JP3805703B2 - 3−5族化合物半導体の製造方法及び3−5族化合物半導体 - Google Patents

3−5族化合物半導体の製造方法及び3−5族化合物半導体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般式Inx Gay Alz N(ただし、x+y+z=1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1)で表される窒化物系3−5族化合物半導体の製造方法及び3−5族化合物半導体に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般式Inx Gay Alz N(ただし、x+y+z=1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1)で表される窒化物系3−5族化合物半導体は、3族元素の組成を変えることにより直接型のバンドギャップエネルギーを調整して、紫外から赤色の波長の光エネルギーに対応させることができるため、紫外から可視領域にわたる高効率の発光素子用材料として利用可能である。また、これまで一般に用いられているSiあるいはGaAsなどの半導体に比べて大きなバンドギャップを持つために、従来の半導体では動作できないような高温においても半導体としての特性を有することを利用して、耐環境性に優れた電子素子の作製が原理的に可能である。
【0003】
しかし、上述した窒化物系3−5族化合物半導体は、融点付近での蒸気圧が非常に高いため、大きな結晶を成長することが非常に難しく、半導体素子作製のための基板として用いることができるような実用的な大きさの結晶が得られていない。このため、該化合物半導体の作製には、Si、GaAs、SiC、サファイア等、該化合物半導体と類似の結晶構造を有していて大きな結晶が作製可能な材料を基板として、この上に所要の化合物半導体の単結晶薄膜層をヘテロエピタキシャル成長させるのが一般的である。現在、このような方法を用いることによって、比較的良質な該化合物半導体の結晶が得られるようになっている。しかし、この場合でも、基板材料と該化合物半導体の格子定数、あるいは熱膨張係数の差に由来する結晶欠陥を低減することが難しく、108 cm-2程度、あるいはそれ以上の欠陥密度を有するのが一般的である。このため、窒化物系3−5族化合物半導体を用いた高性能な半導体デバイスを作製するには、転位密度の低い該化合物半導体結晶が強く求められている。
【0004】
そこで、ヘテロエピタキシャル成長により得られた該化合物半導体の結晶表面上に一旦マスクパターンを形成した後、さらに窒化物系3−5族化合物半導体を再成長することで転位の密度を減少させる方法が試みられている。本方法はマスク上に横方向成長させる点に特徴があり、エピタキシャルラテラルオーバーグロース(Epitaxial Lateral Overgrowth、以下、ELOと記すことがある。)法と呼ばれている。すなわち、欠陥密度が高い該化合物半導体(以下、下地結晶と称することがある)上を、微細な開口部を残してSiO2 などのパターンで覆い、この上にさらに2回目の結晶成長を行なうことにより結晶欠陥の少ない所要の化合物半導体を成長させる方法である。以下の説明において、この2回目以降の結晶成長を再成長と称することがある。
【0005】
この方法によると、再成長の初期には、パターン上には結晶成長が起こらず、開口部のみに結晶成長が生じるいわゆる選択成長が起きる。この段階からさらに結晶成長を続けると、開口部に成長した結晶がパターン上にも広がり、やがてパターンを埋め込んだ構造ができあがる。パターンの埋め込みが生じた直後は、再成長による結晶表面には凹凸が残るものの、さらに結晶成長を進めることで、やがて再成長表面の凹凸が小さくなり、最終的には平坦な結晶表面を得ることができる。上述のような埋め込み構造の形成により、再成長層での転位密度が下地結晶より大幅に低減できることが確認されている。
【0006】
ところで、Siを窒化物系3−5族化合物半導体の選択成長用の基板として用いると、Si基板は熱伝導率が高い、また高品質かつ大面積の単結晶基板が得られるという利点を有している。さらに、Si基板上にはSiトランジスタの技術を利用して多様な電子素子が作製できるため、Si基板上に窒化物系半導体を成長することで、窒化物系半導体による素子とSi半導体による素子との混成が可能であるという利点も有している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、Siと窒化物系3−5族化合物半導体との間には格子定数で20%程度の不整合がある上に、Siの熱膨張係数は窒化物系3−5族化合物半導体のそれよりも小さい。このため、Si基板上に窒化物系3−5族化合物半導体を成長させた場合、窒化物系3−5族化合物半導体を所定の成長温度で成長させた後、その出来上がった窒化物系3−5族化合物半導体をその成長温度から室温へと降温する過程で、窒化物系3−5族化合物半導体に引張り応力が発生する。したがって、Si基板上に窒化物系3−5族化合物半導体膜を例えば1μm以上の厚みに成長させた場合には、成長後その成長温度から室温への冷却過程で該化合物半導体膜内に生じる引張り応力による歪のためにクラックが発生し、得られた窒化物系3−5族化合物半導体の品質を著しく損ない、実用上大きな障害となっている。
【0008】
本発明の目的は、従来技術における上述の問題点を解決することができるようにした、窒化物系3−5族化合物半導体の製造方法及び3−5族化合物半導体を提供することにある。
【0009】
本発明の目的は、また、Si基板上に結晶性の改善されたクラックの少ない窒化物系3−5族化合物半導体を製造することができる3−5族化合物半導体の製造方法及び3−5族化合物半導体を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、Si基板上に部分的に形成された窒化物系3−5族化合物半導体上に窒化物系3−5族化合物半導体を選択成長させる場合にSi基板の露出した部分の表面を窒化して選択成長用のマスクとした後、窒化物系3−5族化合物半導体を選択横方向成長によりエピタキシャル成長させることで上記の課題を解決できることを見い出し、本発明に至った。
【0011】
すなわち、請求項1の発明によれば、Si基板上に窒化物系3−5族化合物半導体をエピタキシャル成長させる3−5族化合物半導体の製造方法であって、Si基板上に第1の窒化物系3−5族化合物半導体を前記Si基板の表面を部分的に覆うようにして設ける第1の工程と、前記第1の工程によって生じた前記Si基板の部分的露出表面を窒化処理し前記窒化物系3−5族化合物半導体からの成長を行わせないマスクとして働く窒化処理部分を形成した後、第2の窒化物系3−5族化合物半導体を選択成長させる第2の工程とを含むことを特徴とする3−5族化合物半導体の製造方法が提案される。
【0012】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明において、前記第2の窒化物系3−5族化合物半導体を選択成長する領域が1辺の長さが1mmの矩形形状か1辺の長さが1mmの矩形より小さい形状であることを特徴とする3−5族化合物半導体の製造方法が提案される。
【0013】
請求項3の発明によれば、請求項1の発明において、前記第2の窒化物系3−5族化合物半導体を選択成長する領域が、1辺の長さが100μm〜300μmの矩形形状であることを特徴とする請求項1記載の3−5族化合物半導体の製造方法が提案される。 また、請求項4の発明によれば、請求項1〜3のいずれかに記載の方法により製造したことを特徴とする3−5族化合物半導体が提案される。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態の一例につき詳細に説明する。
【0015】
Si基板上に結晶性の改善された窒化物系3−5族化合物半導体をエピタキシャル成長させて3−5族化合物半導体を製造するため、先ず、Si基板上に第1の窒化物系3−5族化合物半導体をSi基板の表面を部分的に覆うようにして設け、これによって生じたSi基板の部分的露出表面を窒化処理する。この窒化処理された部分はマスクとして働き、ここに多結晶GaNが析出するのを防ぐので窒化処理された部分には該化合物半導体が成長しない。しかる後、第2の窒化物系3−5族化合物半導体を選択成長させると、Si基板上に部分的に設けられることによって生じている凸部分である第1の窒化物系3−5族化合物半導体をシードに連続GaN膜の作製が可能になる。すなわち、第1の窒化物系3−5族化合物半導体の上に所望の窒化物系3−5族化合物半導体を選択横方向エピタキシャル成長させて、第2の窒化物系3−5族化合物半導体として形成することができる。
【0016】
Si基板上に部分的に第1の窒化物系3−5族化合物半導体を形成する方法の具体例としては、まずSi基板上に窒化物系3−5族化合物半導体を中間層として一様に形成した後、その表面に部分的に開口部を持つマスクを形成し、該開口部においてSi基板が露出するまでエッチングする方法が挙げられる。Si基板上に窒化物系3−5族化合物半導体を中間層として一様に成長する場合、Alを含む該化合物半導体をまずバッファ層として形成した後、所望の該化合物半導体を成長することで、結晶性の優れた窒化物系3−5族化合物半導体を成長でき、好ましい。この場合、窒化物系3−5族化合物半導体の全体としての膜厚は1μm以下が好ましい。その膜厚が1μmより厚くなるとクラックの発生が多くなり好ましくない。
【0017】
Si基板の露出部分の表面を窒化する方法の具体例としては、高温のアンモニア雰囲気中で該露出部分を処理する方法が挙げられる。選択横方向成長を行わせるために用いる気相成長法としては、有機金属気相成長(以下、MOVPEと記すことがある。)法、ハイドライド気相成長(以下、HVPEと記すことがある。)法などが、好適である。
【0018】
Si基板の露出部分の形状としては、ストライプ状のものが好適に用いることができる。Si基板をストライプ状に露出させる場合、1μm以上20μm以下の幅を持ち、ストライプ間の距離を1μm以上20μm以下のものとするのが好ましいが、ストライプの寸法はこれに限定されるものではない。また、Si基板を部分的に露出させるためのパターンとしては、ストライプ状に限定されず、格子状パターンやその他の適宜の種々の形状、形態とすることができる。
【0019】
Si基板の使用面は(111)面、およびその近傍のものを好適に用いることができる。ストライプ方向は中間層として一様に成長した窒化物系3−5族化合物半導体の<11−20>方向、<1−100>方向等とすることができる。特に、ストライプの方向を<1−100>方向およびその近傍の方向とした場合には、成長条件により、選択成長の際に形成されるファセットの制御ができるため好適に用いることができる。
【0020】
本発明はさらに、選択成長する範囲を特定の領域に制限し、これにより、選択成長により形成した窒化物系3−5族化合物半導体の膜厚を厚くしてもクラックの発生を抑えることができるようにした点に特徴を有している。選択成長する範囲は例えば1辺1mm程度の矩形とすれば充分である。しかし、1辺1mmの矩形より小さい例えば一辺100μm〜300μmの矩形とすることが好ましい。
【0021】
図1及び図2は、本発明による窒化物系3−5族化合物半導体の製造方法の実施の形態の一例を模式的に示す製造工程説明図であり、図1にはSi基板上に第1の窒化物系3−5族化合物半導体を部分的に設け、これにより部分的に露出したSi基板の表面を窒化処理するまでの工程が示されており、図2には図1に示した工程により得られたSi基板上に部分的に設けられた第1の窒化物系3−5族化合物半導体上に第2の窒化物系3−5族化合物半導体を横方向選択エピタキシャル成長させ、これにより結晶性の改善された窒化物系3−5族化合物半導体を得るまでの工程が示されている。
【0022】
以下、図1及び図2を参照して本発明の実施の形態の一例につきより具体的に説明する。
【0023】
先ず、Si基板1を用意し、油分、水分の除去のための洗浄を行う(図1(A))。次に、Si基板1の(111)面1a上にMOVPE法によりAlGaN層を50nmの厚さにバッファ層2として形成する(図1(B))。そして、同じくMOVPE法によりバッファ層2上に第1の窒化物系3−5族化合物半導体層3を形成する(図1(C))。ここでは、第1の窒化物系3−5族化合物半導体層3としてGaN層を300nmの厚さに形成する。300nmの厚さに第1の窒化物系3−5族化合物半導体層3を形成するのはクラックの発生を良好に抑えるようにするためである。
【0024】
第1の窒化物系3−5族化合物半導体層3の成長は例えば次のようにして行う。成長圧力80Torr、H2 雰囲気で、サセプタを5rpmで回転させる。まず1100℃まで昇温して10分クリーニングを行い、クリーニング終了と同時にTMAを導入して、3秒後にTMGとNH3 を導入する。これはSiがGaと反応してSiGa合金を生成すること、または、NH3 によって窒化しSiNx 生成を防ぐためである。そしてAlGaNを2.5分間成長させバッファ層2を形成する。次にTMAを停止して、GaNを5分間成長させ、第1の窒化物系3−5族化合物半導体層3を形成する。第1の窒化物系3−5族化合物半導体層3の成長終了後TMGを停止して降温して、GaNから窒素の脱離を抑制するために500℃までNH3 を供給する。以上説明した条件等は一例であり、本発明をこれに限定する趣旨ではない。
【0025】
次に、図1の(C)の工程で得られた基板を使ってストライプ段差を設けたSi基板を作製する。先ず、図1(D)に示したように、第1の窒化物系3−5族化合物半導体層3の上にOAP(ヘキサメチルジシラサン)4を塗布した後、OAP4の上にポジ型のレジスト5を塗布する。そして所定のストライプパターンのCrマスク(図示せず)を用いてパターニングを行い、マスク材料であるSiO2 から成るマスク層6を第1の窒化物系3−5族化合物半導体層3の上に形成する(図1(E))。
【0026】
第1の窒化物系3−5族化合物半導体層3上にストライプ状のマスク層6を形成する方法それ自体は公知であり、パターン作製方法それ自体は本発明の本質ではないので、ストライプパターンマスクの形成についての詳細な説明は省略する。
【0027】
以上のようにして第1の窒化物系3−5族化合物半導体層3上にマスク層6が形成されたならば、マスク層6を用いて反応性イオンエッチング(RIE)を行い、Si基板1を段差Gを付した状態で露出させる。この段差は、例えば1μm程度の高さのものとすることができる。しかる後、フッ酸洗浄によりマスク層6を除し、図1の(G)に示したストライプ段差Si基板が得られる。この結果、Si基板1の上に第1の窒化物系3−5族化合物半導体層3が部分的に設けられることになる。
【0028】
次のステップ(図1(H))では、Si基板1の段差Gの凹部分のSi、すなわち、第1の窒化物系3−5族化合物半導体層3が設けられていない部分のSi基板1の表面のSiを窒化させてSiNx としマスク7を形成する。マスク7の形成は以下のようにして行うことができる。試料をMOVPE装置にセットし圧力80〜300Torr、H2 雰囲気中で、室温からNH3 を導入する。そして、800℃まで昇温して10分間で凹部分のSiを窒化させ、これによりマスク7を形成する。ここで述べた例はあくまでも一例であり、窒化処理に要する、窒化温度、時間、アンモニア供給量、雰囲気の圧力等を適宜変更してよい。
【0029】
このようにして段差Gの凹部分にマスク7を形成することにより、凹部分において多結晶GaNの析出を防いでGaNを成長させず、Si基板1上に部分的に設けられることによって生じている凸部分である第1の窒化物系3−5族化合物半導体層3をシードに連続GaN膜の作製が可能になる。すなわち、第1の窒化物系3−5族化合物半導体層3の上に所望の窒化物系3−5族化合物半導体を選択横方向エピタキシャル成長により第2の窒化物系3−5族化合物半導体として形成することができるのであるが、これについては、以下、図2を参照して詳しく説明する。
【0030】
図1(H)のマスク7の形成工程において、マスク7の形成終了と同時に、成長温度を1000℃又は1100℃まで昇温して、TMGを導入し、45〜150分間MOVPE法によりGaNを成長させる。上述したGaNの成長は、既に説明したように、図2(A)に示すよう第1の窒化物系3−5族化合物半導体層3の表面上において生じる。これによりSi基板1上に所望の窒化物系3−5族化合物半導体として第2の窒化物系3−5族化合物半導体層8が形成されていく。
【0031】
上記の例は、MOVPE反応炉内で窒化処理を行った後、試料であるSi基板1を反応炉から取り出すことなく、直接第2の窒化物系3−5族化合物半導体層8の成長を行なった例である。窒化処理を、第2の窒化物系3−5族化合物半導体層8の成長に用いるMOVPE反応炉とは異なる装置で行ない、Si基板1を窒化処理したのち一旦窒化処理装置から取り出し、MOVPE反応炉にセットして第2の窒化物系3−5族化合物半導体層8の成長を行なってもよい。ただし、窒化処理とそれに続く成長を一貫してMOVPE反応炉で行う方法は、試料を窒化処理の装置から一旦取り出す必要がなく、より簡単な工程となる点で好適な方法である。
【0032】
第2の窒化物系3−5族化合物半導体層8の堆積量が多くなると、第2の窒化物系3−5族化合物半導体層8はやがて横方向に広がり、隣同士でつながるようになり、段差Gによる溝部分の上にも第2の窒化物系3−5族化合物半導体層8が形成されるようになる(図2(B))。第2の窒化物系3−5族化合物半導体層8の厚みが増すにつれてその表面の平坦性が増し、遂には図2(C)に示されるように、表面が平坦な第2の窒化物系3−5族化合物半導体層8がSi基板1上に形成される。この方法によれば、第2の窒化物系3−5族化合物半導体層8を連続膜として作製できる。なお、第1の窒化物系3−5族化合物半導体層3と第2の窒化物系3−5族化合物半導体層8とは、組成が同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0033】
図2に示した第2の窒化物系3−5族化合物半導体層8の成長プロセスは、選択横方向成長であり、下地結晶である第1の窒化物系3−5族化合物半導体層3に生じていた多数の転位のうちの多くは横方向に延び、第2の窒化物系3−5族化合物半導体層8の表面においては転位密度は小さく、結晶性の高い状態となっている。
【0034】
なお、マスク7上には窒化物系3−5族化合物半導体が成長しないので、段差Gの凹部内に空間が生じることがあるが、全く問題はない。また、第2の窒化物系3−5族化合物半導体層8の厚みは、成長温度から室温にまでSi基板1の温度を低下させたときに第2の窒化物系3−5族化合物半導体層8に生じる引っ張り応力歪によるクラック発生を避けるため、1μm程度にするのが好ましい。
【0035】
MOVPE法においては、原料のキャリアガスとして、水素、窒素、あるいは、ヘリウム、アルゴン等の稀ガスを用いることができる。これらは単独または混合して用いることができる。本実施の形態では、水素ガスと窒素ガスとを混合して成る混合ガスをキャリアガスとして用いている。
【0036】
第2の窒化物系3−5族化合物半導体層8を成長させる場合にファセットを形成し、このファセットの形成形態により第2の窒化物系3−5族化合物半導体層8中での貫通転位の伝搬形態、すなわち選択横方向成長を制御し、これにより第2の窒化物系3−5族化合物半導体層8における転位密度の改善を図るため、再成長時におけるファセットを制御することが重要である。ファセットを制御する因子としては、各原料の供給量、成長温度、成長圧力、混合キャリアガスの分圧比(混入比)、不純物等が挙げられる。
【0037】
以上説明したように、図1及び図2に示したようにして所望の窒化物系3−5族化合物半導体をSi基板上に十分結晶性の高い状態で第2の窒化物系3−5族化合物半導体層8として成長させることができる。しかし、この第2の窒化物系3−5族化合物半導体層8の膜厚をさらに厚くしようとすると、第2の窒化物系3−5族化合物半導体層8中に発生したクラック又は段差G中に発生したクラックによって第2の窒化物系3−5族化合物半導体層8の一部が剥離してしまうことがわかった。
【0038】
図3には、Si基板上に形成する3〜5μm巾のストライプパターンに加えて100〜300μm程度の寸法の比較的粗い格子パターンをSi基板上に形成した状態のSi基板の例が一部断面して示されている。図3に示したSi基板の状態は、図1の(H)の工程が終了した場合のSi基板1の状態に相当している。
【0039】
図3において符号Pで示されるのは、粗い格子パターンによって作られる上面形状が矩形のアイランドであり、各アイランドPにおいては、図1、図2に基づいて説明したストライプパターンが形成されている。図3では、アイランドPは簡単化のため4つだけ示されているが、アイランドPの一辺の寸法は例えば1mm程度であり、実際にはアイランドPはSi基板1上に縦横に整列して多数設けられている。
【0040】
したがって、図3に示した状態のSi基板(図1(H)に相当する)上に第2の窒化物系3−5族化合物半導体層8を上述の如くして形成すると、各アイランドPにおいて一辺が100〜300μmの矩形の表面形状の窒化物系3−5族化合物半導体層が独立して成長することになる。このため、Si基板の温度を成長温度から室温に戻したときに各アイランドP上に形成された窒化物系3−5族化合物半導体層に生じる引張り歪の力は、各窒化物系3−5族化合物半導体層の縦横の寸法が100〜300μmと小さいために、小さいものとなり、各アイランドPに形成される窒化物系3−5族化合物半導体層の厚みを5μm以上としても各窒化物系3−5族化合物半導体層内に生じるクラックは少なくて済み、窒化物系3−5族化合物半導体層の剥離も有効に防止できる。これにより、10μm以上のクラックのない比較的平坦な連続膜作製に成功した。このようにして得られるGaN成長領域は、発光ダイオードやレーザを作製する上で十分大きいものである。GaNの結晶性は、同じパターンのSiO2 マスクを用いてSi上に成長したものよりも良いことがわかった。
【0041】
以上、本発明による窒化物系3−5族化合物半導体の製造方法を、一実施の形態に基づき説明した。ここで、製造のための具体的な条件を提示して説明したが、これらの具体的条件は一例であり、本発明はこれらの具体的条件以外の適宜の条件を用いて同様に製造することができることは勿論である。
【0042】
【実施例】
(実施例1)
平滑で高品質なGaN膜をSi基板上に得るため、GaN/AlGaN/Siに段差加工を行い、その後窒化することによりマスクを形成してELOを行った。すなわち、下地基板として、MOVPE法でSi(111)上にAlGaNバッファ層を約50nm成長後、GaNを約0.4μm成長させた。その上にSiO2 を堆積させ、フォトリソグラフィにより窓部とマスク部がそれぞれ5μmのSiO2 のストライプパターンを形成し、RIEを用いて窓部のGaN/AlGaN/Siを深さ約1μmエッチングした。マスク部のSiO2 を除去した後、MOVPE法で凹部分を窒化させてマスクを形成し、凸部分のGaN上にELOを行った。
【0043】
段差GaN/AlGaN/Si基板に、300Torr、700〜800℃で窒化膜を形成し、その後1000℃で45分間成長させたELO−GaNの断面SEM像を調べたところ、凹部分には全くGaNが成長せず、凸部分でGaNのELOが観察できた。
【0044】
(実施例2)
平坦で高品質なGaN膜をSi基板上に得るため、GaN/AlGaN/Siにライン&スペースと100μm×100μmの格子パターンを形成して、成長する領域を制限したELOを行った。下地基板として、MOVPE法でSi(111)上にAlGaNバッファ層を約50nm成長後、GaNを約0.3μm成長させた。その上にスパッタリング法によりSiO2 を堆積させ、フォトリソグラフィにより窓部とマスク部がそれぞれ3μmのSiO2 のストライプパターンを形成し、RIEを用いて窓部のGaN/AlGaN/Siを深さ約1μmエッチングした。SiO2 を除去した後、凹部分を窒化させてマスクを形成し、MOVPE法で凸部分のGaN上にELOを行った。
【0045】
段差GaN/AlGaN/Si基板に、300Torr、800℃で窒化膜を形成し、その後1000℃で60分間成長させ、さらに1100℃で60分成長させた二段階ELO−GaNの断面SEM像を調べたところ、凹部分には全くGaNが成長せず、凸部分をシードに平坦な連続GaN膜が作製でき、剥離も抑制された。またXRCの(0004)回折FWHMは452arcsecでc軸の揺らぎは大幅に改善された。
【0046】
【発明の効果】
本発明によれば、上述の如く、Si基板上に結晶性の改善されたクラックの少ない窒化物系半導体を製造することができる。また、該化合物半導体の形成される領域を制限することにより、Si基板上に結晶性の改善されたクラックの少ない膜厚の厚い窒化物系半導体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による窒化物系3−5族化合物半導体の製造方法の実施の形態の一例を説明するため模式的に示す製造工程図。
【図2】本発明による窒化物系3−5族化合物半導体の製造方法の実施の形態の一例を説明するため模式的に示す製造工程図。
【図3】本発明の他の実施の形態を説明するためのSi基板の一部断面して示す要部拡大斜視図。
【符号の説明】
1 Si基板
2 バッファ層
3 第1の窒化物系3−5族化合物半導体層
4 OAP
5 レジスト
6 マスク層
7 マスク
8 第2の窒化物系3−5族化合物半導体層
G 段差
P アイランド

Claims (4)

  1. Si基板上に窒化物系3−5族化合物半導体をエピタキシャル成長させる3−5族化合物半導体の製造方法であって、
    Si基板上に第1の窒化物系3−5族化合物半導体を前記Si基板の表面を部分的に覆うようにして設ける第1の工程と、
    前記第1の工程によって生じた前記Si基板の部分的露出表面を窒化処理し前記窒化物系3−5族化合物半導体からの成長を行わせないマスクとして働く窒化処理部分を形成した後、第2の窒化物系3−5族化合物半導体を選択成長させる第2の工程と
    を含むことを特徴とする3−5族化合物半導体の製造方法。
  2. 前記第2の窒化物系3−5族化合物半導体を選択成長する領域が1辺の長さが1mmの矩形形状か1辺の長さが1mmの矩形より小さい形状であることを特徴とする請求項1記載の3−5族化合物半導体の製造方法。
  3. 前記第2の窒化物系3−5族化合物半導体を選択成長する領域が、1辺の長さが100μm〜300μmの矩形形状であることを特徴とする請求項1記載の3−5族化合物半導体の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の方法により製造したことを特徴とする3−5族化合物半導体。
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