JP3808777B2 - 記録テープカートリッジ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気テープ等の記録テープが巻装された単一のリールを回転可能に収容した記録テープカートリッジに関する。
【0002】
【従来の技術】
コンピュータ等の外部記録媒体として磁気テープ等の記録テープが用いられている。この記録テープとして、保存時の収容スペースが小さく、大容量の情報が記録できる、記録テープが巻装された単一のリールを収容する記録テープカートリッジが採用されている。
【0003】
この記録テープカートリッジでは、それぞれ樹脂材料にて成形された上ケースと下ケースとの接合より成るケース内に、記録テープを巻装した単一のリールが回転可能に収容されている。このケースには開口が形成されており、この開口から記録テープを引き出しドライブ装置側の巻取リールに巻き取らせるようになっている。
【0004】
そして、開口から塵埃等が侵入して記録テープに付着しないように、この開口は遮蔽部材であるドアによって開閉されるようになっている。すなわち、記録テープカートリッジの非使用時には開口はドアによって閉塞され、記録テープカートリッジの使用時にはドアが移動または回動して開口が開放されるようになっている。
【0005】
このようなドアを備えた記録テープカートリッジとしては、ケースのドライブ装置への装填方向に沿った側壁に設けられた開口と、前記側壁の内側を前記装填方向に沿ってスライドして開口を開閉するドアと、このドアを開口閉塞方向に付勢するばねと、ドアに設けられケースのドライブ装置への装填動作によって該ドライブ装置の開閉部材に係合しつつドアを開口開放方向にスライドさせる操作部とを備えた構成が知られている。
【0006】
この構成によって、単にケース(すなわち、記録テープカートリッジ)をドライブ装置へ装填する動作によって、具体的にはドライブ装置のバケット上に載置されたケースが該バケットと共に上記装填方向へ移動することによって、ドアに設けられた操作部がドライブ装置に固定された(バケットと相対移動する)開閉部材に係合しつつドアをケースに対しスライドさせ開口が開放される。これにより、ドライブ装置は、単に操作部に係合可能な位置に開閉部材を固定配置すれば足り、構造が簡単である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような従来の記録テープカートリッジでは、開口を開放する際にドアの操作部がドライブ装置の開閉部材に係合すると、該係合部位廻りの回転モーメントが作用し、ケース(すなわち、記録テープカートリッジ)が上記係合部位廻りに回動し上記装填方向に対し傾斜するという問題があった。特に、ばねの付勢力に抗しつつ開口を開放するので、この回転モーメント(装填方向の押し込み力)が大きくケースがドライブ装置内で傾斜しやすい。
【0008】
この状態でケースをドライブ装置内へ押し込んでいくと、ケースがドライブ装置内で擦れ、ケースが傷ついたり、ドライブ装置内に磨耗粉が発生したり、ケースがドライブ装置内でスタックしたりする恐れがある。
【0009】
そこで、この回転モーメントを打ち消すために、下ケースの上記装填方向先頭側の面(前面)における開口が形成された側璧と離間した位置にドライブ装置のバケットに設けた係合部材を係合させ、この係合状態を維持しつつケースをバケットと共に上記装填方向へ移動し開口を開放する構成が考えられている。
【0010】
しかしながら、上記の通り樹脂材料にて成形された上ケースと下ケースとの接合より成るケースでは、上記前面を含む外面は、シボ加工等を施された意匠面とされ成形後の型抜き用の抜き勾配が大きく寸法精度が低い。このようなケース前面にドライブ装置の係合部材を係合させると、ケースはバケット上での位置精度が低く、上記回転モーメントを打ち消されつつも該バケット上で若干傾斜した状態でドライブ装置へ装填される。このため、ドアには、そのスムースな移動(すなわち、開口開放動作)を妨げる原因となる開口開放方向以外の分力が作用しやすいという問題があった。
【0011】
また、下ケースの前面は、上記抜き勾配によって上記装填方向に対し下向きに傾斜した傾斜面となっているため、上記回転モーメントを打ち消す際の反力によってケースにはその前部を浮き上がらせる方向の力が作用する。この力によってケースが上記装填方向に対し上下方向に傾斜すると、この傾斜もドアのスムースな移動を妨げる原因となる。
【0012】
本発明は上記事実を考慮して、ドライブ装置への装填動作によってドアを開口開放方向に移動させる際に、該装填方向に対するケースの傾斜を防止できる記録テープカートリッジを得ることが目的である。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明に係る記録テープカートリッジは、記録テープが巻装された単一のリールを回転可能に収容する略矩形状のケースと、前記ケースのドライブ装置への装填側角部を切り欠いて形成され、前記記録テープの端部に取り付けられたリーダ部材を引き出すための開口と、前記ケースに前記開口を開閉可能に設けられ、前記ケースの前記ドライブ装置への装填動作によって該ドライブ装置の開閉部材に係合しつつ前記開口の開放側へ移動する遮蔽部材と、前記ケースの前記開口側とは反対側の側部に、前記ドライブ装置への装填側及び該装填側とは反対側に開口しないように設けられ、前記開口を開放する際に前記ドライブ装置の係合部材が係合する凹部と、を備えている。
【0014】
請求項1記載の記録テープカートリッジでは、記録テープの非使用時には、遮蔽部材によって開口が閉塞されてケース内への塵埃等の侵入が阻止される。これにより、ケース内に収容されているリールに巻装された記録テープへの塵埃等の付着が防止される。
【0015】
一方、記録テープを使用する際には、記録テープカートリッジ(ケース)はドライブ装置へ装填される。この装填動作によって、遮蔽部材がドライブ装置の開閉部材に係合しつつ開口の開放方向に移動し、開口が開放される。
【0016】
このとき、ケースの開口側とは反対側の側部に設けられた凹部にはドライブ装置の係合部材が係合し、ケースに作用する遮蔽部材と開閉部材との係合部位廻りの回転モーメントを打ち消す。
【0017】
これにより、ケースは、遮蔽部材と開閉部材との係合部位廻りに回動して上記装填方向に対し傾斜することなくドライブ装置へ装填され、ドライブ装置内で擦れることもない。
【0018】
また、上記の凹部では、係合部材との係合部位を意匠面とする必要がないため、例えば、該係合部位は上記装填方向を向くと共に型抜き用の抜き勾配を最小とした係合面とすることができる。抜き勾配が小さい係合面は、寸法精度が高いため、上記回転モーメントを打ち消すためにドライブ装置の係合部材が係合して(押圧されて)も、ケースのドライブ装置への装填過程(例えば、バケット上)での位置精度を確保できる。また、係合面の抜き勾配が小さいと、ケースの上記装填方向に対する上下方向の傾きも防止(抑止)できる。以上により、遮蔽部材はスムースに開口を開放する。
【0019】
このように、請求項1記載の記録テープカートリッジでは、ドライブ装置への装填動作によってドアを開口開放方向に移動させる際に、該装填方向に対するケースの傾斜を防止できる。
【0021】
請求項2記載の発明に係る記録テープカートリッジは、請求項1記載の記録テープカートリッジにおいて、前記凹部は、前記ケースの前記開口側とは反対側の側部における長手方向中央部に設けられている。この構成では、ドライブ装置の係合部材がケースを開口形成側(凹部が設けられた側壁と反対側の側壁側)に押し付けて位置決めし遮蔽部材と開閉部材とを確実に係合させる機能をも有する場合に、この係合部材によってケースを上記装填方向に直交する方向に対し傾けることなく押し付けることができる。また、凹部(係合面)と係合部材との係合によるケースを上下方向に傾斜させる力(モーメント)の発生も防止または微小に抑止できる。
【0022】
請求項3記載の発明に係る記録テープカートリッジは、請求項1または請求項2記載の記録テープカートリッジにおいて、前記凹部は、前記開口を開放する際に前記ドライブ装置の係合部材が係合する係合面と、カートリッジ自動搬送装置の収容部に収容された状態で該収容部内に設けられた位置決め部材によって前記開口側に押圧される押圧面とを有する。
この構成では、カートリッジ自動搬送装置の収容部に収容された記録テープカートリッジは、凹部が位置決め部材に押圧されると、該収容部内で開口側に片寄せられ(押し付けられ)位置決めされる。このように、ケースの一方の側部に設けられた凹部により位置決めされるため、ケース及び収容部が共に簡素化され好適である。特に、上記凹部を上記側部の長手方向中央部に設けた構成では、収容部内の位置決め部材が凹部の押圧面を押圧して開口側にケースを片寄せる際に、ケースが傾斜することなく位置決めされ好適である。
請求項4記載の発明に係る記録テープカートリッジは、請求項1乃至請求項3の何れか1項記載の記録テープカートリッジにおいて、前記ケースが上ケースと下ケースとの接合より成り、前記凹部が上ケースに上方及び側方に開口して設けられている。
この構成では、凹部は上方に開口した側から型抜きされるため、加工が容易である。また、ドライブ装置の係合部材は、凹部の上方または側方から該凹部に入り込むことができ、ドライブ装置の設計自由度が向上する(異なる係合部材の進入機構を有するドライブ装置に対応できる)。さらに、上記係合面を備えた構成では、上方に開口した側から型抜きされる凹部の係合面は抜き勾配によって上記装填方向に対しわずかに上向きに傾斜するが、ドライブ装置への装填時にケースは下方から支持されている(例えば、バケット上に載置されている)ため、ドライブ装置の係合部材が係合面を押圧しても、この押圧力の一部は上記上向きの傾斜によってケースを下方へ押し付ける押し付け力に変換されるのみでケースを上下方向に傾斜させない。このため、遮蔽部材に作用する開口開放方向の移動力は他の方向の分力を生じさせず、遮蔽部材はより一層スムースに開口を開放する。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態に係る記録テープカートリッジ10について、図1乃至図9に基づいて説明する。先ず、記録テープカートリッジ10の概略の全体構成を説明し、次いで、開口及び遮蔽部材としてのドア、及び本発明の要部である凹部としてのセルリテンションノッチ58について説明する。
【0024】
なお、説明の便宜上、矢印Aで示す記録テープカートリッジ10のドライブ装置への装填方向を記録テープカートリッジ10の前方向(前側)とし、矢印Aと直交する矢印B方向、矢印C方向をそれぞれ右方向、左方向とする。
(記録テープカートリッジの全体構成)
図1及び図2には記録テープカートリッジ10の全体構成が斜視図にて示されており、図3には記録テープカートリッジ10の概略の分解斜視図が示されている。
【0025】
これらの図に示される如く、記録テープカートリッジ10は、平面視で略矩形状のケース12内に、情報記録再生媒体である記録テープとしての磁気テープTを巻装した単一のリール14を回転可能に収容して構成されている。
【0026】
ケース12は、ドライブ装置への装填方向先頭側の1つの角部である右前角部がそれぞれ切り欠かれた一対の上ケース16と下ケース18とを互いの周壁16A、18Aを突き合せて接合することで構成されており、内部に磁気テープTを巻装したリール14の収容空間が設けられている。そして、上ケース16及び下ケース18の周壁16A、18Aが切り取られた角部が磁気テープTの引き出し用の開口20とされている。
【0027】
この開口20から引き出される磁気テープTの自由端には、ドライブ装置の引出手段によって係止(係合)されつつ引き出し操作されるリーダピン22が接続されている。リーダピン22の磁気テープTの幅方向端部より突出した両端部には、環状溝22Aが形成されており、この環状溝22Aが引出手段のフック等に係止される。これにより、磁気テープTを引き出す際に、フック等が磁気テープTに接触して傷付けない構成である。
【0028】
また、ケース12の開口20の内側には、ケース12内においてリーダピン22を位置決め、保持する上下一対のピン台24が設けられている。ピン台24は、半円筒形状をしており、その凹部24Aに直立した状態のリーダピン22の両端部が保持される。そして、ピン台24の外周壁の磁気テープT引き出し側は開放しており、リーダピン22が出入りする出入り口となっている。
【0029】
ピン台24の近傍には板ばね25が固定配置されており、この板ばね25がリーダピン22の上下端部に係合してリーダピン22をピン台24に保持するようになっている。リーダピン22がピン台24に出入りする際には、板ばね25は適宜弾性変形してリーダピン22の移動を許容する構成である。
【0030】
さらに、下ケース18の底板18Bの中央部には、リール14の図示しないリールギヤを外部に露出するためのギヤ開口26が設けられており、リール14はリールギヤがドライブ装置の駆動ギヤに噛合わされてケース12内で回転駆動されるようになっている。また、リール14は、上ケース16の天板16B及び下ケース18底板18Bの内面にそれぞれ立設されてギヤ開口26と同軸的な円形の軌跡上にある(一部切り欠かれた短円筒状の)内壁としての遊動規制壁28によってガタ付かないように保持されている。遊動規制壁28は、開口20の近傍では切欠かれている。
【0031】
この遊動規制壁28の開口20近傍の端部には、内部に位置規制用孔が形成された袋部28Aが連設されている。また、ケース12の左前角部の内側においては、長孔である位置規制用孔が形成された袋部28Bが遊動規制壁28に連設されている。袋部28A、28Bは、左右(矢印B、C)方向に沿った一直線上に配置されている。
(開口及び開口近傍のケースの構成)
上記の通り、開口20は、ケース12の右前角部が切り欠かれて形成されることで、その開放面が矢印A方向及び矢印B方向に向くように構成されている。
【0032】
図5乃至図7にも示される如く、ケース12の前壁12A(周壁16A、18Aのうち、外面が矢印A方向を向く部分)の右端部には、開口20の前縁部を規定する上下一対の短い傾斜壁部30が設けられている。傾斜壁部30は、開口20の開放面に沿って屈曲されると共に前壁12Aよりも厚肉化されている。
【0033】
この傾斜壁部30の厚み方向の中央部には、後述するドア50の先端が入り込む凹部30Aが形成されている。また、傾斜壁部30の左方近傍の前壁12A内側には、上下一対のビスボス32が連設されている。
【0034】
一方、ケース12の右壁12B(周壁16A、18Aのうち、矢印A方向に沿った右側の側壁)の前端部には、ケース12の内方(左方)へ若干オフセットされた上下一対のオフセット壁部34が設けられている。このオフセット壁部34の前端が開口20の後縁を規定している。
【0035】
また、オフセット壁部34の前端部内側には上下一対のビスボス36が連設されており、このビスボス36の外周部はドア50と摺動可能なドア50の案内(ガタつき防止)用としても機能する。さらに、オフセット壁部34の後端部と右壁12Bとの間には、上下一対の段部38が一体に形成されている。
【0036】
図4にも示される如く、オフセット壁部34後方の右壁12Bには、ケース12の内外を連通する窓部としての所定長さのスリット40が設けらており、後述するドア50の操作突起52の露出用とされている。スリット40は、右壁12Bを構成する周壁16Aの下部を切り欠いて形成され、上ケース16の段部38の下部をも切り欠くことで前方へも開口されている。すなわち、スリット40の下端部は、下ケース18の周壁18A及び段部38の上端面によって規定されている。これにより、スリット40は、上ケース16と下ケース18との突き当て部(パーティションライン)よりも上方に位置し、該パーティションラインよりも上方に位置するセルリテンションノッチ58(後述)に対応している。
【0037】
このスリット40の上下端がリブとしても機能する周壁16Aの一部、周壁18Aによって規定されているため、ケース12の剛性が維持され、落下強度上好ましい。さらに、スリット40がオフセット壁部34を挟んで開口20とは独立して設けられているため、開口20後縁のコーナー部の剛性が高くなり、落下強度上一層好ましい。
【0038】
また、上下のオフセット壁部34の後端部には、それぞれ段部38とは反対方向(ケース12の内方)に突出した凸部42が全高に亘って設けられており、その端面が後述するドア50の外面に対応して湾曲している。一方、遊動規制壁28の凸部42に対応する位置には、ドア50の内面に対応して湾曲し凸部42と対向する凸部44が全高に亘って設けられている。
【0039】
凸部42と凸部44とは、ドア50が開口20を開閉する際に該ドア50を挟むようにこれと摺動可能になっており、ケース12内への塵埃侵入防止用及びドア50の案内(ガタつき防止)用とされている。
【0040】
さらに、スリット40の後端を規定する右壁12B(周壁16A、18A)の部分にもケース12の内方に突出した凸部46が設けられており、ケース12内への塵埃侵入防止用及びドア50の案内(ガタつき防止)用とされている。
【0041】
さらにまた、下ケース18の凸部46の後方には、周壁18Aの上端を除く部分が断面視略「コ」字状にケース12の内方へ凹むと共にケース12の下面から上方へも凹んだ(底板18Bが切り欠かれた)凹部48が形成されている。この凹部48は、ケース12の左壁にも形成され、例えば、ドライブ装置の引き込み手段が係合する係合部とされたり、その底面(下向きの面)がドライブ装置内での位置決め基準面とされたりするようになっている。また、凹部48を設けることでケース12の捩り強度が向上されている。
【0042】
そして、この凹部48を規定する右壁12B(周壁18A)の部分は、ドア50の外面に対応して湾曲され、開口20を開閉する際にドア50の外面が摺動可能なドア50案内(ガタつき防止)用の案内面48Aとされている。
【0043】
以上説明した上ケース16と下ケース18とは、開口20の縁部の近傍に位置する各ビスボス32、36に下側から図示しないビスがねじ込まれて、固定(接合)される構成である。これによって、傾斜壁部30(前壁12A)及びオフセット壁部34(右壁12B)の各自由端によって規定され強度的に不利で落下によって地面等に衝突しやすい開口20両端のコーナー部は強固に接合され、ケース12を落しても、記録テープカートリッジ10全体の重量で、変形したり座屈して位置ズレしない構成である。
【0044】
なお、ビスのネジ山径は一例として、φ2.0mmで、ビスボス32及びビスボス36の外径をφ4.0mmとしている。また、ビス止めに代えて、ビスボス32、36に相当する位置に上ケース16から突起を突設すると共に下ケース18に突起と嵌合する嵌合孔を設け、突起と嵌合孔とを互いに嵌合させても良いが、この場合、嵌合部位の半径30mm以内の箇所において上ケース16と下ケース18とをビス止めすることが望ましい。さらに、周壁16A、18Aの付き合せ面(開口20両側のコーナー部)は溶着固定しても良いが、分解性やリサイクル性を考慮するとビス止めの方が望ましい。
【0045】
また、ピン台24が設置されたエリア(開口20付近)では、板厚が上ケース16及び下ケース18とも2mmとされ、他のエリアと比較して厚肉となっている。さらに、ケース12(上ケース16及び下ケース18)はポリカーボネート素材(PC)で形成されている。また、ケース12はPCに代えてアクリロニトリルブタジエートスチレン(ABS)や金属材とすることもできる。
【0046】
これは、記録テープカートリッジ10の機能上で最も重要な(記録テープを引き出す際に引出手段に正しく係止されるべき)リーダピン22の保持(位置決め)位置であるピン台24付近の強度を上げ、ケース12(記録テープカートリッジ10)の落下等による衝撃でリーダピン22の位置ズレが生じないようにするためである。
【0047】
また、ピン台24の設置位置は、その保持するリーダピン22の軸心が開口20の前後の縁部を結ぶ第1の仮想直線(図示省略)上または該第1の仮想直線よりもケース12内側に位置するように決められており、より好ましくは2つのビスボス32、36の軸心を結ぶ第2の仮想直線(図示省略)上または該第2の仮想直線よりもケース12内側に位置するように決められている。さらに、本実施の形態では、ピン台24は、ビスボス36よりもビスボス32に近接した位置に配置されている。これにより、ケース12の落下等に伴う天板16B及び底板18Bの振動によるリーダピン22の位置ズレも防止される構成である。
【0048】
さらにまた、ケース12は、上ケース16の周壁16Aと下ケース18の周壁18Aとが同等の高さとされ、互いの突き合せ部の加工精度(金型による樹脂成形の精度)が同程度となり、組立性や耐落下衝撃性が良好とされている。
【0049】
一方、開口20の開放面の矢印A方向に対する傾斜角(開口20の上下を規定するケース12の天板16B及び底板18Bの傾斜角)は、後述するライブラリ装置70における記録テープカートリッジ10の識別(認識)の要求に応じて決められている。すなわち、ライブラリ装置70は、その取り扱う記録テープカートリッジ10及びドライブ装置が複数種となる場合、記録テープカートリッジ10の世代や記録容量等を認識する必要があり、この認識に開口20の開放面の傾斜角を利用することができる。
【0050】
これにより、上記の如く強度上の配慮が為された磁気テープT引き出し用の開口20が、その開放面の傾斜角(具体的には、開口20の上下を規定する16Bまたは底板18Bの傾斜角)によってライブラリ装置70での認識部を兼ねるため、開口20と認識部とを別個に設けた場合(例えば、認識部としてケース12に1つまたは複数の貫通孔を設けた場合)に懸念されるケース12の強度不足や防塵性の低下、及び金型構造の複雑化を防止できる。
【0051】
以上説明した開口20は、右前角部が切り欠かれて形成されることで開放面が矢印A方向及び矢印B方向に向く(開放面が矢印A方向に対して傾斜している)ため、ドライブ装置の引出手段が、矢印A方向、矢印B方向、或いは矢印A方向と矢印B方向との間からアクセスしてリーダピン22をチャックできる。これにより、リーダピン22を保持するピン台24を設置可能なエリアが広がり、ドライブ装置の引出手段がリーダピン22をチャック可能な領域が広いため、矢印A方向または矢印B方向からチャックするドライブ装置の仕様に合わせてピン台24の設置位置を設定できる。そして、後述するドア50はその動作軌跡がリーダピン22の現実的な設置可能位置とは干渉しないため、ドライブ装置の設計の自由度も広がる。
【0052】
また、ドライブ装置は、その引出手段がケース12の矢印A方向を向く前面側からリーダピン22にアクセスする構成とすれば、磁気テープTを引き出すための経路を最短とでき、さらに、引出手段がケース12の矢印B側から回り込むようなドライブメカが不要となり、小型化及び低コスト化が図られる。さらに、上記の如く磁気テープTを引き出すための経路を最短にすると、磁気テープTのパス経路も必然的に短くなるので、磁気テープTとテープガイド(例えば、回転可能に支持されたローラ等)との接触摩耗を低減することができる。
(ドアの構成)
以上説明した開口20は、上ケース16を一部切り欠いて見た図5乃至図7にも示される如く、遮蔽部材としてのドア50によって開閉されるようになっている。ドア50は、その板幅(高さ)が開口20の開口高とほぼ同一とされると共にその板長が開口20の開口幅よりも十分大きくされ、所定の円周に沿って板厚方向に湾曲した平面視円弧状に形成されている。
【0053】
具体的には、ドア50は、その先端部が傾斜壁部30の凹部30Aに入り込んだ状態で開口20を閉塞し(図5参照)、上記円周に沿って略後方へ移動(回動)して開口20を開放し(図6参照)、その先端近傍の外周面がビスボス36近傍に達すると開口20を完全に開放する(図7参照)構成である。また、ドア50は、開口20を開放する際と略反対方向に回動して開口20を閉塞するようになっている。なお、開口20の閉塞状態では、ドア50がビスボス36、凸部42、44の少なくとも1つに接するようになっている。
【0054】
すなわち、ドア50は、その移動軌跡である所定の円周に対応した円弧状に湾曲形成されている。このドア50の回動中心は、本実施の形態では、その左右方向の位置がケース12の左端近傍に、その前後方向の位置がスリット40の後端近傍に設定されている。これにより、ドア50の移動軌跡は、スリット40の後端近傍においてケース12の右壁12Bに最も近接する。なお、ドア50の回転中心及び半径は、ドライブ装置からの要求により決まる開口20前後の縁部(傾斜壁部30及びビスボス36)の位置やライブラリ装置70からの要求により決まる開口20の開放面の角度等に応じて適宜決められれば良い。
【0055】
また、ドア50の湾曲した長手寸法は、その後端部が開口20の閉塞状態においてケース12の凹部48よりも後方の右後角部内に位置するように決められている。これにより、ドア50は、開口20を開閉する全過程で、ケース12のビスボス36、凸部42、44、46、案内面48A(及び遊動規制壁28)に案内され(ガタを規制され)るようになっている。
【0056】
このドア50の長手方向中央部よりも若干前方における外周部には、操作部としての操作突起52がドア50の径方向に沿って突設されている。操作突起52は、スリット40からケース12の外側に露出されており、開口20の閉塞状態ではオフセット壁部34の後端の凸部42からわずかに離間して位置すると共にスリット40の段部38に前方へ開口した部分から操作可能とされている。この状態で操作突起52の先端部が右壁12Bの外面(ケース12の外形領域)よりも突出しないように各部の寸法が決められている(図5参照)。
【0057】
一方、操作突起52は、開口20の開放状態では、スリット40の後縁の凸部46からわずかに離間して位置するようになっている。なお、この状態で、操作突起52の長手方向がケース12の右壁12B(矢印A方向)と略直交するように各部の寸法が決められている(図7参照)。
【0058】
そして、この操作突起52露出用のスリット40によってケース12の内外が連通されるが、このスリット40は、ケース12内の略全高に亘るドア50と該ドア50を案内する凸部42、46とによって常時ほぼ閉塞され、かつ内壁としての遊動規制壁28及びドア50を案内する凸部44によってリール14の収容空間との間に迷路構造が形成されることにより、リール14に巻装された磁気テープTへの塵埃等の付着が防止されるようになっている。
【0059】
また、ドア50の後端近傍の内周部には、ばね保持部54がドア50の径方向に沿って突設されている。このばね保持部54には、一端部がケース12内の凹部48近傍に設けられたばね係止部55に係止された付勢手段としてのコイルばね56の他端部が係止保持されている。これにより、ドア50は、コイルばね56の付勢力によって開口20の閉塞方向に付勢され、通常開口20を閉塞する構成である。
【0060】
このコイルばね56は、上記の通りドア50が開口20の閉塞状態でケース12の右後角部に至る長さであるため、該右後角部における遊動規制壁28と周壁16A、18Bとの間の空間を有効利用して配設されている。
【0061】
以上説明したドア50は、PCより成るケース12に対して、耐摩耗性に優れ低摩擦係数である、例えば、ポリオキシメチレン(POM)樹脂によって成形されているが、操作突起52やばね保持部54は別体(別材料)にて構成しても良い。そして、ドア50の動作をスムースに行うために、ドア50の上下の端面とケース12の天板16B及び底板18Bとのクリアランスは、片側で0.05mmから0.2mm程度とすることが好ましい。
【0062】
以上説明したドア50は、記録テープカートリッジ10がドライブ装置へ装填される動作によって操作突起52がドライブ装置の係合突起62に係合することでコイルばね56の付勢力に抗してケース12に対し移動し開口20を開放し、ドライブ装置から排出される際にはコイルばね56の付勢力によって開口20を閉塞する構成である。
【0063】
そして、円弧状に湾曲形成されたドア50は、その湾曲形状に沿った移動軌跡からはみ出すことなくリール14及びピン台24(リーダピン22)の外側を回り込むように回動して開口20を開閉するようになっており、開口20の開閉に際してケース12の外形領域からはみ出さない構成である。このため、ドライブ装置内における記録テープカートリッジ10の収容スペースが小さく、かつ、ドア50の移動軌跡がケース12内のピン台24(リーダピン22)やリール14と干渉することがない。また、ドア50は湾曲形状に沿った移動軌跡からはみ出すことなく開口20を開閉し作動領域が小さいため、ケース12の角部を大きく切り欠いて大きな開口20を形成することができる。特に、矢印A方向に対して開放面が傾斜した開口20を開閉するためのドア50の回動中心は、リール14の軸心位置に対して独立して決めることができるため、開口20の開放面の矢印A方向に対する傾斜角や開口20の大きさ(前後の縁部を結ぶ距離)等を任意に設定でき、ドライブ装置等の要求に応じた任意の寸法形状の開口20を開閉するドア50を得ることができる。すなわち、ドア50を備えた構成では、開口20(記録テープカートリッジ10)の設計の自由度が向上する。
【0064】
さらに、ドア50は、ケース12から引き出されるリーダピン22とは別部材であり組付状態でケース12からの取り外し不能な構成となっているため、記録テープカートリッジ10を落下させた場合の衝撃等によってケース12から外れることがない。一方、リーダピン22は、磁気テープTの非使用時にはドア50によって開口20が閉塞された密閉状態のケース12内に収納されており、キズや汚れが付き難い。このため、ドライブ装置内での磁気テープTの引き出しや走行に影響を与えず、磁気テープT自体を損傷することもない。
【0065】
一方、ドライブ装置の係合突起62は、単にスリット40に前方から進入して操作突起52に係合可能に固定配置されていれば足り、構造が簡単である。また、ドア50は、コイルばね56の付勢力によって開口20を閉塞するため、ドライブ装置には該ドア50を開口20の閉塞方向へ駆動するための機構が不要で該ドライブ装置の開閉手段(開閉部材)の構造を一層簡素化できる構成である。
(セルリテンションノッチの構成)
また、ケース12は、本発明における「凹部」としてのセルリテンションノッチ58を備えている。セルリテンションノッチ58は、上ケース16の矢印C側端部(開口20側とは左右方向反対側の端部)における前後方向略中央部に設けられており、それぞれ上ケース16の天板16B及びケース12の左壁12C(周壁16A、18Aのうち、矢印A方向に沿った左側の側壁)において上方及び左方に開口している。
【0066】
このセルリテンションノッチ58を規定する壁部の外面のうち、矢印A方向を向く面が係合面58Aとされている。係合面58Aは、開口20を開放する際に後述するドライブ装置の係合部材60が係合するようになっており、その抜き勾配が小さくされる(例えば、意匠面を構成する前壁12Aの抜き勾配が2°であるのに対して、抜き勾配が略0.5°とされる)ことで矢印A方向に対し略垂直(わずかに上向き)な面とされている。
【0067】
そして、この係合面58Aは、係合部材60と係合することでドア50の操作突起52が係合突起62と係合しつつ開口20を開放する際にケース12に作用する回転モーメントを打ち消す(回転モーメントに抗する)構成である。
【0068】
また、ケース12の角部(周壁16Aの上端と天板16Bとの角部や周壁18Aと底板18Bとの角部)は全体に丸められたアール仕舞いとされているが、セルリテンションノッチ58の上下方向及び側方向の深さを該アール径よりもそれぞれ大きくすることで、係合面58Aの係合部材60との十分な係合可能面積を確保し、ケース12の設計やデザインの自由度を損なうこともない構成である。
【0069】
さらに、セルリテンションノッチ58の下底面は周壁16Aの下端近傍まで至っており、係合面58Aの係合部材60との係合高さ(上下方向の位置)とスリット40から外部に突出した操作突起52の係合突起62との係合高さとが一致するようになっている。
【0070】
これにより、上記回転モーメントを打ち消す際にケース12に捩りモーメントが作用しないようになっている。そして、上記の通りスリット40をパーティションラインの上方に配置することで、セルリテンションノッチ58(係合面58A)を上ケース16に設ければ上記各係合高さを一致させることができ、係合面58Aを上ケース16と下ケース18との突き当てによって形成する場合に懸念される上下の係合面58A突き当て部の微小な段差の形成をも防止している。
【0071】
また、セルリテンションノッチ58が上方及び左方に開口していることで、ドライブ装置の係合部材60の係合面58Aへのアクセス可能方向が広くドライブ装置の設計自由度が広がると共に、上記の如く係合面58Aの抜き勾配を小さく設定した上ケース16の加工性が良好な構成である。
【0072】
さらに、セルリテンションノッチ58は、後述するライブラリ装置70の押圧ローラ90(後述)が入り込めるように寸法が決められており、矢印C方向を向く面が押圧面58Bとされている。この押圧面58Bが押圧ローラ90によって右方(開口20側である右壁12B側)へ押圧されることでケース12がライブラリ装置70のホルダ部72内で位置決めされる構成である。そして、セルリテンションノッチ58(押圧面58B)がケース12の前後方向略中央部に設けられることで、ケース12は押圧ローラ90に押圧される際に矢印B方向に対し殆ど傾くことなく移動できるようになっている。
【0073】
なお、セルリテンションノッチ58は、ケース12の前後方向略中央部に設けられその下方に凹部48が位置するため(この他にも下ケース18には各種用途の凹部や孔等を設ける場合が多いため)、上ケース16に設けた構成としたが、スリット40と共に下ケース18側に設けても良い。但し、下ケース18に設ける係合面58Aは抜き勾配によって矢印A方向に対しわずかに下向きの面となるため、上記の如くセルリテンションノッチ58(係合面58A)を上ケース16に設けることが好ましい。
【0074】
次に、本実施の形態の作用について説明する。
【0075】
上記構成の記録テープカートリッジ10では、非使用時(保管時や運搬時等)には、開口20がドア50によって閉塞されている。具体的には、ドア50は、コイルばね56の付勢力によって、その先端部(前端部)が傾斜壁部30の凹部30Aに入り込むと共に、中間部外周面がビスボス36の外周面に略接して開口20を閉塞している。
【0076】
一方、磁気テープTを使用する際には、記録テープカートリッジ10を矢印A方向に沿ってドライブ装置のバケットへ挿入する(ドライブ装置へ装填する)。すると、図5に示される如く、バケットに設けられた係合部材60が、図示しない駆動機構やばね力等によって、上方または左方からケース12のセルリテンションノッチ58に入り込む。この状態で、バケットは、記録テープカートリッジ10と共にドライブ装置内で矢印A方向へ移動する。
【0077】
この移動(ドライブ装置への装填動作、すなわちドライブ装置との相対移動)に伴って、ドライブ装置の開閉手段を構成する開閉部材としての係合突起62が、段部38において前方へ開口したスリット40に進入し、ドア50の操作突起52に係合する。
【0078】
バケットが記録テープカートリッジ10(ケース12)と共にさらに矢印A方向へ移動すると、図6に示される如く、この移動力によってコイルばね56の付勢力に抗しつつ、係合突起62が操作突起52を略後方へ移動させる(矢印A方向へ移動するケース12に対して略後方へ相対移動する)。
【0079】
すると、操作突起52が突設されたドア50は、ビスボス36、凸部42、44、46及び案内面48Aに案内されつつ、その湾曲方向に沿って平面視時計方向に回動し(ピン台24及びリール14の外側を回り込むように略後方へ移動し)、開口20を開放する。
【0080】
このとき、ケース12には、上記移動力の反力による操作突起52と係合突起62との係合部位D廻りの回転モーメント(図6に示す矢印E方向のモーメント)が作用するが、係合部材60がケース12の係合面58Aに係合(当接)することでケース12には上記矢印E方向の回転モーメントに抗する(釣合う)矢印F方向の力が作用し、該矢印E方向の回転モーメントが打ち消される。
【0081】
これにより、ケース12は、ドア50の操作突起52と係合突起62との係合部位D廻りに回動して矢印A方向に対し傾斜することなく、矢印A方向に沿って適正に(ドライブ装置に擦れることなく)ドライブ装置に装填される。また、ドア50もスムースに移動して開口20を開放する。
【0082】
そして、バケットが矢印A方向に所定量移動すると、すなわち、ケース12(記録テープカートリッジ10)がドライブ装置に所定深さ装填されると、図7に示される如く開口20が完全に開放され、記録テープカートリッジ10がドライブ装置内で位置決めされると共にドア50がそれ以上の回動(略後方への移動)を規制される。
【0083】
この状態で、開放された開口20からはドライブ装置の引出手段がケース12内に進入し、この引出手段がピン台24に位置決め保持されたリーダピン22を抜き出して巻取リールに収容する。そして、巻取リールとリール14とを同期して回転駆動すると、磁気テープTは、巻取リールに巻き取られつつケース12から順次引き出され、所定のテープ経路に沿って配設された記録再生ヘッド等によって情報の記録や再生が行われる。
【0084】
一方、磁気テープTがリール14に巻き戻されて、記録テープカートリッジ10をドライブ装置から排出する際には、記録テープカートリッジ10は、位置決め状態が解除され、バケットと共に矢印Aとは反対方向に移動する。この移動後、係合部材60がセルリテンションノッチ58から抜け出る。
【0085】
そして、ドア50は、ビスボス36、凸部42、44、46及び案内面48Aに案内されつつ、コイルばね56の付勢力によって開口20の閉塞方向へ回動する。ドア50の先端部が傾斜壁部30の凹部30Aに入り込むと、開口20が完全に閉塞される初期状態に復帰する。
【0086】
ここで、上記の通り開口20を開放する際には、セルリテンションノッチ58の係合面58Aに係合部材60が係合することでケース12に作用する上記回転モーメントが打ち消され、ケースは矢印A方向に沿ってドライブ装置に適正に装填される。
【0087】
また、係合面58Aは、ケース12の左端部に凹んで設けられたセルリテンションノッチ58に(意匠面を構成しない位置に)形成され抜き勾配が小さいため、寸法精度が高い。このため、上記回転モーメントを打ち消すためにドライブ装置の係合部材60が係合して(押圧されて)も、ケース12のバケット上での位置精度が確保される。
【0088】
さらに、係合面58Aの抜き勾配が小さいため、ケース12の矢印A方向に対する上下方向の傾斜も防止される。特に、上方に開口した側から型抜きされるセルリテンションノッチ58の係合面58Aは抜き勾配によって矢印A方向に対しわずかに上向きに傾斜するが、ドライブ装置への装填時にケース12はバケットにより下方から支持されている(バケット上に載置されている)ため、係合部材60が係合面58Aを押圧しても該押圧力の一部は上記上向きの傾斜によってケース12を下方へ押し付ける押し付け力に変換されるのみでケース12を上下方向に傾斜させることがない。
【0089】
以上により、ケース12は矢印A方向に対し左右方向及び上下方向共に殆ど傾斜することなくドライブ装置へ装填され、ドア50に作用する開口20開放方向の移動力(操作突起52と係合突起62との係合状態で作用するバケットの移動力)は分力を殆ど生じず、ドア50は開口20をスムースに開放する。
【0090】
このように、本実施の形態に係る記録テープカートリッジ10では、ドライブ装置への装填動作によってドア50を開口開放方向に移動させる際に、該装填方向(矢印A方向)に対するケース12の傾斜を防止できる。
【0091】
また、上記構成の記録テープカートリッジ10のセルリテンションノッチ58は、上記ドライブ装置内における開口20を開放する際の上記回転モーメントを打ち消すための(係合部材60が係合する)機能に代えて、または、該機能と兼ねて、カートリッジ自動搬送装置としてのライブラリ装置70における位置決め機能を備えた構成としても良い。先ず、図8に基づいてライブラリ装置70の一例を説明する。
【0092】
図8に概略斜視図にて示される如く、ライブラリ装置70は、それぞれ記録テープカートリッジ10を収容可能な複数の収容部としてのホルダ部(マガジン)72を有する収容棚部74と、1基または複数(本実施の形態では4基)のドライブ装置76が設置された記録再生部78と、記録テープカートリッジ10の後端側部を把持可能なチャッキング機構80を各ホルダ部72と各ドライブ装置76との間で移動可能な移動機構部82とを備えて構成されている。
【0093】
このライブラリ装置70では、使用される記録テープカートリッジ10をチャッキング機構80及び移動機構部82によってホルダ部72から抜き出して記録再生部78のドライブ装置76へ装填し、使用後の記録テープカートリッジ10をチャッキング機構80及び移動機構部82によってドライブ装置76から抜き出して収容棚部74のホルダ部72へ収容(装填)するようになっている。
【0094】
これにより、複数(多数)収容した記録テープカートリッジ10を自動的かつ高速でドライブ装置76に着脱でき、大規模(大容量の)な情報バックアップシステムが構築されている。また、ライブラリ装置70は、記録テープカートリッジ10を含む複数種類の記録テープカートリッジを取り扱うようになっており、その種類に応じて仕様の異なるホルダ部72、ドライブ装置76を備えて構成されている。
【0095】
次に、記録テープカートリッジ10を収容するホルダ部72について説明する。図9に示される如く、ホルダ部72の内部には、前後方向の位置決め基準となるそれぞれ上下一対の位置決めストッパ84、86が最奥部に設けらている。右側(開口20側)の位置決めストッパ84は、ケース12の開口20開放面に対応した傾斜部84Aを備えている。また、ホルダ部72の右内面88が左右方向の位置決め基準となっている。
【0096】
さらに、ホルダ部72内の左端部には、押圧ローラ90が設けられている。押圧ローラ90は、ホルダ部72内にケース12(記録テープカートリッジ10)が収容されると、ばね力等によってセルリテンションノッチ58に入り込んで押圧面58Bを矢印B方向へ押圧するようになっている。なお、本実施の形態では押圧ローラ90としたが、セルリテンションノッチ58に入り込んで押圧面58Bを押圧可能であれば如何なる形状の部材や押圧機構をホルダ部72内に設けても良い。
【0097】
このライブラリ装置70のホルダ部72内に、チャッキング機構80及び移動機構部82によって記録テープカートリッジ10が収容されると、ケース12の前壁12Aが位置決めストッパ84、86に当接する。この状態で押圧ローラ90がセルリテンションノッチ58に入り込み押圧面58Bを押圧する。
【0098】
すると、この押圧力によりケース12は右内面88に押し付けられる(片寄せられらる)と共に、その開口20開放面に沿って切欠かれた右前角部(開口20の上下端を規定する天板16B、底板18B)が位置決めストッパ84の傾斜部84Aに当接し、前後方向及び左右方向に位置決めされる。このとき、セルリテンションノッチ58がケース12の前後方向略中央部に設けられているため、ケース12は矢印B方向に対し殆ど傾くことなく移動し、適正に位置決めされる。
【0099】
また、押圧ローラ90はセルリテンションノッチ58に入り込み押圧面58Bを押圧する状態を維持し、上記位置決め状態を維持すると共にケース12の脱落(後方への移動)を阻止する。
【0100】
なお、ホルダ部72内における位置決めストッパ84、または、その近傍にはケース12の開口20開放面の傾斜角(接触の有無や距離等)を識別する識別手段が設けらており、該ホルダ部72に対応しない記録テープカートリッジを収容するとチャッキング機構80及び移動機構部82によって該記録テープカートリッジを排出させる信号を出力するようになっている。
【0101】
このように、押圧ローラ90がセルリテンションノッチ58を押圧することで、ケース12は上記右前角部が位置決めストッパ84の傾斜部84Aに当接し確実に位置決めされるため、上記識別手段による上記開口20開放面の傾斜角を利用した記録テープカートリッジ10の識別が確実に為される。
【0102】
また、上記位置決めはケース12の左側部に設けられたセルリテンションノッチ58を押圧することで為され、ケース12の右側部にはセルリテンションノッチ58に対応した凹部を設ける必要がないため、ケース12(上ケース16成形用の金型)が簡素化されると共に、金型との接触面積増大に伴う上ケース16成形時の離型抵抗が増大することもなく、成形不良の発生が抑止される。一方、ホルダ部72では、押圧ローラ90を一方側にのみ設ければ足りるため、構成が簡素化されると共に、例えば両側に押圧ローラ90を設けた構成と比較して、チャッキング機構80及び移動機構部82によって記録テープカートリッジ10をホルダ部72から抜き出す際の抜き出し力(押圧ローラ90をケース12押圧方向の付勢力に抗してセルリテンションノッチ58から抜き出させる力)を小さく設定でき、記録テープカートリッジ10を良好に抜き出すことができる。
【0103】
そして、セルリテンションノッチ58が、ドライブ装置内において開口20開放時の上記回転モーメントを打ち消す機能と、ライブラリ装置70のホルダ部72内においてケース12を位置決めする機能とを兼ねた構成(すなわち、1つのセルリテンションノッチ58がドライブ装置及びライブラリ装置70の双方に使用される構成)では、ケース12に設ける凹部を削減できる。これにより、ケース12(上ケース16成形用の金型)が一層簡素化され、離型抵抗の増大も抑止される。
【0104】
さらに、セルリテンションノッチ58は、例えば、押圧面58Bがドライブ装置の係合部材60によって右方へ押圧されることでバケット上での位置決め用(例えば、操作突起52の係合突起62との係合可能位置への移動用や袋部28A、28Bに設けられた位置規制用孔へのドライブ装置の位置決めピン挿入可能位置への移動用)にのみ用いられても良い。この場合、例えば、ドライブ装置が係合部材60に代えて押圧ローラ90を備えるか、ホルダ部72が押圧ローラ90に代えて係合部材60を備えるかすることで、ドライブ装置とライブラリ装置70とで部品の共用化が図られ、好適である。なお、セルリテンションノッチ58が該ドライブ装置内(バケット上)での位置決め機能と上記回転モーメントを打ち消す機能とを兼ねた構成としても良いことは言うまでもない。
【0105】
なお、上記の実施の形態では、記録テープカートリッジ10が矢印A方向に対し傾斜した開口20と、円弧状の移動軌跡に対応したドア50とを備えた好ましい構成としたが、本発明はこれに限定されず、セルリテンションノッチ58は、ドライブ装置への装填動作によって開口20を開放し該開放過程で回転モーメントが作用する如何なる構成の開口やドア(遮蔽部材)を備えた記録テープカートリッジ10にも適用できる。したがって例えば、記録テープカートリッジ10は、ケース12の右壁12Bを貫通した開口を矢印A方向に沿ってスライドして開閉するドアを備えた構成としても良く、操作突起52がケース12の底板18Bに設けられたスリットから外部に露出された構成としても良い。
【0106】
さらにまた、上記の実施の形態では、記録テープとして磁気テープTを用いた構成としたが、本発明はこれに限定されず、記録テープは情報の記録及び記録した情報の再生が可能な長尺テープ状の情報記録再生媒体として把握されるものであれば足り、本発明に係る記録テープカートリッジが如何なる記録再生方式の記録テープにも適用可能であることは言うまでもない。
【0107】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る記録テープカートリッジは、ドライブ装置への装填動作によってドアを開口開放方向に移動させる際に、該装填方向に対するケースの傾斜を防止できるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る記録テープカートリッジの全体構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る記録テープカートリッジの全体構成を示す別方向から見た斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る記録テープカートリッジの分解斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る記録テープカートリッジを構成するケースのスリットを示すドア等を取り除いた斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る記録テープカートリッジの開口がドライブ装置により開放される前の状態を示す一部切り欠いた平面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る記録テープカートリッジの開口がドライブ装置により開放される途中の状態を示す一部切り欠いた平面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る記録テープカートリッジの開口がドライブ装置により開放された状態を示す一部切り欠いた平面図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る記録テープカートリッジが使用されるライブラリ装置の概略構成を示す斜視図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る記録テープカートリッジがライブラリ装置のホルダ部内で位置決めされた状態を示す平面図である。
【符号の説明】
10 記録テープカートリッジ
12 ケース
14 リール
20 開口
50 ドア(遮蔽部材)
58 セルリテンションノッチ(凹部)
60 係合部材
62 係合突起(開閉部材、開閉手段)
Claims (4)
- 記録テープが巻装された単一のリールを回転可能に収容する略矩形状のケースと、
前記ケースのドライブ装置への装填側角部を切り欠いて形成され、前記記録テープの端部に取り付けられたリーダ部材を引き出すための開口と、
前記ケースに前記開口を開閉可能に設けられ、前記ケースの前記ドライブ装置への装填動作によって該ドライブ装置の開閉部材に係合しつつ前記開口の開放側へ移動する遮蔽部材と、
前記ケースの前記開口側とは反対側の側部に、前記ドライブ装置への装填側及び該装填側とは反対側に開口しないように設けられ、前記開口を開放する際に前記ドライブ装置の係合部材が係合する凹部と、
を備えた記録テープカートリッジ。 - 前記凹部は、前記ケースの前記開口側とは反対側の側部における長手方向中央部に設けられている請求項1記載の記録テープカートリッジ。
- 前記凹部は、前記開口を開放する際に前記ドライブ装置の係合部材が係合する係合面と、カートリッジ自動搬送装置の収容部に収容された状態で該収容部内に設けられた位置決め部材によって前記開口側に押圧される押圧面とを有する請求項1または請求項2記載の記録テープカートリッジ。
- 前記ケースが上ケースと下ケースとの接合より成り、前記凹部が上ケースに上方及び側方に開口して設けられた請求項1乃至請求項3の何れか1項記載の記録テープカートリッジ。
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