JP3808682B2 - 高所作業車の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、トラック車両のような走行可能な車両上に、例えば旋回、起伏、伸縮作動が自在なブーム等からなる昇降装置を配設し、この昇降装置により作業台を昇降移動させるように構成された高所作業車に関する。
【0002】
【従来の技術】
このような高所作業車として、例えば、昇降装置を構成するブームの旋回、起伏、伸縮作動を行わせてブームの先端に取り付けられた作業台を所望高所に移動させ、作業台に搭乗した作業者により高所作業を行うように構成されたものが一般的に知られている。このようにして高所作業を行う場合、作業台の移動に伴って作業台およびブームから車体に作用する転倒方向モーメントが変化するため、車両の側部に車両を支持するための複数のジャッキを設け、高所作業時にはこれらジャッキを接地させて車体を安定支持するように構成されている。この高所作業車は一般的に、ジャッキにより車体を持ち上げ支持するときには走行用車輪が地面から浮き上がり、車両は静止して走行ができないようになっており、ブーム(昇降装置)を車体上に格納した状態でのみジャッキによる支持を解除(ジャッキを格納)して車両を走行させることができるようになっている。
【0003】
ところで、道路に沿って架線の点検・修理を行う場合や、トンネル内の天井、側壁等の点検・修理を行う場合等には、上記のようにブームを格納してジャッキを格納しなければ車両を走行移動できないようにしたのでは、作業効率が低いという問題がある。このため、ジャッキの下端に回転自在なローラを取り付け、ローラを接地させてジャッキによる車両の支持を行うとともに、車輪も接地状態にして車輪を駆動して車両を走行可能とした高所作業車が提案されている。このような高所作業車を用いれば、ローラを接地してジャッキによる車両の支持を行った状態でローラの回転によりジャッキを路面上で移動させることが可能であるため、作業台を所望高所に移動させた状態のまま車両を走行させて作業を行うことができ、作業効率が高い。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、車輪が地面から離れて浮き上がる状態まで持ち上げて行われるジャッキによる支持(これを完全支持と称する)の場合には、ジャッキが車両の重量を全て受け止めるため、車両の支持安定性が高いが、車輪が接地した状態で行われるジャッキによる支持(これを走行可能支持と称する)の場合には、車両の重量を車輪およびジャッキに分散して受け止めるため、ジャッキによる支持が不安定になりやすいという問題がある。
【0005】
ところで、ジャッキによる支持を行っている場合に、ブーム(昇降装置)の作動に応じて変化する転倒モーメントがジャッキの支持によって許容されるモーメントより大きくなると車両支持が不安定となるため、転倒モーメントが許容モーメントを越えるようなブーム(昇降装置)の作動を規制する転倒防止装置を設けることが従来から知られている。なお、この転倒防止装置としては、車両に作用する転倒モーメントを検出してこれが許容モーメントを越える作動を規制するように構成された装置(モーメント規制装置)や、転倒モーメントが許容モーメント以下となる作業台の移動範囲を許容作業範囲として予め設定しておき、作業台がこの許容作業範囲を超えるようなブームの作動を規制するように構成された装置(作業範囲規制装置)等がある。このような従来から知られている転倒防止装置はジャッキにより完全支持を行っている場合に用いられるものであり、このような従来の転倒防止装置を、上述した走行可能支持を行っている場合に用いると、ジャッキによる支持が不安定となるという問題がある。
【0006】
本発明はこのような問題に鑑みたもので、ジャッキにより完全支持を行う場合にも、走行可能支持を行う場合にも、正確な転倒防止を行って安定した車体支持を行わせることができるような構成の高所作業車の制御装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このような目的達成のため、本発明においては、車輪を有して走行可能な車両上に昇降装置(例えば、実施形態における旋回台4およびブーム5)を配設し、この昇降装置により作業台を昇降移動させて高所作業が可能となし、さらに車両の側部に車両を支持し、車両の車幅方向に張り出し可能な複数のジャッキを設けて高所作業車を構成している。これら複数のジャッキのそれぞれの下端に車両の走行方向に回転可能にローラを配設し、これらローラを接地させてジャッキにより車両を支持することが可能であり、このジャッキと車輪とにより、車輪を接地された状態で車両を支持する走行可能支持と、車輪を浮き上がらせた状態でジャッキのみにより車両を支持する完全支持とが可能である。そして、車両に作用する転倒モーメントを検出するモーメント検出手段(例えば、実施形態における転倒モーメント演算部31)と、モーメント検出手段により検出された転倒モーメントを許容モーメントと比較し、転倒モーメントが許容モーメントより大きくなるような昇降装置の作動を規制する作動規制手段とを備える。この場合に、ジャッキにより走行可能支持が行われているときに用いられる許容モーメントは、完全支持が行われているときに用いられる許容モーメントより小さくなるように設定された値である。また、許容モーメントは、少なくとも前記ジャッキの張り出した位置と前記ジャッキ及び前記車輪に作用する荷重とに基づいて設定されることができる。さらに、モーメント検出手段で検出される転倒モーメントは、車輪に作用する荷重に基づいた転倒モーメントとを加えることもできる。
【0008】
このような構成の高所作業車の制御装置を用いれば、ジャッキにより完全支持を行うときには従来と同様の許容モーメントを用いて転倒防止が図られて車両の安定支持ができ、一方、走行可能支持を行うときには車輪が接地していて車輪にも重量が作用する(逆に言えば、車輪がこの作用重量と同一の反力を路面から受ける)のであるが、このときには小さな許容モーメントが設定され、車体支持が不安定となることが防止される。
【0009】
なお、ジャッキにより走行可能支持が行われているときにジャッキおよび車輪に対する荷重配分に基づいて完全支持が行われているときに用いられる許容モーメントを小さくする補正を行い、この補正された許容モーメントを走行可能支持が行われているときに用いられる許容モーメントとして設定するのが好ましい。走行可能支持状態では車輪に作用する荷重が車体に対する反力として作用してジャッキによる支持がそれだけ不安定となるものであるため、この車輪に作用する荷重に対応して許容モーメントを小さくする補正を行えば、走行可能支持の場合にもジャッキにより安定した車両支持を行って、確実に転倒防止を図ることができる。
【0010】
また、ジャッキにより前記走行可能支持が行われているときには、モーメント検出手段により車輪の接地反力により生じる転倒方向モーメントを加えた転倒モーメントを検出し、許容モーメントとして、完全支持が行われているときに要求される許容モーメントと同一の許容モーメントを用いても良い。
【0011】
もう一つの本発明においては、上記と同様に、下端にローラを有したジャッキにより走行可能支持および完全支持が可能に高所作業車が構成され、作業台の位置を検出する位置検出手段と、この位置検出手段により検出された作業台の位置が少なくとも前記ジャッキ及び前記車輪に作用する荷重とに基づいて設定された許容作業範囲内にあるか否かを検出し、作業台を許容作業範囲の外側に移動させるような昇降装置の作動を規制する作動規制手段とを備え、ジャッキにより走行可能支持が行われているときに用いられる許容作業範囲は、完全支持が行われているときより狭い値に設定される。
【0012】
この制御装置を用いても、ジャッキにより完全支持を行うときには従来と同様の許容作業範囲を用いて転倒防止が図られて車両の安定支持ができ、一方、走行可能支持を行うときにはこれより狭い許容作業範囲が設定され、車体支持が不安定となることが防止される。
【0013】
なお、車輪に対する荷重配分に基づいて完全支持が行われているときに用いられる許容作業範囲を狭くする補正を行い、このように補正された許容作業範囲を走行可能支持が行われているときに用いられる許容作業範囲として設定するのが好ましい。これにより、完全支持の場合のみならず走行可能支持の場合にもジャッキにより安定した車両支持を行って、確実に転倒防止を図ることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明に係る好ましい実施形態について説明する。図2および図3に本発明に係る制御装置を備えた高所作業車を示している。この高所作業車は、運転キャビン1と走行用前後輪3a,3bを有して走行自在となったトラック車両をベースとして構成され、後輪3bを駆動して走行可能である。
【0015】
この車両の車体2上に旋回モータ(図示せず)により駆動されて水平旋回自在となった旋回台4が配設され、旋回台4には起伏シリンダ6により起伏自在となったブーム5が枢結されている。ブーム5は、旋回台5に枢結された基端ブーム5a内に中間ブーム5bおよび先端ブーム5cを入れ子式に組み合わされて構成され、内蔵の伸縮シリンダ(図示せず)により伸縮自在となっている。先端ブーム5cの先端部には上下方向に揺動自在に支持部材7が取り付けられ、この支持部材7の上に首振り装置8を介して作業台9が水平旋回(首振り作動)自在に取り付けられている。なお、先端ブーム5cと支持部材7との間にはレベリング装置(図示せず)が配設されており、レベリング装置によりブーム5の起伏に拘わらず作業台9が常に水平に保持される。
【0016】
作業台9の上に作業者が搭乗して高所作業等を行うのであるが、このときに作業者が操作して作業台9の移動操作を行う行うための操作装置10が作業台9に設けられている。このため、作業台9に搭乗した作業者は、操作装置10の操作レバー11などを操作して、旋回台4の旋回作動、ブーム5の起伏および伸縮作動、作業台9の首振り作動等を行わせて作業台9を所望高所に移動させ、高所作業を行うことができる。
【0017】
このようにして高所作業を行うときに、前後輪3a,3bのみによっては車体2を安定支持するのが難しいため、車体2の前後左右の四カ所にアウトリガジャッキ15が設けられている。アウトリガジャッキ15はそれぞれ、車幅方向に伸縮自在なアウトリガビーム12のビームポスト13に固設されたアウターボックス16と、アウターボックス16内に収納されて内蔵のジャッキシリンダ(図示せず)により下方に伸縮自在となったインナーボックス17と、インナーボックス17の下端に取り付けられて車両進行方向に回転自在なローラ18とから構成される。高所作業を行うときには、アウトリガビーム12のビームポスト13を伸長させて図5に示すようにアウトリガジャッキ15を車幅方向外側に張り出したりした上で、ジャッキシリンダによりインナーボックス17を下方に伸長させてローラ18を図示のように接地させ、アウトリガジャッキ15により車体2を安定支持する。
【0018】
このアウトリガジャッキ15による車体2の支持は、図2および図3に示すように、ローラ8が接地し且つ前後輪3a,3bも接地した状態で行う支持(これを走行可能支持と称する)と、図4および図5に示すように、前後輪3a,3bが完全に浮き上がった状態として行う支持(これを完全支持と称する)とがある。このため、各アウトリガジャッキ15にはインナーポスト17の伸長位置を検出するジャッキ位置センサが設けられており、このセンサの検出値に基づいてジャッキシリンダの伸縮制御を行い、走行可能支持を行ったり、完全支持を行ったりする。
【0019】
但し、走行可能支持はアウトリガビーム12によりビームポスト13を車幅方向外側に張り出した状態では行えず、図3に示すように、アウトリガジャッキ15が車幅方向に格納された状態でのみ許容されるようになっている。すなわち、アウトリガジャッキ15が車体幅内に収まった状態でのみ走行可能支持が許容される。また、完全支持を行うときには、ローラ8の下に専用ジャッキベース50をおいて路面に対する面圧を低下させるようになっている。完全支持の場合には、図5に示すように、アウトリガビーム12によりビームポスト13を車幅方向外方に伸長させ、アウトリガジャッキ15を車幅方向外方に張り出した状態でも行うことが可能である。
【0020】
以上のように構成された高所作業車において、アウトリガジャッキ15により車体2を支持して高所作業を行う場合の作動制御を、図1を参照して説明する。図1にはこのような作動制御を行う制御装置構成を示しており、まずこの装置の構成を説明する。この装置は、ブーム操作装置10、軸力検出器21、ブーム作動状態検出器22、ジャッキ操作装置23およびジャッキ位置センサ24からの入力信号を受けて、ブームアクチュエータ25、アラーム装置26およびジャッキアクチュエータ27の作動制御を行うコントロール装置30を有して構成される。
【0021】
軸力検出器21は、起伏シリンダ6に作用する軸力を検出するロードセル等から構成され、起伏シリンダ6に作用する軸力を検出し、その検出信号はコントロール装置30内の転倒モーメント演算部31に送られる。ブーム作動状態検出器22は、ブーム5の作動位置および作業台9の作動位置を検出するためのもので、旋回台4の旋回角を検出する旋回角センサ、ブーム5の起伏角および伸長量を検出する起伏角センサおよび伸長センサ、作業台9の首振り角を検出する首振り角センサから構成される。ブーム作動状態検出器22の検出値、すなわちこれらセンサの検出値は、コントロール装置30内の転倒モーメント演算部31および荷重配分演算部32に入力される。
【0022】
転倒モーメント演算部31においては、軸力検出器21によって検出された起伏シリンダ6に作用する軸力と、ブーム作動状態検出器22により検出されたブーム5の起伏角および伸長量とに基づいて、ブーム5および作業台9から車体2に作用する転倒モーメントを演算する。
【0023】
荷重配分演算部32においては、ブーム作動状態検出器22の検出値と予め記憶されている車両の重量および重心位置情報とに基づいて、各アウトリガジャッキ15および前後輪3a,3bに作用する荷重を演算する。荷重配分演算部32にはジャッキ支持状態判断部37から、現在のジャッキ15の支持状態情報、すなわち、走行可能支持状態であるか完全支持状態であるかという情報が送られてくる。走行可能支持状態であるときには、車両がアウトリガジャッキ15および前後輪3a,3bにより支持されるため、荷重配分演算部32においては各アウトリガジャッキ15および前後輪3a,3bに分配されて作用する各荷重を演算する。
【0024】
なお、アウトリガジャッキ15は車体を剛性支持すると考えられるため、走行可能状態でのアウトリガジャッキ15の伸長量が決まれば、前後輪3a,3bに作用する荷重はブームの作動状態に拘わらずほぼ一定となる。このため、全荷重から前後輪3a,3bに作用する一定荷重を引いた残りの荷重をブームの状態に応じてアウトリガジャッキ15が受けるとして求めることができる。
【0025】
完全支持状態であるときには、車両がアウトリガジャッキ15のみにより支持されるため、荷重配分演算部32においては各アウトリガジャッキ15に作用する荷重を演算する。なお、アウトリガジャッキ15に作用する荷重を演算するのではなく直接検出しても良い。
【0026】
荷重配分演算部32において算出された各アウトリガジャッキ15および前後輪3a,3bの作用荷重情報は許容モーメント設定部33に送られ、許容モーメントが設定される。許容モーメント設定部33には、ジャッキ支持状態判断部37からジャッキの支持状態に関する情報が送られ、ジャッキ位置センサ24からはアウトリガジャッキ15の車幅方向への張り出し量情報が送られており、この支持状態に応じた許容モーメントが設定される。
【0027】
具体的には、完全支持状態の場合にはアウトリガジャッキ15のみにより車体2が支持されるため、ジャッキ位置センサ24からの張り出し量に基づいてアウトリガジャッキ15の位置を求め、ブーム作動状態検出器22により検出した旋回台4の旋回角からブーム5の方向すなわち転倒モーメントの作用方向を求め、この方向において現在の位置のアウトリガジャッキ15により支持可能な許容モーメントを求める。走行可能支持状態の場合には、前後輪3a,3bによっても車体2の支持が行われるため、荷重配分演算部32において算出された前後輪3a,3bの作用荷重分だけアウトリガジャッキ15の支持が不安定となる。このため、完全支持状態で設定される許容モーメントを、前後輪の作用荷重に対応して減少補正し、これを走行支持状態の許容モーメントとして設定する。
【0028】
転倒モーメント演算部31において算出された転倒モーメント情報と、許容モーメント設定部33において設定された許容モーメント情報とが比較部34に送られて比較され、転倒モーメントが許容モーメントを上回るときには規制部35に規制信号を出力する。
【0029】
規制部35にはブーム操作装置10からの操作信号が入力されており、規制部35に規制信号が入力されていない場合にはこの操作信号に基づいてブームアクチュエータ25に作動制御信号を出力し、ブーム操作装置10の操作に基づく作動を行わせる。ブーム操作装置10は、例えば、旋回台4の旋回作動を行わせる旋回操作レバー、ブーム5の起伏および伸縮作動を行わせる起伏操作レバーおよび伸縮操作レバー、作業台9の首振り作動を行わせる首振り操作レバーなどから構成され、これら各操作レバーの操作に対応する操作信号が規制部35に入力される。ブームアクチュエータ25は、旋回モータ、起伏シリンダ6、伸縮シリンダ、首振り装置8等であり、演算部35から送られてくる作動制御信号により作動されて、上記各操作レバーの操作に対応する作動を行う。
【0030】
一方、規制部35に規制信号が入力された場合には、ブーム操作装置10からの操作信号があっても、ブームアクチュエータ25に対する所定の作動信号出力を規制し、これと同時にアラーム装置26を作動させ、アラームランプを点灯させたり、アラームブザーを鳴らしたりする。規制信号が入力されるのは、上記のように転倒モーメントが許容モーメントを上回る場合であり、この転倒モーメントをさらに増加させる方向へのブーム5および作業台9の作動を規制するように、ブームアクチュエータ25に対する所定の作動信号出力を規制する。
【0031】
ジャッキ操作装置23は、例えば、車体2の後端部に設けられており、作業者が操作してアウトリガビーム12の車幅方向伸縮作動と、アウトリガジャッキ15の伸縮作動を行なわせるようになっている。上述のように、アウトリガジャッキ15は走行可能支持と完全支持とを選択して行うことができるようになっており、この設定はインナーポスト17の伸長量すなわちローラ8の下方移動位置を調整して行われる。このため、インナーボスト17の伸長量を検出するジャッキ位置センサ24が各アウトリガジャッキ15に設けられている。
【0032】
ジャッキ操作装置23からの操作信号と、ジャッキ位置センサ24からの伸長量検出信号はコントロール装置30内のジャッキ作動コントロール部36に送られ、ジャッキアクチュエータ27の作動を制御する。ジャッキアクチュエータ27は、アウトリガビーム12においてアウトリガジャッキ15が固設されたビームポスト13の車幅方向の張出作動を行わせるビームシリンダと、インナーポスト17の下方伸縮作動を行わせるジャッキシリンダとからなる。このため、ジャッキ操作装置23の操作により、アウトリガジャッキ15の車幅方向への張出移動を行わせることができ、さらに、ローラ18を走行可能支持位置や完全支持位置に移動させたりすることができる。このとき、走行可能支持位置および完全支持位置に移動したか否かがジャッキ位置センサ24により検出される。また、ジャッキコントロール部36の制御情報がジャッキ支持状態判断部37に送られ、ここで走行支持状態であるか完全支持状態であるか判断される。
【0033】
以上のような構成の高所作業車により高所作業を行う場合の作動を説明する。高所作業を行うときには、ブーム5等が車体2上に格納された状態で、まずアウトリガジャッキ15による車体2の支持を行わせる。完全支持を行うときには、アウトリガビーム12によりアウトリガジャッキ15を車幅方向所望位置まで張出移動させ、次にインナーポスト17を下方に張り出させ、ローラ18を接地させる。このとき、ローラ18の下に専用ジャッキベース50をおいて路面に対する面圧を低下させる。インナーポスト17は前後輪3a,3bが完全に路面から離れるまで伸長作動され、これにより図4および図5に示すように完全支持状態となり、車体側重量は全てアウトリガジャッキ15に配分されて支持される。この後、ブーム操作装置10を操作して作業台9を所望高所に移動させて高所作業が行われるが、このとき、転倒モーメントが許容モーメントを上回るようなブーム5の作動は規制され、且つ警報作動がなされる。
【0034】
走行可能支持を行うときには、専用ジャッキベースは用いずローラ18を路面に直接接地させる。また、アウトリガビーム12の作動は規制されてアウトリガジャッキ15の車幅方向張出は行えず、車体幅内に格納された位置のままでのみ走行可能支持を行うことができる。このときには、インナーポスト17の伸長は前後輪3a,3bが接地した状態で止められる。すなわち、図2および図3に示すような状態で走行可能支持状態となる。この状態では前後輪3a,3bも接地している(すなわち、車体側重量が、アウトリガジャッキ15のみならず前後輪3a,3bにも配分される)ため、後輪3aを駆動して車両を走行させることが可能である。
【0035】
しかも、ローラ18は路面に接地して回転自在であり、アウトリガジャッキ15により車体2を支持したまま、車両を安定走行させることができる。このような走行可能支持状態においても、転倒モーメントが許容モーメントを上回るようなブーム5の作動は規制され、且つ警報作動がなされる。但し、このときの許容モーメントは、前述のように完全支持状態で設定される許容モーメントを前後輪の作用荷重に対応して減少補正されて設定された許容モーメントであり、作業台9の移動可能範囲は完全支持状態の場合より制限される。
【0036】
なお、以上においては、完全支持状態で設定される許容モーメントを前後輪の作用荷重に対応して減少補正して走行可能支持状態での許容モーメントを設定しいるが、走行可能状態での前後輪の作用荷重は路面から車体を押し上げる反力として(すなわち転倒モーメントを増加させる力として)捉えることができる。このため、走行可能支持状態での転倒モーメントを前後輪の作用荷重分だけ増加させて求めるようにし、許容モーメントは完全支持状態の場合と同一の許容モーメントを用いるようにしても良く、いずれの支持状態でも車体を安定支持することができる。
【0037】
本発明に係る制御装置の第2の実施形態について図6を参照して説明する。なお、図6において図1の制御装置と同一部分については同一番号を付してその詳細説明は省略する。この制御装置は、ブーム操作装置10、ブーム作動状態検出器22、ジャッキ操作装置23およびジャッキ位置センサ24からの入力信号を受けて、ブームアクチュエータ25、アラーム装置26およびジャッキアクチュエータ27の作動制御を行うコントロール装置40を有して構成される。
【0038】
ブーム作動状態検出器22の検出値は、コントロール装置40内の作業台位置演算部41および荷重配分演算部42に入力される。作業台位置演算部41においては、ブーム作動状態検出器22により検出された旋回台4の旋回角、ブーム5の起伏角および伸長量に基づいて、作業台9の位置を演算する。
【0039】
荷重配分演算部42においては、ブーム作動状態検出器22の検出値と予め記憶されている車両の重量および重心位置情報とに基づいて、各アウトリガジャッキ15および前後輪3a,3bに作用する荷重を演算する。荷重配分演算部42にはジャッキ支持状態判断部47からジャッキ15の支持状態情報が送られており、走行可能支持状態のときには各アウトリガジャッキ15および前後輪3a,3bに分配されて作用する各荷重を演算し、完全支持状態のときには各アウトリガジャッキ15に作用する荷重を演算する。
【0040】
荷重配分演算部42において算出された作用荷重情報は許容作業範囲設定部43に送られ、許容作業範囲すなわち作業台9が移動することが許容される範囲が設定される。許容作業範囲設定部43には、ジャッキ支持状態判断部47からジャッキの支持状態に関する情報が送られ、ジャッキ位置センサ24からはアウトリガジャッキ15の車幅方向への張り出し量情報が送られており、この支持状態に応じた許容作業範囲が設定される。
【0041】
具体的には、完全支持状態の場合には、ジャッキ位置センサ24からの張り出し量に基づいてアウトリガジャッキ15の位置を求め、ブーム作動状態検出器22により検出した旋回台4の旋回角からブーム5の方向すなわち転倒モーメントの作用方向を求める。そして、この方向において現在の位置のアウトリガジャッキ15により安定支持した状態で許容できる作業台9の移動可能範囲、すなわち許容作業範囲を求める。走行可能支持状態の場合には、完全支持状態で設定される許容作業範囲を、前後輪の作用荷重に対応して縮小補正し、これを走行支持状態の許容作業範囲として設定する。
【0042】
作業台位置演算部41において算出された現在の作業台の位置情報と、許容作業範囲設定部43において設定された許容作業範囲情報とが比較部44に送られて比較され、作業台9が許容作業範囲の外に移動するときには規制部45に規制信号を出力する。これにより、規制部45に規制信号が入力されていない場合にはブーム操作装置10からの操作信号に基づいてブームアクチュエータ25に作動制御信号を出力し、ブーム操作装置10の操作に基づく作動を行わせる。
【0043】
一方、規制部45に規制信号が入力された場合には、ブーム操作装置10からの操作信号があっても、ブームアクチュエータ25に対する所定の作動信号出力を規制し、これと同時にアラーム装置26を作動させ、アラームランプを点灯させたり、アラームブザーを鳴らしたりする。規制信号が入力されるのは、上記のように作業台9が許容作業範囲の外側に移動する場合であり、このように作業台9を許容作業範囲の外側に移動させるようなブーム5の作動を規制するように、ブームアクチュエータ25に対する所定の作動信号出力を規制する。
【0044】
ジャッキ操作装置23からの操作信号と、ジャッキ位置センサ24からの伸長量検出信号はコントロール装置40内のジャッキ作動コントロール部46に送られ、ジャッキアクチュエータ27の作動を制御する。また、ジャッキコントロール部46の制御情報がジャッキ支持状態判断部47に送られ、ここで走行支持状態であるか完全支持状態であるか判断される。
【0045】
以上のような構成の高所作業車により高所作業を行う場合の作動を説明する。高所作業を行うときには、ブーム5等が車体2上に格納された状態で、まずアウトリガジャッキ15による車体2の支持を行わせる。アウトリガジャッキ15により図4および図5に示すように完全支持を行って高所作業を行うときに、作業台9の位置が許容作業範囲の外側に移動するようなブーム5の作動は規制され、且つ警報作動がなされる。
【0046】
図4および図5に示すように走行可能支持を行って高所作業を行うときにも、作業台9が許容作業範囲の外側に移動するようなブーム5の作動は規制され、且つ警報作動がなされる。但し、このときの許容作業範囲は、前述のように完全支持状態で設定される許容作業範囲を前後輪の作用荷重に対応して縮小補正されて設定された許容作業範囲であり、作業台9の移動可能範囲は完全支持状態の場合より制限される。
【0047】
以上においては、完全支持状態で設定される許容作業範囲を前後輪の作用荷重に対応して減少補正して走行可能支持状態での許容作業範囲を設定しいるが、走行可能状態での前後輪の作用荷重は路面から車体を押し上げる反力として(すなわち転倒モーメントを増加させる力として)捉えることができる。このため、走行可能支持状態での転倒モーメントを前後輪の作用荷重分だけ増加させて求めるようにし、許容作業範囲は完全支持状態の場合と同一の許容作業範囲を用いるようにしても良く、いずれの支持状態でも車体を安定支持することができる。
【0048】
なお、以上においては、ブームの先端に比較的大型の作業台を取り付けた高所作業車を例にしたが、高所作業車の形式はこれに限定されるものではなく、種々な形式のものが適用可能である。また、以上の例においては、走行可能支持はアウトリガビームによりアウターポストを車幅方向外側に張り出した状態では行えず、アウターポストが車幅方向に格納された状態でのみ許容されるようになっているが、アウターポストを車幅方向外側に張り出した状態で走行可能支持を行うようにしても良い。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ジャッキにより走行可能支持と完全支持とが可能な高所作業車において、転倒モーメントを許容モーメントと比較し、転倒モーメントが許容モーメントより大きくなるような昇降装置の作動を規制する場合に、ジャッキにより走行可能支持が行われているときに用いられる許容モーメントは、完全支持が行われているときに用いられる許容モーメントより小さい値に設定されるようになっているので、完全支持を行うときには従来と同様の許容モーメントを用いて転倒防止が図られて車両の安定支持ができ、走行可能支持を行うときには接地した状態の車輪の路面からの反力を考慮して完全支持状態のときより小さな許容モーメントが設定され、この場合にも車体支持が不安定となることを防止できる。
【0050】
なお、ジャッキにより走行可能支持が行われているときに、車輪に対する荷重配分に基づいて完全支持が行われているときに用いられる許容モーメントを小さくする補正を行い、この補正された許容モーメントを走行可能支持が行われているときに用いられる許容モーメントとして設定するのが好ましい。走行可能支持状態では車輪に作用する荷重が車体に対する反力として作用してジャッキによる支持がそれだけ不安定となるものであるため、この車輪に作用する荷重に対応して許容モーメントを小さくする補正を行えば、走行可能支持の場合にもジャッキにより安定した車両支持を行って、確実に転倒防止を図ることができる。
【0051】
また、ジャッキにより前記走行可能支持が行われているときには、車輪の接地反力により生じる転倒方向モーメントを加えた転倒モーメントを検出し、許容モーメントとして、完全支持が行われているときに要求される許容モーメントと同一の許容モーメントを用いても良い。このようにしても、走行可能支持および完全支持のいずれの場合にも安定した車両支持を行って、確実に転倒防止を図ることができる。
【0052】
もう一つの本発明においては、作業台を許容作業範囲の外側に移動させるような昇降装置の作動を規制する作動規制手段を備え、ジャッキにより走行可能支持が行われているときに用いられる許容作業範囲を完全支持が行われているときより狭い値に設定されるので、完全支持を行うときには従来と同様の許容作業範囲を用いて転倒防止が図られて車両の安定支持ができ、一方、走行可能支持を行うときにはこれより狭い許容作業範囲が設定されて、車体支持が不安定となることが防止される。
【0053】
なお、車輪に対する荷重配分に基づいて完全支持が行われているときに用いられる許容作業範囲を狭くする補正を行い、このように補正された許容作業範囲を走行可能支持が行われているときに用いられる許容作業範囲として設定するのが好ましい。これにより、完全支持の場合のみならず走行可能支持の場合にもジャッキにより安定した車両支持を行って、確実に転倒防止を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る高所作業車の制御装置の第1の構成例を示すブロック図である。
【図2】上記制御装置により作動制御が行われて走行可能支持状態にある高所作業車の正面図である。
【図3】上記制御装置により作動制御が行われて走行可能支持状態にある高所作業車の側面図である。
【図4】上記制御装置により作動制御が行われて完全支持状態にある高所作業車の正面図である。
【図5】上記制御装置により作動制御が行われて完全支持状態にある高所作業車の側面図である。
【図6】本発明に係る高所作業車の制御装置の第2の構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
3a,3b 前後輪
4 旋回台
5 ブーム
9 作業台
15 アウトリガジャッキ
18 ローラ
Claims (3)
- 車輪を有して走行可能な車両と、前記車両上に配設された昇降装置と、前記昇降装置に取り付けられて前記昇降装置により昇降移動される作業台と、前記車両の側部に配設されて前記車両を支持し前記車両の車幅方向に張り出し可能な複数のジャッキとを備え、前記複数のジャッキのそれぞれの下端に前記車両の走行方向に回転可能にローラが配設され、前記ローラを接地させて前記複数のジャッキにより前記車両を支持するように構成された高所作業車の制御装置であって、
前記ジャッキにより前記車両を支持するときに、前記車輪を接地させた状態で前記ジャッキと前記車輪とにより前記車両を支持する走行可能支持と、前記車輪を浮き上がらせた状態で前記ジャッキのみにより前記車両を支持する完全支持とが可能であり、
前記昇降装置および前記作業台から前記車両に作用する転倒モーメントを検出するモーメント検出手段と、
前記モーメント検出手段により検出された転倒モーメントを、少なくとも前記ジャッキの張り出した位置と前記ジャッキ及び前記車輪に作用する荷重とに基づいて設定された許容モーメントと、比較し、前記転倒モーメントが前記許容モーメントより大きくなるような前記昇降装置の作動を規制する作動規制手段とを備え、
前記ジャッキにより前記走行可能支持が行われているときに用いられる前記許容モーメントは、前記完全支持が行われているときより小さくなるように設定されることを特徴とする高所作業車の制御装置。 - 車輪を有して走行可能な車両と、前記車両上に配設された昇降装置と、前記昇降装置に取り付けられて前記昇降装置により昇降移動される作業台と、前記車両の側部に配設されて前記車両を支持し前記車両の車幅方向に張り出し可能な複数のジャッキとを備え、前記複数のジャッキのそれぞれの下端に前記車両の走行方向に回転可能にローラが配設され、前記ローラを接地させて前記複数のジャッキにより前記車両を支持するように構成された高所作業車の制御装置であって、
前記ジャッキにより前記車両を支持するときに、前記車輪を接地させた状態で前記ジャッキと前記車輪とにより前記車両を支持する走行可能支持と、前記車輪を浮き上がらせた状態で前記ジャッキのみにより前記車両を支持する完全支持とが可能であり、
前記昇降装置および前記作業台から前記車両に作用する転倒モーメントと前記車輪に作用する荷重に基づいた転倒モーメントとを加えた転倒モーメントを検出するモーメント検出手段と、
前記モーメント検出手段により検出された転倒モーメントを許容モーメントと比較し、前記転倒モーメントが前記許容モーメントより大きくなるような前記昇降装置の作動を規制する作動規制手段とを備えたことを特徴とする高所作業車の制御装置。 - 車輪を有して走行可能な車両と、前記車両上に配設された昇降装置と、前記昇降装置に取り付けられて前記昇降装置により昇降移動される作業台と、前記車両の側部に配設されて前記車両を支持し前記車両の車幅方向に張り出し可能な複数のジャッキとを備え、前記複数のジャッキのそれぞれの下端に前記車両の走行方向に回転可能にローラが配設され、前記ローラを接地させて前記複数のジャッキにより前記車両を支持するように構成された高所作業車の制御装置であって、
前記ジャッキにより前記車両を支持するときに、前記車輪を接地させた状態で前記ジャッキと前記車輪とにより前記車両を支持する走行可能支持と、前記車輪を浮き上がらせた状態で前記ジャッキのみにより前記車両を支持する完全支持とが可能であり、
前記作業台の位置を検出する位置検出手段と、
前記位置検出手段により検出された前記作業台の位置が、少なくとも前記ジャッキ及び前記車輪に作用する荷重とに基づいて設定された許容作業範囲内にあるか否かを検出し、前記作業台を前記許容作業範囲の外側に移動させるような前記昇降装置の作動を規制する作動規制手段とを備え、
前記ジャッキにより前記走行可能支持が行われているときに用いられる前記許容作業範囲は、前記完全支持が行われているときより狭くなるように設定されることを特徴とする高 所作業車の制御装置。
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