JP3805908B2 - ダンパーディスク組立体 - Google Patents

ダンパーディスク組立体 Download PDF

Info

Publication number
JP3805908B2
JP3805908B2 JP26492098A JP26492098A JP3805908B2 JP 3805908 B2 JP3805908 B2 JP 3805908B2 JP 26492098 A JP26492098 A JP 26492098A JP 26492098 A JP26492098 A JP 26492098A JP 3805908 B2 JP3805908 B2 JP 3805908B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
spring
plate
hub
flange
friction
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP26492098A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2000087999A (ja
Inventor
秀樹 橋本
貴司 原田
啓介 藤岡
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Exedy Corp
Original Assignee
Exedy Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Exedy Corp filed Critical Exedy Corp
Priority to JP26492098A priority Critical patent/JP3805908B2/ja
Publication of JP2000087999A publication Critical patent/JP2000087999A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3805908B2 publication Critical patent/JP3805908B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Images

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ダンパーディスク組立体、特に、ハブとフランジとが別体に形成されたダンパーディスク組立体に関する。
【0002】
【従来の技術】
車輌のクラッチに用いられるクラッチディスク組立体は、フライホイールに連結及び連結解除されるクラッチ機能と、捩り振動を吸収・減衰するためのダンパー機能とを有している。クラッチディスク組立体は、クラッチ連結部と、クラッチ連結部に固定された1対の入力プレートと、入力プレートの内周側に配置されたハブと、ハブと入力プレートとを回転方向に弾性的に連結する弾性部材とを備えている。ここでは、1対の入力プレート、ハブ及び弾性部材によりダンパー機構が構成されている。
【0003】
クラッチ連結部がフライホイールに連結されると、フライホイールからクラッチディスク組立体にトルクが入力される。トルクは弾性部材を介してハブに連結され、さらにトランスミッションから延びるシャフトに出力される。エンジンからのトルク変動がクラッチディスク組立体に入力されると、入力プレートとハブとの間で相対回転が生じ、弾性部材が回転方向に繰り返し圧縮される。クラッチディスク組立体は、入力側プレートとハブとの間に配置され、両部材が相対回転するときに摩擦抵抗を発生するための摩擦機構をさらに備えている。摩擦機構は複数のワッシャーや付勢部材から構成されている。
【0004】
分離ハブ型クラッチディスク組立体は、ハブの従来のフランジをボスから分離してハブフランジ(分離フランジ)にするとともに、ボスとハブフランジを低剛性の弾性部材により回転方向に連結したものである。このクラッチディスク組立体では、入力プレートとハブとの捩り角度が広くなり、さらに2段階の剛性(低剛性・高剛性)が得られる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来の分離ハブ型クラッチディスク組立体では、クラッチプレート及びリテーニングプレートは例えばブッシュを介してハブのボスに芯出しされている。具体的にはクラッチプレートの内周縁に固定された環状のブッシュの内周面がボスの外周面に相対回転可能に当接している。
【0006】
分離フランジは弾性部材によってクラッチプレート及びリテーニングプレートに対して回転方向に弾性的に連結されるとともに、弾性部材によって半径方向にも支持されている。すなわち分離フランジは弾性部材及び両プレートを介してハブのボスに対して半径方向位置決めされている。
以上の構造では、捩り振動が生じるとトーションスプリングは回転方向に繰り返し圧縮され、フランジの窓孔及びクラッチプレート及びリテーニングプレートの支持部に摺動し偏摩耗する。また、長期にわたって使用するとトーションスプリングにへたりが生じる。このような場合には分離フランジは他の部材に対して半径方向に自由に移動ができる状態になる。そのため、クラッチディスク組立体全体のイナーシャが不安定になり、耐久強度が低下してしまう。
【0007】
本発明の目的は、分離型クラッチディスク組立体において分離フランジのハブに対する半径方向位置を正確に保つことにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項に記載のダンパーディスク組立体は、ハブとフランジと1対のプレートと弾性部材とサブプレートと圧縮バネと環状部材とを備えている。ハブはボスを有する。フランジはボスの外周側に所定角度まで相対回転可能に配置されている。フランジは、筒状部と、筒状部から半径方向外方に延びる円板状部とを有する。1対のプレートはフランジの軸方向両側に配置されている。弾性部材は1対のプレートとフランジとを回転方向に弾性的に連結する。サブプレートは、フランジの軸方向片側に配置され、筒状部の外周面に回転自在に半径方向に支持される環状の支持部を有する。圧縮バネはサブプレートとフランジとを回転方向に弾性的に連結する。環状部材は、ボスの外周面に相対回転可能に半径方向に支持される第1支持部と、環状の支持部の外周面を相対回転可能に半径方向に支持する第2支持部とを有する。
【0011】
請求項に記載のダンパーディスク組立体では、環状部は第1支持部によってボスの外周面に半径方向に位置決めされている。さらに、環状部材は第2支持部によってサブプレートの環状の支持部を介してフランジの筒状部外周面を支持している。すなわち、フランジはサブプレートと環状部材とを介してハブのボスに半径方向に位置決めされている。このようにフランジがボスに対して半径方向位置決めされているため、弾性部材等に摩耗等が生じても、フランジのハブに対する半径方向位置が保たれる。
【0012】
請求項に記載のダンパーディスク組立体では、請求項において、環状部材は、環状部と、前記環状部の内周部から第1軸方向側に延びる筒状の第1支持部と、環状部の外周部から第2軸方向側に延びる筒状の第2支持部とを有している。
請求項に記載のダンパーディスク組立体では、請求項1又は2において、環状部材は1対のプレートの一方に対して半径方向に移動不能に係合しており、それにより1対のプレートの一方は環状部材を介して前記ボスに相対回転可能に半径方向に支持されている。
【0015】
【発明の実施の形態】
第1実施形態
図1〜図5に、本発明の一実施形態としてのクラッチディスク組立体1を示す。クラッチディスク組立体1は車輌のクラッチに用いられる。図3〜図5のクラッチディスク組立体の左側には図示しないエンジン及びフライホイールが配置され、図3〜図5の右側には図示しないトランスミッションが配置されている。以後、図3〜図5の左側を第1軸方向側(エンジン側)と呼び、図3〜図5の右側を第2軸方向側(トランスミッション側)と呼ぶ。各図のO−Oはクラッチディスク組立体1の回転軸線すなわち回転中心であり、図1に示す矢印R1はフライホイール及びクラッチディスク組立体1の回転方向(正側)であり、R2はその反対回転方向(負側)である。
【0016】
概略説明
クラッチディスク組立体1は、図6の機械回路図に示すように、主に、入力回転体2と、ハブ3(出力回転体)と、その中間に配置されたダンパー機構4とから構成されている。ダンパー機構4は、さらに、捩り角度の2段目特性をもたらす第1ダンパー機構5と、捩り特性の1段目の特性をもたらす第2ダンパー機構6とから構成されている。第1ダンパー機構5と第2ダンパー機構6とは間にハブフランジ18(中間プレート)を介して入力回転体2とハブ3との間に直列に作用するように配置されている。
【0017】
第1ダンパー機構5は、第1バネ16やバネ17からなる第1弾性機構7と、ハブフランジ18と入力回転体2とが相対回転するときに摩擦を発生する第1摩擦機構8と、ハブフランジ18と入力回転体2との相対回転角度を規制するための機構であり捩じり角度θ+θだけ入力回転体2とハブフランジ18との相対回転を許容している第1ストッパー11とから構成されている。第1弾性機構7、第1摩擦機構8及び第1ストッパー11はハブフランジ18と入力回転体2との間に並列に作用するように配置されている。
【0018】
第2ダンパー機構6は、主に、第2弾性機構9と、第2摩擦機構10と、第2ストッパー12とから構成されている。第2弾性機構9の第2バネ21は第1弾性機構7の第1バネ16よりバネ定数が小さく設定されている。第2摩擦機構10は第1摩擦機構8で発生する摩擦より小さな摩擦を発生するように設定されている。第2ストッパー12はハブ3とハブフランジ18との相対回転を規制するための機構であり、捩り角度θ1だけハブ3とハブフランジ18との相対回転を許容している。第2弾性機構9,第2摩擦機構10及び第2ストッパー12はハブ3とハブフランジ18との間で並列に作用するように配置されている。
【0019】
詳細説明
次に、クラッチディスク組立体1の各構造について詳細に説明する。
入力回転体2は、クラッチプレート31と、リテーニングプレート32と、クラッチディスク33とから構成されている。クラッチプレート31及びリテーニングプレート32は円板状又は環状のプレート部材であり、互いに対して軸方向に所定距離だけ離れて配置されている。クラッチプレート31は第1軸方向側に配置されており、リテーニングプレート32は第2軸方向側に配置されている。クラッチプレート31とリテーニングプレート32の外周部は円周方向に並んで配置された複数のストップピン40により互いに固定されている。これにより、クラッチプレート31とリテーニングプレート32との軸方向距離が定められ、さらに両プレート31, 32は一体回転する。クラッチプレート31の外周部には、クラッチディスク33のクッショニングプレート41が複数のリベット43により固定されている。クッショニングプレート41の両側に環状の摩擦フェーシング42が固定されている。
【0020】
クラッチプレート31及びリテーニングプレート32には、円周方向に等間隔で複数の第1収容部34が形成されている。第1収容部34は軸方向に僅かに膨らんだ部分であり、円周方向両側に第1支持部35を有している。第1支持部35は円周方向に互いに対向している。さらに、クラッチプレート31及びリテーニングプレート32には、円周方向に等間隔で複数の第2収容部36が形成されている。第2収容部36は各第1収容部34のR1側に隣接して配置されている。第2収容部36は円周方向両側に第2支持部37を有している。各第2収容部36は第1収容部34に対して半径方向及び円周方向に長く形成されている。
【0021】
リテーニングプレート32の外周縁には第2軸方向側に折り曲げられた複数の折り曲げ部51が形成されている。折り曲げ部51はストップピン40に対応して形成されている。折り曲げ部51によりストップピン40周辺及びストップピン40の強度が向上している。このためストップピン40をクラッチプレート31及びリテーニングプレート32に対して最も半径方向外側に配置でき、その結果ストッパートルクを高くできる。さらに折り曲げ部51はリテーニングプレート32の半径方向を長くしないため、従来の同じ強度のものに比べて半径方向のスペースを小さくできる。半径方向のスペースを従来と同様に保つ場合には、ストップピンを従来よりさらに半径方向外方に配置できる。折り曲げ部51は部分的にしか形成されていないため、板金材料を節約できる。
【0022】
ハブフランジ18はクラッチプレート31及びリテーニングプレート32の間すなわち両部材の軸方向間に配置されている。ハブフランジ18は入力回転体2とハブ3との間の中間部材として機能する。ハブフランジ18はプレート31, 32に比べて厚肉の円板状又は環状の部材である。ハブフランジ18には、第1収容部34に対応して第1窓孔57が形成されている。第1窓孔57は第1収容部34に対して形成されている。第1窓孔57の円周方向角度は第1収容部34の第1支持部35間の円周方向角度より小さくなっている。そして第1窓孔57の回転方向中心は第1収容部34の回転方向中心とほぼ一致している。このため、第1窓孔57の円周方向両端と第1収容部34の第1支持部35との間には円周方向両側にそれぞれ捩り角度θ2だけの隙間が確保されている。第1窓孔57内にはバネ17が配置されている。バネ17はコイルスプリングであり、円周方向両端が第1窓孔57の円周方向両端に当接している。この状態で、バネ17の円周方向両端は第1収容部34の第1支持部35に対してそれぞれ捩り角度θ2だけ隙間をあけている。
【0023】
ハブフランジ18には、第2収容部36に対応した位置に第2窓孔56が形成されている。第2窓孔56は半径方向及び円周方向長さが第2収容部36にほぼ一致している。第1バネ16は第2窓孔56内に配置されている。第1バネ16は2組のコイルスプリングが組み合わされてなる弾性部材であり、円周方向両端が第2窓孔56の円周方向両端に当接している。また、第1バネ16の円周方向両端は第2収容部36の第2支持部37に当接している。ハブフランジ18の内周部には、軸方向両側に延びる筒状部59が形成されている。筒状部59には、半径方向内側に延びる複数の内周歯61が形成されている。
【0024】
ハブ3は、プレート31, 32及びハブフランジ18の内周部すなわち各部材の中心孔内に配置された筒状の部材である。ハブ3は主に筒状のボス62から構成されている。ボス62の中心孔には複数のスプライン63が形成されている。このスプライン63がトランスミッションから延びるシャフトのスプラインに係合することで、ハブ3からシャフトに出力が可能となっている。ボス62には半径方向外方に延びるフランジ64が形成されている。この実施形態ではフランジ64の半径方向幅は僅かである。フランジ64には、さらに半径方向外方に延びている複数の外周歯65が形成されている。外周歯65はボス62から半径方向外側に延びるフランジの一部を形成していると考えてもよい。外周歯65はハブフランジ18の筒状部59に対応する半径方向長さを有している。外周歯65は内周歯61の円周方向間に延びており、円周方向両側にそれぞれ所定の捩じり角度θ1だけ隙間を有している。また、外周歯65から見てそのR2側の捩り角度θ1はR1側の捩り角度θ1に比べてやや大きく設定されている。内周歯61及び外周歯65はそれぞれ半径方向先端に向かって円周方向幅が狭くなる形状である。
【0025】
内周歯61と外周歯65は円周方向全体にわたって形成されており、両者の当接可能な面積が増大している。つまり従来とは異なり、歯の一部を省略して低剛性弾性部材配置用の切欠きを形成していない。この結果、内周歯61と外周歯65との接触面積が増大している。すなわち、両部材間での面圧が下がり、摩耗や破損が生じにくくなっている。このため歯の一部を切り欠いたものに対し、省スペースで高トルクの特性を実現できる。
【0026】
次に第2ダンパー機構6について説明する。第2ダンパー機構6は、ハブ3とハブフランジ18との間でトルクを伝達するとともに、捩り振動を吸収・減衰するためのものである。第2ダンパー機構6の第2弾性機構9は主に第2バネ21から構成されている。第2ダンパー機構6の第2摩擦機構10はブッシュ19と、固定プレート20と第2コーンスプリング78とから構成されている。すなわち、第2ダンパー機構6はハブ3とハブフランジ18の係合部である内周歯61及び外周歯65から軸方向にずれた位置にある。より具体的に述べると、第2ダンパー機構6は内周歯61及び外周歯65からトランスミッション側にずれて配置されている。これにより外周歯65と内周歯61の接触面積を充分に確保できる。また、第2ダンパー機構6が内周歯61と外周歯65との間に配置されていないため、従来とは異なり、第2バネ21の掛かり代を充分に確保できる。この結果、スプリングシートを省略でき、そのため第2バネ21の組み付け性が向上している。
【0027】
固定プレート20は、第2ダンパー機構6において入力側の部材として機能する。すなわち、固定プレート20はハブフランジ18からのトルクが入力される部材である。固定プレート20は、ハブフランジ18の内周部とリテーニングプレート32の内周部との間に配置された板金製の薄肉プレート部材である。固定プレート20は、図8〜11に示すように、第1円板状部71と、第1円板状部71の内周縁から第2軸方向(トランスミッション側)に延びる筒状部72と、筒状部72からさらに半径方向内側に延びる第2円板状部73とから構成されている。
【0028】
固定プレート20の第1円板状部71とハブフランジ18との間にはスペーサ80が配置されている。スペーサ80は、ハブフランジ18に固定プレート20を回転方向に連結するとともに、固定プレート20からハブフランジ18側へ作用する力を受ける役割を有している。スペーサ80は環状の樹脂製部材であり、軽量化のために多数の肉抜き部を有している。スペーサ80は、環状部81と、環状部81から半径方向外側に突出する複数の突出部82とを有している。突出部82には、外周縁に2つの切欠き83が形成されている。また、突出部82から第1軸方向側に延び、ハブフランジ18に形成された係合孔58に挿入された突起84が延びている。突起84は、係合孔58に対して半径方向には僅かに移動可能にかつ回転方向には相対移動不能に係合している。
【0029】
固定プレート20の第1円板状部71には、円周方向に等間隔で半径方向外方に突出する複数の突出部74が形成されている。この突出部74は、スペーサ80の突出部82に対応して形成されている。固定プレート20の突出部74には、スペーサ80の突出部82に形成された切欠き83に係合する爪75が形成されている。以上に述べた構造において、固定プレート20はスペーサ80を介してハブフランジ18に相対回転不能となるようにすなわちハブフランジ18からトルクが入力され得るようになっている。また、固定プレート20はスペーサ80を介してハブフランジ18に第1軸方向側を支持されるようになっている。なお、固定プレート20はスペーサ80及びハブフランジ18から第2軸方向側には移動可能となっている。
【0030】
次に、固定プレート20とリテーニングプレート32との間に形成された第1摩擦機構8について説明する。第1摩擦機構8は、第1摩擦ワッシャー48と、第1コーンスプリング49とから構成されている。第1摩擦ワッシャー48は、リテーニングプレート32に対して相対回転不能かつ軸方向に移動自在に係合し、固定プレート20に対して摺動することで摩擦を発生するための摩擦部材である。第1摩擦ワッシャー48は主に環状の樹脂部材からなる。第1摩擦ワッシャー48は樹脂製の環状部85を有している。
【0031】
環状部85において固定プレート20側には摩擦材86がモールド又は接着されている。摩擦材86は第1摩擦ワッシャー48と固定プレート20との間の摩擦係数を高めるための部材であり、環状又は円板状に延びている。環状部85の内周部には、第2軸方向側に延びる複数の回転方向係合部87が形成されている。回転方向係合部87は、リテーニングプレート32の中心孔52(内周縁)に形成された複数の切欠き53内に挿入されている。これにより、第1摩擦ワッシャー48はリテーニングプレート32に対して相対回転不能にかつ軸方向に移動自在に係合している。さらに、環状部85には、外周縁から半径方向外側に延びさらにそこから第2軸方向側に延びる係合部88が形成されている。係合部88は比較的細い形状であり、先端に爪部が形成されている。係合部88はリテーニングプレート32に形成された孔54内に挿入され、爪部がリテーニングプレート32に係合している。係合部88は係合状態で半径方向外方に自らを付勢しており、孔54に圧接している。このためサブアッシー組み付け後にも第1摩擦ワッシャー48はリテーニングプレート32から外れにくい。このように第1摩擦ワッシャー48においてトルクを伝達するための係合部(回転方向係合部87)とリテーニングプレート32に対して部材を仮止めするための係合部(係合部88)とを別々に設け、係合部88を細く撓み可能な形状にしている。係合部88は剛性が低いためサブアッシー時に折れにくい。このため、回転方向係合部87にはサブアッシー組立時に力が作用せず、従来の樹脂製摩擦ワッシャーにおいて半径方向係合部にリテーニングプレートへの係合の爪部を持たせたものに比べても破損しにくい。また、サブアッシー組立時に圧入機が不要になり、設備費が低減できる。
【0032】
第1コーンスプリング49は、第1摩擦ワッシャー48とリテーニングプレート32の内周部との間に配置されており、両部材間で軸方向に圧縮された配置となっている。第1コーンスプリング49は、外周端がリテーニングプレート32に支持され、内周端が第1摩擦ワッシャー48の環状部85に当接している。第1コーンスプリング49の内周側には、複数の切欠き49aが形成されている。この切欠き49aによって複数の突起が内周縁に形成されていると見なしてもよい。切欠き49a内には第1摩擦ワッシャー48の回転方向係合部87の外周側に形成された突起部分が挿入されている。これにより、第1コーンスプリング49は第1摩擦ワッシャー48と相対回転不能に係合している。
【0033】
固定プレート20の第2円板状部73には、円周方向に等間隔で複数の切り起こし部76が形成されている。切り起こし部76は、第2円板状部73の内周側から軸方向に切り起こされた形状であり、第2円板状部73における他の部分に比べて第2軸方向側に配置されている。この切り起こし部76が形成された部分には、第2円板状部73において切欠き部分が形成されている。切欠き部分の円周方向両端には支持部77が形成されている。
【0034】
ブッシュ19は、第2ダンパー機構6において出力側の部材として機能し、ハブ3に相対回転不能に係合している。さらに詳細に説明すると、ブッシュ19は、ハブフランジ18の内周歯61及びハブ3の外周歯65の第2軸方向側で固定プレート20の筒状部72の内周側、さらにはボス62の第2軸方向側部分の外周側の空間に配置された環状の樹脂製部材である。ブッシュ19は、図12〜19に示すように環状部89から主に構成されている。環状部89には、第2軸方向側面に円周方向に等間隔で複数のバネ収容部90が形成されている。バネ収容部90は固定プレート20の切り起こし部76すなわち切欠き部分に対応して形成されている。バネ収容部90はブッシュ19の第2軸方向側面に形成された凹部である。この凹部は図14及び15に示すように断面で円の一部を構成するように滑らかに形成されている。また、各バネ収容部90の半径方向及び円周方向中心には軸方向に貫通する孔が形成されている。さらには、環状部89の内周部には、第2軸方向側に延びる筒状の内周支持部91が形成されている。この内周支持部91を含めたブッシュ19の内周面91aは、ボス62の外周面に当接又は近接している。さらに、ブッシュ19の環状部89に形成された第2軸方向側面89aは固定プレート20の第2円板状部73の第1軸方向側面に当接している。ここでは、ブッシュ19の環状部89と固定プレート20の第2円板状部73との間で第2摩擦機構10が形成されている。
【0035】
各バネ収容部90内には第2バネ21が配置されている。第2バネ21は、第1バネ16やバネ17に対して小型のコイルスプリングであり、バネ定数が小さい。第2バネ21は、バネ収容部90内に配置され、円周方向両端がバネ収容部90の円周方向両端に当接又は近接している。第2バネ21は、バネ収容部90内において、ブッシュ19によって軸方向内側(第1軸方向側)及び内周側を支持されている。
【0036】
第2バネ21の円周方向両端には、固定プレート20の支持部77が回転方向に係合(当接)している。これにより、固定プレート20からのトルクは第2バネ21を介してブッシュ19に伝達されるようになっている。第2バネ21の円周方向端面はバネ収容部90の円周方向端部によって第1軸方向側が全面的に支持されている。また、第2バネ21の円周方向端面は支持部77が半径方向にわたって支持している。このように第2バネ21は円周方向両端の掛かり代が大きくなっている。言い換えると、第2バネ21の円周方向両端において支持される部分の面積が増えている。これは第2バネを従来のハブとハブフランジの間から軸方向にずらした位置に配置することで可能になっている。以上の結果スプリングシートを廃止することができ、部品点数が減っている。
【0037】
また、第2バネ切り起こし部76は第2バネ21の軸方向外側(第2軸方向側)を支持するように配置されている。このようにして、第2バネ21は固定プレート20によって外周側及び軸方向外側を支持されている。
ブッシュ19には、環状部89から第1軸方向側に延びる係合部99が形成されている。係合部99は第2軸方向側に延びる突起であり、ブッシュ19のトルクをハブ3に伝達するための構成である。係合部99は断面が外周歯65間の隙間に合った形状をしており、ハブ3の外周歯65の間に挿入され各外周歯65に対して円周方向に移動不能に係合している。
【0038】
第2コーンスプリング78は第2摩擦機構10において第2円板状部73と環状部89とを軸方向に互いに付勢するための付勢部材である。第2コーンスプリング78は、ハブ3の外周歯65及びハブフランジ18の内周歯61とブッシュ19との軸方向間に配置されている。第2コーンスプリング78は内周部がハブ3のフランジ64に支持され、外周部がブッシュ19の環状部89に当接している。第2コーンスプリング78は軸方向に圧縮された状態であり、ブッシュ19を第2軸方向側に付勢している。この結果、ブッシュ19の環状部89の第2軸方向側面89aと固定プレート20の第2円板状部73の第1軸方向側面とが所定の力で軸方向に互いに付勢されている。第2コーンスプリング78は第1コーンスプリング49に比べて内外径共に小さく、厚みも大幅に小さい。このようにして第2コーンスプリング78は第1コーンスプリング49に対して付勢力が大幅に小さくなっている。第2コーンスプリング78の内周縁には複数の切欠き78aが形成されている。切欠き78aによって内周縁に複数の突起が形成されていると見なしてもよい。前述の係合部99は切欠き78a内を延びている。
【0039】
以上に述べたように、固定プレート20は、第2ダンパー機構6において第2バネ21に係合する入力側の部材及び第2摩擦機構10を構成する部材として、さらには第1摩擦機構8を構成する部材として機能している。以下に、この固定プレート20を用いた利点について説明する。固定プレート20は、前述のように、第2ダンパー機構6において第2バネ21の円周方向両端を支持する支持部材及び第2摩擦機構10を構成する部材として機能している。このように1つの部材で2つの機能を実現しているために部品点数が少なくなる。さらには、固定プレート20は第2バネ21の軸方向外側をも支持している。さらには、固定プレート20は、捩り特性の1段目で摺動して摩擦を発生する第2摩擦機構10と、捩り特性の2段目で摺動して摩擦を発生する第1摩擦機構8の両方の摩擦面を構成している。このように1つの部材で両摩擦面を形成しているため、両摩擦面の摩擦特性を調整・管理するのが容易になっている。具体的には、従来のようにボスのフランジ及びハブフランジの両方の摺動面を管理する必要がなくなる。特に、固定プレート20は従来のハブやハブフランジとは異なり小型で単純な構成であるため摩擦面の管理が容易である。以上に述べた固定プレート20は板金製であり、プレス加工により所望の形状を容易に実現でき、安価に実現可能である。
【0040】
次に、ブッシュ19の利点について説明する。ブッシュ19は樹脂製であり所望の形状を容易に実現できる。特に、樹脂製であるため係合部99を一体成形でき、製造が容易である。係合部99はハブ3の外周歯65の円周方向間に係合しているため、ハブ3に係合のための特別な孔や凹部等を形成する必要がない。このため、ハブ3の加工工程が増えることはない。ブッシュ19は、第2ダンパー機構6の出力側の部材として機能し、第2バネ21の円周方向両側に係合するとともに第2摩擦機構10の一部を構成している。このように単一の部材でトルク伝達と摩擦発生部を実現しているため、全体の部品点数が少なくなる。
【0041】
第2摩擦機構10において摩擦面同士を軸方向に付勢する部材としての第2コーンスプリング78はハブ3のフランジ64に支持されている。このように第2コーンスプリング78が従来のようにリテーニングプレートに支持されているのでなく他の部材によって支持されることにより、1段目の特性におけるヒステリシストルクが安定する。このため1段目のヒステリシストルクの調整が容易である。従来は第1付勢部材と第2付勢部材の両方がリテーニングプレートにより支持されていたため、第1弾性部材の付勢力によってリテーニングプレートの変形が起こる可能性があり、そのため第2付勢部材の姿勢が変化し第2付勢部材の付勢力が安定しないという問題があった。この実施形態では、第1コーンスプリング49の付勢力と第2コーンスプリング78の付勢力は固定プレート20に対して軸方向に互いに反対に働いている。すなわち、第1コーンスプリング49は第1摩擦ワッシャー48を介して固定プレート20を第1軸方向側に付勢し、第2コーンスプリング78はブッシュ19を介して固定プレート20を第2軸方向側に付勢している。
【0042】
第2ストッパー12はトルクの大きな領域では第2ダンパー機構6の各部材にトルクを作用させない構造である。捩じり特性の2段目範囲ではブッシュ19,第2バネ21及び固定プレート20にはトルクが作用しない。このため各部材の強度を極端に大きくする必要がなく、設計が容易である。
次に、クラッチプレートの内周側に設けられたブッシュ93について説明する。ブッシュ93はクラッチプレート31の内周部に設けられ、ハブ3の外周面、フランジ64の端面、外周歯65,ハブフランジ18の筒状部59及び内周歯61に当接する部材である。ブッシュ93の機能としては、摩擦を発生して回転方向の振動を減衰する、クラッチプレート31をハブ3に対して半径方向に位置決めする、ハブフランジ18をハブ3に対して半径方向に位置決めするなどがある。ブッシュ93は、図20〜22に示すように、主に、樹脂製の環状部94から主に構成されている。環状部94は半径方向に所定の幅を有し軸方向の厚みが薄い円板状の部材である。環状部94はクラッチプレート31の内周部とハブフランジ18の内周部との軸方向間に配置されている。環状部94の第2軸方向側には環状の摩擦部材95がモールド若しくは接着又は単に配置されている。摩擦部材95は環状であり、半径方向に所定の幅を有し軸方向の厚みが薄い円板状の部材である。摩擦部材95は高摩擦係数の例えばゴム系、ガラス系の混紡もしくは含浸成形品や、セラミック等からなる。摩擦部材95はブッシュ93に高摩擦係数の特性をもたらものであり、また材料を選択することで摩擦の大きさを調整できる。
【0043】
図20の平面図で示すように、環状部94及び摩擦部材95は内外径が円形となっている。摩擦部材95は、環状部94の第2軸方向側面に当接するように配置されていると見なしても良いし、環状部94の第2軸方向側面に形成された溝内に配置されていると見なしても良い。すなわち、環状部94の内周縁には第2軸方向側に延びる筒状部96が形成され、外周縁には第2軸方向側に延びる筒状部97が形成されている。筒状部96,97に囲まれた環状の空間が環状部94の溝を構成している。この溝は内外径が円であり、この溝内に摩擦部材95は配置されている。
【0044】
筒状部96はハブ3のフランジ64の第1軸方向側面に当接している。この部分が1段目の捩じり範囲で摺動するようになっている。摩擦部材95は、ハブフランジ18の筒状部59及び内周歯61の第1軸方向側端面に当接している。この部分が2段目の捩じり範囲で摺動するようになっている。摩擦部材95とハブ3の外周歯65の第1軸方向側面との間にはわずかな隙間が確保されている。ハブフランジ18の筒状部59及び内周歯61の第1軸方向側端面は摩擦部材95にのみ軸方向に当接している。
【0045】
摩擦部材95には円周方向に並んだ複数の孔95aが形成されており、この孔95a内に環状部94から突起94aが挿入されている。これにより、環状部94と摩擦部材95の回り止めが実現されている。特に、摩擦部材95は円形であるため、このような回り止めが重要な役割を果たす。従来であれば摩擦部材が円形の場合にはSPCCからなる裏板に接着しても剥離等の強度に関する問題が生じる可能性があった。そのため摩擦部材を四角形状化することで回り止めを図っていた。本願に係る摩擦部材95では、摩擦部材95を円形という簡単な構造に保ったまま、剥離等の問題も解消している。特に、摩擦部材95の孔95aの形成、及び樹脂製環状部94の突起94aの形成はともに容易であり、コスト低減が実現されている。
【0046】
なお、この実施形態では摩擦部材95は環状部94に対して固定されておらず、軸方向に離脱可能である。このため接着等の作業が不要である。ただし、本願発明の構成においても摩擦部材95と環状部94とを接着等していてもよい。
さらには、環状部94には円周方向に並んだ複数の孔94bが形成されている。孔94bは軸方向に延び環状部94の第1軸方向側と第2軸方向側とを連絡しており、摩擦部材95の第1軸方向側面の一部を露出させている。また、クラッチプレート31の内周部には、孔94bに対応して孔13が形成されている。孔13は孔94bより大径で孔94bの周囲にさらに広がっている。このように同一位置に形成された孔94b及び孔13によって摩擦部材95の一部がクラッチディスク組立体1の外部に露出している。このため、摩擦部材95は充分に冷却され、すなわち摩擦部材95はクラッチプレート31側への大気にも放熱し、摩擦部材95の摩擦熱による摩擦特性の変化等が抑えられる。さらに、摩擦部材95の耐久強度が向上し、またハブ3及びハブフランジ18の硬度低下が防止される。さらに突起94aには軸方向に延び貫通する孔94cが形成されている。孔94cは環状部94の第1軸方向側と第2軸方向側とを貫通させている。孔94b,94cはブッシュ93全体の体積を低減しており、これにより樹脂の使用量が減り、コストが低減されている。
【0047】
環状部94の内周縁には、第1軸方向側に延びる筒状部98が形成されている。筒状部96,98は内周面がボス62の外周面に当接している。これにより、クラッチプレート31及びリテーニングプレート32のハブ3に対する半径方向の位置決め(芯出し)が行われている。また、筒状部98の外周面には、クラッチプレート31の内周縁に形成された複数の突起に係合する溝98aが形成されている。これにより、ブッシュ93はクラッチプレート31と一体回転してハブ3のフランジ64、さらにハブフランジ18の筒状部59に摺動可能である。
【0048】
筒状部97には複数の切り欠き97aが形成されている。筒状部97の半径方向内側面は、ハブフランジ18の筒状部59の第1軸方向側外周面に当接している。すなわち、ハブフランジ18はこのブッシュ93の筒状部97によってハブ3及びクラッチプレート31及びリテーニングプレート32に半径方向の位置決めをされている。
【0049】
環状部94の外周縁には第1軸方向に延びる複数の係合部14が形成されている。係合部14は円周方向に等間隔で形成されている。係合部14は爪形状を有しており、クラッチプレート31に形成された孔15に係合している。これにより、ブッシュ93はクラッチプレート31に対して軸方向に仮止めされている。以上に述べたブッシュ93は、ボス62の外周面に当接することでクラッチプレート31をハブ3に対して半径方向の位置決めをし、フランジ64及び筒状部59にそれぞれ当接する摩擦面を有することで1段目と2段目のヒステリシストルクを発生する。このように1つの部材に複数の機能をもたすことで全体の部品点数が減っている。
【0050】
入力回転体2のクラッチディスク33が図示しないフライホイールに押し付けられると、クラッチディスク組立体1にトルクが入力される。トルクは、クラッチプレート31及びリテーニングプレート32から第1バネ16,ハブフランジ18,スペーサ80,固定プレート20,第2バネ21,ブッシュ19の順番で伝達され、最後にハブ3から図示しないシャフトに出力される。
【0051】
エンジンからのトルク変動がクラッチディスク組立体1に入力されると、入力回転体2とハブ3との間で捩り振動すなわち相対回転が生じ、第1バネ16,バネ17及び第2バネ21が回転方向に圧縮される。
次に、図6の機械回路図及び図7の捩り特性線図を用いてクラッチディスク組立体1のダンパー機構としての動作を説明する。図6に示す機械回路図は、入力回転体2とハブ3との間に形成されるダンパー機構4を模式的に描いたものであり、例えばハブ3を入力回転体2に対して一回転方向(例えばR2方向)に捩じったときの各部材の動作関係を説明するための図である。
【0052】
ハブ3を入力回転体2に対してR2側に捩って行くと、捩り角度θ1までの角度では主に第2ダンパー機構6が作動する。すなわち、第2バネ21が回転方向に圧縮され、第2摩擦機構10で摺動が生じる。ここでは、第1摩擦機構8で摺動が生じないために、高ヒステリシストルクの特性となることはない。この結果、低剛性・低ヒステリシストルクの1段目特性が得られる。捩り角度が捩り角度θ1を超えると、第2ストッパー12が当接し、ハブ3とハブフランジ18との相対回転が停止する。すなわち、捩り角度θ1以上では第2ダンパー機構6が作動しない。このように捩り角度θ1以上では第2バネ21が圧縮されないため、第2バネ21の破損が生じにくい。また第2バネ21の強度を心配しなくて良くなるので設計が容易になる。捩り特性の2段目では第1ダンパー機構5が作動する。すなわち、第1バネ16がハブフランジ18と入力回転体2との間で回転方向に圧縮され、第1摩擦機構8で摺動が生じる。この結果、高剛性・高ヒステリシストルクの2段目特性が得られる。捩り角度がθ1+θ2を超えると、バネ17の円周方向端部が第2収容部36の第2支持部37に当接する。すわなち、第2ダンパー機構6において第1バネ16とバネ17とが並列に圧縮される。この結果、3段目では2段目より高い剛性が得られる。捩り角度がθ1+θ2+θ3となると第1ストッパー11が当接し、入力回転体2とハブ3との相対回転が停止する。
【0053】
捩り特性の負側においても各捩り角度θ1〜θ3の大きさは異なるものの同様の特性が得られる。
なお、捩り特性の1段目では、ブッシュ93とハブ3のフランジ64及び外周歯65との間で摩擦が発生している。さらには、2段目及び3段目ではブッシュ93とハブフランジ18の内周部との間で摩擦が生じている。
【0054】
第2ダンパー機構6において環状部89と第2円板状部73とによる摩擦面でブッシュ19の摩耗が進むと、ブッシュ19が他の部材に対して第2軸方向側に移動することが考えられる。この場合は、第2コーンスプリング78の姿勢が変化し、具体的には起き上がった状態になる。このため、第2コーンスプリング78の付勢力(セット荷重)が変化し、具体的には一旦増加した後に減少する。このように第2摩擦機構10におけるヒステリシストルクの大きさが変化し安定しない。
【0055】
しかし、本願発明では、第1コーンスプリング49により固定プレート20を第1軸方向側に付勢し、その付勢力はハブフランジ18及びブッシュ93に作用している。そのため、第2摩擦機構10での摩耗量とブッシュ93とハブフランジ18との間の摩擦面での摩耗量とが対応又は一致していると、次のような効果が得られる。ブッシュ93においてハブフランジ18の筒状部59に対応する部分(摩擦部材95)か摩耗すると、その摩耗量だけハブフランジ18、スペーサ80、固定プレート20及び第1摩擦ワッシャー48は第1軸方向側に移動する。このため、第2摩擦機構10の摩擦面においても第2円板状部73が第1軸方向側へと移動する。ブッシュ19のハブ3に対する軸方向の位置はほとんど変化せず、その結果フランジ64とブッシュ19との間に配置された第2コーンスプリング78の姿勢もほとんど変化しない。このようにハブフランジ18や第1摩擦機構8を用いた摩耗追従機構により、第2摩擦機構10の摩擦面での摩耗に関わらず第2コーンスプリング78の姿勢を一定に維持し、その結果第2摩擦機構10でのヒステリシストルクを安定的に発生させることができる。この結果、経時変化の少ないヒステリシストルクが得られ、音振性能が向上する。また、第2コーンスプリング78の摩耗代を考慮する必要が少なくなるため、第2コーンスプリング78の設計自由度が増大する。具体的には、第2コーンスプリング78の応力を低くかつ荷重を高く設計することができる。
【0056】
第2コーンスプリング78のセット荷重をコーンスプリングにおける荷重特性のピーク付近に設定されている。ブッシュ19での摩耗量とブッシュ93での摩耗量が同等に維持される場合は、第2コーンスプリング78の荷重は最大付近に維持される。ブッシュ19での摩耗量とブッシュ93での摩耗量が異なる場合にはセット荷重は荷重特性のピークから両側に多少ずれる。この場合でもセット荷重の変化量は最小限になるように設定されており、またその変化は予測可能である。
[他の実施例]
図23に示すように、前記実施形態のスペーサを廃止して、固定プレート20をハブフランジ18に直接係合させてもよい。固定プレート20の第1円板状部71はハブフランジ18の筒状部59に直接支持されている。また、第1円板状部71の外周縁からは、ハブフランジ18の係合孔58内に係合爪28が延びている。この構成では、スペーサを省略でき部品点数が少なくなっている。
【0057】
さらには、図6の機械回路図においてスペーサ80の位置に他の弾性部材すわなちバネを配置してもよい。この場合は、全体で4段の特性が得られる。
この実施形態の説明で、「一体回転するように係合している」又は「相対回転不能に係合している」などは、両部材が円周方向にトルク伝達可能となっている構成を意味している。すなわち、両部材の間に回転方向に隙間等が形成され所定角度までは両部材がトルク伝達を行わない場合も含む。
第2実施形態
図24〜図37に示すクラッチディスク組立体201は、基本的な構造は第1実施形態と同様である。したがってここでは第1実施形態と異なる点のみを詳細に説明する。
〔概略説明〕
この第2実施形態のクラッチディスク組立体201は4段特性を有しており、その点で3段特性を有する第1実施形態のクラッチディスク組立体1と異なる。具体的には、図36の機械回路図において、固定プレート20とハブフランジ18との間に、第1実施形態のスペーサ80の代わりにサブプレート207,208とバネ206(第2弾性部材、圧縮バネ)とが配置されている。サブプレート207,208は固定プレート20からトルクが入力されるようになっている。バネ206はサブプレート207,208とハブフランジ18(フランジ、第2中間部材)とを回転方向に弾性的に連結している。サブプレート207,208は、ハブ3に対して回転方向両側にそれぞれθ1だけ相対回転可能である。なお、ハブフランジ18はハブ3に対して回転方向両側にそれぞれθ1+θ2だけ相対回転可能であるが、ここでのθ1+θ2は第1実施形態のθ1に対応している。すなわち、第1実施形態のθ1までの角度内にバネ206が機能する2段目の特性を設けていることになる。
【0058】
なお、この実施形態で用いる機械回路図は、各部材の回転方向の関係を説明するための模式図である。したがって、回転方向に一体に動作する部材同士は一つの部材として考えられる。具体的には、ハブ3とブッシュ19は回転方向には一体の部材である第1回転体250を構成している。固定プレート20とサブプレート207,208は第2バネ21とバネ206の間で機能する第1中間部材251として機能している。第1中間部材251は、第1回転体250との間に摩擦機構10を形成し、入力回転体2との間に第1摩擦機構8を形成し、ハブフランジ18との間に摩擦機構241を形成している。さらに、第1中間部材251はハブ3との間に隙間角度θ1のストッパー機構を形成している。入力回転体2は第1摩擦ワッシャー48,ブッシュ93と一体回転するようになっており、第2回転体252を構成している。
〔バネ206の説明〕
図36において、バネ206は、4段特性を実現するダンパー機構において2段目範囲で圧縮されるバネ又は弾性部材(第2弾性部材)としての役割を有している。バネ206は1段目範囲で圧縮される第2バネ21(第1弾性部材)と直列に作用するように配置され、3段目範囲で圧縮される第1バネ16(弾性部材、第3弾性部材)と直列に作用するように配置された第2弾性部材である。バネ206は、固定プレート20及び第1及び第2サブプレート207,208を介して第2バネ21に回転方向に連結され、ハブフランジ18を介して第1バネ16に回転方向に連結されている。バネ206は第2バネ21に対して剛性が大幅に高く、1段目範囲ではバネ206はほとんど圧縮されない。
【0059】
バネ206は第1バネ16に対して剛性は低いが、その程度は大きくない。したがってバネ206は圧縮の程度が進むと、バネ206は第1バネ16のイニシャルトルクと摩擦機構242のヒステリシストルク(バネ206が第1バネ16に荷重を作用させたときに摩擦係合した部分で発生する抵抗力に基づくトルク)の合計を越えるトルクを発生できる。
【0060】
なお、摩擦機構241(第2摩擦機構)は、バネ206と並列に作用するように配置されており、より厳密にはバネ206が作動するときのみ摩擦を発生するようになっている。また、摩擦機構241は、第1バネ16と並列に作用する摩擦機構242と直列に作用するように配置されている。すなわち摩擦機構241と摩擦機構242がともに滑ると、各ヒステリシストルクの中間の大きさの中間ヒステリシストルクが発生する。
〔第1及び第2サブプレート207,208の説明〕
サブプレート207,208は、ハブフランジ18のエンジン側に配置された第1サブプレート207と、ハブフランジ18のトランスミッション側に配置された第2サブプレート208とから構成されている。サブプレート207,208は互いに一体回転するように係合している。第1及び第2サブプレート207,208は、図36から明らかなように、固定プレート20とともに第2バネ21とバネ206とを回転方向に連結するための中間部材(第1中間部材)として機能している。また、第2サブプレート208は内周歯212によってハブ3の外周歯65とともに前述のストッパー機構を構成している。このストッパー機構によって捩じり角度θ1を越えると第2バネ21の圧縮が行われないようになっている。
〔詳細説明〕
図30に示すように、ハブフランジ18に複数の第3窓孔230(第2窓)が形成されている。第3窓孔230は円周方向に等間隔で4個形成されている。第3窓孔230は、半径方向及び円周方向長さが第2窓孔56(第1窓)や第1窓孔57に比べて小さく形成されている。また、各第3窓孔230はハブフランジ18の最も内周側に形成されている。第3窓孔230内にはバネ206が配置されている。バネ206はコイルスプリングであり、円周方向に延びている。バネ206の両端は第3窓孔230の円周方向両端に当接又は近接している。
【0061】
第1サブプレート207は、ハブフランジ18とクラッチプレート31との間に配置されている。第1サブプレート207は、図32に示すように、円板状又は環状の部材である。より具体的には第1サブプレート207は板金製の部材である。第1サブプレート207は、主に環状部221から構成されている。環状部221のエンジン側に突出する筒状部222(環状の支持部、半径方向位置決め部)が形成されている。筒状部222の内周面はハブフランジ18の筒状部59外周面に相対回転可能に当接している。すなわち第1サブプレート207は筒状部222によりハブフランジ18に対して半径方向の位置決めをされている。さらに、筒状部222の外周面には、ブッシュ93の筒状部97が当接している。
【0062】
第1サブプレート207において、環状部221から円周方向に等間隔で複数の突出部223が形成されている。突出部223は環状部221から連続して半径方向外方に延びている。各突出部223はハブフランジ18の第3窓孔230に対応して形成されている。突出部223において、環状部221から突出部223にかけて切り起こし部226が形成されている。切り起こし部226は環状部221及び突出部223から軸方向に切り起こされて形成された孔であり、切り起こし部226はバネ206の円周方向両端、半径方向両側及び軸方向片側(エンジン側)を支持している。さらに、切り起こし部226の一部はクラッチプレート31に対してトランスミッション側から当接している。
【0063】
環状部221の外周縁において各突出部223の円周方向間には、突起227(係合部)が形成されている。突起227は環状部221の外周縁から折り曲げられ軸方向(トランスミッション側)に延びる部分である。突起227には、図33に示すように、軸方向に突出する2つの爪228が円周方向両側に形成されている。あるいは爪228によって突起227の先端に切欠き229が形成されていると考えても良い。
【0064】
突起227は、第1サブプレート207の本体である環状部221と一体に形成された板状部分である。突起227の板厚は環状部221の板厚と等しい。突起227は板の両平面が半径方向を向いている。
次に第2サブプレート208について説明する。第2サブプレート208はハブフランジ18とリテーニングプレート32との間に配置された円板状又は環状の部材である。より詳細には、第2サブプレート208は、ハブフランジ18と固定プレート20との軸方向間に配置されている。第2サブプレート208は、第1サブプレート207と同様に、板金製の円板状部材である。第2サブプレート208の外径は第1サブプレート207の外径とほぼ同じであるが、内径は第1サブプレート207に比べて小さい。すなわち第2サブプレート208の内周部は第1サブプレート207に比べてさらに内周側に延びている。
【0065】
第2サブプレート208は図31に示すように主に環状部211から構成されている。環状部211の内周縁には、半径方向内側に突出する複数の内周歯212が形成されている。内周歯212はハブフランジ18の内周歯61と軸方向に並んで配置されている。内周歯212は内周歯61に比べて円周方向長さが長くなっている。図34に示すように、内周歯212の円周方向両端は内周歯61の円周方向両端よりさらに半径方向外側に配置されている。内周歯212は、内周歯61と同様に外周歯65の円周方向間に配置されている。外周歯65から見て円周方向両側の内周歯212との間にはそれぞれθ1だけの隙間が確保されている。さらに、外周歯65から見て円周方向両側の内周歯61の端面との間にはそれぞれθ1+θ2だけの隙間が確保されている。
【0066】
環状部211には半径方向外方に突出する複数の突出部213が連続して形成されている。突出部213は円周方向に等間隔で形成されている。突出部213はハブフランジ18の第3窓孔230に対応して形成されている。突出部213に対応する部分には、窓部216が形成されている。窓部216は軸方向に貫通する孔を有しており、バネ206の円周方向両側、半径方向両側及び軸方向片側(トランスミッション側)を支持している。突出部213の半径方向外側縁には、第1係合部214が形成されている。第1係合部214は2つの切欠き部分である。第1係合部214には固定プレート20の爪75が係合している。これにより、第2サブプレート208は固定プレート20と一体回転するようになっている。爪75は第1係合部214に対して半径方向には所定距離までは移動可能となっている。また、爪75は第1係合部214に対して軸方向に移動可能である。
【0067】
環状部211の外周縁において各突出部213の円周方向間には第2係合部217が形成されている。第2係合部217は2個の切欠きであり、第1サブプレート207の爪228が係合している。この結果、第1サブプレート207,208は一体回転するようになっている。爪228は第2係合部に対して半径方向に所定の距離までは移動可能になっている。
【0068】
第2サブプレート208の環状部211のトランスミッション側面は、固定プレート20に当接している。固定プレート20はコーンスプリングによりエンジン側に押圧されており、第2サブプレート208は固定プレート20によりエンジン側に付勢されている。第2サブプレート208は、環状部211とハブフランジ18(円板状部材、第2中間部材)の内周部との間に配置されたワッシャー240によりハブフランジ18に軸方向を支持されている。ワッシャー240は樹脂製の部材である。ワッシャー240は、図27に示すように、ハブフランジ18に当接する環状部と、円周方向に並んだ複数の突起240a(係合部)とを有している。突起240aはトランスミッション側に延び、第2サブプレート208の環状部211に形成された貫通孔(図31では省略)に挿入されている。これにより、ワッシャー240は第2サブプレート208と一体回転し、ハブフランジ18に対して摺動するようになっている。この実施形態では、ワッシャー240はモールド成形により第2サブプレート208と一体になっている。
【0069】
第2サブプレート208とワッシャー240をモールド成形しているため、組付け工数、接着工数及びコストが従来より低減できる。さらに、ワッシャーをサブプレートの孔部に固定することにより、従来の単板のワッシャーより強度が向上する。さらに、ワッシャー240を予め第2サブプレート208に固定しておくことにより、組忘れや誤って組付けることが防止される。
【0070】
突起227は第2窓孔56の内周縁に形成された切欠き56a内を延びている。このように第1サブプレート207と第2サブプレート208とを一体回転させるための部分が既存の窓孔内を延びているため、特別な孔やスリットを形成する必要がない。なお、突起227とその円周方向両側の切欠き56aとの間にはそれぞれθ2より大きな隙間が確保されている。
【0071】
この実施形態では、第1サブプレート207と第2サブプレート208とが板状の突起227により係合しているため、従来のサブピンを用いた係合よりスペースを大幅に省略できる。特に、突起227は板状であり半径方向には板の厚さのみの幅を有している。このため、半径方向のスペースを大幅に確保できる。また突起227は第2窓孔56内において半径方向に小さいため、第1バネ16の径が小さくなることはない。また、突起227は第2窓孔56の最内周に配置されており、第1バネ16に干渉しにくい。また、突起227が板状であるため、従来のサブピンに比べて軸方向を大幅に短縮できる。
【0072】
さらに、突起227は第1サブプレート207と一体の部材であるため、従来のサブピン構造に比べて部品点数を減らせる。
第1及び第2サブプレート207,208の特徴についてまとめると以下のようになる。
(1)プレート207,208はともに板金製の加工が容易な部材である。
(2)プレート207,208は突起227によって互いに相対回転不能に連結されている。
(3)プレート208は第2バネ21の圧縮を規制するためのストッパーを構成する内周歯212を有している。
〔ブッシュ93の構造〕
ブッシュ93(半径方向位置決め部材)の機能について説明する。
【0073】
摩擦ブッシュ93は、図20〜22に示すように、主に、樹脂製の環状部94から主に構成されている。環状部94は半径方向に所定の幅を有し軸方向の厚みが薄い円板状の部材である。環状部94の内周縁には軸方向エンジン側(第1軸方向側)に突出する筒状部98が形成されている。筒状部98の内周面はハブ3のボス62の外周面に当接している。環状部94の外周縁には軸方向トランスミッション側(第2軸方向側)に突出する筒状部97が形成されている。筒状部97の内周面は第1サブプレート207の筒状部222の外周面に当接している。
【0074】
ブッシュ93は、
(1)筒状部98(第1支持部)によって、自らと、クラッチプレート31,リテーニングプレート32とをハブ3のボス62に対して相対回転可能に半径方向に支持する。
(2)筒状部97(第2支持部)によって、ハブフランジ18をハブ3のボス62に対して相対回転可能に半径方向に支持する。筒状部97は、第1実施形態では直接筒状部59を支持し、第2実施形態では第1サブプレート207の筒状部222を介して筒状部59を支持している。
【0075】
以上に述べたようにブッシュ93は、ハブ3のボス62の外周側に配置された3枚のプレート(プレート31,32とハブフランジ18)をボス62に対して芯出ししている。
〔動作説明〕
次に、図37の捩り特性線図を用いてクラッチディスク組立体201の動作について説明する。ここでは、入力回転体2を他の部材に固定しておきそれに対してハブ3を一方向(例えばR2方向)に捩っていく動作に基づいて説明する。捩り角度の小さな領域では、最も剛性の低い第2バネ21が圧縮され第2摩擦機構10で滑りが生じる。この結果、θA(第1捩じり角度)までは低剛性・低ヒステリシストルクの特性が得られる。捩り角度がθAを超えると、第2バネ21の圧縮がそれ以上進まず、バネ206が回転方向に圧縮される。このとき第1摩擦機構8で滑りが生じ1段目よりは大きいヒステリシストルクが発生する。この2段目においてバネ206で発生するトルクが第1バネ16のイニシャルトルクとヒステリシストルクの合計(バネ206が第1バネ16に荷重を作用させたときに摩擦係合部分、特に、摩擦機構242において発生する抵抗力に基づくトルク)を超えると、第1バネ16の圧縮が開始され、第1バネ16と並列に配置された摩擦機構242で滑りが生じる。このように2段目途中からヒステリシストルクが高くなる。θB(第2捩じり角度)になり、内周歯61と外周歯65が当接すると、以後はバネ206の圧縮は停止される。すなわち、第1バネ16のみが圧縮され、さらに捩り角度が大きくなるとバネ17が第1バネ16と並列に圧縮される。
【0076】
以上に説明したように、2段目のバネ206と3段目の第1バネ16とが直列に作用するように配置されているため、2段目においてヒステリシストルクが途中から高くなる。
より詳細には、2段目初期ではバネ206のみが主に圧縮され中剛性・中ヒステリシストルク(H2)が発生する。2段目途中のθBからは第1バネ16とバネ206が直列に圧縮されるため、剛性は1段目よりは高いが2段目初期よりは低くなる。しかし、バネ206が圧縮されることでブッシュ93と筒状部59において滑りが生じ、2段目初期より大きい中間ヒステリシストルク(Hm)が発生している。この実施形態では、中間ヒステリシストルク(Hm)の領域は2段目の大半(8割程度)を占めている。捩じり角度θBを越えると、バネ206の圧縮が停止され、第1バネ16のみが圧縮される。したがって3段目では2段目より高い剛性が得られる。また、3段目で生じる高ヒステリシストルク(H3)は2段目で生じるヒステリシストルク(H2,Hm)より大きい。
【0077】
以上の説明から明らかなように、第1バネ16とバネ206が直列に圧縮されているときの中間ヒステリシストルク(Hm)は、第1バネ16のみが圧縮されているときに発生するヒステリシストルク(H2)より高く、バネ206のみが圧縮されているときに発生する高ヒステリシストルク(H3)より低い。この結果、3段目の開始時(2段目と3段目の境界)であるθBにおいてヒステリシストルクが急激に大きくなることがない。従来であれば、θBにおいてヒステリシストルク(H2)からヒステリシストルク(H3)に変化し、その変化量は大きかった。また、2段目の開始時(1段目と2段目の境界)であるθAにおいてもヒステリシストルクが急激に大きくなることはない。
【0078】
以上の捩じり特性によって、1段目正負全体にわたって作動するアイドリング時の振動に対してジャンピング現象が生じにくくなっている。具体的には2段目に中間ヒステリシストルク(Hm)が得られているため、振動の吸収が緩やかに行われる。
4段特性を実現しているダンパー機構において、2段目のバネ(バネ206)と3段目のバネ(第1バネ16)とを直列に配置することのさらなる利点について説明する。従来では3段特性のクラッチディスクを4段特性化するためには、この実施形態における2段目のバネを新たに追加している。その場合に2段目のバネが3段目及び4段目のバネと並列に作用するように配置されている場合は、2段目のバネを追加した分だけストッパートルクが高くなる。並列配置の場合においてストッパートルクを3段特性のものと一致させるためには、3段目のバネの剛性を低くする等の新たな設定を施す必要がある。それに対して、2段目のバネと3段目のバネとを直列に配置した機構では、2段目のバネを新たに追加しても、元の3段特性のストッパートルクと同じストッパートルクが得られる。これは、2段目のバネと3段目のバネとが直列に配置されることにより、2段目バネの発生トルクを3段目バネの発生トルクが打ち消すからである。この結果、3段目バネの設定を新たに行う必要がなくなる。
【0079】
前記第2実施形態においても、2段目のばねと3段目のばねが直列に配置された4段特性を実現しているため、本実施形態と同様の効果を得ることができる。〔他の実施例〕
第1サブプレート207と第2サブプレート208との嵌合部分つまり突起227の爪228と第2係合部217とは、溶接、接着、かしめ等により堅く固定されていても良い。この場合は、嵌合部分にフレッティング摩耗が生じにくい。嵌合部分に摩耗による隙間が発生しないと、作動遅れが生じにくいし、嵌合部分の寿命が長くなる。
【0080】
第1サブプレート207と第2サブプレート208の連結を行う構造としては、両プレート207,208とは別体の板状部材を用いてもよい。この別体の板状部材はプレート207,208に対して相対回転不能に係合、又は堅く固定されている。
なお、第1サブプレート207と第2サブプレート208とを回転方向に連結するための構造としては、第1サブプレート207と第2サブプレート208の両方から軸方向に延び互いに係合する突起であってもよい。その場合も前述と同様の効果が得られる。
【0081】
前述したサブプレート構造の利点である、(1)突起227による第1サブプレート207及び第2サブプレート208の嵌合、及び(2)第2サブプレート208とフリクションワッシャー240の一体化は、本実施形態のクラッチディスク組立体のようにハブフランジ18とボス3とを連結するダンパーの入力部材としてのサブプレート構造以外にも採用できる。言い換えると、本願のサブプレート構造の利点は、円板状のフランジの側方に配置されたサブプレート構造全てに適用できる。本実施形態に開示されていない他のクラッチディスク組立体の例としては、ボスとフランジが一体に形成されたハブのフランジの側方に配置されたサブプレートが考えられる。そこではサブプレートはフランジの窓孔に配置された低剛性弾性部材と高剛性弾性部材とを連結する中間部材として機能している。
【0082】
前記実施形態では、第1バネ16がバネ206より剛性が高かったが、低くてもよい。
前記実施形態は4段特性を有するクラッチディスク組立体のダンパー機構に関するものであるが、4段目のバネを有しない3段特性のダンパー機構にも本発明を採用できる。また、4段以上例えば5段特性のダンパー機構であってもよい。
【0083】
前記実施形態では第2バネ21とバネ206が直列に配置されているが、並列に配置されていてもよい。また、第2バネ21は1段目のみで圧縮されているが、2段目でも圧縮されてよい。
【0084】
【発明の効果】
本発明に係るダンパーディスク組立体では、フランジは環状部材又は半径方向位置決め部材を介してハブのボスに対して半径方向に位置決めされている。この結果、弾性部材等に摩耗等が生じてもフランジはハブに対して半径方向に移動しにくい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態としてのクラッチディスク組立体の平面図。
【図2】図1の部分拡大図。
【図3】図1のIII −III 断面図。
【図4】図1の0-IV断面図。
【図5】図1のO-V 断面図。
【図6】本発明のクラッチディスク組立体のダンパー機構としての機械回路図。
【図7】クラッチディスク組立体の捩り特性線図。
【図8】固定プレートの平面図。
【図9】図8のIX-IX 断面図。
【図10】図8のX 矢視図。
【図11】図8のXI矢視図。
【図12】ブッシュの平面図。
【図13】図12のXIII矢視図。
【図14】図12のXIV-XIV 矢視図。
【図15】図14の部分拡大図。
【図16】図17のXVI-XVI 断面図。
【図17】ブッシュの裏面図。
【図18】図17のXVII矢視図。
【図19】図17のXIX 矢視図。
【図20】摩擦ブッシュの平面図。
【図21】図20のXXI-XXI 断面図。
【図22】図21の部分拡大図。
【図23】他の実施形態における図3に対応する図
【図24】第2実施形態におけるクラッチディスク組立体の平面図。
【図25】図24のXXV−O断面図。
【図26】図24のXXVI−O断面図。
【図27】図24のXXVII−O断面図。
【図28】図24の部分拡大図。
【図29】図24の部分拡大図。
【図30】ハブフランジの平面図。
【図31】第2サブプレートの平面図。
【図32】第1サブプレートの平面図。
【図33】図32のXXXIII矢視図。
【図34】第2サブプレートとハブとの係合を示すための部分平面図。
【図35】ハブフランジと第1及び第2サブプレートとの関係を示す断面図。
【図36】クラッチディスク組立体の機械回路図。
【図37】クラッチディスク組立体の捩り特性線図。
【符号の説明】
1 クラッチディスク組立体
2 入力回転体
3 ハブ
4 ダンパー機構
5 第1ダンパー機構
6 第2ダンパー機構
7 第1弾性機構
8 第1摩擦機構
9 第2弾性機構
10 第2摩擦機構
16 第1バネ
18 ハブフランジ
19 ブッシュ
20 固定プレート
21 第2バネ
31 クラッチプレート
32 リテーニングプレート
48 第1摩擦ワッシャー
49 第1コーンスプリング
78 第2コーンスプリング
206 バネ
207 第1サブプレート
208 第2サブプレート
221 環状部
222 筒状部
223 突出部
226 切り起こし部
227 突起
228 爪
211 環状部
212 内周歯
213 突出部
214 第1係合部
216 窓部
217 第2係合部
240 ワッシャー
212 内周歯

Claims (3)

  1. ボスを有するハブと、
    前記ボスの外周側に所定角度まで相対回転可能に配置され、筒状部と、前記筒状部から半径方向外方に延びる円板状部とを有するフランジと、
    前記フランジの軸方向両側に配置された1対のプレートと、
    前記1対のプレートと前記フランジとを回転方向に弾性的に連結する弾性部材と、
    前記フランジの軸方向片側に配置され、前記筒状部の外周面に回転自在に支持される環状の支持部を有するサブプレートと、
    前記サブプレートと前記フランジとを回転方向に弾性的に連結するための圧縮バネと、
    前記ボスの外周面に相対回転可能に半径方向に支持される第1支持部と、前記環状の支持部の外周面を相対回転可能に半径方向に支持する第2支持部とを有する環状部材と、
    を備えたダンパーディスク組立体。
  2. 前記環状部材は、
    環状部と、
    前記環状部の外周部から第2軸方向側に延びる筒状の前記第1支持部と、
    前記環状部の内周部から第1軸方向側に延びる筒状の前記第2支持部と、
    を有している、請求項に記載のダンパーディスク組立体。
  3. 前記環状部材は前記1対のプレートの一方に対して半径方向に移動不能に係合しており、それにより前記1対のプレートの前記一方は前記環状部材を介して前記ボスに相対回転可能に半径方向に支持されている、請求項1又は2に記載のダンパーディスク組立体。
JP26492098A 1998-09-18 1998-09-18 ダンパーディスク組立体 Expired - Lifetime JP3805908B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP26492098A JP3805908B2 (ja) 1998-09-18 1998-09-18 ダンパーディスク組立体

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP26492098A JP3805908B2 (ja) 1998-09-18 1998-09-18 ダンパーディスク組立体

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2000087999A JP2000087999A (ja) 2000-03-28
JP3805908B2 true JP3805908B2 (ja) 2006-08-09

Family

ID=17410042

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP26492098A Expired - Lifetime JP3805908B2 (ja) 1998-09-18 1998-09-18 ダンパーディスク組立体

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3805908B2 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6545972B2 (ja) * 2015-02-10 2019-07-17 株式会社エクセディ ダンパーディスク組立体
JP6501295B2 (ja) * 2015-02-10 2019-04-17 株式会社エクセディ ダンパーディスク組立体
JP7306890B2 (ja) * 2019-06-26 2023-07-11 株式会社エクセディ ダンパ装置
CN113557370B (zh) * 2019-07-01 2023-07-18 舍弗勒技术股份两合公司 离合器从动盘及离合器

Also Published As

Publication number Publication date
JP2000087999A (ja) 2000-03-28

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3727160B2 (ja) ダンパーディスク組立体
JP3904849B2 (ja) ダンパー機構
JPH11303939A (ja) ダンパーディスク組立体
JP2000205338A (ja) ダンパ―ディスク組立体
JP3805908B2 (ja) ダンパーディスク組立体
JP3732021B2 (ja) ダンパー機構
JP3619372B2 (ja) ダンパーディスク組立体
JP4617845B2 (ja) クラッチディスク
JP3645707B2 (ja) 摩擦ワッシャー組立体
JP2000002263A (ja) ブッシュ
JP3825190B2 (ja) 摩擦ブッシュ
JP3797849B2 (ja) 摩擦発生機構及び摩擦部材
JP2000081064A (ja) 皿ばね
JP2000087998A (ja) ダンパーディスク組立体
JPH11303891A (ja) プレート及びダンパーディスク組立体
JP3986266B2 (ja) クラッチディスク組立体
JP2000179574A (ja) ダンパーディスク組立体
JP2000088001A (ja) サブプレート構造
JP3732028B2 (ja) ダンパーディスク組立体
JPH11303894A (ja) 摩擦ワッシャー及びダンパーディスク組立体サブアッシー
JP2000002262A (ja) ダンパーディスク組立体
JP7449762B2 (ja) ダンパ装置
JPH11303889A (ja) プレート及びダンパーディスク組立体
JPH11303893A (ja) 摩擦ワッシャー
JP2000179572A (ja) ダンパーディスク組立体

Legal Events

Date Code Title Description
A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20050329

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20050530

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20050628

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20050729

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20051018

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20060425

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20060511

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090519

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120519

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150519

Year of fee payment: 9

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

EXPY Cancellation because of completion of term