JP3806511B2 - 農業用マルチフィルム下の土壌乾燥防止方法 - Google Patents
農業用マルチフィルム下の土壌乾燥防止方法Info
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、農業用マルチフィルム下の土壌乾燥防止方法に関し、詳しくは、1列以上の栽培植物の植生部位を有する畦上に被覆しても、被覆下の土壌中の特に乾燥し易い部位に雨水や散水された水を徐々に取り込んで、該フィルム下の土壌の乾燥を効果的に防止することのできる農業用マルチフィルム下の土壌乾燥防止方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、農作物の栽培には、地温を上昇させて農作物の育成を図る目的で、畦に農業用マルチフィルムを被覆し、該フィルムに開設した植生孔に臨む畦面に農作物を植生したマルチ栽培が広く行われている。
【0003】
ところで、かかるマルチ栽培では、畦面に被覆したマルチフィルム上に降り注ぐ雨水や散水された水は、大部分がマルチフィルムの表面を伝わって畦の両側のマルチフィルムが敷設されていない土面に流れ去ってしまう。このため、マルチフィルム下の土壌には適度な給水が行われ難く、マルチフィルム下の土壌への給水は上記植生孔を通って浸入するわずかな水に依存しているのが実情である。
【0004】
このようにマルチフィルム下の土壌への適度な給水が行われ難いという問題は、やがて畦の土壌中に乾燥部位を形成してしまう問題を惹き起こす。
【0005】
すなわち、例えば比較的広い面積を有する畦面に農作物を1列に植生したり、畦面に互いに間隔をおいて農作物を2列に植生してマルチ栽培を行う場合、それら植生部位の片側又は両側の畦面は、広い範囲に亘ってマルチフィルムによって完全に遮蔽されているために、これらの部位に位置する土壌には水が行き渡り難くなる。マルチフィルムは畦の土壌内に保水されている水分の蒸発を防止する機能を果たすものの、この土壌内に保水されている水分は農作物の成長に伴って徐々に該農作物に奪い取られていくため、水が行き渡り難い上記植生部位の片側又は両側に位置する土壌からはやがて水分がなくなり、畦の土壌中に乾燥部位を形成させてしまう。また、マルチフィルムは一方で地熱の放出を防止する機能をも果たしているため、かかる土壌中の乾燥部位の存在は、季節によっては地温を過度に上昇させ、農作物の育成に非常に悪影響を及ぼす結果となる。
【0006】
なお、特公昭39−29142号公報には、畦面に被覆したマルチフィルムの上面に農作物を挟むように畦に沿って遮水壁を設けると共に、該遮水壁間のフィルムに接合部を設け、該接合部の裂け目を利用して農作物を植生し、遮水壁間に貯溜された水を上記接合部の裂け目からフィルム下の土壌に供給する技術が提案されているが、この技術は農作物の植生部位に水を供給するだけであるため、畦における土壌中に乾燥部位が形成されてしまうことを防止することができるものではなく、ましてや、マルチフィルム上にかかる遮水壁のような堰部材を設けることはフィルムの製造工程を煩雑化させ、コストの増大化を招く原因となり好ましいものではない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来事情に鑑みなされたもので、マルチフィルム下の土壌中における乾燥を生じ易い部位の乾燥を確実且つ安価に防止することができる農業用マルチフィルム下の土壌乾燥防止方法を提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明に係る農業用マルチフィルム下の土壌乾燥防止方法の第一は、畦の長手方向に沿って形成される少なくとも1列の栽培植物の植生部位に対応する植生領域と、上記畦における植生部位の片側又は両側に位置する土壌乾燥部位に対応する通水領域とをそれぞれフィルムの長手方向に沿って有しており、且つ上記通水領域に複数の小孔又はスリットを設けてなる農業用マルチフィルムを用意し、該フィルムを畦上に被覆した後、該フィルムの通水領域を上面から押圧して畦面と共に凹ませることにより、該通水領域に畦の長手方向に沿って延びる1〜10cmの深さの長尺状水溜部を形成し、該長尺状水溜部に前記フィルムとは別に形成された灌水用チューブを配設し、灌水用チューブから排出された水が前記長尺状水溜部に貯留し、次いで前記小孔又はスリットを介して畦面の土壌乾燥部位に供給されることを特徴とする。
【0013】
また、上記課題を解決する本発明に係る農業用マルチフィルム下の土壌乾燥防止方法の第二は、畦の長手方向に沿って形成される少なくとも1列の栽培植物の植生部位の片側又は両側に位置する土壌乾燥部位を上方から押圧して畦の長手方向に沿って延びる長尺状凹部を形成しておき、上記植生部位に対応する植生領域と、上記土壌乾燥部位に対応する通水領域とをそれぞれフィルムの長手方向に沿って有しており、且つ上記通水領域に複数の小孔又はスリットを設けてなる農業用マルチフィルムを用意し、該フィルムの通水領域を上記長尺状凹部に対応させて畦上に被覆した後、該フィルムの通水領域を上面から押圧して上記長尺状凹部と密着した1〜10cmの深さの長尺状水溜部を形成し、該長尺状水溜部に前記フィルムとは別に形成された灌水用チューブを配設し、灌水用チューブから排出された水が前記長尺状水溜部に貯留し、次いで前記小孔又はスリットを介して畦の土壌乾燥部位に供給されることを特徴とする。
【0015】
また、第一及び第二の方法において、通水領域はフィルムの長手方向に沿って20cm以上の幅を有することことも好ましい態様である。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は本発明に係る農業用マルチフィルムを畦に被覆した状態を示す断面図である。この実施の形態では、畦の長手方向に沿って2列の栽培植物の植生部位を形成した場合について説明する。
【0023】
図中、1は農業用マルチフィルムであり、このフィルム1は、畦Aの長手方向に沿って設けられた2列の栽培植物Bの植生部位にそれぞれ対応するように、該フィルム1の長手方向に沿って2列の栽培植物Bの植生領域P1 ,P2 がそれぞれ形成されている。
【0024】
2は栽培植物Bを畦Aに植生するための植生孔であり、フィルム1の上記植生領域P1 ,P2 にそれぞれ開設され、各植生領域P1 ,P2 において畦Aの長手方向に沿って所定の間隔をおいて点在している。この植生孔2は、フィルム1を畦Aの表面に被覆する前に、予めその植生領域P1 ,P2 に形成しておいてもよいし、フィルム1を畦Aの表面に被覆した後に、その植生領域P1 ,P2 に適当な用具を使用して形成してもよい。
【0025】
また、図中、Wはフィルム1の通水領域であり、該領域Wには堰部材等のフィルム1表面に突出する部材は何ら形成されておらず、上記植生領域P1 ,P2 と同様にフィルム1の長手方向に沿って延在している。
【0026】
この通水領域Wは、フィルム1が畦A上に被覆された際に、畦Aの土壌乾燥部位aに対応するように設けられる。この土壌乾燥部位aとは、畦A上にフィルム1が被覆されることにより植生孔2や畦Aの側方からの水も行き渡り難いことにより、やがて土壌中の水分が失われ易い部位であり、例えば比較的広い面積を有する畦面に栽培植物を1列に植生したり、畦面に互いに間隔をおいて栽培植物を2列、または3列以上に植生してマルチ栽培を行う場合、それら植生部位の片側又は両側の土壌にある程度の広さを持って位置する。従って、フィルム1の長手方向における通水領域Wの幅は、土壌の乾燥が発生し易い範囲に対応して20cm以上とすることが好ましい。
【0027】
具体例を挙げると、スイカのマルチ栽培の場合、畦A上面の幅が約150cmであるのに対し、スイカの苗の植生領域Pは該畦Aの側縁から約10cmの幅に1列に植生する。従って、この1列からなる植生領域Pの片側のフィルム1下の土壌には、約140cmの比較的広い幅に亘って水が行き渡り難い土壌乾燥部位aが形成される。この場合にフィルム1の通水領域Wは、この約140cmの幅に亘ってフィルム1の長手方向に沿って形成されることになる。
【0028】
この実施の形態に示す畦Aにおいては、互いに間隔をおいて栽培植物Bが2列に植生されている列の間の土壌中に乾燥部位aが位置して存在している。従って、この実施の形態に示すフィルム1では、通水領域Wは該乾燥部位aに対応するようにフィルム1の植生領域P1 ,P2 の列間に位置している。
【0029】
そして、この通水領域Wには複数の小孔3が形成されており、該小孔3を通ってフィルム1の上面から下面へ水が透過できるようになっている。また、この小孔3に代えて線状のスリット(図示せず)を形成して同様の機能を得るようにしてもよい。
【0030】
本発明に係る農業用マルチフィルム1は、このように土壌乾燥部位aに対応して、植生領域P1 ,P2 の列間に複数の小孔3又はスリットを設けた通水領域Wを有しており、これによりフィルム1下の上記土壌乾燥部位aにもフィルム1の上方からの水の供給を可能として、該土壌乾燥部位aの乾燥を防ぐことができるようにしている。
【0031】
小孔3の場合には、その直径は0.05mm〜1mmであることが好ましい。これよりも小さすぎるとフィルム1下面への水の透過が満足に行われなくなるばかりでなく、加工も煩雑となる。また、大きすぎると通水領域Wにおける水の透過量が多くなりすぎ、該通水領域Wにおいて後述する水の貯溜機能が十分に果たせなくなるばかりでなく、かえって土壌中の水分の蒸発を招き易くなり、そして特に何よりも雑草の発生を招き易くなるので好ましくない。線状のスリットとする場合には、上記小孔3の場合と同様の理由から、その長さは1mm〜10mmであることが好ましい。
【0032】
通水領域Wにおける小孔3やスリットの個数は特に限定されないが、1〜1000ケ/100cm2 が好ましい。これ未満では通水機能が不十分であり、これを越えるとフィルム強度が低下して破損し易くなるので好ましくない。
【0033】
かかる小孔3やスリットは、上記個数範囲を満たす限りにおいて、通水領域Wの全域に亘って形成してもよいし、通水領域Wの長手方向に沿って任意幅の1列又は2列以上の列状に形成するものでもよい。このように小孔3やスリットを通水領域Wの長手方向に沿って列状に形成した場合でも、該小孔3やスリットを透過した水はフィルム1下の土壌中に畦Aの幅方向に拡がりながら浸透していくため、結果的には通水領域Wの幅方向に亘って全体的に水が供給され、該通水領域W下の土壌乾燥部位aの乾燥を防ぐことができる。
【0034】
かかる農業用マルチフィルム1は、塩化ビニル系樹脂やポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体のようなポリオレフィン系樹脂等の不透水性の各種熱可塑性合成樹脂を用い、これを公知の方法によりフィルム状に成型することによって得ることができる。
【0035】
また、上記フィルム1は単層構成であっても多層構成であってもよい。
【0036】
更に、使用目的によって着色剤、安定剤、無滴剤等を含有することができる。特に無滴剤を含有することで、フィルム1における上記通水領域Wにおいて、水の通水性がスムーズに発揮されるようになるので好ましい。無滴剤としては、農業用被覆フィルムに一般的に使用される所謂界面活性剤、例えばグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられ、これを上記樹脂中に0.3〜1.0wt%程度の適量を添加する。
【0037】
また、フィルム1の厚みは5〜50μ、好ましくは10〜30μである。
【0038】
かかる農業用マルチフィルム1は、その植生領域P1 ,P2 を畦Aにおける栽培植物Bの植生部位に、また通水領域Wを畦Aにおける土壌乾燥部位aにそれぞれ対応させて該畦A上に被覆して使用する。これにより該フィルム1上に注がれる雨水や散水された水は、通水領域Wに形成された小孔3又はスリットからフィルム1下の土壌に透過する。このため雨水や散水された水の透過によって経時的に該通水領域W下の土壌が締まって徐々に沈んでいき、やがて該通水領域Wも凹んでくるようになり、水がこの通水領域Wに形成される凹みに貯溜されるようになる。特にフィルム1の通水領域W上に灌水用のチューブを配設して任意に灌水を行うマルチ栽培の場合には、上記作用が顕著である。従って、畦A上へのフィルム1の被覆時に、該フィルム1の通水領域Wには必ずしも水を貯溜させるための凹みを形成させる必要はないが、以下に説明するようにフィルム1に積極的に水を貯溜させるための凹み(長尺状水溜部4)を形成させるようにすれば、フィルム1下の土壌への水の供給効果が高く好ましい。
【0039】
以下、本発明に係る農業用マルチフィルム下の土壌乾燥防止方法について説明する。
【0040】
まず、前記構成を備えた農業用マルチフィルム1を用意し、畦Aにおける栽培植物Bの植生部位に該フィルム1の植生領域P1 ,P2 が、また、畦Aにおける土壌乾燥部位aに該フィルム1の通水領域Wがそれぞれ対応するように、整地された畦A上に該フィルム1を被覆した後、フィルム1の上記通水領域Wを上面から適当な押え具を用いて押圧することにより畦面(畦Aの表面)と共に凹ませる。これにより、図1に示すように、フィルム1の通水領域Wにはその裏面と畦面とが密着した状態の凹みが形成され、この凹みにより上記通水領域Wに畦Aに沿って延びる長尺状水溜部4を形成する(第一の方法)。
【0041】
この長尺状水溜部4は、フィルム1の通水領域Wに、該フィルム1の上方から降り注ぐ雨水や散水された水を貯溜する機能を果たすもので、その貯溜水を通水領域Wに形成されている小孔3又はスリットから該通水領域W下面の土壌中の乾燥部位aに徐々に供給することができるようにし、該部位aの土壌の乾燥を防止するものである。
【0042】
また、長尺状水溜部4は、上述のように通水領域Wの下面と畦Aの土壌とが密着していることが好ましく、このように密着していることによって、長尺状水溜部4に貯溜された水は、土壌表面の親水力並びに土壌の毛細作用を利用して長尺状水溜部4から小孔3又はスリットを通って畦Aの土壌内に移動する作用をなすことができる。
【0043】
この長尺状水溜部4は、フィルム1の通水領域W上面から畦面と共に押圧して凹ませることによって形成されるため、該フィルム1自体には水を貯溜させるために遮水壁のような特別な堰部材を設ける必要がない。従って、フィルム1自体の製造コストの増大化を招くこともない。
【0044】
この長尺状水溜部4の深さは、1〜10cmとする。これよりも浅いと、上述したように経時的には徐々に凹みが深くなるが、長尺状水溜部4における貯水能力が不足し早期において十分に水をフィルム1下に供給し難い。また、これよりも深いと該長尺状水溜部4の形成時にフィルム1が破れ易くなるので好ましくない。
【0045】
また、長尺状水溜部4は、フィルム1の通水領域Wの幅方向全域に亘る幅広状の1本の凹みによって形成する図示の例に限らず、該通水領域Wの幅方向内に納まる任意の幅狭の1本の凹みによって形成するようにしてもよく、更に、上記通水領域Wの幅方向に亘って2本以上の複数本に分けて凹みを設けることによって、畦Aの長手方向に沿って複数本の長尺状水溜部4・・を形成するようにしてもよい。これらは畦Aにおける土壌乾燥部位aの広さによって適宜選択することができる。
【0046】
更に、前記構成を備えた農業用マルチフィルム1を用いて上記長尺状水溜部4を形成するには、上述した方法の他に、該フィルム1を畦A上に被覆するに際し、畦Aの畦面における土壌乾燥部位a、すなわち図示例では2列の栽培植物Bの植生部位の間を、上方から適当な押え具を用いて押圧して畦Aに沿って延びる長尺状の凹部を予め形成しておき、該凹部上に上記フィルム1の通水領域Wを対応させてフィルム1を畦A上に被覆し、さらにその後に、該フィルム1の通水領域Wをその上面から押圧することで、該通水領域Wの下面を上記凹部の表面と密着させることによって長尺状水溜部4を形成するようにしても同様の機能を果たすことができる(第二の方法)。
【0047】
この方法においても、通水領域Wの幅方向内に納まる任意の幅狭の1本の長尺状の凹みによって長尺状水溜部4を形成するようにしてもよいし、畦Aに沿って延びる長尺状の凹部を予め複数本形成しておくことによって、通水領域W内の幅方向に亘って畦Aの長手方向に沿う複数本の長尺状水溜部4・・を形成するようにしてもよいことも上記と同様である。
【0048】
また、以上説明した第一及び第二の方法は、予め複数の小孔3又はスリットを形成した通水領域Wを有する農業用マルチフィルムを用いた場合であるが、これら小孔3又はスリットが予め形成されていない農業用マルチフィルムを用いることもでき、これによっても上記第一及び第二の方法と全く同一の機能を果たすことができる。
【0049】
すなわち、畦Aの長手方向に沿って形成される2列の栽培植物Bの植生部位に対応する植生領域P1 ,P2 を長手方向に沿って有するマルチフィルム1を、畦A上に被覆した後に、畦Aの上記植生部位の間に位置する土壌乾燥部位aに対応するフィルム1の植生領域P1 ,P2 の列間を、その上面から適当な押え具を用いて押圧して畦面と共に凹ませ、これによりまず上記植生領域P1 ,P2 の列間に畦Aに沿って延びる長尺状水溜部4を形成しておき、該長尺状水溜部4の形成後に、適当な穴あけ具等を用いて該長尺状水溜部4の底面又は内面全面に複数の小孔3又はスリットを設けるようにして、結果としてフィルム1の植生領域P1 ,P2 の列間に複数の小孔3又はスリットを備えた上記と同様の長尺状水溜部4を形成するようにすることもできる(第三の方法)。
【0050】
この方法においても長尺状水溜部4を形成するには、上記第三の方法の他に、フィルム1を畦A上に被覆するに際し、畦Aの畦面における土壌乾燥部位a、すなわち図示例における2列の栽培植物Bの植生部位の間を、上方から適当な押え具を用いて押圧して畦Aに沿って延びる長尺状の凹部を予め形成しておき、畦Aの長手方向に沿って形成される2列の栽培植物Bの植生部位に対応する植生領域P1 ,P2 を長手方向に沿って有するマルチフィルム1を、該凹部上に上記フィルム1の植生領域P1 ,P2 の列間を対応させて畦A上に被覆し、さらにその後に、上記フィルム1の植生領域P1 ,P2 の列間をその上面から押圧することで、該フィルム1の植生領域P1 ,P2 の列間の下面を上記凹部の表面と密着させることによって長尺状水溜部4を形成するようにし、該長尺状水溜部4の形成後に、適当な穴あけ具等を用いて該長尺状水溜部4の底面又は内面全面に複数の小孔3又はスリットを設けるようにして、結果としてフィルム1の植生領域P1 ,P2 の列間に複数の小孔3又はスリットを備えた長尺状水溜部4を形成するようにすることもできる(第四の方法)。
【0051】
これら第三及び第四の方法によれば、小孔3又はスリットをフィルム1を畦a上に被覆した後に現場で加工することになるため、これら小孔3又はスリットが予め加工してあるフィルムを使用する必要がなくなる。
【0052】
また、これら第三及び第四の方法によっても、長尺状水溜部4は1本に限らず、複数本形成するようにしてもよいことはもちろんである。
【0053】
更に、これら第三及び第四の方法において、畦Aの土壌乾燥部位aに対応するフィルム1上面の領域、すなわちフィルム1の植生領域P1 ,P2 の列間は、該フィルム1の長手方向に沿って20cm以上の幅を有することが好ましく、該領域内に上記長尺状水溜部4が形成されることになる。
【0054】
図2は、以上の第一乃至第四の方法において、特にビニルハウスやトンネル等内でマルチ栽培を行う場合に好ましい実施の形態を示す斜視図である。図2において図1と同一構成は同一符号を付してある。
【0055】
この実施の形態に示す方法は、畦A上に被覆したフィルム1に形成された長尺状水溜部4に灌水用チューブ5を配設し、該灌水用チューブ5からの灌水によって上記長尺状水溜部4内に水を供給して貯溜するようにしたものである。
【0056】
すなわち、上記第一の方法では、フィルム1の通水領域Wを上面から押圧して畦面と共に凹ませることにより、上記植生領域P1 ,P2 の列間に畦Aに沿って延びる長尺状水溜部4を形成した後、該長尺状水溜部4内に灌水用チューブ5を配設する。
【0057】
上記第二の方法では、フィルム1の通水領域Wを、予め畦Aに形成しておいた長尺状の凹部に対応させて畦A上に被覆し、該フィルム1の通水領域Wを上面から押圧して上記凹部と密着させて長尺状水溜部4を形成した後、該長尺状水溜部4内に灌水用チューブ5を配設する。
【0058】
また、上記第三の方法では、フィルム1を畦A上に被覆して該フィルム1の植生領域P1 ,P2 の列間を上面から押圧して畦面と共に凹ませることにより上記植生領域P1 ,P2 の列間に畦Aに沿って延びる長尺状水溜部4を形成すると共に、該長尺状水溜部4に複数の小孔3又はスリットを設けた後、該長尺状水溜部4内に灌水用チューブ5を配設する。
【0059】
上記第四の方法では、フィルム1の植生領域P1 ,P2 の列間を、予め畦Aに形成しておいた長尺状の凹部に対応させて畦A上に被覆し、該フィルム1の植生領域P1 ,P2 の列間を上面から押圧して上記凹部と密着させて長尺状水溜部4を形成すると共に、該長尺状水溜部4に複数の小孔3又はスリットを設けた後、該長尺状水溜部4内に灌水用チューブ5を配設する。
【0060】
上記灌水用チューブ5には、その長手方向に沿って複数の開孔6が設けられており、該チューブ5内を流通する水をこの開孔6から吐出させることにより長尺状水溜部4に灌水し、この水を長尺状水溜部4内に貯溜する。従って、降雨による水の供給が望めないビニルハウスやトンネル等内で上記第一〜第四の方法によるマルチ栽培を行う場合に有益である。
【0061】
しかも、灌水用チューブ5からの灌水を行わない非灌水時にも、この灌水用チューブ5が長尺状水溜部4内に配設されていることによって、該長尺状水溜部4に形成されている小孔3又はスリットを塞ぐ役目をなし、フィルム1下の土壌中の水分が不用意に蒸発することを防いで土壌の乾燥を防止することができる利点がある。この場合、灌水用チューブ5からの灌水は、該灌水用チューブ5の開孔6から狭い幅部分に滴下されるので、小孔3又はスリットは、長尺状水溜部4における灌水用チューブ5のほぼ直下のみに形成しておけばよく、このほうがフィルム1下の土壌中の水分の不用意な蒸発を防ぐ上からは好ましい。
【0062】
また、かかる灌水用チューブ5は、ビニルハウスやトンネル等内で上記第一〜第四の方法によるマルチ栽培を行う場合に限らず、露地で上記第一〜第四の方法によるマルチ栽培を行う場合にも好ましく用いることができることはもちろんである。特に露地で上記第一〜第四の方法によるマルチ栽培を行う場合には、灌水用チューブ5からの灌水を行わない非灌水時に、フィルム1下の土壌中の水分が不用意に蒸発することを防いで土壌の乾燥を防止する上記効果が一層顕著に期待できる。
【0063】
更に、長尺状水溜部4を複数本形成した場合、各長尺状水溜部4内にそれぞれ灌水用チューブ5を配設してもよい。
【0064】
以上説明した実施の形態は、いずれも畦に2列の栽培植物の植生部位を設け、農業用マルチフィルムにはその2列の植生部位に対応する2列の植生領域を形成した場合の農業用マルチフィルム及び農業用マルチフィルム下の土壌乾燥防止方法について示したが、これに限定されず、畦に1列又は3列以上の栽培植物の植生部位を設け、農業用マルチフィルムにはその1列又は3列以上の植生部位に対応する植生領域を形成するようにしたものでもよい。その場合、農業用マルチフィルムに形成される通水領域並びに長尺状水溜部は、畦における上記1列又は3列以上の植生部位の片側又は両側に位置する土壌乾燥部位に対応するものとなることはもちろんである。
【0065】
【発明の効果】
本発明によれば、マルチフィルム下の土壌中における乾燥を生じ易い部位の乾燥を確実且つ安価に防止することができる農業用マルチフィルム下の土壌乾燥防止方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態を示す縦断面図
【図2】 水溜部に灌水用チューブを配設した状態を示す斜視断面図
【符号の説明】
A 畦
B 栽培植物
P 植生領域
W 通水領域
a 土壌乾燥部位
1 農業用マルチフィルム
2 植生孔
3 小孔
4 長尺状水溜部
5 灌水用チューブ
6 開孔
Claims (3)
- 畦の長手方向に沿って形成される少なくとも1列の栽培植物の植生部位に対応する植生領域と、上記畦における植生部位の片側又は両側に位置する土壌乾燥部位に対応する通水領域とをそれぞれフィルムの長手方向に沿って有しており、且つ上記通水領域に複数の小孔又はスリットを設けてなる農業用マルチフィルムを用意し、該フィルムを畦上に被覆した後、該フィルムの通水領域を上面から押圧して畦面と共に凹ませることにより、該通水領域に畦の長手方向に沿って延びる1〜10cmの深さの長尺状水溜部を形成し、該長尺状水溜部に前記フィルムとは別に形成された灌水用チューブを配設し、灌水用チューブから排出された水が前記長尺状水溜部に貯留し、次いで前記小孔又はスリットを介して畦面の土壌乾燥部位に供給されることを特徴とする農業用マルチフィルム下の土壌乾燥防止方法。
- 畦の長手方向に沿って形成される少なくとも1列の栽培植物の植生部位の片側又は両側に位置する土壌乾燥部位を上方から押圧して畦の長手方向に沿って延びる長尺状凹部を形成しておき、上記植生部位に対応する植生領域と、上記土壌乾燥部位に対応する通水領域とをそれぞれフィルムの長手方向に沿って有しており、且つ上記通水領域に複数の小孔又はスリットを設けてなる農業用マルチフィルムを用意し、該フィルムの通水領域を上記長尺状凹部に対応させて畦上に被覆した後、該フィルムの通水領域を上面から押圧して上記長尺状凹部と密着した1〜10cmの深さの長尺状水溜部を形成し、該長尺状水溜部に前記フィルムとは別に形成された灌水用チューブを配設し、灌水用チューブから排出された水が前記長尺状水溜部に貯留し、次いで前記小孔又はスリットを介して畦の土壌乾燥部位に供給されることを特徴とする農業用マルチフィルム下の土壌乾燥防止方法。
- 通水領域はフィルムの長手方向に沿って20cm以上の幅を有することを特徴とする請求項1又は2記載の農業用マルチフィルム下の土壌乾燥防止方法。
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