JP3804220B2 - 均質性に優れた缶用鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は食品、飲料缶等の缶容器材料としての使途に好適な缶用の冷延鋼板に関し、特に、再結晶温度を上昇させるNbを添加した成分系の鋼板において、巻取温度を高くする必要がない、製品コイルの長手方向および幅方向の材質の均一性に優れた缶用鋼板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
深絞り加工等のプレス成形を施して作られる、深絞り缶、DRD(Drawn and Redrawn)缶、DI(Drawn and Ironed) 缶などの2ピース缶に用いられる冷延鋼板に要求される最も重要な特性として、プレス加工性、すなわち加工時に割れ等の欠陥が発生することなく成形可能なこと、が挙げられる。鋼板のプレス加工性、特に深絞り性を評価する特性値としては、r値(ランクフォード値)があり、この値が大きいほど深絞り性は優れ、より厳しい条件下でのプレス加工が可能である。このr値は、一般に、r0 ,r90,r45(それぞれ、圧延方向に0度、90度、45度方向のr値)から求めた、平均r値(=r0 +r90+2r45)/4)で評価されている。
【0003】
ところで、従来から、鋼板の深絞り性を向上(高r値化)させる手法として、数多くの研究がなされている。例えば、特開平1−177321号公報では、極低炭素Alキルド鋼において、炭化物、窒化物の形成元素であるNbあるいはTiを添加し、Ar3 変態点以上の高温で仕上圧延し、巻取温度も高くした熱延を行なうことにより、平均r値の向上を図っている。前記公報に開示の方法によると、ある程度の効果があり、平均r値の向上がみられる。
【0004】
【解決しようとする課題】
しかしながら、Nbの添加によって、再結晶終了温度の著しい上昇がもたらされるために、この成分系の冷延コイルを均熱時間の短い連続焼鈍ライン(以下、単にCALと略記)にて再結晶焼鈍する場合に、しばしば再結晶不良による硬さ上限外れや、r 値の劣化が生じる場合があった。
【0005】
このような事態を避ける手段として、熱延コイルの巻取温度を高くすることにより、炭化物、窒化物の粗大化を図り、再結晶終了温度の上昇を抑える方法がある。
しかし、巻取温度を高くすると、一方では、酸洗時間が長くなって歩留まりが低下したり、結晶粒が過大に粗大化し、加工後の鋼板表面の肌荒れを招いていた。さらに、熱延コイル長手方向の材質の不均一が生じるという大きな問題もあった。
というのは、巻き取り温度(CT)を高くすると、熱延コイルの先端部(約20〜100m)および後端部(約100m)は外気からの抜熱が大きく、冷却速度が速いために、析出物の粗大化が十分に達成できないため、部分的な再結晶不良による硬さ上限外れや、それに付随してr値の低下がしばしば発生していた。また、幅方向の端部(約10〜20mm)においてもこれと同様な問題が生じがちであった。
なお、以下の説明では、これらの長手方向および幅方向の端部の硬さ外れ、r値の劣化を生じた部分を「非定常部」と呼び、これ以外の材質変動の少ない内部を「定常部」と呼ぶこととする。
【0006】
そこで、本発明の主たる目的は、従来技術が抱えていた上記問題を解決することにあり、深絞り性を向上させる一方で、再結晶温度を上昇させる作用のある、Nbを含有する鋼板において、製品コイルの長手方向および幅方向の材質の均一性、とくに硬さ、r値の均質性に優れ、非定常部が少ない缶用鋼板の製造方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、深絞り性を向上させるものの再結晶温度を上昇させるNbを含有する鋼板で、熱延コイルの低温巻取を行っても、材質劣化を招くことなく、均質性に優れ、非定常部が少ない缶用鋼板の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、上記の目的を達成すべく、まず、Nbを添加した極低炭素鋼(供試材のAr3変態点=890 ℃)において、熱延条件が、熱延板中のNbC 析出量や冷延後の再結晶終了温度に及ぼす影響について調査した。図1、図2は、これらの調査結果を示すものである。
これらの図より、再結晶終了温度と熱延鋼板中でのNbC の析出量との間には高い相関があり、再結晶終了温度を低下させるためには、熱延板段階でNbC を十分に析出させておくことが重要であることがわかった。この現象は、焼鈍前に固溶C、または固溶Nbが多量に残存すると、これらが再結晶段階において、ドラッグ効果を発揮し、再結晶・粒成長を阻止するため、あるいはNbC のサイズが小さすぎるために、ピンニング効果を発揮し、再結晶粒の成長を阻害するためと考えられる。
【0008】
図1および図2から、巻取温度が750 ℃と高い場合には、NbC はほぼ完全に析出し、再結晶終了温度も700 〜710 ℃であるので、現行のCALでの均熱温度(750 ℃)に比べ十分に低い温度であるといえる。しかし、このような巻取温度では、前述したように、酸洗効率の低下、コイル長手、幅方向での材質不均一を生じるという難点を免れることができない。
一方、巻取温度が550 ℃と低い場合には、NbC の析出量、およびそれにともなう再結晶終了温度への仕上げ圧延温度の影響が見られ、Ar3 変態点(890℃) 以下で仕上げ圧延を終了した場合に、NbC の析出量が多く、再結晶終了温度も710 ℃と低くなる。したがって、現行のCALでの均熱温度(750 ℃)で焼鈍した場合でも再結晶不良の心配がない。
さらに、このNbC の析出量は、図3に示すように、仕上げ圧延最終パスでの圧下率が大きい場合により増すことがわかった。発明者らは、これらの結果を考察するために、NbC の析出挙動を熱力学的平衡計算により調査した。その結果、図4に示すように、NbC の析出はAr3 変態点以下で進行することがわかった。
【0009】
このようなAr3 変態点以下の温度での仕上げ圧延終了が、NbC の析出に対し有効に作用する理由として以下のことが挙げられる。
1)NbC の析出に対しては歪み誘起析出の効果が大きく寄与している。
2)低温で最終仕上げ圧延を行うことにより、仕上げ圧延による歪み量が増大し、歪み誘起析出の効果が大きくなる。
3)従来法のように、Ar3 変態点以上で仕上げ圧延を終了した場合には、圧延後にγ→αへの変態が起こることで、仕上げ圧延によって加えられる歪みの一部が解放されてしまう。これに対し、Ar3 変態点以下で仕上げ圧延を終了すると、この歪みが有効的にNbC の析出に利用される。
4)Nbの拡散係数はγ鉄中によりも、α鉄中で圧倒的に大きいために、α域で仕上げ圧延を行う方が、NbC の析出に対して歪み誘起析出効果がより顕著に発揮される。
5)仕上げ圧延最終パスでの圧下率が大きい方が、上記効果は増大する。
これら効果の相乗作用により、本発明法のように、Ar3 変態点以下で仕上げ圧延を終了することは、NbC の析出、ひいては再結晶終了温度の上昇を抑制するうえで極めて有利であるといえる。
【0010】
また、図5に示すように、冷延、焼鈍後のr値は、NbC の析出挙動に対応して、低温巻き取りでも、仕上げ圧延終了温度をAr3 変態点以下とすることにより、r値は2.0 以上の大きな値を示すことがわかった。
このような現象を利用すれば、外気からの抜熱が大きく、冷却速度が速いために、コイルの長手中央部に比べて実質的な巻き取り温度(CT)が低くなってしまう熱延コイルの前後端部においても、冷延、焼鈍後に高いr値を得ることができる。したがって、上記知見技術をNb含有鋼板に適用することは、従来から問題とされてきた、コイルの長手方向および幅方向での材質均一性不良を解消する上で極めて有効であるといえる。
【0011】
これらの検討結果をもとに、発明者らは、主として仕上げ圧延終了温度(FDT)および仕上げ圧延最終パスでの圧下率等に着目して研究を重ねた。その結果、上記目的実現のためには、Ar3 点以下、(Ar3点−100 ℃)以上の温度域で最終スタンド(パス)での圧下率を10%以上、好ましくは20%以上で仕上げ圧延を行うことにより、NbC の析出を促進させて、再結晶終了温度の上昇を抑えることが可能となり、コイルの長手方向および幅方向における材質の均一性に優れた鋼板を製造できることを知見し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
【0016】
(1) C:0.0050wt%以下、Nb:0.020wt%以下を含有する鋼片に、粗圧延終了温度を(Ar3変態点+200℃)〜Ar3変態点、仕上圧延温度をAr3変態点〜(Ar3変態点−100℃)、仕上圧延の最終パスの圧下率を10〜40%とする熱間圧延を行い、650〜450℃でコイルに巻き取り、次いで1次冷間圧延、焼鈍および2次冷間圧延し、製品鋼帯の幅方向端部の、表面硬度がHR 30Tで平均値±2を逸脱する部分を、もとの熱延鋼帯の側端からの距離にして片側5mm以下とし、かつ、平均r値が1.5未満となる部分を、もとの熱延鋼帯の側端からの距離にして片側20mm以下とする缶用鋼板の製造方法。
【0017】
(2) 焼鈍を、再結晶終了温度以上、760℃以下の範囲で行う、上記(1)に記載の缶用鋼板の製造方法。なお、1次冷間圧延は圧下率80〜95%の範囲で、また、2次冷間圧延は圧下率0.5〜40%の範囲でそれぞれ圧延するのが望ましい。
【0018】
(3) 鋼片の成分組成が、C:0.0050wt%以下、Si:0.10wt%以下、Mn:0.1〜0.6wt%、P:0.02wt%以下、S:0.02wt%以下、Al:0.015〜0.15wt%、N:0.02wt%以下、Nb:0.020wt%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるものである上記(1) または (2)に記載の缶用鋼板の製造方法。
【0019】
(4) 鋼片の成分が、さらにB:0.0030wt%以下を含有する上記(1) 〜 (3)のいずれか1つに記載の缶用鋼板の製造方法。
【0020】
ここで、硬さの平均値は、定常部であることが期待される領域、すなわち、もとの熱延鋼帯の側端からの距離にして片側5mmより中央側であって、もとの熱延鋼帯の先後端からの距離にして片側5mより中央側における平均値を指すものとする。
ただし、定常部とは本来、硬さの変動が少ない領域であるから、定常部内の一領域、例えば、全幅×長さ0.5 m程度の切り板1枚で平均値を求めても実質的な差は少ない。
【0021】
なお、平均r値の均質性を1.5 以上とし、下限のみを定めたのは、r値に関しては、通常、値が高い側での変動は缶成形や缶品質に対して悪影響を与えることがないからである。
また、表面硬度と平均r値とで幅方向端部の非定常部の幅が異なるのは、通常の方法では、端部20mm以内の平均r値が測定できないという、単に検証上の限界によるものである。
【0022】
次に、上記要旨構成のとおりに限定した理由について説明する。
(1)鋼成分について
C:0.0050wt%以下
Cは、少ない方が延性がよく、プレス加工性に有利である。0.0050wt%を超えると、鋼板が硬質化して伸びが著しく低下しプレス加工性が劣化する。一方、少なすぎると、鋼板が過度に軟質化して缶体としての強度を確保できなくなったり、結晶粒が粗大化し、プレス加工後の鋼板表面の肌荒れが生じるようになる。したがって、C含有量は、0.0050wt%以下、好ましくは0.0005〜0.0050wt%とする。
【0023】
Si:0.10wt%以下
Siは缶用材料としては耐食性に有害な元素であり、また材料を極端に硬質化させる元素であるため、その上限を 0.1wt%とする。
【0024】
Mn:0.1 〜0.6 wt%
Mnは、不純物であるSによる熱延中の赤熱脆性を防止するために必要な元素であり、0.1 wt%以上必要であるが、0.6 wt%を超えるとスラブ圧延中の割れを生じたり、鋼板を過度に硬質化させるので、0.1 〜0.6 wt%とする。
【0025】
P:0.02wt%以下
Pは、0.02wt%を超えると耐食性が著しく低下するために、上限を0.02wt%とする。
【0026】
S:0.02wt%以下
Sは、熱延中の赤熱脆性を生じる不可避的に含有される元素であり、極力少ないことが望ましいが、0.02wt%までは許容できる。
【0027】
Al:0.015 〜0.15wt%
Alは、製鋼に際し脱酸材として鋼浴中に添加され、スラグとして除かれる。添加量が少ないと、安定した脱酸効果が得られないため、0.015 wt%を下限とする。一方、0.15wt%を超えて添加してもさらなる効果が少なく、経済上好ましくないので上限を0.15wt%とする。
【0028】
N:0.02wt%以下
Nは、0.02wt%を超えると鋼板が硬質化して、伸びが著しく低下しプレス加工性が劣化する。このため、Nの上限を0.02wt%とする。
【0029】
Nb:0.020 wt%以下
Nbは、炭窒化物を形成する元素であり、固溶C,N低減による伸び、r値の向上を目的として添加される。また、本発明のように、フェライト域で仕上げ圧延を終了した場合には、結晶粒が粗大化しやすい傾向にあるが、Nbを添加することにより、これを抑制することができる。ただし、その添加量が0.0020wt%を下回るとその効果が少なく、0.020 wt%を超えると再結晶終了温度を上昇させるので、0.020 wt%以下、好ましくは0.0020〜0.020 wt%とする。
【0030】
B:0.0030wt%以下
Bは、Nbとともに添加した場合に、フェライト域で仕上げ圧延を終了した場合に生じやすい、結晶粒の過剰な粗大化を防ぐ効果を有している。また、2次加工脆性の防止にも有用である。すなわち、極低炭素鋼に炭化物形成元素を添加して、固溶Cを極端に減少すると、再結晶粒界の強度が弱くなり、缶の用途、あるいは缶詰めの使われ方によっては、極低温での保管の際に脆化割れが生じる心配もあるが、Bを添加することにより脆化不良が生じなくなる。これらの効果を得るためには、0.0001wt%以上の添加量が望ましく、0.0030wt%を超えて添加すると、深絞り性劣化につながる。したがって、B量は0.0030wt%以下、好ましくは0.0001〜0.0030wt%とする。
【0031】
(2)製造条件について
熱間圧延のための、スラブ加熱はAc3点以上に加熱されればよい。具体的には 950〜1350℃が適する。なお、スラブ加熱温度はスラブ幅方向中央部の板厚方向平均温度(スラブ表面温度と加熱履歴から計算で算出可能)をさすものとする。・粗圧延終了温度;(Ar3 点+200 ℃)〜Ar3 点
粗圧延をこの温度範囲より低い温度で終了した場合には、必然的に仕上げ圧延の全域がα域での圧延となり、焼鈍板には、粗大な結晶粒と比較的微細な粒との混粒組織となるために、十分な加工性が得られなくなるほか、加工後の鋼板表面の肌荒れにもつながる。一方、この範囲を超える高温で粗圧延をすると、シートバー内の温度不均一による、仕上圧延時のα域圧下量の不均一が拡大され、材質の均一性を阻害するほか、圧延ロール寿命の短命化につながる。なお、粗圧延後に時間調整して仕上圧延温度を下げる方法も考えられるが、かえって放冷によるシートバー内温度不均一が増大するので実用できない。
従って、粗圧延終了温度範囲は(Ar3 点+200 ℃)〜Ar3 、好ましくは(Ar3点+150 ℃)〜(Ar3点+50℃)の温度範囲とする。なお、粗圧延終了温度は粗圧延機の出側の鋼板表面温度にて測定した値とする。
【0032】
・仕上圧延終了温度;Ar3 点〜(Ar3点−100 ℃)
深絞り性の向上をはかるには、一般的に、仕上げ圧延をAr3 変態点以上で終了するのが常識であったが、発明者らの実験結果が示すように、熱延板中に析出するNbC の量は、Ar3 点以下で最も多くなって、再結晶終了温度の上昇が抑制される。そして、製品コイルのほぼ全域にわたって硬度、引張強度、r値等の材質が均一になるほか、α域での仕上げ圧延にもかかわらず、r値は1.5 以上の高い値を示すなど優れた効果が発揮される。ただし、下限温度が Ar3点−100 ℃を下回ると、焼鈍板の結晶粒径が粗大化し、加工後の肌荒れが生じたり、リジングが発生するので、下限は Ar3点−100 ℃とする。
以上の理由から、仕上圧延終了温度は、Ar3 点〜(Ar3点−100 ℃)とする。なお、仕上圧延終了温度も粗圧延の場合と同様に、仕上圧延機出側の鋼板表面温度にて測定した値とする。
【0033】
・仕上げ圧延最終パスでの圧下率;10%〜40%
上記の適正温度域で仕上圧延を行う際に、NbC の析出に対する歪み誘起析出の効果を十分に得るためには、仕上げ圧延最終スタンドでの圧下率を10%以上、好ましくは20%以上とする必要がある。一方、40%を超える圧下率では、その効果が飽和し、かつ圧延操業が困難となるので、上限を40%とする。
【0034】
・巻取温度;650 〜450 ℃
本発明法の熱延方法を適用する場合には、従来のように巻取り温度を過大に高くしなくても、熱延板中でのNbC の析出が十分に進行する。したがって、高温での巻取りに伴って発生する、コイル長手、幅方向の材質不均一化、および結晶粒の粗大化等の問題を回避するため、650 ℃以下の低温域で巻き取ることが可能となる。一方、450 ℃を下回るような低温で巻取ると、本発明法による熱延を行っても、NbC の析出が進行せず、再結晶温度が高くなるために、焼鈍工程で再結晶不良などのトラブルが発生する危険がある。したがって、その下限を450 ℃とする。
【0035】
・1次冷間圧延
1次冷延の圧下率はユーザーからの薄肉化の要望に応えるには高いほど望ましい。圧下率が80%未満ではこの要望に応えられないとともに、焼鈍工程で結晶粒が異常に粗大化したり、混粒化したりして、材質が劣化するほか、深絞り性に有効な集合組織を発達させることが困難となるので、圧下率は80%以上とするのが望ましい。しかし、圧下率が95%を超えるような高圧下を行うと、本発明範囲の鋼成分、製造条件を採用しても、r値が低下し、またr値の異方性(Δr)が増大してイヤリングが大きくなるので、圧下率の上限は95%とするのが望ましい。
【0036】
・焼鈍
焼鈍方法は、材質の均一性が優れることと、生産性が高いなどの点から、連続焼鈍が好ましい。連続焼鈍における焼鈍温度は、再結晶終了温度以上が必要であるが、高すぎると、結晶粒が異常に粗大化し、加工後の肌荒れが大きくなるほか、缶用鋼板などの薄物材では、炉内破断やバックリング発生の危険が大きくなる。このため焼鈍温度の上限は、760 ℃とすることが望ましい。
【0037】
・2次冷間圧延
調質圧延の圧下率は鋼板の調質度により適宜決定されるが、ストレッチャーストレインの発生を防止するためには、0.5 %以上の圧下率で圧延する必要がある。一方、40%を超える圧下率で圧延すると鋼板が過度に硬質化して、加工性が低下するほか、r値の低下、r値の異方性の増大を招くので、その上限を40%とするのが望ましい。
【0038】
以上の方法により製造された製品コイルの材質は、熱延鋼帯の位置で両側端部5mmを除く内側の範囲では、表面硬度の偏差がHR 30Tにして±2ポイントの範囲内、かつ、両側端部20mmを除く内側の範囲では、平均r値が1.5 以上を満足する。また、これらの表面硬度および平均r値の特性が、熱延鋼帯の先端部5m, 後端部5mを除く範囲で達成できるようになり、優れた均質性が得られる。
また、コイルを横方向に切断して切り板とした場合の鋼板幅方向の材質も、当然のことながら、コイルの材質と同様に、優れた均質性を有している。
なお、r値が1.5 を下回ると加工度の高い成形に対応できないので、上記r値の下限を定めた。
【0039】
【実施例】
表1に示す成分の連続鋳造鋳片を、表2に示す条件で、熱延、1次冷延、焼鈍、および2次冷延を行い、さらに25番目付で錫めっきを施して製品とし、各種特性の調査に供した。調査項目及び方法を次に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
(A) 製品コイルの引張特性
製品コイルの長手方向、幅方向の下記a〜eの熱延鋼帯コイル相当位置から、標点間距離20mm, 平行部幅10mm、平行部長さ25mm、つかみ代の長さ7.5 mm、幅15mmの特殊引張試験片を切り出し、製品の引張試験を実施した。
a:長手方向前端5m で、幅方向オペレータ端20mm (標点間の中心)
b:長手方向前端5m で、幅方向ドライブ端20mm (標点間の中心)
c:長手方向中心で、板幅中央
d:長手方向後端5m で、幅方向オペレータ端20mm (標点間の中心)
e:長手方向後端5m で、幅方向ドライブ端20mm (標点間の中心)
なお、r値は次式により、平均r値として求めた。
平均r値=(r0 +r90+2r45)/4
ただし、r0 、r90、r45は、それぞれ圧延方向に0度、90度、45度方向のr値を表す。
(B) 製品コイルの表面硬度(HR 30T) 測定
熱延鋼帯コイル相当位置にして、長手方向の前端部5m から後端部5m までの範囲、かつ幅方向の両端5mmを除く内側の範囲から、コイル長手方向については両端部5m〜100 m部は10mピッチで、また、長手方向中央部の1点それぞれの箇所で板幅方向に10mmピツチで、硬度 (HR 30T) 測定を行い、この範囲におけ表面硬度の偏差(平均硬度−測定部硬度)を求めた。また、上記範囲外(非定常部)についても同様に硬度測定を行った。
【0043】
これらの測定結果を表3に示す。また、幅方向中央部におけるr値および硬度の長手方向分布を図6に示す。
表3から、発明例はすべて、熱延鋼帯コイルに相当する位置に換算して、長手方向(圧延方向)の先後端でそれぞれ5m より内側であって、幅方向で片側5mmよりも内側の範囲では、表面硬度がHR 30Tで平均値±2以内、また幅方向で片側20mmよりも内側の範囲ではr値が1.5 以上という優れた均質性を有していることがわかる。
また、図6より、本発明に従って製造すれば、r値および硬度の長手方向の特性が、従来法に比較して、著しく均一化していることがわかる。
【0044】
【表3】
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、再結晶温度上昇元素であるNbを添加した成分系においても、熱延コイルの巻取温度を過度に高くすることなく、製品コイルの長手方向および幅方向の材質、とくに硬さ、r値の均一化が可能となる。したがって、この缶用鋼板から、深絞り加工等の加工を施す食缶及び飲料缶の製造に供して優れた特性を有する素材を、効率よく(歩留りよく)採取することができる。
なお、本発明は、溶接缶、接着缶、はんだ缶などの各種金属缶として、また乾電池内装缶、各種家電部品、自動車部品等の幅広い分野でも適用され、製品品質の向上、製品のコストダウンへの寄与が期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】仕上げ圧延終了温度(FDT)と熱延板中のNbC の析出量との関係を示す図である。
【図2】仕上げ圧延終了温度(FDT)と再結晶終了温度との関係を示す図である。
【図3】仕上げ圧延最終パスの圧下率と熱延板中のNbC の析出量との関係を示す図である。
【図4】 NbC の析出挙動の熱力学的平衡計算結果を示す図である。
【図5】仕上げ圧延終了温度と鋼板の平均r値との関係を示す図である。
【図6】コイル長さ方向における、鋼板の平均r値および表面硬度HR 30Tの変化を示す図である。
Claims (4)
- C:0.0050wt%以下、Nb:0.020wt%以下を含有する鋼片に、粗圧延終了温度を(Ar3変態点+200℃)〜Ar3変態点、仕上圧延温度をAr3変態点〜(Ar3変態点−100℃)、仕上圧延の最終パスの圧下率を10〜40%とする熱間圧延を行い、650〜450℃でコイルに巻き取り、次いで1次冷間圧延、焼鈍および2次冷間圧延を行い、製品鋼帯の幅方向端部の、表面硬度がHR30Tで平均値±2を逸脱する部分を、もとの熱延鋼帯の側端からの距離にして片側5mm以下とし、かつ、平均r値が1.5未満となる部分を、もとの熱延鋼帯の側端からの距離にして片側20mm以下とする缶用鋼板の製造方法。
- 上記焼鈍を、再結晶終了温度以上、760℃以下の範囲で行う、請求項1に記載の缶用鋼板の製造方法。
- 鋼片の成分組成が、C:0.0050wt%以下、Si:0.10wt%以下、Mn:0.1〜0.6wt%、P:0.02wt%以下、S:0.02wt%以下、Al:0.015〜0.15wt%、N:0.02wt%以下、Nb:0.020wt%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるものである請求項1または請求項2に記載の缶用鋼板の製造方法。
- 鋼片の成分が、さらにB:0.0030wt%以下を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の缶用鋼板の製造方法。
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