JP3806821B2 - 自動二輪車の車体フレーム - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、自動二輪車の車体フレームに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動二輪車の車体フレームには、例えば、ヘッドパイプに、左右一対の広幅のメインフレームを溶接で接合し、この左右一対のメインフレームの後端部にリヤフレームブラケットを一体に形成し、リヤフレームブラケットにリヤアームを軸支し、さらにメインフレームの後端部にシートレール等を取り付けたものがある。また、左右一対のメインフレームの後端部にリヤフレームブラケットを溶接により固定したものがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、左右一対のメインフレームの後端部にリヤフレームブラケットを一体に形成したり、溶接で固定する構造及びヘッドパイプ近傍からエンジン前面へ向けて下降するダウンチューブを有する構造では、メインフレームの高さ方向の寸法が大きいため、溶接や塗装等の作業性が悪い。また、メインフレームやリヤアームブラケットにシートレール等を取り付けする別工程が必要であり、製造工程が複雑になる。
【0004】
さらに、左右一対の広幅のメインフレームの下方にエンジンが懸架され、このエンジンの上方はメインフレームに載置された燃料タンクで覆われているため、エンジン上方の空間に熱がこもり、熱気を円滑に外部に逃がすことが困難で、気化器等の燃料供給系及びエアクリーナ等の吸気系が熱の影響を受け、燃料及びエンジンへの吸入空気の温度が高くなる等の現象が生じる。
【0005】
この発明は、かかる実状に鑑みなされたもので、製造時の溶接及び塗装の作業性が良好で、しかも気化器等の燃料供給系及びエアクリーナ等の吸気系への熱の影響を軽減し、出力向上に有効な自動二輪車の車体フレームを提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決し、かつ目的を達成するために、請求項1記載の発明は、複数のパイプ部材をトラス状に溶接して構成され、フロントフォークからシートまでの部材を支持する一体の組立体であるトラスメインフレームと、
リヤアームと、
前記リヤアームを支持するリヤアームブラケットとを備える自動二輪車の車体フレームであって、
前記トラスメインフレームは、
ヘッドパイプと、
前記ヘッドパイプの上下に接続された左右一対の上タンクレール及び下タンクレールと、
前記左右一対の上タンクレール及び下タンクレールの間を連結するメンバーと、
前記左右一対の上タンクレールに接続された一対のシートレールと、
前記左右一対のシートレールに接続された一対のバックステーと、
前記左右一対の上タンクレールの間を連結するクロスチューブと、
前記左右一対のシートレールの間を連結するクロスメンバーと、
前記左右一対のバックステーの間を連結するクロスメンバーとを有し、
前記連結を溶接により一体化して構成され、
前記リヤアームブラケットは、
軽金属材料で形成され、
その上部には、締結部材を介して、前記トラスメインフレームの前後方向の略中央下部に連結される連結部が設けられ、
前記連結部の下方には、後側エンジン懸架ボス部が設けられ、
前記下タンクレールの略中央部であって、かつ前記リヤアームブラケットの前記後側エンジン懸架ボス部の前方に、前側エンジン懸架ボス部が設けられたことを特徴としている。
【0008】
請求項2記載の発明の自動二輪車の車体フレームは、前記リヤアームブラケットが、フートレストブラケット取付ボス部を有することを特徴としている。
【0009】
【作用】
請求項1記載の発明では、トラスメインフレームとリヤアームブラケットとを別体とし、しかもトラスメインフレームがフロントフォークからシートまでの部材を支持する構造で、ダウンチューブを要さない構成であるので、メインフレームの高さ方向の寸法が小さくでき、またトラス状の間から溶接や塗装等ができ作業性が向上する。
【0010】
また、トラスメインフレームの配置により、エンジンの上方の熱気を車体外部に排出することができ、気化器等の燃料供給系及びエアクリーナ等の吸気系への熱の影響を軽減し、出力向上に有効である。
【0011】
また、トラスメインフレームが複数のパイプ部材の溶接により一体化され、フロントフォークからシートまでの部材を支持するトラスメインフレームを容易に且つ強固に形成することができる。
【0012】
請求項2記載の発明では、リヤアームブラケットに、容易にフートレストブラケット取付ボス部を一体的に設けることができる。
【0013】
【実施例】
以下、この発明の自動二輪車の車体フレームを図面に基づいて詳細に説明する。図1は自動二輪車の側面図、図2はエンジン及びリヤアーム等を外した車体フレームの側面図、図3は車体フレームの側面図、図4はメインフレームの平面図、図5はリヤアームブラケットの側面図、図6はリヤアームブラケットの背面図である。
【0014】
自動二輪車の車体フレーム1は、フロントフォーク2からシート3までの部材を支持するトラスメインフレーム4と、リヤアーム5を支持するリヤアームブラケット6とを有している。トラスメインフレーム4の前側のヘッドパイプ7には、フロントフォーク2が設けられ、このフロントフォーク2の下部に前輪8が支持され、上部にはハンドル9が取り付けられている。トラスメインフレーム4の前側には燃料タンク10が配置され、この燃料タンク10の後方にはシート3としてタンデムシートが配置され、このタンデムシートはタンデム前シート3aとタンデム後シート3bからなっている。
【0015】
シート3の両側部から後方の下方はリヤカウル11で覆われている。また、ヘッドパイプ3の側部からフロントフォーク2の上部前側は、フロントカウル12により覆われている。
【0016】
リヤアームブラケット6には、ピボット軸13を介してリヤアーム5が上下に揺動可能に支持され、このリヤアーム5には後輪14が設けられている。
【0017】
トラスメインフレーム4及びリヤアームブラケット6には、エンジン15が支持され、このエンジン15は並列2気筒を有している。エンジン15の気筒16は前側に傾けて配置され、この気筒16は、トラスメインフレーム4に取り付けて支持され、エンジン15のクランクケース17の上部は取付ブラケット18を介してトラスメインフレーム4に支持され、またクランクケース17の後部はリヤアームブラケット6に取り付けて支持されている。すなわち、エンジン15の懸架はトラスメインフレーム4とリヤアームブラケット6とにより構成するようにし、かつエンジン15も強度部材の一部として用いることにより、ヘッドパイプ近傍からエンジン前面へ向けて下降するダウンチューブは必要としない構成をとっている。
【0018】
それぞれの気筒16の後側には、吸気管19が接続され、さらに吸気管19に気化器20が接続され、吸気管19及び気化器20はトラスメンフレーム4の間に位置している。気化器20にはエアクリーナ21が接続され、エアクリーナ21は燃料タンク10の下方位置に配置されている。燃料タンク10の下部には燃料コック22が設けられ、この燃料コック22の操作で燃料が気化器20に供給され、燃料コック22はトラスメンフレーム4の間に位置している。また、クランクケース17の上部にはオイルタンク23が配置され、このオイルタンク23の不図示のオイル供給口はトラスメンフレーム4の間で右側に位置している。
【0019】
気筒16の前側には、それぞれ排気管24が接続され、この排気管24はエンジン15の下方を通って後方へ伸び、後端部にはマフラ25が接続され、このマフラ25は後輪14の上方の左右両側に位置している。
【0020】
車体フレーム1は、複数のパイプ部材をトラス状に溶接して構成したフロントフォーク2からシート3までの部材を支持するトラスメインフレーム4と、軽金属材料のアルミニウムまたはアルムニウム合金等で形成されるリヤアームブラケット6とを有し、トラスメインフレーム4の前後方向の略中央下部にリヤアームブラケット6の上部を締結部材26により連結して構成されている。
【0021】
トラスメインフレーム4は、ヘッドパイプ7、左右一対の上下タンクレール27,28、この左右一対の上下タンクレール27,28間を連結するメンバー29〜31及びクロスチューブ33〜35、左右一対のシートレール36及びバックステー37、この左右一対のシートレール36及びバックステー37間を連結するクロスメンバ38〜40を有し、これらの部材を溶接により一体化している。クロスチューブ33とヘッドパイプ7との間に補強フレーム41が設けられ、この補強フレーム41に取り付けたブラケット42にチョークノブ43が取り付けられている。下タンクレール28の後方にはステー44が溶接され、このステー44に取付ブラケット18が取付ボルト45により締付固定される。
【0022】
取付ブラケット18にエンジン15のクランクケース17が懸架され、また下タンクレール28の略中央部の前側エンジン懸架ボス部46にエンジン15の気筒16が懸架される。32は右側の下タンクレール28の後部を構成し、左側の下タンクレール28の後部を構成する部材より、上方へ変位させてクランクケース17の一部で形成されるクラッチハウジングの逃げとなっている。
【0023】
上タンクレール27の後端部に連結フレーム部47が溶接され、この連結フレーム部47にバックステー37が溶接され、また連結フレーム部47と左右のシートレール36との間に左右一対の補助フレーム48が溶接されている。バックステー37にはスタンデングハンドルパイプ49が溶接され、このスタンデングハンドルパイプ49とバックステー37との間には補助パイプ50が設けられ、スタンデングハンドルパイプ49には荷掛けフック51が設けられている。
【0024】
バックステー37の中央部には取付ステー52が設けられ、マフラ25を支持する取付金具53が取付ボルト54で締付固定される。
【0025】
上下タンクレール27,28は、側方から見てシートレール36と上タンクレール27との連結点A、及びリヤアームブラケット6との連結点B間にて1本になり、またスタンデングハンドルパイプ49は、側方から見てシートレール36とバックステー37との連結点Cより前側にてバックステー37と連結され、バックステー37の後端にて再び連結されており、トラスメインフレーム4は側方から必ず見て上下対をなすことになり、高剛性である。
【0026】
また、バックステー37は、側方から見て、略中央部で屈曲して立ち上がり、さらに屈曲して後方に伸びており、タンデム前シート3aとタンデム後シート3bの段付き形状に合わせた構造になっている。従って、シートレール36を屈曲させタンデム後シート3bの支持部を構成する構造に比べ、パイプの屈曲程度を少なくでき、成形が容易になっている。また、スタンデングハンドルパイプ49は、バックステー37より小径になっており、前側は補助パイプ50で連結して支持され、荷重は主としてバックステー37で支え、スタンデングハンドルパイプ49はバックステー37での不足分の支えとなっている。また、スタンデングハンドルパイプ49は、スタンディングのグリップとなり、また荷掛けに用いられる。
【0027】
リヤアームブラケット6は、左右の両側部60がアルミニウム材料の鍛造で形成され、左右の両側部60を連結する上下の連結部61,62はアルミニウム材料の鋳造で形成され、溶接により一体化されている。左右の両側部60は、強度が要求されるためアルミニウム材料の鍛造で形成され、上下の連結部61,62は複雑な形状が要求されるためアルミニウム材料の鋳造で形成し、機能に応じた製造方式が用いられている。
【0028】
左右の両側部60にエンジン15のクランクケース17を支持する後側エンジン懸架ボス部60a,60b及びフートレストブラケット70を取り付けるフートレストブラケット取付ボス部60c,60dが一体に形成され、リヤアームブラケット6に容易に後側エンジン懸架ボス部60a,60b及びフートレストブラケット取付ボス部60c,60dを一体的に設けることができる。
【0029】
また、左右の両側部60の中央部はピボット軸13を支持する軸孔60eが形成されている。さらに、左右の両側部60の上部には段部60fが形成され、この段部60fに上下タンクレール27,28の後端部に溶接した連結フレーム部47を外側から当てがい、段部60fの2箇所に形成した取付孔60gに締結部材26としての取付ボルトを螺着してタンクレール長手方向の延長線上の2箇所で連結している。
【0030】
リヤアームブラケット6の上連結部61及び下連結部62には、リヤクッション71の上端取付部61a,リヤサスペンションリンク72の取付部62aが一体に形成されている。
【0031】
このように、トラスメインフレーム4とリヤアームブラケット6とを別体とし、しかもトラスメインフレーム4がフロントフォーク2からシート3までの部材を支持する構造で、フレームの高さ方向の寸法が小さくでき、溶接や塗装等の際の扱い易さの向上、治具の小型化等ができ作業性が向上する。
【0032】
また、トラスメインフレーム4が複数のパイプ部材の溶接により一体化され、フロントフォーク2からシート3までの部材を支持するトラスメインフレーム4を容易に且つ強固に形成することができる。
【0033】
さらに、トラスメインフレーム4の配置により、各パイプ間を走行風が抜けるようになりエンジン15の上方の熱気を車体外部に排出することができ、気化器20等の燃料供給系及びエアクリーナ等の吸気系への熱の影響を軽減し、出力向上に有効である。
【0034】
【発明の効果】
前記のように、請求項1記載の発明は、トラスメインフレームとリヤアームブラケットとを別体とし、しかもトラスメインフレームがフロントフォークからシートまでの部材を支持する構造であるから、メインフレームの高さ方向の寸法が小さくでき、溶接や塗装等の際の扱い易さの向上、治具の小型化等ができ作業性が向上する。
【0035】
さらに、複数のパイプ部材をトラス状に溶接して構成したトラスメインフレームの配置により、エンジンの上方の熱気を車体外部に排出することができ、気化器等の燃料供給系及びエアクリーナ等の吸気系への熱の影響を軽減し、出力向上に有効である。
【0036】
また、トラスメインフレームが複数のパイプ部材の溶接により一体化したから、フロントフォークからシートまでの部材を支持するトラスメインフレームを容易に且つ強固に形成することができる。
【0037】
請求項2記載の発明は、リヤアームブラケットに、容易にフートレストブラケット取付ボス部を一体的に設けることができ、フートレストブラケットの取付構造が簡単になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】自動二輪車の側面図である。
【図2】エンジン及びリヤアーム等を外した車体フレームの側面図である。
【図3】車体フレームの側面図である。
【図4】メインフレームの平面図である。
【図5】リヤアームブラケットの側面図である。
【図6】リヤアームブラケットの背面図である。
【符号の説明】
1 車体フレーム
2 フロントフォーク
3 シート
4 トラスメインフレーム
5 リヤアーム
6 リヤアームブラケット
26 締結部材
Claims (2)
- 複数のパイプ部材をトラス状に溶接して構成され、フロントフォークからシートまでの部材を支持する一体の組立体であるトラスメインフレームと、
リヤアームと、
前記リヤアームを支持するリヤアームブラケットとを備える自動二輪車の車体フレームであって、
前記トラスメインフレームは、
ヘッドパイプと、
前記ヘッドパイプの上下に接続された左右一対の上タンクレール及び下タンクレールと、
前記左右一対の上タンクレール及び下タンクレールの間を連結するメンバーと、
前記左右一対の上タンクレールに接続された一対のシートレールと、
前記左右一対のシートレールに接続された一対のバックステーと、
前記左右一対の上タンクレールの間を連結するクロスチューブと、
前記左右一対のシートレールの間を連結するクロスメンバーと、
前記左右一対のバックステーの間を連結するクロスメンバーとを有し、
前記連結を溶接により一体化して構成され、
前記リヤアームブラケットは、
軽金属材料で形成され、
その上部には、締結部材を介して、前記トラスメインフレームの前後方向の略中央下部に連結される連結部が設けられ、
前記連結部の下方には、後側エンジン懸架ボス部が設けられ、
前記下タンクレールの略中央部であって、かつ前記リヤアームブラケットの前記後側エンジン懸架ボス部の前方に、前側エンジン懸架ボス部が設けられたことを特徴とする自動二輪車の車体フレーム。 - 前記リヤアームブラケットは、
フートレストブラケット取付ボス部を有することを特徴とする請求項1記載の自動二輪車の車体フレーム。
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