JP3797849B2 - 摩擦発生機構及び摩擦部材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、摩擦発生機構、特に、2つの回転部材が相対回転すると摩擦抵抗を発生して捩じり振動を減衰させるための機構に関する。
【0002】
【従来の技術】
たとえば車両のクラッチディスク組立体に用いられるダンパー機構は、一対の円板状入力側プレートと、外周にフランジを有する出力側ハブと、一対の入力側プレートとフランジとを回転方向に弾性的に連結するトーションスプリングと、入力側プレートと出力側ハブとの間に配置された摩擦発生機構とを備えている。
【0003】
摩擦発生機構は、たとえば、出力側ハブのフランジに当接する摩擦部材と、摩擦部材と入力側プレートの一方との間に配置され摩擦部材をフランジに対して押圧するためのコーンスプリングとを有している。摩擦部材は、環状の本体と、本体から軸方向に突出し入力側プレートと一体回転するように係合する複数の突起を有している。各突起は入力側プレートに形成された孔に挿入され回転方向に係合している。すなわち、突起の回転方向両端は孔の回転方向両端に当接しており、これにより摩擦部材は入力側プレートに対して軸方向に移動可能であるが回転方向には移動不能となっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来の摩擦発生機構では、突起と孔の係合部分において、突起の回転方向幅が孔の回転方向幅より小さくなって、両者が相対回転可能となるわずかな隙間が形成されていることがある。これは、組み付け性確保のためには所定の隙間が必要であり、また摩擦部材が樹脂製であるため摩耗によって隙間が大きくなることによる。この結果、捩じり振動減衰時にこの隙間領域では、摩擦部材はハブフランジに対して滑らず、そのときに例えばコーンスプリングと入力側プレートが互いに摺動する。すなわち前述の隙間領域においては所望のヒステリシストルクが発生せず、車両の音・振動減衰機能が低下する。
【0005】
具体的には、例えば、低剛性・低ヒステリシストルク及び高剛性・高ヒステリシストルクの2段特性を有する捩じり特性において、低剛性領域から高剛性領域に移行する際に、前述の隙間角度範囲では摩擦部材がフランジに対して摺動せず、所定のヒステリシストルクが得られない。この結果、音・振動減衰性能が低下する。
【0006】
また、従来のダンパー機構には高捩じり角度領域における微小捩じり振動に対しては摩擦発生機構を作動させないことで低ヒステリシス特性を実現させる構造が知られているが、その場合に本来の微小捩じり角度領域に前記隙間角度が加わることによって微小捩じり振動に対して摩擦発生機構が作動しない角度が大きくなってしまうことがある。この場合も所望の捩じり特性が得られないため、音・振動減衰機能が低下する。
【0007】
本発明の課題は、摩擦発生機構において所望の摩擦抵抗を発生させることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の摩擦発生機構は第1回転部材及び第2回転部材と摩擦部材とばね部材とを備えている。第1回転部材及び第2回転部材は互いに所定角度範囲で相対回転可能である。摩擦部材は、第1回転部材に回転方向に係合するとともに第2回転部材に当接し、第1及び第2回転部材が相対回転すると第2回転部材に摺動して摩擦を発生する。ばね部材は、第1回転部材と摩擦部材の間に配置され、摩擦部材を第2回転部材に対して付勢する。第1及び第2回転部材が相対回転するときに、摩擦部材と第1回転部材の間で発生する摩擦抵抗は、摩擦部材と第2回転部材の間で発生する摩擦抵抗より大きい。ばね部材と摩擦部材の間の摩擦係数及びばね部材と第1回転部材の間の摩擦係数は、摩擦部材と第2回転部材の間の摩擦係数より高い。
【0009】
この機構では、第1回転部材と第2回転部材が相対回転するときに、たとえ摩擦部材と第1回転部材は相対回転可能な状態であっても実際に滑ることはなく、摩擦部材は確実に第2回転部材に対して滑る。したがって、所望の摩擦が得られる。
請求項2に記載の摩擦発生機構では、請求項1において、摩擦部材と第1回転部材の間の摩擦係数は、摩擦部材と第2回転部材の間の摩擦係数より高い。
【0010】
請求項3に記載の摩擦発生機構では、請求項2において、摩擦部材は、第1回転部材に接触する接触部分と、第2回転部材に接触し接触部分より摩擦係数が低い摩擦面とを有する。
【0011】
請求項4に記載の摩擦発生機構では、請求項1または2において、摩擦部材は、ばね部材に接触する接触部分と、第2回転部材に接触し接触部分より摩擦係数が低い摩擦面とを有する。請求項5に記載の摩擦部材は、第1回転部材と第2回転部材とが相対回転するときに摩擦を発生させるための部材であり、係合部と摩擦面と接触部とを備えている。係合部は第1回転部材に回転方向に係合する。摩擦面は、第2回転部材に当接し、第1及び第2回転部材が相対回転すると第2回転部材に摺動して摩擦を発生するための面である。接触部は、第2回転部材以外の部材に接触し、摩擦面より摩擦係数が高い。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1に示す本発明の一実施形態によるクラッチディスク組立体1は、図1の左側に配置されたエンジン(図示せず)からのトルクを図1の右側に配置されたトランスミッション(図示せず)に伝達及び遮断するための装置である。図1においては、O−Oがクラッチディスク組立体1の回転軸線である。また、図2においてR1がクラッチディスク組立体1の回転方向(円周方向)であり、R2がその反対方向である。
【0013】
クラッチディスク組立体1は、主に、出力側部材としてのハブ2と、入力側部材としてのクラッチプレート3及びリティーニングプレート4と、中間部材としてのハブフランジ5と、ハブフランジ5とハブ2とを回転方向に弾性的に連結するための小トーションスプリング6と、プレート3,4とハブフランジ5とを回転方向に弾性的に連結するための大トーションスプリング7と、プレート3,4とハブ2との間で相対回転が生じるときに所定の摩擦を発生するための摩擦発生機構8とから構成されている。
【0014】
ハブ2は、クラッチディスク組立体1の中心に配置され、トランスミッションの軸(図示せず)に連結される。ハブ2は、軸方向に延びる円筒状のボス2aと、ボス2aの外周に一体形成されたフランジ2bとから構成されている。フランジ2bの外周には、図2〜図4に示すように、複数の突起2cが回転方向に等間隔で形成されている。図3に示すように、フランジ2bの径方向に対向する2カ所には、後述する小トーションスプリング6の回転方向両端を受けるための切欠き2dが形成されている。また、ボス2aの内周側には、トランスミッションの軸にスプライン係合するスプライン孔2eが形成されている。
【0015】
ハブフランジ5は、円板状のプレートであり、ハブ2のフランジ2bの外周に配置されている。ハブフランジ5は、図2から明らかなように、半径方向外方に延びる4つの突出部5aを有している。各突出部5aには、回転方向に延びる窓孔5bが形成されている。各突出部5aの間には外側切欠き5cが形成されている。突出部5aの内周側には内周側環状部5fが設けられている。内周側環状部5fの内周縁には、ハブ2の突起2cの間に対応する部分に歯5dが形成されている。突起2cと歯5dとの間には回転方向に所定の隙間が確保されており、これによりハブ2とハブフランジ5とが所定角度まで回転可能となっている。ハブフランジ5の内周側においてハブ2の切欠き2dに対応する2カ所には内側切欠き5eが形成されている。これらの切欠き2dと内側切欠き5e内には小トーションスプリング6が配置されている。
【0016】
クラッチプレート3及びリティーニングプレート4はハブフランジ5の両側方に配置されている。クラッチプレート3及びリティーニングプレート4は、概ね円板状の一対の部材であり、ハブ2のボス2aの外周方に回転自在に配置されている。クラッチプレート3及びリティーニングプレート4は外周部で当接ピン11により互いに固定されている。この当接ピン11は、ハブフランジ5に形成された外側切欠き5c内を挿通している。当接ピン11と外側切欠き5cとには回転方向に所定の隙間が確保されているため、プレート3,4とハブフランジ5とは所定角度内で相対回転可能である。
【0017】
クラッチプレート3の外周には摩擦連結部10(クラッチディスク)が配置されている。摩擦連結部10は、主に、クッショニングプレート12と、クッションニングプレート12の軸方向両側に固定された円環状の摩擦フェーシング13とから構成されている。クッショニングプレート12は、円環状に連続する環状部12aと、環状部12aから外周側に突出して形成された複数のクッショニング部12bとを有している。環状部12aはその一部が内周側に突出しており、その突出した部分が当接ピン11によりクラッチプレート3に固定されている。
【0018】
クラッチプレート3及びリティーニングプレート4には、それぞれハブフランジ5の窓孔5bに対応した位置に窓孔3a及び窓孔4aが形成されている。これら窓孔3a及び窓孔4a内に大トーションスプリング7が配置されている。各窓孔3a及び窓孔4aの半径方向両側には軸方向外方に切り起こされた押さえ部3b、押さえ部4bが形成されている。大トーションスプリング7は、それぞれ二組の第1スプリング組立体7aと第2スプリング組立体7bとから構成されている。第1スプリング組立体7aは、半径方向に対向するハブフランジ5の窓孔5b内に各々配置されており、大径のトーションスプリングとその内側に配置された小径のトーションスプリングとから構成されている。第1スプリング組立体7aの回転方向両端はハブフランジ5の窓孔5bの回転方向両端、クラッチプレート3の窓孔3aの回転方向両端及びリティーニングプレート4の窓孔4aの回転方向両端に当接している。第2スプリング組立体7bは、半径方向対向するハブフランジ5の窓孔5b内に配置されており、トーションスプリングとその内側に配置されたフロートラバー7cとから構成されている。第2スプリング組立体7bのトーションスプリングの回転方向両端は、ハブフランジ5の窓孔5bの回転方向両端、クラッチプレート3の窓孔3aの回転方向両端及びリティーニングプレート4の窓孔4aの回転方向両端に当接している。ただし、フロートラバー7cの長さは各窓孔の回転方向両端間より短くなっている。すなわち、フロートラバー7cは各窓孔の回転方向両端間で回転方向に移動自在である。
【0019】
次に、摩擦発生機構8について説明する。
摩擦発生機構8は、図1及び図5に示すように、クラッチプレート3の内周部とリティーニングプレート4の内周部との間でかつボス2aの外周側に配置されている。この摩擦発生機構8は、第1ブッシュ14と第2ブッシュ15と第1コーンスプリング16と第2コーンスプリング17と第3ブッシュ18とを有している。第1〜第3ブッシュ14、15,18はそれぞれナイロン系の樹脂で形成されている。
【0020】
第1ブッシュ14は樹脂製円板状プレートである。第1ブッシュ14は、図5〜図7に示すように、内周端がボス2aに近接しており、一側面がハブ2のフランジ2bのトランスミッション側の側面に当接している。第1ブッシュ14は、円板状部14aと、円板状部14aから半径方向外方に延びる4つの突起14bとから主に構成されている。また、円板状部14aの内周部には、他の部分から軸方向に突出した第1環状部14cと、第1環状部14cの内周側部分においてさらに軸方向に突出した第2環状部14dとを有している。
【0021】
第1ブッシュ14とリティーニングプレート4との間には、第1コーンスプリング16が配置されている。第1コーンスプリング16は、外周端がリティーニングプレート4に支持され、内周端が第1ブッシュ14の第1環状部14cに当接している。第1コーンスプリング16は、軸方向に圧縮された状態で配置されており、第1ブッシュ14をハブ2のフランジ2bに対して押しつけている。第1コーンスプリング16には、図11に示すように、外周側に複数の切欠き16aが形成されている。この切欠き16aは、第1ブッシュ14の摩耗によって第1コーンスプリング16の姿勢が変化するときに、第1コーンスプリング16の付勢力の変化を少なくするためのものである。
【0022】
第2ブッシュ15は、図8〜図10及び図13から明らかなように円板状の部材であり、第1ブッシュ14の外周側に、第1ブッシュ14が配置された平面とほぼ同一平面上にかつ同芯に配置されている。第2ブッシュ15は円板状の本体部15aから主に構成されている。本体部15aの内周側には、他の部分より軸方向トランスミッション側に突出する環状部15bが形成されている。本体部15aのエンジン側の側面15f(摩擦面)は、ハブフランジ5の内周側環状部5fの軸方向トランスミッション側の側面5gに当接しており、両者によって第1摺動面31を形成している。環状部15bのトランスミッション側の側面には、回転方向に等間隔で4つの切欠き15eが形成されている。この切欠き15e内には、第1ブッシュ14の突起14bが回転方向に相対回転不能にかつ軸方向に移動可能に係合している。なお、突起14bと切欠き15eとの軸方向間には所定の隙間が確保されている。
【0023】
環状部15bには、切欠き15eの間にトランスミッション側に延びる係合部としての4つの突起が形成されている。これら突起は2つのスナップ突起15cと2つの棒状突起15dとからなる。ここでは同じ種類の突起同士が半径方向に対向するように配置されている。スナップ突起15cは軸方向に延びるスリットにより半径方向に2分割されている。スナップ突起15cはリティーニングプレート4に形成された孔4c内に挿入され、棒状突起15dはリティーニングプレート4の他の孔4c内に挿入されている。スナップ突起15c及び棒状突起15dは孔4cに対して回転方向及び半径方向に当接している。特に、スナップ突起15cは2つの突起部分が孔4cに対して半径方向に弾性的に付勢されている。また、スナップ突起15cの先端には孔4cからの脱落を防止するための爪が形成されている。
【0024】
第2コーンスプリング17は第2ブッシュ15とリティーニングプレート4との間に配置されている。第2コーンスプリング17は軸方向に圧縮されており、外周端がリティーニングプレート4に当接し、内周端が第2ブッシュ15の環状部15bのトランスミッション側の面に当接している。このようにして第2コーンスプリング17は第2ブッシュ15をハブフランジ5の内周側環状部5fのトランスミッション側の側面5gに付勢している。第2コーンスプリング17には、図12に示すように、内周側に複数の切欠き17aが形成されている。この切欠き17aは、第2ブッシュ15の摩耗によって第2コーンスプリング17の姿勢が変化するときに、第2コーンスプリング17の付勢力変化を少なくするために形成されている。また、第2コーンスプリング17の切欠き17aは、第2ブッシュ15のスナップ突起15c、棒状突起15d及び切欠き15eに対応しており、第2コーンスプリング17とこれらの部材が互いに干渉しないようになっている。第2コーンスプリング17の付勢力は第1コーンスプリング16の付勢力より大きくなるように設定されている。
【0025】
以上に述べた第1ブッシュ14,第2ブッシュ15、第1コーンスプリング16及び第2コーンスプリング17は、リティーニングプレート4に組み付けられサブアッシーを構成している。これら部材は、第2ブッシュ15のスナップ突起15cとリティーニングプレート4の孔4cの係合によって、リティーニングプレート4から軸方向に外れないようになっている。
【0026】
第3ブッシュ18は、図1に示すように、クラッチプレート3の内周部とハブ2のフランジ2b及びハブフランジ5の内周側環状部5fとの間に配置されており、円板状の本体部18aと、本体部18aの一側面から軸方向に突出する複数のスナップ突起18bとを有している。本体部18aのトランスミッション側の側面18d(摩擦面)はフランジ2bの側面及びハブフランジ5の内周側環状部5fの軸方向エンジン側の側面5hに当接している。側面18dと軸方向エンジン側の側面5hによって第2摺動面32が形成されている。また、本体部18aの軸方向エンジン側の側面18eはクラッチプレート3に当接している。
【0027】
また、スナップ突起18bはクラッチプレート3に形成された孔3c内に係合している。このスナップ突起18bの形状は前述のスナップ突起15cと同様である。第3ブッシュ18の内周部には軸方向エンジン側に延びる環状の突出部18cが形成されている。この突出部18cの外周面にはクラッチプレート3の内周面が当接している。以上に述べた第3ブッシュ18はクラッチプレート3に組み付けられサブアッシーを構成している。
【0028】
摩擦発生機構8において、捩じり特性2段目において高ヒステリシストルクを発生するための構造についてさらに詳細に説明する。第2コーンスプリング17は軸方向圧縮されており、この結果第2ブッシュ15はハブフランジ5に付勢され、第3ブッシュは入力側プレート3,4を介してハブフランジ5に付勢されている。プレート3,4とハブフランジ5が相対回転するとき、第2ブッシュ15及び第3ブッシュ18はプレート3,4と一体に回転し、ハブフランジ5に対して摺動する。
【0029】
第2コーンスプリング17の内周縁と第2ブッシュ15によって第1接触部33が形成され、第2コーンスプリング17の外周縁とプレート4によって第2接触部34が形成されている。第1接触部33及び第2接触部34の少なくとも一方は第1摺動面31に比べて、発生する摩擦抵抗(最大静止摩擦力)が大きくなるように設定されている。具体的には、第2コーンスプリング17によって各部分に付与される力は同一であり、第1接触部33及び第2接触部34の少なくとも一方は第1摺動面31に比べて摩擦係数(最大静止摩擦係数)が大きくなるように設定されている。より具体的には、第2ブッシュ15において、環状部15bの軸方向側面にはエンジン側の側面15fより高摩擦係数を得るための高μコーティングが施されている。また、第2コーンスプリング17の内外周縁やプレート4の支持部分に高μコーティングが施されていてもよい。
【0030】
このように第2ブッシュ15に関する摩擦力を設定したのは、第1接触部33及び第2接触部34で滑りが生じないようにするためである。第2ブッシュ15とプレート4とは一体回転する構造であるため第1及び第2接触部33,34では摺動が生じることはないと考えられるが、突起15c,15dと孔4cにわずかでも回転方向に隙間があれば第1接触部33又は第2接触部34でその微小隙間角度範囲で摺動が可能である。しかし、そのような場合でも、本願発明においては、第1接触部33及び第2接触部34の少なくとも一方で発生する摩擦抵抗が第1摺動面31で発生する摩擦抵抗より大きくなっており、プレート3,4とハブフランジ5が相対回転する時には、第1摺動面31では滑りが生じるが第1及び第2接触部33,34では滑りが生じない。このことは、所望の捩じり振動減衰特性が確実に得られることを意味する。
【0031】
第3ブッシュ18においては、軸方向エンジン側の側面18eとプレート3によって接触面35が形成されている。接触面35は、第2摺動面32に比べて、発生する摩擦抵抗(最大静止摩擦力)が大きくなるように設定されている。具体的には、第2コーンスプリング17によって各部分に付与される力は同一であり、接触面35は第2摺動面32に比べて摩擦係数(最大静止摩擦係数)が大きくなるように設定されている。より具体的には、第3ブッシュ18において、軸方向エンジン側の側面18eには側面18dより高摩擦係数を得るための高μコーティングが施されている。
【0032】
このように第3ブッシュ18に関する摩擦力を設定したのは、接触面35で滑りが生じないようにするためである。第3ブッシュ18とプレート3とは一体回転する構造であるため接触面35では摺動が生じることはないと考えられるが、突起18bと孔3cにわずかでも回転方向に隙間があれば接触面35で微小隙間角度範囲内の摺動が可能である。しかし、そのような場合でも、本願発明においては、接触面35で発生する摩擦抵抗が第2摺動面32で発生する摩擦抵抗より大きくなっており、プレート3,4とハブフランジ5が相対回転する時には、第2摺動面32では滑りが生じるが接触面35では滑りが生じない。このことは、所望の捩じり振動減衰特性が確実に得られることを意味する。
【0033】
図14にクラッチディスク組立体1のダンパー機能に関する機械模式図を示す。図14は、入力側の部材と出力側の部材とを一回転方向にねじった場合の各部品の動作や関係を説明するための図である。図から明らかなように、ハブ2とプレート3,4との間には、小トーションスプリング6と大トーションスプリング7が直列に配置されている。小トーションスプリング6と大トーションスプリング7との間にはハブフランジ5が中間部材として配置されている。ハブ2とハブフランジ5との間には、小トーションスプリング6が圧縮される際に機能する小摩擦発生機構を構成する第1ブッシュ14が配置されている。ハブフランジ5とプレート3,4との間には、大トーションスプリング7が圧縮される際に機能する大摩擦発生機構としての第2ブッシュ15及び第3ブッシュ18が配置されている。
【0034】
次に、クラッチディスク組立体1の動作について説明する。
摩擦フェーシング13がエンジン側のフライホイール(図示せず)に押しつけられると、フライホイールのトルクがクラッチプレート3及びリティーニングプレート4に入力される。このトルクは、大トーションスプリング7、ハブフランジ5,小トーションスプリング6を介してハブ2に伝達され、さらに図示しないトランスミッション側のシャフトに出力される。
【0035】
エンジン側のフライホイール(図示せず)からクラッチディスク組立体1にトルク変動が伝達されると、プレート3,4とハブフランジ5とハブ2との間で相対回転が生じ、小トーションスプリング6や大トーションスプリング7が回転方向に圧縮される。
より詳細に説明すると、捩じり角度の小さな領域では小トーションスプリング6のみが圧縮され、第1ブッシュ14及び第3ブッシュ18がハブ2のフランジ2bに対して摺動する。この結果、低剛性・低ヒステリシストルクの特性が得られる。
【0036】
クラッチディスク組立体1の捩じり角度が大きくなると、小トーションスプリング6の圧縮が停止され、一体回転するハブフランジ5及びハブ2とプレート3,4との間で相対回転が生じる。このとき大トーションスプリング7が圧縮され、第2ブッシュ15及び第3ブッシュ18がハブフランジ5に摺動する。ここでは、小トーションスプリング6が圧縮されたときに比べて高剛性・高ヒステリシストルクの特性が得られる。
【0037】
前述の捩じり特性において、低剛性領域から高剛性領域に移行する際に、第1摺動面31及び第2摺動面32が確実に摺動するため、高ヒステリシストルクの発生が遅れることはない。すなわち、音・振動減衰性能がよい。
〔他の実施形態〕
本発明に係る摩擦ブッシュはクラッチディスク組立体の摩擦機構のみならず他の摩擦機構にも適応可能である。
【0038】
また、本発明に係る摩擦発生機構及び摩擦ブッシュは、たとえば捩じり特性2段目の高剛性・高ヒステリシストルクの領域において微小捩じり振動に対して高ヒステリシストルクを発生させないための回転方向隙間を設けたダンパー機構に用いると効果を発揮する。そのようなダンパー機構において摩擦ブッシュとプレートとの間に回転方向隙間が生じている場合でも、微小捩じり振動に対して大摩擦発生機構を発生させない角度領域が大きくなることがない。
【0039】
各ブッシュにおいて摩擦面より接触部の摩擦係数を高くする構成は、コーティングに限定されず、摩擦係数の異なる部材を組みあわせて実現してもよい。
【0040】
【発明の効果】
本発明に係る摩擦発生機構では、第1回転部材と第2回転部材が相対回転するときに、たとえ摩擦部材と第1回転部材が相対回転可能な状態になっていても、摩擦部材は確実に第2回転部材に対して滑るようになっている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態によるクラッチディスク組立体の縦断面概略図。
【図2】一部が切りかかれた図1におけるII矢視図。
【図3】ハブの平面図。
【図4】図3のIV―IV断面図。
【図5】図1の円A部分の拡大図。
【図6】第1ブッシュの平面図。
【図7】図6のVI―VI断面図。
【図8】第2ブッシュの平面図。
【図9】図8のXI―XI断面図。
【図10】図8のX―X断面図。
【図11】第1コーンスプリングの平面図。
【図12】第2コーンスプリングの平面図。
【図13】図5の部分拡大図。
【図14】クラッチディスク組立体におけるダンパー機構の機械回路図。
【符号の説明】
1 クラッチディスク組立体
2 ハブ
3 クラッチプレート(第1回転部材)
4 リティーニングプレート(第1回転部材)
5 ハブフランジ(第2回転部材)
8 摩擦発生機構
15 第2ブッシュ(摩擦部材)
18 第3ブッシュ(摩擦部材)
17 第2コーンスプリング(ばね部材)
Claims (5)
- 互いに所定角度範囲で相対回転可能な第1回転部材及び第2回転部材と、
前記第1回転部材に回転方向に係合するとともに前記第2回転部材に当接し、前記第1及び第2回転部材が相対回転すると前記第2回転部材に摺動して摩擦を発生する摩擦部材と、
前記第1回転部材と前記摩擦部材の間に配置され、前記摩擦部材を前記第2回転部材に対して付勢するためのばね部材とを備え、
前記第1及び第2回転部材が相対回転するときに、前記摩擦部材と前記第1回転部材の間で発生する摩擦抵抗は、前記摩擦部材と前記第2回転部材の間で発生する摩擦抵抗より大きく、
前記ばね部材と前記摩擦部材の間の摩擦係数及び前記ばね部材と前記第1回転部材の間の摩擦係数は前記摩擦部材と前記第2回転部材の間の摩擦係数より高い、
摩擦発生機構。 - 前記摩擦部材と前記第1回転部材の間の摩擦係数は、前記摩擦部材と前記第2回転部材の間の摩擦係数より高い、請求項1に記載の摩擦発生機構。
- 前記摩擦部材は、前記第1回転部材に接触する接触部分と、前記第2回転部材に接触し前記接触部分より摩擦係数が低い摩擦面とを有する、請求項2に記載の摩擦発生機構。
- 前記摩擦部材は、前記ばね部材に接触する接触部分と、前記第2回転部材に接触し前記接触部分より摩擦係数が低い摩擦面とを有する、請求項1または2に記載の摩擦発生機構。
- 第1回転部材と第2回転部材とが相対回転するときに摩擦を発生させるための摩擦部材であって、
前記第1回転部材に回転方向に係合する係合部と、
前記第2回転部材に当接し、前記第1及び第2回転部材が相対回転すると前記第2回転部材に摺動して摩擦を発生するための摩擦面と、
前記第2回転部材以外の部材に接触し、前記摩擦面より摩擦係数が高い接触部と、
を備えた摩擦部材。
Priority Applications (1)
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