JP3418928B2 - 冷間鍛造用フェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法 - Google Patents

冷間鍛造用フェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法

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JP3418928B2 JP02348394A JP2348394A JP3418928B2 JP 3418928 B2 JP3418928 B2 JP 3418928B2 JP 02348394 A JP02348394 A JP 02348394A JP 2348394 A JP2348394 A JP 2348394A JP 3418928 B2 JP3418928 B2 JP 3418928B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,冷間鍛造によって各種
精密機械用部品や各種コインなどに加工される冷間鍛造
用フェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】ステンレス鋼からなる各種精密機械部品
などの製造において,冷間鍛造による加工法は,丸棒素
材からの削りだしによる切削加工法に比べると大量生産
に適しており,生産効率面からのコストメリットが大き
いという利点がある。このため従来より各種の冷間鍛造
用フェライト系ステンレス鋼が提案されている。
【0003】従来提案された冷間鍛造用フェライト系ス
テンレス鋼としては,例えば特公昭51−17932号
公報,特公昭60−8288号公報,特開昭61−21
7552号公報,特開昭62−30852号公報,特開
平2−170948号公報などに記載されたものがあ
る。
【0004】冷間鍛造用フェライト系ステンレス鋼に要
求される特性としては, 1)材料の軟質さ, 2)冷延リジングを含めた良好な表面性状, が挙げられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従来の冷間鍛造用フェ
ライト系ステンレス鋼では軟質化を図るために,前記の
いずれの例でもC含有量を0.03%以下もしくは0.015%
以下と低減している。この場合, 製鋼工程において精錬
に長時間を要するという問題点があった。
【0006】また, 強力なオーステナイト生成元素であ
るC含有量を下げることは, 金属組織的に高温において
もオーステナイト相を含まない, いわゆるフェライト単
相化することになる。その結果, リジング性に劣り,冷
延リジングが発生する傾向にある。
【0007】リジングは一般に, フェライト系ステンレ
ス鋼薄板がプレス成形などにより引張変形を受けた場合
に発生する圧延方向に平行な畝状の表面凹凸であるが,
リジング性に非常に劣る場合は, 素材製造工程における
冷間圧延や調質圧延によっても発生し, これを冷延リジ
ングと呼んでいる。冷間鍛造は薄板のプレス成形とは加
工形態が異なるため, 冷間鍛造時にリジングを発生する
ことはないが, 冷間鍛造前の素材の時点で冷延リジング
を生じていたのでは, 表面の美麗さや鍛造後の寸法精度
の点で好ましくない。
【0008】そこで, 低C化による冷延リジングを改善
するために, 例えば特公昭60−8288号公報に提案
されているように熱延時の仕上げ温度, 巻き取り温度を
規制するなどの対策が必要であった。
【0009】また, 軟質化を目的に例えば特公昭51−
17932号公報のように固溶強化能の大きいSiの低
減が併用されることも多い。しかし, Siは有効な脱酸
元素であるのであまり下げると, 鋼中の非金属介在物が
増加し,かえって冷間鍛造性が低下したり, 表面性状が
劣る傾向にある。
【0010】一方これらとは別に低C低N化し,比較的
多量のTiやNbを添加したSUS430LX系の鋼は軟質さの点
では優れている。だが, 元素添加によりコスト高となる
とともに鋼中に生成される炭化物や窒化物に起因する表
面欠陥が発生し易く, 表面性状は必ずしも良好とはいえ
ない。このため, 冷間鍛造用途にはあまり供されていな
い。
【0011】なお, フェライト系ステンレス鋼の代表鋼
種であるSUS430鋼については, 比較的硬質で冷間鍛造時
の負荷荷重が大きいことや, 冷間鍛造成形品に割れが発
生したり成形品の外観形状が不良となるなど,いわゆる
冷間鍛造性が十分ではない。このため冷間鍛造に供した
場合には, 冷間鍛造途中で中間焼鈍を必要としたり,金
型寿命が短いという問題がある。また, 仕上冷間鍛造後
の外観形状, 直角度などの仕上寸法精度が悪く, 仕上切
削加工を必要とする頻度が増加し,その場合には歩留り
が低下するなどの問題がある。
【0012】
【課題を解決する手段】本発明によれば,mass%におい
て,C:0.030%超え0.080%以下,Si:0.05%以上0.7
5%以下,Mn:0.10%以上2.0%以下,P:0.040%以
下,S:0.010%以下,Cr:14.00〜20.00%,Ni:0.6
0%以下,N:0.020%以下,B:0.001〜0.030%,A
l:0.10%以下(0%を含む),Ti:0.01〜0.30%を含
有し,且つTi/(C+N):0.5〜3.0の関係を満足
し,残部が鉄および不純物元素からなり, 熱間加工温度
域においてオーステナイト量が5容積%以上である冷間
鍛造用フェライト系ステンレス鋼板を提供する。
【0013】特に本発明鋼は,熱延および必要に応じて
冷延を行なった鋼帯または鋼板の状態で製造され,いず
れの場合も最終的には焼鈍を行って冷間鍛造に供され
る。そのさい,焼鈍後の組織がフエライト粒の展伸度=
1〜2の範囲となっている。
【0014】
【作用】本発明者らは, 前記のような従来の問題点を解
決し, 製造性ならびに冷間鍛造性に優れたフェライト系
ステンレス鋼を開発すべく, 素材の材質ならびに金属組
織と冷間鍛造性, 冷間鍛造後の断面硬さ分布, 外観形状
性などの関係について詳細な試験研究を行った。その結
果, フェライト系ステンレス鋼における冷間鍛造性は,
単に材料が軟質であるだけでなく, 冷間鍛造時のメタル
フローをスムーズにする金属組織の均一さと,フェライ
ト粒の展伸度が重要な作用を及ぼすことを知見した。そ
して金属組織の均一化を図るには, 熱間加工温度域でオ
ーステナイト相が所定量以上存在する2相組織(オース
テナイト+フエライト)とした鋼をベースにBを添加す
ることが有効であることを見出した。
【0015】なお本発明において,フェライト粒の展伸
度は, 鋼板 (鋼帯) の製造にあっては,板厚方向の平均
粒径dtと圧延方向の平均粒径dLの比dL/dtで評価する。
本発明においては冷間鍛造に供される状態では殆んどの
フエライト粒のdL/dtが1〜2の範囲の均一な組織を有
する。また熱間加工温度域とは,通常の熱延での1150〜
1250℃で加熱・抽出後, 熱延を施し900〜800 ℃の温度
範囲で仕上げて巻取るさいの熱延過程中の温度範囲を言
う。
【0016】以下に本発明に従う冷間鍛造用フェライト
系ステンレス鋼板の各成分の作用と含有量範囲の限定理
由を個別に概説する。
【0017】C:Cは熱延焼鈍板および冷延焼鈍板の強
度を上昇させる作用を供する。したがってあまり高いと
冷間鍛造性の面では好ましくはない。また所定のTi/
(C+N)比を得るためにはC量の低い方がTi添加量
を低減できる。このためC量は0.080%を上限とする。
他方C量を0.030%以下にするには製鋼段階での脱炭に
長時間を要し,製造コストの上昇を招くとともに, 組織
もフェライト単相化して冷延リジング性が劣化する。こ
のような理由から本発明鋼では0.030%を超える量でC
を含有させる。好ましいC量の範囲は 0.035〜0.065%,
更に好ましい範囲は 0.040〜0.060%である。
【0018】Si:Siは脱酸に有効な元素であり,Si
量をあまり下げると鋼中の非金属介在物が増加して冷間
鍛造性が劣化するようになる。このためSiは0.05%以
上,好ましくは0.10%以上, さらに好ましくは0.15%以
上含有させる。しかしあまりその含有量が高いとCと同
様に耐力および硬度が上昇して,冷間鍛造性に良い影響
を与えなくなるので0.75%以下, 好ましくは0.60%以
下, 更に好ましくは0.50%以下とする。
【0019】Mn:Mnはオーステナイト生成元素であ
り, フェライト単相化の防止に有効に作用する元素であ
る。またCやSiなどに比べてフェライト相に対する固
溶硬化能は小さく, 硬度, 延性への影響も小さい。この
ため, 本発明では少なくとも0.10%, 好ましくは0.20%
以上のMnを含有させる。しかし, あまり高いとコスト
上昇や耐食性の低下を招くのでMn量の上限は2.00%,
好ましくは1.00%とする。
【0020】P:Pは鋼の製造上不可避的に含有されて
くるが,硬化作用が極めて大きく鋼の靱性を低下させる
元素であり,極力低く抑える必要がある。しかし極低燐
にするには脱燐の負荷が大きくなる。脱燐の経済性を考
慮し, また本発明鋼で許容できるP量として0.040%以
下, 好ましくは 0.030%以下とする。
【0021】S:Sは熱間加工性および耐食性特に耐発
錆性に悪影響を及ぼすので低い方が好ましく, 0.010%
以下, 好ましくは0.005%以下とする。
【0022】Cr:Crはフェライト系ステンレス鋼とし
てその耐食性を確保するうえで少なくとも 14.00%以上
は必要である。しかし 20.00%を超えると, 0.030%を
超えるCを含有する本発明鋼では靱性や加工性の低下が
著しくなる。このためにCr量は14.00〜20.00%, 好ま
しくは 15.50〜18.50%, さらに好ましくは 16.00〜18.
00%とする。
【0023】Ni:NiはMnと同様にオーステナイト生
成元素であるが, あまり多く含有すると材質を硬化させ
延性低下を招くため, フェライト系ステンレス鋼に通常
許容される0.60%を上限とする。
【0024】N:NはCと同様に所定のTi/(C+
N)比を得るために低い方がTi添加量を低減できる。
また,Tiとの窒化物による表面性状の劣化を防止する
観点からもN量は低い方が好ましい。このため,N量は
0.030%を上限とし, より好ましくは0.020%以下とす
る。
【0025】B:Bは鋼の金属組織を均一化しフェライ
ト系ステンレス鋼の冷間鍛造性を顕著に向上させる点で
本発明鋼において重要な作用を果たす元素である。これ
を図7の組織写真で説明しよう。
【0026】図7は,17%Cr-0.06%C-0.4%Si-0.3
Mn-0.1%N-0.1%Ti鋼をベースとし,Bを0.0080%添
加した鋼 (本発明鋼) とB無添加鋼 (比較鋼) の熱延板
の組織と,該熱延板を 810℃×6時間・炉冷の焼鈍後の
組織を対比して示したものである。B無添加の熱延板で
は,フェライト相と高温でオーステナイト相であった黒
く見える変態相が圧延によって伸ばされた層状組織を呈
している。この展伸した層状組織は,熱延板焼鈍後も金
属組織に方向性を与えており,金属組織の不均一さをも
たらしている。
【0027】これに対し,0.0080%のBを含む本発明鋼
では, 熱延板での変態相は分断化される傾向にあり, 熱
延板焼鈍の組織は方向性の小さいかなり均一な組織が得
られている。このB添加によって得られる均一な金属組
織は, 冷間鍛造時の3次元的なメタルフローに対しても
材料の異方性を小さくさせる。このため,均一な変形が
可能となって高加工を可能とし,また加工後の寸法精度
の点でも有利さをもたらす。同時に, 加工時の成形所要
力が小さくて済み,金型寿命においても有利となる。
【0028】このようなBの効果を得るには少なくとも
0.001%以上, 好ましくは 0.005%以上, さらに好まし
くは 0.010%以上のBを添加するのがよい。他方, Bを
あまり多量に添加しても材質を硬化させるなど, 加工性
に好ましくないため, 0.030%を上限とする。
【0029】Ti:Tiは適量の添加によりある程度のN
およびCを固定し, 軟質化と延性向上に有効な成分であ
り, Bとの複合添加により冷間鍛造性はさらに向上す
る。このためには少なくとも0.01%以上, 好ましくは0.
05%以上含有させることが必要である。しかしTiの多
量の添加は製造コストの上昇や表面性状の劣化をもたら
す。このため0.30%, 好ましくは0.20%を上限とする。
【0030】またTiについては, その絶対量の規制の
みでは不十分であって(C+N)量との相関において規
定することが重要である。Ti/(C+N)比が0.5未満
では軟質化の効果は十分でなく, また, 3.0を超えると
過剰にN, Cを固定し金属組織的に高温でのオーステナ
イト量が5%未満となってフェライト単相鋼化する可能
性がある。したがって,Ti/(C+N)比として0.5〜
3.0の範囲, 好ましくは 1.0〜2.5の範囲とする。
【0031】Al:Alは強力な脱酸元素であり,Ti添
加歩留りを向上させる。このために添加することが好ま
しいが,介在物の増加することも否めないので場合によ
っては添加しないでもよい。添加する場合にはsol.Al量
として0.10%以下とする。
【0032】以上のように各成分を含有させるが,本発
明鋼にとって高温でのオーステナイト量の規制も重要な
点である。すなわち, 前記したようにB添加の作用が加
味され, 分断化したオーステナイト相との共存のもとに
熱間圧延されることによって金属組織の均一化が促進さ
れる。この効果を得るには熱間加工温度域で少なくとも
5容積%以上, 好ましくは10容積%以上のオーステナ
イトが存在するように前記の含有量範囲において各成分
量をバランスさせる必要がある。
【0033】しかし,高温でオーステナイトを多量に存
在させるにはオーステナイト生成元素の添加量を増加さ
せる必要があり,これは同時に固溶強化による材料の硬
質化をもたらし, かえって冷間鍛造性を低下させること
から,高温でのオーステナイト量は多くとも60容積%
以下, 好ましくは40容積%以下が望ましい。
【0034】また,冷間鍛造に供されるときの鋼の組織
として,フェライト粒径の展伸度が冷間鍛造性に重要な
影響を与える。本発明鋼はB添加の作用と高温でのオー
ステナイト量の存在によって熱延組織として分断された
オーステナイト相が出現し,これが焼鈍時に組織を均一
にすると共にフエライト粒径の展伸度も2以下とするこ
とができる。理想的な整粒状態は展伸度が1のときであ
るが,この状態では機械的性質におよぼす異方性がな
く,リジング性や外観形状に優れる。本発明によれば,
後記の実施例に示すように,熱延焼鈍板および冷延焼鈍
板において展伸度は2以下,場合によっては限りなく1
に近接させることが可能である。なお,展伸度が2を超
えると冷間鍛造時のメタルフローが不均一となり割れの
発生や外観の形状が劣ることが判明した。
【0035】以上説明したように,本発明によれば熱延
板焼鈍により方向性の少ない均一な金属組織が得られる
ため,熱延焼鈍材を冷間鍛造に供することが可能であ
る。また,この熱延焼鈍材は,冷延リジングが発生しな
いため冷延を施すこともでき,その冷延焼鈍材について
も冷間鍛造用に好適に用い得る。なお,熱延焼鈍後に冷
間圧延を行う場合には,冷間圧延率を大きくしすぎると
仕上焼鈍時に再結晶核が多くなり,フェライトが細粒化
し素材硬さ上昇の要因となるので,冷間圧延率は40%
以下,好ましくは30%以下とするのがよい。
【0036】以下に代表的な本発明の実施例を挙げて本
発明鋼の特徴を示す。
【0037】
【実施例】表1に供試した代表的な本発明鋼および従来
鋼の化学成分値(mass%)並びに1100℃でのオーステナ
イト量 (γ量) の容積%を示した。いずれの鋼も300kg
鋼塊を溶製し, 次の製造工程によって(1) 冷延焼鈍板お
よび/または(2) 熱延焼鈍板を製造した。
【0038】(1) 冷延焼鈍板:150mmの鋼塊を加熱炉
から1200℃で抽出し,仕上温度880℃で板厚6.5
mmまで熱間圧延し,得られた熱延板を850℃×12時
間・炉冷の熱延板焼鈍を施し,酸洗後,板厚3.0mmまで
冷間圧延し,850℃×1分・空冷の仕上焼鈍を施す。 (2) 熱延焼鈍板:150mmの鋼塊を加熱炉から1200
℃で抽出し,仕上温度880℃で板厚3mmまで熱間圧延
し,得られた熱延板を850℃×12時間・炉冷の熱延
板焼鈍を施し,酸洗する。
【0039】得られた各板厚3mmの冷延焼鈍板および/
または熱延焼鈍板を図1の平面図および図2の断面図に
示す形状の精密機械用部品に冷間鍛造した。そして図2
のA部で示す冷間鍛造時に材料の流れ込みの最も大きい
箇所での割れの有無と外観形状を調べた。また,各供試
材の冷間鍛造前の硬さ(Hv)とフエライト粒の展伸度
を測定し,さらに冷延焼鈍板については冷延時での冷延
リジングの発生の有無を調べておいた。これらの結果を
表2に示した。なお,フエライト粒の展伸度は圧延方向
の平均粒径(dL)対板厚方向の平均粒径(dt)の比 dL/dtを
表す。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】表2の結果から明らかなように,本発明鋼
はいずれも冷延リジングの発生はなく,冷間鍛造時の割
れの発生もなく,鍛造後の形状も良好で優れた冷間鍛造
性を示している。
【0043】これに対し,従来鋼No.5およびNo.6は
いずれも冷間鍛造時にA部で割れが発生した。図3は従
来鋼No.5の割れ発生箇所のA部の金属組織を示したも
のである。また図4は本発明鋼No.1の同箇所の金属組
織を示した。従来鋼No.5とNo.6については,割れを
回避するためには鍛造途中で中間焼鈍を施し,表面の酸
化皮膜を酸洗により除去した後に再度冷間鍛造する必要
があった。従来鋼No.7については鍛造による割れはな
いものの冷延リジングが発生しており,加工後の外観形
状が劣るものとなった。
【0044】また,鍛造後の前記の試片について,図5
に示す箇所(最も材料の流れ込みが大きい部位)での断
面硬さ分布を測定したところ図6の結果を得た。図6の
結果に見られるように,従来鋼No.5とNo.6のもので
は,断面厚み方向での硬さレベルの高低差が極めて大き
い。これは冷間鍛造の際に材料に不均一な流れ込みが生
じていることを表している。これに対して本発明鋼No.
1のものでは硬さ分布の変動が小さく,従来鋼に比較し
断面厚み方向全体に均一に変形していることが分かる。
【0045】
【発明の効果】以上詳述したように,本発明によれば製
造性に優れた冷間鍛造用フェライト系ステンレス鋼板
得られ,冷間鍛造による加工品の精度向上と省工程化に
よる冷間鍛造のコスト低減に大きく貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】冷間鍛造に供した試験片の平面図である。
【図2】図1の試験片の断面図である。
【図3】実施例に示した従来鋼No.5の割れ発生箇所の
金属組織を示す写真である。
【図4】実施例に示した本発明鋼No.1のA部(冷間鍛
造時に最も材料流れの大きい部位・図3と同じ部位)の
金属組織を示す写真である。
【図5】実施例に供した試験片の断面硬さ測定箇所を示
す略断面図である。
【図6】図5の位置での硬さ測定結果を示す図である。
【図7】17%Cr-0.06%C-0.4%Si-0.3Mn-0.1%N-
0.1%Ti鋼をベースとし,Bを0.0080%添加した鋼 (本
発明鋼) とB無添加鋼 (比較鋼) の熱延板の金属組織
と,該熱延板を 810℃×6時間・炉冷の焼鈍後の金属組
織を対比して示した金属組織写真である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭59−13053(JP,A) 特開 昭51−99617(JP,A) 特開 昭48−72024(JP,A) 特開 平6−10101(JP,A) 特開 平4−235257(JP,A) 特開 平4−160117(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 302 C21D 8/02

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 mass%において, C:0.030%超え0.080%以下, Si:0.05%以上0.75%以下, Mn:0.10%以上2.0%以下, P:0.040%以下, S:0.010%以下, Cr:14.00〜20.00%, Ni:0.60%以下, N:0.020%以下, B:0.001〜0.030%, Al:0.10%以下(0%を含む), Ti:0.01〜0.30% を含有し,且つTi/(C+N):0.5〜3.0の関係を満
    足し, 残部が鉄および不純物元素からなり, 熱間加工温度域に
    おいてオーステナイト量が5容積%以上である冷間鍛造
    用フェライト系ステンレス鋼板
  2. 【請求項2】 フエライト粒の展伸度が1〜2である請
    求項1に記載の冷間鍛造用フエライト系ステンレス
  3. 【請求項3】 mass%において,C:0.030%超え0.080
    %以下,Si:0.05%以上0.75%以下,Mn:0.10%以上
    2.0%以下,P:0.040%以下,S:0.010%以下,Cr:
    14.00〜20.00%,Ni:0.60%以下,N:0.020%以下,
    B:0.001〜0.030%,Al:0.10%以下(0%を含
    む),Ti:0.01〜0.30%を含有し,且つTi/(C+
    N):0.5〜3.0の関係を満足し,残部が鉄および不純物
    元素からなり, 熱間加工温度域においてオーステナイト
    量が5容積%以上となるように成分調整されたフェライ
    ト系ステンレス鋼を熱間圧延し,熱延板焼鈍および酸洗
    を施すことからなるフエライト粒の展伸度が1〜2の組
    織を有する冷間鍛造用フエライト系ステンレス鋼板の製
    造法。
  4. 【請求項4】 mass%において,C:0.030%超え0.080
    %以下,Si:0.05%以上0.75%以下,Mn:0.10%以上
    2.0%以下,P:0.040%以下,S:0.010%以下,Cr:
    14.00〜20.00%,Ni:0.60%以下,N:0.020%以下,
    B:0.001〜0.030%,Al:0.10%以下(0%を含
    む),Ti:0.01〜0.30%を含有し,且つTi/(C+
    N):0.5〜3.0の関係を満足し,残部が鉄および不純物
    元素からなり, 熱間加工温度域においてオーステナイト
    量が5容積%以上となるように成分調整されたフェライ
    ト系ステンレス鋼を熱間圧延し,熱延板焼鈍および酸洗
    を施し,次いで圧延率40%以下で冷間圧延し,再結晶
    焼鈍を施すことからなるフエライト粒の展伸度が1〜2
    の組織を有する冷間鍛造用フエライト系ステンレス鋼板
    の製造法。
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