JP4000279B2 - 記録テープカートリッジ - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気テープ等の記録テープが巻装された単一のリールを回転可能に収容した記録テープカートリッジに関する。
【０００２】
【従来の技術】
コンピュータ等の外部記録媒体として磁気テープ等の記録テープが用いられている。この記録テープとして、保存時の収容スペースが小さく、大容量の情報が記録できる、記録テープが巻装された単一のリールを収容する記録テープカートリッジが採用されている。この記録テープカートリッジでは、それぞれ樹脂材料にて成形された上ケースと下ケースとの接合より成るケース内に、記録テープを巻装した単一のリールが回転可能に収容されている。このケースには開口が形成されており、この開口から記録テープを引き出しドライブ装置側の巻取リールに巻き取らせるようになっている。
【０００３】
そして、開口から塵埃等が侵入して記録テープに付着しないように、この開口は遮蔽部材であるドアによって開閉されるようになっている。すなわち、記録テープカートリッジの非使用時には開口はドアによって閉塞され、記録テープカートリッジの使用時にはドアが移動して開口が開放されるようになっている。
【０００４】
このようなドアを備えた記録テープカートリッジとしては、ケースのドライブ装置への装填方向に沿った側壁に設けられた開口と、上記側壁の内側を装填方向に沿ってスライドして開口を開閉するドアと、このドアを開口閉塞方向に付勢するばねと、ドアに設けられケースのドライブ装置への装填動作によって該ドライブ装置の開閉部材に係合しつつドアを開口開放方向にスライドさせる操作部とを備えた構成が知られている。
【０００５】
この構成によって、単にケース（すなわち、記録テープカートリッジ）をドライブ装置へ装填する動作によって、ドアに設けられた操作部がドライブ装置に固定された（ケースと相対移動する）開閉部材に係合しつつドアをケースに対しスライドさせ開口が開放される。これにより、ドライブ装置は、単に操作部に係合可能な位置に開閉部材を固定配置すれば足り、構造が簡単である。
【０００６】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような従来の記録テープカートリッジでは、開口を開放する際にドアの操作部がドライブ装置の開閉部材に係合すると、該係合部位廻りの回転モーメントが作用し、ケース（すなわち、記録テープカートリッジ）が上記係合部位廻りに回動し上記装填方向に対し傾斜するという問題があった。特に、ばねの付勢力に抗しつつ開口を開放するので、この回転モーメント（装填方向の押し込み力）が大きくケースがドライブ装置内で傾斜（位置ずれ）しやすい。
【０００７】
この状態でケースをドライブ装置内へ押し込んでいくと、ケースがドライブ装置内で擦れ、ケースが傷ついたり、ドライブ装置内に磨耗粉が発生したり、ケースがドライブ装置内でスタックしたりする恐れがある。
【０００８】
そこで、この回転モーメントを打ち消すために、下ケースの上記装填方向先頭側の面（前面）における開口が形成された側壁と離間した位置にドライブ装置の係合部材を係合させ、この係合状態を維持しつつ（係合部材と共に）ケースを上記装填方向へ移動し開口を開放する構成が考えられている。
【０００９】
しかしながら、上記の通り樹脂材料にて成形された上ケースと下ケースとの接合より成るケースでは、上記前面を含む外面は、シボ加工等を施された意匠面とされ成形後の型抜き用の抜き勾配が大きく寸法精度が低い。このようなケース前面における開口から離間した位置に係合部材を係合させると、ケースは、上記回転モーメントを打ち消されつつも、その機能上最も重要な開口のドライブ装置に対する位置精度が低くなる。また、上記構成の記録テープカートリッジでは、ケースのドライブ装置からの抜き出し方向の移動は許容されているため、ドアを付勢するばねの付勢力等によって、ケース（開口）のドライブ装置に対する位置ずれが生じる場合があった。
【００１０】
なお、特開２０００−３３１４０３号公報には、ドライブ装置からの記録テープカートリッジの抜き出しを阻止するための係止手段（ロックブロック等）が係合するロック孔をケースに設けた構成が示されているが、これは開口が開放された後に記録テープカートリッジをドライブ装置に対し係止するものであり、開口の開放時点で上記位置ずれが生じていると、ロック孔に係止手段が適正に係合しない場合がある。また、開口開放後にケースを係止する係止手段では、上記回転モーメントを打ち消すことはできない。
【００１１】
また、カートリッジ自動搬送装置（ライブラリ装置）では、多数の記録テープカートリッジを個別にホルダ部に収容し、必要に応じて該ホルダ部からドライブ装置へ自動的に搬送するようになっているが、この場合も、従来の記録テープカートリッジではホルダ部からの抜き出し方向の移動が許容されていたため、ホルダ部に対するケースの位置ずれが生じる場合があった。
【００１２】
本発明は上記事実を考慮して、カートリッジ収容手段に対するケースの位置ずれを防止できる記録テープカートリッジを得ることが目的である。
【００１３】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項１記載の発明に係る記録テープカートリッジは、記録テープが巻装された単一のリールを回転可能に収容する略矩形状のケースと、前記ケースのドライブ装置への装填側角部または前記ケースのドライブ装置への装填方向に沿った側壁に設けられ、前記記録テープを引き出すための開口と、前記ケースに前記開口を開閉可能に設けられ、前記ケースの前記ドライブ装置への装填動作によって該ドライブ装置の開閉部材に係合しつつ前記開口の開放側へ移動する遮蔽部材と、前記ケースの前記開口側とは反対側の側部に凹設され、前記装填側とは反対側を向き前記開口開放時にカートリッジ収容手段の位置決め手段が係合する係合面と、前記装填方向に沿い前記開口開放時に前記位置決め手段によって押圧される押圧面と、前記係合面とは反対側に位置し前記側部における開口幅を広げる方向に傾斜した傾斜面とを有する凹部と、を備えている。
【００１４】
請求項１記載の記録テープカートリッジは、カートリッジ収容手段に収容されて保管または使用される。カートリッジ収容手段は、記録テープカートリッジを位置決め状態で収容するものであって、請求項１記載のドライブ装置を含み、また例えば、多数の記録テープカートリッジを個別に収容し必要に応じてドライブ装置に搬送するカートリッジ自動搬送装置（ライブラリ装置）等を含むものである。
【００１５】
この記録テープカートリッジでは、記録テープの非使用時には、遮蔽部材によって開口が閉塞されてケース内への塵埃等の侵入が阻止される。これにより、ケース内に収容されているリールに巻装された記録テープへの塵埃等の付着が防止される。
【００１６】
記録テープの非使用状態で記録テープカートリッジ（ケース）を収容するカートリッジ収容手段（例えば、上記カートリッジ自動搬送装置）では、ケースは、位置決め手段によって凹部の押圧面が押圧され、その開口側に押し付けられて位置決めされる。また、該位置決め状態で位置決め手段が係合面に係合し、カートリッジ収容手段からの抜き出しが阻止される。
【００１７】
一方、記録テープを使用する際には、記録テープカートリッジ（ケース）は、カートリッジ収容手段でもあるドライブ装置へ装填される。この装填動作によって、遮蔽部材がドライブ装置の開閉部材に係合しつつ開口の開放方向に移動し、開口が開放される。
【００１８】
このとき、ケースの開口側とは反対側の側部に設けられた凹部の押圧面がドライブ装置の位置決め手段によって押圧され、ケースの開口側がドライブ装置に押し付けられる。このため、ケースに作用する遮蔽部材と開閉部材との係合部位廻りの回転モーメントが打ち消される。
【００１９】
また、上記装填側とは反対側を向く凹部の係合面には、上記位置決め手段が係合するため、ケースは、ドライブ装置からの抜き出し方向の移動が阻止され、かつ上記の通り開口側がドライブ装置に押し付けられているため、開口のドライブ装置に対する許容量以上の位置ずれが防止される。すなわち、ドライブ装置に押し付けられたケースの開口側（開口近傍）を位置基準として位置決めされるため、ケース外面の寸法精度が開口のドライブ装置に対する位置精度に与える影響が小さい。
【００２０】
そして、記録テープカートリッジは、上記何れのカートリッジ収容手段に収容される場合でも、凹部における係合面とは反対側の傾斜面が該凹部の開口幅を広げているため、該凹部に対する位置決め手段の進退が容易である。なお、位置決め手段は、係合面に係合する機能と押圧面を押圧する機能とが別個の構成によって実現されていても良い。
【００２１】
このように、請求項１記載の記録テープカートリッジでは、カートリッジ収容手段に対するケースの位置ずれを防止できる。特に、カートリッジ収容手段がドライブ装置である場合には、ドライブ装置への装填動作によってドアを開口開放方向に移動させる際に、ドライブ装置に対するケースの位置ずれを防止できる。
【００２２】
なお、本発明における記録テープカートリッジの凹部は、各種のカートリッジ収容手段のうち何れか１つ（例えば、カートリッジ自動搬送手段）において使用されれば足りる。
【００２３】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態に係る記録テープカートリッジ１０について、図１乃至図１０に基づいて説明する。先ず、記録テープカートリッジ１０の概略の全体構成を説明し、次いで、開口及び遮蔽部材としてのドア、及び本発明の要部である凹部としてのセルリテンションノッチ６０について説明する。なお、説明の便宜上、矢印Ａで示す記録テープカートリッジ１０のドライブ装置への装填方向を記録テープカートリッジ１０の前方向（前側）とし、矢印Ａと直交する矢印Ｂ方向、矢印Ｃ方向をそれぞれ右方向、左方向とする。
（記録テープカートリッジの全体構成）
図１及び図２には記録テープカートリッジ１０の全体構成が斜視図にて示されており、図３には記録テープカートリッジ１０の概略の分解斜視図が示されている。これらの図に示される如く、記録テープカートリッジ１０は、平面視で略矩形状のケース１２内に、情報記録再生媒体である記録テープとしての磁気テープＴを巻装した単一のリール１４を回転可能に収容して構成されている。
【００２４】
ケース１２は、ドライブ装置への装填方向先頭側の１つの角部である右前角部がそれぞれ切り欠かれた一対の上ケース１６と下ケース１８とを互いの周壁１６Ａ、１８Ａを突き合せて接合することで構成されており、内部に磁気テープＴを巻装したリール１４の収容空間が設けられている。そして、上ケース１６及び下ケース１８の周壁１６Ａ、１８Ａが切り取られた角部が磁気テープＴの引き出し用の開口２０とされている。
【００２５】
この開口２０から引き出される磁気テープＴの自由端には、ドライブ装置の引出手段によって係止（係合）されつつ引き出し操作されるリーダピン２２が接続されている。リーダピン２２の磁気テープＴの幅方向端部より突出した両端部には、環状溝２２Ａが形成されており、この環状溝２２Ａが引出手段のフック等に係止される。これにより、磁気テープＴを引き出す際に、フック等が磁気テープＴに接触して傷付けない構成である。
【００２６】
また、ケース１２の開口２０の内側には、ケース１２内においてリーダピン２２を位置決め、保持する上下一対のピン台２４が設けられている。ピン台２４は、矢印Ｂ方向に開口する半円筒形状をしており、その凹部２４Ａに直立した状態のリーダピン２２の両端部が保持されるようになっている。このピン台２４は、後述するリブ４４と連設されている。
【００２７】
また、ピン台２４の近傍には板ばね２５が固定配置されており、この板ばね２５がリーダピン２２の上下端部に係合してリーダピン２２をピン台２４に保持するようになっている。リーダピン２２がピン台２４に出入りする際には、板ばね２５はアーム部２５Ａを適宜弾性変形させてリーダピン２２の移動を許容する構成である。
【００２８】
さらに、下ケース１８の中央部には、リール１４の図示しないリールギヤを外部に露出するためのギヤ開口２６が設けられており、リール１４はリールギヤがドライブ装置の駆動ギヤに噛合わされてケース１２内で回転駆動されるようになっている。また、リール１４は、上ケース１６及び下ケース１８の内面にそれぞれ部分的に突設されてギヤ開口２６と同軸的な円形の軌跡上にある内壁としての遊動規制壁２８によってガタ付かないように保持されている。
【００２９】
この遊動規制壁２８の開口２０近傍の端部には、内部に位置規制用孔が形成された袋部２８Ａが連設されている。また、ケース１２の左前角部と誘導規制壁との間に挟まれた空間には、長孔である位置規制用孔が形成された袋部２８Ｂが立設されている。袋部２８Ａ、２８Ｂは、矢印Ｂ方向に沿った一直線上に配置されている。そして、袋部２８Ａが連設された端部を除いて、各遊動規制壁２８は、それぞれ端部がケース１２の周壁１６Ａまたは周壁１８Ａと連設されることで、その外側とリール１４の設置空間とを仕切っている。
【００３０】
また、下ケース１８の右後部には、各記録テープカートリッジ１０毎に、その各種情報を記憶されたメモリーボードＭが設置されるようになっており、下面側から読み取るドライブ装置と、背面側から読み取るライブラリ装置での検知が可能となるように、周壁１８Ａを構成する後壁１８Ｃの一部が所定角度だけ傾斜され、メモリーボードＭが所定角度傾斜配置されるようになっている。
（開口及び開口近傍のケースの構成）
上記の通り、開口２０は、ケース１２の右前角部が切り欠かれて形成されることで、その開放面が矢印Ａ方向及び矢印Ｂ方向に向くように構成されている。
【００３１】
上ケース１６の底面図である図４及び下ケース１８の平面図である図５にも示される如く、開口２０の前後の縁部には、それぞれ上下一対のビスボス３２、３６が設けられている。ビスボス３２、３６は、図示しない他のビスボスと共に上ケース１６と下ケース１８とを接合するためのビス止め用とされている。
【００３２】
開口２０の前縁部に位置するビスボス３２は、ケース１２の前壁１２Ａ（周壁１６Ａ、１８Ａのうち、外面が矢印Ａ方向を向く部分）の右端部、及び該前壁１２Ａの右端部から開口２０の開放面に沿って短く屈曲された上下一対の防塵壁３０とそれぞれ連設されている。ビスボス３２と防塵壁３０との間には後述するドア５０の先端部が入り込む凹部３０Ａが形成されている。
【００３３】
一方、開口２０の後縁部に位置するビスボス３６は、ケース１２の右壁１２Ｂ（周壁１６Ａ、１８Ａのうち、矢印Ａ方向に沿った右側の壁）の前端部が開口２０の開放面に略沿って屈曲された屈曲壁３８、及び該右壁１２Ｂの内側に設けられた上下一対の円弧壁３４の前端部とそれぞれ連設されている。上下の円弧壁３４は、それぞれ平面視で後述するドア５０の外周面（の移動軌跡）に略対応した円弧状に形成されており、それぞれビスボス３６から所定長さだけ後方へ伸び、該後部において短い連結壁３４Ａを介して右壁１２Ｂ（周壁１６Ａまたは周壁１８Ａ）に連設されている。
【００３４】
図６にも示される如く、ケース１２の右壁１２Ｂには、ケース１２の内外を連通する窓部としての所定長さのスリット４０が設けらており、後述するドア５０の操作突起５２の露出用とされている。スリット４０は、右壁１２Ｂを構成する周壁１６Ａの下部を切り欠いて形成され、上ケース１６の屈曲壁３８の下部をも切り欠くことで前方へも開口されている。すなわち、スリット４０の下端部は、下ケース１８の周壁１８Ａ及び屈曲壁３８の上端面によって規定されている。これにより、スリット４０は、上ケース１６と下ケース１８との突き当て部（パーティングラインＰＬ）よりも上方に位置し、該パーティングラインＰＬよりも上方に位置するセルリテンションノッチ６０（後述）に対応している。
【００３５】
このスリット４０の上下端がリブとしても機能する周壁１６Ａの一部、周壁１８Ａによって規定されているため、ケース１２の剛性が維持され、落下強度上好ましい。さらに、スリット４０がビスボス３６を挟んで開口２０とは独立して設けられているため、開口２０後縁のコーナー部の剛性が高くなり、落下強度上一層好ましい。
【００３６】
図４及び図５に戻り、このケース１２を構成する上ケース１６及び下ケース１８には、それぞれドア５０をガイドするためのガイド溝４２が設けられている。各ガイド溝４２は、その溝壁が、それぞれ上ケース１６の天板１６Ｂ、下ケース１８の底板１８Ｂから立設されたリブ４４、右壁１２Ｂ（周壁１６Ａまたは周壁１８Ａ）、遊動規制壁２８によって構成されることで、それぞれ天板１６Ｂまたは底板１８Ｂを薄肉化することなく形成されている。
【００３７】
各ガイド溝４２は、凹部３０Ａを基端としケース１２の右後角部まで至る所定の円周に沿った円弧状に形成されており、この所定の円周はビスボス３２の外側、ビスボス３６の内側、右壁１２Ｂと遊動規制壁２８との間を通る（縫う）ように決められている。そして、この所定の円周の中心位置（後述するドア５０の回転中心）は、本実施の形態では、その左右方向の位置（座標）がケース１２の左端よりも外側に、その前後方向の位置（座標）がリール１４の回転中心（遊動規制壁２８の軸心）と略一致するように設定されている。
【００３８】
すなわち、遊動規制壁２８が右壁１２Ｂに最も近接する部分において、該遊動規制壁２８と右壁１２Ｂとがガイド溝４２の溝壁を構成している。そして、この部分よりも若干（操作突起５２の厚みに略相当する分だけ）後方にスリット４０の後縁が位置している。
【００３９】
ガイド溝４２を構成するリブ４４のうち、各ガイド溝４２の内側前半部分を構成するリブ４４Ａは、ピン台２４の右方において切り欠かれると共に該切り欠き部の後縁部が該ピン台２４と連設されている。これにより、各ガイド溝４２と凹部２４Ａとが連通されている。一方、リブ４４Ａの切り欠き部の前縁部は、ピン台２４の端部と離間しており、板ばね２５のアーム部２５Ａが配置されるばね溝４５の一部を構成している。このリブ４４Ａの後端は、その外面が遊動規制壁２８に外接するように連設されている。
【００４０】
また、各ガイド溝４２の外側前半部分を構成するリブ４４Ｂも、ピン台２４の右方において切り欠かれており、天板１６Ｂ及び底板１８Ｂにおける該切欠き部の前縁とリブ４４Ａの切り欠き部後縁とを結ぶ矢印Ｂ方向に直交する仮想線よりも右側部分が、リーダピン２２をケース１２内に誘い込むテーパ開口２０Ａとされている。また、リブ４４Ｂには、テーパ開口２０Ａの後縁、ビスボス３６の前縁、開口２０の開放面にそれぞれ沿って形成されたリブ４６が連設されている。これにより、開口２０廻りの強度が確保または向上されている。このリブ４４Ｂは、その中間部が円弧壁３４の内面よりもわずかに内方を通り、その後端部が連結壁３４Ａの後方において右壁１２Ｂに内接するように連設されている。
【００４１】
さらに、各ガイド溝４２の後半部分を構成するリブ４４Ｃは、その後端において略Ｕ字状に折り返されると共に、その前端において内側部分及び外側部分がそれぞれ遊動規制壁２８に外接、右壁１２Ｂに内接するように連設されている。そして、上ケース１６のリブ４４Ｃは、下ケース１８のリブ４４Ｃよりも長く形成され（略Ｕ字状に閉じた後端が後方に位置し）ている。これは、下ケース１８の後壁１８Ｃ（周壁１８Ａ）が所定角度の傾斜面になっており、その右壁１２Ｂ側に配設したメモリーボードＭをドア５０と干渉させないためである。なお、各ガイド溝４２のそれぞれリブ４４Ｃによって略Ｕ字状に閉じられた後端部は、ドア５０のそれ以上後方への移動を規制するように、ドア５０の上下それぞれ最も後側に位置する凸部５１（後述）に係合可能とされている。
【００４２】
また、各ガイド溝４２を構成するリブ４４は、その略前半部分であるリブ４４Ａ、４４Ｂが略後半部分であるリブ４４Ｃよりも低く形成されている。例えば、リブ４４Ａ、４４Ｂの天板１６Ｂまたは底板１８Ｂからの高さは１ｍｍとされ、リブ４４Ｃの対応する高さは１．５ｍｍとされている。これは、開口２０に、リーダピン２２をチャックして引き出すドライブ装置側の引出手段が入り込めむための上下方向のスペースを確保するためである。このため、後述するように、ドア５０は前半部分（少なくとも開口２０を閉塞する部分）において板幅（高さ）が大きく（高く）なるように形成されている。また、ピン台２４、リブ４６の高さは、それぞれリブ４４Ａ、４４Ｂと同等に設定されている。
【００４３】
さらに、リブ４４Ｃの内側部分における長手中央部には、上下一対のばね掛けピン５５が設けられている。各ばね掛けピン５５は、それぞれ遊動規制壁２８に連設されており、下ケース１８側が長く形成され、その遊動規制壁２８よりも上方に突出した部分に後述するコイルばね５６の一端側環状部５６Ａが引掛けられる構成である。そして、この下ケース１８側のばね掛けピン５５に上ケース１６側の短いばね掛けピン５５が突き当てられることで、コイルばね５６の脱落が阻止されるようになっている。
【００４４】
また、ケース１２には、スリット４０後縁よりも後方に位置するそれぞれ左右一対の凹部４８Ａ、４８Ｂが設けられている。凹部４８Ａは、例えば、ドライブ装置の引き込み手段が係合する係合部とされたり、その底面（下向きの面）がドライブ装置内での位置決め用の基準面とされたりするようになっている。また、凹部４８Ｂは、ライブラリ装置の把持手段が係合する係合部とされている。
【００４５】
以上説明した上ケース１６と下ケース１８とは、互いの周壁１６Ａ、１８Ａを突き当てた状態で、各ビスボス３２、３６及び他のビスボスに下側から図示しないビスがねじ込まれて固定（接合）されケース１２を構成している。なお、ビスのネジ山径は一例として、φ２．０ｍｍとし、ビスボス３２、３６の外径をφ４．０ｍｍとしている。これによって、ケース１２の通常強度的に不利な角部に位置し、落下によって地面等に衝突しやすい開口２０両端のコーナー部は強固に接合され、ケース１２を落しても、記録テープカートリッジ１０全体の重量で、変形したり座屈して位置ズレしない構成である。
【００４６】
また、ピン台２４が設置されたエリア（開口２０付近）では、板厚が上ケース１６及び下ケース１８とも２．４ｍｍとされ、他のエリア（平均２ｍｍ）と比較して厚肉となっている。さらに、ケース１２（上ケース１６及び下ケース１８）は、機械的強度が高いポリカーボネート素材（ＰＣ）で形成されている。なお、ケース１２はＰＣに代えてアクリロニトリルブタジエートスチレン（ＡＢＳ）や金属材とすることもできる。
【００４７】
これは、記録テープカートリッジ１０の機能上で最も重要な（記録テープを引き出す際に引出手段に正しく係止されるべき）リーダピン２２の保持（位置決め）位置であるピン台２４付近の強度を上げ、ケース１２（記録テープカートリッジ１０）の落下等による衝撃でリーダピン２２の位置ズレが生じないようにするためである。
【００４８】
また、ピン台２４の設置位置は、開口２０の前後の縁部に位置するビスボス３２、３６の軸心を結ぶ仮想直線（図示省略）よりもケース１２内側に位置するように決められている。さらに、本実施の形態では、ピン台２４は、ビスボス３６よりもビスボス３２に近接して配置されている。これにより、ケース１２の落下等に伴う天板１６Ｂ及び底板１８Ｂの振動によるリーダピン２２の位置ズレも防止される構成である。
【００４９】
さらにまた、ケース１２は、上ケース１６の周壁１６Ａと下ケース１８周壁１８Ａとが同等の高さとされ、互いの突き合せ部の加工精度（金型による樹脂成形の精度）が同程度となり、組立性や耐落下衝撃性が良好とされている。また、ケース１２は、凹部４８Ａ、４８Ｂ、セルリテンションノッチ６０（後述）や必要に応じて他の凹部等が設けられることで、捩り強度が向上されている。
【００５０】
一方、開口２０の開放面の矢印Ａ方向に対する傾斜角（開口２０の上下を規定するケース１２の天板１６Ｂ及び底板１８Ｂの傾斜角）は、ライブラリ装置における記録テープカートリッジ１０の識別（認識）の要求に応じて決められている。すなわち、ライブラリ装置は、複数の記録テープカートリッジ１０を収容して記録テープカートリッジ１０を自動的に（人手を介在させないで）ドライブ装置に着脱するものであるが、その取り扱う記録テープカートリッジ１０及びドライブ装置が複数種となる場合、記録テープカートリッジ１０の世代や記録容量等を認識する必要があり、この認識に開口２０の開放面の傾斜角を利用することができる。
【００５１】
これにより、上記の如く強度上の配慮が為された磁気テープＴ引き出し用の開口２０が、その開放面の傾斜角（具体的には、開口２０の上下を規定する天板または底板の傾斜角）によってライブラリ装置での認識部を兼ねるため、開口２０と認識部とを別個に設けた場合（例えば、認識部としてケース１２に１つまたは複数の貫通孔を設けた場合）に懸念されるケース１２の強度不足や防塵性の低下、及び金型構造の複雑化を防止できる。
【００５２】
以上説明した開口２０は、右前角部が切り欠かれて形成されることで開放面が矢印Ａ方向及び矢印Ｂ方向に向く（開放面が矢印Ａ方向に対して傾斜している）ため、ドライブ装置の引出手段が、矢印Ａ方向、矢印Ｂ方向、或いは矢印Ａ方向と矢印Ｂ方向との間からアクセスしてリーダピン２２をチャックできる。これにより、リーダピン２２を保持するピン台２４を設置可能なエリアが広がり、ドライブ装置の引出手段がリーダピン２２をチャック可能な領域が広いため、矢印Ａ方向または矢印Ｂ方向からチャックするドライブ装置の仕様に合わせてピン台２４の設置位置を設定できる。そして、後述するドア５０はその動作軌跡がリーダピン２２の現実的な設置可能位置とは干渉しないため、ドライブ装置の設計の自由度も広がる。
【００５３】
また、ドライブ装置は、その引出手段がケース１２の矢印Ａ方向を向く前面側からリーダピン２２にアクセスする構成とすれば、磁気テープＴを引き出すための経路を最短とでき、さらに、引出手段がケース１２の矢印Ｂ側から回り込むようなドライブメカが不要となり、小型化及び低コスト化が図られる。さらに、上記の如く磁気テープＴを引き出すための経路を最短にすると、磁気テープＴのパス経路も必然的に短くなるので、磁気テープＴとテープガイド（例えば、回転可能に支持されたローラ等）との接触摩耗を低減することができる。
（ドアの構成）
以上説明した開口２０は、遮蔽部材としてのドア５０によって開閉されるようになっている。図７（Ａ）に示される如く、ドア５０は、板厚方向に湾曲され、その平面視における曲率がガイド溝４２（所定の円周）の曲率と一致する円弧状に形成されている。また、図７（Ｂ）に示される如く、ドア５０は、その前部（少なくとも開口２０を閉塞する部分）における板幅（高さ）が開口２０の開口高さと略同一に形成された部分が閉塞部５０Ａとされると共に、閉塞部５０Ａよりも後側の板幅が若干小さくされた部分が駆動部５０Ｂとされている。
【００５４】
このドア５０の板長（湾曲した長手寸法）は、開口２０の閉塞状態において駆動部５０Ｂの後端部がケース１２の右後角部内に位置するように決められている（図８参照）。なお、駆動部５０Ｂの後下部は、下ケース１８の後壁１８Ｃに傾斜配置されたメモリーボードＭを回避するために、斜めに切り欠かれている。
【００５５】
このドア５０は、その閉塞部５０Ａの先端部がビスボス３２の外側に位置する凹部３０Ａに入り込んだ状態で開口２０を閉塞し（図８参照）、ガイド溝４２に沿って略後方へ移動（回動）して開口２０を開放し（図９参照）、閉塞部５０Ａの先端近傍の外周面がビスボス３６の内側近傍に達すると開口２０を完全に開放する（図１０参照）構成である。また、ドア５０は、開口２０を開放する際と略反対方向に回動して開口２０を閉塞するようになっている。
【００５６】
このように、ドア５０は、その移動軌跡である所定の円周をはみ出すことなく回動して開口２０を開閉するように湾曲形成されている。ドア５０の回転中心及び半径（ガイド溝４２の形状）は、ドライブ装置からの要求により決まる開口２０前後の縁部（ビスボス３２、３６）の位置やライブラリ装置からの要求により決まる開口２０の開放面の角度等に応じて適宜決められれば良い。
【００５７】
また、ドア５０の上下端には、それぞれ上下のガイド溝４２に入り込むそれぞれ複数の凸部５１が突設されている。各凸部５１は、閉塞部５０Ａと駆動部５０Ｂとで突出高が異なるが、ドア５０の幅方向（長手方向に沿った）中心線からそれぞれの頂部までの距離は一定とされている。これにより、上下の凸部５１は、ガイド溝４２の底部である天板１６Ｂまたは底板１８Ｂと摺動するようになっている。
【００５８】
また、各凸部５１におけるドア５０の板厚方向両側には、その頂部がドア５０板厚方向端面に沿う突起５１Ａが突設されており、ガイド溝４２の溝壁（リブ４４等）と摺動するようになっている。なお、最前に位置する凸部５１は、開口２０の開閉過程でガイド溝４２と連通するテーパ開口２０Ａには入り込まないように配置されている。
【００５９】
これらの凸部５１及び突起５１Ａによって、ドア５０は、開口２０を開閉する際に各ガイド溝４２にガイドされて上記移動軌跡からはみ出すことなく、ビスボス３２の外側及びビスボス３６の内側、右壁１２Ｂと遊動規制壁２８との間を縫うようにして確実に開動する構成である。
【００６０】
このドア５０の駆動部５０Ｂの前端（閉塞部５０Ａ側）近傍における外周部には、操作部としての操作突起５２がドア５０の径方向に沿って突設されている。操作突起５２は、スリット４０からケース１２の外側に露出されており、開口２０の閉塞状態では、上ケース１６の連結壁３４Ａからわずかに離間して位置すると共に、スリット４０の屈曲壁３８切欠き部分において前方へ開口した部分から操作可能とされている。この状態で、操作突起５２の先端部が右壁１２Ｂの外面（ケース１２の外形領域）よりも突出しないように各部の寸法が決められる（図８参照）と共に、連結壁３４Ａは操作突起５２の長手方向と略一致するように傾斜されている。
【００６１】
一方、操作突起５２は、開口２０の開放状態では、スリット４０の後縁からわずかに離間して位置するようになっている。なお、この状態で、操作突起５２の長手方向がケース１２の右壁１２Ｂ（矢印Ａ方向）と略直交するように各部の寸法が決められている（図１０参照）。
【００６２】
そして、この操作突起５２露出用のスリット４０によってケース１２の内外が連通されているが、このスリット４０は、その前側においてはケース１２内の略全高に亘るドア５０と円弧壁３４とが所定長さに亘り極めて近接していること、その後側においてはドア５０と右壁１２Ｂとが近接していることによって常時ほぼ閉塞されており、リール１４に巻装された磁気テープＴへの塵埃等の付着が防止されるようになっている。
【００６３】
また、ドア５０の駆動部５０Ｂの後端部には、該ドア５０の内面側に向けて略Ｌ字状のばね掛け部５４が突設されており、ばね掛け部５４は上側が自由端とされている。このばね掛け部５４には、付勢手段としてのコイルばね５６が係止保持用されている。具体的には、コイルばね５６の端部にはそれぞれ係止用の環状部５６Ａ、５６Ｂが設けられており、環状部５６Ａはケース１２のばね掛けピン５５を挿通させてケース１２に係止保持され、環状部５６Ｂはばね掛け部５４を挿通させてドア５０に係止保持されている（図８参照）。
【００６４】
これにより、ドア５０は、コイルばね５６の付勢力によって開口２０の閉塞方向に付勢され、通常開口２０を閉塞する構成である。このコイルばね５６は、上記の通りドア５０が開口２０の閉塞状態でケース１２の右後角部に至る長さであるため、該右後角部における遊動規制壁２８と周壁１６Ａ、１８Ａ（後壁１８Ｃ）との間の空間を有効利用して配設されている。
【００６５】
また、ドア５０の閉塞部５０Ａ内面には、開口２０閉塞時にリーダピン２２の上端部側面及び下端部側面に当接するストッパ５８が突設されており、落下衝撃等によるリーダピン２２のピン台２４からの脱落を、確実に防止できるようになっている。さらに、ドア５０の閉塞部５０Ａの先端における内面及び／または外面は、凹部３０Ａにスムーズに入り込めるようにテーパ形状とされることが好ましく、本実施の形態のドア５０は内外面共にテーパ面が形成されている。
【００６６】
以上説明したドア５０は、ＰＣより成るケース１２に対して、耐摩耗性に優れ低摩擦係数である、例えば、ポリオキシメチレン（ＰＯＭ）樹脂によって成形されているが、操作突起５２やばね掛け部５４は別体（別材料）にて構成しても良い。また、各凸部５１及び各突起５１Ａは、ＰＯＭより成るドア５０と一体に形成されも良く、ドア５０の本体（閉塞部５０Ａ及び駆動部５０Ｂ）とは別個に形成されても良いが、別体の場合、ポリアミド（ＰＡ）、ポリテトラフロロエチレン（ＰＴＦＥ）、ポリエチレン（ＰＥ）等の樹脂材或いは金属材、またはこれらを主成分とする材料にて構成されても良い。但し、ケース１２を金属材で構成する場合は、摩耗特性や異音の防止を考慮して各凸部５１及び各突起５１Ａを樹脂材にて構成する必要がある。
【００６７】
以上説明したドア５０は、記録テープカートリッジ１０がドライブ装置へ装填される動作によって操作突起５２がドライブ装置の係合突起６８に係合することでコイルばね５６の付勢力に抗してケース１２に対し移動し開口２０を開放し、ドライブ装置から排出される際にはコイルばね５６の付勢力によって開口２０を閉塞する構成である。そして、円弧状に湾曲形成されたドア５０は、その湾曲形状に沿った移動軌跡からはみ出すことなくリール１４及びピン台２４（リーダピン２２）の外側を回り込むように回動して開口２０を開閉するようになっており、開口２０の開閉に際してケース１２の外形領域からはみ出さない構成である。したがって、ドライブ装置内における記録テープカートリッジ１０の収容スペースを小さくすることができる。
（セルリテンションノッチの構成）
また、ケース１２は、本発明における「凹部」としてのセルリテンションノッチ６０を備えている。図２及び図３に示される如く、セルリテンションノッチ６０は、上ケース１６の矢印Ｃ側端部（開口２０側とは左右方向反対側の側部）における前後方向中央部よりも若干前側に設けられており、それぞれ上ケース１６の天板１６Ｂ及びケース１２の左壁１２Ｃ（周壁１６Ａ、１８Ａのうち、矢印Ａ方向に沿った左側の側壁）において上方及び左方に開口している。
【００６８】
このセルリテンションノッチ６０は、平面視略台形状に形成されケース１２の外方を向く４つの面を有している。これらの４面のうち水平方向を向く３面は、矢印Ｃ側を向き矢印Ａ方向に沿う面が押圧面６０Ａ、後側（矢印Ａとは反対側）を向き矢印Ａ方向と略直交する面が係合面６０Ｂ、係合面６０Ｂとは反対側に位置し左壁１２Ｃにおける開口幅（開口長）を広げる方向に傾斜した面が傾斜面６０Ｃとされている。
【００６９】
そして、押圧面６０Ａ及び係合面６０Ｂは、その抜き勾配が小さくされる（例えば、意匠面を構成する前壁１２Ａの抜き勾配が２°であるのに対して、抜き勾配が略０．５°とされる）ことで矢印Ａ方向に対し略垂直（わずかに上向き）な面とされている。押圧面６０Ａ及び係合面６０Ｂは、上記ドア５０が開口２０を開放する際に、それぞれ後述するドライブ装置の押圧係合部材６４と当接（押圧または係合）するようになっている。
【００７０】
一方、傾斜面６０Ｃの傾斜角は、押圧係合部材６４のセルリテンションノッチ６０に対する進退を考慮して決められているが、本実施の形態では、傾斜面６０Ｃを構成する壁部１６Ｃが、その位置に遊動規制壁２８を延設したと仮定した場合の該位置における該遊動規制壁２８の接線方向に略一致するようにも決められている。これにより、セルリテンションノッチ６０は、リール１４が配設されるリールエリア内に該リール１４に干渉しないように配置されており、開口２０の後縁に位置するビスボス３６よりも後方に（できるだけ前後方向中央部に近づくように）位置している。このため、押圧面６０Ａが矢印Ｂ方向に押圧されると、ケース１２は、その右壁１２Ｂがバケットの当接面６６（後述）に当接した状態で維持される（屈曲壁３８の角部廻りに回転しない）構成である。
【００７１】
また、ケース１２の角部（周壁１６Ａの上端と天板１６Ｂとの角部や周壁１８Ａと底板１８Ｂとの角部）は全体に丸められたアール仕舞いとされているが、セルリテンションノッチ６０の上下方向及び側方向の深さは、該アール径よりもそれぞれ大きく設定されており、押圧面６０Ａ及び係合面６０Ｂの押圧係合部材６４との十分な当接可能面積を確保し、ケース１２の設計やデザインの自由度を損なうこともない構成である。
【００７２】
さらに、セルリテンションノッチ６０の下底面は周壁１６Ａの下端近傍まで至っており、押圧面６０Ａ及び係合面６０Ｂの押圧係合部材６４との当接高さ（上下方向の位置）とスリット４０から露出した操作突起５２の係合突起６８との係合高さとが一致するようになっている。このように、スリット４０をパーティングラインＰＬの上方に配置することで、セルリテンションノッチ６０（押圧面６０Ａ及び係合面６０Ｂ）を上ケース１６に設ければ上記各係合高さを一致させることができ、押圧面６０Ａ及び係合面６０Ｂを上ケース１６と下ケース１８との突き当てによって形成する場合に懸念される上下の押圧面６０Ａ及び係合面６０Ｂの突き当て部の微小な段差の形成をも防止している。
【００７３】
また、セルリテンションノッチ６０が上方及び左方に開口していることで、ドライブ装置の押圧係合部材６４の押圧面６０Ａ及び係合面６０Ｂへのアクセス可能方向が広くドライブ装置の設計自由度が広がると共に、上ケース１６の成形性が良好な構成である。
【００７４】
次に、本実施の形態の作用について説明する。
【００７５】
上記構成の記録テープカートリッジ１０では、非使用時（保管時や運搬時等）には、開口２０がドア５０によって閉塞されている。具体的には、ドア５０は、コイルばね５６の付勢力によって、その先端部（前端部）が凹部３０Ａに入り込むと共に、中間部外周面がビスボス３６の内側外周面及び円弧壁３４の内周面に略接して開口２０を閉塞している。
【００７６】
一方、磁気テープＴを使用する際には、記録テープカートリッジ１０を矢印Ａ方向に沿ってドライブ装置を構成するカートリッジ収容手段としてのバケットへ挿入する（ドライブ装置へ装填する）。記録テープカートリッジ１０がバケットに所定深さまで挿入されると、図８に示される如く、バケットに設けられた位置決め手段６２の押圧係合部材６４は、例えばロック解除機構がケース１２と当接することで想像線にて示す位置に維持されるロック状態が解除され、図示しないばね等の付勢力によって軸回りに回動して、ケース１２のセルリテンションノッチ６０に左方から入り込む。
【００７７】
すると、押圧係合部材６４の長手方向が矢印Ｂ方向に対し傾斜していることで、上記回動方向の付勢力の分力が矢印Ｂ方向に作用し、該押圧係合部材６４は、押圧面６０Ａを矢印Ｂ方向に押圧しケース１２の右壁１２Ｂをバケットの当接面６６に押し付け（ケース１２を片寄せ）る。そして、押圧係合部材６４が係合面６０Ｂに係合すると、この位置で該押圧係合部材６４はロックされ、該係合状態が維持されると共に右壁１２Ｂの当接面６６からの離間を阻止する。これにより、ケース１２（すなわち記録テープカートリッジ１０）がバケットに対し抜き出し不能に位置決めされる。
【００７８】
なお、ケース１２は、右壁１２Ｂが当接面６６に当接する構成に代えて、その底板１８Ｂ下面における開口２０の左右方向中央部に対応する位置に矢印Ａ方向に沿って設けられたスタッキングリブがバケットのガイド溝（何れも図示省略）等に押し付けられても良い。
【００７９】
この状態で、バケットは、記録テープカートリッジ１０と共にドライブ装置内で矢印Ａ方向へ移動する。この移動（ドライブ装置への装填動作、すなわちドライブ装置との相対移動）に伴って、ドライブ装置の開閉手段を構成する開閉部材としての係合突起６８が、屈曲壁３８切欠き部分において前方へ開口したスリット４０に進入し、ドア５０の操作突起５２に係合する。
【００８０】
バケットが記録テープカートリッジ１０（ケース１２）と共にさらに矢印Ａ方向へ移動すると、図９に示される如く、この移動力によってコイルばね５６の付勢力に抗しつつ、係合突起６８が操作突起５２を略後方へ移動させる（矢印Ａ方向へ移動するケース１２に対して略後方へ相対移動する）。すると、操作突起５２が突設されたドア５０は、ガイド溝４２に案内されつつ、その湾曲方向に沿って平面視時計方向に回動し（ピン台２４及びリール１４の外側を回り込むように略後方へ移動し）、開口２０を開放する。
【００８１】
このとき、ケース１２には、上記移動力の反力による操作突起５２と係合突起６８との係合部位Ｄ廻りの回転モーメント（図９に示す矢印Ｅ方向のモーメント）が作用するが、上記ロックされた押圧係合部材６４が右壁１２Ｂ（の係合部位Ｄより前側部分）とバケットの当接面６６との当接（押し付け）状態を維持しているため、ケース１２には矢印Ｅ方向の回転モーメントに抗する（釣合う）矢印Ｆ方向のモーメントが作用し、該矢印Ｅ方向の回転モーメントが打ち消される。
【００８２】
これにより、ケース１２は、ドア５０の操作突起５２と係合突起６８との係合部位Ｄ廻りに回動して矢印Ａ方向に対し傾斜することがない。また、ケース１２は、押圧係合部材６４が係合面６０Ｂに係合することでバケットからの抜き出し方向の移動が規制されており、かつ開口２０側の右壁１２Ｂが当接面６６に当接しているため、その開口２０設置部位のバケット（ドライブ装置）に対する許容量以上の位置ずれが防止される。
【００８３】
そして、バケットが矢印Ａ方向に所定量移動すると、すなわち、ケース１２（記録テープカートリッジ１０）がドライブ装置に所定深さ装填されると、図１０に示される如く開口２０が完全に開放される。このとき、ドア５０は、その上下それぞれの最も右代に位置する凸部５１がリブ４４Ｃの閉じた後端部に当接することで、それ以上の回動（略後方への移動）が規制される。
【００８４】
この状態で記録テープカートリッジ１０がドライブ装置内で位置決めされると、開放された開口２０からはドライブ装置の引出手段がケース１２内に進入し、この引出手段がピン台２４に位置決め保持されたリーダピン２２を抜き出して巻取リールに収容する。そして、巻取リールとリール１４とを同期して回転駆動すると、磁気テープＴは、巻取リールに巻き取られつつケース１２から順次引き出され、所定のテープ経路に沿って配設された記録再生ヘッド等によって情報の記録や再生が行われる。
【００８５】
一方、磁気テープＴがリール１４に巻き戻されて、記録テープカートリッジ１０をドライブ装置から排出する際には、記録テープカートリッジ１０は、位置決め状態が解除され、バケットと共に矢印Ａとは反対方向に移動する。この移動に伴って、ドア５０は、コイルばね５６の付勢力によって開口２０の閉塞方向へ移動し、閉塞部５０Ａの先端が凹部３０Ａに入り込むと開口２０が完全に閉塞される初期状態に復帰する。
【００８６】
そして、この移動（開口２０の閉塞）後、押圧係合部材６４はロック状態が解除され、セルリテンションノッチ６０から抜け出る。このとき、押圧係合部材６４は、セルリテンションノッチ６０に傾斜面６０Ｃが設けられているため、該セルリテンションノッチ６０の角部等に干渉することなく抜け出る。
【００８７】
以上説明したように、記録テープカートリッジ１０では、ケース１２は、ドライブ装置の位置決め手段６２（押圧係合部材６４）によって押圧面６０Ａが矢印Ｂ方向に押圧され（ケース１２が当接面６６に押し付けられ）ることで開口２０開放時の回転モーメントが打ち消され、上記押圧係合部材６４が係合面６０Ｂに係合することで抜き出し方向への移動が阻止される。
【００８８】
また、ケース１２は、開口２０の近傍である右壁１２Ｂが当接面６６に当接してバケットに対し位置決めされるため、意匠面であるケース１２外面の寸法精度が開口２０設置部位のバケット（その後位置決めされるドライブ装置本体）に対する位置精度に与える影響が小さい。すなわち、左壁１２Ｃ側に設けられたセルリテンションノッチ６０が押圧等されることで、上記回転モーメントを打ち消す機能を維持しつつ、ケース１２のバケットに対する位置精度も向上する。
【００８９】
このように、本実施の形態に係る記録テープカートリッジ１０では、ドライブ装置への装填動作によってドア５０を開口２０の開放方向に移動させる際に、ドライブ装置に対するケース１２の位置ずれを防止できる。
【００９０】
そして、押圧面６０Ａと係合面６０Ｂとが１つの凹部であるセルリテンションノッチ６０内に形成されているため、ケース１２に設ける凹部が増えることがなくケース１２の成形性が維持され、またドライブ装置側では押圧面６０Ａを押圧する機能と係合面６０Ｂに係合する機能とを兼ねた位置決め手段６２を有する簡単な構成とすることができる。
【００９１】
なお、上記の実施の形態では、記録テープカートリッジ１０がバケットと共にドライブ装置に対し相対移動して開口２０が開放される構成としたが、記録テープカートリッジ１０のバケットに対する相対移動（バケットへの挿入動作）によって開口２０が開放されても良い。この場合、位置決め手段６２は、記録テープカートリッジ１０が所定深さまでバケットに挿入されると押圧係合部材６４をセルリテンションノッチ６０に入り込ませ、その後は記録テープカートリッジ１０と共にバケットに対し相対移動する構成となる。また、当接面６６は位置決め手段６２と一体に移動してもバケットに固定されても良い。
【００９２】
さらに、位置決め手段６２は、押圧面６０Ａを押圧する機能と係合面６０Ｂに係合する機能とを兼ねた好ましい構成に限定されることはなく、これらの機能が別個の構成によって実現されても良い。
【００９３】
また、記録テープカートリッジ１０のセルリテンションノッチ６０は、カートリッジ自動搬送装置としてのライブラリ装置７０における位置決め用に用いられても良い。先ず、図１１に基づいてライブラリ装置７０の一例を説明する。
【００９４】
図１１に概略斜視図にて示される如く、ライブラリ装置７０は、それぞれ記録テープカートリッジ１０を収容可能な複数の収容部としてのホルダ部（マガジン）７２を有する収容棚部７４と、１基または複数（本実施の形態では４基）のドライブ装置７６が設置された記録再生部７８と、記録テープカートリッジ１０の後端側部（例えば、左右一対の凹部４８Ｂ）を把持可能なチャッキング機構８０を各ホルダ部７２と各ドライブ装置７６との間で移動可能な移動機構部８２とを備えて構成されている。
【００９５】
このライブラリ装置７０では、使用される記録テープカートリッジ１０をチャッキング機構８０及び移動機構部８２によってホルダ部７２から抜き出して記録再生部７８のドライブ装置７６へ装填し、使用後の記録テープカートリッジ１０をチャッキング機構８０及び移動機構部８２によってドライブ装置７６から抜き出して収容棚部７４のホルダ部７２へ収容（装填）するようになっている。
【００９６】
これにより、複数（多数）収容した記録テープカートリッジ１０を自動的かつ高速でドライブ装置７６に着脱でき、大規模（大容量の）な情報バックアップシステムが構築されている。また、ライブラリ装置７０は、記録テープカートリッジ１０を含む複数種類の記録テープカートリッジを取り扱うようになっており、その種類に応じて仕様の異なるホルダ部７２、ドライブ装置７６を備えて構成されている。
【００９７】
図１２に示される如く、ライブラリ装置７０を構成するカートリッジ収容手段としてのホルダ部７２の内部には、前後方向の位置決め基準となるそれぞれ上下一対の位置決めストッパ８４、８６が最奥部に設けらている。右側（開口２０側）の位置決めストッパ８４は、ケース１２の開口２０開放面に対応した傾斜部８４Ａを備えている。また、ホルダ部７２の右内面８８が左右方向の位置決め基準となっている。そして、ホルダ部７２内の左端部には、ドライブ装置のものと同様に構成された位置決め手段６２が設けられている。
【００９８】
このライブラリ装置７０のホルダ部７２内に、チャッキング機構８０及び移動機構部８２によって記録テープカートリッジ１０が所定深さまで収容されると、ケース１２の前壁１２Ａはストッパ８４、８６に当接する。この状態で、位置決め手段６２の押圧係合部材６４がセルリテンションノッチ６０に入り込む。そして、上記ドライブ装置の場合と同様に、押圧係合部材６４は、押圧面６０Ａを矢印Ｂ方向に押圧し、その後係合面６０Ｂに係合する。
【００９９】
これにより、ケース１２は、右壁１２Ｂが右内面８８に、開口２０開放面に沿って切欠かれた右前角部（開口２０の上下端を規定する天板１６Ｂ及び／または底板１８Ｂ）が位置決めストッパ８４の傾斜部８４Ａに、それぞれ当接する。すなわち、ケース１２がホルダ部７２に対し前後方向及び左右方向に位置決めされると共に、ホルダ部７２からの脱落（抜き出し）が阻止され、ホルダ部７２に対対するケース１２の位置ずれが防止される。
【０１００】
なお、ホルダ部７２内における位置決めストッパ８４、または、その近傍にはケース１２の開口２０開放面の傾斜角（接触の有無や距離等）を識別する識別手段が設けらており、該ホルダ部７２に対応しない記録テープカートリッジを収容するとチャッキング機構８０及び移動機構部８２によって該記録テープカートリッジを排出させる信号を出力するようになっている。このように、押圧係合部材６４がセルリテンションノッチ６０の押圧面６０Ａ及び係合面６０Ｂを押圧することで、ケース１２は上記右前角部が位置決めストッパ８４の傾斜部８４Ａに当接し確実に位置決めされるため、上記識別手段による上記開口２０開放面の傾斜角を利用した記録テープカートリッジ１０の識別が確実に為される。
【０１０１】
このように、セルリテンションノッチ６０がライブラリ装置７０のホルダ部７２における位置決め及び脱落阻止にも用いられる構成とすれば、ケース１２に設ける凹部を削減できる。これにより、ケース１２の形状（上ケース１６成形用の金型）が簡素化され、離型抵抗の増大も抑止される。また、ドライブ装置とライブラリ装置７０とで位置決め手段６２の共用化を図ることができ、好適である。なお、セルリテンションノッチ６０は、例えば、ドライブ装置のみで使用されても良く、ライブラリ装置７０のホルダ部７２のみで用いられても良い。
【０１０２】
なお、上記の実施の形態では、記録テープカートリッジ１０が矢印Ａ方向に対し傾斜した開口２０と、円弧状の移動軌跡に対応したドア５０とを備えた好ましい構成としたが、本発明はこれに限定されず、セルリテンションノッチ６０は、ドライブ装置への装填動作によって開口２０を開放し該開放過程で回転モーメントが作用する如何なる構成の開口やドア（遮蔽部材）を備えた記録テープカートリッジ１０にも適用できる。したがって例えば、記録テープカートリッジ１０は、ケース１２の右壁１２Ｂを貫通した開口を矢印Ａ方向に沿ってスライドして開閉するドアを備えた構成としても良く、操作突起５２がケース１２の底板１８Ｂに設けられたスリットから外部に露出された構成としても良い。
【０１０３】
また、上記の実施の形態では、記録テープとして磁気テープＴを用いた構成としたが、本発明はこれに限定されず、記録テープは情報の記録及び記録した情報の再生が可能な長尺テープ状の情報記録再生媒体として把握されるものであれば足り、本発明に係る記録テープカートリッジが如何なる記録再生方式の記録テープにも適用可能であることは言うまでもない。
【０１０４】
さらに、上記の実施の形態では、位置決め手段６２の押圧係合部材６４が水平面に沿って回動してセルリテンションノッチ６０に入り込む構成としたが、本発明はこれに限定されず、例えば、押圧係合部材６４が鉛直面に沿って回動して（斜め左後方から）セルリテンションノッチ６０に入り込む構成としても良い。この場合、傾斜面６０Ｃは、壁部１６Ｃがリール１４に干渉しない範囲でセルリテンションノッチ６０の上向き開口部分を広げるように傾斜されても良い。また、傾斜面６０Ｃは、押圧係合部材６４の進退を許容できれば平面状であっても曲面状であっても良いことは言うまでもない。
【０１０５】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る記録テープカートリッジは、カートリッジ収容手段に対するケースの位置ずれを防止できるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の実施の形態に係る記録テープカートリッジの全体構成を示す斜視図である。
【図２】本発明の実施の形態に係る記録テープカートリッジの全体構成を示す別方向から見た斜視図である。
【図３】本発明の実施の形態に係る記録テープカートリッジの分解斜視図である。
【図４】本発明の実施の形態に係る記録テープカートリッジを構成する上ケースの底面図である。
【図５】本発明の実施の形態に係る記録テープカートリッジを構成する下ケースの平面図である。
【図６】本発明の実施の形態に係る記録テープカートリッジの開口及びスリットを拡大して示す斜視図である。
【図７】本発明の実施の形態に係る記録テープカートリッジを構成するドアを示す図であって、（Ａ）は平面図、（Ｂ）は側面図である。
【図８】本発明の実施の形態に係る記録テープカートリッジの開口がドライブ装置により開放される前の状態を示す一部切り欠いた平面図である。
【図９】本発明の実施の形態に係る記録テープカートリッジの開口がドライブ装置により開放される途中の状態を示す一部切り欠いた平面図である。
【図１０】本発明の実施の形態に係る記録テープカートリッジの開口がドライブ装置により開放された状態を示す一部切り欠いた平面図である。
【図１１】本発明の実施の形態に係る記録テープカートリッジが使用されるライブラリ装置の概略構成を示す斜視図である。
【図１２】本発明の実施の形態に係る記録テープカートリッジがライブラリ装置のホルダ部内で位置決めされた状態を示す平面図である。
【符号の説明】
１０ 記録テープカートリッジ
１２ ケース
１４ リール
２０ 開口
５０ ドア（遮蔽部材）
６０ セルリテンションノッチ（凹部）
６０Ａ 押圧面
６０Ｂ 係合面
６０Ｃ 傾斜面
６２ 位置決め手段
６４ 押圧係合部材（位置決め手段）
６６ 当接面（バケット、ドライブ装置、カートリッジ収容手段）
６８ 係合突起（開閉部材、開閉手段）
７０ ライブラリ装置（カートリッジ収容手段）
７２ ホルダ部（カートリッジ収容手段）
７６ ドライブ装置（カートリッジ収容手段）
Ｔ 磁気テープ（記録テープ）

Claims (1)

1. 記録テープが巻装された単一のリールを回転可能に収容する略矩形状のケースと、
   前記ケースのドライブ装置への装填側角部または前記ケースのドライブ装置への装填方向に沿った側壁に設けられ、前記記録テープを引き出すための開口と、前記ケースに前記開口を開閉可能に設けられ、前記ケースの前記ドライブ装置への装填動作によって該ドライブ装置の開閉部材に係合しつつ前記開口の開放側へ移動する遮蔽部材と、
   前記ケースの前記開口側とは反対側の側部に凹設され、前記装填側とは反対側を向き前記開口開放時にカートリッジ収容手段の位置決め手段が係合する係合面と、前記装填方向に沿い前記開口開放時に前記位置決め手段によって押圧される押圧面と、前記係合面とは反対側に位置し前記側部における開口幅を広げる方向に傾斜した傾斜面とを有する凹部と、
   を備えた記録テープカートリッジ。

Images