JP3556894B2 - 皮膚外用剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、高い保湿効果及び抗掻痒効果が持続し、しかも安全性に優れた皮膚外用剤、特に保湿用化粧料に関する。
【0002】
【従来の技術】
尿素は、高い水分保持作用を有しているため、乾燥性皮膚疾患に対して広く使用されてきた。しかし、尿素は鎮痒作用がないため、尿素,抗ヒスタミン剤,局所麻酔剤及びアルコールを組み合わせた製剤が試みられている(特開平3−291221号公報)。また、特開平7−291856号公報には、尿素,抗ヒスタミン剤,局所麻酔剤及び吸収促進剤からなる乳剤が開示されている。さらに尿素とステロイドを併用した皮膚外用クリーム剤が、特開平7−97326号公報に開示されている。しかしながら、これらの抗ヒスタミン剤や局所麻酔剤,ステロイドは、連用により副作用が発生しやすい、という問題点があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明においては、高い保湿効果及び抗掻痒効果が持続し、かつ連用による副作用を生じず、安全性の高い皮膚外用剤、特に保湿用化粧料を得ることを目的とした。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するにあたり、種々検討を行ったところ、尿素とキナ属植物抽出物を併用することにより、高い保湿効果及び抗掻痒効果が持続し、かつ連用による副作用を生じず、安全性に優れた皮膚外用剤が得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を説明する。
【0006】
本発明において、尿素は、皮膚外用剤全量中に1.0〜25.0重量%配合することが好ましく、特に3.0〜20.0重量%配合することが好ましい。
【0007】
また、キナ属植物の樹皮は、キナ皮と呼ばれ、キニーネ,シンコニン,キニジン等のアルカロイドやキナタンニン,キナ酸,デンプン,樹脂,色素等を含有し、粉末にしたキナ皮末は古くから民間薬として用いられてきた。さらにキナ抽出物の皮膚外用剤への応用としては、毛髪化粧料への配合(EP公開35919)、チューベローズ由来多糖類と併用したマッサージ化粧料(特開平8−291038号公報)、エーテル化合物と併用した化粧料(特開平11−139924号公報)等が開示されている。しかしながら、尿素と併用すること、及びその保湿効果が持続し、さらに抗掻痒効果を発揮することは、知られていなかった。
【0008】
本発明で使用するキナ属植物(Cinchona L.)としては、特に限定されず、野生キナ(Cinchona calysaya Wedd.),ボリビアキナノキ(Cinchona ledgeriana(Howard) Moens ex Trimen),キナノキ(Cinchona officinalis L.),アカキナノキ(Cinchona pubescens Vahl ; Cinchona succirubra Pav.)及びこれらの栽培用変種が例示される。キナ属植物から抽出物を得る際には、その樹皮をそのまま若しくは乾燥させて使用する。抽出溶媒としては、水、エタノール,メタノール,イソプロパノール,イソブタノール,n−ヘキサノール,メチルアミルアルコール,2−エチルブタノール,n−オクチルアルコール等の1価アルコール類、グリセリン,エチレングリコール,エチレングリコールモノメチルエーテル,プロピレングリコール,プロピレングリコールモノメチルエーテル,プロピレングリコールモノエチルエーテル,トリエチレングリコール,1,3−ブチレングリコール,へキシレングリコール等の多価アルコール又はその誘導体等の親水性溶媒が好ましく用いられる。
【0009】
さらに抽出方法としては、室温,冷却又は加熱した状態で含浸させて抽出する方法、水蒸気蒸留などの蒸留法を用いて抽出する方法などが例示され、これらの方法を単独で、又は2種以上を組み合わせて抽出を行う。
【0010】
抽出の際のキナ属植物と溶媒との比率は特に限定されないが、キナ属植物1に対して溶媒0.1〜1000重量倍、特に抽出操作,効率の点で、0.5〜100重量倍が好ましい。また抽出圧力及び抽出温度は常圧下で0℃から溶媒の沸点以下の範囲とするのが便利であり、抽出時間は抽出温度などにより異なるが2時間〜2週間の範囲とするのが好ましい。
【0011】
このようにして得られたキナ属植物の抽出物は、抽出物をそのまま用いることもできるが、その効果を失わない範囲で、脱臭,脱色,濃縮などの精製操作を加えたり、さらにはカラムクロマトグラフィーなどを用いて分画物として用いてもよい。これらの抽出物や精製物,分画物は、これらから溶媒を除去することによって乾固物とすることもでき、さらに、アルコールなどの溶媒に可溶化した形態、或いは乳剤の形態で用いることができる。
【0012】
キナ属植物抽出物の皮膚外用剤への配合量は、その効果や添加した際の臭い,色調の点から考え、0.0001〜10重量%の濃度範囲とすることが望ましい。
【0013】
本発明の皮膚外用剤には、必要に応じて、通常医薬品,医薬部外品,皮膚化粧料及び洗浄料に配合される、油脂,保湿剤,粉体,色素,乳化剤,可溶化剤,洗浄剤,紫外線吸収剤,増粘剤,薬剤,香料,樹脂,アルコール類等を適宜配合することができる。また、本発明の皮膚外用剤の剤型は任意であり、例えば化粧水などの可溶化系,クリーム,乳液などの乳化系,カラミンローション等の分散系として、提供することもでき、また噴射剤と共に充填したエアゾールの剤型をとってもよい。さらに、本発明の皮膚外用剤は、顔面,手足,腹部,背部など全身に適用することができる。
【0014】
【実施例】
さらに実施例により、本発明の特徴について詳細に説明する。以下の実施例においてキナ属植物抽出物としては、丸善製薬より販売されているキナ抽出物(50容量%エタノール抽出物)を用いた。
【0015】
[実施例1] 保湿ローション
(1)精製水 78.4(重量%)
(2)ヒドロキシエチルセルロース 1.0
(3)1,3−ブチレングリコール 5.0
(4)尿素 5.0
(5)乳酸 0.5
(6)キナ抽出物 0.1
(7)エタノール 10.0
製法:(2)を(1)に溶解した後、(3)〜(7)の成分を順次添加し、均一に混合,溶解する。
【0016】
[実施例2] 水中油乳化型ローション
(1)スクワラン 5.0(重量%)
(2)白色ワセリン 2.0
(3)ミツロウ 0.5
(4)ソルビタンセスキオレエート 0.8
(5)ポリオキシエチレンオレイルエーテル(20EO) 1.2
(6)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(7)プロピレングリコール 5.0
(8)精製水 54.8
(9)カルボキシビニルポリマー(1重量%水溶液) 20.0
(10)水酸化カリウム 0.1
(11)尿素 10.0
(12)キナ抽出物 0.5
製法:(1)〜(5)の油相成分、及び(6)〜(10)の水相成分をそれぞれ75℃に加熱して溶解,均一化する。水相成分に油相成分を添加してホモミキサーで均一に乳化した後、50℃に冷却し、(11)及び(12)を添加,混合し、均一化する。
【0017】
[実施例3]水中油乳化型ローション
(1)ステアリン酸 2.0(重量%)
(2)セタノール 2.4
(3)モノイソステアリン酸グリセリル 0.5
(4)ポリオキシアルキレンメチルポリシロキサン共重合体 0.5
(5)ヤシ油脂肪酸−L−グルタミン酸ジアルキルエステル 0.5
(6)グリセリン 25.0
(7)ラノリン 0.8
(8)2−エチルヘキサン酸セチル 5.0
(9)メチルポリシロキサン 3.3
(10)パラオキシ安息香酸メチル 0.3
(11)精製水 56.5
(12)尿素 3.0
(13)グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
(14)キナ抽出物 0.1
製法:(1)〜(9)の油相成分、及び(10)〜(11)の水相成分をそれぞれ75℃に加熱して溶解,均一化する。水相成分に油相成分を添加してホモミキサーで均一に乳化した後、50℃に冷却し、(12)〜(14)を順次添加,混合し、均一化する。
【0018】
[実施例4] 水中油乳化型クリーム
(1)セタノール 10.0(重量%)
(2)ベヘニルアルコール 1.0
(3)モノラウリン酸デカグリセリル 1.0
(4)酢酸トコフェロール 0.1
(5)パラオキシ安息香酸メチル 0.2
(6)グリセリン 37.0
(7)精製水 47.6
(8)尿素 3.0
(9)キナ抽出物 0.1
製法:(1)〜(4)の油相成分、及び(5)〜(7)の水相成分をそれぞれ75℃に加熱して溶解,均一化する。水相成分に油相成分を添加してホモミキサーで均一に乳化した後、50℃に冷却し、(8)及び(9)の成分を順次添加,混合し、均一化する。
【0019】
上記処方にて調製した本発明の実施例1〜実施例4について、実使用試験を行い、保湿効果,抗掻痒効果、及びその持続性、並びに連用による副作用の有無を評価した。また、表1に示した処方にて比較例を調製し、同様に評価を行った。
【0020】
【表1】
【0021】
実使用試験は、まず、肌の乾燥及びそれに伴う掻痒感を有する男女パネラー20名を一群とし、各群に実施例1〜実施例4及び比較例1〜比較例3をそれぞれブラインドにて、踵,肘等の乾燥部位に使用させ、使用直後及び使用3時間後の保湿効果及び抗掻痒効果について表2に示した基準にて点数化し、平均点を算出した。また、連用による副作用については、同じパネラーに、1日2回ずつ2ヶ月間使用させ、連用による副作用の有無についてアンケート調査を行い、紅斑の発生,乾燥状態の悪化等の副作用があると回答したパネラーの数にて判断した。結果を表3に示す。
【0022】
【表2】
【0023】
【表3】
【0024】
表3に示したとおり、本発明の実施例1〜実施例4については、使用直後及び使用3時間後において、保湿効果,抗掻痒効果に優れており、連用による副作用も認められなかった。しかしながら、キナ抽出物を配合していない比較例1においては、使用直後の保湿効果に優れ連用による副作用も認められていなかったが、抗掻痒効果及び3時間後の保湿効果において、実施例1より低い評価となっていた。また抗ヒスタミン剤であるジフェンヒドラミン及び局所麻酔剤であるリドカインを配合した比較例2、及びステロイド剤であるヒドロコルチゾン−17−ブチレートを配合した比較例3においては、保湿効果及び抗掻痒効果は、認められるものの、連用による副作用を認めたパネラーがそれぞれ25%及び15%存在し、安全性に問題があることが示された。
【0025】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明により、保湿効果及び抗掻痒効果の持続性に優れ、しかも連用による副作用が認められず安全性の高い皮膚外用剤を得ることができた。
Claims (1)
- 尿素、及びキナ属植物抽出物を含有する保湿効果及び抗掻痒効果持続性皮膚外用剤。
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