JP3807886B2 - Pcb汚染機器の浄化方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、PCB汚染機器の浄化方法に関し、更に詳しくは、例えば電力用高圧トランスのような、PCB又はPCBを含む油が充填されてPCBに汚染されていた大型機器などについて好適な浄化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
PCBは、かって有用な物質として熱媒体、トランス・コンデンサ等の電気機器用の絶縁油、ノーカーボン紙の他、潤滑油、各種可塑剤、塗料、シーランド剤等向けに生産され、そうした方面で使用されていた。しかしカネミ油症事件等をきっかけに生体・環境への影響が明らかになり、昭和47年までに生産が中止され、昭和49年度までに製造・輸入が禁じられ、さらに開放系用途での使用、新規用途での使用も禁じられた。その後熱媒体用のPCBは大部分が回収されたが、閉鎖系用途については、電気機器用に現在も継続して使用されているか、使用事業者で保管されている。
【0003】
しかし、使用済PCB電気機器等の保管が長期化する中で、機器の紛失・行方不明例が報告されはじめ、PCBの漏出あるいは事故による漏洩等の恐れが大きくなってきている。現在、PCBは環境中あるいは生体中で広く検出され、種々の経路を通って環境中に侵入している可能性も示唆されている。
PCBに汚染されたまま現在に至ってきた電気機器等も、多くが処分時期を迎えている。PCBに汚染された絶縁油を現在でもなお充填しているような電気機器を完全に処分するには、充填されている絶縁油だけでなく、絶縁油を介してPCBが付着、又は含浸している容器等の被洗浄物も浄化する必要がある。
PCBで汚染された廃プラスチック類又は金属くずは、その処分、再生の方法が定められている。焼却設備や洗浄設備を用いてPCBを十分に除去しなければならない。
【0004】
我が国の浄化基準は諸外国と比較して非常に厳しい。含有量で0.01mg/kg、表面付着量として0.1μg/100cm2が、上限値として定められている。こうした基準をクリヤーできる浄化方法としては、従来多くの方法が検討され、一部は実用化されてきている。
例えば、PCB汚染物を含有する機器を洗浄する場合、従来は特殊な洗浄槽内に洗浄対象機器を設置して洗浄している。また洗浄効果を向上させるために切断・破砕等の前処理を行う例もある。
溶剤洗浄による浄化率を向上させるには次のような工夫が必要である。洗浄時、接触する洗浄溶剤にPCB汚染物が浸透しやすくすること。洗浄溶剤の汚染物への接触性を向上させること。汚染物を洗浄溶剤に溶解しやすくすること。汚染物を溶解した溶剤を、被洗浄物の表面から速やかに排除できるようにすること。これらが重要である。
浸透・接触性の向上方法としてはいくつかある。洗浄槽に洗浄溶剤を導入し、被洗浄物を浸漬する。浸漬時、超音波洗浄又は洗浄溶剤による煮沸を行う。洗浄槽で洗浄溶剤蒸気が利用されることもある。溶解性の向上には溶解効果の高い適切な溶剤の選定や加温溶剤が利用されてきた。
例えば、蒸気洗浄槽とシャワー洗浄槽とを組み合わせて配置して行う洗浄法がある。シャワー洗浄と蒸気洗浄とを順次実施する洗浄法も行われている。真空減圧とシャワー洗浄と蒸気洗浄と真空乾燥を繰り返す浄化方法もある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、PCB汚染物の浄化にあたっては依然、次のような問題がある。
・浄化基準が非常に厳しいため、非常に高い浄化効率が要求される。
・洗浄後、その洗浄廃液にはPCBが含まれる。廃液の処分は困難が伴う。
・珪素鋼板やコイルなどの資材の場合、洗浄終了後もなお間隙中にPCBが残留しているものが多い。
従来は、汚染物を溶解した溶剤を被洗浄物から除去する過程が軽視されていた。従来の蒸気洗浄は、被洗浄物の温度が溶剤の凝縮によって上昇して凝縮が起こらなくなると、浄化効果が不充分でも洗浄作業は終了する。凝縮液を被洗浄物から速やかに除去する手段もない。また供給蒸気も汚染溶剤を単に蒸発・気化させたもので清浄な蒸気が得られない。十分な洗浄効果も得られないことが多い。
真空減圧、シャワー洗浄、蒸気洗浄、真空乾燥を繰り返す浄化方法の場合、汚染物が溶解した凝縮液が被洗浄物表面から十分排除されない段階で被洗浄物を真空乾燥に付す。そのため、溶剤に比べて蒸発しにくいPCBが被洗浄物表面に取り残され、十分な洗浄効果を得ることは困難である。特に蒸気が浸透しにくく、凝縮液が蒸発しにくい間隙中のPCBの除去は困難になる。
このようにして従来の洗浄方法の場合、特に部材と部材に挟まれた間隙中の汚染物の除去効果が低い。厳しい浄化基準に照らし、必要な所定の浄化物がなかなか得にくい。これを解消するには結局、処理時間が非常に長くなるという問題点があった。
また、破損や漏洩の心配がない場合の機器では、PCBが汚染しているのは内部だけである。本来外部を洗う必要はない。それにも係わらず、充填汚染油中などのPCB含有濃度が高い機器を破砕して洗浄しなければならない場合、周囲へのPCB汚染物の飛散防止策は、予め設けておかなければならない。そうした作業負担は、通常かなり大きいという問題点があった。
特に、PCB汚染物を含有している機器には、例えば電力用の高圧トランス等のように、容積の非常に大きいものもある。こうした大型機器を、例えば特殊な洗浄槽内に設置して洗浄しなければならない場合、洗浄槽を非常に大きくするか、又はPCB含有量が大きいまま直接破砕する等の危険な大規模な前処理を行う必要があるという問題点があった。
そこで本発明は、PCB含有機器を浄化するにあたり、周囲へのPCBの排出が無く、その結果周囲の汚染も小さく、浄化効率も高い浄化方法の提供を目的とする。また、特に部材と部材に挟まれた間隙中に滞留するPCBなどを効率よく除去し、効果的にPCB汚染物を浄化する方法を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を以下の手段で解決した。
(1) 密閉条件下で、PCB汚染機器を溶剤の蒸気に暴露し、該機器の表面上で凝縮生成したPCB溶剤混液を流下させる工程と、前記機器表面に液体溶剤を接触させて該機器表面温度を溶剤の凝縮温度以下にする工程とを複数回繰り返す洗浄工程と、洗浄された機器表面を乾燥する乾操工程を有するPCB汚染機器の浄化方法。
) 乾操工程において、洗浄された機器を加温気体に暴露することと、減圧吸引することを交互に複数回行うことを特徴とする(1)に記載のPCB汚染機器の浄化方法。
) 機器そのものが密開容器の場合、溶剤供給排出手段ならびに加温気体供給及び真空引き手段を付設し、気密状態を確認した後、内部のPCB汚染部位を洗浄・乾燥することを特徴とする(1)〜()のいずれかに記載のPCB汚染機器の浄化方法。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明の第1の実施の形態では、PCB汚染物で汚染された被洗浄物を密閉可能な洗浄槽内に配置する。PCB汚染物および溶剤蒸気が環境中へ排出されることを防止するためである。
このような被洗浄物を洗浄するにあたり、好ましくはその一部又は全部を前処理として解体する。溶剤との接触ならびに流下を良くするためである。
前処理としての解体では、被洗浄物である機器類の開蓋、開孔、切断、破砕等がある。解体した機器部品類は、洗浄槽内で被洗浄物と溶剤との接触効率を高めるため、なるべく均等に配置するとよい。金属類と紙・木・布等とが結合していれば、これは分離する。分離方法は特に限定されないが、例えば公知の風選、磁選等を用いるとよい。
洗浄にあたっては、被洗浄物に加熱洗浄溶剤蒸気を噴射する。洗浄溶剤としては具体的にはパークレンなどを用いることができるが、好ましくは環境にやさしい洗浄用溶剤がよい。
蒸気溶剤は、被洗浄物表面に付着している汚染物に潜熱を転移し、有機溶剤に溶解しやすくするとともに、凝縮して液化し、汚染物を取り込む。被洗浄物表面が加熱蒸気の熱を吸収し、洗浄溶剤が凝縮しにくくなったら液体溶剤を噴射し、表面を冷却する。液体溶剤の温度は特に限定されないが、液温はより低い方が少量で被洗浄物の冷却効果をあげることができて好ましい。
【0008】
液体溶剤を導入している間は、好ましくは溶剤蒸気の供給口からの導入量はゼロにする。しかし、液体と蒸気の割合を完全に切り替えることは必ずしも得策でない場合もある。スチームハンマー現象や閉止配管の逆汚染を防止するためである。
蒸気溶剤と液体溶剤の切り替えは次のように行うことが好ましい。すなわち、当初は蒸気主体とし、その後、液体主体にした後、再度蒸気主体に変える。その後は必要に応じてさらに液体主体、蒸気主体に少なくとも2回切り替えることが望ましい。
被洗浄物表面からPCB汚染物が脱離したら、凝縮した有機溶剤で湿潤している被洗浄物表面を乾燥する。乾燥方法としては、洗浄槽の加熱、減圧吸引、加温気体の導入などの方法を用いることができるが、減圧吸引と加温気体導入との組み合わせがより望ましい。減圧吸引と加温気体導入はくり返して行うことが好ましい。
乾燥に当たり、加温に用いる気体は空気でも良いが、PCB又は溶剤の酸化を防止するため、窒素ガスなどの不活性気体を用いることが望ましい。乾燥操作は、減圧吸引と加温気体の通風導入とを複数回に渡って繰り返して行うことが好ましい。PCB含有溶剤が、環境へ排出することを防止するため、洗浄槽から排出されるガスは、例えば冷却凝縮と活性炭吸着という二段構えの方法で浄化することが望ましい。
使用済み溶剤はPCBを含む。適正に処理・処分する必要があり、排出量を少なくするために回収して再生することが望ましい。回収・再生方法としては、蒸留分離が一般的であるが、必要に応じてダスト除去等の精製を行うとよい。溶剤回収時の蒸留残渣は廃PCB等(PCBを含む油)として別途処分する。
【0009】
一般に、各種の固定材の間隙中を液体が移動することは困難である。間隙が狭くなるほど固体表面と液体の接触面の摩擦の影響は大きくなり、液体流速が非常に小さくなる。間隙が狭くなれば圧損も大きくなる。間隙内に液体溶剤を流通させることはいっそう困難になる。
洗浄槽内の被洗浄物に溶剤蒸気を供給すると、被洗浄物の内部の表面あるいは間隙中に蒸気が浸透し、凝縮して汚染物を溶解する。被洗浄物の温度が高いほど、また蒸気の温度が高いほど、より小さい又は深い間隙まで浸透させることができる。
しかし、蒸気の凝縮に伴って被洗浄物の温度が高くなると、溶剤蒸気は凝縮しにくくなり、汚染物を新たに溶解することができなくなる。液体溶剤を供給することで被洗浄物の温度を低下させることができ、再度溶剤の凝縮が可能になる。
乾燥方法として洗浄槽自体を加熱した場合、ヒーター表面は乾燥温度より高温にせざるを得ない。PCBや洗浄溶剤は、熱変性の可能性が高い。減圧吸引はPCB及び溶剤の蒸発を促進し、低温での乾燥も可能にする。しかし、搬送気体がなく、蒸発したPCB及び溶剤の乾燥速度が小さく、したがって乾燥には長い時間を必要とする。加温気体を供給すれば、被洗浄物を加温するとともに、蒸発したPCB及び溶剤も搬送・除去できる。減圧吸引と加温気体の供給とを組み合わせれば、比較的低温下で乾燥が可能となる。
PCB汚染物であるPCB含有電気機器等は、比較的平滑で形状が単純な外函と、珪素鋼板の積層からなる鉄心、銅又はアルミの巻線からなるコイル部とから主に構成されている。外函と、間隙が多い鉄心又はコイル部とでは、洗浄の難易が大きく異なる。両者を一緒に洗浄した場合には洗浄しにくいコイル部等に時間を合わせなければならない。長い作業時間がかかって無駄なだけでなく、洗浄槽内の被洗浄物の充填密度の違いから、洗浄溶剤蒸気も無駄に消費されかねない。
【0010】
洗浄の前処理として被洗浄物を解体すれば、洗浄するものを比較的均等に洗浄槽内に充填することができる。また形状の違う部材ごとに別々に洗浄することも可能で、それぞれ最適な洗浄条件及び洗浄時間を選択することができる。
紙・木・布のような含浸性物質は、金属類に比較して洗浄が困難である。含有している汚染物の量も多い。そこで解体後の部材を金属類と紙・木・布等とに分離できれば、紙・木・布等に関係なく必要な金属類をより容易に浄化することができる。紙・木・布等は、浄化基準が定められていない。これらは浄化後も保管することになる可能性が高い。紙・木・布等の洗浄に無駄に溶剤やエネルギーを使うことも無い。
洗浄に使用する溶剤はPCBに比較して沸点が低い。使用済み溶剤は蒸留によってPCBと分離すれば再生できる。再生できれば、使用済み溶剤の排出量も少なくでき、溶剤補充量を低減できて好ましい。また廃PCB等(PCBを含む油)として処分するものが溶剤回収時の蒸留残渣のみになる。処理・処分が困難で費用もかかる廃PCB等(PCBを含む油)の処分量を低減できる。溶剤回収・再生時の蒸留残渣を更に再度蒸留分離できれば、洗浄操作と別途に行う処分量を更に減らせる。廃PCB等の処理・処分時に不純物扱いとなる溶剤量を除去したり減少させることもできるようになる。
【0011】
本発明の第2の実施の形態では、内部がPCBで汚染された機器を対象として浄化する。この方法で浄化できる被洗浄物としては、例えば電力用高圧トランスのような密閉性の高い機器を対象とすることができる。
実施に当たっては、そのような機器に溶剤蒸気及び乾燥用気体の供給口(溶剤供給手段、昇温ガス供給手段)と、流下する溶剤の底部排出口(溶剤排出手段)とを設ける。溶剤蒸気供給口と乾燥用気体供給口とは、一つの供給口で兼用してもよく、別々に設けても良い。供給口は機器上部に設け、排出口は機器底部に設けることが望ましい。供給口及び排出口は、機器自体に既に転用可能な開口部が設けてあれば、それを事実上直接利用してもよく、他に新たに作ってもよい。さらに、外周全体を密閉状態に出来ることを確認することとし、密閉困難な場合には漏洩部を修繕して密封する。
洗浄中の機器内部の状況を把握するため、既設の測定器が測定対象機器に付属している場合を除き、温度計と圧力計とを設置することが望ましい。
洗浄対象の機器に供給口等を設置した場合、いったんガスパイプなどを接続した後、気密試験をおこなって機器の密閉状態を確認する。必要な場合は修繕等をおこなう。
【0012】
気密試験に用いた気体は機器を浄化した後に排出するか、専用タンクに回収・貯留して次回の使用に備えるようにするとよい。気密試験用及び乾燥用の気体としては空気又は不活性ガスが使用できる。そのうち、不活性ガスを用いて酸素濃度を低く維持することがより望ましい。
PCB汚染機器は、特定の有機溶剤で洗浄する。
加熱蒸気状態で洗浄中、機器内の温度を少なくとも1回、一時的に下げるとよい。温度を下げる方法としては、具体的には、液体状態の有機溶剤を一時的に注入することをもって行うことができる。注入する液体溶剤の温度は特に限定されないが、液温は低い方が少量で被洗浄物の冷却効果をあげることができる。勿論トランス等の機器自体を外部から冷却することを妨げない。
【0013】
本実施の態様では、PCB汚染機器の浄化は、必ずしも特別な洗浄槽、作業室を要しない。しかし、環境管理できる特定の作業室内で行うことは、より好ましい。温度調節を行う場合、例えば、PCB汚染機器を搬入した設置作業室に冷却機、加熱機などを設置することで行うとよい。換気調節が行える場合もある。その場合には、換気量と換気空気の温度によって調節する。機器からのPCB又は洗浄用溶剤の漏洩の可能性を考慮し、排気の浄化設備を設置することが望ましい。
【0014】
前処理作業は負担が少ない。具体的には、溶剤および気体の供給口及び排出口を作るだけである。作業内容は小さい。洗浄前の前処理に伴いPCB汚染物が周囲に飛散したり、外部に排出することに伴う汚染は起きにくい。供給口・排出口の開設も、洗浄対象機器に既にもとからある供給口又は排出口が利用できる場合は、前処理作業はごく少なくて済む結果となる。
一般に、各種の固定材の間隙中を液体が移動することは困難である。間隙が狭くなるほど固体表面と液体の接触面の摩擦の影響は大きくなり、液体の流速は非常に小さくなる。間隙が狭くなれば圧損も大きくなる。間隙内に液体溶剤を流通させることはいっそう困難になる。
被洗浄物の内部に溶剤の加熱蒸気を供給すると、被洗浄物の内部表面及び間隙中に蒸気が浸透する。蒸気は液体よりも流動性が大きく、浸透した場所で凝縮してPCB汚染物を溶解する。被洗浄物の温度が高いほど、また蒸気の温度が高いほど、より小さい又は深い間隙まで浸透させることができる。
しかし、高温の蒸気に長時間曝されると、蒸気の凝縮量の累積に伴って被洗浄物の表面温度が高くなる。こうなると溶剤の凝縮は起こりにくくなる。凝縮しなくなるとPCB汚染物を新たに溶解することはできなくなる。
【0015】
PCB汚染物による汚染量が多い場合等には1回の蒸気洗浄では十分な浄化効果が得られない。そのような場合、液体溶剤を供給して被洗浄物の表面温度を再度低下させ、機器内で流動する溶剤蒸気が凝縮しやすくするとよい。こうすれば再度溶剤の凝縮が可能になる。浄化効果を一層、高めることができる。洗浄工程終了後、洗浄溶剤は、排出口から排出する。ついで、凝縮して液化した溶剤で湿潤している被洗浄物内部を乾燥する。乾燥方法としては、乾燥用気体の供給口からなどの加温気体の導入などの方法を用いることができるが、減圧吸引と加温気体の導入の組み合わせがより望ましい。
乾燥に当たり、加温に用いる気体は空気でも良いが、PCB又は溶剤の酸化を防止するため、窒素ガスなどの不活性気体を用いることが望ましい。加温気体の温度としては、PCB又は溶剤の熱変性が起こらない程度で高温であることが望ましい。乾燥操作は、減圧吸引と加温気体の通風導入とを複数回に渡って繰り返しておこなうとよい。PCB含有溶剤が、環境へ排出することを防止するため、洗浄槽から排出されるガスは、冷却凝縮と活性炭吸着という二段構えの方法で浄化することが望ましい。
十分に除去・乾燥させた後、PCBに内部汚染されていた大型トランス等の機器を開ける。こうすると、被洗浄物の切断等の解体作業をおこなう際、排出される溶剤等が少なく、安全性も高い。周辺環境を汚染する恐れが無い。
浄化工程の最適処理温度は、洗浄時と乾燥時で異なる。洗浄時、被洗浄物が高温になりすぎることは蒸気の凝縮を妨げるため好ましくない。乾燥時にはより高温になる方がむしろ望ましい。
【0016】
電力用トランスには、絶縁液の過熱を防止するため、通常は空冷用のラジェータ部がある。外周温度が低い場合、構造上、ラジェータ部は本体部分よりも低温になる。そのため、ラジェータ部で溶剤蒸気は奥まで浸透する前に凝縮しやすい。その結果、奥は浄化されにくい。そこで、ラジェータ部の温度を、少なくとも洗浄工程中の一部の時間、本体より高くして気体蒸気が浸透できるようにするとよい。こうすると、ラジェータ部での溶剤蒸気の流通が促進し、浄化効果も高まる。具体的な方法としては、機器に保温材又は断熱材を取り付け、ラジェータ部の周囲を温度調節するというような方法を採用することも可能である。ラジェータ部の加熱は、新たに加熱設備を用いて行ってもよいが、必ずしもそれに限らない。洗浄時、洗浄対象機器には加熱した有機溶剤蒸気を供給している。断熱してラジェータからの放熱を低減すれば、温度は容易に昇温する。これによって、洗浄機器内で溶剤蒸気を流動しやすくする。
ラジエターの加熱を、保温材や断熱材の取り付けで対応する場合、いずれは浄化工程の進行に従って保温材や断熱材は取り外す必要がある。形状・大きさが異なる多数の機器にいちいち脱着するのは煩雑である。そこで、洗浄しようとする機器を、予め温度調節可能な室内に設置できれば、容易に最適温度に維持することもできる。
【0017】
洗浄に使用する溶剤はPCBに比較して通常、沸点が低い。使用済み溶剤は、蒸留分離によって再生できる。再生できれば、使用済み溶剤の排出量も少なくできる。溶剤補充量も低減できる。また、洗浄溶剤を蒸留分離によって再生できれば、PCBを含む油すなわち廃PCBとして処分しなければならないものは、溶剤回収時の蒸留残渣のみとなる。蒸留残渣のみが処分対象となれば、廃PCB等として処分しなければならない廃棄物量は低減できる。処理・処分が困難で費用もかかる作業負担は軽減する。溶剤回収し、再生時の蒸留残渣も更に再度蒸留分離すれば、別途処分する廃棄物量は更に減らせるだけでなく、廃PCB等の処理・処分時の不純物となる溶剤の除去負担も減少させることができる。
【0018】
【発明の効果】
本発明は、上記のような構成でなるから、PCB含有機器を浄化するにあたり、周囲へのPCBの排出が無く、その結果周囲の汚染も小さく、浄化効率も高い浄化方法を提供できる。また、特に部材と部材に挟まれた間隙中に滞留するPCBなどを効率よく除去し、効果的にPCB汚染物を浄化する方法を提供できる。

Claims (3)

  1. 密閉条件下で、PCB汚染機器を溶剤の蒸気に暴露し、該機器の表面上で凝縮生成したPCB溶剤混液を流下させる工程と、前記機器表面に液体溶剤を接触させて該機器表面温度を溶剤の凝縮温度以下にする工程とを複数回繰り返す洗浄工程と、洗浄された機器表面を乾燥する乾操工程を有するPCB汚染機器の浄化方法。
  2. 乾操工程において、洗浄された機器を加温気体に暴露することと、減圧吸引することを交互に複数回行うことを特徴とする請求項1に記載のPCB汚染機器の浄化方法。
  3. 機器そのものが密開容器の場合、溶剤供給排出手段ならびに加温気体供給及び真空引き手段を付設し、気密状態を確認した後、内部のPCB汚染部位を洗浄・乾燥することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のPCB汚染機器の浄化方法。
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