JP3810613B2 - 無端ベルト成形用の塗布型及び無端ベルトの成形方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、複写機、プリンター、ファクシミリ等の画像形成装置等に用いられる金属製の無端ベルトに関し、特に、その無端ベルトを遠心成形によって成形する際の塗布型並びにその塗布型を使用した無端ベルトの成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、複写機、プリンター、ファクシミリ等の画像形成装置は、画像形成時の転写紙へのトナー定着に発熱体による加熱で行なっている。
【0003】
また、近年では、処理速度を高速化する手段として、発熱体の加熱昇温スピードを向上させることが考えられ、その一例として、図4に示すように、駆動ローラ1と従動ローラ2との少なくとも2軸間に無端ベルト3を架設し、この無端ベルト3を回動移動することによってトナーを定着させるベルト定着方式を採用したものが見受けられる。
【0004】
一方、このような無端ベルト3を成形する方法としては、特開平11−170284号公報や特開平11−320586号公報に示すように、遠心成形方法を用いたものが知られている。
【0005】
この遠心成形方法は、図5に示すように、回転する筒状の塗布型4の中に塗布液を注入すると共に高速回転の遠心力でその塗布液の厚さを均一化しつつ乾燥して塗布膜3’を成形した上で、その塗布膜3’硬化して無端ベルト3(図5では見かけ上は塗布膜3’と同一)とし、この状態で塗布型4から剥離する。
【0006】
そして、このような遠心成形方法によって成形された無端ベルト3は、膜厚の調整が塗布液の注入量で任意に調整することができると同時に塗布液の注入量を必要最小限とし得て材料効率を向上することができ、しかも、塗布型4の内部は閉空間であることから溶剤を除去する際には排気経路に溶剤トラップを設けることで外部に排出される溶剤を効率良く回収することができる等の優れた利点がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このような遠心成形方法で無端ベルト3を成形した場合、成形後の無端ベルト3が塗布型4に貼り付いて容易に剥離することができないという問題が生じていた。
【0008】
そこで、塗布型4の金型本体4aの内面に種々の離型性材質層4b(例えば、ガラスやフッ素樹脂系)を設けて、無端ベルト3の離型性を向上させることが考えられる。
【0009】
このような離型性材質層4bを設けた場合、塗布液を塗布膜3’とする乾燥までは塗布型4の内壁に貼り付いていることで厚さムラ等が発生しない塗布膜3’を得るという利点を有する。
【0010】
一方、その塗布膜3’の硬化反応段階での加熱では、無端ベルト3に至る前の塗布膜3’にその周縁部から浮きが発生し始め、甚だしい場合には膜全体が浮いてしまい、しかも、その浮いた部分は不均一に収縮して所望の径の無端ベルト3を成形することができなかった。
【0011】
そこで、その回避策として、一旦指触乾燥レベルにまで乾燥した時点で塗布膜3’を塗布型4から剥離し、その塗布膜3’の内側に円筒形の型を新たに挿入した状態で塗布膜3’を加熱して硬化することで無端ベルト3を得るという方法を採用した。
【0012】
しかしながら、このような成形方法では、塗布膜3’の乾燥工程と硬化工程とが完全に独立した別作業であることから、作業工程が増えるという基本的な問題が新たに発生するうえ、離型性材質層4bと塗布膜3’との間に空気が入ると、その空気が抜け出せないまま変形した無端ベルト3が成形されてしまうという問題も発生した。
【0013】
なお、離型性材質層4bと塗布膜3’との間に空気が入らないようにするために、塗布膜3’の内側に円筒形の型を挿入するためのクリヤランスを大きくした場合には、収縮が不均一となって、無端ベルト3に皺が発生してしまう。
【0014】
そこで、離型性材質層4bを用いた塗布型4で塗布膜3’を形成したまま無端ベルト3まで成形することが望ましいということ、並びに、無端ベルト3の浮きは周縁部から発生するということに注目し、塗布膜3’の乾燥硬化時に周縁部をリングで押さえることで浮きを防止してみた。
【0015】
この方法は有用な手段であり、塗布膜3’の周縁部を正確に押さえると、そのまま浮きが発生することなく良好な無端ベルト3を得ることができると判明したが、リングが所定の位置に正確にセットされなかったりリングと塗布膜3’との間に隙間が発生すると、塗布膜3’に塗布型4からの浮きが発生することが判明し、リングの設置には細心の注意と熟練とを要し、しかも、安定した一定品質の製品を提供することが困難であった。
【0016】
本発明は、これらの諸問題等を考慮し、離型性を向上したものでありながら、浮きの発生を防止することができ、しかも、作業工程の煩雑化並びに高熟練化を防止することができる無端ベルトを提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
その目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、遠心成形により無端ベルトを形成する無端ベルト成形用の塗布型において、略円筒形状の金型本体内にコロナ帯電装置を設置し、前記金型本体のフッ素系の高離型性材料からなる内壁面に塗布液を塗布して前記金型本体の回転に伴う遠心力によって塗布膜を形成する際に、前記コロナ帯電装置によるコロナ帯電により前記内壁面の表面を低離型特性の親溶剤性に変化させることを要旨とする。
【0019】
請求項2に記載の無端ベルト成形用の塗布型は、前記コロナ帯電装置の帯電部の長さは前記内壁面の幅よりも短く且つ前記無端ベルトの幅と略一致され、前記内壁面の周縁部は常に疎溶剤性を維持していることを要旨とする。
【0021】
請求項3に記載の無端ベルトの成形方法は、疎溶剤性に富む略円筒形状の金型本体の内壁面をコロナ帯電によって親溶剤性とした上で前記内壁面に塗布液を塗布し、該塗布液を前記金型本体の回転に伴う遠心力によって塗布膜を形成した後、該塗布膜を硬化させて無端ベルトを成形した上で前記内壁面を疎溶剤性に変化させることを要旨とする。
【0022】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の無端ベルト成形用の塗布型の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
図1(A)において、40は塗布型である。この塗布型40は、略円筒形状の金型本体41と、金型本体41の内側に位置する内壁面としての離型層42と、離型層42内に挿入されるコロナ帯電装置43とを備えている。
【0024】
離型層42は、離型性の高いフッ素樹脂皮膜等から形成され、コロナ帯電装置43の帯電部43aに対向すると共にその帯電によって親溶剤性に変化する塗布液塗布部42aと、この塗布液塗布部42aの両端(周縁)に位置して撥溶剤性を維持する非帯電部42bとを備えている。
【0025】
コロナ帯電装置43は、図1(B)〜図1(D)に示すように、離型層42に当接して回転する図示左右一対のローラ43bと、このローラ43b間に架設されてローラ43bの回転によって離型層42との相対位置が固定される軸43cと、軸43cの両端寄りに設けられた取付脚43dと、取付脚43d間に架設された帯電部43aとを備えている。
【0026】
次に、この塗布型40を用いた無端ベルト3の成形方法を説明する。
【0027】
[条件]
良好な無端ベルト3を成形るための条件としては、以下に示すようなものがある。
1.加熱時の膜の浮きはかならず周縁部から始まることから、硬化時の周縁部の浮きを防止すれば良い。
2.周縁部の浮き防止には塗布膜が周縁部領域でのみ密着性があれば良い。
3.塗布膜中央の画像形成領域は画像に影響を及ぼさない平滑面が良い。
4.塗布型との密着性が高いと剥離時に周縁部が極端に折れ曲がるので、塗布膜とは密着性が小さい方が良い。
5.塗布型と塗布膜との密着性は、塗布膜材質や塗布液の塗布型材質との親和性(親溶剤性なら離型性が低く、疎溶剤性なら離型性が高い)の大小が大きく関係しており、剥離が容易なためにはフッ素樹脂等の離型性の高い疎溶剤性の材質が良い。
6.塗布液を塗布した時の塗布型との親和性は小さい方が良いので、離型性の低い親溶剤性の材質が良い。
7.周縁部の浮きが発生しないように濡れが良い親溶剤性の材質が良い。
【0028】
上述した条件5〜7を同一物質で親溶剤性と疎溶剤性を同時に実現する物質は存在しないものの、ある種の処理を施すことによって両特性を可逆的に発現することができる。
【0029】
その一つとして、離型性の高いフッ素樹脂(疎溶剤性)は、その表面をコロナ帯電することによって親溶剤性に変化させ、その後放置しておくことによって離型性を回復することができる。
【0030】
そこで、図1(A)に示すように、このような物質で塗布型40の離型層42をフッ素樹脂皮膜で形成して、コロナ帯電した面に塗布液3’を塗布した際には密着性を向上させ、その後の乾燥硬化時には離型性を回復させることで、無端ベルト3の成形過程での浮き防止と成形終了時の離型性を容易に確保することができる。
【0031】
また、コロナ帯電量を均一にするためには、回転している塗布型40の内壁面(離型層42)とチャージャー(帯電部43a)との間の距離を一定間隔に保つことが必要であるため、本実施の形態では離型層42に塗布型40の回転に従動回転するローラ43b(ベアリング)を当接させ、ローラ43b間に架設された軸43cから帯電部43aを吊設して位置を固定している。
【0032】
この帯電部43aでコロナ帯電すると離型層42の塗布液塗布部42aが親溶剤性に変化し、非帯電部42bは撥溶剤性を維持する。
【0033】
この状態から、図2に示すように、塗布液3’をこの境界付近から塗布していくと、帯電処理を行った塗布液塗布部42aでは塗布液3’を馴染ませることができる。
【0034】
一方、非帯電部42bでは、図3(A)に示すように、塗布液3’の塗布直後は馴染んでいるようであるが、その後には、図3(B)に示すように、非帯電部42bの高離型性を有する疎溶剤性の特性によって塗布液塗布部42aへと押し戻されるように撥じかれると同時に液体の表面張力によって丸くなる。
【0035】
次により具体的な無端ベルト3の成形方法を説明する。
【0036】
[実施例]
円筒形のアルミの金型本体41の内面全域にフッ素樹脂被膜を塗布して離型層42を形成して塗布型40を構成した。こうして作成した塗布型40の内部に、図1(A)で示すコロナ放電装置43を挿入して−8kVの印加電圧でコロナ放電をして、離型層42の塗布液塗布部42aの帯電電圧を−2kVとした。
【0037】
次に、この帯電処理した塗布液塗布部42aを中心として、予めポリアミド酸であるポリイミド前駆体溶液(東レ社製トレニース井3000)と導電剤としてカーボンブラックを溶媒DMACに30%に希釈した溶液を塗布し、高速回転しながら塗布液を均一にした。
【0038】
その塗布液を塗布した後、回転を続けながら加熱して80℃で塗布液を乾燥した。その後、塗布型40の回転を止めて型を取り出し堰止めを取り外して、恒温槽に移し、先ず100℃で加熱して溶剤の完全除去をおこなったうえ、さらに、300℃の温度で加熱して完全な硬化をおこなった。
【0039】
塗布膜3’が充分に硬化した後、冷却して取り出したが、塗布膜3’に浮きはなく、良好に無端ベルト3が成形されていた。
【0040】
この無端ベルト3の両周縁部縁は、上述したように非帯電部42bの高離型性を有する疎溶剤性の特性によって塗布液塗布部42aへと押し戻されるように撥じかれる同時に液体の表面張力によって丸くなっているため、ナイフエッジが入りやすく、ナイフエッジで僅かに浮かし、手で周縁部より剥離したが、剥離はスムーズで剥離跡も残らなかった。また、無端ベルト3の中央は離型層42aに接する外表面も光沢を持ち、極めて平滑な面が得られた。
【0041】
[比較例1]
コロナ帯電をしない非処理のまま(図4参照)塗布型4に塗布液を塗布した。すると、塗布液は型に濡れず(馴染まず)にはじき、回転速度が緩やかであると塗布液は凝集してしまい、加熱硬化処理過程で塗布膜3’が周縁部から浮いてきてしまい、その浮いた塗布膜3’はさらに収縮して良好な無端ベルト3を成形することができなかった。
【0042】
[比較例2]
実施例1と同様の塗布型40で、コロナ帯電をチャージャー長さ100mmの帯電部43aで回転する塗布型40内に少しずつ送り込みながら帯電した。
【0043】
帯電終了後、帯電部43aを引き出した後、塗布液を塗布した。
【0044】
塗布液は塗布型40の内壁面に濡れで拡がっていったが、拡がり方にムラが生じ、回転速度が緩やかであると塗布液は部分的に凝集してしまい、周縁部にムラがあると加熱硬化処理時に周縁部から塗布膜3’が浮き、浮いた塗布膜3’はさらに収縮して良好な無端ベルト3を成形することができなかった。
【0045】
このように、もともとは高離型性の離型層42の塗布液塗布部42aを均一にコロナ帯電処理することによって、無端ベルト3の周縁部間に略一致幅の塗布液塗布部42aを低離型性の親溶剤性とし、無端ベルト3の周縁部よりも外側に位置する離型層42の周縁部は高離型性の疎溶剤性を維持することで塗布膜3’から無端ベルト3へと成形する過程での浮きを防止し、無端ベルト3を成形した後には塗布液塗布部42aの高離型性に復帰させることで剥離性の良い塗布型40とするとができる。
【0046】
そして、成形後の無端ベルト3は、その周縁部を切り落として所定の寸法として使用される。また、このような遠心成形方法で成形された無端ベルト3をリコー社製フルカラー複写機に搭載して画像を評価した。
【0047】
その結果、上記実施例で成形された無端ベルト3は、常に表面がなめらかで、画像も良好(トナー定着良好)であった。
【0048】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に記載の発明にあっては、遠心成形により無端ベルトを形成する無端ベルト成形用の塗布型において、略円筒形状の金型本体内にコロナ帯電装置を設置し、前記金型本体のフッ素系の高離型性材料からなる内壁面に塗布液を塗布して前記金型本体の回転に伴う遠心力によって塗布膜を形成する際に、前記コロナ帯電装置によるコロナ帯電により前記内壁面の表面を低離型特性の親溶剤性に変化させることにより、遠心成形による無端ベルトの成形では硬化処理までの塗布型からの浮き防止と硬化処理後の無端ベルトの剥離の容易性とを向上することができる。
【0050】
請求項2に記載の無端ベルトの成形用の塗布型は、前記コロナ帯電装置の帯電部の長さは前記内壁面の幅よりも短く且つ前記無端ベルトの幅と略一致され、前記内壁面の周縁部常に疎溶剤性を維持していることにより、塗布液塗布後の無端ベルト周縁部に相当する部位の剥離性を向上することができる。
【0052】
請求項3に記載の無端ベルトの成形方法は、疎溶剤性に富む略円筒形状の金型本体の内壁面をコロナ帯電によって親溶剤性とした上で前記内壁面に塗布液を塗布し、該塗布液を前記金型本体の回転に伴う遠心力によって塗布膜を形成した後、該塗布膜を硬化させて無端ベルトを成形した上で前記内壁面を疎溶剤性に変化させることにより、コロナ帯電処理をしたフッ素系材質の高離型性層を無端ベルト成形に用いることで浮きが無く、かつ容易に剥離することができるので良好な無端ベルトを成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に関わる無端ベルト成形用の塗布型を示し、(A)は塗布型の縦断面図、(B)は塗布型の要部の拡大断面図、(C)は図1(B)のA−A線に沿う断面図、(D)は図1(B)のB−B線に沿う断面図である。
【図2】同じく、塗布膜成形状態の塗布型の断面図である。
【図3】同じく、(A)は塗布液を塗布した直後の塗布型周縁部の拡大断面図、(B)は塗布液を塗布した後の塗布型周縁部の拡大断面図である。
【図4】定着装置の要部の斜視図である。
【図5】従来の無端ベルト成形用の塗布型の断面図である。
【符号の説明】
3…無端ベルト
3’…塗布膜
40…塗布型
41…金型本体
42…離型層
42a…塗布液塗布部
42b…非帯電部
43…コロナ帯電装置
Claims (3)
- 遠心成形により無端ベルトを形成する無端ベルト成形用の塗布型において、略円筒形状の金型本体内にコロナ帯電装置を設置し、前記金型本体のフッ素系の高離型性材料からなる内壁面に塗布液を塗布して前記金型本体の回転に伴う遠心力によって塗布膜を形成する際に、前記コロナ帯電装置によるコロナ帯電により前記内壁面の表面を低離型特性の親溶剤性に変化させることを特徴とする無端ベルト成形用の塗布型。
- 前記コロナ帯電装置の帯電部の長さは前記内壁面の幅よりも短く且つ前記無端ベルトの幅と略一致され、前記内壁面の周縁部は常に疎溶剤性を維持していることを特徴とする請求項1に記載の無端ベルト成形用の塗布型。
- 疎溶剤性に富む略円筒形状の金型本体の内壁面をコロナ帯電によって親溶剤性とした上で前記内壁面に塗布液を塗布し、該塗布液を前記金型本体の回転に伴う遠心力によって塗布膜を形成した後、該塗布膜を硬化させて無端ベルトを成形した上で前記内壁面を疎溶剤性に変化させることを特徴とする無端ベルトの成形方法。
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