JP3806587B2 - 舵取装置の取付構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車の舵取装置に関する。特に、舵取装置を車体に取り付けるための取付構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車の舵取装置として、例えばラックアンドピニオン式の舵取装置が知られている。この種の舵取装置では、ステアリングホイールの操作に連動してピニオンが回転し、これに噛み合うラック軸が軸方向に移動して、操向車輪が操向される。
図3は、従来の舵取装置1aの取付構造を示す一部断側面図である。ラック軸2は、ハウジング27内を軸方向に移動可能に挿通されている。ハウジング27内には、受け面28aでボールジョイント3を受け止めることにより、ラック軸2の移動範囲を規制するためのストッパ28が備えられている。ストッパ28の外周面28cおよびハウジング27の内周面27cには、対向する一対のサークリップ溝29、30が形成されていて、一対のサークリップ溝29、30間にサークリップ31を嵌め入れることにより、ストッパ28がハウジング27内の所定位置に固定されている。
【0003】
ハウジング27の外周面27bには、サークリップ溝30とハウジング27の外部とを連通し、周方向に延びるスリットからなるサークリップ挿通孔32が形成されている。サークリップ31は、このサークリップ挿通孔32を通して一対のサークリップ溝29、30間に嵌め入れられる。
しかし、サークリップ31を装着した後、このサークリップ挿通孔32からハウジング27内に水や異物が侵入するおそれがある。そこで、従来の舵取装置1aでは、ボールジョイント3やタイロッド4などを覆うブーツ5の一端5aでサークリップ挿通孔32を覆って、リング7によりブーツ5の一端5aを締め付けることにより、サークリップ挿通孔32からの水や異物の侵入を防止していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
通常、ブーツ5の一端5aは、ハウジング27の一端27a近傍に締め付けられる。したがって、サークリップ31は、ハウジング27の一端27a近傍に設けなければならない。
また、ラック軸2のストローク量を確保しつつ、ストッパ28の受け面28aによりボールジョイント3を受けるためには、ハウジング27内にボールジョイント3が入るようになっていなければならない。
【0005】
したがって、ストッパ28には、ボールジョイント3を受ける受け面28aから、サークリップ31を取り付けるための筒部32が突出した特殊な形状となり、ストッパ28のコストが高くなってしまうという問題があった。
ところで、ハウジング27を弾性部材33を介してブラケット24に取り付ける際、弾性部材33をハウジング27の外周面27bに位置決めするのが困難であるという問題があった。
【0006】
本発明は、かかる背景のもとでなされたもので、サークリップ挿通孔からの水や異物の侵入を防止でき、且つ弾性部材の位置決めが容易な舵取装置の取付構造を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
上記目的を達成するための請求項1記載の発明は、パワーシリンダを含む筒状のハウジングを弾性部材を介してブラケットに取り付ける舵取装置の取付構造において、上記ハウジングの外周面に、ハウジングの内周面のサークリップ溝にサークリップを導入するためのサークリップ挿通孔を設けており、上記ハウジングの外周面において、上記サークリップ挿通孔を軸方向に挟んだ両側に一対の凹凸嵌合部を設けて、各凹凸嵌合部を上記弾性部材の内周面の対応する部分に凹凸嵌合させてあり、上記凹凸嵌合部は、上記ハウジングの周方向に延びる環状溝または環状突起を含むことを特徴とする舵取装置の取付構造である。
【0008】
この構成によれば、ハウジングの外周面にサークリップ挿通孔を軸方向に挟んで形成された一対の凹凸嵌合部により、サークリップ挿通孔からの水や異物の侵入を防止できる。また、弾性部材をハウジングに取り付ける際、対応する凹凸嵌合部を嵌め合わせるだけで容易に位置決めできる。
また、請求項2記載の発明は、上記サークリップは、上記ハウジング内を挿通する摺動軸の移動範囲を規制するストッパをハウジングに固定することを特徴とする請求項1記載の舵取装置の取付構造である。
【0009】
この構成によれば、ブラケット取付位置のハウジングの内周面に取り付けられたサークリップにより、ストッパが固定される。したがって、図3に示す従来の舵取装置1aのように、ハウジング27の一端27a近傍にサークリップ31を取り付けるために筒部32を設ける必要がないので、ストッパを簡単な形状にすることができ、ストッパのコストを低くすることができる。
また、請求項3記載の発明は、上記各凹凸嵌合部に対して、上記弾性部材の対応する部分が締め代を持って嵌合することを特徴とする請求項1または2記載の舵取装置の取付構造である。
【0010】
この構成によれば、各凹凸嵌合部を締め代により強く密着させることができる。したがって、ハウジングがしっかりと固定されると共に、サークリップ挿通孔が密閉されるのでサークリップ挿通孔からの水や異物の侵入を確実に防止できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下には、図面を参照して、本発明の実施形態について具体的に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る舵取装置1の取付構造を示す一部断側面図である。図1では、舵取装置1は、例えばラックアンドピニオン式の舵取装置1であって、ステアリングホイールに連動して回転するピニオン(図示せず)と噛み合うラックが形成された摺動軸としてのラック軸2を備えている。ただし、ラック軸2の両端近傍は、それぞれほぼ同様に構成されているので、以下ではラック軸2の一端2a近傍についてのみ説明する。
【0012】
ラック軸2の一端2aには、ボールジョイント3を介してタイロッド4が連結されている。タイロッド4は、ナックルアーム(図示せず)などを介して操向車輪に連動するように連結されている。また、タイロッド4の根元側部分、ボールジョイント3およびラック軸2の突出部分は、ブーツ5によって覆われており、ブーツ5の一端5aは、ラック軸2を収容するハウジング6の一端6a近傍の外周面6bにリング7により締め付けられて固定されている。また、ラック軸2は、ハウジング6内を軸方向に移動可能に支持されている。ステアリングホイールを操作すると、ピニオンが回転し、これに噛み合うラック軸2がその軸方向に移動して、操向車輪が操向される。
【0013】
ハウジング6は、例えば円筒状で、その一端6a近傍の内部には、ラック軸2の一端2aに設けられた止め座金8の当接面8aを受け面9aで受けることによりラック軸2の移動範囲を規制するストッパ9が設けられている。また、ストッパ9の他端面9b側には、この他端面9bに一端面10aが当接されラック軸2を摺動自在に支持するブッシュ10が設けられている。ストッパ9およびブッシュ10の外周面9c、10cは、ハウジング6の内周面6cに対応する形状になっている。
【0014】
ストッパ9は、例えば円筒状で、その挿通孔9dの内径はラック軸2の外径と略一致しており、挿通孔9d内にラック軸2が挿通される。ストッパ9の外周面9cには、円周方向に延びる周溝からなるサークリップ溝11が形成されていて、このサークリップ溝11に対向するハウジング6の内周面6cには、対応するサークリップ溝12が形成されている。一対のサークリップ溝11、12間にサークリップ13を嵌め入れることにより、ストッパ9はハウジング6内の所定位置に固定される。ストッパ9は円筒状の簡単な形状なので、低コストで提供できる。
【0015】
ブッシュ10は、例えば円筒状で、その挿通孔10dの内径はラック軸2の外径と略一致しており、挿通孔10d内にラック軸2が摺動自在に挿通される。ブッシュ10の軸方向の略中央の外周面10cには、段部14が形成されている。ハウジング6の内周面6cにはこの段部14に対応する段部15が形成されていて、ブッシュ10は、この対向する段部14、15およびストッパ9によりハウジング6の所定位置に係止される。
【0016】
また、ブッシュ10の一端面10aには、挿通孔10dに連なる環状の収容凹部16が形成されていて、この収容凹部16にブッシュ10とラック軸2との間を封止するためのオイルシール17が圧入され、保持されている。
ブッシュ10の他端面10b近傍の外周面10cには、例えば周溝18が形成されていて、この周溝18とハウジング6の内周面6cとの間には、例えばブッシュ10とハウジング6との間を封止するためのOリング19が収容されている。
【0017】
28はハウジング6の一部を区画して構成されるパワーシリンダであり、ハウジング6の内周面6cとラック軸2との間を、図示しないピストンとブッシュ10の他端面10bとで仕切って、パワーシリンダ28の一方の油室29が区画されている。Oリング19およびオイルシール17により、油室29内の作動油がハウジング6の外部に漏れるのを防止する。
図2は、舵取装置1の取付構造の要部を拡大した断面図である。図1および図2を参照して、ハウジング6には、サークリップ溝12とハウジング6の外部とを連通し、周方向に延びるスリットからなるサークリップ挿通孔20が形成されていて、サークリップ13は、ハウジング6の外部からサークリップ挿通孔20を通して一対のサークリップ溝11、12間に嵌め入れられる。
【0018】
また、ハウジング6は、車体に固定されるブラケット24により、円筒状の弾性部材23を介して弾力的に保持されている。この弾性部材23は、サークリップ挿通孔20を覆うように、ハウジング6の外周面6bに沿って取り付けられる。ハウジング6の外周面6bには、サークリップ挿通孔20を軸方向に挟んだ両側に、円周方向に延びる周溝からなる環状溝25が形成されている。
弾性部材23の内周面23aには、環状溝25に対向する環状突起26が形成されている。凹凸嵌合部としての環状溝25および環状突起26は、所定の締め代を持って嵌合するように形成されていて、弾性部材23がブラケット24とハウジング6との間で弾性的に圧縮されることにより、環状突起26が環状溝25の内周面に強く密着するようになっている。
【0019】
環状溝25は、ハウジング6の外周面6bにサークリップ挿通孔20を軸方向に挟んで形成されて、環状突起26と嵌合しているので、サークリップ挿通孔20からの水や異物の侵入を防止できる。また、弾性部材23をハウジング6に取り付ける際、対応する環状溝25および環状突起26を嵌め合わせるだけで容易に位置決めできる。
特に、環状突起26および環状溝25は、所定の締め代を持って嵌合されているのでより強く密着させることができる。したがって、ハウジング6がしっかりと固定されると共に、サークリップ挿通孔20が密閉されるのでサークリップ挿通孔20からの水や異物の侵入を確実に防止できる。
【0020】
本発明は、以上の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。例えば、環状溝25を弾性部材23の内周面23aに、環状突起26をハウジング6の外周面6bに設けてもよい。また、環状溝25および環状突起26は、2対に限らず3対以上設けられていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る舵取装置の取付構造を示す一部断側面図である。
【図2】舵取装置の取付構造の要部を拡大した断面図である。
【図3】従来の舵取装置の取付構造を示す一部断側面図である。
【符号の説明】
1 舵取装置
2 ラック軸(摺動軸)
6 ハウジング
6b 外周面
6c 内周面
9 ストッパ
12 サークリップ溝
13 サークリップ
20 サークリップ挿通孔
23 弾性部材
23a 内周面
24 ブラケット
25 環状溝
26 環状突起
28 パワーシリンダ

Claims (3)

  1. パワーシリンダを含む筒状のハウジングを弾性部材を介してブラケットに取り付ける舵取装置の取付構造において、
    上記ハウジングの外周面に、ハウジングの内周面のサークリップ溝にサークリップを導入するためのサークリップ挿通孔を設けており、
    上記ハウジングの外周面において、上記サークリップ挿通孔を軸方向に挟んだ両側に一対の凹凸嵌合部を設けて、各凹凸嵌合部を上記弾性部材の内周面の対応する部分に凹凸嵌合させてあり、
    上記凹凸嵌合部は、上記ハウジングの周方向に延びる環状溝または環状突起を含むことを特徴とする舵取装置の取付構造。
  2. 上記サークリップは、上記ハウジング内を挿通する摺動軸の移動範囲を規制するストッパをハウジングに固定することを特徴とする請求項1記載の舵取装置の取付構造。
  3. 上記各凹凸嵌合部に対して、上記弾性部材の対応する部分が締め代を持って嵌合することを特徴とする請求項1または2記載の舵取装置の取付構造。
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