JP3808722B2 - シュリンク蓋用成形シート及びシュリンク蓋付包装体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱収縮性のシートを、天板部と、その周縁から垂下するスカート部とを有する形状に成形したもので、開口部の周縁にフランジ部を有する容器に被せ、スカート部を熱収縮させてフランジ部の下部に巻き込ませて取り付けるシュリンク蓋用成形シート及びそれを用いたシュリンク蓋付包装体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、シュリンク蓋用成形シートとしては、0.13〜0.18mmのポリスチレンシートを成形したものであって、それを用いたシュリンク蓋付包装体について、シュリンク蓋を取り除いて開封するときに、熱収縮されているスカート部から天板部を横断する方向にシュリンク蓋を切り開くことができるよう、スカート部の下縁からタブを延出させ、このタブの両側縁の基部にノッチを形成したものが知られている(特開平8−133280号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のシュリンク蓋用成形シート及びそれを用いたシュリンク蓋付包装体には、次のような問題がある。
【0004】
(1)タブを引っ張ってシュリンク蓋を切り開いて開封する際に、引き裂きの伝播方向が安定せず、タブ両側縁の基部に形成された2つのノッチから伝播する2本の引き裂き線が蓋の天板部において交差し、タブに連なる帯状の開封片が途中でちぎれてしまい、最後まで開封できなくなりやすい。
【0005】
(2)熱収縮時にタブが厚く硬くなり、タブを引き起こす際に、曲げによってタブが割れ落ち、引き裂き開封の手掛かりを失いやすい。
【0006】
(3)タブだけでなく、フランジ部の下部に巻き込まれている箇所も熱収縮で厚く硬くなっていることから、タブを引き起こすときや、フランジ部の下側に巻き込まれている部分を引き裂くときに、小さな破片が飛散したり、引き裂き破断面に触れて手指に怪我をすることもある。
【0007】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、シュリンク蓋付包装体としたときに、開封時の引き裂きの伝播方向が安定していると共に、割れや手指の怪我を防止しやすいシュリンク蓋用成形シート及びそれを用いたシュリンク蓋付包装体を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1は、熱収縮性シートで構成され、天板部と、天板部の周縁から垂下するスカート部と、スカート部から延出するタブとを備えたシュリンク蓋用成形シートにおいて、
下記A〜Cの条件を満たす2枚の2軸延伸ポリスチレン系樹脂フィルムを、主延伸方向が同一方向に重なる状態で接着した積層シートで構成されており、主延伸方向に直交する方向にタブが設けられていることを特徴とするシュリンク蓋用成形シート。
【0009】
A:各2軸延伸ポリスチレン系フィルムの厚みが30〜85μmであること。
【0010】
B:各2軸延伸ポリスチレン系フィルムのビカット軟化点におけるORSが、それぞれ、主延伸方向が4〜48kg/cm2、主延伸方向と直交する方向が2〜25kg/cm2であって、かつ両方向の比率が2〜4の範囲であること。
【0011】
C:各2軸延伸ポリスチレン系フィルムのビカット軟化点+30℃におけるORSが、それぞれ、主延伸方向が6〜51kg/cm2、主延伸方向と直交する方向が4〜34kg/cm2であって、かつ両方向の比率が1〜2.5の範囲であること。
【0012】
上記本発明の第1は、タブの両側縁の基部にV字形ノッチを有し、該V字形ノッチを構成する2辺のうち、タブの側縁側の辺が、タブの中心線方向よりも外側方向を向いていること、
タブの両側縁の基部にスリット状ノッチを有し、該スリット状ノッチが、タブの中心線方向よりも外側方向を向いていること、
接着された2枚の2軸延伸ポリスチレン系フィルム間に印刷が施されていること、
をその好ましい態様として含むものである。
【0013】
また、本発明の第2は、上記本発明の第1に係るシュリンク蓋用成形シートが、開口部にフランジ部を有する容器に被せられ、スカート部が熱収縮されて該フランジ部の下部に巻き込まれていることを特徴とするシュリンク蓋付包装体を提供するものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
先ず、図1に基づいて本発明に係るシュリンク蓋用成形シートの一例を説明する。
【0015】
図示されるように、本発明に係るシュリンク蓋用成形シート1は、天板部2と、天板部2の周縁から垂下するスカート部3を有する蓋形状をなしている。
【0016】
スカート部3の下縁からは、外方にタブ4が延出している。図示される例におけるタブ4は1箇所であるが、2箇所以上に設けることもできる。
【0017】
タブ4は、その基部側の延長部分が天板部2の中央部を横断する方向となるように延出している。また、タブ4の両側縁の基部にはノッチ5が設けられている。このノッチ5は、必須のものではないが、後述するシュリンク蓋1’としたときに、その引き裂きによる開封開始時に要する力を軽減するために設けておくことが好ましい。図示されるノッチ5はV字形ノッチとなっている。
【0018】
本発明のシュリンク蓋用成形シート1は、熱収縮性シートに、圧空成形、真空成形もしくはプレス成形などによって、天板部2の周縁からスカート部3が垂下した形状を付与した後、輪郭形状に沿って打ち抜くことで得られるものであるが、単層のシートで構成されたものではなく、後述する2軸延伸ポリスチレン系樹脂フィルムを2枚接着積層した積層シートで構成されているものである。
【0019】
本発明のシュリンク蓋付包装体は、図2に示されるように、開口部の周囲にフランジ部6を有する容器7上に上記シュリンク蓋用成形シート1を被せ、天板部2で容器7の開口部を覆うと共に、フランジ部6の縁部からスカート部3を垂下させ、容器7の側方から赤外線、熱風などを当ててスカート部3を加熱し、図3に示されるように、スカート部3を熱収縮させてフランジ部6の下部に巻き込ませ、シュリンク蓋用成形シート1を容器7に取り付けられたシュリンク蓋1’とすることで得られる。図1で説明したタブ4及びノッチ5は、上記熱収縮で多少変形するものの、フランジ部6の下部側に巻き込まれた状態で残されることになる。
【0020】
シュリンク蓋用成形シート1の径は、容器7に被せやすいよう、容器7の径より5〜20%大きくしておくことが好ましい。また、シュリンク蓋用成形シート1のスカート部3の高さは、容器7の高さの7〜25%程度が好ましく、特に容器7上に被せたときの安定性から、7mm以上であることが好ましい。
【0021】
前記のように、本発明のシュリンク蓋用成形シート1は、単層のシートで構成されたものではなく、2軸延伸ポリスチレン系樹脂フィルムを2枚接着積層した積層シートで構成されているものである。単層の2軸延伸ポリスチレン系樹脂シートでは、シュリンク蓋用成形シート1への成形時の良好な型再現性(成形型に忠実な形状へ成形可能であること)、必要な天板部2の張り、フランジ部6へのスカート部3のきれいな巻き付き性などを満たすと共に、タブ4の割れやちぎれを発生させることなく裂け目を伝播させることが困難となる。
【0022】
各2軸延伸ポリスチレン系樹脂フィルムを構成するポリスチレン系樹脂とは、ビニル芳香族炭化水素の重合体、ビニル芳香族炭化水素とこれと重合可能な単量体との共重合体及びゴム強化ビニル芳香族炭化水素重合体から選ばれる重合体組成物をいい、これらの中でも全重合体組成物に含有されるビニル芳香族炭化水素が93重量%以上の重合体組成物が好ましい。また、ビニル芳香族炭化水素とは、スチレン、O−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどのスチレン系単量体をいう。
【0023】
好ましいポリスチレン系樹脂としては、透明性と構成の点から、汎用ポリスチレンを挙げることができる。特に汎用ポリスチレンに、透明性を損なわない範囲で、例えば脂肪族不飽和カルボン酸エステルとの共重合体などを混合すると、成形性を向上させることができるので好ましい。
【0024】
各2軸延伸ポリスチレン系樹脂フィルムを構成するポリスチレン系樹脂は、全樹脂組成物のビカット軟化点(ASTM−D−1504に準拠し、該当樹脂組成物を200℃で厚み4mmのシートとし、荷重1kg、昇温速度2℃/分の条件で測定した値。)が90℃を超え115℃未満であることが好ましく、更に好ましくは95℃以上110℃以下である。ビカット軟化点が90℃以下であると、熱収縮挙動が鋭敏になりすぎ、タブ4が収縮しすぎたり天板部2が変形しやすくなる他、シュリンク蓋1’の耐熱性が不足しやすい。ビカット軟化点が115℃以上となると、シュリンク蓋用成形シート1への成形時の温度が高くなって、成形サイクルが長くなりやすい。
【0025】
接着積層する2枚の2軸延伸ポリスチレン系樹脂フィルムのビカット軟化点は、等しいことが最も好ましいが、ビカット軟化点に差がある場合、10℃未満であることが好ましい。ビカット軟化点の差が大きすぎると、シュリンク蓋用成形シート1への成形時にカールして型再現性が低下しやすくなる。
【0026】
本発明において積層シートを構成する2枚の2軸延伸ポリスチレン系樹脂フィルムは、主延伸方向が同一方向に重なる状態で接着積層されていることが必要である。2枚の2軸延伸ポリスチレン系樹脂フィルムの主延伸方向がずれて接着積層されている場合、引き裂き開封時の裂け目の直進性が得にくくなり、伝播方向にズレを生じやすくなる。ここで、主延伸方向とは、縦方向(フィルム製造時の巻き取り方向)と横方向(縦方向に対する直交方向)について、ビカット軟化点におけるORSが高い方の方向である。該ORSは、延伸配向の効果の高さについての指標の一つであって、一般的には主延伸方向は延伸倍率の高い方の方向である。
【0027】
ところで、一般に延伸フィルム又はシートの場合、その延伸方向に沿った方向に裂け目が伝播しやすいといえるが、少なくとも2枚の2軸延伸ポリスチレン系樹脂フィルムを接着積層した本発明における積層シートにおいては、上記主延伸方向に直交する方向が裂け目の直進性に優れている。この理由は必ずしも明らかではないが、本発明で用いる積層シートを構成する2枚の2軸延伸ポリスチレン系樹脂フィルムが、後述する所定の延伸状態にあることが有効に作用しているものと考えられる。
【0028】
前記タブ4は、引き裂き開封が上記裂け目の直進性が得やすい方向に行われるよう、上記積層シートを構成する2枚の2軸延伸ポリスチレン系樹脂フィルムの主延伸方向に直交する方向に設けられているものである。
【0029】
また、タブ4両側縁の基部にノッチ5を設ける場合であって、このノッチ5が図1に示されるようなV字形ノッチである場合には、該V字形ノッチを構成する2辺のうち、タブ4の側縁側の辺が、タブ4の中心線方向よりも外側方向を向いていることが好ましい。これは、シュリンク蓋1’とした後にタブ4を起こして引き裂くときに、シュリンク蓋1’の中央が凸形に持ち上げられやすく、これによって裂け目がタブ4の中心線方向に寄りやすくなることから、これによる裂け目の伝播方向のズレを抑制しやすくするためのものである。
【0030】
ノッチ5は、図示されるV字形ノッチの他、スリット状ノッチとすることもできる。このスリット状ノッチとする場合も、上記と同じ理由から、タブ4の中心線方向よりも外側方向を向けて設けておくことが好ましい。更に、上記V字形ノッチの先端部にこのスリット状ノッチを設け、V字形ノッチとスリット状ノッチを併用したノッチ5とすることもできる。
【0031】
本発明において、2枚の2軸延伸ポリスチレン系樹脂フィルムを接着積層した積層シートを用いているのは、前記裂け目の直進性を得やすくするためのものである他、割れや欠けの防止、更には破断面の軟質化を得るためのものでもある。
【0032】
即ち、本発明における積層シートは、2枚の2軸延伸ポリスチレン系樹脂フィルムを接着積層したものであり、1枚1枚の2軸延伸ポリスチレン系樹脂フィルムは単層の2軸延伸ポリスチレン系樹脂シートを用いた場合に比して薄いものとなる。従って、積層シートを構成する各2軸延伸ポリスチレン系樹脂フィルムは、厚い単層の2軸延伸ポリスチレン系樹脂シートを用いた場合に比して深い曲げ角度に耐えると共に、両者間の接着層が曲げエネルギーを吸収できることから、例えばシュリンク蓋1’とした後にタブ4を起こして引き裂くときに、タブ4の割れ落ちを生じにくいものである。また、このように割れにくいと共に、前記のように裂け目の直進性に優れることから、引き裂き時の破片の発生も抑制できるものである。更に、引き裂き破断面における2枚の2軸延伸ポリスチレン系樹脂フィルムは、上下に揃わず、わずかではあるがずれることが多く、しかも1枚1枚は上記のように薄く、手指に食い込むような剛性を持ちにくいことから、開封時の怪我も防止しやすいものである。
【0033】
各2軸延伸ポリスチレン系樹脂フィルムの厚みは30〜85μmであることが必要で、好ましくは45〜75μmである。2軸延伸ポリスチレン系樹脂フィルムの厚みが30μm未満の場合、シュリンク蓋1’とした場合に、形状を維持するための強度が不足し、この厚みが85μmを超える場合、やはりシュリンク蓋1’とした場合に、タブ4基部の引き裂き開始点が熱収縮によって厚くなりすぎ、引き裂き開始時に要する力が過大となると共に、割れや破断を生じやすくなる。
【0034】
2軸延伸ポリスチレン系樹脂フィルムを2枚接着積層することで得られる積層シートの全体厚みは60〜150μmであることが好ましい。積層シートの全体厚みが小さすぎたり大きすぎると、上記と同様に、シュリンク蓋1’とした場合に、形状を維持するための強度が不足したり、引き裂き開始時に要する力が過大となると共に、割れや破断を生じやすくなる。
【0035】
接着積層される2枚の2軸延伸ポリスチレン系樹脂フィルムの厚みは等しいことが最も好ましいが、厚みに差がある場合、厚い方の2軸延伸ポリスチレン系樹脂フィルムの厚みが薄い方の2軸延伸ポリスチレン系樹脂フィルムの厚みの1.7倍を超えない範囲であることが好ましい。厚みの差が大きすぎると、シュリンク蓋用成形シート1への成形時にカールして型再現性が低下しやすくなる。
【0036】
積層シートを構成する2軸延伸ポリスチレン系フィルムは、そのビカット軟化点におけるORSが、それぞれ、主延伸方向が4〜48kg/cm2、主延伸方向と直交する方向が2〜25kg/cm2であって、かつ両方向の比率が2〜4の範囲であることが必要で、好ましくは、主延伸方向が6〜40kg/cm2、主延伸方向と直交する方向が3〜20kg/cm2であって、かつ両方向の比率が2.2〜3.7の範囲である。このビカット軟化点におけるORSは、引き裂き時の裂け目の直進性の指標となるもので、上記範囲から外れると、主延伸方向と直交する方向への裂け目の直進性が得にくくなる。
【0037】
2枚の2軸延伸ポリスチレン系樹脂フィルムは、そのビカット軟化点におけるORSが、主延伸方向及び主延伸方向と直交する方向共にそれぞれ等しいことが最も好ましいが、上記範囲内において、主延伸方向及び主延伸方向と直交する方向のいずれか一方もしくは両方向とも相違するものであっても良い。
【0038】
積層シートを構成する2軸延伸ポリスチレン系フィルムは、そのビカット軟化点+30℃におけるORSが、それぞれ、主延伸方向が6〜51kg/cm2、主延伸方向と直交する方向が4〜34kg/cm2であって、かつ両方向の比率が1〜2.5の範囲であることが必要で、好ましくは、主延伸方向が8〜45kg/cm2、主延伸方向と直交する方向が5〜25kg/cm2であって、かつ両方向の比率が1〜2.3の範囲である。このビカット軟化点+30℃におけるORSは、シュリンク蓋用成形シート1からシュリンク蓋1’とする場合の熱収縮性の指標となるもので、このORSが低すぎると、シュリンク蓋1’としたときの収縮性が不足して必要な密着力が得にくくなり、逆に高すぎると、収縮量が大きくなりすぎ、シュリンク蓋1’としたときのタブ4付近の厚みが大きくなって引き裂き開始時に大きな力が必要となったり、容器7が変形しやすくなる。また、主延伸方向と、主延伸方向と直交する方向が両方向の上記ORSの比率が2.5を超えると、やはり熱収縮による容器7の変形を生じやすい。
【0039】
2枚の2軸延伸ポリスチレン系樹脂フィルムは、そのビカット軟化点+30℃におけるORSが、主延伸方向及び主延伸方向と直交する方向共にそれぞれ等しいことが最も好ましいが、上記範囲内において、主延伸方向及び主延伸方向と直交する方向のいずれか一方もしくは両方向とも相違するものであっても良い。
【0040】
2枚の2軸延伸ポリスチレン系樹脂フィルムの接着積層は、例えばドライラミネート、ワックスラミネートなどによって行うことができる。接着剤は一般に使用されているものでよく、また通常と同様に0.5〜3μm程度の厚みで介在させることが好ましい。本発明で使用する積層シートは、接着層を介して2枚積層したものでることから、熱収縮した積層シートの切り裂き時に加わる衝撃負荷が2枚に分散される結果、単層のシートに比して割れにくく、開封時のタブ4の割れ落ちを生じにくくなっていると考えられる。
【0041】
2枚の2軸延伸ポリスチレン系樹脂フィルムを接着積層するに先立って、一方の2軸延伸ポリスチレン系樹脂フィルムの接着積層側面に、包装体に必要な印刷を施しておくことが好ましい。このようにすると、印刷層が2枚の2軸延伸スチレン系樹脂フィルムに挟まって保護され、印刷落ちを防止することができる。
【0042】
2軸延伸ポリスチレン系樹脂フィルムを2枚接着積層した積層シートの弾性率は、220〜450kg/mm2であることが好ましい。弾性率が小さすぎると、天板部2の剛性が不足して弛みやすく、弾性率が大きすぎると引き裂き時に大きな力が必要となりやすい。
【0043】
【実施例】
まず、実施例及び比較例に先だって、表1に示されるa〜gの2軸延伸ポリスチレン系樹脂フィルム(シート)を用意した。
【0044】
表1において、PSはポリスチレン(数平均分子量33万)、HIPSはハイインパクトポリスチレン(ゴム分濃度6重量%、ゴム平均粒子径4μm)、BASはスチレン−ブチルアクリレート共重合体(アクリレート12重量%)、縦方向とはフィルム製造時の巻き取り方向、横方向とは縦方向に対する直角方向である。a〜fの各フィルムの延伸はバブル延伸法にて行い、延伸温度を106〜127℃の範囲内で調整し、表1に示される延伸倍率とした。また、gのフィルムについては、Tダイ押出後にロールによる縦延伸とテンターによる横延伸を、縦延伸温度118〜126℃、横延伸温度120〜127℃の範囲で調整して施し、表1に示される延伸倍率とした。
【0045】
表1において、ビカット軟化点のORSと、ビカット軟化点+30℃のORSは、ASTM−D−1540に準拠し、当該フィルムのビカット軟化点の温度のシリコーンオイル浴で測定したピーク温度と、該当フィルムのビカット軟化点+30℃の温度のシリコーンオイル浴で測定したピーク応力値である。ビカット軟化点は、ASTM−D−1525に準拠し、該当樹脂組成物を200℃で厚み4mmのシートとし、荷重1kg、昇温速度2℃/分の条件で測定した値である。
【0046】
実施例1
表1に示されるフィルムcを2枚用い、蓋の上面側に位置するフィルムcの片面に単色の格子模様印刷を施した後、この印刷面にもう1枚のフィルムcを、両者の縦方向が同一方向に重なるように、1μm厚の接着剤を介在させたドライラミネート法で接着積層し、合計厚み131μmのサンプルシートとした。
【0047】
一方、容器として、鍋焼きうどんセット包装用のアルミ箔製のフランジ付の容器を用意し、この容器に合わせて、上記サンプルシートに130℃の熱板加熱を伴う圧空成形と打ち抜き加工を施して、図1に示されるような1箇所のタブとV字形ノッチを有するシュリンク蓋用成形シートを作製すると共に、成形性の評価を行った。シュリンク蓋用成形シートへの成形は、印刷を施した一方のフィルムc側が蓋の外面側となるように行った。尚、タブは、その中心線が、蓋の上側のフィルムcの横方向となるように設け、V字形ノッチは、そのタブ側縁側の辺を、タブの中心線方向から外側に20〜25°傾けて形成した。
【0048】
上記容器に上記シュリンク蓋用成形シートを被せ、容器の側方から赤外線ヒータでスカート部を3秒間加熱して熱収縮させることで、シュリンク蓋付包装体とすると共に、シュリンク性の評価を行った。また、得られたシュリンク蓋付包装体について、タブを摘んで引っ張り、タブによる開封開始性、引き裂き直進性、引き裂き断面の評価を行い、この各評価に基づき総合評価を行った。
【0049】
各評価基準は下記の通りである。
【0050】
成形性:成形型の形状が再現できているか否かを、天板部の平面性を中心に目視観察して評価した。評価は、天板部が平面で、成形型の形状が十分に再現されていると認められるものを◎、天板部に若干カールが認められたものを○、天板部に目立つカールが認められたものを△とした。
【0051】
シュリンク性:スカート部を熱収縮させた後、得られたシュリンク蓋付包装体のシュリンク部分を中心に目視観察して評価した。評価は、熱収縮したスカート部がフランジ部の下面側に十分に巻き込まれていると共に、タブの曲がりや容器の変形のないものを◎、タブにやや曲がりが認められたものを○、タブに目立つ曲がりが認められたものやスカート部の巻き込みにやや不足が認められたものを△、熱収縮が不足でスカート部の巻き込みが不十分であったり、熱収縮が過剰で容器が変形したものを×とした。
【0052】
タブによる開封開始性:タブを起こす際及び引き裂き開始時の抵抗感が少ないものを◎、タブを引き起こす際及び引き裂き開始時の抵抗感があるが、タブの破断は生じないものを○、タブの引き起こす際にタブの破断を生じる場合があるものを△とした。
【0053】
引き裂き直進性:裂け目の直進性がよく、総て所定の方向に引き裂いて開封できたものを◎、まれに天板部で裂け目が交差してしまったものを○、天板部での裂け目の交差などによって途中で破断するものが多いものを△、ほとんど予定通りに引き裂いて開封できないものを×とした。
【0054】
引き裂き断面:引き裂き破断面を指先で触り、怪我の心配をほとんど感じられないものを◎、やや鋭利な感触はあるが、怪我に至る程の鋭利さを感じないものを○、怪我に至る危険をやや感じる鋭利な感触があるものを△、怪我に至る危険を強く感じる鋭利な感触があるものを×とした。
【0055】
総合評価:上記各評価項目の評価が総て◎であるものを実用性に優れるとして◎、1つ以上の○はあるが×及び△はないものを実用性ありとして○、×はないが1つでも△があるものを実用性に劣るとして△、1つでも×があるものを実用性なしとして×とした。
【0056】
結果を表2に示す。
【0057】
実施例2
表1に示されるフィルムbを2枚用い、一方のフィルムbの片面に印刷を施し、この印刷面に、両者の縦方向が同一方向に重なるように、他方のフィルムbを積層すると共に、印刷を施したフィルムbが蓋の上側となるようにシュリンク蓋用成形シートを成形した他は、実施例1と同様にして同様の評価を行った。
【0058】
結果を表2に示す。
【0059】
実施例3
表1に示されるフィルムaとフィルムcを用い、フィルムaの片面に印刷を施し、この印刷面に、フィルムaの横方向とフィルムcの縦方向が重なるようにしてフィルムcを積層し、印刷を施したフィルムaが蓋の上側となり、タブの中心線がフィルムaの縦方向となるようにシュリンク蓋用成形シートを成形した他は、実施例1と同様にして同様の評価を行った。
【0060】
結果を表2に示す。
【0061】
比較例1
タブを、その中心線が蓋の上側のフィルムcの縦方向となるように設けた他は実施例1と同様にして同様の評価を行った。
【0062】
結果を表2に示す。
【0063】
比較例2
フィルムaとフィルムcを、両者の縦方向が重なるように積層し、タブの中心線が、蓋の上側のフィルムaの横方向となるようにシュリンク蓋用成形シートを成形した他は、実施例3と同様にして同様の評価を行った。
【0064】
結果を表2に示す。
【0065】
比較例3
表1に示されるフィルムgのみの単層とし、フィルムgの片面に印刷を施すと共に、この印刷面が蓋の内面側となると共に、タブの中心線がフィルムgの横方向となるようにシュリンク蓋用成形シートを成形した他は、実施例1と同様にして同様の評価を行った。
【0066】
結果を表2に示す。
【0067】
比較例4
表1に示されるフィルムaとフィルムgを用い、フィルムaの片面に印刷を施し、この印刷面に、フィルムaの横方向とフィルムgの縦方向が重なるようにしてフィルムgを積層し、印刷を施したフィルムaが蓋の上側となり、タブの中心線がフィルムaの横方向となるようにシュリンク蓋用成形シートを成形した他は、実施例1と同様にして同様の評価を行った。
【0068】
結果を表2に示す。
【0069】
比較例5
表1に示されるフィルムdを2枚用い、一方のフィルムdの片面に印刷を施し、この印刷面に、両者の縦方向が重なるようにして他方のフィルムdを積層し、印刷を施したフィルムdが蓋の上側となり、タブの中心線が蓋の上側のフィルムdの横方向となるようにシュリンク蓋用成形シートを成形した他は、実施例1と同様にして同様の評価を行った。
【0070】
結果を表2に示す。
【0071】
比較例6
表1に示されるフィルムeを2枚用い、一方のフィルムeの片面に印刷を施し、この印刷面に、両者の縦方向が重なるようにして他方のフィルムeを積層し、印刷を施したフィルムeが蓋の上側となり、タブの中心線が蓋の上側のフィルムeの横方向となるようにシュリンク蓋用成形シートを成形した他は、実施例1と同様にして同様の評価を行った。
【0072】
結果を表2に示す。
【0073】
比較例7
表1に示されるフィルムfを2枚用い、一方のフィルムfの片面に印刷を施し、この印刷面に、両者の縦方向が重なるようにして他方のフィルムfを積層し、印刷を施したフィルムfが蓋の上側となり、タブの中心線が蓋の上側のフィルムfの横方向となるようにシュリンク蓋用成形シートを成形した他は、実施例1と同様にして同様の評価を行った。
【0074】
結果を表2に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したとおりのものであり、次の効果を奏するものである。
【0078】
(1)本発明のシュリンク蓋用成形シートを用いて得られる本発明のシュリンク蓋付包装体は、容器上に被せられているシュリンク蓋をタブを引っ張って引き裂き開封するときに、裂け目の直進性がよく、途中でちぎれることなく確実な開封ができる。
【0079】
(2)タブを起こしたときに、タブが割れてとれてしまうことがなく、開封時の手掛かりを失うことがない。
【0080】
(3)引き裂き破断面に硬く鋭利な箇所を生じにくく、引き裂き開封時に手指に怪我をする心配がない。
【0081】
(4)引き裂き開封時に小さな破片を生じにくく、破片が飛ぶことによる内容物への混入などを防止することができる。
【0082】
(5)天板部に張りがあり、かつ容器の変形のない外観に優れた包装体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るシュリンク蓋用成形シートの一例を示す斜視図である。
【図2】本発明に係るシュリンク蓋用成形シートを容器上に被せた状態の断面図である。
【図3】図2の状態からスカート部を熱収縮させた状態の断面図である。
【符号の説明】
1 シュリンク蓋用成形シート
1’ シュリンク蓋
2 天板部
3 スカート部
4 タブ
5 ノッチ
6 フランジ部
7 容器
Claims (5)
- 熱収縮性シートで構成され、天板部と、天板部の周縁から垂下するスカート部と、スカート部から延出するタブとを備えたシュリンク蓋用成形シートにおいて、
下記A〜Cの条件を満たす2枚の2軸延伸ポリスチレン系樹脂フィルムを、主延伸方向が同一方向に重なる状態で接着した積層シートで構成されており、主延伸方向に直交する方向にタブが設けられていることを特徴とするシュリンク蓋用成形シート。
A:各2軸延伸ポリスチレン系フィルムの厚みが30〜85μmであること。
B:各2軸延伸ポリスチレン系フィルムのビカット軟化点におけるORSが、それぞれ、主延伸方向が4〜48kg/cm2、主延伸方向と直交する方向が2〜25kg/cm2であって、かつ両方向の比率が2〜4の範囲であること。
C:各2軸延伸ポリスチレン系フィルムのビカット軟化点+30℃におけるORSが、それぞれ、主延伸方向が6〜51kg/cm2、主延伸方向と直交する方向が4〜34kg/cm2であって、かつ両方向の比率が1〜2.5の範囲であること。 - タブの両側縁の基部にV字形ノッチを有し、該V字形ノッチを構成する2辺のうち、タブの側縁側の辺が、タブの中心線方向よりも外側方向を向いていることを特徴とする請求項1に記載のシュリンク蓋用成形シート。
- タブの両側縁の基部にスリット状ノッチを有し、該スリット状ノッチが、タブの中心線方向よりも外側方向を向いていることを特徴とする請求項1に記載のシュリンク蓋用成形シート。
- 接着された2枚の2軸延伸ポリスチレン系フィルム間に印刷が施されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシュリンク蓋用成形シート。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のシュリンク蓋用成形シートが、開口部にフランジ部を有する容器に被せられ、スカート部が熱収縮されて該フランジ部の下部に巻き込まれていることを特徴とするシュリンク蓋付包装体。
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