JP3804465B2 - 油圧作業機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、油圧ショベル等の油圧作業機に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば油圧ショベルでは、ブームシリンダ、アームシリンダ、バケットシリンダ等の油圧アクチュエータと、エンジンにより駆動される油圧ポンプとが備えられ、該油圧ポンプから各油圧アクチュエータへの圧油の供給を方向切換スプール弁を介して制御するようにしている。前記方向切換スプール弁は、そのスプールが操作レバーの操作量及び操作方向に応じてパイロット圧油等を介して駆動され、油圧アクチュエータの作動方向や油圧アクチュエータへの圧油の供給量を制御する。
【0003】
この種の油圧ショベルでは、油圧ポンプから油圧アクチュエータへの圧油の供給制御を担う油圧回路は、方向切換スプール弁にブリードオフ通路を備えたオープン回路が一般的に用いられている。前記ブリードオフ通路は、方向切換スプール弁の中立状態(操作レバーの中立状態)では、油圧ポンプを油圧タンクに開放する。そして、操作レバーが中立状態から操作され、それに応じて方向切換スプール弁のスプールが変位すると、ブリードオフ通路は、前記スプールのプロファイル等によってあらかじめ定められた開口特性(操作レバーの操作量に対する開口面積の特性)で開口面積が閉じ側に変化する。
【0004】
ところで、油圧ショベルでの作業形態は、重負荷作業から軽負荷作業まで多岐にわたっている。また、作業内容等に応じてバケット等のアタッチメントを現場にて適宜、交換することがしばしば行われ、標準的なものよりも重いアタッチメントが装着される場合も多々ある。
【0005】
このような場合、上述のようなオープン回路では、操作レバーの操作に対する油圧アクチュエータの動作特性は、油圧アクチュエータの負荷やアタッチメントの重量の影響を受け易く、油圧アクチュエータの好適な操作性が得られないことが多々ある。例えば、重負荷作業を行う場合や重いアタッチメントを装着した場合には、操作レバーの中立状態からの操作量を通常の場合よりも大きくしなければ油圧アクチュエータが起動せず、また、油圧アクチュエータの作動速度を制御し得る操作レバーの操作量の範囲が狭いものとなってしまう。そして、このような場合には、所望の作業を円滑に行うことが困難となる。
【0006】
このような不都合を解消し得るものとして、油圧ポンプから油圧アクチュエータへの圧油の管路に圧力補償弁を設け、油圧アクチュエータへの圧油の供給量が該油圧アクチュエータの負荷によらずに、操作レバーの操作量に応じて一義的にに定まるようにした油圧回路システム(所謂ロードセンシングシステム)が知られている。かかるロードセンシングシステムによれば、操作レバーの操作に対する油圧アクチュエータの動作形態を、負荷やアタッチメントの重量によらずに一定にすることができる。
【0007】
しかるに、かかるシステムでは、圧力補償弁は一般に高価であるため、コスト的に不利なものとなる。また、操作レバーの操作位置に対する油圧アクチュエータの動作が一義的に定まることから、操作レバーの操作位置が僅かに変化しただけで、油圧アクチュエータの動作も敏感に変化し、油圧アクチュエータの一定の動作が要求されるような作業を却って行いずらいものとなるという不都合があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであり、方向切換スプール弁にブリードオフ通路を備えた油圧回路を基本として、操作レバーの操作による油圧アクチュエータの操作性を向上することができる油圧作業機を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の態様の油圧作業機はかかる目的を達成するために、油圧ポンプと、油圧アクチュエータと、該油圧ポンプから油圧アクチュエータへの圧油の供給を制御すべく該油圧ポンプから油圧アクチュエータへの管路に設けられると共にブリードオフ通路を有する方向切換スプール弁と、該方向切換スプール弁を操作するための操作レバーと、前記方向切換スプール弁のブリードオフ通路を流れる圧油の流量を調整すべく該ブリードオフ通路に連なる流路に設けられた開口面積を調整可能な可変開口弁と、該可変開口弁の開口面積を制御する可変開口弁制御手段と、該可変開口弁制御手段に対して所定の操作により前記可変開口弁の開口面積を指示する開口面積指示操作手段とを備え、前記可変開口弁制御手段は、前記操作レバーが前記方向切換スプール弁のブリードオフ通路が閉じ始める前の操作量としてあらかじめ定めた所定操作量以上に操作されたとき、該操作レバーの操作量によらずに前記可変開口面積指示操作手段により指示された開口面積に前記可変開口弁を制御することを特徴とするものである。
【0010】
かかる本発明の第1の態様では、前記操作レバーの操作によって前記方向切換スプール弁のブリードオフ通路が閉じ始める前に、前記可変開口弁の開口面積が前記開口面積指示操作手段の操作によって指示された開口面積に制御されるので、前記ブリードオフ通路が閉じ始めて油圧アククエータへの圧油の供給が開始する際における前記ブリードオフ通路の開口面積と前記可変開口弁の開口面積とを合わせた合成開口面積(前記ブリードオフ通路や可変開口弁の油通路を含めたブリードオフ流路の全体的な開口面積)は、前記開口面積指示操作手段による前記可変開口弁の開口面積の指示値が小さい程、小さくなる。そこで、本発明の第1の態様では、前記油圧アクチュエータの負荷が比較的大きいと判断される状況では、その判断される負荷が大きい程、可変開口弁の開口面積を小さくするように前記開口面積指示操作手段の所定の操作を行っておく。これにより、油圧アクチュエータの負荷が比較的大きい場合でも、油圧アクチュエータへの圧油の供給が開始される際の前記合成開口面積が小さめに制御されるので、前記方向切換スプール弁の上流側(油圧ポンプ側)の圧油の圧力が、前記操作レバーの比較的小さい操作量でも迅速に上昇するようになる。その結果、操作レバーの操作に伴う前記油圧アクチュエータの起動(作動開始)を、油圧アクチュエータの負荷によらずに迅速に行うことが可能となる。
【0011】
また、操作レバーの操作量が前記所定操作量以上になると、前記可変開口弁の開口面積は、その指示値が変更されない限り操作レバーの操作量によって変化しないため、基本的には、操作レバーの操作量に対する前記方向切換スプール弁のブリードオフ通路の開口面積の変化の形態と同様の形態で前記合成開口面積が操作レバーの操作量に対して変化することとなる。このため、操作レバーの操作量に対する前記ブリードオフ通路の開口面積の特性を生かして、油圧アクチュエータを操作することが可能となる。
【0012】
従って、本発明の第1の態様によれば、操作レバーの操作による油圧アクチュエータの操作性を向上することができる。
【0013】
尚、操作レバーの操作量に対する前記方向切換弁スプール弁のブリードオフ通路の開口面積の特性は、該ブリードオフ通路の閉じ始めの直後は、操作レバーの操作量の増加に伴い急激にブリードオフ通路の開口面積が小さくなり、その後、操作レバーの操作量の増加に伴い比較的緩やかに該開口面積が小さくなっていくような特性が好適である。
【0014】
かかる本発明の第1の態様の油圧作業機では、前記開口面積指示操作手段は、例えば油圧作業機の運転者による操作ツマミ等の操作子の操作に応じて前記可変開口弁の開口面積を前記可変開口弁制御手段に対して指示するようにすることも可能であるが、前記油圧作業機の運転者が発する音声を受信する手段を備え、該運転者が発する所定種類の音声に応じて前記前記可変開口弁制御手段に対して前記可変開口弁の開口面積を指示するようにすることが好適である。
【0015】
これによれば、運転者が油圧作業機による作業を行いながら、可変開口弁の所望の開口面積、ひいては、前記操作レバーの操作に対する前記油圧アチュエータの動作特性を指示することができる。
【0016】
また、本発明の第2の態様の油圧作業機は、前記の目的を達成するために、油圧ポンプと、油圧アクチュエータと、該油圧ポンプから油圧アクチュエータへの圧油の供給を制御すべく該油圧ポンプから油圧アクチュエータへの管路に設けられると共にブリードオフ通路を有する方向切換スプール弁と、該方向切換スプール弁を操作するための操作レバーと、前記方向切換スプール弁のブリードオフ通路を流れる圧油の流量を調整すべく該ブリードオフ通路に連なる流路に設けられた開口面積を調整可能な可変開口弁と、該可変開口弁の開口面積を制御する可変開口弁制御手段と、前記油圧アクチュエータの負荷を検出する負荷検出手段とを備え、前記可変開口弁制御手段は、前記負荷検出手段により検出された負荷が大きい程、前記可変開口弁の開口面積を小さくするように該開口面積を前記負荷に応じて決定すると共に、前記操作レバーが前記方向切換スプール弁のブリードオフ通路が閉じ始める前の操作量としてあらかじめ定めた所定操作量以上に操作されたとき、該操作レバーの操作量によらずに前記負荷に応じて決定した開口面積に前記可変開口弁を制御することを特徴とするものである。
【0017】
かかる本発明の第2の態様では、前記第1の態様と同様、前記ブリードオフ通路が閉じ始めて油圧アククエータへの圧油の供給が開始する際における前記ブリードオフ通路の開口面積と前記可変開口弁の開口面積とを合わせた合成開口面積は、前記可変開口弁の開口面積が小さい程、小さくなる。そして、本発明では、前記負荷検出手段により油圧アクチュエータの負荷を検出し、この検出した負荷が大きい程、前記可変開口弁の開口面積を小さくするように該可変開口弁の開口面積を制御する。従って、油圧アクチュエータの負荷が比較的大きい場合でも、油圧アクチュエータへの圧油の供給が開始される際の前記合成開口面積が自動的に負荷の大きさに適した小さめの面積に制御されることとなる。この結果、前記第1の態様と同様に、操作レバーの操作に伴う前記油圧アクチュエータの起動(作動開始)を、油圧アクチュエータの負荷によらずに迅速に行われる。
【0018】
また、操作レバーの操作量が前記所定操作量以上になると、前記可変開口弁の開口面積は、操作レバーの操作量によって変化しないため、前記第1の態様と同様に、操作レバーの操作量に対する前記ブリードオフ通路の開口面積の特性を生かして、油圧アクチュエータを操作することが可能となる。
【0019】
従って、本発明の第2の態様によれば、操作レバーの操作による油圧アクチュエータの操作性を向上することができる。
【0020】
尚、本発明の第2の態様では、操作レバーの操作量が前記所定量以上であるときの前記可変開口弁の開口面積の制御については、油圧アクチュエータの負荷をリアルタイムで逐次検出し、それに応じて該開口面積を逐次制御するようにしてもよいが、例えば作業者がなんらかの所定の操作を行った時点での油圧アクチュエータの負荷に応じて可変開口弁の開口面積を制御するようにしてもよい。
【0021】
また、操作レバーの操作量に対する前記方向切換弁スプール弁のブリードオフ通路の開口面積の特性は、本発明の第1の態様の場合と同様の特性であることが好適である。
【0022】
また、前述の本発明の第1及び第2の態様では、前記油圧作業機が、例えば前記油圧アクチュエータ及び方向切換スプール弁としてそれぞれブームシリンダ及びブーム用方向切換スプール弁を具備する油圧ショベルである場合には、前記可変開口弁制御手段は、該ブーム用方向切換スプール弁を操作するための前記操作レバーが前記油圧ショベルのブームの上昇方向及び下降方向のうちの上昇方向に操作された場合にのみ、前記可変開口弁の開口面積の制御を行うことが好適である。
【0023】
すなわち、油圧ショベルによる作業では、特に、ブームシリンダによるブームの上昇動作の際に、ブームシリンダに大きな負荷がかかりやすいので、前記可変開口弁制御手段による可変開口弁の開口面積に制御は、前記操作レバーが油圧ショベルのブームの上昇方向に操作された場合にのみ行うことが好適である。これにより、操作レバーの操作に対するブームの操作性、ひいては、油圧ショベルによる作業性(作業のし易さ)を向上させることができる。
【0024】
尚、本発明の第1及び第2の態様では、例えば油圧作業機が油圧ショベルである場合においては、二つの油圧ポンプの吐出圧油を合流させてブームシリンダやアームシリンダに供給する場合に各油圧ポンプに連なるブリードオフ流路を閉じるべく設けられるカット弁を前記可変開口弁として用いるようにしてもよい。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明の油圧作業機の第1実施形態を図1〜図4を参照して説明する。図1は本実施形態の油圧作業機の要部の油圧回路図、図2〜図4は本実施形態の油圧作業機の作動を説明するための線図である。尚、本実施形態の油圧作業機は、油圧ショベルである。また、本実施形態は、本発明の第1の態様の実施形態である。
【0026】
図1を参照して、まず、本実施形態の油圧ショベルの全体的な概要構成を説明する。同図中、1,2は可変容量型の油圧ポンプ、3,4はそれぞれ図示を省略する右側走行用油圧モータ及びバケットシリンダへの圧油の供給を制御するための方向切換スプール弁、5は本発明における油圧アクチュエータとしてのブームシリンダ6への圧油の供給を制御するための方向切換スプール弁、7,8,9はそれぞれ図示を省略する左側走行用油圧モータ、旋回用油圧モータ及びアームシリンダへの圧油の供給を制御するための方向切換スプール弁である。
【0027】
本実施形態では、前記油圧ポンプ1の吐出口に、方向切換スプール弁3,4,5が管路10を介して順次接続されており、これらの方向切換スプール弁3,4,5をそれぞれ介して前記右側走行用油圧モータ、バケットシリンダ、ブームシリンダ6に油圧ポンプ1から圧油を供給可能としている。同様に、前記油圧ポンプ2の吐出口に、方向切換スプール弁7,8,9が管路11を介して順次接続されており、これらの方向切換スプール弁7,8,9,をそれぞれ介して前記左側走行用モータ、旋回用モータ、アームシリンダに油圧ポンプ2から圧油を供給可能としている。
【0028】
尚、油圧ショベルの機構的な基本構成は周知であるため、ここでは詳細な説明及び図示は省略するが、前記バケットシリンダ、アームシリンダ、ブームシリンダ6はそれぞれ油圧ショベルのバケット、アーム、ブームを駆動するめのアクチュエータ、旋回用用油圧モータは、油圧ショベルの機体の上部旋回体の旋回動作を行うためのアクチュエータ、右側及び左側走行用油圧モータは、油圧ショベルの機体の下部走行体の走行動作を行うためのアクチュエータである。
【0029】
図1中、12は左右の両走行用油圧モータにより直進走行を行う際に、それらの両油圧モータへの圧油の供給量を調整するための切換弁、13は図示しないブームの上げ動作時に必要に応じて油圧ポンプ1側の圧油に油圧ポンプ2側の圧油を合流させてブームシリンダ6に供給するためのブーム合流弁、14は図示しないアームの押し動作時に必要に応じて油圧ポンプ2側の圧油に油圧ポンプ1側の圧油を合流させてアームシリンダに供給するためのアーム合流弁である。
【0030】
また、15,16は全開状態から全閉状態まで開口面積を変更可能なカット弁であり、カット弁15はブームシリンダ6用の方向切換スプール弁5から油タンク17に至るブリードオフ用の管路18に介装され、カット弁16はアームシリンダ用の方向切換スプール弁9から油タンク17に至るブリードオフ用の管路19に介装されている。この場合、カット弁15は、基本的には、油圧ポンプ1側の圧油を前記アーム合流弁14を介して油圧ポンプ2側の圧油に合流してアームシリンダに供給する際に、管路18を閉じ、それにより油圧ポンプ1側からアームシリンダに十分な量の圧油を供給することができるようにするためのものである。同様に、カット弁16は、油圧ポンプ2側の圧油を前記ブーム合流弁13を介して油圧ポンプ1側の圧油に合流してブームシリンダ6に供給する際に、管路19を閉じ、それにより油圧ポンプ2側からブームシリンダ6に十分な量の圧油を供給することができるようにするためのものである。
【0031】
尚、本実施形態では、ブームシリンダ6用の方向切換スプール弁5(以下、ブーム用スプール弁5という)側のカット弁15は、後述するように本発明における可変開口弁として用いられるものである。
【0032】
次に、本発明に関連した構成を詳説する。
【0033】
本発明における油圧アクチュエータとしての前記ブームシリンダ6は、そのボトム側油室6aが管路20を介してブーム用スプール弁5に接続されると共に、管路21を介して前記ブーム合流弁13に接続され、さらに、ロッド側油室6bが管路22を介してブーム用スプール弁5に接続されている。
【0034】
前記ブーム用スプール弁5は、そのパイロットポート5x,5yがブーム操作用の揺動自在な操作レバー23aを有するパイロット操作器23に接続されている。該パイロット操作器23は、操作レバー23aがその中立位置から例えば図の矢印Uの向きに揺動操作されたときに、該操作レバー23aの操作量に比例したパイロット圧をパイロットポート5xに付与し、また、操作レバー23aがその中立位置から例えば図の矢印Dの向きに揺動操作されたときに、該操作レバー23aの操作量に比例したパイロット圧をパイロットポート5yに付与するものである。ここで、操作レバー23aの矢印U側への操作は、ブーム上げ動作(ブーム用シリンダ6の伸長動作)を行う場合の操作であり、矢印D側への操作は、ブーム下げ動作(ブーム用シリンダ6の短縮動作)を行う場合の操作である。
【0035】
前記ブーム用スプール弁5は、そのパイロットポート5x又は5yにパイロット操作器23から付与されるパイロット圧に応じて図示しないスプールが移動して作動状態が切換わる弁であり、油圧ポンプ1側から供給される圧油の余剰油を前記カット弁15側の管路18を介して油タンク17に還流させるブリードオフ通路5aを有している。そして、該ブーム用スプール弁5は、その基本的作動位置として、図示のA位置、B位置、C位置を有している。
【0036】
前記B位置は、前記操作レバー23aが中立位置にある状態(パイロットポート5x、5yのいずれにもパイロット圧が付与されていない状態)におけるブーム用スプール弁5の中立位置であり、該B位置では、油圧ポンプ1側の管路10(以下、メイン管路10という)を前記カット弁15(可変開口弁)側の管路18(以下、ブリードオフ管路18という)にブリードオフ通路5aを介して開通すると共に、ブーム用シリンダ6のボトム側油室6a、ロッド側油室6bにそれぞれ連なる管路20,21を閉じる。従って、この中立位置Bでは、ブーム用シリンダ6は作動不能とされる。
【0037】
また、前記A位置は、操作レバー23aが矢印U側(ブーム上げ側)に最大操作された状態に対応するブーム用スプール弁5の作動位置であり、該A位置では、ブリードオフ通路5aを閉じると共に、前記バケットシリンダ用の方向切換スプール弁4の上流側で前記メイン管路10から分岐された分岐管路10aを前記管路20に開通し、さらに、管路22を管路24を介して油タンク17に開通する。従って、このA位置では、ブーム用シリンダ6のボトム側油室6aに油圧ポンプ1の吐出圧油が供給されるようになり、該ブーム用シリンダ6が伸長側(ブームの上げ側)に作動可能となる。
【0038】
また、前記C位置は、操作レバー23aが矢印D側(ブーム下げ側)に最大操作された状態に対応するブーム用スプール弁5の作動位置であり、該C位置では、ブリードオフ通路5aを閉じると共に、前記分岐管路10aを前記管路22に開通し、さらに、管路20を管路24を介して油タンク17に開通する。従って、このC位置では、ブーム用シリンダ6のロッド側油室6bに油圧ポンプ1の吐出圧油が供給されるようになり、該ブーム用シリンダ6が短縮側(ブームの下げ側)に作動可能となる。
【0039】
尚、前記ブリードオフ通路5aは、前記中立位置BとA位置との間では、ブーム用スプール弁5のスプールのプロファイルによって、その開口面積がパイロット操作器23からパイロットポート5xに付与されるパイロット圧(以下、ブーム上げパイロット圧Piという)に応じて例えば図2に実線aで示すような形態で変化する。すなわち、ブーム上げパイロット圧Piがある所定圧Pi0(例えば0.5MPa)に上昇するまでは、ブリードオフ通路5aの開口面積は全開状態に維持されるが、該所定圧Pi0を超えると、ブーム上げパイロット圧Piの増加に伴い、急激にブリードオフ通路5aの開口面積が小さくなり、その後、該ブーム上げパイロット圧Piの増加に伴い緩やかに開口面積が小さくなっていくようになっている。
【0040】
本発明における可変開口弁としての前記カット弁15は、そのパイロットポート15xが電磁比例弁25に接続されている。該電磁比例弁25は、そのソレノイド25xへの通電電流に比例したパイロット圧を図示しないパイロットポンプの吐出圧油から生成し、それをカット弁15のパイロットポート15xに付与するものである。そして、カット弁15は、その開口面積が、パイロットポート15xに付与されるパイロット圧に応じて変化し、該パイロット圧が大きい程(電磁比例弁25の通電電流が大きい程)、開口面積が小さくなる。
【0041】
本実施形態では、上述した油圧回路構成の他、前記電磁比例弁25の通電制御、ひいては、カット弁15の開口面積の制御を行うためのコントローラ26(電子回路ユニット)と、ブーム用スプール弁5のパイロットポート5xにパイロット操作器23から付与されるブーム上げパイロット圧Piを操作レバー23aの操作量を表すパラメータとして検出する圧力センサ27と、カット弁15の開口面積を作業者がコントローラ26に指示するための操作ボリューム28と、該操作ボリューム28によるカット弁15の開口面積を指示するモードを選択するためのモード選択スイッチ29(ON/OFFスイッチ)とが備えられ、圧力センサ27、操作ボリューム28及びモード選択スイッチ29がコントローラ26に電気的に接続され、コントローラ26が前記電磁比例弁25のソレノイド25xに電気的に接続されている。
【0042】
ここで、コントローラ26は、本発明における可変開口弁制御手段としての機能を有するものであり、操作ボリューム28は、本発明における開口面積指示操作手段としての機能を有するものである。
【0043】
前記操作ボリューム28は、本実施形態では、図示のP位置とQ位置との間で回転可能なダイヤル式のものであり、その操作位置(回転位置)に応じたレベルの信号をコントローラ26に出力する。この場合、操作ボリューム28の操作位置がP位置寄りであるほど、カット弁15の開口面積の指示値が小いものとされ、逆に操作位置がQ位置寄りであるほど、カット弁15の開口面積の指示値が大きいものとされている。
【0044】
また、コントローラ26は、操作ボリューム28の操作位置に応じて前記電磁比例弁25の通電電流(以下、カット弁開口制御用電流という)を決定するためのデータテーブルを有しており、このデータテーブルは例えば図3に示すように設定されている。この場合、コントローラ26が操作ボリューム28の操作位置に応じて決定するカット弁開口制御用電流は、操作ボリューム28の操作位置がP位置寄りであるほど、大きくなり(但し既定の上限電流Imax以下)、該操作位置がQ位置寄りであるほど、小さくなる(但し既定の下限電流Imin以上)。尚、電磁比例弁25の通電電流が上記上限電流Imaxであるときにはカット弁15は全閉状態となり、上記下限電流Iminであるときにはカット弁15は全開状態となる。
【0045】
次に、かかる本実施形態の油圧ショベルの作動を説明する。
【0046】
作業者は例えば油圧ショベルによる作業を開始する前や作業の休止時等に、前記モード選択スイッチ29をON操作した状態で、操作ボリューム28の操作位置を調整する。このとき、例えばブーム等の動作による重負荷作業を行う場合、あるいはバケットを標準的なものよりも重量のあるものに交換した場合等、ブームシリンダ6の負荷が重いと判断されるような状況では、操作ボリューム28を前記P位置寄りに操作する。また、ブームシリンダ6の負荷が軽いと判断されるような状況では、操作ボリューム28を前記Q位置寄りに操作する。換言すれば、作業時に予測されるブームシリンダ6の負荷が重いほど、カット弁15の開口面積の指示値を小さくするように操作ボリューム28を操作し、逆に、予測される負荷が小さいほど、カット弁15の開口面積の指示値を大きくするように操作ボリューム28を操作する。
【0047】
そして、作業者が該操作ボリューム28の操作後、モード選択スイッチ29をOFF操作すると、コントローラ26は、操作ボリューム28の現在の操作位置から前記図3のデータテーブルに基づいて前記カット弁開口制御用電流を決定し(例えば図3のIx)、それを図示しないメモリに記憶保持する。
【0048】
次いで、作業者が油圧ショベルによる作業を開始し、ブーム用の操作レバー23aをブーム上げ側に操作すると、コントローラ26は次のようにカット弁15の開口面積を電磁比例弁25を介して制御する。すなわち、コントローラ26は、前記圧力センサ27により検出されるブーム上げパイロット圧Pi(これは操作レバー23aのブーム上げ側の操作量を表す)があらかじめ定めた所定値Pi1(図2参照)以上であるか否かを判断する。ここで図2を参照して、前記所定値Pi1は、本実施形態では、ブーム用スプール弁5のブリードオフ通路5aが閉じ始めるブーム上げパイロット圧Pi0よりも若干小さい値に定められている。
【0049】
そして、コントローラ26は、図4に示すように、ブーム上げパイロット圧Piの検出値が、Pi<Pi1であるときには、電磁比例弁25の通電電流値を前記下限電流値Iminとし、その下限電流値Iminで電磁比例弁25に通電する。従って、この場合には、前記カット弁15は全開状態に制御される。
【0050】
また、Pi≧Pi1であるときには、コントローラ26は、図4に示すように、先に前記操作ボリューム28の操作位置に対応して記憶保持した前記カット弁開口制御用電流Ixで電磁比例弁25に通電する。従って、この場合には、前記カット弁15は、操作ボリューム28の操作位置に対応した開口面積に制御される。
【0051】
このような電磁比例弁25の通電制御によって、ブーム用の操作レバー23aを中立位置からブーム上げ側に操作したとき、カット弁15の開口面積は、ブーム上げパイロット圧Piが、ブーム用スプール弁5のブリードオフ通路5aが閉じ始める直前の所定値Pi1に達するまでは(この状態は操作レバー23aの操作位置が中立位置近傍の所謂不感帯に存する状態である)、全開状態に維持される。そして、ブーム上げ側への操作レバー23aの操作量がさらに大きくなって、ブーム用スプール弁5のブリードオフ通路5aが閉じ始める直前になると、カット弁15の開口面積は操作ボリューム28の操作により作業者が指示した開口面積に制御され、Pi≧Pi1となる操作レバー23aの操作位置では、該操作レバー23aの操作量によらずに(ブーム上げパイロット圧Piによらずに)、カット弁15の開口面積が指示された開口面積で一定に制御される。
【0052】
かかる本実施形態の油圧ショベルによれば、例えば操作ボリューム28によりカット弁15の開口面積を全開状態の開口面積に指示したとき、カット弁15の開口面積は、ブーム上げパイロット圧Pi(操作レバー23aのブーム上げ側の操作量)に対して図2に一点鎖線b’で示すようになり、このとき、前記ブーム用スプール弁5のブリードオフ通路5aの開口面積とカット弁15の開口面積とを合わせた合成開口面積は、ブーム上げパイロット圧Piに対して、図2に実線bで示すように変化する。
【0053】
また、例えば操作ボリューム28によりカット弁15の開口面積をより小さな開口面積に指示したとき、カット弁15の開口面積は、ブーム上げパイロット圧Piに対して図2に二点鎖線c’で示すように変化し、このとき、前記合成開口面積は、ブーム上げパイロット圧Piに対して、例えば図2に実線cで示すように変化する。
【0054】
尚、上記合成開口面積は、ブーム用スプール弁5のブリードオフ通路5aの開口面積をAb、カット弁15の開口面積をAcとしたとき、Ab・Ac/√(Ab2+Ac2)という式により求められる。また、以下の説明では、ブーム用スプール弁5のブリードオフ通路5aと、カット弁15を有するブリードオフ管路18とを合わせた流路と総称的にブリードオフ流路と称し、上記合成開口面積をブリードオフ流路の合成開口面積と称することがある。
【0055】
図2の実線a〜cを比較して明らかなように、ブリードオフ流路の合成開口面積は、ブーム上げパイロット圧Piに対して(操作レバー23aのブーム上げ側の操作量に対して)、スプール弁5のブリードオフ通路5aの開口面積と概ね同様の形態で変化し、ブーム上げパイロット圧Piが所定値Pi1(但し、カット弁15の開口面積の指示値が全開状態の開口面積であるときは、所定値Pi0)を超えたときから急激に合成開口面積が小さくなり、その後、ブーム上げパイロット圧Piの増加に伴い(操作レバー23aの操作量の増加に伴い)、比較的緩やかに合成開口面積が小さくなっていく。また、この場合、操作ボリューム28の操作によるカット弁15の開口面積の指示値、すなわち、ブーム上げパイロット圧Piが所定値Pi1以上であるときに制御されるカット弁15の開口面積が小さい程、操作レバー23aの操作によりブーム上げパイロット圧Piが所定値Pi1を超えた直後の合成開口面積も小さくなる。
【0056】
従って、油圧ショベルによる作業時のブームシリンダ6の負荷が大きいと判断される状況では、作業者が操作ボリューム28によりカット弁15の開口面積を小さめに指示し、また、その開口面積の指示値をブームシリンダ6の負荷が大きい程、小さくするように操作ボリューム28を操作することにより、ブームシリンダ6のボトム側油室6aに圧油の供給が開始する際における前記ブリードオフ流路の合成開口面積が、ブームシリンダ6の負荷に適合した小さめの開口面積となる。その結果、ブームシリンダ6の負荷が大きい状況でも、操作レバー23aの操作量が小さい段階でブーム用スプール弁5の上流側の圧油の圧力が迅速に上昇するようになり、ブームシリンダ6の起動を操作レバー23aの初期操作段階で円滑に行うことができる。
【0057】
また、ブームシリンダ6の起動後は、ブリードオフ流路の合成開口面積は、ブーム用スプール弁5のブリードオフ通路5aの開口面積と同様の形態で、操作レバー23aの操作量に対して変化するため、操作レバー23aの操作量に対するブリードオフ通路5aの開口面積の特性に則した形態でブームシリンダ6を操作することができ、該ブームシリンダ6を操作レバー23aの操作により円滑に作動させることができる。すなわち、ブームシリンダ6の起動後は、ブリードオフ流路の合成開口面積は、ブーム用スプール弁5のブリードオフ通路5aの開口面積と同様に、操作レバー23aの操作量の増加に伴い、比較的緩やかに小さくなっていくため、操作レバー23aの操作量の変化に対してブームシリンダ6の挙動が過剰に変化することがない。このため、作業者はブームシリンダ6の所望の作動を行わせ易くなり、ブームシリンダ6の操作性が高まる。
【0058】
また、前記ブリードオフ流路を流れる圧油の流量は、ブームシリンダ6の負荷圧に応じて増減し、ブームシリンダ6に供給される圧油の流量を一定に維持するように作用するため、ブームシリンダ6の負荷圧の変動によらずにブームシリンダ6の安定した挙動を確保することができる。
【0059】
尚、本実施形態では、カット弁15の開口面積の前述のような制御は、ブーム上げ動作の場合にだけ行われ、ブーム下げ動作の場合は行われず、ブーム下げ動作の場合には、カット弁15の開口面積は全開状態とされる。これは、ブーム下げ動作時は、ブームシリンダ6は、その短縮方向に負荷を受けるため、ブームシリンダ6の負荷の大小は、ブーム下げ動作時のブームシリンダ6の操作性にほとんど影響を及ぼさないためである。
【0060】
次に、本発明の油圧作業機の第2実施形態を図5及び図6を参照して説明する。図5は本実施形態の油圧作業機の要部の油圧回路図、図6は本実施形態の油圧作業機の作動を説明するための線図である。尚、本実施形態は、本発明の第1の態様の実施形態である。また、本実施形態は、前記第1実施形態と一部の構成のみが相違するものであるので、同一構成部分については第1実施形態と同一の参照符号を用いて説明を省略する。
【0061】
図5を参照して、本実施形態の油圧ショベルは、油圧回路の構成は前記第1実施形態と同一であり、前記電磁比例弁25を介してカット弁15の開口面積を制御するコントローラ26に対する入力データとそれに応じたコントローラ26の制御処理の形態が第1実施形態のものと相違している。
【0062】
すなわち、本実施形態の油圧ショベルでは、前記第1実施形態のものの操作ボリューム28及びモード設定スイッチ29を具備せず、これに代えて、マイクロフォン30が本発明における開口面積指示操作手段として設けられ、このマイクロフォン30の音声出力信号がコントローラ26に入力されるようになっている。そして、コントローラ26は、マイクロフォン30の出力信号により該マイクロフォン30に入力された音声を認識可能とされている。尚、マイクロフォン30は、油圧ショベルの運転室内に配置されている。
【0063】
この場合、本実施形態では、コントローラ30は、カット弁15の開口面積を小さくすることを意味する第1特定音声と、カット弁15の開口面積を大きくすることを臣する第2特定音声との二種類の音声を認識可能とされている。これらの第1及び第2特定音声は基本的には区別可能なものであればどのようなものでもよい。本実施形態では、カット弁15の開口面積を小さくすることが、操作レバー23aの操作(ブーム上げ方向の操作)に応じたブームシリンダ6の起動タイミングを早めることに対応することから、第1特定音声を例えば「早く」という音声とし、第2特定音声を例えば「遅く」という音声としている。
【0064】
本実施形態の次のようにカット弁15の開口面積の制御がコントローラ26により行われる。
【0065】
すなわち、作業者が油圧ショベルによる作業を行っている際等に、操作レバー23aのブーム上げ側での操作に応じたブームシリンダ6の起動タイミングが遅く、ブームシリンダ6の負荷が比較的大きいと判断される状況では、作業者はマイクロフォン30に「早く」という第1特定音声を入力する。このとき、コントローラ26は、この第1特定音声が入力されたことを認識すると、前記圧力センサ27により検出されるブーム上げパイロット圧Piが前記第1実施形態で説明した所定値Pi1(図2参照)以上であるときに電磁比例弁25に通電すべき電流としての前記カット弁開口制御電流の設定値を図6に示すように現在の設定値よりも、からかじめ定められた所定量ΔIだけ増加させ、それを図示しないメモリに記憶保持する。そして、上記第1特定音声がマイクロフォン30に繰り返し入力されると、その入力の都度、カット弁開口制御電流の設定値を、電磁比例弁25の既定の上限電流Imaxを限度として上記所定量ΔIずつ増加させる。逆に、作業者がマイクロフォン30に「遅く」という第2特定音声を入力したときには、コントローラ26は、前記カット弁開口制御電流の設定値を図6に示すように現在の設定値よりも前記所定量ΔIだけ減少させ、それを記憶保持する。さらに、このとき、上記第2特定音声がマイクロフォン30に繰り返し入力された場合には、その入力の都度、カット弁開口制御電流の設定値を、電磁比例弁25の既定の下限電流Iminを限度として上記所定量ΔIずつ減少させる。
【0066】
そして、コントローラ26は、ブーム上げパイロット圧PiがPi<Pi1であるときには、前記第1実施形態と同様に、電磁比例弁25に下限電流Iminを通電してカット弁15の開口面積を全開状態の開口面積に制御するが、Pi≧Pi1であるときには、上述のようにマイクロフォン30の入力音声に応じて設定して記憶保持したカット弁開口制御電流で電磁比例弁25に通電する。このとき、カット弁15の開口面積は、電磁比例弁25のカット弁開口制御電流に対応した開口面積に制御される。
【0067】
かかる本実施形態の油圧ショベルにおいては、ブームシリンダ6の負荷が大きいと判断される状況では、作業者が適宜前記第1特定音声や第2特定音声をマイクロフォン30に入力することで、ブーム上げパイロット圧PiがPi≧Pi1であるときのカット弁15の開口面積をブームシリンダ6の負荷に適合した小さめの開口面積に制御することができ、また、Pi≧Pi1である状態では操作レバー23aの操作量によらずにカット弁15の開口面積がマイクロフォン30への音声入力に基づく指示値に制御される。このため、前記第1実施形態のものと同様に、ブーム上げ動作時のブームシリンダ6の起動を早期のタイミングで行うことができると共に、ブーム用スプール弁5のブリードオフ通路5aの開口面積の特性に則した形態で、ブームシリンダ6の操作を円滑に行うことができる。
【0068】
また、特に、マイクロフォン30への音声入力によりカット弁15の開口面積に設定が行われるので、ブームシリンダ5の負荷状態に合わせたカット弁15の開口面積の設定・制御を、油圧ショベルによる作業を行いながら実行することができる。
【0069】
次に、本発明の油圧作業機の第3実施形態を図7を参照して説明する。図7は本実施形態の油圧作業機の要部の油圧回路図である。尚、本実施形態は、本発明の第1の態様の実施形態である。また、本実施形態は、前記第1実施形態と一部の構成のみが相違するものであるので、同一構成部分については第1実施形態と同一の参照符号を用いて説明を省略する。
【0070】
図7を参照して、本実施形態の油圧ショベルは、その油圧回路の基本的構成は前記第1実施形態のものと同一であるが、ブーム上げ動作時にブリードオフ流路のカット弁15を駆動するための構成が前記第1実施形態のものと相違している。
【0071】
この相違する構成について説明すると、本実施形態は、ブーム上げ動作時のカット弁15の開口面積を油圧機器を用いて制御するようにしたものであり、そのための油圧機器として、減圧弁31と開閉弁32とを具備している。
【0072】
前記減圧弁31は、図示しないパイロットポンプの吐出圧油から、バネ31aの設定圧(バネ31aの弾性力)に対応するパイロット圧を生成するものであり、バネ31aの設定圧は、図示しないネジ等の操作によりバネ31aの圧縮量を調整することで、可変的に調整可能とされている。この場合、バネ31aの設定圧を大きくするほど、減圧弁31が生成するパイロトット圧は大きくなる。
【0073】
そして、この減圧弁31の出口側に前記開閉弁32が接続されている。該開閉弁32は、そのパイロットポート32xが前記操作器23に接続されており、該操作器23から、ブーム用スプール弁5に与えられるブーム上げパイロット圧Piと同じパイロット圧Piが付与されるようになっている。そして、該開閉弁32は、そのパイロットポート32xに付与されるブーム上げパイロット圧Piが、前記第1実施形態で説明した所定値Pi1(図2参照)に満たないときには、全閉状態となり、且つ、Pi≧Pi1であるときには、全開状態となるように開閉弁32のバネ32aの設定圧があらかじめ調整されている。
【0074】
そして、この開閉弁32の出口側と、前記第1実施形態で備えたものと同様の電磁比例弁25の出口側とがシャトル弁33を介してカット弁15のパイロットポート15xに接続されている。
【0075】
尚、本実施形態では、電磁比例弁25は、図示しないアームシリンダの所定の作動時に油圧ポンプ1の吐出圧油を油圧ポンプ2の吐出圧油に合流させて該アームシリンダに供給する場合に、カット弁15を閉じるために設けられており、本実施形態では図示を省略するコントローラにより、上記の合流作動時に通電制御され、通常時は、パイロット圧を発生しない。
【0076】
また、本実施形態では、減圧弁31のバネ31aが本発明における開口面積指示操作手段としての機能を有するものであり、また、減圧弁31及び開閉弁32が本発明における可変開口弁制御手段としての機能を有するものである。
【0077】
かかる本実施形態の油圧ショベルでは、作業の開始前や作業の休止時等に、前記減圧弁31のバネ31aの設定圧を調整しておく。この場合、ブーム上げ動作時のブームシリンダ6の負荷が比較的大きいと判断される状況では、バネ31aの設定圧を大きめに調整し、また、ブームシリンダ6の負荷が大きい程、バネ31aの設定圧を大きくするように該設定圧を調整する。
【0078】
次いで、作業に際してブーム上げ動作を行うべく、作業者が操作レバー23aを中立位置からブーム上げ側に操作すると、ブーム上げパイロット圧PiがPi<Pi1となる状態では、前記開閉弁32が閉じているため、カット弁15のパイロットポート15xには、パイロット圧が付与されず、従って、該カット弁15の開口面積は、全開状態の開口面積に維持される。そして、操作レバー23aの操作量の増加に伴いブーム上げパイロット圧Piが増加し、Pi≧Pi1となると、開閉弁32が開き、これに伴い、減圧弁31からバネ31aの設定圧に対応したパイロット圧が開閉弁32、シャトル弁33を介してカット弁15のパイロットポート15xに付与される。これにより、カット弁15の開口面積は、減圧弁31のバネ31aの設定圧に応じた開口面積に制御される。この場合、減圧弁31のバネ31aの設定圧が大きい程、カット弁15の開口面積は小さくなる。そして、Pi≧Pi1となる状態では、操作レバー23aの操作量によらずに、カット弁15の開口面積は、減圧弁31のバネ31aの設定圧に応じた開口面積に維持される。
【0079】
かかる本実施形態の油圧ショベルにおいては、ブームシリンダ6の負荷が大きいと判断される状況では、作業者が適宜、前記減圧弁31のバネ31aの設定圧を調整することで、ブーム上げパイロット圧PiがPi≧Pi1であるときのカット弁15の開口面積をブームシリンダ6の負荷に適合した小さめの開口面積に制御することができ、また、Pi≧Pi1である状態では操作レバー23aの操作量によらずにカット弁15の開口面積が前記バネ31aの設定圧に基づく指示値に制御される。このため、前記第1実施形態のものと同様に、ブーム上げ動作時のブームシリンダ6の起動を早期のタイミングで行うことができると共に、ブーム用スプール弁5のブリードオフ通路5aの開口面積の特性に則した形態で、ブームシリンダ6の操作を円滑に行うことができる。
【0080】
次に、本発明の油圧作業機の第4実施形態を図8及び図9を参照して説明する。図8は本実形態の油圧作業機の要部の油圧回路図、図9は本実施形態の油圧作業機の作動を説明するための線図である。尚、本実施形態は、本発明の第2の態様の実施形態である。また、本実施形態は、前記第2実施形態と一部の構成のみが相違するものであるので、同一構成部分については第2実施形態と同一の参照符号を用いて説明を省略する。
【0081】
図8を参照して、本実施形態の油圧ショベルは、油圧回路の構成は前記第1実施形態と同一であり、前記電磁比例弁25を介してカット弁15の開口面積を制御するコントローラ26に対する入力データとそれに応じたコントローラ26の制御処理の形態が第1実施形態のものと相違している。
【0082】
すなわち、本実施形態の油圧ショベルでは、前記第1実施形態のものの操作ボリューム28及びモード設定スイッチ29に代えて、ブームシリンダ6の伸長動作時(ブーム上げ動作時)における該ブームシリンダ6の負荷圧Pfを検出する負荷圧検出手段としての圧力センサ34がブームシリンダ6のボトム側油室6aに連なる管路20に接続されている。そして、この圧力センサ34の検出信号がコントローラ26に入力されるようになっている。
【0083】
そして、本実施形態では、コントローラ26は、前記圧力センサ27により検出されるブーム上げパイロット圧Piが前記第1実施形態で説明した所定値Pi1(図2参照)以上であるときに電磁比例弁25に通電すべき電流としての前記カット弁開口制御電流を前記圧力センサ34により検出されるブームシリンダ6の負荷圧Pfに応じて逐次決定するようにしており、この決定を行うために、例えば図9に示すようなデータテーブルを保持している。この場合、該データテーブルでは、コントローラ26がブームシリンダ6の負荷圧Pfに応じて決定するカット弁開口制御用電流は、既定の上限電流Imaxと下限電流Iminとの間の範囲で、負荷圧Pfが大きい程、大きくなる。
【0084】
かかる本実施形態の油圧ショベルでは、ブーム上げ動作の作業時に、コントローラ26は、ブーム上げパイロット圧PiがPi<Pi1となる操作レバー23aの操作域では、前記第1実施形態のものと同様に、電磁比例弁25の通電電流を下限電流Iminとし、カット弁15の開口面積を全開状態に保持する。そして、Pi≧Pi1となる操作レバー23aの操作域では、前記圧力センサ34により検出されるブームシリンダ6の負荷圧Pfに応じて前記図9のデータテーブルによりカット弁開口制御用電流を逐次決定し、その決定したカット弁開口制御用電流で電磁比例弁25に通電する。このため、Pi≧Pi1となる状態では、カット弁15の開口面積は、ブームシリンダ6の負荷圧Pfに応じた開口面積に制御される。より詳しくは、負荷圧Pfが大きい程、カット弁15の開口面積が小さくなるように該開口面積Pfが制御される。
【0085】
かかる本実施形態の油圧ショベルにおいては、ブームシリンダ6の負荷圧Pfを逐次検出し、この検出される負荷圧Pfが大きいほど、ブーム上げパイロット圧PiがPi≧Pi1であるときのカット弁15の開口面積が小さくなるように該開口面積が自動的に制御され、また、Pi≧Pi1である状態では操作レバー23aの操作量によらずにカット弁15の開口面積がブームシリンダ6の負荷圧Pfに適した開口面積に制御される。このため、前記第1実施形態のものと同様に、ブーム上げ動作時のブームシリンダ6の起動を早期のタイミングで行うことができると共に、ブーム用スプール弁5のブリードオフ通路5aの開口面積の特性に則した形態で、ブームシリンダ6の操作を円滑に行うことができる。
【0086】
尚、本実施形態では、Pi≧Pi1であるときのカット弁15の開口面積を、ブームシリンダ6の負荷圧Pfに応じて逐次リアルタイムで制御するようにしたが、例えば、作業者が所定の操作スイッチを操作した時における負荷圧Pfに対応して定まるカット弁開口制御用電流をコントローラ26で記憶保持するようにしておき、以後、その記憶保持したカット弁開口制御用電流を用いて、Pi≧Pi1であるときのカット弁15の開口面積を制御するようにしてもよい。このようにすると、作業者の好みに合わせてカット弁15の開口面積を制御することができる。
【0087】
また、以上説明した第1〜第4の各実施形態では、ブームシリンダ6の作動に関してのみ、ブリードオフ流路のカット弁15の開口面積の前述のような制御を行うようにしたが、例えばアームシリンダやバケットシリンダの作動においても、ブリードオフ流路のカット弁の開口面積を前述の各実施形態と同様に制御するようにしてもよい。そして、この場合、カット弁の開口面積の制御は、アームシリンダやバケットシリンダの伸長方向、短縮方向の両方向において行うようにしてもよい。尚、この場合、前記各実施形態における油圧回路では、アームシリンダの作動時に開口面積を制御するカット弁は、図1のカット弁16であり、バケットシリンダの作動時に開口面積を制御するカット弁は、図1のカット弁15である。
【0088】
また、前記各実施形態では、本発明における可変開口弁としてカット弁15を用いたが、このカット弁15とは別に、ブーム用スプール弁5のブリードオフ通路5aの下流側あるいは上流側に可変開口弁を設け、その可変開口弁の開口面積を前記各実施形態と同様に制御するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の油圧作業機の第1実施形態における要部の油圧回路図。
【図2】図1の油圧作業機の作動を説明するための線図。
【図3】図1の油圧作業機の作動を説明するための線図。
【図4】図1の油圧作業機の作動を説明するための線図。
【図5】本発明の油圧作業機の第2実施形態における要部の油圧回路図。
【図6】図5の油圧作業機の作動を説明するための線図。
【図7】本発明の油圧作業機の第3実施形態における要部の油圧回路図。
【図8】本発明の油圧作業機の第4実施形態における要部の油圧回路図。
【図9】図8の油圧作業機の作動を説明するための線図。
【符号の説明】
1…油圧ポンプ、5…ブーム用方向切換スプール弁、5a…ブリードオフ通路、6…ブームシリンダ(油圧アクチュエータ)、15…カット弁(可変開口弁)、23…操作レバー、26…コントローラ(可変開口弁制御手段)、28…操作ボリューム(開口面積指示操作手段)、30…マイクロフォン(開口面積指示操作手段)、31…減圧弁(可変開口弁制御手段)、32…開閉弁(可変開口弁制御手段)、31a…バネ(開口面積指示操作手段)、34…圧力センサ(負荷検出手段)。
Claims (4)
- 油圧ポンプと、油圧アクチュエータと、該油圧ポンプから油圧アクチュエータへの圧油の供給を制御すべく該油圧ポンプから油圧アクチュエータへの管路に設けられると共にブリードオフ通路を有する方向切換スプール弁と、該方向切換スプール弁を操作するための操作レバーと、前記方向切換スプール弁のブリードオフ通路を流れる圧油の流量を調整すべく該ブリードオフ通路に連なる流路に設けられた開口面積を調整可能な可変開口弁と、該可変開口弁の開口面積を制御する可変開口弁制御手段と、該可変開口弁制御手段に対して所定の操作により前記可変開口弁の開口面積を指示する開口面積指示操作手段とを備え、前記可変開口弁制御手段は、前記操作レバーが前記方向切換スプール弁のブリードオフ通路が閉じ始める前の操作量としてあらかじめ定めた所定操作量以上に操作されたとき、該操作レバーの操作量によらずに前記可変開口面積指示操作手段により指示された開口面積に前記可変開口弁を制御することを特徴とする油圧作業機。
- 前記開口面積指示操作手段は、前記油圧作業機の運転者が発する音声を受信する手段を備え、該運転者が発する所定種類の音声に応じて前記前記可変開口弁制御手段に対して前記可変開口弁の開口面積を指示することを特徴とする請求項1記載の油圧作業機。
- 油圧ポンプと、油圧アクチュエータと、該油圧ポンプから油圧アクチュエータへの圧油の供給を制御すべく該油圧ポンプから油圧アクチュエータへの管路に設けられると共にブリードオフ通路を有する方向切換スプール弁と、該方向切換スプール弁を操作するための操作レバーと、前記方向切換スプール弁のブリードオフ通路を流れる圧油の流量を調整すべく該ブリードオフ通路に連なる流路に設けられた開口面積を調整可能な可変開口弁と、該可変開口弁の開口面積を制御する可変開口弁制御手段と、前記油圧アクチュエータの負荷を検出する負荷検出手段とを備え、前記可変開口弁制御手段は、前記負荷検出手段により検出された負荷が大きい程、前記可変開口弁の開口面積を小さくするように該開口面積を前記負荷に応じて決定すると共に、前記操作レバーが前記方向切換スプール弁のブリードオフ通路が閉じ始める前の操作量としてあらかじめ定めた所定操作量以上に操作されたとき、該操作レバーの操作量によらずに前記負荷に応じて決定した開口面積に前記可変開口弁を制御することを特徴とする油圧作業機。
- 前記油圧作業機は、前記油圧アクチュエータ及び方向切換スプール弁としてそれぞれブームシリンダ及びブーム用方向切換スプール弁を具備する油圧ショベルであり、前記可変開口弁制御手段は、該ブーム用方向切換スプール弁を操作するための前記操作レバーが前記油圧ショベルのブームの上昇方向及び下降方向のうちの上昇方向に操作された場合にのみ、前記可変開口弁の開口面積の制御を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の油圧作業機。
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