける抗凝固活性を示唆するものとなる。両方のアッセイおよび天然において、凝固反応はセリンプロテアーゼである第VIIa因子、組織因子(TF)のバイナリー複合体(第VIIa因子/TF)の形成により開始され、第Xa因子を生成する。続く第Xa因子のプロトロンビナーゼ複合体への組み込みがトロンビンの形成を導くキーとなる事象であり、そしてこれにより凝血が導かれる。
aPTTアッセイにおいて、凝血は特定量の負にチャージしたリン脂質ミセル(活性化剤)のヒト血漿への添加により開始する。抗凝固剤として作用する物質は、複合体の表面上の特定の相互作用を妨害し、そして一定量の凝血が生じるまでの時間を、該剤が無い場合と比して増加させる。実施例BはPTおよびaPTTアッセイを示す。これらのアッセイは本発明の単離されたNAPの抗凝固活性を評価するのに用いることができる。
本発明の好ましい単離NAPには、PTアッセイにおけるヒト血漿の凝血時間を、約1から約500ナノモルの濃度で2倍とし、aPTTアッセイにおけるヒト血漿凝血時間を、約1から約500ナノモルの濃度で2倍とするものである。特に好ましいのは、PTアッセイにおいてヒト血漿凝血時間を約5から約100ナノモルの濃度で2倍とし、aTPPアッセイにおいてヒト血漿凝血時間を約5から約200ナノモルの濃度にて2倍とするタンパク質である。特により好ましいものはPTアッセイにおけるヒト血漿凝血時間を、約10から約50ナノモルの濃度にて2倍とし、aPTTアッセイにおけるヒト血漿凝血時間を約10ナノモルから約100ナノモルの濃度にて2倍とするタンパク質である。
本発明のNAPの抗凝固または抗血栓活性は実施例Fに示したインビボモデルを用いて評価することができる。実施例のパートAに開示したラットFeCl3モデルは、血小板依存性動脈血栓モデルで、通常抗血栓性化合物の評価に用いられているモデルである。このモデルは被験化合物がラット頸動脈の切片においてFeCl3が誘導する閉塞性血栓の生成を抑制する能力を調べるものである。本発明のNAPは、静脈内または皮下に投与した場合、このモデルにおいて有効な抗凝固剤であった。実施例FのパートBに示した深部傷出血アッセイは抗凝固性化合物の投与後の血液の損失を測定するものである。抗凝固剤の所望の抗凝固活性は、血液凝固または血栓生成を阻害するが、凝固を完全に抑制して出血を促進するほど強くはないようにするものである。すなわち、深部傷出血アッセイは抗凝固剤の投与後3.5時間の間の血液の消失を測定する。図15に示されたデータは本発明のNAPが、過剰な出血を生じさせない濃度において有効な抗血栓化合物であることを示す。これに対して、低分子量ヘパリン(LMWH)の、閉塞を0%とする濃度では、NAPの有効濃度投与時の約3倍の出血をもたらした。
一般的NAPドメイン[式I]
「NAPドメイン」に関して、本発明の単離されたタンパク質(またはNAP)には少なくとも1のNAPドメインをそのアミノ酸配列に含んでいる。特定のNAPドメインは分子量約5.0から10.0キロダルトン、好ましくは約7.0から10.0キロダルトンであり、10個のシステイン残基を含有するアミノ酸配列を有する。
本発明の特定の好ましい単離NAPには少なくとも1のNAPドメインを含み、各NAPドメインはさらにアミノ酸配列:
Cys−A1−Cys−A2−Cys−A3−Cys−A4−Cys−A5−Cys−A6−Cys−A7−Cys−A8−Cys−A9−Cys(式I)
(式中:(a)A1は7から8アミノ酸残基を有するアミノ酸配列;(b)A2は2から5のアミノ酸残基を有するアミノ酸配列;(c)A3は3アミノ酸残基を有するアミノ酸配列;(d)A4は6から17アミノ酸残基を有するアミノ酸配列;(e)A5は3から4アミノ酸残基を有するアミノ酸配列;(f)A6は3から5アミノ酸残基を含有するアミノ酸配列;(g)A7は1のアミノ酸残基;(h)A8は10から12アミノ酸残基を有するアミノ酸配列;および(i)A9は5から6アミノ酸残基を有するアミノ酸配列である。)
を含む。これとほんの少し異なる他のNAPドメインを含有するNAP(式IIから式V参照)もまた本発明の範囲内である。
特に好ましいNAPドメインはA2が4から5アミノ酸残基を含有するアミノ酸配列であり、A4が6から16アミノ酸残基を含有するアミノ酸配列であるものを含む。より好ましくは、NAPドメインのうち(a)A1の4番目のアミノ酸残基がGluである;(b)A2の第1アミノ酸残基がGlyである;(c)A8の3番目のアミノ酸残基がGlyであり、6番目がArgである;そして8d)A9の第1アミノ酸残基がValであるものである。より好ましくは、A3の第1アミノ酸残基がAspまたはGluであり、3番目のアミノ酸残基がLysまたはArgであり、A7がValまたはGlnであるものである。さらに、より好ましくはA8がLeuまたはPheをその4番目のアミノ酸残基として有しており、LysまたはTyrをその5番目のアミノ酸残基として有する。また、好ましいNAPドメインにはA8が11または12アミノ酸残基を有し、AspまたはGlyがその最後から2番目のアミノ酸残基であり、A8が10アミノ酸を含有してGlyがその10番目のアミノ酸残基であるものもまた含まれる。リコンビナントタンパク質を特定の発現系において発現させるため、リコンビナントNAPにはさらに適当な分泌シグナルのアミノ酸配列を含んでいてもよい。特定の代表的なNAPドメインは図11及び図16に示した配列を含み、特にシステイン1およびシステイン10と名付けられたシステインの間(そしてこれを含む)およびシステイン10の後の配列が挙げられる。
本発明の好ましい態様において、少なくとも1の式IのNAPドメイン(式中、NAPドメインにはアミノ酸配列:
Cys−A1−Cys−A2−Cys−A3−Cys−A4−Cys−A5−Cys−A6−Cys−A7−Cys−A8−Cys−A9−Cys−A10(式中:(a)Cys−A1は配列番号66および129から選択される;(b)Cys−A2−Cysは配列番号130から133までから選択される;(c)A3−Cys−A4は配列番号134から135までから選択される;(d)Cys−A5は配列番号146および147から選択される;(e)Cys−A6は配列番号148から配列番号150までから選択される;(f)Cys−A7−Cys−A8は配列番号151から153までから選択されるおよび、(g)Cys−A9−Cysは配列番号154および配列番号155から選択される。また、Cys−A2−Cysで示される、配列番号130および131から選択されるタンパク質、A3−Cys−A4で示される、配列番号135から145までのうちから選択されるタンパク質もまた好ましい。より好ましくは、配列番号66および129の5位にGluを有する;配列番号130および131の2位にGlyを含有する;配列番号151から153の、6位にGlyを、そして9位にArgを含有する;および配列番号154および155の、2位にValを含有するNAPドメインを含有するタンパク質が挙げられる。より好ましくは配列番号151から153の2位にValまたはGluを有し、7位にLeuまたはPheを有しおよび/または8位にLysまたはTyrを含有するものである。よりさらに好ましいのは、配列番号151の14位にAspまたはGlyを有するもの;配列番号152の13位にAspまたはGlyを有するもの;および配列番号153の13位にGlyを有するものが挙げられる。
本発明の特定のNAPは、凝固カスケードにおける特定の成分、例えば第Xa因子または第VIIa因子/TF複合体のごとき成分の特異的な阻害を示す。NAPの阻害活性の凝血カスケードにおける1成分への特異性は実施例Dのプロトコールにて評価される。NAPの、凝固カスケードに含まれるさまざまなセリンプロテアーゼ類への作用は実施例Dに示したプロトコールによって評価することができる。実施例Dでは、凝固に含まれる様々なセリンプロテアーゼの活性を阻害するNAPの活性を測定し、比較した。NAPの第VIIa因子/TF複合体の活性に対する阻害作用についても実施例Eのプロトコールにより評価することができ、これはNAPが第Xa因子へ阻害的または非阻害的な態様で結合する能力を測定し、そして第VIIa因子がTFと複合体を形成する際に阻害する能力を測定するものである。AcaNAP5およびAcaNAP6はNAPドメインを有し、特異的に第Xa因子を阻害するタンパク質の例である。AcaNAPc2はNAPドメインを有し、第VIIa因子/TF複合体を、第Xa因子またはその触媒的に活性もしくは非活性の誘導体の存在下において選択的な阻害を示すタンパク質である。
抗凝固活性を有するNAP、第Xa因子阻害活性を有するNAPも含む(式II)
本発明のNAPにはさらに、抗凝固活性を有する単離されたタンパク質を含み、これには第Xa因子阻害活性を有し、1または複数のNAPドメインを有し、それぞれのNAPドメインが以下の配列:
Cys−A1−Cys−A2−Cys−A3−Cys−A4−Cys−A5−Cys−A6−Cys−A7−Cys−A8−Cys−A9−Cys−A10(式II)
(式中、
(a)A1はアミノ酸残基7から8のアミノ酸配列である;
(b)A2はアミノ酸配列である;
(c)A3はアミノ酸残基3のアミノ酸配列である;
(d)A4はアミノ酸配列である;
(e)A5はアミノ酸残基3から4のアミノ酸配列である;
(f)A6はアミノ酸配列である;
(g)A7は1のアミノ酸である;
(h)A8はアミノ酸残基11から12のアミノ酸配列である;
(i)A9はアミノ酸残基5から7のアミノ酸配列である;
および(j)A10はアミノ酸配列である;
A2、A4、A6およびA10はそれぞれ独立して選択される数の、独立して選択されるアミノ酸残基であり、各配列は各NAPドメインが全部で約120アミノ酸残基を有するように選択される。)
を有する単離タンパク質を含む。
本発明のNAPタンパク質を含有する医薬組成物、およびNAPタンパク質を投与することを含む血液凝固の阻害方法もまた、本発明の範囲に含まれる。
この観点における本発明のNAPタンパク質は少なくとも1のNAPドメインを有する。好ましくはNAPは1または2のNAPドメインを有する。NAPタンパク質AcaNAP5[配列番号4および40]およびAcaNAP6[配列番号6および41]は1のNapドメインを有し、本発明のNAPとして好ましい。
本発明のある態様において好ましいNAPタンパク質は、A2が3から5アミノ酸残基のアミノ酸配列であり、A4が6から19アミノ酸残基のアミノ酸配列であり、A6が3から5アミノ酸残基のアミノ酸配列であり、そしてA10が5から25アミノ酸残基のアミノ酸配列であるものである。
すなわち、好ましい態様によれば、本発明は抗凝固活性を有する単離されたタンパク質を提供し、これには第Xa因子阻害剤としての活性を有するタンパク質であって、少なくとも1の式IIのNAPドメイン:
Cys−A1−Cys−A2−Cys−A3−Cys−A4−Cys−A5−Cys−A6−Cys−A7−Cys−A8−Cys−A9−Cys−A10
(式中、
(a)Cys−A1は配列番号67および156から選択される;
(b)Cys−A2−Cysは配列番号157から159までから選択される;
(c)A3−Cys−A4は配列番号160から173までから選択される;(d)Cys−A5は配列番号174および175から選択される;
(e)Cys−A6は配列番号176から178までから選択される;
(f)Cys−A7−Cys−A8は配列番号179および180から選択される;
(g)Cys−A9は配列番号181から183までから選択される;および(h)Cys−A10は配列番号184から204までから選択される
を含有するものが含まれる。
本発明の他の好ましい態様においては、A3はGlu−A3a−A3bの配列を有する(式中、A3aおよびA3bは独立して選択されるアミノ酸残基である)。より好ましくはA3aはAla、Arg、Pro、Lys、Ile、His、Leu、およびThrからなる群から選択され、A3bはLys、ThrおよびArgからなる群から選択される。特に好ましいA3の配列はGlu−Ala−Lys、Glu−Arg−Lys、Glu−Pro−Lys、Glu−Lys−Lys、Glu−Ile−Thr、Glu−His−Arg、Glu−Leu−LysおよびGlu−Thr−Lysからなる群から選択される。
本発明の付加的に好ましい態様においては、A4は全体として負電荷を有するアミノ酸配列である。
本発明のこの観点からは、好ましいA7アミノ酸残基はValまたはIleである。
本発明の他の好ましい具体例は、A8がアミノ酸配列A8a−A8b−A8c−A8d−A8e−A8f−A8g
(式中、(a)A8aはA8の第1アミノ酸残基である;
(b)少なくともA8aおよびA8bの少なくとも1方はGluまたはAspである;そして
(c)A8cからA8gはそれぞれ独立して選択されるアミノ酸残基である)
で示されるものを含む[配列番号68]。
好ましくはA8cはGlyであり、A8dはPhe、TyrおよびLeuからなる群から選択され、A8eはTyrであり、A8fはArgであり、A8gはAspおよびAsnから選択される。特に好ましいA8c−A8d−A8e−A8f−A8g配列としては、以下の群Gly−Phe−Tyr−Arg−Asp[配列番号69]、Gly−Phe−Tyr−Arg−Asn[配列番号70]、Gly−Tyr−Tyr−Arg−Asp[配列番号71]、Gly−Tyr−Tyr−Arg−Asn[配列番号72]、およびGly−Leu−Tyr−Arg−Asp[配列番号73]である。
その他の好ましい態様は、A10がGlu−Ile−Ile−His−Val[配列番号74]、Asp−Ile−Ile−Met−Val[配列番号75]、Phe−Ile−Thr−Phe−Ala−Pro[配列番号76]およびMet−Glu−Ile−Ile−Thr[配列番号77]からなる群から選ばれるものである。
NAPタンパク質AcaNAP5およびAcaNAP6はアミノ酸配列Glu−Ile−Ile−His−Val[配列番号74]をA10に有しており、これは本発明のこの態様において好ましいNAPである。
本発明のこの観点のある態様においては、好ましいNAP分子は
(a)A3がGlu−A3a−A3b(式中、A3aおよびA3bは独立して選択されるアミノ酸残基である)である;
(b)A4が全体として負電荷を有するアミノ酸配列である;
(c)A7がValおよびIleからなる群から選択される;
(d)A8がGly−Phe−Tyr−Arg−Asp[配列番号69]、Gly−Phe−Tyr−Arg−Asn[配列番号70]、Gly−Tyr−Tyr−Arg−Asp[配列番号71]、Gly−Tyr−Tyr−Arg−Asn[配列番号72]、およびGly−Leu−Tyr−Arg−Asp[配列番号73]からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、そして
(e)A10がGlu−Ile−Ile−His−Val[配列番号74]、Asp−Ile−Ile−Met−Val[配列番号75]、Phe−Ile−Thr−Phe−Ala−Pro[配列番号76]およびMet−Glu−Ile−Ile−Thr[配列番号77]からなる群から選ばれるアミノ酸配列を含有する;
ものである。
この態様のNAPタンパク質を含有する医薬組成物およびこの態様のNAPタンパク質を投与することを含む血液凝固阻害方法もまた、本発明の範囲内である。この態様のNAPタンパク質は少なくとも1のNAPドメインを有する。好ましくはNAPは1または2のNAPドメインを有する。AcaNAP5およびNcaNAP6のNAPタンパク質は1のNAPドメインを有しており、本発明のこの態様において好ましいNAPである。
他の好ましい態様においては、NAP分子は
(a)A3がGlu−Ala−Lys、Glu−Arg−Lys、Glu−Pro−Lys、Glu−Lys−Lys、Glu−Ile−Thr、Glu−His−Arg、Glu−Leu−LysおよびGlu−Thr−Lysからなる群から選択される;
(b)A4が全体として負電荷を有するアミノ酸配列である;
(c)A7がValまたはIleである;
(d)A8が、A8a−A8b−Gly−Phe−Tyr−Arg−Asp[配列番号78]、A8a−A8b−Gly−Phe−Tyr−Arg−Asn[配列番号79]、A8a−A8b−Gly−Tyr−Tyr−Arg−Asp[配列番号80]、A8a−A8b−Gly−Tyr−Tyr−Arg−Asn[配列番号81]、およびA8a−A8b−Gly−Leu−Tyr−Arg−Asp[配列番号82](式中、A8aおよびA8bのうちの少なくとも1つはGluまたはAspである);
(e)A9がアミノ酸残基5のアミノ酸配列である;
(f)A10がGlu−Ile−Ile−His−Val[配列番号74]、Asp−Ile−Ile−Met−Val[配列番号75]、Phe−Ile−Thr−Phe−Ala−Pro[配列番号76]およびMet−Glu−Ile−Ile−Thr[配列番号77]からなる群から選ばれる、
ものである。この態様において、NAPタンパク質を含有する医薬組成物およびこの態様のNAPタンパク質を投与することを含む血液凝固阻害方法もまた、本発明の範囲内である。この態様のNAPタンパク質は少なくとも1のNAPドメインを含有する。好ましくはNAPは1または2のNAPドメインを有する。好ましいものは少なくとも1のNAPドメインを有し、これが実質的にAcaNAP5[配列番号40]またはAcaNAP6[配列番号41]のものいずれかと同一であるものである。NAPタンパク質AcaNAP5[配列番号4および40]およびAcaNAP6[配列番号6および41]は1のNAPドメインを有し、本発明のこの態様において特に有用である。
抗凝固活性を有する好ましいNAPタンパク質は、第Xa因子阻害活性を有するものを含み、本発明の態様のうち、上記すべての態様において線虫から単離される。好ましい線虫の種はアンサイロストマ カニナム、アンサイロストマ セイラニカム、アンサイロストマ デュオデナール、ネカトール アメリカヌスおよびヘリゴモソモイド ポリギラスからなる群から選択される。特に好ましいのはアンサイロストマ カニナムから誘導されるAcaNAP5およびAcaNAP6のNAPタンパク質である。
この観点において本発明の範囲にはさらに、抗凝固および/または第Xa因子阻害活性を有するタンパク質をコード化する単離されたリコンビナントcDNA分子を含み、このタンパク質は、抗凝固および/または第Xa因子阻害活性を有する単離されたNAPタンパク質を示す各態様において規定されるものである。本発明のこの態様において好ましいcDNAはAcaNAP5およびAcaNAP6をコード化するものである。
本発明のこの観点における、NAPの第Xa因子阻害活性は本明細書に記載したプロトコールにより測定することができる。実施例Aはかかる方法のひとつを示す。簡単に述べると、NAPを第Xa因子とともにある一定時間インキュベートし、その後第Xa因子の基質を添加する。基質の加水分解速度を測定し、NAP非存在下における速度と比した場合のその速度の低下によりNAPが第Xa因子を阻害したことがわかる。実施例Cは他のNAPの第Xa因子阻害活性測定方法のうちのプロトロンビナーゼ複合体に組み込まれた際の測定方法であって、第Xa因子がインビボで作用する際の機能をより正確に反映するものとなっている。記載してあるように、第Xa因子がプロトロンビナーゼ複合体内に組み込まれたものをNAPと共にインキュベートし、その後基質を添加する。プロトロンビナーゼ複合体による第Xa因子媒介性トロンビン生成をこの混合物からのトロンビンの生成速度により測定できる。
抗凝固活性を有するNAP、第VIIa因子/TF阻害活性を有するNAPを含む(式III)
他の観点において、本発明のNAPはまた、第VIIa/TF阻害活性を有し、1または複数のNAPドメインを有する抗凝固活性を有する単離されたタンパク質もまた含まれる。ここにおいて各NAPドメインは以下の配列:
Cys−A1−Cys−A2−Cys−A3−Cys−A4−Cys−A5−Cys−A6−Cys−A7−Cys−A8−Cys−A10(式III)
(式中、(a)A1はアミノ酸残基7から8のアミノ酸配列である;
(b)A2はアミノ酸配列である;
(c)A3はアミノ酸残基3のアミノ酸配列である;
(d)A4はアミノ酸配列である;
(e)A5はアミノ酸残基3から4のアミノ酸配列である;
(f)A6はアミノ酸配列である;
(g)A7は1つのアミノ酸である;
(h)A8はアミノ酸残基11から12のアミノ酸配列である;
(i)A9はアミノ酸残基5から7のアミノ酸配列である;
および(j)A10はアミノ酸配列である;
上記A2、A4、A6およびA10は独立して選択される数の、独立して選択されるアミノ酸残基を有し、各配列は各NAPドメインが全部で約120アミノ酸残基を有するように選択される。)
を含有する。
この発明によるNAPタンパク質を含有する医薬組成物および、この発明のNAPタンパク質を投与することを含む血液凝固抑制方法も本発明の範囲内である。本発明のこの観点にかかわるNAPタンパク質は少なくとも1のNAPドメインを有する。好ましいのは1または2のNAPドメインを含有するタンパク質である。好ましいのは少くとも1のNAPドメインが実質的にAcaNAPc2[配列番号59]のNAPドメインと同一であるタンパク質である。NAPタンパク質AcaNAPc2[配列番号59]は1のNAPドメインを有し、本発明のこの観点においては特に好ましいものである。
本発明のこの観点から好ましいNAPタンパク質としては、A2が3から5アミノ酸残基のアミノ酸配列であり、A4が6から19アミノ酸残基のアミノ酸配列であり、A6が3から5アミノ酸残基のアミノ酸配列であり、A10が5から25アミノ酸残基のアミノ酸配列であるタンパク質である。
したがって、好ましい態様としては、第VIIa因子/TF阻害活性を含む抗凝固活性を有し、式IIIのNAPドメインを少くとも1つ有し、かかるNAPドメインが以下のアミノ酸配列:
Cys−A1−Cys−A2−Cys−A3−Cys−A4−Cys−A5−Cys−A6−Cys−A7−Cys−A8−Cys−A10
(式中、(a)Cys−A1は配列番号83および205から選択される;
(b)Cys−A2−Cysは配列番号206から208までから選択される;
(c)A3−Cys−A4は配列番号209から222までから選択される;(d)Cys−A5は配列番号223および224から選択される;
(e)Cys−A6は配列番号225から227までから選択される;
(f)Cys−A7−Cys−A8は配列番号228および229から選択される;
(g)Cys−A9は配列番号230から232までから選択される;および(h)Cys−A10は配列番号233から253までから選択される、
を有するものが挙げられる。
本発明の他の好ましい態様においては、A3はGlu−A3a−A3bの配列を有する(式中、A3aおよびA3bは独立して選択されるアミノ酸残基である)。より好ましくはA3aはAsp−Lys−Lysである。
付加的に好ましい態様においては、A4は全体として負電荷を有するアミノ酸配列である。
本発明のこの観点におけるその他の好ましい態様においては。A5がA5a−A5b−A5c−A5d[配列番号84](式中、A5aからA5dは独立して選択されるアミノ酸残基である。好ましくはA5aがLeuでありA5cがArgである。
本発明のこの観点によれば、好ましいA7アミノ酸残基はValまたはIleであり、より好ましくはValである。
本発明のこの観点によるさらに好ましい態様は、A8がアミノ酸配列A8a−A8b−A8c−A8d−A8e−A8f−A8g[配列番号68]を含有するタンパク質である(式中、
(a)A8aはA8の最初のアミノ酸残基である、
(b)少くともA8aとA8bのうちのひとつがGluまたはAspから選択される、
(c)A8cからA8gは独立して選択されるアミノ酸残基である。
好ましくは、A8cがGlyであり、A8dがPhe、TyrおよびLeuからなる群から選択され、A8eがTyrであり、A8fがArgでありA8gがAspおよびAsnから選択される。好ましいA8c−A8d−A8e−A9f−A8g配列はGly−Phe−Tyr−Arg−Asn[配列番号70]である。
ある具体例において、好ましいNAP分子は
(a)A3がAsp−A3a−A3b(式中、A3aおよびA3bは独立して選択されるアミノ酸残基である);
(b)A4は全体として負電荷を有するアミノ酸配列である;
(c)A5はA5a−A5b−A5c−A5dの配列を有するアミノ酸配列であり、A5aからA5dまでは独立して選択されるアミノ酸残基である;そして
(d)A7はValおよびIleからなる群から選択される)。
この態様のNAPタンパク質を有する医薬組成物、およびこの態様のNAPタンパク質を投与することを含む、血液凝固抑制方法もまた本発明の範囲内である。この態様のNAPタンパク質は少くとも1のNAPドメインを有する。好ましいNAPは1または2のNAPドメインを含有する。1のNAPドメインを有するNAPタンパク質AcaNAPc2が本発明のこの態様において好ましい。
他の好ましい態様において、
(a)A3はAsp−Lys−Lysである;
(b)A4は全体として負電荷を有するアミノ酸配列である;
(c)A5はA5a−A5b−A5c−A5d[配列番号85]の配列であり、A5aからA5dは独立して選択されるアミノ酸残基である;
(d)A7はValである;および
(e)A8はアミノ酸配列A8a−A8b−Gly−Phe−Tyr−Arg−Asn[配列番号79](式中、A8aとA8bの少くとも一方はGluまたはAspである)であるNAP分子が提供される。この態様のNAPタンパク質を含有する医薬組成物および、この態様のNAPタンパク質を投与することを含む血液凝固を抑制する方法もまた、本発明の範囲内である。本発明のこの態様のNAPタンパク質はすくなくとも1のNAPドメインを有する。好ましいNAPは1または2のNAPドメインを有するものである。NAPタンパク質AcaNAPc2[配列番号59]は1のNAPドメインを有し、本発明のこの態様において好ましいNAPである。
抗凝固活性を有する好ましいNAPタンパク質は、第VIIa因子/TF阻害活性を有するものを含む。本発明のこの観点からの上記すべての態様によれば、線虫の種から誘導し得る。好ましい線虫の種としてはアンサイロストマ カニナム、アンサイロストマ セイラニカム、アンサイロストマ デュオデナール、ネカトール アメリカヌスおよびヘリゴモソモイデス ポリギルスからなる群から選択される。特に好ましいのはアンサイロストマ カニナムより単離されるNAPタンパク質AcaNAPc2である。本発明のこの観点には、抗凝固および/または第VIIa因子/TF阻害活性を有するタンパク質をコードする単離されたリコンビナントcDNA分子も含まれるが、このタンパク質は上記の単離された抗凝固および/または第VIIa因子/TF阻害活性を有するNAPタンパク質の態様のそれぞれに沿って規定されるものである。この観点による好ましいcDNAは配列番号19の核酸配列を有し、これは配列番号59のAcaNAPc2タンパク質をコードするものである。
本発明のこの観点におけるNAPの第VIIa因子/TF阻害活性は本明細書に示すプロトコルにより測定することができる。実施例Eは第VIIa因子/TFアッセイを開示する。放射線標識したヒト第IX因子(3H−FIX)からの3つ組活性化タンパク質の第VIIa因子/TFが媒介する切断または、色素生成性ペプチジル基質のアミド分解性加水分解により測定する。興味深いことに、本発明のNAP第VIIa因子/TF阻害剤は、活性な第VIIa/TF阻害剤となるために第Xa因子の存在を必要とする。しかしながら、NAP第VIIa因子/TF阻害剤は、第Xa因子の活性部位が非可逆的にペプチジルクロロメチルケトン、H−Glu−Gly−Arg−CMK(EGR)で占められており、これによって触媒的に第Xa因子が非活性であると考えられるものである場合にも(EGR−FXa)同様に有効である。この理由を一の説明に帰するつもりはないが、第VIIa因子/TF阻害活性を有するNAPが第Xa因子と2成分複合体を形成し、その形成は酵素上の特定の認識部位であって、酵素の触媒中心のP4−P1のプライマリー認識部位とは異なる部位を介して行われることは明らかである。これは次いで第VIIa因子/TF複合体と共に、4成分阻害複合体を形成する。第Xa因子の触媒中心にあるプライマリー認識部位(P4−P1)が共有結合的にトリペプチジルクロロメチルケトン(EGR−CMK)により占められているにもかかわらず、EGR−fXaが完全にNAPによる第VIIa因子/TFの阻害をサポートし得ることは、この仮説を支持する。
NAPの第VIIa因子/TF阻害活性はまた、実施例Dのプロトコルによって測定することもでき、同様に実施例AおよびCに開示した第Xa因子アッセイによって測定してもよい。この方法は、NAPが様々の酵素の触媒活性を阻害する能力を測定し、これを第VIIa因子/TF複合体に対する阻害活性と比較するものである。第VIIa因子/TFのNAPによる特異的阻害は、ある適用において所望されている性質である。
本発明のさらなる観点に従って、抗凝固活性を有する単離されたタンパク質およびそのタンパク質をコードするcDNAが提供されるが、当該タンパク質は特異的に第VIIa因子/TF複合体を第Xa因子の存在下、または触媒的に非活性な第Xa因子誘導体の存在下にて阻害するが、TFの非存在下においては第VIIa因子の活性を特異的に阻害せず、またプロトロンビナーゼの活性を特異的に阻害することもないタンパク質を提供する。本発明のこの観点において好ましいタンパク質は第VIIa因子/TF阻害活性を有する単離されたタンパク質について上記に説明したような性質を有し、1または複数のNAPドメインを有する。本発明のこの態様において好ましいタンパク質はAcaNAPc2である。
本発明のこの観点にあてはまるNAPは、第Xa因子または第Xa因子誘導体の存在下において、該誘導体が触媒的に活性であろうがなかろうが第VIIa因子/TF阻害活性を有するものであるとして同定される。実施例B、CおよびFのプロトコルはかかるNAPの抗凝固活性を測定するのに有用である。実施例Aのプロトコルは第Xa因子またはプロトロンビナーゼの無い場合のNAPの不活性性を調べることができる。実施例Eのプロトコルを用いて得たデータは、触媒的に活性または不活性である第Xa因子の存在を第VIIa因子/TF複合体の阻害の際に必要とする同定するものである。
セリンプロテアーゼ阻害活性を有するNAP(式IV)
さらなる観点において、本発明のNAPにはセリンプロテアーゼ阻害活性を有し、1または複数のNAPドメインを有する単離されたタンパク質を含む。かかるタンパク質の各NAPドメインは以下の配列を有する:
Cys−A1−Cys−A2−Cys−A3−Cys−A4−Cys−A5−Cys−A6−Cys−A7−Cys−A8−Cys−A10(式IV)
(式中、(a)A1はアミノ酸残基7から8のアミノ酸配列である;
(b)A2はアミノ酸配列である;
(c)A3はアミノ酸残基3のアミノ酸配列である;
(d)A4アミノ酸配列である;
(e)A5はアミノ酸残基3から4のアミノ酸配列である;
(f)A6はアミノ酸配列である;
(g)A7は1つのアミノ酸である;
(h)A8はアミノ酸残基11から12のアミノ酸配列である;
(i)A9はアミノ酸残基5から7のアミノ酸配列である;
および(j)A10はアミノ酸配列である;
上記A2、A4、A6およびA10は独立して選択される数の、独立して選択されるアミノ酸残基を有し、各配列は各NAPドメインが全部で約120未満のアミノ酸残基を有するように選択される。)
この発明によるNAPタンパク質を含有する医薬組成物および、この発明のNAPタンパク質を投与することを含む血液凝固抑制方法も本発明の範囲内である。本発明のこの観点にかかわるNAPタンパク質は少なくとも1のNAPドメインを有する。好ましいのは1または2のNAPドメインを含有するタンパク質である。好ましいのはNAPドメインが実質的にHpoNAP5[配列番号60]またはNamNAP[配列番号61]のものと同一であるタンパク質である。NAPタンパク質HpoNAP5[配列番号60]およびNamNAP[配列番号61]は1のNAPドメインを有し、本発明のこの観点においては特に好ましいNAPタンパク質である。
本発明のこの観点から好ましいNAPタンパク質としては、A2が3から5アミノ酸残基のアミノ酸配列であり、A4が6から19アミノ酸残基のアミノ酸配列であり、A6が3から5アミノ酸残基のアミノ酸配列であり、A10が1から25アミノ酸残基のアミノ酸配列であるタンパク質である。
したがって、好ましい態様としては、セリンプロテアーゼ阻害活性を示し少なくとも1つの式IVのNAPドメインを有するNAPタンパク質には、以下のアミノ酸配列:
Cys−A1−Cys−A2−Cys−A3−Cys−A4−Cys−A5−Cys−A6−Cys−A7−Cys−A8−Cys−A10
(式中、(a)Cys−A1は配列番号86および254から選択される;
(b)Cys−A2−Cysは配列番号255から257までから選択される;
(c)A3−Cys−A4は配列番号258から271までから選択される;(d)Cys−A5は配列番号272および273から選択される;
(e)Cys−A6は配列番号274から276までから選択される;
(f)Cys−A7−Cys−A8は配列番号277および279から選択される;
(g)Cys−A9は配列番号280から282までから選択される;および(h)Cys−A10は配列番号283から307までから選択される。
本発明の他の好ましい態様においては、A3はGlu−A3a−A3bの配列を有する(式中、A3aおよびA3bは独立して選択されるアミノ酸残基である)。より好ましくはA3aはGlu−Pro−Lysである。
その他の好ましい態様においては、A4は全体として負電荷を有するアミノ酸配列である。
本発明のこの観点におけるその他の好ましい態様においては。A5がA5a−A5b−A5c(式中、A5aからA5cは独立して選択されるアミノ酸残基である。好ましくはA5aがThrでありA5cがAsnである。特に好ましいA5の配列にはThr−Leu−AsnまたはThr−Met−Asnが含まれる。
本発明のこの観点によれば、好ましいA7アミノ酸残基はGlnである。
本発明のこの観点によれば、好ましいNAP分子の一態様は、
(a)A3がGlu−A3a−A3b(式中、A3aおよびA3bは独立して選択されるアミノ酸残基である)であり;
(b)A4は全体として負電荷を有するアミノ酸配列であり;
(c)A5はA5a−A5b−A5cの配列を有するアミノ酸配列で、A5aからA5cまでは独立して選択されるアミノ酸残基であり;そして
(d)A7はGlnである。この態様のNAPタンパク質を有する医薬組成物およびこの態様のNAPタンパク質を投与することを含む、血液凝固抑制方法もまた本発明の範囲内である。この態様のNAPタンパク質は少くとも1のNAPドメインを有する。好ましいNAPは1または2のNAPドメインを含有する。1のNAPドメインを有するNAPタンパク質HpoNAP5[配列番号60]およびNamNAP[配列番号61]が本発明のこの態様において好ましい。
他の好ましい態様において、
(a)A3がGlu−Pro−Lysであり;
(b)A4が全体として負電荷を有するアミノ酸配列であり;
(c)A5がThr−Leu−AsnおよびThr−Met−Asnから選択され;
(d)A7がGlnである。この態様のNAPタンパク質を有する医薬組成物およびこの態様のNAPタンパク質を投与することを含む、血液凝固抑制方法もまた本発明の範囲内である。この態様のNAPタンパク質は少くとも1のNAPドメインを有する。好ましいNAPは1または2のNAPドメインを含有する。1のNAPドメインを有するNAPタンパク質HpoNAP5[配列番号60]およびNamNAP[配列番号61]が本発明のこの態様において好ましい。
本発明のこの観点からの上記すべての態様において好ましいNAPタンパク質は、線虫から誘導し得る。好ましい線虫の種としてはアンサイロストマ カニナム、アンサイロストマ セイラニカム、アンサイロストマ デュオデネール、ネカトール アメリカヌスおよびヘリゴモソモイデス ポリギルスからなる群から選択される。特に好ましいのはヘリゴモソモイデス ポリギルスおよびネカトール アメリカヌスからそれぞれ単離されるNAPタンパク質HpoNAP5およびNamNAPである。
本発明のこの観点にはまた、セリンプロテアーゼ阻害活性を有するタンパク質をコード化するcDNAを含むが、このタンパク質には上記のセリンプロテアーゼ阻害活性を有する単離されたタンパク質の態様のそれぞれに沿って規定されるものも含む。本発明のこの観点において好ましいcDNAは配列番号14の核酸配列(HpoNAP5)および配列番号39の核酸配列(NamNAP)を有するものであり、これらはそれぞれHpoNAP5[配列番号60]およびNamNAP[配列番号61]のタンパク質をコードする。
セリンプロテアーゼ阻害活性は実施例AからFのいずれに記載されたアッセイによって測定しても、あるいは一般的に使用されるセリンプロテアーゼ活性阻害の測定のための酵素アッセイによって測定してもよい。多くの酵素アッセイ方法についてはメソッズ・オブ・エンザイモロジーの各巻または他の同様の文献より読み取ることができる。好ましいNAPはセリンプロテアーゼ阻害活性を有し、血液凝固カスケードの酵素を指向するか、またはトリプシン/エラスターゼを指向する活性を有しているものである。
抗凝固活性を有するNAP(式V)
本発明の他の観点において、本発明のNAPにはさらに抗凝固活性を有し、1または複数のNAPドメインを含有する単離されたタンパク質であって、各NAPドメインが以下の配列を有する:
Cys−A1−Cys−A2−Cys−A3−Cys−A4−Cys−A5−Cys−A6−Cys−A7−Cys−A8−Cys−A10(式V)
(式中、(a)A1はアミノ酸残基7から8のアミノ酸配列である;
(b)A2はアミノ酸配列である;
(c)A3はアミノ酸残基3のアミノ酸配列である;
(d)A4はアミノ酸配列である;
(e)A5はアミノ酸残基3から4のアミノ酸配列である;
(f)A6はアミノ酸配列である;
(g)A7は1つのアミノ酸である;
(h)A8はアミノ酸残基11から12のアミノ酸配列である;
(i)A9はアミノ酸残基5から7のアミノ酸配列である;
および(j)A10はアミノ酸配列である;
上記A2、A4、A6およびA10は独立して選択される数の、独立して選択されるアミノ酸残基を有し、各配列はNAPドメインが全部で約120未満のアミノ酸残基を有するように選択される。)ものを含む。この発明によるNAPタンパク質を含有する医薬組成物および、この発明のNAPタンパク質を投与することを含む血液凝固抑制方法も本発明の範囲内である。本発明のこの観点にかかわるNAPタンパク質は少なくとも1のNAPドメインを有する。好ましいのは1または2のNAPドメインを含有するタンパク質である。好ましいのはNAPドメインが実質的に配列番号40から58のいずれかと同一のものである。NAPタンパク質AcaNAP5[配列番号40]、AcaNAP6[配列番号41]、AcaNAP48[配列番号42]、AcaNAP23[配列番号43]、AcaNAP24[配列番号44]、AcaNAP25[配列番号45]、AcaNAP44[配列番号46]、AcaNAP31[配列番号47]、AduNAP4[配列番号55]、AceNAP5[配列番号57]およびAceNAP7[配列番号58]は1のNAPドメインを有する、本発明のこの観点において好ましいタンパク質である。AceNAP4[配列番号62]、AcaNAP45[配列番号63]、AcaNAP47[配列番号64]およびAduNAP7[配列番号65]は2つのNAPドメインを有し、本発明のこの観点において有用である。
本発明のこの観点から好ましいNAPタンパク質としては、A2が3から5アミノ酸残基のアミノ酸配列であり、A4が6から19アミノ酸残基のアミノ酸配列であり、A6が3から5アミノ酸残基のアミノ酸配列であり、A10が5から25アミノ酸残基のアミノ酸配列であるタンパク質である。
したがって、好ましい態様としては、抗凝固活性を有し少なくとも1つの式VのNAPドメインを有するNAPタンパク質には、以下のアミノ酸配列:
Cys−A1−Cys−A2−Cys−A3−Cys−A4−Cys−A5−Cys−A6−Cys−A7−Cys−A8−Cys−A10
(式中、(a)Cys−A1は配列番号87および308から選択される;
(b)Cys−A2−Cysは配列番号309から311までから選択される;
(c)A3−Cys−A4は配列番号312から325までから選択される;(d)Cys−A5は配列番号326および327から選択される;
(e)Cys−A6は配列番号328から330までから選択される;
(f)Cys−A7−Cys−A8は配列番号331および332から選択される;
(g)Cys−A9は配列番号333から335までから選択される;および(h)Cys−A10は配列番号336から356までから選択される。
本発明の他の好ましい態様においては、A3はGlu−A3a−A3bの配列を有する(式中、A3aおよびA3bは独立して選択されるアミノ酸残基である)。より好ましくはA3aはAla、Arg、Pro、Lys、Ile、His、Leu、およびThrからなる群より選択され、A3bはLys、ThrおよびArgからなる群から選択される。特に好ましいA3配列はGlu−Ala−Lys、Glu−Arg−Lys、Glu−Pro−Lys、Glu−Lys−Lys、Glu−Ilr−Thr、Glu−His−Arg、Glu−Leu−LysおよびGln−Thr−Lysからなる群から選択される。
その他の好ましい態様においては、A4は全体として負電荷を有するアミノ酸配列である。
本発明のこの観点において、好ましいA7アミノ酸残基はValまたはIleである。
本発明のこの観点において、他の好ましい態様においてはA8がアミノ酸配列でA8a−A8b−A8c−A8d−A8e−A8f−A8g[配列番号68]であるタンパク質も含む;(式中、
(a)A8aはA8の最初のアミノ酸残基である、
(b)少くともA8aとA8bのうちのひとつがGluおよびAspからなる群から選択される、
(c)A8cからA8gは独立して選択されるアミノ酸残基である。)。
好ましくは、A8cがGlyであり、A8dがPhe、TyrおよびLeuからなる群から選択され、A8eがTyrであり、A8fがArgでありA8gがAspおよびAsnから選択される。好ましいA8c−A8d−A8e−A8f−A8g配列はGly−Phe−Tyr−Arg−Asp[配列番号69]、Gly−Phe−Tyr−Arg−Asn[配列番号70]、Gly−Tyr−Tyr−Arg−Asp[配列番号71]、Gly−Tyr−Tyr−Arg−Asn[配列番号72]および、Gly−Leu−Tyr−Arg−Asp[配列番号73]である。
他の好ましい態様は、A10がGlu−Ile−Ile−His−Val[配列番号74]、Asp−Ile−Ile−Met−Val[配列番号75]、Phe−Ile−Thr−Phe−Ala−Pro[配列番号76]、および[Met−Glu−Ile−Ile−Thr[配列番号77]からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するタンパク質である。AcaNAP5[配列番号4および40]およびAcaNAP6[配列番号6および41]はA10内にGlu−Ile−Ile−His−Val[配列番号74]のアミノ酸配列を有し、本発明のこの態様に好ましい。NAPタンパク質AcaNAP23[配列番号43]、AcaNAP24[配列番号44]、AcaNAP25[配列番号45]、AcaNAP44[配列番号46]、AcaNAP31[配列番号47]、およびAceNAP4[配列番号48、49および62]はアミノ酸配列Phe−Ile−Thr−Ala−Pro[配列番号76]を含有し、本発明のこの態様において好ましい。AcaNAP45[配列番号50、53および63]、AcaNAP47[配列番号51、54および64]、AduNAP7[配列番号52、56および65]、AduNAP4[配列番号55]、AceNAP5[配列番号57]およびAceNAP7[配列番号58]はアミノ酸配列Met−Glu−Ile−Ile−Thr[配列番号77]を含有し、本発明のこの態様において好ましいNAPタンパク質である。
ある態様において、好ましいNAPタンパク質は、
(a)A3がGlu−A3a−A3b(式中、A3aおよびA3bは独立して選択されるアミノ酸残基である)である;
(b)A4が全体として負電荷を有するアミノ酸配列である;
(c)A7はValおよびIleからなる群から選択される;
(d)A8はGly−Phe−Tyr−Arg−Asp[配列番号69]、Gly−Phe−Tyr−Arg−Asn[配列番号70]、Gly−Tyr−Tyr−Arg−Asp[配列番号71]、Gly−Tyr−Tyr−Arg−Asn[配列番号72]および、Gly−Leu−Tyr−Arg−Asp[配列番号73]からなる群から選択されるアミノ酸配列である;および
(e)A10はGlu−Ile−Ile−His−Val[配列番号74]、Asp−Ile−Ile−Met−Val[配列番号75]、Phe−Ile−Thr−Phe−Ala−Pro[配列番号76]、および[Met−Glu−Ile−Ile−Thr[配列番号77]からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する;
ものである。この態様のNAPタンパク質を有する医薬組成物およびこの態様のNAPタンパク質を投与することを含む、血液凝固抑制方法もまた本発明の範囲内である。この態様のNAPタンパク質は少くとも1のNAPドメインを有する。好ましいNAPは1または2のNAPドメインを含有する。NAPタンパク質AcaNAP5[配列番号4および40]およびAcaNAP6[配列番号6および41]、AcaNAP48[配列番号42]、AcaNAP23[配列番号43]、AcaNAP24[配列番号44]、AcaNAP25[配列番号45]、AcaNAP44[配列番号46]、AcaNAP31[配列番号47]、AduNAP4[配列番号55]、AceNAP5[配列番号57]およびAceNAP7[配列番号58]は1のNAPドメインを有し、本発明のこの態様において好ましいアミノ酸配列である。NAPタンパク質AceNAP4[配列番号62]、AcaNAP45[配列番号63]、AcaNAP47[配列番号64]、およびAduNAP7[配列番号65]は2つのNAPドメインを有し、本発明のこの態様において好ましいNAPタンパク質である。
他の好ましい態様において、
(a)A3はGlu−Ala−Lys、Glu−Arg−Lys、Glu−Pro−Lys、Glu−Lys−Lys、Glu−Ile−Thr、Glu−His−Arg、Glu−Leu−LysおよびGlu−Thr−Lysからなる群から選択される;
(b)A4は全体として負電荷を有するアミノ酸配列である;
(c)A7はValまたはIleである;
(d)A8はA8a−A8b−Gly−Phe−Tyr−Arg−Asp[配列番号78]、A8a−A8b−Gly−Phe−Tyr−Arg−Asn[配列番号79]、A8a−A8b−Gly−Tyr−Tyr−Arg−Asp[配列番号80]、A8a−A8b−Gly−Tyr−Tyr−Arg−Asn[配列番号81]およびA8a−A8b−Gly−Leu−Tyr−Arg−Asp[配列番号82](式中、A8aおよびA8bはGluまたはAspである)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含有する;
(e)A9が5つのアミノ酸残基からなるアミノ酸配列である;
(f)A10がGlu−Ile−Ile−His−Val[配列番号74]、Asp−Ile−Ile−Met−Val[配列番号75]、Phe−Ile−Thr−Phe−Ala−Pro[配列番号76]、およびMet−Glu−Ile−Ile−Thr[配列番号77]からなる群から選択される、
化合物も含まれる。この態様のNAPタンパク質を有する医薬組成物およびこの態様のNAPタンパク質を投与することを含む、血液凝固抑制方法もまた本発明の範囲内である。この態様のNAPタンパク質は少くとも1のNAPドメインを有する。好ましいNAPは1または2のNAPドメインを含有する。NAPタンパク質のうち、AcaNAP5[配列番号4および40]およびAcaNAP6[配列番号6および41]、AcaNAP48[配列番号42]、AcaNAP23[配列番号43]、AcaNAP24[配列番号44]、AcaNAP25[配列番号45]、AcaNAP44[配列番号46]、AcaNAP31[配列番号47]、AduNAP4[配列番号55]、AceNAP5[配列番号57]およびAceNAP7[配列番号58]は1のNAPドメインを含み、本発明のこの態様において好ましいNAPタンパク質である。NAPタンパク質AceNAP4[配列番号62]、AceNAP45[配列番号63]、AcaNAP47[配列番号64]およびAduNAP7[配列番号65]は2つのNAPドメインを有し、本発明のこの態様において好ましいNAPである。
本発明のこの観点における上記すべての態様に基づく抗凝固活性を有する好ましいNAPタンパク質は、ある種類の線虫から誘導し得る。好ましい線虫の種としてはアンサイロストマ カニナム、アンサイロストマ セイラニカム、アンサイロストマ デュオデナール、ネカトール アメリカヌスおよびヘリゴモソモイデス ポリギルスからなる群から選択される。特に好ましいのはアンサイロストマ カニナムより誘導されるAcaNAP5[配列番号4および40]およびAcaNAP6[配列番号6および41]、AcaNAP48[配列番号42]、AcaNAP23[配列番号43]、AcaNAP24[配列番号44]、AcaNAP25[配列番号45]、AcaNAP44[配列番号46];アンサイロストマ セイラニカムから誘導されるAceNAP45[配列番号63]、AcaNAP47[配列番号64]およびAcaNAP31[配列番号47];アンサイロストマ デュオデナールから誘導されるAduNAP7[配列番号65]およびAduNAP4[配列番号55]が挙げられる。
本発明のこの観点にはまた、抗凝固活性を有するタンパク質をコード化するcDNAを含むが、このタンパク質には上記の抗凝固活性を有する単離されたタンパク質の態様のそれぞれに沿って規定されるものが含まれる。本発明のこの観点において好ましいcDNAはAcaNAP5[配列番号3]、AcaNAP6[配列番号5]、AcaNAP48[配列番号38]、AcaNAP23[配列番号31]、AcaNAP24[配列番号32]、AcaNAP25[配列番号33]、AcaNAP44[配列番号35]、AcaNAP31[配列番号34]、AduNAP4[配列番号12]、AceNAP5[配列番号10]、AceNAP7[配列番号11]、AceNAP4[配列番号9]、AceNAP45[配列番号36]、AcaNAP47[配列番号37]、およびAduNAP7[配列番号13]の核酸配列を含む。
本発明のこの観点の抗凝固活性は本明細書に記載の方法にて測定すればよい。実施例BおよびFにはNAPの抗凝固活性を評価するのに特に有用な方法を開示する。第Xa因子阻害活性を有するNAPを検出する方法(実施例AおよびC)および第VIIa因子/TF阻害活性を有するNAPを検出する方法(実施例E)として記載された方法もまた、NAPの抗凝固活性を評価するのに有用である。
オリゴヌクレオチド
本発明の別の観点においては、本発明は
からなる群から選択される配列を有するオリゴヌクレオチドを提供する。
これらのオリゴヌクレオチド配列はNAPタンパク質をコードする核酸配列にハイブリダイズする。
本発明の単離されたNAPには、説明したアミノ酸配列のバリエーションも含まれている。このバリエーションには、フラグメント、天然に生じた変異体、アレル変異体、ランダムに生成した人工的変異体、および目的に沿って生成させた人工変異体であって、抗凝固活性を保持しているものを含む。「フラグメント」の語は、全タンパク質より少ないアミノ酸より構成される配列のいずれかの部分を意味し、例えばアミノ末端、カルボキシ末端を含んでいない部分配列やまたは、完全タンパク質のアミノ末端とカルボキシ末端の間の配列をいう。
本発明の単離されたNAPにはまた、NAPドメインのアミノ酸配列の抗凝固活性を保持しているリコンビナントアミノ酸配列を有するタンパク質も含む。したがって、本明細書においては、「NAPタンパク質」または「タンパク質」という語をNAPドメインを含有するタンパク質について使用する場合には、特に指定しなければ天然のNAPタンパク質およびリコンビナント方法により調製したNAPタンパク質の両方を意味するものとする。これらのリコンビナントタンパク質は融合タンパク質のごときハイブリッドタンパク質、さまざまな遺伝子を発現ベクター内へ発現させて得られるタンパク質、さまざまな遺伝子を宿主細胞のクロモソーム内へ発現させて得られるタンパク質、さらには開示したタンパク質の抗凝固活性を有するポリペプチドであって、第2のポリペプチドとペプチド結合にて結合しているものも含まれる。リコンビナントタンパク質にもまた、本発明のNAPドメインアミノ酸配列のバリアントであって、保存的アミノ酸置換のみを含むバリアントを含む。保存的アミノ酸置換はテイラー(Taylor, W.R.)のジェイ・モル・バイオル(J.Mol.Biol)、188:233(1986)の表1に「セット」として記載されている。リコンビナントタンパク質にはまた、本発明の単離されたNAPドメインアミノ酸配列からアミノ酸の置換または欠失があり、これによって単離されたNAPドメインの配列の抗凝固活性を保存しているものも含む。
本発明のある好ましい態様は、線虫、アンサイロストマ カニナムから実施例1に記載のごとき生化学的方法を用いて単離したタンパク質である。このタンパク質はヒト血漿の凝血時間をPTおよびaPTTアッセイの両方において延長し、1のNAPドメインを含有し、そしてN−末端にアミノ酸配列Lys−Ala−Tyr−Pro−Glu−Cys−Gly−Glu−Asn−Glu−Trp−Leu−Asp[配列番号92]を有し、マススペクトロメトリーで測定した分子量が約8.7キロダルトンから8.8キロダルトンであるものである。
本発明の他の好ましい態様には、この線虫、アンサイロストマ カニナムのcDNAライブラリーよりリコンビナント方法によって作成された抗凝固活性を有するタンパク質を含む。例えばAcaNAP5[配列番号4または40]、AcaNAP6[配列番号6または41]、Pro−AcaNAP5[配列番号7]、Pro−AcaNAP6[配列番号8]、AcaNAP48[配列番号42]、AcaNAP23[配列番号43]、AcaNAP24[配列番号44]、AcaNAP25[配列番号45]、AcaNAP44[配列番号46]、AcaNAP31[配列番号47],AcaNAP45[配列番号63]、AcaNAP47[配列番号64]およびAcaNAPc2[配列番号59];線虫、アンサイロストマ セイラニウムから単離されたものには、例えばAceNAP4[配列番号62]、AceNAP5[配列番号57]およびAceNAP7[配列番号59];線虫、アンサイロストマ デュオデナールから単離されたものには例えば、AduNAP4[配列番号55]およびAduNAP7[配列番号65];線虫、ヘリゴモスモイデス ポリギルスから単離されたものは例えばHpoNAP5[配列番号60];および線虫ネカトール アメリカヌスより単離されたものには例えばNamNAP[配列番号61]が例示される。かかるタンパク質のアミノ酸配列は図11及び16および他の図面に記載している。これらの好ましい具体例はそれぞれヒト血漿の凝血時間をPTおよびaPTTアッセイの両方において延長し、少なくとも1のNAPドメインを含有するものである。
「単離されたタンパク質」に関しては、本発明のタンパク質はタンパク質精製の方法として当業者によりよく知られている方法または以下に記載の方法によって単離されたものである。これらは天然物より単離しても、固相上もしくは液体内にて、例えば固相自動ペプチド合成法によって化学合成したものであっても、リコンビナント方法によりタンパク質を産生させた際の細胞培養物より単離したものであってもよい。
以下に詳しく述べるように、本発明にはNAPを含有する医薬組成物およびNAPを使用して血液凝固の過程および関連する血栓を抑制する方法も含む。試料中のNAP核酸の存在を同定するために有用なオリゴヌクレオチドプローブもまた、本発明の範囲内であり、以下により詳しく説明する。
1.天然物より単離されたNAP
本発明の好ましい単離タンパク質(NAP)は、天然物から単離、精製したものであってよい。好ましい天然物は線虫である;適当な線虫には腸線虫、例えばアンサイロストマ カニナム、アンサイロストマ セイラニカム、アンサイロストマ デュオデナール、ネカトール アメリカヌスおよびヘリゴモソモイデス ポリギルスなどが例示される。天然物として特に好ましいのは吸血性線虫、鉤虫のアンサイロストマ カニナムである。
本発明の好ましいタンパク質は天然物より生化学分野でよく知られた方法により単離、精製すればよい。単離、精製方法には可溶性抽出物の調製、抽出物の、異なる固体支持物質を用いたクロマトグラフ法による濃縮を含む。精製の好ましい方法は線虫の可溶性抽出物を、さまざまなプロテアーゼ阻害剤を含有する0.02Mトリス−塩酸、pH7.4バッファー内にて調製し、次いで抽出物をコンカナバリン−Aセファロースマトリックス、ポーラス20HQ(poros20 HQ)陽イオン交換マトリックス、スーパーデックス30ゲル濾過マトリックスおよびC18逆相マトリックスを含むクロマトグラフィーへ連続的に通すことを含む。クロマトグラフィーのカラムから各フラクションを集め、これをPTおよびaPTTアッセイによって凝血時間を延長する能力の有無、または精製酵素を用いてアミド分解を比色定量するアッセイによるまたは実施例AからFに開示された他の方法による第Xa因子アミド分解活性に対する阻害能の有無により選択すればよい。本発明の単離されたタンパク質を精製する好ましい精製方法の例には実施例1に記載した方法を含む。
本発明の好ましいタンパク質は、天然物、例えばアンサイロストマ カニナムから説明したように単離される場合、アミノ酸配列Lys−Ala−Tyr−Pro−Glu−Cys−Gly−Glu−Asn−Glu−Trp−Leu−Asp[配列番号92]を含有する。特に好ましいのはこのアミノ酸配列をアミノ末端に有する精製タンパク質であり、図2(AcaNAP5[配列番号4])または図4(AcaNAP6[配列番号6])が例示される。本発明の好ましいタンパク質の一つはアミノ酸配列Lys−Ala−Tyr−Pro−Glu−Cys−Gly−Glu−Asn−Glu−Trp−Leu−Asp[配列番号92]をそのアミノ末端に含有し、マススペクトロメトリーにより測定される分子量が8.7から8.8キロダルトンであるタンパク質である。
2.化学合成により調製されるNAP
本発明の好ましい単離NAPは化学業界において知られている標準的な方法によって合成してもよい。
本発明の単離されたタンパク質は固相合成、例えばメリフィールド(Merrifield)ジェイ・アム・ケム・ソク(J.Amer.Chem.Soc.)85:2149(1964)に記載の方法、または他の化学業界で知られている等価な方法、例えばホーテン(Houghten)らの方法プロシーデイングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・ユーエスエー82:5132(1985)によって調製してもよい。
固相合成はペプチドのC−末端から、保護したアミノ酸またはペプチドを適当な不溶性樹脂へカップリングさせることにより開始する。適当な樹脂にはクロロメチル、ブロモメチル、ヒドロキシルメチル、アミノメチル、ベンズヒドリルおよびt−アルキルオキシカルボニルヒドラジド基を含むものを含み、これらの基にはアミノ酸が直接カップリングし得る。
この固相合成において、αアミノ基と必要に応じて反応性側鎖を適当に保護したカルボキシ末端のアミノ酸を、最初にこの不溶性樹脂へカップリングさせる。αアミノ保護基を、適当な溶媒内のトリフルオロ酢酸処理のごとき適当な処理方法で処理した後、αアミノ酸および必要に応じて各反応性側鎖を保護した次のアミノ酸またはペプチドを、樹脂へカップリングしたアミノ酸の遊離のアミノ基へとカップリングさせる。続いて適当な保護アミノ酸もしくはペプチドを同様の方法にてカップリングさせ、ペプチド鎖を所望のアミノ酸配列を得るまで伸長させる。合成はマニュアルで行っても、あるいは自動化されたペプチド合成装置で行っても、あるいはこれらを組み合わせて行ってもよい。
適当に保護されたアミノ酸もしくはペプチドの、樹脂に結合したフリーのアミノ基へのカップリングは、従来のカップリング方法、例えばアジド法、混合無水物法、DCC(ジサイクロヘキシルカルボジイミド)法、活性化エステル法(p-ニトロフェニルエステルまたはN-ヒドロキシスクシンイミドエステル)、BOP(ベンゾトリアゾル−1−イル−オキシ−トリス(ジアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート法またはウッドワード試薬K法などによって行えばよい。ペプチド合成において、不溶性樹脂に結合している成長ペプチド鎖へカップリングさせるアミノ酸またはペプチドのαアミノ基の保護基を、側鎖の保護基が除去されないような条件にて除去することは通常行われている。合成完了時、ペプチドは通常不溶性樹脂と分離され、そして分離時または分離後に側鎖の保護基を除去することもまた、通常行われることである。
すべてのアミノ酸αアミノ基およびリジンのオメガアミノ基のために適した保護基としてはベンジルオキシカルボニル、イソニコチニルオキシカルボニル、o−クロロベンジルオキシカルボニル、p−ニトロフェニルオキシカルボニル、p−メトキシフェニルオキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、t−アミロキシカルボニル、アダマンチルオキシカルボニル、2−(4−ビフェニル)−2−プロピルオキシカルボニル、9−フルオレニルメトキシカルボニル、メチルスルホニルエトキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタリル、ホルミル、2−ニトロフェニルスルフフェニル、ジフェニルホスフィノチオイル、ジメチルフォスフィノチオイルなどが例示される。
アスパラギン酸およびグルタミン酸のカルボキシ基の好ましい保護基にはベンジルエステル、シクロヘキシルエステル、4−ニトロベンジルエステル、t−ブチルエステル、4−ピリジルメチルエステルなどが例示される。
アルギニンのグアニジノ基のための好ましい保護基にはニトロ、p−トルエンスルホニル、ベンジルオキシカルボニル、アダマンチルオキシカルボニル、p−メトキシベンゼンスルホニル、4−メトキシ−2,6−ジメチルベンゼンスルホニル、1,3,5−トリメチルフェニルスルホニルなどが挙げられる。
システインのチオール基のための好ましい保護基には、p−メトキシベンジル、トリフェニルメチル、アセチウアミノメチル、エチルカルバモイル、4−メチルベンジル、2,4,6−トリメチルベンジルなどが挙げられる。
セリンのヒドロキシ基のための好ましい保護基にはベンジル、t−ブチル、アセチル、テトラヒドロピラニルなどが挙げられる。
完成されたペプチドを樹脂から分離するには、1または複数のチオ含有スカベンジャーを含有する液体フッ化水素酸で低温で処理すればよい。かかる処理による樹脂からのペプチドの分割により、側鎖保護基もまたペプチドからはずれる。
分離したペプチドは希酢酸に溶解させて濾過し、次いで再び折畳み、適当なジスルフィド結合が形成するよう、ペプチド濃度が約0.5mMから2mMとなるよう、0.1Mの酢酸溶液とする。この溶液のpH値を水酸化アンモニウムを用いて約8.0に調整し、溶液を開放下で約24時間から約72時間の間撹拌する。
再び折畳まれたペプチドをクロマトグラフィー、好ましくは逆相カラム高圧液体クロマトグラフィーにて、アセトニトリル/水のグラジエント(さらに0.1%のトリフルオロ酢酸を含有する)により精製する。好ましいグラジエントは水中のアセトニトリル濃度を0から80%とするものである。精製ペプチドを含有するフラクションの回収にあたっては、フラクションを集め、凍結乾燥して固体のペプチドを得た。
3.リコンビナント方法により調製されるNAP
その他には、本発明の好ましい単離NAPは本明細書に記載した、生物学の当業者にはよく知られているリコンビナントDNA法により調製してもよい。サムブルック(Sambrook, J)、フィリッシュ(Fritsch,E.F.)およびマニアチスの(Maniatis, T.)のモレキュラー・クローニング、ア・ラボラトリー・マニュアル、第2版、第1〜3巻、コールドスプリングハーバーラボラトリープレス(1989)。
リコンビナントDNA法は、遺伝情報の断片であるDNAのうち、異なる生物から得たDNAを、該DNAを得た生物外で結合することができ、このハイブリッドDNAを細胞内へ取り込ませることができ、そして最初のDNAがコードするタンパク質を産生させることができるという方法である。
本発明のタンパク質をコード化する遺伝情報は生物のゲノムDNAまたはmRNAより、当業者によく知られた方法にて得ることができる。この遺伝情報を得るための好ましい方法にはmRNAを生物より単離し、これを相補的DNA(cDNA)へ転換し、このcDNAを適当なクローニングベクターへ導入し、所望のタンパク質をコードするリコンビナントcDNAを含有するクローンを、該タンパク質の既知の配列により構築されている、適当なオリゴヌクレオチドプローブによるハイブリダイゼーションによって同定する工程を含む。
本発明のタンパク質をコードするリコンビナントDNA内の遺伝情報は発現ベクターに連結させ、該ベクターを宿主細胞内へ導入して、遺伝情報をそれがコードするタンパク質として発現させればよい。
(A)cDNAライブラリーの調製
cDNAライブラリーを構築するための好ましい天然のmRNA源は線虫であり、これには腸線虫、アンサイロストマ カニナム、アンサイロストマ セイラニカム、アンサイロストマ デュオデナール、ネカトール アメリカヌスおよびヘリゴモソモイデス ポリギルスが例示される。天然のmRNA源として特に好ましいのは線虫のうちでも鉤虫、アンサイロストマ カニナムである。
本発明のタンパク質をコードするmRNAを、他のmRNAと共にある生物から単離する好ましい方法には、ポリUまたはポリTアフィニティーゲル上でのクロマトグラフィー法を含む。mRNAを線虫から単離するのに特に好ましい方法は、クイックプレプ(QuickPrep)mRNA精製キット(ファルマシア)の操作および試薬を用いることである。
二本鎖cDNAを単離したmRNAから得る好ましい方法は、1本鎖cDNAをmRNA鋳型上で逆転写酵素を用いて合成し、cDNA鎖にハイブリダイズしたRNAをリボヌクレアーゼ(RNアーゼ)にて分解し、そして相補的DNA鎖をDNAポリメラーゼを用いて合成して二本鎖cDNAを得る操作を含む。特に好ましい方法においては、線虫から単離した約3マイクログラムのmRNAを2本鎖cDNAに転換する際に、鳥類ミエロブラストシス・ウイルス(Avian Myeloblastosis Virus)逆転写酵素、RNアーゼHおよび大腸菌DNAポリメラーゼIおよびT4DNAポリメラーゼを用いて行う。
本発明のタンパク質をコードするcDNAは、上記のようにして構築されたライブラリー内の他のタンパク質と共に、クローニングベクターへと連結する。クローニングベクターにはcDNAライブラリーから得たcDNAを擁するDNA配列を含む。cDNAライブラリーを含有するベクターを宿主細胞に導入し、これは安定に存在でき、クローニングベクターが複製される環境を提供する。適当なクローニングベクターにはプラスミド、バクテリオファージ、ウイルスおよびコスミドが含まれる。好ましいクローニングベクターにはバクテリオファージを含む。特に好ましいクローニングベクターには、バクテリオファージラムダgt11 Sfi−Notベクターを含む。
cDNAライブラリーおよびコントロール配列を含む適当なクローニングベクターの構築には標準的な連結および制限手法が用いられ、これは当業者にはよく知られている。単離されたプラスミド、DNA配列または合成されたオリゴヌクレオチドを切断し、仕立て、そして所望の形態に再連結する。
制限手法、cDNAの部位特異的切断は、当業者に一般的に理解されている条件下にて適当な制限酵素を作用させることによって行うことができ、詳細には市販の制限酵素の製造者が決定した条件を用いればよい。例えば、ニュー・イングランド・バイオラブス、プロメガおよびストラタジェン・クローニング・システムスの製品カタログを参照されたい。
一般に、約1ミクログラムのcDNAが、20ミクロリットルの緩衝液中の約1単位の制限酵素により切断される。典型的には過剰な制限酵素を、cDNAの切断を完全に行うために用いる。約37℃、約1から2時間のインキュベーションという条件が通常用いられているが、これ以外の条件下で行う場合もある。切断反応の後、タンパク質をフェノール/クロロホルムにより抽出すればよく、任意にセファデックス(登録商標)G50のごときゲル濾過カラムを用いたクロマトグラフィーにかけてもよい。または、切断されたcDNAフラグメントをその大きさに基づきポリアクリルアミドまたはアガロースゲル上の電気泳動により分離し、そして標準的な方法により単離してもよい。大きさによる分離の一般的な事項についてはメソッズ・オブ・エンザイモロジー65:499−560(1980)に記載されている。
制限酵素により切断されたcDNAフラグメントを、次いでクローニングベクターへ連結する。
ライゲーション手法に関しては、ブラント末端ライゲーションは一般に約15から約30マイクロリットルの約1mM ATP、約0.3から0.6単位(ウエイス(Weiss))のT4DNAリガーゼを含有するバッファー(pH7.5)内で、約14℃にて行われる。分子内粘着末端ライゲーションは、約5から100ナノモルの全末端DNA濃度にて行われる。分子内ブラント末端ライゲーション(通常、約10から30倍モル過剰のリンカーを用いる)は約1マイクロモルの全末端DNA濃度内にて行われる。
(B)NAPをコードするcDNAの調製
上記のように調製された、cDNAライブラリーを含有するクローニングベクターを宿主細胞内に導入し、宿主細胞を培養し、プレート上に撒き、そしてハイブリダイゼーションプローブにて本発明のタンパク質をコードするリコンビナントcDNAを含有するクローンを同定する。好ましい宿主細胞は、ファージクローニングベクターを用いる場合は、細菌である。特に好ましい宿主細胞は大腸菌のY1090株のごとき菌株である。
または、本発明のタンパク質をコードするリコンビナントcDNAを、かかるタンパク質を糸状ファージの外表面上へ発現させ、次いでこのファージを血液凝固に含まれる標的タンパク質へ結合させることによって単離して、得てもよい。
遺伝コードの重要でそしてよく知られた性質は、その重複性−2以上のトリプレットヌクレオチド配列が1のアミノ酸をコードする−である。したがって、多くの異なるヌクレオチド配列が、本発明のNAPの特定のアミノ酸配列をコードするリコンビナントcDNA分子となり得る。かかるヌクレオチド配列は機能的には等価であると考えられる、というのはこれらはすべての生物内で結果的に同じアミノ酸配列を産生するからである。場合によっては、プリンもしくはピリミジンのメチル化された変異体がヌクレオチド配列内に含まれていてもよい。しかしながら、かかるメチル化はいずれにせよコードの関係に影響は及ぼさない。
(1)オリゴヌクレオチドプローブの使用
ハイブリダイゼーションプローブおよびプライマーは所望のリコンビナントcDNAの全体もしくは一部に相補的であるオリゴヌクレオチド配列である。これらは適当な方法にて調製すればよく、例えばホスホトリエステル方法およびホスホジエステル方法(それぞれナラン(Narang,S.A.)ら、メソッズ・イン・エンザイモロジー(Methods in Enzymology)68:90(1979)およびブラウン(Brown)ら、メソッズ・イン・エンザイモロジー68:109(1979)に開示されている)を用いても、またはこれらを自動化した方法を用いてもよい。ある態様においては、ジエチルホスホルアミダイトを出発物質として用い、ビーケージ(Beaucage)らのテトラヘドロン・レターズ(Tetrahedron Letters)22:1859−1862に記載の方法により合成する。オリゴヌクレオチドを修飾した固体支持体上に合成する方法のひとつは、米国特許第4,458,066号に記載されている。プローブは、ホースラディッシュ・パーオキシダーゼのごとき酵素や放射性原子、例えば32Pなどによってラベルして検出を容易にする点において、プライマーとは異なる。合成されたプローブは大腸菌DNAポリメラーゼIを用いたニックトランスレーションにより放射線ラベルするかまたは、アルカリ性ホスファターゼとT4バクテリオファージポリヌクレオチドキナーゼを用いて末端をラベルする。
好ましいハイブリダイゼーションプローブには鉤虫、アンサイロストマ カニナムのごとき線虫から精製されたNAPのアミノ酸配列の一部をコードする一本鎖cDNAのある範囲に対して相補的なオリゴヌクレオチド配列を含む。例えば、図2(AcaNAP5)[配列番号4]または図4(AcaNAP6)[配列番号6]のアミノ酸配列の一部を用いることができる。特に好ましいハイブリダイゼーションプローブには、オリゴヌクレオチド配列が以下のアミノ酸配列:Lys−Ala−Tyr−Pro−Glu−Cys−Gly−Glu−Asn−Glu−Trp[配列番号93]をコードする範囲の一本鎖cDNAと相補的であるものを含む。かかるハイブリダイゼーションプローブには以下のオリゴヌクレオチド配列:AAR GCi TAY CCi GAR TGY GGi GAR AAY GAR TGG[配列番号94](式中、RはAまたはGであり、YはTまたはCであり、iはイノシンである)を含む。本発明のタンパク質をコードする好ましいリコンビナントcDNA分子は、このプローブにハイブリダイズする能力により同定される。
好ましいハイブリダイゼーションプローブはまた、NAP−1[配列番号90]とNAP−4.RC[配列番号91]の対、およびYG109[配列番号88]とYG103[配列番号89]の対を含んでいてもよく、両者はそれぞれ実施例13および12にて説明している。
所望のcDNAを含有するクローンを同定する際に、本発明のタンパク質をコードする遺伝子をリコンビナントcDNAの形態にて大量に産生するために増幅を行ってもよい。
好ましい増幅方法にはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用することを含み、これは例えばPCRテクノロジー、ダブリュウ・エイチ・フリーマン・アンド・カンパニー、ニューヨーク(エーリッヒ、エイチ・エー編集、1992)を参照されたい。PCRは特定のDNA配列を合成するためのインビトロ増幅方法である。PCRにおいては、反対側の鎖、クローンのcDNAの目的とする領域に隣接する領域にハイブリダイズする2つのオリゴヌクレオチドプライマーが用いられる。一連の反復操作には、cDNAを1本鎖へ変性する、プライマーを1本鎖cDNAへアニールさせる、アニールさせたプライマーをDNAポリメラーゼにより伸長させて、数多くのcDNAのコピーを生成させる。得られるcDNAの末端はプライマーの5’末端により規定され、1回のサイクルにより数が約2倍となる。同、第1頁。PCR増幅によって、単離しようとすうリコンビナントcDNA分子のコーディング領域、および制限部位または翻訳シグナル(シグナル配列、スタートコドン、および/またはストップコドン)のごとき情報をコードするさらなるプライマーが得られる。
cDNAの増幅のための好ましい条件にはTaqポリメラーゼを用い、30の温度サイクル:95℃にて1分;50℃にて1分;72℃にて1.5分;を行うことを含む。好ましいプライマーには、プロメガ・コーポレイションより入手されるオリゴ(dT)−NotIプライマー、AATTCGCGGC CGC(T)15[配列番号95]を(i)オリゴヌクレオチド配列:AAR GCi TAY CCi GAR TGY GGi GAR AAY GAR TGG[配列番号94](式中、RはAまたはGであり、YはTまたはCであり、iはイノシンである、または(ii)ニュー・イングランド・バイオラブスより入手されるラムダgt11プライマー#1218、GGTGGCGACG ACTCCTGGAG CCCG[配列番号96]のいずれかの分解プライマーと共に用いることを含む。
記載したように調製されるリコンビナントcDNA分子の核酸配列は、サンガー(Sanger, F)らのジデオキシ法(プロシーデイングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・ユーエスエー74:5463(1977))に基づいて決定すればよく、この方法はさらにメッシング(Messing)らのヌクレイック・アシッズ・リサーチ9:309(1981)にも記載されている。
上記のごとく調製された好ましいリコンビナントcDNA分子は図1、3、7、9、13および14の核酸配列を有している。
(2)NAPcDNAをプローブとして用いる
ハイブリダイゼーションプローブとして特に好ましいものとしてはその他に、線虫、鉤虫アンサイロストマ カニナムより精製されたNAPの実質的に全アミノ酸配列をコードするオリゴヌクレオチド配列がある。特に好ましいプローブにはAcaNAP5およびAcaNAP6遺伝子から誘導されるものが含まれ、これらは以下の核酸配列を含む(AcaNAP5遺伝子):
好ましいハイブリダイゼーションプローブにはまた、NAPのアミノ酸配列の実質的な部分をコードする配列を含み、これには例えばプライマーの組NAP−1[配列番号90]およびNAP−4.RC[配列番号91]を用いて得たPCRフラグメントが例示される(実施例13参照)。
(3)ファージディスプレイの使用
ここに記載するのは本発明のタンパク質をコードするcDNAを全体のcDNAライブラリーから選択する、糸状ファージ上のディスプレーを用いる方法である。現在の糸状ファージ上へのディスプレー方法は、目的とするコーディング領域を、ファージの付着タンパク質および被覆タンパク質をそれぞれコードする遺伝子3または遺伝子8内へのインフレーム挿入させるものである。未知の配列のcDNAの大量の混合物に対してこの方法を行うには、本来的にさまざまな問題があること、および機能的なcDNA生成物のディスプレイを得るための最も実際的な方法はcDNAをその5’末端で融合させることであるということは、当業者には理解されるであろう。実際、十分な大きさのcDNAライブラリーには同じmRNAから誘導されたいくつかのcDNAを含有していてもよいが、これらのうちのいくつかが融合生成物として発現するよう、さまざまな部位において5’末端となるよう切断されている。この線に沿った戦略であって、JunとFosのロイシンジッパーのヘテロダイマーを形成する能力に基づく方法が近年、開示されている(カラメリ(Crameri,R)とスーター(Suter, M)ジーン137:69−75(1993)。
我々はこれに代わり得る新規な、直接的にcDNA生成物をファージの表面へ共有結合させる方法を見いだした;この発見はファージ被覆タンパク質6ののC−末端へ融合したタンパク質が機能的にディスプレイされるという知見に基づくものである。この知見は本明細書に記載したファージミド系、これは機能的にディスプレイされたcDNA産生物の発現を可能にする方法であり、このDNAを次いでディスプレイされたcDNA産生物の産生の為に必要とされるcDNAを含有するファージ粒子を親和性により選択することが可能となる。この系は本発明のタンパク質をコードするcDNAの単離の基礎となる。いったん単離すれば、かかるcDNAを含有するリコンビナントcDNA分子を、本発明のタンパク質を他の発現系において発現させるのに用いることができる。こうして調製されるリコンビナントcDNA分子もまた本発明の範囲内である。
本発明のリコンビナントcDNA分子はcDNAライブラリーを天然物(例としては、鉤虫のごとき線虫)から調製し、このcDNAライブラリーを適当なファージミドベクターへ連結し、宿主細胞をかかるcDNAを含有するベクターにより形質転換し、該宿主細胞を培養し、形質転換した細胞を適当なヘルパーファージに感染させ、宿主細胞培養物よりファージを分離し、その表面上に本発明のタンパク質を発現しているものを分け、これらのファージを単離し、そしてリコンビナントcDNA分子をかかるファージより単離して得る。
ファージミドベクターはpUC119発現ベクター(ビーエイラ(Vieira, J.)とメッシング(Messing, J.)メソッズ・イン・エンザイモロジー153:3−11(1987))を用いて構築される。糸状ファージの表面タンパク質をコードする遺伝子6の5’および3’末端にそれぞれHindIIIおよびSfiI制限部位を付加する修飾をし、3つの前向きプライマーおよび1つの後向きプライマーとともにPCR法を行う。これによって3つのDNAフラグメントが得られるが、これらをさらにその3’および5’末端にNotIおよびBamHIフラグメントが付加されるよう、PCRによって修飾する。3つのDNAフラグメントをHindIIIおよびBamHIにて別々に消化した後、3つのDNAフラグメントをpUC119へライゲートしてpDONG61、pDONG62およびpDONG63発現ベクターを得る。これらのベクターはcDNAをSfiI−NotIフラグメントとして内部に取り込むことができる。
cDNAライブラリーは天然物、例えば線虫より、実施例2、9、および13に記載されたごとく調製される。かかるライブラリーを作成するために好ましい線虫には、アンサイロストマ カニナム、アンサイロストマ デュオデナール、ネカトール アメリカヌスおよびヘリゴモソモイデス ポリギルスのごとき腸線虫を含む。
SfiI−NotIフラグメントとしてのcDNAライブラリーは直接ファージミドベクターpDONG61、pDONG62およびpDONG63に連結させることができる。または、実施例2に記載したごとくラムダgt11ファージベクターに連結させたcDNAライブラリーをPCRにて回収し、電気泳動にて単離し、次いでこれらのベクターに部位特異的に連結させてもよい。後のアプローチにおいて、Taqポリメラーゼを用いるPCRのための好ましい条件は;プライマー、ラムダgt11プライマー#1218、GGTGGCGACG ACTCCTGGAG CCCG(ニュー・イングランド・バイオラブス、ビバリー、MA、USA)[配列番号96]の配列を有する、およびオリゴ(dT)−NotI プライマー、AATTCGCGGC CGC(T)15の配列を有する(プロメガ・コーポレイション)[配列番号95]と共に、95℃1分間、50℃1分間、72℃3分間、の温度サイクル20回、その後65℃で10分間おく、というものである。
宿主細胞をcDNAライブラリーを含有するpDONG発現ベクターにて形質転換させる。好ましい宿主細胞には大腸菌の菌株が含まれ、TG1株が特に好ましい。大腸菌宿主細胞形質転換の好ましい方法には電気穿孔法が含まれる。
形質転換された細胞を37℃で1%グルコースと100マイクログラム/mlのカルベニシリンを添加したLB培地内にて、600nmの光学吸収が0.5の値に達するまで培養し、次いでVCSM13ヘルパーファージ(ストラタジェン)にて感染させる。感染倍率(moi)は20である。
ファージを培養物から遠心分離により分離し、次いでポリエチレングリコール/塩化ナトリウムによる沈殿によって精製する。
本発明のNAPをその表面に発現するファージはNAPが血液凝固系に含まれる標的タンパク質、例えば第Xa因子、に結合する能力を利用して単離することができる。
かかるファージを単離する好ましい方法には以下のステップ:
(1)ビオチンラベルした第Xa因子とファージ溶液とを合わせる;
(2)この混合物をインキュベートする;
(3)ストレプトアビジンでラベルした固相とこの混合物とを接触させる;
(4)固相を混合物と共に培養する;
(5)固相を混合物と分離し、該固相をバッファーに浸けて未結合ファージを除く;
(6)固相を第2のバッファーに接触させ、結合ファージを固相から切り離す;
(7)該ファージを単離する;
(8)宿主細胞を該ファージで形質転換する;
(9)形質転換した宿主細胞を培養する;
(10)形質転換した宿主細胞をVCSM13ヘルパーファージに感染させる;
(11)ファージを宿主細胞培養物から単離する;
(12)(1)から(11)のステップをさらに4回繰り返す、
を含むものである。
かかるファージを単離する特に好ましい方法には、実施例10に詳細に説明した方法を含む。
一本鎖DNAを単離したファージから調製し、糸状ファージ遺伝子6の3’挿入物の配列を決定した。
図9にはファージディスプレイ方法によって単離したリコンビナントcDNA分子AcaNAPc2を示す。AcaNAPc2によりコードされる、本発明のこのタンパク質の演繹されたアミノ酸配列もまた、この図に示した。
(C)リコンビナントNAPの調製
上記のごとく単離された本発明のリコンビナントcDNA分子は、本発明のNAPを発現するのに利用される。一般に、本発明のリコンビナントcDNA分子は発現ベクターに導入され、この発現ベクターは適当な宿主細胞内へ導入され、宿主細胞が培養され、そして発現されたタンパク質が単離される。
発現ベクターは、適当な宿主においてクローンされた遺伝子コピーの転写およびそのmRNAの翻訳に必要なDNA配列である。これらのベクターは原核生物の遺伝子または真核生物の遺伝子のいずれかを、細菌、酵母、哺乳類、植物および昆虫の細胞のごとき様々な細胞内に発現させることができる。タンパク質もまた様々なウイルス系において発現させることができる。
好ましく構築された発現ベクターは、宿主細胞内における自己複製のための複製起点を含有するか、または宿主細胞のクロモソーム内へ挿入し得るものである。かかるベクターには、選択マーカー、限定された数の有用な制限酵素部位、高いコピー数および強いプロモーターもまた含有する。プロモーターはRNAポリメラーゼを調整してDNAと結合させ、RNA合成を開始させるためのDNA配列であり;強いプロモーターによりかかる開始が高頻度で生じる。本発明の好ましい発現ベクターは、本発明のリコンビナントcDNAへ操作可能に連結したものであり、すなわち結合したリコンビナントcDNA分子の複製および該リコンビナントcDNA分子によりコードされるタンパク質の発現の両方を支配し得る。発現ベクターはクローニングベクター、修飾クローニングベクターおよび特別にデザインされたプラスミドまたはウイルスを含んでもよいが、これらに限定されない。
本発明のタンパク質の発現のために適当な宿主細胞としては、細菌、酵母、哺乳類、植物および昆虫細胞が例示される。それぞれのタイプの細胞および株において、特定の発現ベクターが適当であることは以下に示す通りである。
原核生物を本発明のタンパク質の発現に用いてもよい。適当な細菌宿主細胞には大腸菌、バチラス ズブチリスの様々な株およびシュードモナスの様々な株を含む。これらの系においては、宿主細胞と共存性の種から誘導された複製部位および調節配列を含有するプラスミドベクターが利用される。大腸菌に対して適当なベクターには、大腸菌のある株より誘導されたプラスミドであるpBR322(ボリバー(Bolivar)、ジーン2:95(1977))の誘導体である。一般的な原核細胞の調節配列、本明細書では調節配列は転写プロモーター、開始部位、任意にオペレーターをリボソーム結合部位の配列と共に含有しているものと定義する、にはベータラクタマーゼおよびラクトースプロモーター系を含んでおり(チャン(Chang)ら、ネイチャー198:1056(1977))、トリプトファンプロモーター系を含んでおり(ジョーデル(Goeddel)ら、ヌクレイック・アシッズ・リサーチ8:4057(1980))およびラムダ由来PLプロモーターおよびN−遺伝子リボソーム結合部位を含んでいる(シマタカら、ネイチャー292:128(1981))。しかしながら、原核生物と共存性であるプロモーター系であればいずれも使用することができる。好ましい原核生物の発現系には大腸菌およびその発現ベクターを含む。
真核生物を本発明のタンパク質の発現のために使用してもよい。真核生物は通常酵母および哺乳類細胞にて代表される。適当な酵母宿主にはサッカロミセス セレビジュー(Saccharomyces cerevisiae)およびピチア パストリス(Pichia pastoris)を含む。哺乳類宿主細胞にはCOSおよびCHO(チャイニーズハムスターの卵母細胞)細胞が例示される。
真核生物のための発現ベクターは適当な真核生物の遺伝子から誘導したプロモーターを含む。酵母細胞発現ベクターのための適当なプロモーターにはグリコリティック酵素の合成のためのプロモーターを含み、これにはサッカロミセス セレビジューの3−ホスホグリセレートキナーゼ遺伝子(ヒッズマン(Hitzman)ら、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー255:2073(1980))およびメタノールをアルコールピチア パシトリス内のオキシダーゼ遺伝子のごとく、メタノールの代謝のための酵素(ストローマン(Stroman)ら、米国特許第4808537号および4855231号)が含まれる。他の適当なプロモーターにはエノラーゼ遺伝子(オランド(Holland, M.J.)、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー256:1385(1981))またはYEp13から得られるLeu2遺伝子(ブローチ(Broach, J.)ら、ジーン8:121(1978))が挙げられる。
好ましい酵母発現系にはピチア パストリスおよびその発現ベクターが含まれる。ピチア パストリス内に発現されたNAPをコードするcDNAは所望によりC末端にプロリン残基が導入されたNAPタンパク質へと変異させてもよい。しばしばかかるNAPタンパク質は高いレベルで発現され、そして望ましくないタンパク質分解に対してより耐性がある。かかるcDNAのひとつ、およびそのピチア パストリス内への発現を実施例17に示した。
哺乳類細胞発現ベクターのために適当なプロモーターにはSV40からの初期および後期プロモーター(フィアス(Fiers)ら、ネイチャー237:113(1978))または他のウイルスプロモーター、例えばポリオーマ、アデノウイルスII、ウシパピローマウイルスまたは鳥類サルコーマウイルス、から誘導されたものが含まれる。
昆虫細胞発現ベクターのための適当なプロモーターには、スミスらにより米国特許第4745051に開示された系に手を加えたバージョンが挙げられる。この発現ベクターはバキュロウイルスのポリヘドリンプロモーターを含有し、その制御下にあるタンパク質をコードするcDNA分子をおくことができる。
宿主細胞内へ本発明の発現ベクターを導入して、形質転換を行う。形質転換は各種細胞に適した標準的な方法によって行えばよい。塩化カルシウムを用いるカルシウム処理(コーエン(Cohen, S.N.)のプロシーデイングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・ユーエスエー69:2110(1972)に記載)またはRbCl法(マニアチスら、モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリー・マニュアル第254頁、コールド・スプリング・ハーバー・プレス(1982)に記載)を原核生物および実質的な細胞壁バリアを含有する他の細胞に用いる。酵母の形質転換はファン・ゾリンゲン(Van Solingen,P.)ら、ジェイ・バクテール(J.Bacter)130:946(1977)およびシオ(Hsiao,C.L.)らのプロシーデイングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・ユーエスエー76:546(1978)に記載されているように行えばよい。多くの細胞壁を有していない哺乳類の細胞はグラハム(Graham)とファン・デル・イーブ(Van der Eb)バイロロジー(Virology)52:546(1978)に記載のカルシウムホスフェート法を用いて形質転換すればよい。植物細胞はアグロバクテリウム・ツメファシエンスの感染により、ショウ(Shaw,C.)ら、ジーン23:315(1983)に記載されたごとき方法にて形質転換すればよい。大腸菌およびピチア・パストリスを発現ベクターにより形質転換させる好ましい方法には電気穿孔法を含む。
形質転換された宿主細胞を培養するが、培地の種類、温度;酸素濃度、液の状態等の条件は、生物学分野の当業者によく知られている。
本発明のリコンビナントタンパク質は宿主細胞または培地から、生化学分野の当業者によく知られた標準的な方法にて単離する。かかる方法にはクロマトグラフ法を利用する方法を含む。好ましい精製方法には抽出物をポーラス20HQ(Poros20HQ)陰イオン交換性マトリックスまたはポーラス20HS(Poros20HS)陽イオン交換性マトリックス、セファデックス30ゲル濾過マトリックスおよびC18逆相マトリックスを通す連続クロマトグラフ法を含む。かかるクロマトグラフィーの1のカラムを通した後に集められたフラクションは、ヒト血漿の凝結時間を増加させる作用を有するか否かを、PTおよびaPTTアッセイにより調べるか、あるいは比色アッセイにより第Xaアミド分割活性の阻害能を調べて、これらによって選択すればよい。本発明のリコンビナントタンパク質の精製のための好ましい方法の例を実施例3、4、6、8、14および15に示した。
4.NAPを使用する方法
本発明には、哺乳類の血漿を、該血漿が凝固しないよう採取する方法を含み、この方法には血液採取管内へ本発明のタンパク質を、血液を該管内へ流入させた場合に凝血生成を抑制するのに十分な量添加すること、該管内へ哺乳類の血液を吸入すること、赤血球と哺乳類の血漿とを分離することおよび哺乳類の血漿を回収することを含む。
血液採取管には、静脈穿刺によって得られる血液を吸引するための手段として内部が真空である試験管に、ストッパーを付したものを含む。これらを含む好ましい試験管ははボロシリケートガラス製のもので、大きさが例えば10.25×47mm、10.25×50mm、10.25×64mm、10.25×82mm、13×75mm、13×100mm、16×75mm、16×100mm、または16×125mmのものが挙げられる。好ましいストッパーは血液採取針により容易に孔を明けることができ、試験管上に設置した場合に、空気の管内への侵入するを阻止するのに十分な密閉性を付与するものである。
本発明のタンパク質の血液採取管へ添加する際の態様としては、当業者によく知られたさまざまなものとして添加することができ、例えばその液体組成物、その固体組成物、または試験管内で凍結乾燥される液体組成物が挙げられる。管内へ添加する量は、哺乳類の血液が管内へ導入された場合に血液凝固が生じるのを防止するのに十分な量とする。本発明のタンパク質は以下のごとき量を採血管内へ添加する:2から10mlの哺乳類の血液と混合した場合に、このタンパク質の量が凝血塊生成を阻止するのに十分な濃度となる量。典型的には、このような有用な濃度としては約1から約10000nMであり、10から1000nMが好ましい。または、本発明のタンパク質は他の凝血抑制添加剤、例えばヘパリン塩、EDTA塩、クエン酸塩またはオキサレート塩等とともに管内へ添加してもよい。
哺乳類血液を、本発明のタンパク質または該タンパク質と他の凝血抑制添加剤と共に含む血液採取管内へ吸引した後、赤血球を遠心分離により哺乳類の血漿より分離する。遠心分離は医療分野の当業者によく知られた重力、温度および時間条件にて行えばよい。赤血球から血漿を分離するための典型的な条件は遠心力が約100×gから約1500×gであり、温度が約5から約25℃であり、そして約10分から約60分の時間行うというものである。
哺乳類の血漿を別の容器へ注ぐには、ピペットにて吸い上げるまたはその他の医療の当業者によく知られている方法によって集めればよい。
他の観点において、本発明には哺乳類における血栓(凝血塊生成)または血液凝固を予防または抑制する方法を含み、この方法には該哺乳類に治療有効量の本発明のタンパク質または医薬組成物を投与することを含む。
本発明のタンパク質または医薬組成物は、通常哺乳類、特にヒトにインビボにて投与する。本発明のこれらをインビボにて用いる際には、このタンパク質または医薬組成物を様々な経路で投与し得、例えば経口、非経口、静脈内、皮下、筋肉内、結腸内、直腸内、鼻孔内または腹腔内などの経路を含む。投与は好ましくは非経口投与、例えば静脈内投与とし、毎日投与することが好ましい。または、投与は好ましくは経口で行い、例えば錠剤、カプセル、エリキシルにより毎日飲むのが好適である。
本発明の方法を実施するに際して、本発明のタンパク質または医薬組成物は単独で投与しても、互いに混合しても、または他の治療またはインビボ診断用剤と共に投与してもよい。
医療分野の当業者には明らかなように、本発明のタンパク質または医薬組成物の治療有効量は年齢、体重および処置する哺乳類の種類、用いる特定のタンパク質、用いる投与方法および所望の効果と治療上指針などによって変わるものである。これらの要因およびその相互関係によって、治療有効用量レベルの決定、血栓を阻止する所望の結果に到達するのに必要な量の決定は、当業者の業務範囲である。
典型的には、本発明のタンパク質または医薬組成物の投与は低い用量レベルにて始め、用量レベルを上げながらインビボ血栓の阻害という所望の効果が得られるようにするのがよく、その時の濃度が治療有効量となる。本発明のタンパク質は、単独であっても医薬組成物の成分としてであっても、その用量は体重1kgあたり0.01から100mg、より好ましくは体重の約0.01から10mg/kgである。
5.有用性
本発明のタンパク質を上述の通り調製し、選択したものは、インビトロおよびインビボの両方において血液凝固の強い阻害剤として有用である。このように、かかるタンパク質は血液の凝血を防止するためのインビトロ診断試薬として有用であり、また哺乳類のインビボにおける血栓生成または血液凝固を防止するための医薬組成物としても有用である。
本発明のタンパク質は、血液吸引管内の凝血を抑制するためのインビボ診断用試薬として有用である。静脈穿刺により得られる血液を吸引する手段として内部を真空にしてある、ストッパーを付した試験管を用いることは医療業界においてよく知られている。キャステン(Kasten,B.L.)「スペシメン・コレクション」ラボラトリー・テスト・ハンドブック第2版、レキシ−コンプ・インコーポレイテッド、クリーブランドpp16−17(ヤコブス(Jacobs,D.S.)ら編集、1990)。かかる真空試験管は凝血阻害用の添加剤を有していないものであってもよく、そのような場合には、このようなチューブは哺乳類の血清を血液から単離するのに有用となる。または凝血阻止添加剤(ヘパリン塩、EDTA塩、クエン酸塩またはオキサレート塩等)を含有していてもよく、かかる場合には血液より哺乳類の血漿を単離するのに有用である。本発明のタンパク質は強い血液凝固阻害剤であり、したがって血液採取管内へ、その管内へ吸引される哺乳類の血液が凝固するのを防ぐために添加するのに有用である。
本発明のタンパク質は単独で、本発明の他のタンパク質と共に、あるいは他の既知の凝固防止剤、例えばヘパリン塩、EDTA塩、クエン酸塩、オキサレート塩と共に、血液採取管内にて用いられる。
血液採取管内へ添加すべき量、即ち有効量は、哺乳類の血液が管内へ導入された場合に血液凝固の形成を阻害するのに十分な量である。本発明のタンパク質は2から10mlの哺乳類血液と混合した場合に血餅が生成するのを阻止するのに十分な濃度となるような量を添加すればよい。典型的にはこの有効量は血液中における最終濃度が約1から10000nM、好ましくは10から100nMとなる量である。
本発明のタンパク質はまた診断用組成物を製造するために用いてもよい。ひとつの態様において、診断用組成物は本発明のタンパク質を診断用に用い得る担体に溶解する。担体としては、リン酸緩衝生理的食塩水(0.01Mのリン酸ナトリウム+0.15Mの塩化ナトリウム、pH7.2)またはトリス緩衝生理的食塩水(0.05Mのトリス−HCl+0.15Mの塩化ナトリウム、pH8.0)が例示される。他の態様においては、本発明のタンパク質は他の診断において許容される固形担体と、固形診断用組成物の製造方法として当業者によく知られている方法にて混合して調製してもよい。かかる担体としてはバッファー塩が含まれる。
本発明のタンパク質の血液採取管への添加は、当業者によく知られている方法にて遂行すればよく、かかる方法には該タンパク質の液体診断組成物として、該タンパク質の固形診断組成物として、または該タンパク質の液体組成物を血液採取管内で凍結乾燥して、固形診断用組成物の固形塊を生成したものとして添加する方法が含まれる。
本発明の診断用組成物を含有する血液採取管の使用には、有効量のこの診断用組成物と該管内へ誘導される哺乳類の血液とを接触させること含む。典型的には、2から10mlの哺乳類の血液を血液採取管に採取し、血液採取管内で診断用組成物と接触させた場合;有用な量は診断用組成物として処方されているタンパク質の血液試料内の濃度が、凝血塊の生成を阻止するのに十分である濃度となる量である。好ましい有効濃度は約1から10000nM、好ましくは10から1000nMである。
本発明の別の観点からは、本発明のタンパク質は哺乳類の血栓症もしくは血液凝固生成の抑制のための医薬としても有用である。この血栓症もしくは血液凝固の抑制もしくは阻害には、異常な血栓の防止または抑制を含む。
異常な血栓により特徴付けられる症状については医療分野においてよく知られており、哺乳類の動脈および静脈血管系の両方を含む。冠動脈血管系に関しては、異様な血栓症(血栓生成)は確立されたアテローム性動脈硬化性プラークの破裂に認められ、これは急性心筋梗塞および不安定アンギナの主原因となっている。そして、血栓溶解治療または経皮トランスルミナル冠動脈アンギオプラスティー(PTCA)による治療の結果の閉塞性冠動脈血栓生成にもまた認められる。静脈血管系に関しては、異常な血栓症は下肢や腹部に大手術をされた患者にしばしば血栓生成が静脈血管内に認められ、これは治療した下肢への血流量の減少をもたらし、また肺動脈塞栓症体質となる。異常な血栓症はさらに、通常敗血症ショック、ある種のウイルス感染、および癌にかかっている患者の両方の血管系に認められる、播種性血管内凝血異常についても特徴付け、この症状は凝固因子の迅速な消費と全身性の凝血を起こすものであり、その結果、毛細血管中に生命にかかわるような血栓が生成して広く臓器不全を引き起こすものである。
本発明のNAPタンパク質はまた、抗体を生成するための免疫原としても有用である。NAPに対するモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体の両方の抗体は診断方法において、およびNAPのさまざまな生物的液体中の濃度の測定において、有用である。かかる抗体を利用するイムノアッセイを、例えば哺乳類の宿主に寄生虫が感染したかどうかを検出するため、または哺乳類宿主の組織内の寄生虫からNAP検出するために用いることができる。また、このようなイムノアッセイをNAPを組織ホモゲネート、クローン細胞等から検出、単離するのに用いてもよい。
NAPを適当なアジュバントと共に、哺乳類における寄生虫感染に対するワクチンとして用いることもできる。NAPワクチンによる免疫は、寄生虫感染の予防および治療の両方に用いることができる。寄生虫に起因する疾患症状を、かかる寄生虫に感染した動物にたいして抗NAP抗体を投与することによって治療できる。
セリンプロテアーゼ阻害活性を有する本発明のNAPタンパク質はまた、セリンプロテアーゼの阻害が所望される症状またはアッセイにおいて有用である。例えば、セリンプロテアーゼトリプシンまたはエラスターゼを阻害するNAPタンパク質は、それぞれ白血球に媒介される急性膵炎または急性炎症性応答の治療に有用である。
本発明のタンパク質をコードするリコンビナントcDNA分子は、ある態様においては他のcDNA分子であって本発明のタンパク質をコードするものを単離するのにも有用である。他の観点においては、これらは本発明のタンパク質を宿主細胞上に発現させるのにも有用である。
本発明のヌクレオチドプローブは線虫および他の生物からNAPをコードする核酸を同定、単離するのに有用である。さらに、本発明のヌクレオチドプローブは線虫をコード化する核酸の存在を試料、例えば線虫に感染した疑いのある哺乳類の体液または組織から検出するために有用である。プローブは線虫核酸の存在の検出のために直接使用しても、適当な検出のための標識をつけて用いてもよく、またはより間接的な方法、たとえばPCR型反応を用いて、検出のための試料に存在するかもしれない線虫の核酸を増幅してもよい。かかる方法の条件および診断アッセイの条件は当業者は容易に入手することができる。
理解の補助のため、本発明を以下の実施例に基づいてさらに詳細に説明する。かかる本発明に関連する実施例は本発明を特別なものに限定するためのものではない。また、本発明の現在および将来的に開発される発明のバリエーションは当業者が本明細書に記載し、クレイムに記載した本発明の範囲内に入ると考える場合には本発明の範囲に入る。
実施例
実施例1
アンサイロストマ カニナム(Ancylostoma caninum)由来の新規抗凝固タンパク質(NAP)の単離
(A)アンサイロストマ カニナム溶解液の調製
凍結アンサイロストマ カ(Ancylostoma caninum)をAntibody System(テキサス州ベッドフォード)から入手した。鉤虫をホモジネートに使用するまで−80℃で保存した。
鉤虫を液体窒素中で凍結し、乳鉢で粉砕した後、テフロンピストンを付けたPotterSホモジナイザー(B. Braun Melsungen AG,ドイツ)を用いて、ホモジナイゼーション緩衝液中氷上でホモジナイズした。ホモジナイゼーション緩衝液は0.02M Tris-HCl(pH7.4)、0.05M NaCl、0.001M MgCl2、0.001M CaCl2、1.0×10-5M E-64プロテアーゼ阻害剤(Boehringer Mannheim,ドイツ)、1.0×10-5MペプスタチンA(イソバレリル-Val-Val-4-アミノ-3-ヒドロキシ-6-メチル-ヘプタノイル-Ala-4-アミノ-3-ヒドロキシ-6-メチルヘプタン酸,ICN Biomedicals,カリフォルニア州)、1.0×10-5Mキモスタチン(Boehringer)、1.0×10-5Mロイペプチン(ICN)、5×10-5M AEBSF(フッ化4-(2-アミノエチル)-ベンゼンスルホニル,ICN)および5%(v/v)グリセロールを含有した。約4mlのホモジナイゼーション緩衝液を用いて各1gの凍結虫(約500匹)をホモジナイズした。不溶物質を2回の連続的遠心分離段階(4℃,19,000×gmaxで30分間の後、4℃,110,000×gmaxで40分間)によってペレット化した。その上清溶液を0.45マイクロメーター酢酸セルロースフィルター(Corning,ニューヨーク州)に通して清浄化することによりアンサイロストマ カニナム溶解液を得た。
(B)コンカナバリンA−Sepharoseクロマトグラフィー
アンサイロストマ カニナム溶解液(100ml)を、ConA緩衝液(0.02M Tris-HCl, pH7.4, 1M NaCl, 0.002M CaCl2)で予め平衡化しておいた22mlのコンカナバリンA−Sepharose(Pharmacia,スウェーデン)に吸着させた。これは該ゲルの1.6×11cmカラムに3ml/分(90cm/時)の流速で該溶解液を流すことによって行った。カラムは周囲温度であったが、溶解液の受器はこの操作の間ずっと氷槽温度に維持した。次にこのカラムを2カラム体積のConA緩衝液で洗浄した。そのカラム通過液と洗浄液を集め(約150ml)、さらなる加工を行うまで−80℃で保存した。
(C)陰イオン交換クロマトグラフィー
最終濃度12.5mMとなるように固形酢酸ナトリウムを加えることによって、コンカナバリンA−Sepharoseカラムの通過液と洗浄液を緩衝化した。ミリQ水で希釈することによってその導電率を下げ、pHをHClでpH5.3に調節した。pH調節の間に生成した沈殿を15,000×gmax, 4℃,15分の遠心分離によってペレット化した。その上清溶液を0.2マイクロメーター酢酸セルロースフィルター(Corning,ニューヨーク州)に通すことによって清浄化した。
この清浄化した溶液(総体積約600ml)を、陰イオン緩衝液(0.05M酢酸ナトリウム,pH5.3, 0.1M NaCl)で予め平衡化しておいたPoros20 HQ(Perseptive Biosystems,マサチューセッツ州)1×2cmカラムに10ml/分(800cm/時)の流速で流した。このカラムと加えた溶液はこの精製段階中ずっと周囲温度であった。次にそのカラムを10カラム体積の陰イオン緩衝液で洗浄した。
第Xa因子アミド分解検定において阻害因子活性を持つ物質(後述の方法に従って検出する)を、流速5ml/分(400cm/時)の0.55M NaClを含有する陽イオン緩衝液で溶出させた。溶液の試料を第Xa因子アミド分解検定で次のように試験した。検定緩衝液(100mM Tris-HCl pH7.4;140mM NaCl;0.1% BSA)中に第Xa因子と試料の様々な希釈液を含む反応混合物(150マイクロリットル)を96穴プレート中に調製した。ヒト第X因子はEnzyme Research Laboratories(米国インディアナ州サウスベント)から購入し、Bock, P. E., Craig, P. A., Olson, S. T.およびSingh P., Arch. Biochem. Biophys., 273: 375-388(1988)の方法を用いてラッセルクサリヘビ毒で活性化した。周囲温度で30分間インキュベートした後、50マイクロリットルの1mM基質水溶液(p-ニトロアニリド-ジヒドロ-塩化N-アルファ-ベンジルオキシカルボニル-D-アルギニル-L-グリシル-L-アルギニン;S-2765;Chromogenix,スウェーデン国メルンダル)を加え、最終濃度0.2nM第Xa因子および0.25mM S-2765にすることによって酵素反応を開始させた。基質の加水分解をVmax速度プレート測定器(Molecular Devices,米国カリフォルニア州メンロパーク)を用いて405nmで吸光度を連続的に測定することにより監視した。
(D)熱処理
陰イオン交換クロマトグラフィーから得た0.55M NaCl溶出液の半分(3ml)に1M Tris-HCl pH7.5を最終濃度50mMになるように加えて中和し、ガラス管中90℃で5分間インキュベートした後、氷上で急速に冷却した。不溶物質を19,000×gmax, 4℃で20分間の遠心分離によってペレット化した。その上清は第Xa因子アミド分解検定で第Xa因子を阻害する物質を含有していた。この熱処理後、希釈を考慮して、第Xa因子阻害活性の約89%がその上清中に回収された。
(E)Superdex30を用いる分子篩クロマトグラフィー(熱処理段階の代替法)
陰イオン交換クロマトグラフィーから得た0.55M NaCl溶出液の半分(3ml)を24℃の0.01Mリン酸ナトリウムpH7.4, 0.15M NaClで予め平衡化しておいたSuperdex30 PG(Pharmacia,スウェーデン)1.6×66cmカラムにのせた。このクロマトグラフィーを2ml/分の流速で行った。第Xa因子阻害活性(第Xa因子アミド分解検定で決定した)は56〜64mlに溶出した(Kav=0.207)。この溶出体積は分子質量14,000ダルトンの球状タンパク質に予期されるものである。
(F)逆相クロマトグラフィー
コンカナバリンA−Sepharose、陰イオン交換およびSuperdex30(または代替熱処理段階)でのクロマトグラフィーによって分画した鉤虫溶解液を0.46×25cm C18カラム(218TP54 Vydac;カリフォルニア州ヘスペリア)にのせ、それを0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸中の10〜35%アセトニトリルの直線的勾配(流速1ml/分,変化速度0.625%アセトニトリル/分)で展開した。FXa阻害活性(第Xa因子アミド分解検定で決定した)は約30%アセトニトリルで溶出した。このHPLC溶出は215nmのPolychrom 9600検出器セットに接続したVista 5500(Varian,カリフォルニア州)で行った。検出器の信号を同じ企業の4290インテグレーターで積分した。第Xa因子阻害活性を含有する画分を真空乾燥し、PBS(0.01Mリン酸ナトリウムpH7.4, 0.15M NaCl)中に再溶解した。
これらの画分を集め、それを0.46×25cm C18カラム(218TP54 Vydac;カリフォルニア州ヘスペリア)にのせ、0.1%トリフルオロ酢酸中の10〜35%アセトニトリルの直線的勾配(流速1ml/分,先ほどより遅い変化速度0.4%アセトニトリル/分)で展開した。第Xa因子阻害活性を含有する画分を集め、真空乾燥した。
(G)アンサイロストマ カニナム由来のNAPの分子量決定
この実施例に記述したように単離したNAPの推定質量をエレクトロスプレイイオン化質量スペクトル測定法を用いて決定した。
真空乾燥したNAPペレットを50%(v/v)アセトニトリル,1%(v/v)ギ酸に溶解した。質量分析をVG Bio-Q(Fisons Instruments,英国マンチェスター)を用いて行った。
NAP試料をポンプでキャピラリーに通し、その先端で4kVの高電圧をかけた。高電場の影響下で、試料をタンパク質分子を含む小滴状に噴霧した。60℃の中性ガス(N2)の乾燥効果によって、すべての溶媒が蒸発してタンパク質種のみが気状で残るまで小滴の体積をさらに減じた。1回の投入で互いに異なるタンパク質種の群が生じた。四極子分析器で、異なるDa/e(質量/電荷)値を検出した。装置の較正はウマ心臓ミオグロビン(Sigma,ミズーリ州)を用いて行った。
この実施例のA、B、C、DおよびF項に記述したように単離したNAPの推定質量は8734.60ダルトンである。A、B、C、EおよびF項に記述したように単離した天然NAPの推定質量は8735.67ダルトンである。
(H)アンサイロストマ カニナム由来のNAPのアミノ酸配列決定
On Board Microgradient PTH AnalyzerとModel 610A Analysis Systemを装着した476-A Protein/Peptide Sequencer(Applied Biosystems,カリフォルニア州)でアミノ酸決定を行った。残基の定量はシステムコンピューター(Applied Biosystems,カリフォルニア州)でのオンライン分析によって行い、残基の同定はHPLCクロマトグラムの目視分析によって行った。天然NAPのアミノ末端の最初の20アミノ酸を次のように決定した。
Lys Ala Tyr Pro Glu Cys Gly Glu Asn Glu Trp Leu Asp Asp Cys Gly Thr Gln Lys Pro[配列番号97]
試料を還元せず、続いてアルキル化したので、システイン残基はこの分析では直接的には検出されなかった。特定のアミノ酸が同定されなかった位置にシステインを割り当てた。
実施例2
アンサイロストマ カニナム由来のNAPのクローンニングと配列決定
(A)ハイブリッド形成プローブの調製
線虫(アンサイロストマ カニナム)から単離したmRNAから調製したcDNAライブラリーを、アンサイロストマ カニナム由来のNAPのアミノ末端の最初の11アミノ酸:Lys Ala Tyr Pro Glu Cys Gly Glu Asn Glu Trp[配列番号93]に基づく配列を持つ放射性標識変性オリゴヌクレオチドを用いてスクリーニングすることにより、NAPをコードする全長cDNAクローンを単離した。YG99と命名したこの33マー・オリゴヌクレオチドハイブリッド形成プローブは次の配列を持つ:AAR GCi TAY CCi GAR TGY GGi GAR AAY GAR TGG[配列番号94]。(ここに「R」はAまたはGを表し、「Y」はTまたはCを表し、「i」はイノシンを表す)ガンマ-32P-ATP(比活性>7000Ci/mmol;ICN,米国カリフォルニア州コスタメサ)を用いる酵素的5'末端リン酸化(5'末端標識キット;Amersham,英国バッキンガムシャー)によってYG99を放射性標識した後、これをNAPTM10カラム(Pharmacia,スウェーデン国ウプサラ)に通した。
(B)cDNAライブラリーの調製
記述された方法(Promega Protocols and Applications Guide第2版;Promega Corp.,米国ウィスコンシン州マジソン)を用いてcDNAライブラリーを構築した。
成体鉤虫(アンサイロストマ カニナム)をAntibody Systems(テキサス州ベッドフォード)から購入した。ポリ(A+)RNAをQuickPrep mRNA Purification Kit(Pharmacia)を用いて調製した。オリゴ(dT)-Not Iプライマー/アダプター:AATTCGCGGCCGC(T)15[配列番号95](Promega Corp.)とAMV(ニワトリ骨髄芽球症ウイルス)逆転写酵素(Boehringer Mannheim,ドイツ)を用いて、約3マイクログラムのmRNAを逆転写した。二本鎖cDNA合成に使用した酵素は、Life Technologies(米国メリーランド州ガイサースブルク)製の大腸菌DNAポリメラーゼIとRNaseHおよびPharmacia製のT4 DNAポリメラーゼである。
Eco RIメチラーゼで処理した後、得られたcDNAにEco RIリンカー(pCGGAATTCCG)[配列番号98]を連結した(RiboClone Eco RI Linker Ligation System;Promega)。
このcDNAをNot IとEco RIで消化し、1.5%アガロースゲルに通し(Geneclean法(BIO101 Inc.,カリフォルニア州ラジョラ)を用いて大きい物質をすべて溶出させた)、ラムダgt11 Sfi−Not Iベクター(Promega)のEco RI−Not I腕中に同一方向に連結した。インビトロパッケージング(GigapackII-Gold, Stratagene,カリフォルニア州ラジョラ)の後、株Y1090(Promega)を感染させることにより組換えファージを得た。
いくつかの無作為に拾ったクローンを、配列:GGTGGCGACG ACTCCTGGAG CCCGを持つラムダgt11プライマー#1218(New England Biolabs,米国マサチューセッツ州ベバリー)[配列番号96](cDNA挿入物の上流に位置する配列を標的とする)を上述のオリゴ(dT)-Not Iプライマー/アダプターと組み合わせて用いるPCR分析にかけることにより(Boehringer製のTaqポリメラーゼ;30温度サイクル:95℃で1分、50℃で1分、72℃で3分)、このcDNAライブラリーの有用性を立証した。そのクローンの大半は様々なサイズのcDNA挿入物を含有することがわかった。
(C)クローンの同定
約1×106cDNAクローン(HybondTM-N(Amersham)を用いて複製プラーク採取フィルターを調製した)を、次の予備ハイブリッド形成およびハイブリッド形成条件を用いて、放射性標識YG99オリゴヌクレオチドでスクリーニングした:5×SSC(SSC:150mM NaCl, 15mMクエン酸三ナトリウム)、5×デンハルト溶液、0.5% SDS, 100マイクログラム/ml超音波処理魚精子DNA(Boehringer)、42℃で終夜。そのフィルターを37℃の2×SSC, 0.1% SDS中で4回洗浄した。X線フィルムに暴露(約72時間)した後、合計350〜500のハイブリッド形成スポットを同定した。NAP1〜NAP24と命名した24個の陽性クローンを、より低いプラーク密度での第2回ハイブリッド形成にかけた。NAP24以外では、ラムダファージの均一な集団を含有する単一のプラークが同定された。オリゴ(dT)-Not Iプライマー(AATTCGCGGC CGC(T)15)[配列番号95]を(i)YG99または(ii)ラムダgt11プライマー#1218と組み合わせて用いるPCR増幅によって、保持したクローンを分析した(Boehringer製のTaqポリメラーゼ;30温度サイクル:95℃で1分、50℃で1分、72℃で1.5分)。そのクローンの大半(23個中20個)は、オリゴ(dT)-Not I/YG99プライマーセットを使用した場合に約400bpの断片を与え、オリゴ(dT)-Not I/#1218プライマー対を使用した場合には約520bpの断片を与えた。全長であろうと思われるこれらのクローン19個をさらに特徴づけた。
5つのクローンのcDNA挿入物をpGEM-5Zf(−)およびpGEM-9Zf(−)(Promega)上のSfi I−Not I断片としてサブクローニングした。ラムダgt11とpGEM-5Zf(−)のSfi I部位は互いに適合しないので、このベクター上でのクローニングには、2つの5'末端リン酸化オリゴヌクレオチド:pTGGCCTAGCG TCAGGAGT[配列番号99]とpCCTGACGCTA GGCCATGG[配列番号100]をアニーリングさせた後に得られる小さなアダプター断片を使用する必要があった。一本鎖DNAの調製後、配列:AGCGGATAAC AATTTCACAC AGGA[配列番号101]を持つプライマー#1233(New England Biolabs)を用いるジデオキシ連鎖終結法で、これらのcDNAの配列を決定した。5つのクローンすべてが完全な分泌シグナルを含む全長であることがわかった。クローンNAP5、NAP7およびNAP22は同一のコード領域を持つことがわかった。クローンNAP6とNAP11も同一であるが、NAP5型のコード領域とは異なる。図1はNAP5遺伝子のヌクレオチド配列を表し、図2はコード化されているタンパク質AcaNAP5のアミノ酸配列を表す。同様に、図3はNAP6[配列番号5]遺伝子のヌクレオチド配列を表し、図4はコード化されているタンパク質AcaNAP6[配列番号6]のアミノ酸配列を表す。
全長であろうと思われる他のクローン14個を制限分析にかけた。YG99/オリゴ(dT)-Not Iプライマー対で得られる上述の400bp PCR産物を、クローンのNAP5型とNAP6型を識別しうる4つの異なる酵素:Sau 96I、Sau 3AI、Dde IおよびHpa IIで消化した。その結果は14クローン中10クローンがNAP5型(例:NAP4、NAP8、NAP9、NAP15、NAP16、NAP17、NAP18、NAP20、NAP21およびNAP23)であり、残りの4クローンがNAP6型(例:NAP10、NAP12、NAP14およびNAP19)であることを示した。
これらのクローンを、NAP名の直前にAcaという文字を置くことによってアンサイロストマ カニナムからの起源を反映するように再命名した。例えばNAP5はAcaNAP5となり、NAP6はAcaNAP6になるといったふうである。
実施例3
P. pastorisにおける組換えAcaNAP5の生産と精製
(A)発現ベクター構築
大腸菌/P. pastorisシャトルベクターpHILD2を含むPichia pastoris酵母発現系はいくつかの米国特許に記述されている。例えば米国特許第5330901号、第5268273号、第5204261号、第5166329号、第5135868号、第5122465号、第5032516号、第5004688号、第5002876号、第4895800号、第4885242号、第4882279号、第4879231号、第4857467号、第4855231号、第4837148号、第4818700号、第4812405号、第4808537号、第4777242号および第4683293号を参照のこと。
P. pastorisにおける組換えAcaNAP5の直接発現と分泌に使用したpYAM7SP8ベクターは、同じ一般構造を持つpHILD2プラスミド(Despreaux, C. W.およびManning, R. F., Gene 131: 35-41(1993))の誘導体である。P. pastorisにおける発現と染色体組込みに必要なpHILD2の転写要素および組換え要素(Stroman, D. W.ら,米国特許第4855231号を参照のこと)に加えて、このベクターはアルコールオキシダーゼ(AOX1)プロモーターの下流に挿入されたキメラプレプロリーダー配列を含有する。そのプレプロリーダーは、合成19アミノ酸プロ配列に融合したP. pastoris酸性ホスファターゼ(PHO1)分泌シグナルからなる。このプロ配列は、サッカロミセス・セレビシェ(Saccharomyces cerevisiae)アルファ因子リーダー配列に基づいてClementsら(Gene 106: 267-272(1991))によって設計された2つの19-aaプロ配列の1つである。そのプレプロリーダー配列のすぐ下流に、酵素Stu I、Sac II、Eco RI、Bgl II、Not I、Xho I、Spe IおよびBam HIの認識配列を持つ合成マルチクローニング部位を作成して、外来遺伝子のクローニングを容易にした。Pichia pastoris内でpYAM7SP8から発現されるNAPは最初にプレプロ産物として翻訳され、続いてその宿主細胞によるプロセシングを受けてプレおよびプロ配列が除去される。
このベクターの構造を図12に示す。シグナル配列(S)は次の核酸配列を持つ:ATG TTC TCT CCA ATT TTG TCC TTG GAA ATT ATT TTA GCT TTG GCT ACT TTG CAA TCT GTC TTC GCT[配列番号102]。プロ配列(P)は次の核酸配列を持つ:CAG CCA GGT ATC TCC ACT ACC GTT GGT TCC GCT GCC GAG GGT TCT TTG GAC AAG AGG[配列番号103]。マルチクローニング部位(MCS)は次の核酸配列を持つ:CCT ATC CGC GGA ATT CAG ATC TGA ATG CGG CCG CTC GAG ACT AGT GGA TCC[配列番号104]。
AcaNAP5 cDNAを含有するpGEM-9Zf(−)ベクター(Promega)を用い、増幅(「PCRレスキュー」)によって、成熟AcaNAP5タンパク質をコードする領域を単離した(New England Biolabs(マサチューセッツ州ベバリー)製のVentポリメラーゼを使用;20温度サイクル:94℃で1分間、50℃で1分間、72℃で1.5分間)。次のオリゴヌクレオチドプライマーを用いた:
YG101:GCTCGCTCTA−GAAGCTTCAG−ACATGTATAA−TCTCATGTTG−G[配列番号105]
YG103:AAGGCATACC−CGGAGTGTGG−TG[配列番号89]。
C末端配列を標的とするYG101プライマーはXba IおよびHin dIII制限部位(下線部)を含む非アニーリング伸長部を含有する。
Xba I酵素による消化後、予期されるサイズを持つ増幅産物をゲルから単離し、続いて酵素的にリン酸化した(New England Biolabs(マサチューセッツ州ベバリー)製のT4ポリヌクレオチドキナーゼ)。キナーゼの熱不活化(70℃で10分)後、平滑末端/Xba I断片を発現用のベクターpYAM7SP8中に指向的にクローニングした。pYAM7SP8由来の受容ベクター断片をStu I−Spe I制限によって調製し、アガロースゲルから精製した。その連結混合物で大腸菌株WK6(Zell, R.およびFritz, H.-J., EMBO J., 6: 1809-1815(1987))を形質転換し、アンピシリン耐性クローンを選択した。
制限分析に基づいて、予期されるサイズの挿入物を含有するプラスミドクローン(pYAM7SP-NAP5と命名)をさらなる特徴づけのために保持した。クローンpYAM7SP-NAP5の配列決定によって、プレプロリーダーシグナルと融合した成熟AcaNAP5コード領域の正確な挿入が、構築法によって予想される通りに、そしてコード領域中に望ましくない突然変異を伴うことなく、確認された。
(B)P. pastorisにおける組換えAcaNAP5の発現
Pichia pastoris株GTS115(his4)はStroman, D. W.ら,米国特許第4855231号に記述されている。すべてのP. pastoris操作を基本的にStroman, D. W.ら,米国特許第4855231号に記述されているように行った。
約1マイクログラムのpYAM7SP-NAP5プラスミドベクターDNAを標準的な電気穿孔法(エレクトロポレーション)を用いて株GTS115中にエレクトロポレートした。そのプラスミドは予めSal I消化によって直鎖化しておいたもので、これによりプラスミドのhis4染色体遺伝子座への標的と組込みが理論的に促進される。
AcaNAP5高発現株の選択は基本的に下記のように行った。His+形質転換体をMDプレート(アミノ酸非含有Yeast Nitrgen Base(DIFCO), 13.4g/l;ビオチン,400マイクログラム/L;D-グルコース,20g/l;寒天,15g/l)上で回収した。エレクトロポレーションに由来する単一コロニー(n=60)を96穴プレートのウェル中のFM22−グリセロール−PTM1培地100マイクロリットルに接種し、プレート攪拌器上30℃で24時間生育させた。FM22−グリセロール−PTM1培地1リットルはKH2PO4 42.87g、(NH4)2SO4 5g、CaSO4・2H2O 1g、K2SO4 14.28g、MgSO4・7H2O 11.7g、100ml溶液として滅菌したグリセロール50gおよびフィルター滅菌したPTM1微量ミネラル混合物1mlを含有する。その培地のFM22部分は、KOHでpH4.9に調節しフィルター滅菌した900ml溶液として調製した。PTM1混合物1リットルはCuSO4・5H2O 6g、KI 0.8g、MnSO4・H2O 3g、NaMoO4・2H2O 0.2g、H3BO3 0.02g、CoCl2・6H2O 0.5g、ZnCl2 20g、H2SO4 5ml、FeSO4・7H2O 65g、ビオチン0.2gを含有する。
次に細胞をペレット化し、新鮮なFM22−メタノール−PTM1培地(AOX1プロモーターの発現を誘導するためにグリセロール50gを0.5%(v/v)メタノールに置き換えた点以外は上と同じ組成)に再懸濁した。30℃でさらに24時間インキュベートした後、その微量培養の上清を分泌されたAcaNAP5の存在について試験した。AcaNAP5を高レベルに合成および分泌する(実施例1に記述したアミド分解第Xa因子検定で測定した時に、培養培地中に高い第Xa因子阻害活性が出現することによって示される)2つのクローンを選択した。同じ手法を用いるが今度は振とうフラスコレベルで行う2回目のスクリーニングの後、1つの単離宿主細胞を選択し、それをP. pastoris GTS115/7SP-NAP5と命名した。
宿主細胞GTS115/7SP-NAP5は野生型メタノール資化表現型(Mut+)を持つことが示された。これはGTS115染色体への発現カセットの組込みがゲノムAOX 1遺伝子の機能性を変化させなかったことを立証している。
これに続く組換えAcaNAP5物質の生産をStroman, D. W.ら,米国特許第4855231号に記述されているように振とうフラスコ培養で行った。その組換え産物を下記のようにPichia pastoris細胞上清から精製した。
(C)組換えAcaNAP5の精製
(1)陽イオン交換クロマトグラフィー
発現後、GTS115/75SP−NAP5の培養上清(100ml)を16000r.p.m.(約30,000×g)で20分間遠心分離し、次いでpHを1N HClでpH3に調節した。ミリQ水を添加することによってその上清の導電率を10mS/cm未満に下げた。その希釈上清を0.22マイクロメーター酢酸セルロースフィルター(Corning Inc.,米国ニューヨーク州コーニング)に通すことによって清浄化した。上清の全量(約500ml)を、陽イオン緩衝液(0.05Mクエン酸ナトリウム,pH3)で予め平衡化しておいたPoros20 HS(Perseptive Biosystems,マサチューセッツ州)1×2cmカラムに5ml/分(400cm/時)の流速でのせた。カラムと試料はこの精製段階中ずっと周囲温度であった。次にそのカラムを50カラム体積の陽イオン緩衝液で洗浄した。第Xa因子アミド分解検定で阻害活性を持つ物質を1M NaClを含む陽イオン緩衝液で溶出させた(流速2ml/分)。
(2)Superdex30を用いる分子篩クロマトグラフィー
陽イオン交換カラムから得た阻害物質を含む1M NaCl溶出液(3ml)を、0.01Mリン酸ナトリウム(pH7.4),0.15M NaClで予め平衡化した周囲温度のSuperdex30 PG(Pharmacia,スウェーデン)1.6×66cmカラムにのせた。そのクロマトグラフィーを2ml/分の流速で行った。第Xa因子阻害活性は56〜64mlに溶出した(Kav=0.207)。これは天然分子について決定したのと同じ溶出体積である(実施例1E項)。
(3)逆相クロマトグラフィー
ゲルろ過クロマトグラフィーで得た画分1mlを0.46×25cm C18カラム(218TP54Vydac;カリフォルニア州ヘスペリア)にのせ、次に0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸中の10〜35%アセトニトリルの直線的勾配(流速1ml/分,変化速度0.4%アセトニトリル/分)で展開した。実施例1のように検定した第Xa因子阻害活性は30〜35%アセトニトリル付近に溶出し、いくつかの画分中に存在した。HPLC溶出を実施例1と同じ系で行った。このカラムでの数回の溶出から得られる第Xa因子阻害活性含有画分を集め、真空乾燥した。
(4)組換えAcaNAP5の分子量決定
この実施例の(1)項から(3)項に記述したように単離した主要成分の推定質量を、実施例1と同じエレクトロスプレイイオン化質量スペクトル測定系を用いて決定した。
組換えAcaNAP5の推定質量は8735.69ダルトンであった。
(5)組換えAcaNAP5のアミノ酸配列決定
この実施例の(1)項から(3)項による精製後、Pichia pastorisから得た組換えAcaNAP5を実施例1に記載のアミノ酸配列分析にかけた。AcaNAP5のアミノ末端の最初の5アミノ酸はLys-Ala-Tyr-Pro-Glu[配列番号106]と決定された。この配列は天然NAPタンパク質と同一であった(実施例1参照)。
実施例4
P. pastorisにおける組換えAcaNAP6の生産と精製
(A)発現ベクター構築
発現ベクターpYAM7SP-NAP6を実施例3のpYAM7SP-NAP5と同じ方法で作成した。
(B)P. pastorisにおける組換えAcaNAP6の発現
ベクターpYAM7SP-NAP6を用いてPichia株GTS115(his4)を実施例3に記述のごとく形質転換した。
(C)AcaNAP6の精製
発現ベクターpYAM7SP-NAP6で形質転換したPichia株GTS115(his4)から発現される組換えAcaNAP6を実施例3のAcaNAP5と同様に精製した。
実施例3に記述のごとく決定した組換えAcaNAP6の推定質量は8393.84ダルトンであった。
AcaNAP6調製物の主成分は次のアミノ末端を持っていた:Lys-Ala-Tyr-Pro-Glu[配列番号106]。
実施例5
COS細胞における組換えプロAcaNAP5の発現
(A)発現ベクター構築
AcaNAP5 cDNAをサブクローニングしたpGEM-9Zf(−)ベクター(Promega Corporation,米国ウィスコンシン州マジソン)を、天然の分泌シグナルを含む全AcaNAP5コード領域のPCRレスキュー用の標的とした(New England Biolabs(米国マサチューセッツ州ベバリー)製のVentポリメラーゼを使用;20温度サイクル;95℃で1分、50℃で1分、72℃で1.5分)。使用したオリゴヌクレオチドプライマーは次の通りである:(1)YG101(NAPをコードする遺伝子の3'末端を標的とし、配列GCTCGCTCTAGAAGCTTCAG ACATGTATAA TCTCATGTTG G[配列番号105]を持つ)および(2)YG102(NAPをコードする遺伝子の5'末端を標的とし、配列GACCAGTCTA GACAATGAAG ATGCTTTACG CTATCG[配列番号107]を持つ)。これらのプライマーはXba I制限部位(下線部)を含む非アニーリング伸長部を含有する。
Xba I酵素での消化後、予期されるサイズを持つ増幅産物をアガロースゲルから単離し、次いで発現用pEF-BOSベクター(Mizushima, S.およびNagata, S., Nucl. Acids Res., 18: 5322(1990))の約450塩基対Xba Iスタッファー断片と置換した。この受容ベクター断片はXba I消化によって調製し、アガロースゲルから精製した。
大腸菌株WK6(Zell, R.およびFritz, H.-J., EMBO J., 6: 1809-1815(1987))を連結混合物で形質転換した。無作為に拾い上げたアンピシリン耐性形質転換体30個をPCR分析にかけた(Lif e Technologies Inc.(米国メリーランド州ガイサースブルク)製のTaqポリメラーゼ;次の温度プログラムによる30増幅サイクル:95℃で1分、50℃で1分、72℃で1分)。使用したオリゴヌクレオチドプライマーは次の通りである:(i)YG103(配列:AAGGCATACC CGGAGTGTGG TG[配列番号89]を持ち、成熟NAPをコードする領域のアミノ末端と合致する)および(ii)YG60(配列:GTGGGAGACC TGATACTCTC AAG[配列番号108]を持ち、挿入部位の下流(すなわちpEF-BOS発現カセットの3'非翻訳領域中)のベクター配列を標的とする)。所望の方向に挿入物を保持するクローンのみが予期される長さ(約250塩基対)のPCR断片を与えることができる。そのようなクローン2つを配列決定によってさらに特徴づけたところ、所望のXba I挿入物を含むことがわかった。そのクローンの1つ(pEF-BOS-NAP5と命名した)を用いてCOS細胞をトランスフェクトした。
(B)COS細胞のトランスフェクション
COS-7細胞(ATCC CRL 1651)を、DEAEデキストランを用いて、pEF-BOS-NAP5、無関係な挿入物を含有するpEF-BOSあるいはDNAなし(疑似トランスフェクション)でトランスフェクトした。DEAEデキストラン法では次の培地とストック溶液を用いた:
(1)COS培地:DMEM;10% FBS(56℃で30分間インキュベートしたもの);0.03% L-グルタミン;ペニシリン(50I.U./ml)およびストレプトマイシン(50マイクログラム/ml)(すべてLife Technologies製)。
(2)MEM-HEPES:製造者の指示に従って再構成したLife Technologies Inc.製のMEM培地;最終濃度25mMのHEPESを含有する;ろ過(0.22マイクロメーター)前にpH7.1に調節。
(3)DNA溶液:MEM-HEPES 3mlあたり6マイクログラムのDNA。
(4)DEAEデキストラン溶液:MEM-HEPES 3mlあたり30マイクロリットルのDEAEデキストラン貯蔵液(Pharmacia(スウェーデン国ウプサラ);H2O中100mg/ml)。
(5)トランスフェクション混合物:3mlのDEAEデキストラン溶液をDNA溶液3mlに加え、その混合物を周囲温度で30分間静置する。
(6)クロロキノン溶液:クロロキノン貯蔵液(Sigma(米国ミズーリ州セントルイス);水中10mM;0.22マイクロメーター膜を通したもの)の1:100希釈液(COS培地中)。
COS細胞の一時的トランスフェクションを次のように行った。175cm2 Nunc TC-フラスコ(Life Technologies Inc.)中で培養したCOS細胞(約3.5×106)をMEM-HEPESで1回洗浄した。6mlのトランスフェクション混合物を洗浄した細胞にピペットで加えた。周囲温度で30分間のインキュベーション後、48mlのクロロキノン溶液を加え、細胞を37℃でさらに4時間インキュベートした。細胞を新鮮なCOS培地で1回洗浄し、最後に50mlの同培地中37℃でインキュベートした。
(C)トランスフェクトしたCOS細胞の培養
トランスフェクションの3、4および5日後に、培養上清の試料を、実施例1の方法に従って第Xa因子アミド分解検定で試験した。その結果は、pEF-BOS-NAP5でトランスフェクトした細胞の培養上清中に第Xa因子阻害活性が蓄積しつつあることを明白に立証した。
トランスフェクションの5日後にCOS細胞培養上清を収集し、NAPタンパク質を実施例6のように精製した。
実施例6
組換えプロAcaNAP5の精製
(A)陰イオン交換クロマトグラフィー
プロAcaNAP5を含有するCOS培養上清を1500r.p.m.(約500×g)で10分間遠心分離した後、固形酢酸ナトリウムを最終濃度50mMになるよう加えた。次のプロテアーゼ阻害剤を加えた(プロテアーゼ阻害剤はすべてICN Biochemcals Inc.(米国カリフォルニア州コスタメサ)製):1.0×10-5MペプスタチンA(イソバレリル-Val-Val-4-アミノ-3-ヒドロキシ-6-メチル-ヘプタノイル-Ala-4-アミノ-3-ヒドロキシ-6-メチルヘプタン酸)、1.0×10-5Mロイペプチン、5×10-5M AEBSF(フッ化4-(2-アミノエチル)-ベンゼンスフホニル)。pHをHClでpH5.3に調節した。その上清を0.2マイクロメーター酢酸セルロースフィルター(Corning Inc.,米国ニューヨーク州コーニング)に通すことによって清浄化した。
清浄化した上清(総体積約300ml)を、陰イオン緩衝液(0.05M酢酸ナトリウム,pH5.3、0.1M NaCl)で予め平衡化しておいたPoros20 HQ(Perseptive Biosystems,マサチューセッツ州)1×2cmカラムに10ml/分(800cm/時)の流速でのせた。カラムと試料はこの精製段階中ずっと周囲温度であった。次にそのカラムを少なくとも10カラム体積の陰イオン緩衝液で洗浄した。第Xa因子アミド分解検定で阻害活性を持つ物質を0.55M NaClを含有する陰イオン緩衝液で溶出させ(流速5ml/分(400cm/時))、それを集めた。
(B)Superdex30を用いる分子篩クロマトグラフィー
陰イオン交換クロマトグラフィーで得た0.55M NaCl溶出液(3ml)を、24℃の0.01Mリン酸ナトリウム(pH7.4),0.15M NaClで予め平衡化しておいたSuperdex30 PG(Pharmacia,スウェーデン)1.6×66cmカラムにのせた。クロマトグラフィーを2ml/分の流速で行った。第Xa因子アミド分解検定で阻害的な物質は56〜64mlに溶出した(Kav=0.207)。これは天然分子について決定した溶出体積と全く同じであった。
(C)熱処理
第Xa因子阻害活性を持つ画分の全量をガラス管中90℃で5分間インキュベートした後、氷上で急速に冷却した。不溶物質を19,000×gmax, 4℃で20分の遠心分離によってペレット化した。その上清は第Xa因子阻害活性のすべてを含有した。
(D)逆相HPLCクロマトグラフィー
熱処理した試料の上清を0.46×25cm C18カラム(218TP54 Vydac;カリフォルニア州ヘスペリア)にのせ、それを0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸中の10〜35%アセトニトリルの直線的勾配(流速1ml/分,変化速度0.4%アセトニトリル/分)で展開した。第Xa因子阻害活性は約30%アセトニトリルで溶出した。HPLC溶出は実施例1と同じ系で行った。第Xa因子阻害活性含有画分を真空乾燥した。
(E)分子量決定
この実施例のA〜D項に記述のごとく単離した組換えプロAcaNAP5の推定質量を実施例1と同じエレクトロスプレイイオン化質量スペクトル測定法で決定した。
組換えプロAcaNAP5の推定質量は9248.4ダルトンであった。
(F)アミノ酸配列決定
精製後、COS細胞から得た組換えプロAcaNAP5をアミノ酸分析にかけて、実施例1に記述の如くそのアミノ末端配列を決定した。プロAcaNAP5のアミノ末端の最初の9アミノ酸は:Arg Thr Val Arg Lys Ala Tyr Pro Glu[配列番号109]であると決定された。天然のAcaNAP5タンパク質(実施例1参照)と比較すると、プロAcaNAP5はそのN末端に4つの追加アミノ酸を保持している。プロAcaNAP5のアミノ酸配列を図5に示す。
実施例7
COS細胞における組換えプロAcaNAP6の発現
実施例5に記述したプロAcaNAP5の場合と基本的に同様にして、プロAcaNAP6をCOS細胞中で一時的に生産した。
分泌シグナルを含むAcaNAP6コード領域のPCRレスキューに、AcaNAP5に用いたものと同一の2つのオリゴヌクレオチドプライマーを使用した:(1)YG101(該遺伝子の3'末端を標的とし、配列GCTCGCTCTA GAAGCTTCAG ACATGTATAA TCTCATGTTG G[配列番号105]を持つ)および(2)YG102(該遺伝子の5'末端を標的とし、配列GACCAGTCTA GACAATGAAG ATGCTTTACG CTATCG[配列番号107]を持つ)。YG101プライマーはAcaNAP6を標的として用いた時に非合致ヌクレオチドを含有する(下線を付したT残基;図1と図3を比較のこと)。このミスマッチはATA IleコドンによるATT Ileコドンの置換をもたらす。このミスマッチは増幅効率に著しい影響を与えなかった。
実施例5に次の変更を加えた:COS細胞のトランスフェクションの24時間後(これは実施例5のB項に記述されている)、10% FBSを含有するCOS培地をDMEMとNutrient Mixture Ham's F-12(Life Technologies)の1:1混合物からなる50mlの培地で置き換える。次に細胞を37℃でさらにインキュベートして、第Xa因子阻害活性の生産を実施例5のように検出した。
実施例8
組換えプロAcaNAP6の精製
(A)陰イオン交換クロマトグラフィー
プロAcaNAP6を含有するCOS培養上清を1500r.p.m.で10分間遠心分離した後、固形酢酸ナトリウムを最終濃度50mMになるよう加えた。次のプロテアーゼ阻害剤を加えた(プロテアーゼ阻害剤はすべてICN Biochemcals Inc.(米国カリフォルニア州コスタメサ)製):1.0×10-5MペプスタチンA(イソバレリル-Val-Val-4-アミノ-3-ヒドロキシ-6-メチル-ヘプタノイル-Ala-4-アミノ-3-ヒドロキシ-6-メチルヘプタン酸)、1.0×10-5Mロイペプチン、5×10-5M AEBSF(フッ化4-(2-アミノエチル)-ベンゼンスフホニル)。pHをHClでpH5.3に調節した。その上清を0.2マイクロメーター酢酸セルロースフィルター(Corning Inc.,米国ニューヨーク州コーニング)に通すことによって清浄化した。
清浄化した上清(総体積約450ml)を、陰イオン緩衝液(0.05M酢酸ナトリウム,pH5.3、0.1M NaCl)で予め平衡化しておいたPoros20 HQ(Perseptive Biosystems,マサチューセッツ州)1×2cmカラムに10ml/分(800cm/時)の流速でのせた。カラムと試料はこの精製段階中ずっと周囲温度であった。次にそのカラムを少なくとも10カラム体積の陰イオン緩衝液で洗浄した。第Xa因子アミド分解検定で阻害活性を持つ物質を0.55M NaClを含有する陰イオン緩衝液で溶出させ(流速5ml/分(400cm/時))、それを集めた。
(B)Superdex30を用いる分子篩クロマトグラフィー
陰イオン交換クロマトグラフィーで得た0.55M NaCl溶出液(3ml)を、24℃の0.01Mリン酸ナトリウム(pH7.4),0.15M NaClで予め平衡化しておいたSuperdex30 PG(Pharmacia,スウェーデン)1.6×66cmカラムにのせた。クロマトグラフィーを2ml/分の流速で行った。第Xa因子アミド分解検定で阻害的な物質は56〜64mlに溶出した(Kav=0.207)。これは天然NAPについて決定した溶出体積と全く同じであった。
(C)逆相HPLCクロマトグラフィー
ゲルろ過で得た画分を0.46×25cm C18カラム(218TP54 Vydac;カリフォルニア州ヘスペリア)にのせ、それを0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸中の10〜35%アセトニトリルの直線的勾配(流速1ml/分,変化速度0.4%アセトニトリル/分)で展開した。実施例1に従って検定した第Xa因子阻害活性は約30%アセトニトリルで溶出した。HPLC溶出は実施例1と同じ系で行った。第Xa因子阻害活性含有画分を真空乾燥した。
(D)分子量決定
この実施例のA〜C項に記述のごとく単離した組換えプロAcaNAP6の推定質量を実施例1と同じエレクトロスプレイイオン化質量スペクトル測定系で決定した。組換えプロAcaNAP6の推定質量は8906.9ダルトンであった。
(E)アミノ酸配列決定
精製後、COS細胞から得た組換えプロAcaNAP6を実施例1に記載のアミノ酸配列分析にかけた。プロAcaNAP6のアミノ末端の最初の5アミノ酸は:Arg Thr Val Arg Lys[配列番号110]であると決定された。天然のNAPタンパク質(実施例1参照)と比較すると、プロAcaNAP6はそのアミノ末端に4つの追加アミノ酸を保持している。プロAcaNAP6のアミノ酸配列を図6に示す[配列番号8]。
実施例9
他のNAPタンパク質をコードする遺伝子を単離するためのNAP DNA配列の使用
実施例2で得たAcaNAP5およびAcaNAP6 cDNA配列を用い、交差ハイブリッド形成によって他の寄生虫種から関連する分子を単離した。
AcaNAP5およびAcaNAP6 cDNAを含有するpGEM-9Zf(−)ベクター(Promega)を、成熟NAPタンパク質をコードする領域のPCRレスキューに用いた(Life Technologies製のTaqポリメラーゼ;20温度サイクル:95℃で1分間、50℃で1分間、72℃で1.5分間)。使用したオリゴヌクレオチドプライマーは次の通りである:
(1)YG109(NAPをコードするcDNAのC末端配列を標的とし、配列:TCAGACATGT-ATAATCTCAT-GTTGG[配列番号88]を持つ)および(2)YG103(配列:AAGGCATACC-CGGAGTGTGG-TG[配列番号89]を持つ)。YG109プライマーはAcaNAP6を標的として用いたときに1つのヌクレオチドミスマッチを含有する(下線を引いたT残基;図1と図3に示した配列を比較のこと)。これは増幅効率に著しい影響を与えなかった。正しい大きさのPCR産物(約230塩基対)を共に1.5%アガロースゲルから単離した。等モル混合物をランダムプライマー伸長(T7 QuickPrimeキット;Pharmacia)によって放射性標識した後、Bio-Spin 30カラム(Bio-Rad,米国カリフォルニア州リッチモンド)に通した。
アンサイロストマ セイラニカム(Ancylostoma ceylanicum;Ace)、アンサイロストマ デュオデナール(Ancylostoma duodenale;Adu)およびヘリグモソモイデス ポリギルス(Heligmosomoides polygyrus;Hpo)cDNAライブラリーを、実施例2のアンサイロストマ カニナムの場合と基本的に同様にして調製した。
アンサイロストマ セイラニカムとヘリグモソモイデス ポリギルスはD. I. Pritchard博士(ノッチンガム大学生命科学部(英国ノッチンガム))から購入した。アンサイロストマ デュオデナールはG. A. Schad博士(ペンシルバニア大学病理学部獣医学校(米国ペンシルバニア州フィラデルフィア))から購入した。
いずれの場合も、cDNAをラムダgt11中のEco RI−Not I断片として指向的にクローン化した。各ライブラリーから得られる約2×105cDNAクローン(複製プラーク採取フィルターをHybondTM-N(Amersham)を用いて調製した)を、放射性標識したAcaNAP5およびAcaNAP6断片で、次の予備ハイブリッド形成およびハイブリッド形成条件を用いてスクリーニングした:5×SSC(SSC:15mM NaCl, 15mMクエン酸三ナトリウム)、5×デンハルト溶液、0.5% SDS、20%ホルムアミド、100マイクログラム/ml超音波処理魚精子DNA(Boehringer)、42℃で終夜。フィルターを37℃の2×SSC, 0.1% SDS中で30分間、4回洗浄した。X線フィルムに暴露した後(約60時間)、AceとAduの場合は、合計100〜200のハイブリッド形成スポットが同定された。Hpo cDNAライブラリーの場合は極めてかすかなスポットが少数見えた。各ライブラリーについて8つの陽性物を、単一プラークが単離できるようにより低いプラーク密度での第2ハイブリッド形成にかけた。
保持したクローンを、オリゴ(dT)-Not Iプライマー(Promega;これは第1鎖cDNAを調製する際に使用したものと同じプライマーである;実施例2参照)[配列番号95]を配列:GGTGGCGACG ACTCCTGGAG CCCG[配列番号96]を持つラムダgt11プライマー#1218(New England Biolabs;プライマー#1218はcDNA挿入部位の上流に位置するラムダ配列を標的とする)と組み合わせて用いるcDNA挿入物のPCR増幅によって、さらに特徴づけた。PCR増幅は次のように行った:Boehringer製のTaqポリメラーゼ;30温度サイクル:95℃で1分、50℃で1分、72℃で1.5分。PCR産物のゲル電気泳動分析は、AcaNAP5 cDNAと大体同じサイズのcDNA(例:400〜500bp)が各種について得られることを明白に立証した。これらのAcaNAP5サイズのcDNAに加えて、いくつかのAceおよびAdu cDNAは約700bp長と見積もられた。
500bpまたは800bp挿入物を含有するいくつかのクローンを配列決定のために選択した。この目的のため、cDNA挿入物をpGEM型ファージミド(Promega;詳細については実施例2を参照のこと;これは一本鎖DNAの調製を可能にする)中にSfi I−Not I断片としてサブクローニングした。配列決定の結果、6つの異なる新しいNAP様タンパク質が同定され、これらを次のように命名した:AceNAP4、AceNAP5、AceNAP7、AduNAP4、AduNAP7およびHpoNAP5。これらcDNAのヌクレオチド配列とコード化されているタンパク質の推定アミノ酸配列を図7A(AceNAP4[配列番号9])、図7B(AceNAP5[配列番号10])、図7C(AceNAP7[配列番号11])、図7D(AduNAP4[配列番号12])、図7E(AduNAP7[配列番号13])および図7F(HpoNAP5[配列番号14])に示す。それぞれ約700bp長のAceNAP4[配列番号9]およびAduNAP7[配列番号13]cDNAは、それぞれ2つのNAPドメインを組込んだタンパク質をコード化しており、他の単離cDNAは単一のNAPドメインを持つタンパク質をコードしていた。AduNAP4 cDNAクローン[配列番号12]は全長ではなかった(すなわちコード領域の5'末端部分を欠くクローンであった)。しかしNAP関連物質ファミリーとのアミノ酸配列相同性に基づいて正しい読み枠を割り当てることができた。
同定したcDNA配列を用いることにより、実施例3、4、5および7に開示したように、同じ(あるいは別の)適当な発現系を用いて、コード化されたタンパク質を生産することができる。使用する系に応じて調整培地か細胞溶解液をそのままで、あるいは分画した後に、実施例3、4、6および8に概論したような方法を用いて、プロテアーゼ阻害活性と抗凝固活性について試験することができる。AcaNAP5遺伝子(図1;配列番号3)および/またはAcaNAP6遺伝子(図3;配列番号5)の断片から誘導したプローブにハイブリッド形成するcDNAによってコード化されており、セリンプロテアーゼ阻害特性および/または抗凝固特性を持つタンパク質は、NAP関連物質ファミリーに属すると見なされる。
実施例10
cDNAによってコード化されるタンパク質の機能的表現によるNAPの同定
(A)pDONGベクター系列
pUC119(Vieira, J.およびMessing, J., Methods in Enzymology, 153: 3-11(1987))の誘導体であるpDONGベクターpDONG61[配列番号15]、pDONG62[配列番号16]およびpDONG63[配列番号17]のヌクレオチド配列をそれぞれ図8A〜8Cに示す。
これら3つのベクターを構築するため、G6BACKHIND後方プライマーと前方プライマーとしてのG6FORSFI61、G6FORSFI62またはG6FORSFI63を用いるM13K07一本鎖DNA(Vieira, J.およびMessing, J.,同上)のPCR増幅によって、Hin dIIIおよびSfi I制限部位を繊維状ファージ遺伝子6の5'末端と3'末端に加えた。第2のPCRでは、得られた3つの断片を前方プライマーとしてのG6FORNOTBAMHとG6BACKHINDで再増幅することにより、該断片の3'末端にNot IおよびBam HI部位を付加した。上記PCRプライマーの配列は次の通りである(制限部位に下線を示す):
G6BACKHIND:ATCCGAAGCT TTGCTAACAT ACTGCGTAAT AAG[配列番号111]
G6FORSFI61:TATGGGATGG CCGACTTGGC CTCCGCCTGA GCCTCCACCT TTATCCCAAT CCAAATAAGA[配列番号112]
G6FORSFI62:ATGGGATGGC CGACTTGGCC CTCCGCCTGA GCCTCCACCT TTATCCCAAT CCAAATAAGA[配列番号113]
G6FORSFI63:TATGGGATGG CCGACTTGGC CGATCCGCCT GAGCCTCCAC CTTTATCCCA ATCCAAATAA[配列番号114]
GAG6FORNOTBAMH:AGGAGGGGAT CCGCGGCCGC GTGATATGGG ATGGCCGACT TGGCC[配列番号115]
最後に、PCR産物をゲル精製し、個別にHin dIIIとBam HIで消化し、pUC119の対応する部位間に挿入した。配列決定により、pDONG61、pDONG62およびpDONG63のすべてが意図した挿入物を含有することが確認された。
pDONGベクター系列はSfi I−Not I断片としてのcDNAのクローニングを可能にする。このクローニングは、cDNAを3つの読み(翻訳)枠のそれぞれで、ファージ外殻タンパク質の1つをコードする繊維状ファージ遺伝子6の3'末端に融合させる。pDONG誘導体を保持する雄性特異的大腸菌株のVCSM13ヘルパーファージ(Stratagene,カリフォルニア州ラジョラ)による感染は、pDONG誘導体の1つの特異的一本鎖を包膜し、また組換えタンパク質6(p6)融合タンパク質をその外殻に組込みうる偽ウイルス粒子の回収をもたらす。コード化されているタンパク質がファージ表面上に組換えp6融合タンパク質として機能的に表現されるようなcDNAは、下記の選別実験を利用して同定できるようになる。
(B)ラムダgt11アンサイロストマ カニナムcDNAライブラリーのpDONGベクター系列への移転
配列:GGTGGCGACG ACTCCTGGAG CCCG[配列番号96]を持つラムダgt11プライマー#1218(New England Biolabs,米国マサチューセッツ州ベバリー;cDNA挿入物の上流に位置する配列を標的とする)を第1鎖cDNA合成に用いたオリゴ(dT)-Not Iプライマー/アダプター(Promega)と組み合わせて用いるcDNA挿入物のPCRレスキュー(Life Technologies(米国メリーランド州ガイサースブルク)製のTaqポリメラーゼ;20温度サイクル:95℃で1分、50℃で1分、72℃で3分の後、65℃で10分)に、集めたアンサイロストマ カニナムcDNAクローンのファージラムダ調製物(約1×106プラーク,実施例2参照)を使用した。制限酵素Sfi IとNot Iで消化した後、完全サイズ範囲の増幅産物をアガロースゲルから回収した。
すべての断片をpDONG61、pDONG62およびpDONG63ベクター中に指向的にクローニングした。受容ベクター断片を、CsCl精製したベクターのSfi IおよびNot Iによる消化と「WizardTM PCR Preps DNA Purification System」(Promega Corp,米国ウィスコンシン州マジソン)での精製によって調製した。
電気穿孔法により、大腸菌株TG1(Sambrook, J., Fritsch, E. F.およびManiatis, T., Molecular Cloning, A Laboratory Manual,第2版,第1〜3巻,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989))をpDONG/cDNA連結混合物で形質転換した。電気形質転換した細胞をSOC培地(Sambrook, J.ら,同上)中37℃で1時間インキュベートし、0.1%グルコースと100マイクログラム/mlカルベニシリンを含有するLBプレート(245×245×25mmプレート;Nunc)に接種した。pDONG61、pDONG62およびpDONG63でそれぞれ2.2×106、1.6×106および1.4×106カルベニシリン耐性形質転換体を得た。20L、21Lおよび22Lと命名した各ライブラリーのそれぞれから無作為に拾い上げたいくつかの形質転換体を、pUC119のマルチクローニング部位に隣接する配列に合致する2つのプライマー(配列:CGCCAGGGTT TTCCCAGTCA CGAC[配列番号116]を持つプライマー#1224と配列:AGCGGATAAC AATTTCACAC AGGA[配列番号101]を持つプライマー#1233;New England Biolabs)を用いるPCR分析にかけた(Life Technologies製のTaqポリメラーゼ;次の温度プログラムによる30増幅サイクル:95℃で1分、50℃で1分、72℃で1〜3分。)その結果はそのクローンの大半が様々なサイズのcDNA挿入物を含有することを示した。
(C)NAPタンパク質をコードするcDNAクローンの第Xa因子に基づくアフィニティ選択
20L、21Lおよび22Lライブラリーから得られるファージ粒子を次のように回収した:各ライブラリーをプレートから掻き取り、1%グルコースと100マイクログラム/mlカルベニシリンを加えたLB培地100ml中37℃で、600nmの吸光度が0.5に達するまで生育させた。感染多重度(moi)20のVCSM13ヘルパーファージ(Stratagene)を添加した後、培養を37℃で30分間放置し、次いでさらに30分間ゆっくりと振とうした。遠心分離によって細胞をペレット化し、100マイクログラム/mlカルベニシリンと50マイクログラム/mlカナマイシンを添加したLB培地250mlに再懸濁した。これらの培養を激しく攪拌しながら30℃で終夜生育させた。得られたファージ粒子をポリエチレングリコール/NaClによる2回の連続的沈殿によって精製し、TRIS緩衝化食塩水(0.05M Tris、0.15M塩化ナトリウム、pH7.4)(TBS)1mlあたり1×1013ウイルス粒子の密度に再懸濁した。次いで20L、21Lおよび22Lから得た等量のファージ粒子を互いに混合した。
ヒト第Xa因子(調製については実施例1を参照)を製造者(Pierce)の指示に従ってビオチン-XX-NHSでビオチン化した。このプロテアーゼのアミド分解活性はこの修飾によって影響されないことが、発色原性基質S-2765(Chromogenix;実施例1参照)を用いる酵素検定で示された。ストレプタビジン被覆磁気ビーズ(Dynal;選別1回あたり1mg)をTBSで3回洗浄し、2%スキムミルク(Difco)を添加した周囲温度のTBS中で遮断した。1時間後、磁気ビーズを使用前にTBSで2回洗浄した。
第1回の選別のため、貯蔵ライブラリーから得た1×1013ファージを、250nMビオチン化第Xa因子、5mM CaCl2および2%スキムミルクを添加したTBS緩衝液200マイクロリットル中4℃で75分間インキュベートした。この時間の後、ファージ溶液に1mgの遮断したストレプタビジン被覆磁気ビーズ(5mM CaCl2と2%スキムミルクを含有するTBS 200マイクロリットルに再懸濁したもの)を加え、穏やかに攪拌しながら4℃で1時間インキュベートした。次に磁石(Dynal)を用い、0.1%Tween-20を含有するTBS 500マイクロリットルで磁気ビーズを10回すすいだ。500マイクロリットルの0.1Mグリシン-HCl緩衝液(pH2.0)と共に磁気ビーズを10分間インキュベートすることによって、結合したファージを磁気ビーズから溶離させた。その上清を1M Tris-HCl緩衝液(pH8.0)150マイクロリットルで中和した。
ファージ増殖のため、大腸菌株TG1(Sambrook, J., Fritsch, E. F.およびManiatis, T., Molecular Cloning, A Laboratory Manual,第2版,第1〜3巻,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989))を10mlのLB培地中で600nmの吸光度が0.5に達するまで生育させた。その培養を磁気ビーズから溶解させたファージ650マイクロリットルで感染し、振とうすることなく37℃で短時間インキュベートした。遠心分離後、感染細胞を2mlのLB培地に再懸濁し、1%グルコースと100マイクログラム/mlカルベニシリンを含有するLB寒天で満たした245×245×25mmプレートに接種した。37℃で終夜インキュベートした後、細胞をプレートから掻き取り、1%グルコースと100マイクログラム/mlカルベニシリンを添加したLB培地40mlに再懸濁した。次に、600nmで15光学密度に相当する細胞の一部を1%グルコースと100マイクログラム/mlカルベニシリンを含有するLB培地100mlに接種した。次の選別工程用のファージ回収を上に概論したように行った。
第2回の選別のため、6×1012ファージを1mgの遮断したストレプタビジン被覆磁気ビーズと共に、2.5mM Ca2+と2%スキムミルクを含有するTBS 200マイクロリットル中で90分間インキュベートした(この段階はストレプタビジン結合クローンの選択を避けるための手法として導入した)。ビーズを除去した後、第1回と同じ手順を踏んだ。第3、第4および第5回を、ファージ投入量を2×1012ファージに下げた点以外は第2回と同様に行った。
次に、ビオチン化第Xa因子に対する5回の選別後に単離された24個の個々のカルベニシリン耐性クローンをELISAで分析した。ストレプタビジン被覆96穴プレート(Pierce)を、2%スキムミルクを含有するTBS 200マイクロリットル/ウェルで1時間遮断した後、TBS中の20nMビオチン化第Xa因子100マイクロリットル/ウェルと共に1時間インキュベートした。各クローンについて、2%スキムミルクと0.1%Tween-20を含有するTBS 100マイクロリットルに希釈した約1010ファージをウェルに加えた。2時間のインキュベーション後、そのウェルを0.1%Tween-20を含有するTBS 200マイクロリットルで4回すすいだ。ウサギ抗M13抗血清(実施例11参照)、アルカリ性フォスファターゼ結合抗ウサギ血清(Sigma)および基質としてのp-ニトロフェニルホスフェート(Sigma)と順番にインキュベートすることによって、結合したファージを可視化した。20分後、405nmで吸光度を測定した。24クローンのうち5つが第Xa因子に強固に結合した。同じELISAでビオチン化第Xa因子を除いて試験したところ、これらのファージでは有意な非特異的結合が観測されなかった。
次に5つの陽性クローンから一本鎖DNAを調製し、遺伝子6の3'側の挿入物を、配列:CGCCAGGGTT TTCCCAGTCA CGAC[配列番号116]を持つプライマー#1224(New England Biolabs)を用いる自動化DNA配列決定にかけた。5つのクローンすべてがpDONG63内の遺伝子6に枠内融合した同じ470bpの5'先端欠失cDNAを含有することがわかった。このcDNAのヌクレオチド配列と推定アミノ酸配列を図9[配列番号19]に示す。AcaNAPc2と命名したこのcDNAはNAPイソ型c2と命名したタンパク質をコードし、このタンパク質はNAP関連タンパク質ファミリーに属する。
実施例11
M13ファージに対する抗血清の調製
PBS(0.01Mリン酸ナトリウム,pH7.4+0.15M塩化ナトリウム)500マイクロリットル中の約1013M13K07ファージ(等量のアジュバントと混合したもの)を皮下注射することによってM13ファージに対する抗血清をウサギ内で調製した。Glaser-Wuttke, G., Keppner, J.およびRasched, I., Biochim. Biophys. Acta., 985: 239-247(1989)の記述と基本的に同様にしてM13K07ファージをCsCl精製した。最初の注射を第0日に完全フロインドアジュバントで行った後、第7日、第14日および第35日に不完全フロインドアジュバントで皮下注射した。抗血清を第42日に収集した。
当該機術分野周知の条件を用いてプロテインA-Sepharoseカラムに通すことにより、その抗血清のIgG画分を濃縮した。
実施例12
アンサイロストマ カニナム由来のさらなるNAPコード化配列を単離するためのAcaNAP5およびAcaNAP6 DNA配列の使用
AcaNAP5およびAcaNAP6 DNA配列(実施例2で得たもの)を用い、交差ハイブリッド形成によって同じ寄生虫種から関連分子を単離した。
AcaNAP5およびAcaNAP6 cDNAを含有するpGEM-9Zf(−)ベクター(Promega;ウィスコンシン州マジソン)を、成熟NAPタンパク質をコード化する領域のPCRレスキューに用いた(Life Technologies(メリーランド州ガイサースブルク)製のTaqポリメラーゼ;20温度サイクル:95℃で1分、50℃で1分、72℃で1.5分)。使用したオリゴヌクレオチドプライマーは次の通りである:(1)YG109(AcaNAP5およびAcaNAP6をコードするcDNAのC末端コード配列を標的とし、配列:TCAGACATGT-ATAATCTCAT-GTTGG[配列番号88]を持つ)および(2)YG103(成熟AcaNAP5およびAcaNAP6のN末端コード配列を標的とし、配列:AAGGCATACC-CGGAGTGTGG-TG[配列番号89]を持つ)。YG109プライマーはAcaNAP6を標的として用いた場合に1つのヌクレオチドミスマッチを含有する(下線を引いたT残基;図3[配列番号5]に示す配列と比較のこと)。このミスマッチは増幅効率に著しい影響を与えなかった。AcaNAP5とAcaNAP6について正しいサイズのPCR産物(約230塩基対)を共に1.5%アガロースゲルから単離した。等モル混合物をランダムプライマー伸長(T7 QickPrimeキット;Pharmacia(スウェーデン))で放射性標識した後、Bio-Spin 30カラム(Bio-Rad,米国カリフォルニア州リッチモンド)に通した。
約750,000のアンサイロストマ カニナム(Aca)cDNAクローン(実施例2(B)を参照;複製プラーク採取フィルターをHybondTM-N(Amersham,英国バッキンガムシャー)を用い調製した)を、次の予備ハイブリッド形成およびハイブリッド形成条件を用い、放射性標識したAcaNAP5およびAcaNAP6 cDNA断片でスクリーニングした:5×SSC(SSC:150mM NaCl, 15mMクエン酸三ナトリウム)、5×デンハルト溶液、0.5% SDS、20%ホルミアミド、100マイクログラム/ml超音波処理魚精子DNA(Boehringer)、42℃で終夜。フィルターを37℃の2×SSC, 0.1% SDS中で30分間、4回洗浄した。X線フィルムに暴露した後、合計約300の陽性体を同定した。
300の陽性体のうち48を、AcaNAP5およびAcaNAP6 cDNAのC末端コード配列に特異的な上述のYG109プライマーとcDNA挿入部位の上流に位置するラムダgt11配列を標的とするプライマー#1218(New England Biolabs(マサチューセッツ州ベバリー);GGTGGCGACG ACTCCTGGAG CCCG[配列番号96])とを用いるPCR増幅にかけた(Boehringer Mannheim(ドイツ)製のTaqポリメラーゼ;30温度サイクル:95℃で1分、50℃で1分、72℃で1.5分)。48の陽性体のうち31がAcaNAP5/6型cDNAに予期されるサイズと類似するサイズのPCR産物を与えた。
残りの17陽性体を、プライマー#1218とAcaNAPc2特異的プライマー(例:AcaNAPc2のC末端を標的とし、配列:GTTTCGAGTT CCGGGATATA TAAAGTCC[配列番号117]を持つLJ189;実施例10と図9を参照のこと)による増幅の鋳型として用いた。いずれのクローンもPCR産物を与えなかった。次に17の陽性体すべてをより低いプラーク密度での第2回ハイブリッド形成にかけた。単一の単離クローンがすべての場合に同定された。17の単離したcDNAクローンを、プライマー対#1218/YG109および#1218/LJ189を用いるPCRで再分析した。17クローンのうち3クローンが#1218/YG109プライマーで増幅産物を与えた。
残りの14クローンを、プライマー#1218とオリゴ(dT)-Not(Promega(ウィスコンシン州マジソン);これは第1鎖cDNAを調製する際に使用したものと同じプライマーである;実施例2参照)によるPCR増幅でさらに分析した。14クローンすべてがPCR産物を与えた。そのPCR産物のゲル電気泳動分析はいくつかのcDNAがAcaNAP5 cDNA挿入物よりかなり長いことを示した。
最大のcDNAを持つものを含む10クローンを配列決定のために選択した。この目的のため、実施例2に記述のごとく、cDNA挿入物をSfi I-Not I断片としてpGEM型ファージミド(Promega,ウィスコンシン州マジソン)上にサブクローニングした。この配列決定により8つのさらなるNAPタンパク質配列が同定された。これらをAcaNAP23、AcaNAP24、AcaNAP25、AcaNAP31、AcaNAP44、AcaNAP45、AcaNAP47およびAcaNAP48と命名した。AcaNAP42およびAcaNAP46と命名した2つのさらなるcDNAはAcaNAP31によってコードされているものと同じタンパク質をコードしていた[配列番号34]。これらcDNAのヌクレオチド配列とコード化されているタンパク質の推定アミノ酸配列を図13A(AcaNAP23[配列番号31])、図13B(AcaNAP24[配列番号32])、図13C(AcaNAP25[配列番号33])、図13D(AcaNAP31[配列番号34])、図13E(AcaNAP44[配列番号35])、図13F(AcaNAP45[配列番号36])、図13G(AcaNAP47[配列番号37])、図13H(AcaNAP48[配列番号38])に示す。すべてのクローンは全長で、完全な分泌シグナルを含んだ。AcaNAP45[配列番号36]とAcaNAP47[配列番号37]cDNAはそれぞれ2つのNAPドメインを組込んだタンパク質をコードしており、他のcDNAは1つのNAPドメインを持つタンパク質をコードしている。
実施例13
ネカトール アメリカヌス(Necator americanus)由来のNAPタンパク質をコード化する配列を単離するためのNAP DNA配列の使用
AcaNAP5[配列番号3]、AcaNAP6[配列番号5]、AcaNAPc2[配列番号19]、AcaNAP23[配列番号31]、AcaNAP24[配列番号32]、AcaNAP25[配列番号33]、AcaNAP31[配列番号34]、AcaNAP44[配列番号35]、AcaNAP45[配列番号36]、AcaNAP47[配列番号37]、AcaNAP48[配列番号38]、AceNAP4[配列番号9]、AceNAP5[配列番号10]、AceNAP7[配列番号11]、AduNAP4[配列番号12]、AduNAP7[配列番号13]およびHpoNAP5[配列番号14]の配列(図1、3、7および13参照)を用いて、PCRクローニングにより、吸血性寄生虫ネカトール アメリカヌス由来の関連分子を単離した。
NAPタンパク質間の相同領域から共通アミノ酸配列を作成した。次にこれらの共通配列を用いて、次の変性PCRプライマーを設計した:NAP-1,アミノ酸配列NH2-Lys-Pro-Cys-Glu-(Arg/Pro/Lys)-Lys-Cys[配列番号118]に対応する5'-AAR-CCN-TGY-GAR-MGG-AAR-TGY-3'[配列番号90];NAP-4.RC,配列NH2-Cys-(Val/Ile/Gln)-Cys-(Lys/Asp/Glu/Glu)-(Asp/Glu)-Gly-(Phe/Tyr)-Tyr[配列番号119]に対応する5'-TW-RWA-NCC-NTC-YTT-RCA-NAC-RCA-3'[配列番号91]。これらのプライマーを1対にし、ネカトール アメリカヌスcDNAを鋳型として用いるPCRによってNAP特異的プローブを作成した。
成虫ネカトール アメリカヌスをDavid Pritchard博士(ノッチンガム大学)から購入した。QuickPrep mRNA Purification Kit(Pharmacia,ニュージャージー州ピスキャタウェイ)を用いてポリ(A+)RNAを調製した。1マイクログラムのmRNAをAMV逆転写酵素とランダムヘキサマープライマー(Amersham,イリノイ州アーリントンヒルズ)を用いて逆転写した。Perkin-Elmer DNAサーマルサイクラー上でPCR GeneAmp(Perkin Elmer,コネチカット州ノルウォーク)試薬と共に、一本鎖cDNA反応産物の50分の1を各〜400pmolのNAP-1およびNAP-4.RCの鋳型として用いた。PCR条件は次の通りとした:第1〜3サイクル,96℃で2分間の変性、37℃で1分間のアニーリング、72℃で3分間の伸長(37℃と72℃の間の傾斜時間は2分間とした);第4〜5サイクル,94℃で1分間の変性、37℃で1分間のアニーリング、72℃で2分間の伸長(37℃と72℃の間の傾斜時間は2分間とした);第6〜45サイクル,94℃で1分間の変性、37℃で1分間のアニーリング、72℃で2分間の伸長。第6〜45サイクルについては伸長時間を3秒/サイクルづつ増やした。
NAP-1とNAP-4.RCによるネカトール アメリカヌスcDNAのPCR増幅は約100bpの増幅産物をもたらした。ランダムプライマーラベリング(Stratagene,カリフォルニア州ラジョラ)を用いてそのPCR産物を[a-32P]-dCTP(Amersham)で標識し、標識されたDNAをChromaspin-10カラム(CloneTech,カリフォルニア州ポロアルト)を用いて組込まれなかったヌクレオチドから分離した。
次の手法を用いてcDNAライブラリーを構築した。二本鎖cDNAを1μgのネカトール アメリカヌスポリ(A+)RNAからAMV逆転写酵素とランダムヘキサマープライマー(Amersham,イリノイ州アーリントンヒルズ)を用いて合成した。約300bpより大きいcDNA断片を6%ポリアクリルアミドゲルで精製し、Eco RIリンカー(Stratagene,カリフォルニア州サンディエゴ)に標準的な手法で連結した。連結したcDNAをEco RI切断脱リン酸化ラムダgt10(Stratagene,カリフォルニア州サンディエゴ)中に連結し、Gigapack Gold IIパッケージングキット(Stratagene,カリフォルニア州サンディエゴ)を用いてパッケージング(ゲノム詰め込み)した。
予備ハイブリッド形成とハイブリッド形成の条件は6×SSC(SSC:150mM NaCl, 15mMクエン酸三ナトリウム,pH7.0)、0.02Mリン酸ナトリウム(pH6.5)、5×デンハルト溶液、100μg/mlせん断変性サケ精子DNA、0.23%硫酸デキストランとした。予備ハイブリッド形成とハイブリッド形成を42℃で行い、フィルターを2×SSCで20分間予備洗浄した後、45℃の2×SSCで30分間洗浄した。2つの増強スクリーンを使ってフィルターをX線フィルムに−70℃で終夜暴露した。
ランダムプライムドネカトール アメリカヌスライブラリー(非増幅)の約400,000組換えファージをNAP-1/NAP-4.RC PCR断片でスクリーニングした。約11の組換えファージがこのプローブにハイブリッド形成し、そのうちの4つをヌクレオチド配列決定分析のために単離した。これらのファージ単離物に含まれるEco RI cDNA断片をpBluescript II KS+ベクター(Stratagene,カリフォルニア州サンディエゴ)中にサブクローニングすることにより、二本鎖配列決定を行った。Sequenaseバージョン2.0キット(Amersham,イリノイ州アーリントンヒルズ)とM13オリゴヌクレオチドプライマー(Stratagene,カリフォルニア州サンディエゴ)を用いてDNAを配列決定した。
これら4つのラムダ単離物は、Ancylostoma種およびH. polygyrus由来のNAP配列に似た単一の79アミノ酸NAPポリペプチドをコードするDNAを含有した。ネカトール アメリカヌス由来のNAPポリペプチドは8859.6ダルトンの計算分子量を持つ。そのヌクレオチド配列と推定アミノ酸配列を図14に示す。
実施例14
COS細胞における組換えAceNAP4の発現
A.発現
実施例5のプロAcaNAP5および実施例7のプロAcaNAP6と基本的に同様にして、AceNAP4をCOS細胞中で一時的に生産した。
実施例9のAceNAP4 cDNAを保持するpGEM型ファージミドを、分泌シグナルを含む全AceNAP4コード領域のPCRレスキューにおける標的とした。このPCRレスキューには2つのXba I追加オリゴヌクレオチドプライマーを用いたが、そのプライマーは次の通りである:(1)SHPCR4(該遺伝子の5'末端を標的とし、配列:GACCAGTCTA GACCACCATG GCGGTGCTTT ATTCAGTAGC AATA[配列番号120]を持つ)および(2)SHPCR5(該遺伝子の3'末端を標的とし、配列:GCTCGCTCTA GATTATCGTG AGGTTTCTGG TGCAAAAGTG[配列番号121]を持つ)。これらのプライマーに含まれるXba I制限部位に下線を付す。実施例5に記載の条件に従い、上記のプライマーを用いてAceNAP4配列を増幅した。
Xba I酵素で消化した後、予期されるサイズを持つ増幅産物をアガロースゲルから単離し、次いでpEF-BOSベクター[Mizushima, S.およびNagata, S., Nucl. Acids Res., 18: 5322(1990)]の約450塩基対のXba Iスタッファー断片と置換した。実施例5に記載の手順に従ってクローンpEF-BOS-AceNAP4を得た。このクローンは、まずSHPCR4とYG60を用いるPCRによって所望の向きにXba I挿入物を持つことが示され、次いで配列決定によって確認されたものである。実施例5の方法に従い、このクローンを用いてCOS細胞をトランスフェクトした。
COS細胞のトランスフェクションの24時間後(実施例5のB項参照)、10% FBSを含有するCOS培地をDMEMとNutrient Mixture Ham's F-12(Life Technologies,メリーランド州ガイサースブルク)の1:1混合物からなる培地50mlで置換した。次に細胞を37℃でさらにインキュベートし、EGR-第Xa因子依存性TF/第VIIa因子阻害活性の生産を実施例Eに記述のごとく検出した。
B.AceNAP4の精製
1.陰イオン交換クロマトグラフィー
AceNAP4発現細胞から得られるCOS培養上清を1500r.p.m.(約500×g)で10分間遠心分離した後、次のプロテアーゼ阻害剤(ICN Biomedicals Inc.,カリフォルニア州コスタメサ)を加えた(1.0×10-5MペプスタチンA(イソバレリル-Val-Val-4-アミノ-3-ヒドロキシ-6-メチル-ヘプタノイル-Ala-4-アミノ-3-ヒドロキシ-6-メチルヘプタン酸)、1.0×10-5M AEBSF(フッ化4-(2-アミノエチル)-ベンゼンスルフホニル))。固形酢酸ナトリウムを最終濃度50mMになるよう添加した後、pHを1N HClでpH5.3に調節した。その上清を0.22マイクロメーター酢酸セルロースフィルター(Corning Inc.,米国ニューヨーク州コーニング)に通すことにより清浄化した。
清浄化した上清(総体積約450ml)を、陰イオン緩衝液(0.05M酢酸ナトリウム、0.1M NaCl、pH5.3)で予め平衡化しておいたPoros20 HQ(Perseptive Biosystems,マサチューセッツ州)1×2cmカラムに5ml/分の流速でのせた。カラムと試料はこの精製段階中ずっと周囲温度であった。次にカラムを10カラム体積の陰イオン緩衝液と10カラム体積の50mM酢酸ナトリウム,0.37M NaCl(pH5.3)で洗浄した。
EGR-FXa依存性fVIIa/TFアミド分解阻害活性(実施例E参照)を持つ物質を流速2ml/分の50mM酢酸ナトリウム,1M NaCl(pH5.3)で溶出させた。
2.逆相クロマトグラフィー
陰イオン交換クロマトグラフィー後に集めた画分の一部を0.46×25cm C18カラム(218TP54 Vydac;カリフォルニア州ヘスペリア)にのせ、次いで0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸中の10〜35%アセトニトリルの直線的勾配(流速1ml/分,変化速度0.4%アセトニトリル/分)で展開した。EGR/FXa依存性TF/FVIIaアミド分解阻害活性(実施例E参照)を監視し、この阻害活性を含有する画分を単離し、真空乾燥した。
3.組換えAceNAP4の特徴づけ
AceNAP4化合物は4〜20%ゲル上でcDNA配列から予測されるサイズに合ったSDS-PAGE移動度を示した(RPクロマトグラフィー後の物質のクマシー染色ゲル)。
実施例15
P. pastorisにおける組換えAcaNAPc2の生産と精製
A.発現ベクター構築
P. pastorisにおけるAcaNAPc2遺伝子の発現を、AcaNAP5の発現について実施例3に詳述した方法に次の変更を加えて行った。
AcaNAPc2 cDNAを含有する実施例10に記載のpDONG63ベクターを用い、増幅(「PCRレスキュー」)によって、成熟AcaNAPc2タンパク質をコードする領域を単離した(New England Biolabs(マサチューセッツ州ベバリー)製のVentポリメラーゼを使用;20温度サイクル:94℃で1分間、50℃で1分間、72℃で1.5分間)。次のオリゴヌクレオチドプライマーを使用した:
LJ190:AAAGCAACGA-TGCAGTGTGG-TGAG[配列番号122]
LJ191:GCTCGCTCTA-GAAGCTTCAG-TTTCGAGTTC-CGGGATATAT-AAAGTCC[配列番号123]。
C末端配列を標的とするLJ191プライマーはXba IおよびHin dIII制限部位(下線部)を含む非アニーリング伸長部を含有した。
Xba I酵素による消化の後、予期されるサイズの増幅産物をゲルから単離し、次いで酵素的にリン酸化した(New England Biolabs(マサチューセッツ州ベバリー)製のT4ポリヌクレオチドキナーゼ)。キナーゼの熱不活化(70℃で10分間)後、平滑末端/Xba I断片を発現用のベクターpYAM7SP8中に指向的にクローニングした。pYAM7SP8由来の受容ベクター断片をSut I-Spe I制限によって調製し、アガロースゲルから精製した。大腸菌株WK6[Zell, R.およびFritz, H.-J., EMBO J., 6: 1809-1815(1987)]を連結混合物で形質転換し、アンピシリン耐性クローンを選択した。
制限分析に基づいて、予期されるサイズの挿入物を含有するプラスミドクローン(pYAM7SP-NAPC2と命名)をさらなる特徴づけのために保持した。クローンpYAM7SP-NAPC2の配列決定により、構築法から予期される通り、プレプロリーダーシグナルに融合した成熟AcaNAPc2コード領域の正確な挿入と、コード領域中に望ましくない突然変異の存在しないことが確認された。
B.P. pastorisにおける組換えAcaNAPc2の発現
Pichia株GTS115(his4)はStroman, D. W.ら,米国特許第4855231号に記述されている。すべてのP. pastoris操作をStroman, D. W.ら,米国特許第4855231号の記載に基本的に従って行った。
約1マイクログラムのpYAM7SP-NAPC2プラスミドDNAを標準的な電気穿孔法で株GTS115中にエレクトポレートした。理論的にhis4染色体遺伝子座への組込みを標的として、プラスミドを予めSal I消化によって直鎖化しておいた。
AcaNAPc2高発現株の選択をNAPイソ型5(AcaNAP5)について実施例3に記述したように微量培養スクリーニングを用いて行った。fVIIa/TF-EGR-fXa検定(実施例E)を用いて、微量培養を分泌されたAcaNAPc2の存在について試験したところ、2つのクローンが選択された。同じ手法であるが、今度は振とうフラスコレベルで行う第2回のスクリーニング後、1つの単離された宿主細胞を選択し、P. pastoris GTS115/7SP-NAPc2と命名した。
宿主細胞GTS115/7SP-NAPc2は野生型メタノール資化表現型(Mut+)を持つことが示された。このことはGTS115の染色体への発現カセットの組込みがゲノムAOX 1遺伝子の機能性を変化させなかったことを立証している。
これに続く組換えAcaNAPc2物質の生産は、Stroman, D. W.ら,米国特許第4855231号に記述されているように、振とうフラスコ培養で行った。組換え産物を下記のようにPichia pastoris細胞上清から精製した。
C.組換えAcaNAP2の精製
1.陽イオン交換クロマトグラフィー
培養上清(100ml)を16000rpm(約30,000×g)で20分間遠心分離した後、1N HClでpH3に調節した。上清の導電率をミリQ水の添加によって10mS/cm未満に下げた。希釈した上清を0.22マイクロメーター酢酸セルロースフィルター(Corning Inc.,米国ニューヨーク州コーニング)に通すことによって清浄化した。
その上清の全量(約500ml)を、陽イオン緩衝液(50mMクエン酸ナトリウム,pH3)で予め平衡化しておいたPoros20HS(Perseptive Biosystems,マサチューセッツ州)1×2cmカラムに5ml/分の流速でのせた。カラムと希釈した醗酵上清はこの精製段階中ずっと室温であった。次にカラムを50カラム体積の陽イオン緩衝液と10カラム体積の0.1M NaClを含む陽イオン緩衝液で洗浄した。プロトロンビナーゼ検定で阻害活性を持つ物質を1M NaClを含む陽イオン緩衝液(流速2ml/分)で溶出させた。
2.Superdex30を用いる分子篩クロマトグラフィー
陽イオン交換カラムから得たEGR-fXa-fVIIa/TF阻害物質を含有する1M NaCl溶出液(3ml;実施例C参照)を、周囲温度の0.1Mリン酸ナトリウム(pH7.4),0.15M NaClで予め平衡化しておいたSuperdex30 PG(Pharmacia,スウェーデン)1.6×60cmカラムにのせた。クロマトグラフィーを2ml/分の流速で行った。プロトロンビナーゼ阻害活性(実施例C)は56〜64mlに溶出し、それを集めた。
3.逆相クロマトグラフィー
ゲルろ過クロマトグラフィーで得た集めた画分1mlを0.46×25cm C18カラム(218TP54 Vydac;カリフォルニア州ヘスペリア)にのせ、それを0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸中の直線的勾配10〜30%アセトニトリル(変化速度0.5%アセトニトリル/分)で展開した。20〜25%アセトニトリル付近に溶出した主要ピークを手動で集めた。これはプロトロンビナーゼ阻害活性を発揮した。
4.分子質量決定
この実施例の(1)〜(3)項に記述のごとく単離した主要成分の推定質量をエレクトロスプレイイオン化質量スペクトル測定法を用いて決定した。組換えAcaNAPc2の推定質量は9640ダルトンで、cDNA配列から導かれるこの分子の計算分子質量と完全に一致した。
実施例16
P. pastorisにおけるAcaNAP42の発現
AcaNAP42 cDNA(実施例12)を含有するpGEM-9zf(−)ベクター(Promega)を用い、PCR増幅によって成熟AcaNAP42タンパク質をコード化する領域を単離した(Perkin Elmer(ニュージャージー州ブランチブルク)製のTaqポリメラーゼを使用;25温度サイクル:94℃で1分間、50℃で1分間、72℃で1分間)。次のオリゴヌクレオチドプライマーを使用した:
オリゴ3:5' GAG ACT TTT AAA TCA CTG TGG GAT CAG AAG 3'[配列番号124]
オリゴ2:5' TTC AGG ACT AGT TCA TGG TGC GAA AGT AAT AAA 3'[配列番号125]。
N末端配列を標的とするオリゴ3プライマーはDra I制限部位(下線部)を含む非アニーリング伸長部を含有した。C末端配列を標的とするオリゴ2プライマーはSpe I制限部位を含有した。
予期される約250bpのサイズを持つNAP増幅産物をDra IおよびSpe I酵素で消化し、フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(25:24:1,体積/体積)での抽出によって精製し、エチルアルコール中で沈殿させた。pYAM7SP8(実施例3)由来の受容ベクター断片をStu I-Spe I制限によって調製し、フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(25:24:1,体積/体積)での抽出によって精製し、エチルアルコール中で沈殿させた。大腸菌株XL1-Blue[Bullock, W. O., Fernande, J. M.およびShort, J. M., Biotechniques 5: 376-379(1987)]を、上述のDNA断片を含有する連結混合物で形質転換し、アンピシリン耐性クローンを選択した。
制限分析に基づいて、予期されるサイズの挿入物を含有するプラスミドクローン(pYAM7SP8-NAP42と命名)をさらなる特徴づけのために保持した。このクローンの配列決定により、構築法から予想される通りに、PHO1/アルファ因子プレプロリーダーシグナルに融合した成熟コード領域の正しい挿入と、そのコード領域内に望ましくない突然変異の存在しないことが確認された。
約10マイクログラムのpYAM7SP-NAP42プラスミドを実施例3に記述のごとくPichia株GTS115(his4)中にエレクトロポレートした。AOX1染色体遺伝子座での組込みを標的として、プラスミドはNot I酵素で予め消化しておいた。
His+形質転換体を実施例3のように選択した。エレクトロポレーションから得た単一コロニー(n=90)を室温で、グリセロール最小培地100マイクロリットルを含むプレート振とう器上の96穴プレートのウェル内で24時間生育させた。グリセロール最小培地1リットルはアミノ酸非含有Yeast Nitrgen Base(DIFCO)13.4g、ビオチン400マイクログラム、グリセロール10ml、10mMリン酸カリウム(pH6.0)を含有する。
細胞をペレット化し、新鮮なメタノール最小培地(グリセロール10mlをメタノール5mlに置き換えた以外は上記と同じ組成)中に再懸濁してAOX1プロモーターを誘導した。室温で攪拌しながらさらに24時間インキュベートした後、10マイクロリットルの培養上清をプロトロンビン時間検定(実施例B)で試験した。分泌されたAcaNAP42をヒト血漿の凝固時間の延長によって検出した。
実施例17
P. pastorisにおけるAcaNAPc2/プロリンの発現
AcaNAPc2の発現レベルと安定性を増大させるため、タンパク質のC末端に追加のプロリン残基をコードする突然変異cDNAを構築した(AcaNAPc2/プロリンまたは「AcaNAPc2P」)。実施例16と同じ方法で発現ベクターpYAM7SP8-NAPc2/プロリンを作成した。オリゴ8プライマーはDra I制限部位を持つN末端プライマーであり、オリゴ9プライマーはXba I部位と天然型AcaNAPc2のC末端に1つのプロリン残基を付加するためのアミノ酸コドンTGGとを含有するC末端プライマーである。
オリゴ8:5' GCG TTT AAA GCA ACG ATG CAG TGT GGT G3'[配列番号126]
オリゴ9:5' C GCT CTA GAA GCT TCA TGG GTT TCG AGT TCC GGG ATA TAT AAA GTC 3'[配列番号127]
増幅産物(約270bp)をDra IとXba Iで消化した後、Stu I-Spe I制限によって調製したpYAM7SP8由来のベクター断片に増幅産物を連結した。AcaNAPc2/プロリン挿入物を含有するプラスミドクローンをDNA配列決定によって確認し、それをpYAM7SP8-NAPc2/プロリンと命名した。
ベクターpYAM7SP8-NAPc2/プロリンを用いて、実施例16に記述のごとく株GTS115(his)を形質転換した。形質転換体を実施例16に従って選択し、生育させた。分泌されたAcaNAPc2/プロリンが生育培地中に存在することをヒト血漿の凝固時間の延長によって検出した(実施例B参照)。
実施例18
AcaNAP5、AcaNAPc2およびAcaNAPc2P精製の別法
(A)AcaNAp5
醗酵培地からAcaNAP5を精製するための別法は次の通りである。AcaNAP5を発現するPichia pastoris株の醗酵液から細胞を除去し、培地を凍結した。この精製法は凍結した培地を4℃で終夜融解し、次に約4体積のミリQ水でそれを希釈することによって導電率を8mS未満に低下させることから開始した。pHを3.5に調節し、0.22μm酢酸セルロースフィルター(Corning Inc.,ニューヨーク州コーニング)を用いて培地をろ過した。
精製の最初と各段階で実施例Bに記述の方法を用いて、NAP含有物質の活性をプロトロンビン時間凝固検定で決定した。
ろ過した培地を周囲温度のPharmacia SP-Fast Flowカラムに60ml/分の流速でのせ、そのカラムを10カラム体積の50mMクエン酸/リン酸(pH3.5)で洗浄した。50mMクエン酸/リン酸(pH3.5)中の100mM NaCl、250mM NaCl、1000mM NaClで段階的溶出を行った。PT活性を250mM NaCl溶出液中に検出した。その全溶出液を導電率が8mS未満になるまで透析した。
この物質のpHを酢酸で4.5に調節した後、周囲温度のスルホエチルアスパルタミドカラムにのせた。約10カラム体積の50mM酢酸アンモニウム(pH4.5)/40%アセトニトリルを用いてカラムを洗浄した。そのカラムを50mM酢酸アンモニウム(pH4.5)/40%アセトニトリル/200mM NaClで溶出させ、その溶出液を上述のように透析またはダイアフィルトレーションした。
溶出液を0.1% TFAに調節し、それを周囲温度のVydac C18タンパク質/ペプチド逆相カラムにのせ、0.1% TFA/19%アセトニトリルとそれに続く0.1% TFA/25%アセトニトリルを用いて7ml/分の流速で溶出させた。0.1% TFA/25%アセトニトリル溶出液中にNAPを検出し、そこから回収した。
(B)AcaNAPc2およびAcaNAPc2P
上述の方法に次の変更を加えてAcaNAPc2またはAcaNAPc2Pを精製することができる。培地の融解と希釈によって8mS未満の導電率にした後、AcaNAPc2含有培地のpHをNaOHでpH5.0に調節した。ろ過した培地を周囲温度でPharmacia Q Fast Flowカラムに60ml/分の流速でのせ、そのカラムを10カラム体積の50mM酢酸(pH5.0)で洗浄した。50mM酢酸(pH5.0)中の100mM NaCl、250mM NaCl、1000mM NaClで段階的溶出を行った。250mM NaCl溶出液中にPT活性を検出した。その全溶出液を導電率が8mS未満になるまで透析し、スルホエチルアスパルタミドおよびRP-HPLCクロマトグラフィーを用いて上に概論した方法を繰り返した。
実施例A
第Xa因子のアミド分解アッセイ
第Xa因子の触媒活性の阻害剤として作用する本発明によるNAPの作用能はヒト酵素によって触媒されるアミド分解活性のNAP−誘発阻害[Ki★値で表示される]の決定によって評価した。
全てのアッセイに用いた緩衝液はHBSA(10mM HEPES、pH7.5、150mM 塩化ナトリウム、0.1%牛血清アルブミン)である。全ての試薬は特に言及しない限り、シグマ・ケミカル社(セントルイス、ミズリー)の製品である。
このアッセイはコーニング(Corning)のマイクロタイタープレートの適当なウェル内に次の試料を入れておこなった:HBSA 50μl、HBSAで希釈した試験NAP化合物(0.025〜25nM)[非阻害速度測定の場合にはHBSAのみ]50μl、およびHBSAで希釈した因子Xa酵素[次の文献に記載した方法に従い、エンザイム・リサーチ・ラボラトリーズ社(サウスベンド、インディアナ)から入手した精製ヒト第X因子から調製した:ボック(Bock、P.E.)ら、Archives of Biochem. Biophys.、第273巻、第375頁(1989年)]50μl(この酵素は最終濃度が0.5nMになるようにアッセイ前にHBSAを用いて希釈した)。周囲温度で50分間インキュベートした後、基質S2765[カビ・ジアグノスチカ社またはカビ・ファーマシア・ヘパル社(フランクリン、オハイオ)から入手したN−α−ベンジルオキシカルボニル−D−アルギニニル−L−グリシル−L−アルギニン−p−ニトロアニリドジヒドロクロリドを脱イオン水と配合した後、アッセイ前にHBSAを用いて希釈した試料]50μlを上記のウェル内に添加し、最終全体積を200μlとし、また、最終濃度を250μM(約5倍のKm)とした。色素原基質の加水分解の初期速度を「サーモマックス(Thermo Max)」(登録商標)カイネティックマイクロプレートリーダー[モレキュラー・デバイス社製;パロアルト、カリフォルニア]を用いて405nmにおける吸光度の変化を測定することによって求めた(5分間で添加した基質の5%以下が利用された)。
NAPを含有する試料の阻害された前平衡定常状態での速度(Vi)と遊離のfXaのみを含有する試料の非阻害速度(Vo)の比をNAPの対応する濃度に対してプロットした。これらのデータを密着結合阻害剤に関する方程式に直接あてはめることによって、見掛け解離阻害定数Ki★を計算した[モリソン(Marrison、J.F.)およびワルシュ(Walsh、C.T.)、Adv. Enzymol.、第61巻、第201頁〜第300頁(1988年)]。
以下の表1に、実施例3、4および15においてそれぞれ調製した試験化合物AcaNAP5(配列番号4)、AcaNAP6(配列番号6)およびAcaNAPc2(配列番号59)に関するKi★値を示す。これらのデータは、AcaNAP5とAcaNAP6がヒトFXaの強力な阻害剤として有用なことを示す。これに対して、AcaNAc2はFXaアミド分解活性を効果的に阻害しなかったが、このことは該化合物が遊離のfXaの触媒活性に影響を及ぼさないことを示す。
表1において、NIaは阻害効果がなかったことを示す(1μMまでは最大で15%までの阻害効果がみられた)。
実施例B
プロトロンビン時間(PT)および活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)アッセイ
本発明によるNAPのヒト血漿中における生体外抗凝固効果を、各々の阻害剤の幅広い濃度範囲にわたるプロトロンビン時間(PT)と活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)の延長を測定することによって評価した。
凍結貯留した正常なクエン酸塩加ヒト血漿をジョージ・キング・バイオメディカル社(オーバーランドパーク、カンザス)から入手した。aPTTおよびPTの各々の測定は、凝血開始剤としてそれぞれ自動化aPTT「プレイトリン(Platelin)」(登録商標)L試薬[オルガノン・テクニカ社製;ダーラム、ノースカロライナ]および「シムプラスチン(Simplastin)」(登録商標)エクセル[オルガノン・テクニカ社製]を使用し、測定装置として「Coag−A−Mate RA4自動化凝固計」[ジェネラル・ジアグノスチックス、オルガノン・テクニカ社製;オクラホマシティー、オクラホマ]を用い、これらのメーカーの使用説明書に従っておこなった。
これらのアッセイは、急解凍した血漿で各々の試験NAPを希釈した一連の希釈液をaPTTおよびPTを測定するためのアッセイカルーセルのウェル内に入れ、これにそれぞれ上記の標準試薬を200μlまたは100μl添加することによっておこなった。あるいは該アッセイは、NAPをHBSAで希釈した一連の希釈液を、Coag−A−Mateアッセイカルーセルのウェル内に入れた正常なヒト血漿100μlに添加した後、上記試薬をさらに添加しておこなった。
NAPの濃度を凝血時間に対してプロットし、倍加時間濃度、即ち、PTまたはaPTTの対照凝血時間を2倍にするNAPの特定の濃度を計算した。NAPの不存在下でのPTおよびaPTTにおける対照凝血時間はそれぞれ12.1秒間および28.5秒間であった。
以下の表2はAcaNAP5(配列番号4)、AcaNAP6(配列番号6)およびAcaNAPc2(配列番号59)の生体外抗凝固効果を示すもので、該抗凝固効果は、これらのNAPが存在しない対照アッセイに対して各々のPT凝血アッセイおよびaPTT凝血アッセイにおける正常なヒト血漿の対照凝血時間を2倍にする濃度(倍加濃度)で表示する。これらのデータは、これらの化合物がヒト血漿の凝固に対する強力な抗凝固剤として有用なことを示す。これらのデータはまた、未変性NAPとリコンビナントNAPが等価であることも示す。
図10Aおよび図10BはNAPで誘発されるPT(図10A)およびaPTT(図10B)が用量に依存した延長されることを示す。
実施例C
プロトロンビナーゼ阻害アッセイ
生理的プロトロンビナーゼ複合体に組み込まれた第Xa因子によるプロトロンビンの活性化の阻害剤として作用する本発明によるNAPの効能は各々の阻害定数Ki★の決定によって評価した。
プロトロンビナーゼ活性は共役アミド分解アッセイによって測定した。このアッセイにおいては、ヒトFXa、ヒト第Va因子(FVa)およびリン脂質ベシクルから前もって形成された複合体が先ず第一にヒトプロトロンビンをトロンビンに活性化させる。生成するトロンビンのアミド分解活性は色素原基質を用いて同時に測定される。精製されたヒトFVaはヘマトロジック・テクノロジーズ社(エセックスジャンクション、ヴェルモント)から入手した。精製されたヒトプロトロンビンはセルサス・ラボラトリーズ社(シンシナティ、オハイヨ)から入手した。ペンタファーム社(バーゼル、スイス)製の色素原基質「ペファクロム t−PA」(CH3SO2−D−ヘキサヒドロチロシン−グリシル−L−アルギニン−p−ニトロアニリド)はセンターケム社(タリタウン、ニューヨーク)から入手した。この基質は使用前に脱イオン水中において再形成させた。フォスフォチジルコリン(67%、w/v)、フォスファチジルグリセロール(16%、w/v)、フォスファチジルエタノールアミン(10%、w/v)およびファスファチジルセリン(7%、w/v)から成るリン脂質ベシクルは次の文献に記載の方法に従って界面活性剤の存在下で調製した:ルフ(Ruf、W.)、マイルズ(Miles、D.J.)、レヘムツラ(Rehemtulla、A.)およびエジングトン(Edgington、T.S.)、Methods in Enzymology、第222巻、第209頁〜第224頁(1993年)。リン脂質はアバンチ・ポーラー・リピズ社(アラバスター、アラバマ)から入手した。
プロトロンビナーゼ複合体はポリプロピレン製試験管内において、3mM CaCl2含有HBSA中でFVa、FXaおよびリン脂質ベシクル(PLV)を10分間結合させることによって調製した。マイクロタイタープレートの適当なウェル内において、該複合体50μlをHBSAで希釈したNAPまたはHBSAのみ[非阻害速度Voを測定する場合]50μlと混合した。室温で30分間インキュベートした後、ヒトプロトロンビンおよびトロンビンな対する色素源基質ペファクロムtPAを含有する基質溶液の添加によってトリプリケイト(triplicate)の反応を開始させた。HBSAの全体積(150μl)中の反応成分の最終濃度は次の通りである:NAP(0.025〜25nM)、FXa(250fM)、PLM(5μM)、プロトロンビン(250nM)、ペファクロムtPA(250μM、5X Km)およびCaCl2(3mM)。
FXaのプロトロンビナーゼ活性は実施例Aに記載のようにして、定常状態の条件下での405nmにおける吸光度の10分間の増加(速度)として測定した。吸光度は経時的にS字状に増加した。このことはFXa含有プロトロンビナーゼ複合体によるプロトロンビン活性化の共役反応の後、生成するトロンビンによってベファクロムtPAが加水分解されたことを示す。トリプリケイトの各々のウェルから得られたデータを一緒にし、次の文献に記載の方法に従い、吸光度対(時間)2の関数として反復線形最小二乗回帰分析により処理することによってプロトロンビン活性の初期速度(Vi)を決定した:[カーソン(Carson、S.D.)、Comput. Prog. Biomed.、第19巻、第151頁〜第157頁(1985年)]。NAP含有試料についての阻害された定常状態での初期速度(Vi)とプロトロンビナーゼFXaのみを含有する試料についての非阻害速度(Vo)の比を対応するNAPの濃度に対してプロットした。これらのデータを前記実施例Aの場合のような密着結合阻害剤に対する方程式に直接適用することによって、見掛け平衡の解離阻害定数Ki★を計算した。
以下の表3に、プロトロンビナーゼ複合体に組み込まれたヒトFXaによるプロトロンビン活性に対するリコンビナントAcaNAP5(配列番号4)、AcaNAP6(配列番号6)およびAcaNAPc2(配列番号59)(いずれの化合物も前述のようにしてピキア・パストリス中で調製した)の解離阻害定数(Ki★)を示す。これらのデータは、これらの化合物が、プロトロンビナーゼ複合体に組み込まれたヒトFXaの阻害剤として有用であることを示す。
実施例A、BおよびCに記載のデータはAcaNAP5とAcaNAP6がFXa類似の相互作用することを示す。この相互作用には酵素の触媒中心へのペプチドと高分子基質(プロトロンビン)の接近を直接的に制限する作用が含まれる。これに対し、AcaNAPc2とFXaとの相互作用は、この酵素と基質および/または補因子(第Va因子)との高分子相互作用を摂動させるだけであって、ペプチド基質の触媒回転を直接的に阻害しない(表1参照)。
実施例D
活性特異性決定のための生体外酵素アッセイ
FXa触媒活性またはTF/VIIa活性の選択的阻害剤として作用する本発明によるNAPの効能は、試験NAPが次の関連するセリンプロテアーゼの濃度よりも100倍高い濃度でのアッセイにおいて他の酵素を阻害するかどうかを決定することによって評価した:トロンビン、第Xa因子、第XIa因子、第XIIa因子、カリクレイン、活性タンパク質C、プラスミン、リコンビナント組織プラスミノーゲン活性化因子(rt−PA)、ウロキナーゼ、キモトリプシンおよびトリプシン。これらのアッセイはセリンプロテアーゼ阻害活性を有するNAPの特異性の決定にも利用した。
(1)酵素阻害アッセイの一般的プロトコル
全てのアッセイにはHBSA(実施例A参照)を緩衝液として使用した。全ての基質は脱イオン水中で再構成させ、アッセイの前にHBSAを用いて希釈した。セリンプロテアーゼ阻害の特異性を決定するためのアミド分解アッセイはコーニングマイクロタイタープレートの適当なウェル内に次の試料を入れておこなった:HBSA 50μl、HBSAで所定濃度に希釈したNAP溶液またはHBSAのみ(非阻害対照速度Voを測定する場合)50μlおよび特定の酵素溶液(以下の特異性酵素参照)50μl。周囲温度で30分間インキュベートした後、基質溶液50μlをトリプリケイトウェルに添加した。HBSAの全体積(200μl)中の反応成分の最終濃度は次の通りである:NAP(75nM)、酵素(750pM)および色素原基質(後述の濃度)。色素原基質の加水分解の初期速度は405nmにおける吸光度の5分間の変化(添加した基質の5%以下が加水分解される)として測定した。NAPを含有する試験試料の速度(Vi)は各々の酵素に関する非阻害対照速度(Vo)に対する%[(Vi/Vo)×100]として表示した。
(2)特異性酵素アッセイ
(a)トロンビンアッセイ
トロンビン触媒活性はペンタファーム社(バーゼル、スイス)から入手した色素原基次ペファクロムt−PA(CH3SO2−D−ヘキサヒドロチロシン−グリシル−L−アルギニン−p−ニトロアニリン)を用いて決定した。ペファクロムt−PAの最終濃度は250μMとした(約5倍のKm)。精製したヒトα−トロンビンはエンザイム・リサーチ・ラボラトリーズ社(サウスベンド、インディアナ)から入手した。
(b)第Xa因子アッセイ
第Xa因子の触媒活性はカビ・ファーマシア・ヘパル社(フランクリン、オハイオ)から入手した色素原基質S−2765を用いて決定した。全ての基質は使用前に脱イオン水中で再構成させた。S−2765の最終濃度は250μMとした(約5倍のKm)。精製したヒト第X因子はエンザイム・リサーチ・ラボラトリーズ社(サウスベンド、インディアナ)から入手した。第Xa因子(FXa)は次の文献に記載した方法により第X因子から活性化させた調製した:ボック(Bock、P.E.)、クレイク(Craig、P.A.)、オルソン(Olson、S.T.)およびシング(Singh)、P.Arch. Biochem. Biophys.、第273巻、第375頁〜第388頁(1989年)。
(c)第XIa因子アッセイ
FXIaの触媒活性はカビ・ファーマシア・ヘパル社(フランクリン、オハイオ)から入手した色素原基質S−2366(L−ピログルタミル−L−プロリル−L−アルギニン−p−ニトロアニリン)を用いて決定した。S−2366の最終濃度は750μMとした。精製したヒトFXIaはエンザイム・リサーチ・ラボラトリーズ社(サウスベンド、インディアナ)から入手した。
(d)第XIIa因子アッセイ
FXIIaの触媒活性はアメリカン・ジアグノスチカ社(グレニッチ、コネティカット)から入手した色素原基質スペクトロザイムFXIIa(H−D−CHT−L−グリシル−L−アルギニン−p−ニトロアニリン)を用いて決定した。スペクトロザイムFXIIaの最終濃度は100μMとした。精製したヒトFXIIaはエンザイム・リサーチ・ラボラトリーズ社(サウスベンド、インディアナ)から入手した。
(e)カリクレインアッセイ
カリクレインの触媒活性はカビ・ファーマシア・ヘパル社(フランクリン、オハイオ)から入手した色素原基質S−2302(H−D−プロリン−L−フェニルアラニル−L−アルギニン−p−ニトロアニリン)を用いて決定した。S−2302の最終濃度は400μMとした。精製したヒトカリクレインはエンザイム・リサーチ・ラボラトリーズ社(サウスベンド、インディアナ)から入手した。
(f)活性化タンパク質C(aPC)
活性化タンパク質Cの触媒活性はアメリカン・ジアグノスチカ社(グレニッチ、コネティカット)から入手した色素原基質スペクトロザイムPCa(H−D−リシル(−Cbo)−L−プロリル−L−アルギニン−p−ニトロアニリン)を用いて決定した。スペクトロザイムPCaの最終濃度は300μMとした(約4倍のKm)。精製したヒトaPCはヘマトロジック・テクノロジーズ社(エセックスジャンクション、ベルモント)から入手した。
(g)プラスミンアッセイ
プラスミンの触媒活性はカビ・ファーマシア・ヘパル社(フランクリン、オハイオ)から入手した色素原基質S−2366(L−ピログルタミル−L−プロリル−L−アルギニン−p−ニトロアニリン)を用いて決定した。S−2366の最終濃度は300μM(約4倍のKm)とした。精製したヒトプラスミンはエンザイム・リサーチ・ラボラトリーズ社(サウスベンド、インディアナ)から入手した。
(h)リコンビナイト組織プラスミノーゲン活性化因子(rt−PA)
rt−PAの触媒活性はペンタファーム社(バーゼル、スイス)から入手した基質ペファクロムt−PA(CH3SO2−D−ヘキサヒドロチロシン−グリシル−L−アルギニン−p−ニトロアニリン)を用いて決定した。ペファクロムt−PAの最終濃度は500μMとした(約3倍のKm)。ヒトrt−PA[「アクチベイス(Activase)」(登録商標)]はジェネンテク社(サウスサンフランシスコ、カリフォルニア)から入手した。
(i)ウロキナーゼ
ウロキナーゼの触媒活性はカビ・ファーマシア・ヘパル社(フランクリン、オハイオ)から入手した基質S−2444(L−ピログルタミル−L−グリシル−L−アルギニン−p−ニトロアニリン)を用いて決定した。S−2444の最終濃度は150μMとした(約7倍のKm)、ヒトの培養腎細胞から調製したヒトの精製ウロキナーゼ[「アブボキナーゼ(Abbokinase)」(登録商標)]はアブボット・ラボラトリーズ社(ノースシカゴ、イリノイ)から入手した。
(j)キモトリプシン
キモトリプシンの触媒活性はカビ・ファーマシア・ヘパル社(フランクリン、オハイオ)から入手した基質S−2586(メトキシ−スクシニル−L−アルギニニル−L−プロリル−L−チロシン−p−ニトロアニリン)を用いて決定した。S−2586の最終濃度は100μMとした(約8倍のKm)。精製した(3回の結晶化;CDI)ウシの膵キモトリプシンはワージントン・バイオケミカル社(フリーホルド、ニュージャーシー)から入手した。
(k)トリプシン
トリプシンの触媒活性はカビ・ファーマシア・ヘパル社(フリーホルド、オハイオ)から入手した色素原基質S−2222(N−ベンゾイル−L−イソロイシル−L−グルタミル[−メチルエステル]−L−アルギニン−p−ニトロアニリン)を用いて決定した。S−2222の最終濃度は300μMとした(約3倍のKm)。精製したヒト膵トリプシンはスクリップス・ラボラトリーズ社(サンジエゴ、カリフォルニア)から入手した。
以下の表4に、FXaおよび10種のセリンプロテアーゼのアミド分解活性に対するリコンビナントAcaNAP5(配列番号4)またはリコンビナントAcaNAP6(配列番号6)(いずれの化合物も前述のピキア・パストリス中で発現させた)の阻害効果を示す(該阻害効果は対照速度に対する%で表示する)。これらのNAPは他の関連するセリンプロテアーゼに比べてFXaの阻害に関して高度の特異性を示す。
以下の表5には、11種の選択したセリンプロテアーゼのアミド分解活性に対するリコンビナントAcaNAPc2(配列番号59)およびリコンビナントAcaNAP4(配列番号62)(いずれの化合物も前述のようにピキア・パストリア中において発現させた)の阻害効果を示す(該阻害効果は対照速度に対する%で表示する)。これらのデータは、これらのNAPが表5に示すセリンプロテアーゼに対して高度の特異性を示すことを例証する。
実施例E
FVIIa/TF複合体に対するNAPの阻害能を測定するためのアッセイ
(1)FVIIa/TFによるFIXの活性化アッセイ
この実施例においては、生体外でのプロトロンビンのタイムアッセイ(実施例B参照)での凝固反応の開始において主要な役割を果たす触媒複合体FVIIa/TFの阻害剤として作用する本発明によるNAPの効能を測定する。トリチウム標識した第IX因子のrFVIIa/rTF/PLV複合体による活性化は固有阻害定数Ki★の決定によって評価した。
凍結乾燥した精製リコンビナントヒトVIIa因子はバイオスパシフィック社(エメリーヴィル、カリフォルニア)から入手し、使用前にHBS(10mM HEPES、pH7.5、150mM塩化ナトリウム)中で再構成させた。精製ヒト因子Xはエンザイム・リサーチ・ラボラトリーズ社(サウスベンド、インディアナ)から入手した。第Xa因子(遊離FXa)は次の文献に記載の方法によって第X因子を活性化して調製した:ボック、クレイク、オルソンおよびシング、P.Arch. Biochem. Biophys.、第273巻、第375頁〜第388頁(1989年)。L−グルタミル−L−グリシル−L−アルギニルクロロメチルケトンで不可逆的に不活性化された活性部位ブロック化ヒト因子Xa(EGR−FXa)はヘマトロジック−テクノロジーズ社(エセックスジャンクション、ベルモント)から入手した。リコンビナントヒト組織因子(rTF)はバキュロウイルス(baculovirus)−発現系によって調製し、モノクローナル抗体アフィニティークロマトグラフィー(コルバス・インターナショナル社製:サンジエゴ、カリフォルニア)によって同種性(homogeneity)まで精製した。
精製したrTFアポタンパク質は次の文献に記載の方法により、ホスホチジルコリン(75%、w/v)とホスホチジルセリン(25%、w/v)から成るリン脂質ベシクルに界面活性剤の存在下で組み込んだ(rTF/PLV):ハフ(Ruf、w.)、マイルズ(Miles、D.J.)、レヘムツラ(Rehemtulla、A.)およびエジングトン(Edgington、T.S.)、Method in Enzymology、第222巻、第209頁〜第224頁(1993年)。リン脂質はアバンチ・ポーラー・リピズ社(アラバスター、アラバマ)から入手した。全てのアッセイにおける緩衝液としてはHBSA(牛血清アルブミンを0.1%w/v含有するHBS)を使用した。全ての試薬は特に言及しない限り、シグマ・ケミカル社(セントルイス、ミネソタ)から入手した。
rFVIIa/rTF複合体によるヒト3H−因子IX(FIX)の活性化は放射能標識活性ペプチドの放出を監視することによって測定した。精製したヒトFIXはヘマトロジック・テクノロジーズ社(エセックスジャンクション、ベルモント)から入手し、これを次の文献に記載の方法により、還元トリチウム化によって放射能標識した:ファンレンテン(Van Lenten)およびアッシュヴェル(Ashwell)、JBC、第246巻、第1889頁〜第1894頁(1971年)。得られたトリチウム化FIXの免疫喪失FIX欠損血漿[オルソ(Ortho)]中で測定した比活性は194凝固単位/mgであり、また、この活性の97%が保持された。放射性比活性は2.7×108dpm/mgであった。rFVIIa/rTF/PLVによる3H−FIXの活性化に対するKmは25nMであり、この値は未処理(非標識化)FIXに対して得られた値に等しかった。
Ki★を決定するためのアッセイは次の様にしておこなった。rFVIIaとrTF/PLVは5mM CaCl2を含有するHBSAを保有するポリプロピレン製試験管内において結合させ、10分間放置することによって複合体を形成させた。rFVIIa/rTF/PLVのアリコートを適当なポリプロピレン製マイクロ遠心分離管内においてEGR−FXaもしくは遊離FXa(存在する場合)およびHBSAで種々の濃度に希釈したNAP試験化合物溶液もしくはHBSAのみ[非阻害対照速度Voを測定する場合]と混合した。この混合物を周囲温度で60分間インキュベートした後、3H−FIXの添加によって反応を開始させた。HBSA420μl中の反応成分の最終濃度は次の通りである:rFVIIa(50pM)、rTF(2.7nM)、PLV(6.4μM)、EGR−FXaもしくは遊離FXa(300pM)、リコンビナントNAP(5〜1,500pM)、3H−FIX(200nM)およびCaCl2(5mM)。さらに、バックグラウンド対照反応は、rFVIIa以外の前記の全ての成分を含む系においておこなった。
所定の時間(8分間、16分間、24分間、32分間および40分間)経過後、等容量の50mM EDTA(溶媒:HBS)と0.5%BSAを保有するエッペンドルフ管内に反応混合物80μlを加えて反応を停止させ、次いで6%(w/v)トリクロロ酢酸160μlを添加し、沈殿したタンパク質を40℃での遠心分離処理(16,000g)に6分間付すことによって上澄みから分離させた。得られた上澄み中の放射能は、シンチバースBD(フィッシャー・サイエンティフィック社製;フェアローン、ニュージャーシー)に添加したトリプリケイトアリコートを除去することによって測定し、次いで液体シンチレーション計数管を用いて定量した。対照活性化速度は定常状態条件下で放出された溶性カウント成分の線形回帰分析によって決定した(3H−FIXの5%以下が消費された)。バックグラウンド対照(対照速度の1%以下)は全ての試料についての測定値から差し引いた。NAPの存在下での阻害定常状態速度(Vi)とrFVIIa/TFのみのときの非阻害対照速度(Vo)との比を対応するNAPの濃度に対してプロットした。これらのデータを密着結合性阻害剤に関する方程式に直接代入することによって、見掛けの平衡解離阻害定数Ki★を計算した:モリソン(Morrison、J.F.)およびワルシュ(Walsh、C.T.)、Adv. Enzymol.、第61巻、第201頁〜第300頁(1988年)。
前述のようにして調製したリコンビナントAcaNAP5、AcaNAP6、AcaNAPc2およびAcaNAP4に関するデータを以下の表6に示す。
(2)FAIIa/TFのアミド分解アッセイ
FAIIa/TF複合体のアミド分解活性の阻害剤として作用する本発明によるNAPの効能を、活性部位がブロックされたヒトFXa(EGR−FXa)の存在下および不存在下での阻害定数Ki★を決定することによって評価した。
rFVIIa/rTFのアミド分解活性はカビ・ファーマシア・ヘパル社(フランクリン、オハイオ)から入手した色素原基質S−2288(H−D−イソロイシル−L−プロリル−L−アルギニン−p−ニトロアニリン)を用いて決定した。この基質は使用前に脱イオン水中で再構成させた。3mM CaCl2含有HBSAを保有するポリプロピレン製試験管内においてrFVIIaとrTF/PLVを混合し、10分間放置することによって複合体を形成させた。Ki★を決定するためのアッセイは、コーニング・マイクロタイタープレートの適当なウエルに次の試料を入れておこなった:rFVIIa/rTF/PLV複合体50μl、EGR−FXa50μlおよびHBSAで種々の濃度に希釈したNAP試験化合物またはHBSAのみ[非阻害速度Voを測定する場合]50μl。周囲温度で30分間インキュベートした後、S−2288 50μlの添加によってトリプリケイト反応を開始させた。HBSAの全体積(200μl)中の反応成分の最終濃度は次の通りである:リコンビナントNAP(0.025〜25nM)、rFVIIa(750pM)、rTF(3.0nM)、PLV(6.4μM)、EGR−FXa(2.5nM)およびS−2288(3.0mM、3×Km)。
rFVIIa/rTF/PLVのアミド分解活性は、定数状態条件下において、「サーモ・マックス(登録商標)カイネティック・マイクロプレート・リーダー(モレキュラー・デバイシィズ社製;パロアルト、カリフォルニア)を用いて405nmでの吸光度の10分間の一次増加として測定した(基質の5%以下が消費された)。NAPの存在下で阻害された前平衡定常状態速度(Vi)と遊離FXaのみの存在下での非阻害速度(Vo)との比をNAPの対応する濃度に対してプロットした。これらのデータを密着結合性阻害剤に関する方程式(実施例E参照)に直接代入することによって、見掛けの平衡遊離阻害定数Ki★を計算した。
rFVIIa/rTF活性の阻害アッセイにおけるリコンビナントAcaNAPc2(配列番号59)、AceNAP4(配列番号62)、AcaNAP5(配列番号4)およびAcaNAP6(配列番号6)(前述のようにピキア・パストリス中で調製した試料)のKi★値を以下の表6に示す。これらのデータは、遊離FXaもしくは活性部位がブロックされたFXaの存在下または不存在下においてAcaNAPc2およびAceNAP4がヒトrFVIIa/rTF/PLV複合体の強力な阻害剤として有用であることを示す。AcaNAPc2P(実施例17参照)の生体外活性はAcaNAPc2の場合と実質的に同一であった。
実施例F
NAP活性の生体内モデル
(1)FeCl 3 で誘発された血小板依存性動脈血栓症のラットモデルにおけるNAPの抗血栓性活性の評価
NAPの抗血栓性特性(血栓の形成を阻害する特性は、急性欠陥血栓症の確立された実験用ラットモデルを用いて評価した。
ラット−FeCl3モデルは強力な抗血栓性化合物の評価に使用されている血小板依存性動脈血栓症によって十分に特徴づけられるモデルである:クルツ(Kurz、K.D.)、マイン(Main、B.W.)およびサンドゥスキー(Sandusky、G.E.)、Thromb. Res.、第60巻、第269頁〜第280頁(1990年)。このモデルにおいては、濾紙片に吸収させた調製直後のFeCl3溶液を用いて局部的に処理したラットの頚動脈のセグメント内に血小板に富む閉塞性血栓が形成される。FeCl3は処理した動脈セグメント内へ拡散し、冒された血管表面の脱内皮化をもたらすと考えられている。この結果、血液が内皮下構造内へ流入し、これによって血小板付着、トロンビン形成および血小板凝集がもたらされる。最終的な効果は閉塞性血栓形成である。FeCl3の塗布後にもたらされる閉塞性血栓形成の発生率に対する試験化合物の効果は超音波フロートメトリー(flowtometry)によって監視し、主要な最終的結果として利用する。頚動脈の血流測定にフロートメトリーを利用する手法は、クロットの形成を熱的に検知するオリジナルな方法[クルツ、マインおよびサンドゥスキー、Thromb. Res.、第60巻、第269頁〜第280頁(1990年)]の変法である。
(a)静脈内投与
雄のハーラン・スプレーク・ドーリーラット(420〜450g)を実験に供する前少なくとも72時間環境に順応させ、処置の12時間前は水を自由に与える以外は絶食させた。これらのラットをネンブタール(Nembutal)を用いて麻酔させ、次いで血圧の監視および薬剤と麻酔薬の投与のためにカテーテルを挿入した。正中線の頚部を切開した後、鈍器解剖と拡大によって左側の頚動脈を取り出し、頚部鞘から2cmの血管セグメントを分離させた。分離させた血管の隣接遠位端の下に絹の縫合糸を挿入することによって、血管の隣接端の周囲に超音波のフロープローブ[トランソニック(Transonic)]を装着させるための間隙を形成させた。固定アームを用いて該プローブを該間隙内に固定した。
上記の手術後、ラットを無作為に生理食塩水を投与する対照群とリコンビナントAcaNAP5を投与する処置群に分類した。実施例3に記載の方法によってペキア・パストリス中で調製した試験化合物を単一の静脈用ボラス(bolus)として、該フロープローブの設置後、血栓を誘発させる5分前に表7に示す投与量で投与した。t=0のとき、調製直後のFeCl3の35%水溶液10μlを吸収させた直径3mmの濾紙片(ワットマン#3)をフロープローブに接する分離頚動脈末端セグメントと接触させた。血圧、血流量、心拍数および呼吸を60分間監視した。閉塞の発生率(血流量がゼロになるとき)を主要な最終結果として記録した。
この生体内モデルでの血栓形成を阻害する抗血栓症剤としてのAcaNAP5(配列番号4)の効力は、以下の表7に示すように、血栓閉塞の発生率が投与量に応じて低減することによって例証された。
このモデルにおける血栓閉塞の50%を阻害する有効投与量(ED50)は上記のデータに基づき、閉塞の発生率を投与量に対してプロットすることによって決定することができる。この値を用いることによって、前述のモデルにおいて評価した他の抗血栓症剤とAcaNAP5の抗血栓症効能を直接的に比較することができる。
以下の表8に、周知の抗凝固剤とAcaNAP5のこのモデルにおけるED50値を示す。
表8において、「ED50」は被験動物の完全血栓閉塞の発生率を50%阻害する投与量として定義され、また、「rTAP」はリコンビナントマダニ抗凝固ペプチド[ブラスク(Vlask)ら、Thromb. Haemostas.、第70巻、第212頁〜第216頁(1993年)参照]を示す。
(b)皮下投与
ラット/FeCl3モデルにおいて、皮下投与後のAcaNAP5と低分子量ヘパリン[エノキサパリン;ラブノックス(Lovenox)、ローン−ポーレンク・ローラー(Rhone−Poulenc Rorer)]の抗血栓症効果を比較した。このモデル実験は、試験化合物を皮下投与してその効力を投与から30分間および150分間経過後に測定する以外は前述のモデル実験に準拠しておこなった。皮下投与は両方の頚動脈に対して逐次的におこなった。これらの実験結果により、AcaNAP5(配列番号4)が皮下投与後の生体内において有効な抗血栓症剤となることが明らかとなった。実験結果を以下の表9に示す(表中のED50は表8の場合と同意義である)。
(2)深部創傷出血の測定
深部創傷出血に対するNAPと低分子量ヘパリンの効果を比較した。
雄のラットに麻酔をかけた後、前記のFeCl3モデルの場合と同様の器具を装着させた(但し、FeCl3は頚動脈に投与しなかった)。頚動脈に達する傷をラットの首に外科的につけ、出血量を経時的測定した。即ち、AcaNAP5または低分子量ヘパリンを皮下投与してから3.5時間にわたって出血量を測定した。外科用スポンジを創傷部に詰め、該スポンジを30分毎に取り出し、ドラプキン(Drabkin)試薬[シグマ・ケミカル社製;セントルイス、ミズリー]中に浸漬した。該試薬は赤血球を溶解させ、ヘモグロビンと反応して変色する。変色した試料は550nmでの吸光度の測定によって定量し、該定量値からスポンジに含浸した血液量を決定した。
両方の試験化合物に関する投与応答特性を、該化合物の効力データと共に図15に示す。このモデルにおける閉塞性動脈血栓形成の阻害能の点ではAcaNAP5(配列番号4)は低分子量ヘパリンよりも強力であった。さらに、NAPを投与したラットの出血量は、低分子量ヘパリンを投与したラットの出血量よりも少なかった。
表7、表9および図15に示すデータから明らかなように、NAPはこの実験モデルにおける閉塞性血栓形成を効果的に阻害する。ヒトの血栓症も阻害するというこのデータの妥当性は、表8に示す他の抗凝固剤のデータと比較すれば明らかである。次の文献に記載のように、これらの抗凝固剤は上記と同じ実験モデルにおいて、該モデルにおけるNAPの場合と同じ方法によって評価されており、該抗凝固剤の抗血栓症に対する効力は臨床的に証明されている:「ヘパリン」・・・ヒルシュ(Hirsh、J.N.)、Engl.J.Med.、第324巻、第1565頁〜第1574頁(1992年)、ケイルンス(Cairns、J.A.)ら、Chest、第102巻、第456頁〜第481頁(1992年);「アルガトロバン」・・・ゴールド(Gold、H.K.)ら、J.Am.Coll. Cardiol.、第21巻、第1039頁〜第1047頁(1993年);「ヒルログ(商標)」・・・シャルマ(Sharma、G.V.R.K.)ら、Am.J.Cardiol.、第72巻、第1357頁〜第1360頁(1993年)、リドン(Lidon、R.M.)ら、Circulation、第88巻、第1495頁〜第1501頁(1993年)。
実施例G
ブタにおける急性冠動脈血栓症
この実験モデルにおいて用いたプロトコルは次の文献に記載の血栓症モデルの場合を修正したものである:ルッケシ(Lucchesi、B.R.)ら、Brit.J.Pharmacol.、第113巻、第1333頁〜第1343頁(1994年)。
実験動物に麻酔をかけ、動脈カテーテルおよび静脈カテーテルをそれぞれ左側の全身頚動脈および外部頚動脈に装着した。第4肋間の胸部を開口して心臓を露出させた。左前方下行(LAD)頚動脈を重層結合組織から分離させ、これにドップラーフロープローブ(Doppler flow probe)および17ゲージの結紮狭窄具を装着した。該動脈の内部には陽極電極を挿入した。
ベースライン測定をおこなった後、試験に供されるNAPまたはプラセボを外部頚動脈から投与した。投与から5分後、刺激電極に直流(300μA、DC)を印加して冠動脈内皮の内膜を損傷させることによって血栓形成を開始させた。電流は3時間流し続けた。実験動物の観察は、電流停止から1時間後または致死時までおこなった。
以下の表10には、実験動物にAcaNAP5またはAcaNAPc2P(実施例17参照)を漸増的に所定量投与したときの閉塞の発生率を例証するデータを示す。プラセボを投与した実験動物における閉塞の発生率は8/8(100%)であった。プラセボ処理した実験動物における閉塞までの時間は66.6±7.5分間(平均値±sem)であった。4時間の観察中に閉塞の認められなかったAcaNAP処理動物の血管の閉塞までの時間は統計的な比較を容易にするために任意の時間(240分間)を割り当てた。
表10のデータから明らかなように、AcaNAP5およびAcaNAPc2Pはこの実験モデルにおいては同等の効能を示し、いずれも投与量に応じて冠動脈の閉塞時間を遅延させた。さらに、両方の分子は投与量が0.03mg/kg i.v.のときでも、出血量を著しく増大させることなく閉塞時間を著しく遅延させる。
上記のデータが示すように、AcaNAP5とAcaNAPc2Pは好ましい治療指数を有する。
比較試験(Dunnett's multiple comparison test)。
Claims (12)
- 第VIIa因子/TF阻害活性を有し、かつ、以下のアミノ酸配列:
KATMQCGE NEKYDSC GSKE CDKKC KYDGVEEEDDE EP NVPC LV RVCH Q DCVCE E GFYRN K DDKCVS A EDCEL DNMDFIYPGTRN
を有するNAPドメインを有する、単離されたタンパク質。 - 前記NAPドメインを2つ有する、請求項1に記載のタンパク質。
- 第VIIa因子/TF阻害活性を有し、かつ、以下のアミノ酸配列
KATMQCGE NEKYDSC GSKE CDKKC KYDGVEEEDDE EP NVPC LV RVCH Q DCVCE E GFYRN K DDKCVS A EDCEL DNMDFIYPGTRN
を有するNAPドメインを有するタンパク質をコードする、cDNA分子。 - 請求項2に記載のタンパク質をコードする、cDNA分子。
- 請求項1〜2のいずれか1項に記載のタンパク質と、薬学的に受容可能なキャリアとを含む、薬学的組成物。
- 第VIIa因子/TF阻害活性を有し、かつ、以下のアミノ酸配列
KATMQCGE NEKYDSC GSKE CDKKC KYDGVEEEDDE EP NVPC LV RVCH Q DCVCE E GFYRN K DDKCVS A EDCEL DNMDFIYPGTRN
を有するNAPドメインを有する、単離されたタンパク質。 - KATMQCGE NEKYDSC GSKE CDKKC KYDGVEEEDDE EP NVPC LV RVCH Q DCVCE E GFYRN K DDKCVS A EDCEL DNMDFIYPGTRNのアミノ酸配列を有し、かつ、該配列のC末端にさらなるプロリン残基を含む、単離されたタンパク質。
- 前記NAPドメインを2つ有する、請求項7に記載のタンパク質。
- 請求項6に記載のタンパク質をコードするcDNA分子。
- 請求項7に記載のタンパク質をコードするcDNA分子。
- 請求項6に記載のタンパク質と、薬学的に受容可能なキャリアとを含む、薬学的組成物。
- 請求項7に記載のタンパク質と、薬学的に受容可能なキャリアとを含む、薬学的組成物。
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