JP3808412B2 - 養毛料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、養毛料に関し、更に詳しくは、育毛、養毛、脱毛予防効果に優れ、エタノール、含水エタノール等に対する溶解性及び使用感に優れた養毛料に関する。本発明の養毛料は、具体的には、医薬品、医薬部外品又は化粧品の分野において利用される。
【0002】
【従来の技術】
一般的に、脱毛症は血行の不全、毛母細胞活性の低下や性ホルモンのアンバランス等の様々な要因が複雑に絡み合って生じていると考えられている。特に現代社会は高齢化社会、ストレス社会と言われるように、様々な原因によって脱毛の危機にさらされる機会が多くなっている。しかし、脱毛の発生機作やメカニズムが未だ十分に解明されていないのが現状である。従来の養毛料には養毛、育毛効果が期待される薬効成分として、例えば、トウガラシチンキ、センブリエキス、朝鮮ニンジンエキス、ニコチン酸誘導体等の頭皮の血行促進物質、セファランチン等の皮膚機能亢進物質、アセチルコリン誘導体等の血管拡張剤、エストラジオール等の女性ホルモン剤、パントテン酸誘導体等のメラニン合成触媒剤、サリチル酸、レゾルシン等の角質溶解剤、グリチルレチン酸、シコンエキス等の抗炎症剤が配合され、脱毛の予防や治療に用いられている。しかしながら、これらの薬剤は、場合によっては皮膚刺激を引き起こしたりするため、配合量に制限があったり、十分な育毛、脱毛防止、ふけ防止等の効果が発現する効果が充分でなく、その為、より効果的な養毛料が強く要望されている。
【0003】
本発明者等は、養毛料に配合して有効な効果を示す物質として、特開2001−192322号公報に開示されているファルネシル酢酸ゲラニオール(ゲファルナート)を見出した。本物質は、ファルネシル酢酸(5,9,13-trimethyl-4,8,12-tetradecatrienoic acid)とゲラニオール(3,7-dimethyl-2,6-octadienol)のエステルであり、淡黄色〜黄色の澄明油状物質である。従来、医療用製剤原料として用いられており、胃潰瘍、十二指腸潰瘍に効果があり、粘液中のヘキソサミン量を増加させ粘膜抵抗性を増強すると共にその修復を促進し、粘膜の血流量を増加させる等の効果があることが知られている物質である。
【0004】
しかしながら、上記ファルネシル酢酸ゲラニオールはエタノールや含水エタノールに溶解せず、また油性感が強いためにべたつきなどの使用感触に問題を有しており、製剤化に当たっては特段の工夫を要し、改良の余地があった。養毛・育毛を目的とした養毛料においては、透明液状の製品が一般的であり、また、透明液状であることは有効成分の経皮吸収性を高めるためにも必要である。しかし、使用する有効成分の化学構造によりエタノールや含水エタノール等の溶剤に溶解せず、白濁或いは沈殿を生じる場合は、透明液状とならないため育毛効果の低下や経皮透過性の低下が懸念される。従って、養毛料に使用される有効成分は、育毛、養毛効果はもちろんのこと、エタノール、含水エタノール等に対する溶解性、更に使用感のいずれにも優れていることが望まれている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的とするところは、育毛、養毛、脱毛予防効果に優れ、エタノール、含水エタノール等の溶媒に対する溶解性に優れている上、使用感も良好な養毛料を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記目的を達成するために、鋭意研究を重ねた結果、ファルネシル酢酸と多価アルコールより合成されるファルネシル酢酸誘導体が、育毛、養毛、脱毛予防効果に優れ、エタノール、含水エタノール等の溶媒に対する溶解性に優れている上、使用感も良好であることを見出して本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、下記一般式(1)〜(4)いずれかで表されるファルネシル酢酸誘導体から選ばれる少なくとも一種以上を含有することを特徴とする養毛料である。
【0008】
【化5】
(但し、式中mは1〜5の整数を示す)
【0009】
【化6】
(但し、式中nは1〜5の整数を示す)
【0010】
【化7】
(但し、式中pは1〜5の整数を示す)
【0011】
【化8】
(但し、式中Rは水素又は炭素数1〜3の直鎖の飽和又は不飽和炭化水素基を示す)
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について詳述する。
【0013】
本発明に用いる上記一般式(1)〜(4)いずれかで表わされるファルネシル酢酸誘導体は、ファルネシル酢酸(5,9,13-trimethyl-4,8,12-tetradecatrienoic acid)と多価アルコールとのエステル化合物である。ファルネシル酢酸をエステル誘導体化する多価アルコールとしては、エチレングリコール及びエチレングリコールの脱水縮合物であるジエチレングリコール,トリエチレングリコール,ポリエチレングリコール、プロピレングリコール及びプロピレングリコールの脱水縮合物であるジプロピレングリコール,ポリプロピレングリコール、グリセリン及びグリセリンの脱水縮合物であるジグリセリン,ポリグリセリン、3−メチル−1,3−ブタンジオール、イソプレングリコール、1,3−ブチレングリコール等が挙げられる。
【0014】
上記一般式(1)中、mで示される整数は1〜5であり、上記一般式(2)中、nで示される整数は1〜5であり、上記一般式(3)中、pで示される整数は1〜5であり、上記一般式(4)中、Rは水素又は炭素数1〜3の直鎖の飽和又は不飽和炭化水素基である。また、養毛効果の点からm、n及びpは1〜2がより好ましい。m、n、pが1未満の場合、皮膚刺激性を生じる場合があり好ましくなく、またm、n、pが5を超えると分子量が大きくなり、経皮浸透性が劣るために養毛効果が見られず、好ましくない。また、これらのファルネシル酢酸誘導体は公知のエステル化の方法でファルネシル酢酸と各種多価アルコールから容易に合成することができるし、また、通常市販されているものをそのまま、或いは蒸留等によって精製した後に使用することも可能である。
【0015】
これらのファルネシル酢酸誘導体は、それぞれ単独で用いることができるし、また2種以上組み合わせて用いることができる。また、これらのファルネシル酢酸誘導体の養毛料への配合量は、好ましくは、0.01〜10.0質量%(以下、%とする)であり、更に好ましくは0.05〜5.0%である。ファルネシル酢酸誘導体の配合量が0.01%未満では本発明の目的とする効果が十分に得られない場合があり、配合量が10.0%を越えても、その増加分に見合った効果の向上は望めない場合があり、また使用時の感触が悪くなり易く、製剤化上支障をきたす傾向が顕著となり好ましくない。
【0016】
また、本発明においては、更に血流促進剤を配合し、ファルネシル酢酸誘導体と血流促進剤とを併用することによって、より発毛促進効果を増大させることができる。血流促進剤は、それを皮膚上に塗布すると、血流が促進され、かつ外用剤の配合成分として安全性上問題がない限り、特に限定されるものではなく、その作用機序も問われるべきものではない。具体的には、ニコチン酸ベンジル,ニコチン酸トコフェロール,ニコチン酸β−ブトキシエチル,ニコチン酸アミド等のニコチン酸誘導体、ミノキシジル並びにその誘導体及びその類縁体、セファランチン、ビタミンE及びその誘導体、γ−オリザノール、アルコキシカルボニルピリジンN−オキシド、塩化カプロニウム、アセチルコリン及びその誘導体、末梢血行障害治療薬(プロスタグランジン、カルバシクリン、パパベリン、シクランデレート、シンナリジン、ナイリドリン、カリクレイン)、カルシウム拮抗剤、ホスホジエステラーゼ阻害剤、亜硝酸化合物、アデノシン作用増強性血管拡張薬、ヒドラジン等の従来から血流促進剤として使用されているものを適宜選択することができる。また、これらの血流促進剤を単独で本発明の養毛料に配合することも可能であるが、2種以上を組み合わせて配合することも可能である。本発明の養毛料においては、上記の血流促進剤は、養毛料全体に対して0.001〜5.0%の範囲で配合されるのが好ましく、同0.01〜2.0%の範囲で配合されるのが特に好ましい。血流促進剤の配合量が養毛料全体に対して5.0%を超えると、皮膚刺激等が伴う等、安全性の側面から問題が生じる恐れがあり好ましくない。
【0017】
本発明の養毛料は、種々の形態で用いることができ、例えば、ヘアートニック、ヘアーローション、ヘアークリーム、シャンプー、リンス、ヘアーフォーム、ヘアージェル、エアゾール等の直接頭皮に塗布する剤形に配合し、常法に従い製造することができる。
【0018】
また、本発明の養毛料には、前記の各成分に加えて必要に応じて、かつ本発明の効果を損なわない範囲において、化粧品、医薬部外品、医薬品等において一般的に用いられる各種の成分、例えば、油分、保湿剤、増粘剤、色素、香料、殺菌剤、防腐剤、紫外線吸収剤、溶剤、水、角質溶解剤、抗炎症剤、抗アンドロゲン剤、養毛剤、抗酸化剤、清涼剤、生薬抽出物やビタミン類等を適宜配合することができる。
【0019】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これらの実施例により本発明の技術範囲が限定されるものではない。尚、実施例に記載の発毛促進効果試験、溶解性及び使用感触に関する試験法を下記に示す。
【0020】
(1)発毛促進効果試験
C3Hマウス(8週齢、オス、平均重量35g)の背部皮膚(2cm×4cm)を電気バリカン及びシェーバーで刈り、翌日より実施例及び比較例の各試料を被験部皮膚に朝夕2回、一匹当り0.2mLを二週間連用塗布した。一試料に対して動物一群10匹使用した。塗布開始22日目に各試料の被験部皮膚をビデオカメラに撮影し、画像解析装置にて毛刈り部及び発毛部の面積を測定した。養毛効果の判定は、下記に示す発毛率(%)を算出し、実施例または比較例の各群の発毛率平均値を求めて比較を行った。
発毛率(%)=(発毛部の面積)/(毛刈り部の面積)×100
【0021】
(2)溶解性
被試験試料約50gを透明ガラス瓶に入れ、25℃および5℃の恒温槽に1週間保存後、透明性、白濁及び分離の有無を下記基準で目視判定した。
(判定基準)
○:透明
△:わずかな白濁
×:白濁または分離
【0022】
(3)使用感触
被試験者10名を用いて、被験試料5gを頭部に塗布してもらい、べたつき感の有無について下記基準で評価した。
(判定基準)
○:べたつくと答えた人が3名未満
△:べたつくと答えた人が3名以上5名未満
×:べたつくと答えた人が5名以上
【0023】
実施例1〜5、比較例1〜4
表1に示す処方の養毛料を常法に従って作成し、発毛促進効果、溶解性、使用感触について評価を行った。その結果を併せて表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
表1から明らかなように、本発明の養毛料は、発毛促進効果、溶解性および使用感触いずれの評価においても優れていた。
【0026】
実施例6(トニック)
【0027】
(製法)
(1)に、(2)〜(7)を溶解し、次いで(8)〜(9)を溶解させたものを添加し、攪拌することにより、透明液状のトニックを得た。
【0028】
実施例7(養毛ローション)
【0029】
(製法)
(1)に(2)〜(6)、(9)、(10)及び(11)を溶解させた。次いで(12)に(7)〜(8)を溶解させたものと混合攪拌し、透明液状の養毛ローションを得た。
【0030】
実施例8(エアゾール養毛料)
【0031】
(製法)
原液処方の各成分を混合溶解させて原液を調製し、これを缶に充填し、バルブ装着後、液化石油ガスを充填してエアゾール養毛料を調製した。
【0032】
実施例9(乳液型養毛料)
【0033】
(製法)
A相及びB相をそれぞれ70℃で加熱溶解し、混合してホモミキサー処理し、ゲルを調製した。このゲルにD相を徐々に添加してホモミキサーで分散させた。次に、このゲル分散物に予め溶解させたC相を添加し、さらに予め溶解させたE相を添加してホモミキサーで乳化し乳液型の養毛料を製造した。
【0034】
尚、上記の実施例において用いた香料は下記のものである。
【0035】
【表2】
【0036】
【発明の効果】
以上記載の如く、本発明が顕著な毛成長促進効果を示し、育毛効果及び脱毛予防効果に優れ、溶解性及び使用感触に優れた養毛料を提供することは明らかである。
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