JP3810566B2 - 高周波用パッケージ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、マイクロ波、ミリ波等の高周波信号を伝える信号線路をもつ高周波用パッケージに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体素子の動作速度の高速化、高周波化に伴い、数GHz〜数十GHz以上の高周波信号を効率よく伝送する信号線路をもつ高周波用パッケージが求められている。
【0003】
従来用いられている高周波用パッケージとして、例えば図5に示すように、下面にグランドプレーンとなる金属層14が形成され、上面に高周波信号を伝搬する信号線路11が形成されるセラミック等の絶縁基板12と、半導体集積回路等の半導体素子10を気密封止するための金属等の蓋部材8と信号線路11とを絶縁する絶縁枠部材13とを備えた高周波用パッケージ100が知られている。信号線路11は、絶縁基板12と絶縁枠部材13と蓋部材8とにより構成されるパッケージの内側から外側にかけて導出され、絶縁基板12と絶縁枠部材13とで挟持された気密封止部により気密に封止されている。また信号線路11は、半導体素子10の電極とアルミニウムまたは金の接続線9で接続されている。
【0004】
また、上記の高周波用パッケージ100は、他の図示しない信号線路とのアイソレーションを確保するため、例えば図6に示すように、信号線路11の両側に設けられるグランドプレーン15と、信号線路11上部の絶縁枠部材13aと蓋部材8下部の絶縁枠部材13bとの間に設けられるグランドプレーン16とを備えている。それぞれのグランドプレーン14、15および16は導体ビア17により電気的に接続されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記の従来の高周波用パッケージ100において、信号線路11は気密封止されたパッケージ内側と外側とを電気的に接続している。このため、気密封止部分では、絶縁基板12と絶縁枠部材13とにより挟まれて、それらの厚みや誘電率を同一とすることによりストリップライン構造となる。一方、パッケージ内側部分および外側部分では、下面にグランドプレーン14が形成された絶縁基板12と上部空間に挟まれたマイクロストリップライン構造もしくはグランド付きコプレーナ構造となる。信号線路11の線路幅が全ての箇所において同一であると、気密封止部分における特性インピーダンスがパッケージ内側部分および外側部分の特性インピーダンスより低下するので、信号線路11を伝搬する信号に対して特性インピーダンスの不整合による反射損失が生じるという問題がある。
【0006】
そこで、特公平8−12887号公報に開示される高周波用パッケージにおいては、例えば図7に示すように、気密封止部分の信号線路11bの線路幅をパッケージ内側部分および外側部分の信号線路11aの線路幅より狭くして気密封止部分の特性インピーダンスの整合をとっている。実際には、信号線路の線路幅が急激に変化する信号線路11aと信号線路11bとの接続部分において反射損失等が生じるため、信号線路11aと信号線路11bとの間に線路幅を徐々に変化させたテーパ部11cを設けるのが好ましい。
【0007】
しかしながら、特公平8−12887号公報に開示される高周波用パッケージジでは、以下に述べる問題点により、20GHzを越える高周波信号に対して信号線路11の伝送特性が劣化することが判明した。
【0008】
(1) パッケージ内側部分および外側部分の信号線路11aと気密封止部分の信号線路11bとを接続するテーパ部11cの部分の特性インピーダンスが信号線路11aおよび11bの特性インピーダンスと不整合を起こす。テーパ部11cは、信号線路11aと信号線路11bとを直接接続したときの反射損失等を低減するために設けられている。しかし、信号線路11の特性インピーダンスは主要部分である信号線路11aおよび11bで整合が取れるように断面構造が決定されるため、テーパ部11cの部分の特性インピーダンスは、気密封止部分において比較的小さく、パッケージ内側部分および外側部分において比較的大きくなり、信号線路11aおよび11bの特性インピーダンスと不整合を起こす。
【0009】
(2) 図8に示すように、信号線路11の上部、両側および下部に位置するグランドプレーン14、15および16をそれぞれ電気的に接続する導体ビア17とグランドプレーン16との接続点16bと、グランドプレーン16の端部16aとの距離Lが信号線路11に伝送する高周波信号の波長λの1/4以上となる。特開平9−46008号公報においては、グランドプレーンの端部とこの端部に最も近い導体ビアまでの距離を信号線路に伝送する高周波信号の波長λの1/4未満に形成すると、高周波信号を効率よく伝送させることができることが開示されている。しかし、図8に示す距離Lを可能な限り小さくすることは製造コストを上昇させるばかりでなく、ある程度の距離Lが残り、高周波信号の伝送特性が劣化する。
【0010】
本発明は、上記の(1)および(2)のような問題を解決するためになされたものであり、特性インピーダンスの不整合および伝送特性の劣化を防止し、高周波特性に優れた高周波用パッケージを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1記載の高周波用パッケージによると、下面に金属層を有する絶縁基板と、この絶縁基板の上面に接合され、内側に絶縁基板の上面に搭載された高周波回路または半導体素子を収容するための空間を有する絶縁枠部材と、絶縁基板の上面に絶縁枠部材の内側から外側にかけて形成され、一部が絶縁基板と絶縁枠部材とで挟持される信号線路と、絶縁基板の上面、ならびに絶縁枠部材の表層あるいは内層に設けられる複数層のグランドパターンと、複数層のグランドパターンの各グランドパターンを互いに電気的に接続する複数本のビアあるいはスルーホールとを備えている。そして、信号線路上部の絶縁枠部材の内部に設けられるグランドパターンの幅は絶縁枠部材内に設けられる複数本のビアあるいはスルーホール間の距離と略同等であり、信号線路はマイクロストリップライン、ストリップライン、エンベッドマイクロストリップラインの3種類で構成されている。
【0012】
ここで、マイクロストリップラインは、例えば図9(A)に示すように、下面に金属層としてのグランドパターン23を有する誘電体22の上面に信号線路21を設けた構造であり、ストリップラインは、例えば図9(B)に示すように、信号線路21とグランドパターン23および24とが誘電体22によって隔てられている構造であり、エンベッドマイクロストリップラインは、例えば図9(C)に示すように、ストリップラインの一方のグランドパターンがない構造である。
【0013】
信号線路上部の絶縁枠部材の内部に設けられるグランドパターンの幅が複数本のビアあるいはスルーホール間の距離と略同等であるので、マイクロストリップライン構造であるパッケージ内側部分および外側部分と、ストリップライン構造である気密封止部分との間にエンベッドストリップライン構造部分が形成される。マイクロストリップライン、ストリップライン、エンベッドマイクロストリップラインの3種類の構造中、特性インピーダンスが等しくなる信号線路の線路幅は、大きい順にマイクロストリップライン、エンベッドマイクロストリップライン、ストリップラインである。このため、マイクロストリップライン構造部分の信号線路の線路幅とストリップライン構造部分の信号線路の線路幅との間の線路幅をもつ信号線路の接続部をエンベッドマイクロストリップライン構造部分に形成することにより、上記の信号線路の接続部で特性インピーダンスが不整合を起こすのを防止することができる。
【0014】
さらに、上記のエンベッドマイクロストリップライン構造は比較的容易に形成することができるので、従来と同様な製造プロセスを採用することができ、製造工数および製造コストを従来並に低下させることができる。
【0015】
さらにまた、絶縁枠部材の内部に設けられるグランドパターンの端部から、この端部に最も近いビアあるいはスルーホールとの接続点までの距離をほぼゼロとすることができる。したがって、スタブによる高周波信号の伝送特性の劣化を防止することができる。
【0016】
絶縁基板ならびに絶縁枠部材としては、例えばアルミナやムライト等のセラミックスやガラスセラミックス、あるいはテフロン−ガラスエポキシ−ポリイミド等の樹脂系材料などを用いることができる。
【0017】
高周波回路または半導体素子を気密封止するための蓋部材は、例えば金属等からなり、Au−Sn等のロウ材を用いて絶縁枠部材と接合し、高周波回路または半導体素子を収容するための空間を気密封止することができる。また蓋部材として、絶縁枠部材と同様の絶縁材料を用いてもよい。
【0018】
信号線路は、CuやMo−Mn、Cu−W、Auなどを用いて厚膜印刷あるいは薄膜形成、メッキ処理などの方法により形成され、その厚みや幅は伝搬させる高周波信号ならびに高周波用パッケージの仕様に応じて適宜設定することができる。
金属層、グランドパターン、ならびにビアあるいはスルーホールは、信号線路と同様の材料を用いて同様の方法により形成される。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を示す実施例を図面に基づいて説明する。
本発明の一実施例による高周波用パッケージを図1〜図4に示す。
図2に示すように、高周波用パッケージ20は、下面にグランドプレーンとなる金属層4が形成され、上面に高周波信号を伝搬する信号線路1が形成されるセラミック等の絶縁基板2と、半導体集積回路等の半導体素子10を気密封止するための金属等の蓋部材8と信号線路1とを絶縁する絶縁枠部材3とを備えている。信号線路1は、絶縁基板2と絶縁枠部材3と蓋部材8とにより構成されるパッケージの内側から外側にかけて導出され、絶縁基板2と絶縁枠部材3とで挟持された気密封止部により気密に封止されている。また信号線路1は、半導体素子10の電極とアルミニウムまたは金の接続線9で接続されている。
【0020】
図1に示すように、高周波用パッケージ20は、他の図示しない信号線路とのアイソレーションを確保するため、信号線路1の両側に設けられるグランドパターンとしてのグランドプレーン5と、信号線路1上部の絶縁枠部材3aと蓋部材8下部の絶縁枠部材3bとの間に設けられるグランドパターンとしてのグランドプレーン6とを備えている。それぞれのグランドプレーン4、5および6は導体ビア7により電気的に接続されている。
【0021】
図3に示すように、信号線路1は、パッケージ内側部分および外側部分の信号線路1aと、気密封止部分の信号線路1bと、信号線路1aと信号線路1bとを接続するテーパ部1cとから構成されている。パッケージ内側部分および外側部分の信号線路1aは上部が空間のマイクロストリップライン構造を構成しており、気密封止部分の信号線路1bはストリップライン構造を構成している。このため、信号線路1aおよび1bの線路幅と、信号線路1からグランドプレーン4、5および6までの距離を変化させることにより、信号線路1aと信号線路1bとの部分の特性インピーダンスを整合させることができる。
【0022】
また、信号線路1aと信号線路1bとを接続するテーパ部1cは、上部にグランドプレーンが設けられていないエンベッドマイクロストリップライン構造であるので、テーパ部1cの部分の特性インピーダンスは気密封止部分の信号線路1bに比べて大きくなる傾向にある。しかし、信号線路1bから信号線路1aにかけて線路幅が徐々に大きくなるため、テーパ部1cの部分の特性インピーダンスを小さく抑えることができる。すなわち、テーパ部1cの部分の特性インピーダンスは、上部グランドプレーンが設けられていないことにより特性インピーダンスが大きくなる傾向と、信号線路の線路幅が徐々に大きくなることにより特性インピーダンスが小さくなる傾向とが相殺され、結果として特性インピーダンスの不整合を防止することができる。
【0023】
図4に示すように、気密封止部分の信号線路1bの上部グランドプレーン6の幅Wは、導体ビア7間の距離W7と略同等である。このため、グランドプレーン6の端部6aからこの端部6aに最も近い導体ビア7との接続点6bまでの距離をほぼゼロとすることができる。
【0024】
本実施例においては、パッケージ内側部分および外側部分の信号線路1aは上部が空間のマイクロストリップライン構造を構成しており、気密封止部分の信号線路1bはストリップライン構造を構成しており、テーパ部1cの部分は上部にグランドプレーンが設けられていないエンベッドマイクロストリップライン構造を構成している。そして、気密封止部分の信号線路1bの上部グランドプレーン6の幅Wは導体ビア7間の距離W7と略同等である。したがって、テーパ部1cの部分の特性インピーダンスと、信号線路1aおよび1bの部分の特性インピーダンスとの不整合を防止することができる。
【0025】
さらに、本実施例においては、エンベッドマイクロストリップライン構造を比較的容易に形成することができるので、従来と同様な製造プロセスを採用することができ、製造工数および製造コストを従来並に低下させることができる。
【0026】
さらにまた、本実施例においては、グランドプレーン6の端部6aからこの端部6aに最も近い導体ビア7との接続点6bまでの距離をほぼゼロとすることができる。したがって、スタブによる高周波信号の伝送特性の劣化を防止することができる。
【0027】
本実施例では、グランドプレーン4、5および6を導体ビア7を介して互いに電気的に接続する例について説明したが、本発明では、スルーホールを介して各グランドパターンを互いに電気的に接続してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例による高周波用パッケージを示すものであって、図2の主要部の拡大斜視図である。
【図2】本発明の一実施例による高周波用パッケージを示す縦断面図である。
【図3】図2の主要部の拡大平面図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】従来技術の高周波用パッケージを示す縦断面図である。
【図6】図5の主要部の拡大斜視図である。
【図7】図5の主要部の拡大平面図である。
【図8】図7のVIII− VIII 線断面図である。
【図9】信号線路の構造を説明するための模式的断面図であって、(A)はマイクロストリップラインを示し、(B)はストリップラインを示し、(C)はエンベッドマイクロストリップラインを示すものである。
【符号の説明】
1 信号線路
2 絶縁基板
3 絶縁枠部材
4 グランドプレーン(金属層)
5、6 グランドプレーン(グランドパターン)
7 導体ビア
8 蓋部材
10 半導体素子
20 高周波用パッケージ

Claims (1)

  1. 下面に金属層(4)を有する絶縁基板(2)と、
    前記絶縁基板(2)の上面に接合され、内側に前記絶縁基板(2)の上面に搭載された高周波回路または半導体素子(10)を収容するための空間を有する絶縁枠部材(3)と、
    前記絶縁基板(2)の上面に前記絶縁枠部材(3)の内側から外側にかけて形成され、一部が前記絶縁基板(2)と前記絶縁枠部材(3)とで挟持される信号線路(1)と、
    前記絶縁基板(2)の上面に設けられる第1グランドパターン(5)と、
    前記絶縁枠部材(3)の内層に設けられる第2グランドパターン(6)と、
    前記絶縁枠部材内に設けられ、前記第1グランドパターン(5)と前記第2グランドパターン(6)とを電気的に接続する複数本のビアあるいはスルーホール(7)とを備え、
    前記第2グランドパターン(6)の幅は前記複数本のビアあるいはスルーホール(7)間の距離と略同等であり、
    前記信号線路(1)は、
    前記絶縁枠部材(3)の内側の内側信号線路と、
    前記絶縁枠部材(3)の外側の外側信号線路と、
    前記絶縁基板(2)と前記絶縁枠部材(3)とで挟持される部分において、前記内側信号線路および前記外側信号線路よりも幅の狭い気密封止部分信号線路と、
    前記内側信号線路と前記気密封止部分信号線路とを接続し、前記絶縁基板(2)と前記絶縁枠部材(3)とで挟持される部分に形成され、前記気密封止部分信号線路から前記内側信号線路にかけて幅が徐々に大きくなる内側テーパ部信号線路と、
    前記外側信号線路と前記気密封止部分信号線路とを接続し、前記絶縁基板(2)と前記絶縁枠部材(3)とで挟持される部分に形成され、前記気密封止部分信号線路から外側信号線路にかけて線路幅が徐々に大きくなる外側テーパ部信号線路とを有し、
    前記内側信号線路および前記外側信号線路は、いずれも下面に前記金属層(4)を有するマイクロストリップラインであり、
    前記気密封止部分信号線路は、下面に金属層(4)を有し、上面に前記第2グランドパターン(6)を有するストリップラインであり、
    前記外側テーパ部信号線路および前記内側テーパ部信号線路は、いずれも下面に前記金属層(4)を有し、上面に前記第2グランドパターン(6)が形成されていないエンベッドマイクロストリップラインであることを特徴とする高周波用パッケージ。
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