JP2002080933A - 形状凍結性に優れた鋼板およびその製造方法 - Google Patents
形状凍結性に優れた鋼板およびその製造方法Info
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Abstract
の製造方法を提供する。 【解決手段】 質量%でC:0.0001%以上、0.05%以下、Si:
0.001%以上、2.5%以下、Mn:0.01%以上、2.5%以下、P:0.
005〜0.15%以下、S:0.03%以下、Al:0.01%以上、2.0%以
下、N:0.01%以下、O:0.01%以下を含有し、(1)式と(2)式
に示した質量%で表現した鋼の成分より求まる関係をい
ずれも満足し、残部は鉄および不可避的不純物よりな
り、かつ少なくとも1/2板厚における板面の[100]<011>
〜[223]<110>方位群のX線ランダム強度比の平均値が3.0
以上でかつ[554]<225>、[111]<112>および[111]<110>の
3つの結晶方位のX線ランダム強度比の平均値が3.5以
下、さらに圧延方向のr値および圧延方向と直角方向のr
値のうち少なくとも1つが0.7以下であることを特徴とす
る形状凍結性に優れた鋼板。203√C+15.2Ni-44.7Si-104
V-31.5Mo+30Mn+11Cr+20Cu-700P-200Al<30 (1) 4
4.7Si+700P+200Al>40 (2)
Description
た鋼板およびその製造方法に関するもので、該鋼板は、
自動車部品等が主たる用途のものである。本発明の鋼板
は熱延鋼板と冷延鋼板の双方を含むものである。
ために、高強度鋼板を使用して自動車車体を軽量化する
ことが進められている。また、搭乗者の安全性を確保す
るためにも、自動車車体には、軟鋼板の他に高強度鋼板
が多く使用されるようになってきている。更に、自動車
車体の軽量化を今後進めていくために、従来以上に高強
度鋼板の使用強度レベルを高めたいという新たな要請が
非常に高まりつつある。
えると、加工後の形状が、その高強度ゆえに、加工冶具
の形状から離れて加工前の形状の方向にもどりやすくな
るというスプリング・バック現象や、成形中の“曲げ−
曲げ戻し”からの弾性回復により、側壁部の平面が曲率
を持った面になってしまうという“壁そり現象”が起こ
り、狙いとする加工部品の形状が得られないという寸法
精度不良が生じる。
て440MPa以下の高強度鋼板に限って使用されてき
た。すなわち、自動車車体にとっては、490MPa以
上の高強度鋼板を使用して車体の軽量化を進めていく必
要があるにもかかわらず、スプリング・バックや“壁そ
り”が少なく、形状凍結性の良い高強度鋼板が存在しな
いのが実状である。
の高強度鋼板や軟鋼板の加工後の形状凍結性を高めるこ
とも、自動車や家電製品などの製品の形状精度を高める
上で極めて重要である。このような実状の中で、特開平
10−72644号公報には、圧延面に平行な面におけ
る{200}集合組織の集積度が1.5以上であること
を特徴とするスプリングバック量が小さいオーステナイ
ト系ステンレス冷延鋼板が開示されている。しかし、フ
ェライト系鋼板のスプリングバック量を小さくする技術
については何ら記載されていない。
曲げ加工を施すと、鋼板の強度に依存しながら大きなス
プリング・バックが発生し、加工成形部品の形状凍結性
が悪いというのが現状である。本発明は、この問題を抜
本的に解決して、形状凍結性に優れた熱延鋼板及び冷延
鋼板及びその製造方法を提供するものである。
プリング・バックを抑えるための方策としては、鋼板の
変形応力を低くすることがとりあえず重要であると考え
られていた。そして、変形応力を低くするためには、引
張強さの低い鋼板を使用せざるをえなかった。しかしこ
れだけでは、鋼板の曲げ加工性を向上させ、スプリング
・バックや壁そりを低く抑えるための根本的な解決には
ならない。
させてスプリング・バックや壁そりの発生を根本的に解
決するために、新たに鋼板の集合組織の曲げ加工性への
影響に着目して、その作用効果を詳細に調査、研究し
た。その結果、{100}<011>〜{223}<1
10>方位群と{554}<225>、{111}<1
12>、{111}<110>の各方位の強度を制御す
ること、さらには圧延方向のr値および圧延方向と直角
方向のr値のうち少なくとも1つをできるだけ低い値に
することで、曲げ加工性が飛躍的に向上することを明ら
かにした。
した。加えて、このような形状凍結性に有利な集合組織
を形成するためには、成分と熱間圧延条件を最適化する
ことが極めて重要であることを明らかにした。本発明
は、前述の知見に基づいて構成されており、その主旨と
するところは以下の通りである。
05%、Si:0.001〜2.5%、Mn:0.01
〜2.5%、P:0.005〜0.15%、S:0.0
3%以下、Al:0.01〜2.0%、N:0.01%
以下、O:0.01%以下を含有し、(1)式と(2)
式に示した質量%で表現した鋼の成分より求まる関係を
いずれも満足し、残部は鉄および不可避的不純物よりな
り、かつ、少なくとも1/2板厚における板面の{10
0}<011>〜{223}<110>方位群のX線ラ
ンダム強度比の平均値が3.0以上で、かつ、{55
4}<225>、{111}<112>および{11
1}<110>の3つの結晶方位のX線ランダム強度比
の平均値が3.5以下であり、さらに、圧延方向のr値
および圧延方向と直角方向のr値のうち少なくとも1つ
が0.7以下であることを特徴とする形状凍結性に優れ
た鋼板。
下、及び、B:0.007%以下の1種又は2種以上を
含有する前記(1)に記載の形状凍結性に優れた鋼板。
%、Si:0.001〜2.5%、Mn:0.01〜
2.5%、P:0.005〜0.20%、S:0.03
%以下、Al:0.01〜2.0%、N:0.01%以
下、O:0.01%以下を含有し、(1)式または
(2)式に示した質量%で表現した鋼の成分より求まる
関係をいずれも満足し、残部は鉄および不可避的不純物
よりなり、かつ、少なくとも1/2板厚における板面の
{100}<011>〜{223}<110>方位群の
X線ランダム強度比の平均値が3.0以上で、かつ、
{554}<225>、{111}<112>および
{111}<110>の3つの結晶方位のX線ランダム
強度比の平均値が3.5以下であり、さらに、圧延方向
のr値および圧延方向と直角方向のr値のうち少なくと
も1つが0.7以下であることを特徴とする形状凍結性
に優れた鋼板。
V:0.2%以下、Cr:1.5%以下、及び、B:
0.007%以下の1種又は2種以上を含有する前記
(3)に記載の形状凍結性に優れた鋼板。
以下、Ni:1%以下、及び、Sn:0.2%以下の1
種又は2種以上を含有する前記(1)〜(4)の何れか
に記載の形状凍結性に優れた鋼板。(6)前記(1)〜
(5)の何れかに記載の鋼板にめっきを施したことを特
徴とする形状凍結性に優れた鋼板。
の鋼板を製造するに当たり、粗圧延をAr3変態温度超
で行い、引き続き、仕上圧延をAr3変態温度以下で行
い、仕上温度600℃以上Ar3変態温度未満で圧延を
終了し、600〜900℃で巻き取り、熱延鋼板とする
ことを特徴とする形状凍結性に優れた鋼板の製造方法。
おいて、少なくとも1パス以上を摩擦係数が0.2以下
となるように仕上圧延を行うことを特徴とする前記
(7)に記載の形状凍結性に優れた鋼板の製造方法。 (9)前記(7)または(8)に記載の鋼板を酸洗し、
圧下率80%未満の冷間圧延を施した後、600℃〜
(Ac3+100)℃の温度範囲に加熱し、冷却し、冷
延鋼板とすることを特徴とする形状凍結性に優れた鋼板
の製造方法。
明する。1/2板厚における板面の{100}<011
>〜{223}<110>方位群のX線ランダム強度比
の平均値、および、{554}<225>、{111}
<112>および{111}<110>の3つの結晶方
位のX線ランダム強度比の平均値:これらの平均値は、
本発明で特に重要な特性値である。板厚中心位置での板
面のX線回折を行い、ランダム試料に対する各方位の強
度比を求めたときの、{100}<011>〜{22
3}<110>方位群の平均値が3.0以上でなくては
ならない。これが3.0未満では形状凍結性が劣悪とな
る。
0}<011>、{116}<110>、{114}<
110>、{113}<110>、{112}<110
>、{335}<110>および{223}<110>
である。これら各方位のX線ランダム強度比は{11
0}極点図に基づきベクトル法により計算した3次元集
合組織や、{110}、{100}、{211}、{3
10}極点図のうち複数の極点図(好ましくは3つ以
上)を用いて級数展開法で計算した3次元集合組織から
求めればよい。
方位のX線ランダム強度比には、3次元集合組織のφ2
=45゜断面における(001)[1−10]、(11
6)[1−10]、(114)[1−10]、(11
3)[1−10]、(112)[1−10]、(33
5)[1−10]、(223)[1−10]の強度をそ
のまま用ればよい。
0>方位群の強度比の平均値とは、上記の各方位の強度
比の相加平均である。上記の全ての方位の強度比を得る
ことができない場合には、{100}<011>、{1
16}<110>、{114}<110>、{112}
<110>、{223}<110>の各方位の強度比の
相加平均で代替してもよい。
4}<225>、{111}<112>および{11
1}<110>の3つの結晶方位のX線ランダム強度比
の平均値は3.5以下でなくてはならない。これが3.
5超であると、{100}<011>〜{223}<1
10>方位群の強度比が適正であっても、良好な形状凍
結性を得ることが困難となる。{554}<225>、
{111}<112>および{111}<110>のX
線ランダム強度比も、上記の方法に従って計算した3次
元集合組織から求めればよい。
{223}<110>方位群のX線ランダム強度比の平
均値が4.0以上で、{554}<225>、{11
1}<112>および{111}<110>のX線ラン
ダム強度比の相加平均値が2.5未満である。以上述べ
た結晶方位のX線強度比が曲げ加工時の形状凍結性に対
して重要であることの理由は必ずしも明らかではない
が、曲げ変形時の結晶のすべり挙動と関係があるものと
推測される。
よって、鋼板を所定の板厚まで減厚し、次いで、化学研
磨や電解研磨などによって歪みを除去して、板厚1/2
面が測定面となるように作製する。鋼板の板厚中心層に
偏析帯や欠陥などが存在し、測定上不都合が生ずる場合
には、板厚の3/8〜5/8の範囲で適当な面が測定面
となるように上述の方法に従って試料を調整して測定す
ればよい。当然のことであるが、上述のX線強度の限定
が板厚1/2近傍だけでなく、なるべく多くの厚みにわ
たって満たされることで、より一層、形状凍結性が良好
になる。
晶方位とは、板面の法線方向が<hkl>に平行で、圧
延方向が<uvw>と平行であることを示している。圧
延方向のr値(rL)および圧延方向と直角方向のr値
(rC):r値は、本発明において重要な値である。す
なわち、本発明者らが鋭意検討の結果、上述した種々の
結晶方位のX線強度比が適正であっても、必ずしも良好
な形状凍結性が得られないことが判明した。上記のX線
強度比と同時に、rLおよびrCのうち少なくとも1つ
が0.7以下であることが必須である。より好ましくは
0.55以下である。rLおよびrCの下限は特に定め
ることなく本発明の効果を得ることができる。
張試験により評価する。引張歪みは通常15%である
が、均一伸びが15%を下回る場合には、均一伸びの範
囲で、できるだけ15%に近い歪みで評価すればよい。
なお、曲げ加工を施す方向は加工部品によって異なるの
で、特に限定するものではないが、r値が小さい方向に
対して垂直もしくは垂直に近い方向に折り曲げる加工を
主として行なうことが好ましい。
があることが知られているが、本発明においては、既述
の結晶方位のX線強度比に関する限定とr値に関する限
定とは互いに同義ではなく、両方の限定が同時に満たさ
れなくては、良好な形状凍結性を得ることはできない。
次に成分組成に係る限定条件について述べる。
限定条件について述べる。Cの下限を0.0001%と
したのは、実用鋼で得られる下限値を用いることにした
ためである。Cが0.05%超になると加工性が悪くな
るので、上限を0.05%とする。Siは鋼板の機械的
強度を高めるのに有効な元素であり、かつ、γ→α変態
温度を上昇させる。しかし、2.5%超となると加工性
が劣化したり、表面疵が発生したりするので、2.5%
を上限とする。一方、実用鋼でSiを0.001%未満
とするのは困難であるので、0.001%を下限とす
る。
な元素であるが、2.5%超となると加工性が劣化する
ので、2.5%を上限とする。また、Mnはγ→α変態
点を顕著に低下させる。この観点から、Mnの上限は2
%が望ましい。一方、実用鋼でMnを0.01%未満と
するのは困難であるので、0.01%を下限とする。ま
た、Mn以外にSによる熱間割れの発生を抑制するTi
などの元素が十分に添加されない場合には、質量%で、
Mn/S≧20となるMn量を添加することが望まし
い。
温度も上昇させる元素である。したがって、0.005
%以上添加する。しかし、多すぎると加工性が低下する
ので0.15%を上限とする。Sは0.03%以下とす
る。これは加工性の劣化や熱間圧延または冷間圧延時の
割れを防ぐためである。
加が必要である。また、Alはγ→α変態点を顕著に上
昇させる。この観点からは、0.05%以上の添加がよ
り望ましい。しかし、多すぎると加工性が低下したり、
表面性状が劣悪となるため、上限を2.0%とする。N
とOは不純物であり、加工性を悪くさせないように、い
ずれも0.01%以下とする。
Bは、炭素や窒素の固定、析出強化、細粒強化などの機
構を通じて材質を改善するので、必要に応じて、それぞ
れ、0.005%以上、0.001%以上、0.000
1%以上添加することが望ましいが、過度の添加は加工
性を劣化させるので、Ti、Nb、Bの上限を、それぞ
れ、0.2%、0.2%、および、0.007%とし
た。
限定条件について述べる。Cの下限を0.04%とした
のは、実用の高強度鋼板の下限値を用いることにしたた
めである。一方でCが0.25%超になると加工性や溶
接性が悪くなるので0.25%を上限とする。Siは鋼
板の機械的強度を高めるのに有効な元素であるが、2.
5%超となると加工性が劣化したり、表面疵が発生した
りするので、2.5%を上限とする。一方、実用鋼でS
iを0.001%未満とするのは困難であるので、0.
001%を下限とする。
な元素であるが、2.5%超となると加工性が劣化する
ので、2.5%を上限とする。一方、実用鋼でMnを
0.01%未満とするのは困難であるので、0.01%
を下限とする。また、Mn以外にSによる熱間割れの発
生を抑制するTiなどの元素が十分に添加されない場合
には、質量%で、Mn/S≧20となるMn量を添加す
ることが望ましい。
温度も上昇させる元素である。したがって、0.005
%以上添加する。しかし、多すぎると加工性が低下する
ので、0.20%を上限とする。Sは0.03%以下と
する。これは、加工性の劣化や熱間圧延または冷間圧延
時の割れを防ぐためである。
加が必要である。また、Alは、γ→α変態点を顕著に
上昇させる。この観点からは、0.05%以上の添加が
より望ましい。しかし、多すぎると加工性が低下した
り、表面性状が劣悪となるので、上限を2.0%とす
る。NとOは不純物であり、加工性を悪くさせないよう
に、いずれも、0.01%以下とする。
V、Cr、Bは、炭素、窒素の固定、析出強化、組織制
御、細粒強化などの機構を通じて材質を改善するので、
必要に応じて、それぞれ、0.005%以上、0.00
1%以上、0.001%以上、0.01%以上、0.0
001%以上を添加することが望ましい。しかし、過度
に添加しても格段の効果はなく、むしろ加工性や表面性
状を劣化させるので、Ti、Nb、V、Cr、Bのそれ
ぞれの上限を、0.2%、0.2%、0.2%、1.5
%、および、0.007%とした。
Ni、Snは、機械的強度を高めたり材質を改善する効
果があるので、必要に応じて、各成分とも、0.001
%以上を添加することが望ましい。しかし、過度の添加
は逆に加工性を劣化させるので、Mo、Cu、Ni、お
よび、Snの上限を、それぞれ、1%、2%、1%、お
よび、0.2%とする。
分元素は、式(1)と式(2)に示された条件を満足す
る範囲で添加される。この範囲が満足されないと、Ar
3変態温度が低下し、α域で仕上圧延を行う温度域が低
くなるので、巻取温度の確保ができなくなり、巻取中に
回復再結晶が十分起こらなくなる。また、理由は明確で
はないが、上式の関係を満足しないと、Ar3変態温度
以下で仕上げ熱延を行っても、形状凍結性に有利な集合
組織の集積度があまりあがらない。なお、本発明におい
て規定されたその他の成分は、変態温度や集合組織形成
にほとんど影響を及ぼさないことから無視した。
物の形態制御の目的でCaやMgを適量添加しても構わな
い。前記(6)の発明において、メッキの種類は特に限
定するものではなく、電気めっき、溶融めっき、蒸着め
っき等の何れでも、本発明の効果が得られる。
延に先行する製造方法は特に限定するものではない。す
なわち、高炉、転炉、電炉等による溶製に引き続き、各
種の2次製錬を行い、次いで、通常の連続鋳造、インゴ
ット法による鋳造の他、薄スラブ鋳造などの方法で鋳造
すればよい。
のち、再度加熱してから熱間圧延してもよいし、鋳造ス
ラブを連続的に熱延してもよい。原料にはスクラップを
使用しても構わない。熱間圧延において、圧延温度がA
r3変態温度以下になると、加工前に生成したフェライ
トが加工され、強い圧延集合組織を形成する。前記
(7)の発明に記載のとおり、この様な集合組織を、最
終的に、形状凍結性に有利な集合組織とするためには、
仕上圧延をAr3変態温度以下で行い、600℃以上A
r3変態温度未満で完了し、高温で加工されたフェライ
トを、冷却途中および巻き取り中に、回復・再結晶させ
る必要がある。圧延完了温度が600℃より低いと、圧
延機への負担が大きくなり、Ar3変態温度超では形状
凍結性に有利な集合組織が得られないので、仕上温度
を、600℃以上Ar3変態温度未満の範囲に限定す
る。
することが望ましい。圧下率が25%未満では、形状凍
結に有利な集合組織が発達しにくく、85%超では、形
状凍結性を劣化させる集合組織が発達してくる。この観
点から、仕上げ圧延の圧下率は30〜80%の範囲にす
ることが更に望ましい。巻取温度を600℃未満にする
と、巻取中に十分な回復再結晶が起こらず、加工性が劣
化する。また、巻取温度を900℃超にすると、粒成長
によって形状凍結性に有利な集合組織への集積度が低下
する。したがって、巻取温度の範囲は600〜900℃
とする。なお、熱延終了後、一旦室温まで冷却した後に
再度600〜900℃に再加熱焼鈍を行っても、同様の
効果が得られることは明らかである。
に、熱間圧延時の熱間圧延ロールと鋼板との摩擦係数が
0.2を越えている場合には、鋼板表面近傍における板
面に、{110}面を主とする結晶方位が発達し、形状
凍結性が劣化する。それ故に、より良好な形状凍結性を
指向する場合には、600℃〜Ar3以下の仕上圧延に
おける少なくとも1パスについては、ロールと鋼板との
摩擦係数を0.2以下とすることが好ましい。この摩擦
係数は低ければ低いほど望ましく、特に厳しい形状凍結
性が要求される場合には、仕上圧延の全パスについて、
摩擦係数を0.15以下とすることが望ましい。
で粗圧延を行った後にシートバーを接合し、引き続き、
Ar3変態温度以下で仕上げ圧延をしてもよい。その際
に、粗バーを一旦コイル状に巻き、必要に応じて保温機
能を有するカバーに格納し、再度巻き戻してから接合を
行ってもよい。熱延鋼板には、必要に応じて、スキンパ
ス圧延を施してもよい。スキンパス圧延には、加工成形
時に発生するストレッチャーストレインの防止や、形状
矯正の効果があることは言うまでもない。
し、焼鈍して最終的な薄鋼板とする際に、冷間圧延の全
圧下率が80%以上となる場合には、一般的な冷間圧延
−再結晶集合組織である板面に平行な結晶面のX線回折
積分面強度比の{111}面や{554}面成分が高く
なり、本発明の特徴である前記(1)または(3)の発
明の結晶方位の規定を満たなくなる。そのため、冷間圧
延の圧下率の上限を80%とする。
を70%以下に制限することが望ましい。冷間圧延率の
下限は特に定めることなく、本発明の効果を得ることが
できるが、結晶方位の強度を適当な範囲に制御するため
には3%以上とすることが好ましい。この様な圧下率範
囲で冷間圧延された冷延鋼板を焼鈍する際に、焼鈍温度
が600℃未満の場合には、加工組織が残留し成形性を
著しく劣化させるので、焼鈍温度の下限を600℃とす
る。
結晶によって生成したフェライトの集合組織が、オース
テナイトへ変態後、オーステナイトの粒成長によってラ
ンダム化され、最終的に得られるフェライトの集合組織
もランダム化される。特に、焼鈍温度が(Ac3+10
0)℃を越える場合にはそのような傾向が顕著となる。
以下とする。冷延鋼板には、必要に応じて、スキンパス
圧延を施してもよい。そして、本発明の形状凍結性に優
れた鋼板は、曲げ加工だけでなく、曲げ、張り出し、絞
り等、曲げ加工を主体とする複合成形にも適用できる。
本発明の実施例を挙げながら、本発明の技術的内容につ
いて説明する。
からMまでの鋼を用いて検討した結果について説明す
る。これらの鋼は、鋳造後、そのまま、もしくは、一旦
室温まで冷却された後に、1100℃〜1300℃の温
度範囲に再加熱され、その後熱間圧延が施され、最終的
には、1.4mm厚、3.0mm厚、もしくは、8.0
mm厚の熱延鋼板とした。3.0mm厚および8.0m
m厚の熱延鋼板は、冷間圧延することによって1.4m
m厚とし、その後、連続焼鈍工程にて焼鈍を行った。こ
れら1.4mm厚の鋼板から、50mm幅、270mm
長さの試験片を作製し、ポンチ幅78mm、ポンチ肩R
5、ダイ肩R5の金型を用いて、ハット曲げ試験を行っ
た。曲げ試験を行った試験片は、三次元形状測定装置に
て板幅中心部の形状を測定し、図1に示した様に、点
(1)と点(2)の接線と、点(3)と点(4)の接線
の交点の角度から90°を引いた値の左右での平均値を
スプリング・バック量とし、点(3)と点(5)間の曲
率の逆数を左右で平均化した値を壁そり量とし、左右の
点(5)間の長さからポンチ幅を引いた値を寸法精度と
して、形状凍結性を評価した。なお、曲げはr値の低い
方向と垂直に折れ線が入るように行った。
プリングバック量や壁そり量は、BHF(しわ押さえ
力)によっても変化する。本発明の効果は、いずれのB
HFで評価を行ってもその傾向は変わらないが、実機で
実部品をプレスする際には、あまり高いBHFはかけら
れないので、今回は、BHF29kNで各鋼種のハット
曲げ試験を行った。
が本発明の範囲内にあるか否かを示した。熱延条件の
「圧延温度」の欄は、Ar3変態温度以下で仕上圧延を
行った場合は「○」、仕上圧延の温度域がAr3変態温
度以上を含んでいる場合「×」とした。以上の場合に、
仕上圧延の少なくとも1パス以上についての摩擦係数が
0.2以下の場合には、「潤滑」の欄に「○」、全パス
における摩擦係数が0.2超の場合には、「△」を記入
した。「巻取温度」の欄は、600〜900℃で巻き取
った場合には「○」、600℃未満の場合には「×」と
した。
の「−2」および「−3」の番号の実施例が本発明の製
造条件を満たしている。鋼L、Mは、「圧延温度」の条
件を満足すると「巻取温度」の条件を確保できず、ま
た、「巻取温度」の条件を確保すると、「圧延温度」の
条件を満足しないものである。したがって、鋼L、Mに
関しては、いずれの実施例も本発明の製造条件を満たし
ていない。
る場合において、冷延圧下率が80%以上の場合には、
「冷延圧下率」を「×」とし、「80%未満」の場合に
は「○」とした。また、焼鈍温度が600℃以上(Ac
3+100)℃以下の場合には、「焼鈍温度」の欄を
「○」とし、それ以外の場合には「×」とした。製造条
件として関係のない項目は「―」とした。熱延鋼板およ
び冷延鋼板のいずれに対しても、スキンパス圧延を0.
5〜1.5%の範囲で施した。
の7/16厚の位置で板面に平行なサンプルを作製し、
実施した。表3および表4(表3の続き)に、前記の方
法によって製造した1.4mm厚の熱延鋼板と冷延鋼板
の機械的特性値とスプリング・バック量とを示した。表
4中の鋼L、Mを除いた全鋼種において、各鋼種の「−
2」および「−3」の番号の実施例が本発明に該当する
ものである。
番号のものに比べて、スプリング・バック量および壁そ
り量が小さくなり、結果として、寸法精度が向上してい
ることがわかる。即ち、薄鋼板において、本発明で限定
される各結晶方位のX線ランダム強度比とr値が満たさ
れると、初めて、良好な形状凍結性が達成されるのであ
る。
形状凍結性の向上に重要であることの機構については、
現在のところ、必ずしも明らかとはなっていない。おそ
らく、曲げ変形時にすべり変形の進行を容易にすること
で、結果的に、曲げ変形時のスプリング・バック量およ
び壁そり量を小さくしているものと理解される。
すると、その曲げ加工性は著しく向上することを以上に
詳述した。本発明によって、スプリング・バックや壁そ
りなどの形状不良が低減され、曲げ加工を主体とする形
状凍結性に優れた薄鋼板を提供することができるように
なった。
鋼板の適用が難しかった部品にも高強度鋼板が使用でき
るようになる。自動車の軽量化を推進するためには、高
強度鋼板の使用は是非とも必要である。形状凍結性に優
れた高強度鋼板が適用できるようになると、自動車車体
の軽量化をより一層推進することができる。従って、本
発明は、工業的に極めて高い価値のある発明である。
である。
の関係を示す図である。
す図である。
Claims (9)
- 【請求項1】 質量%で、C:0.0001〜0.05
%、 Si:0.001〜2.5%、 Mn:0.01〜2.5%、 P:0.005〜0.15%、 S:0.03%以下、 Al:0.01〜2.0%、 N:0.01%以下、 O:0.01%以下 を含有し、(1)式と(2)式に示した質量%で表現し
た鋼の成分より求まる関係をいずれも満足し、残部は鉄
および不可避的不純物よりなり、かつ、少なくとも1/
2板厚における板面の{100}<011>〜{22
3}<110>方位群のX線ランダム強度比の平均値が
3.0以上で、かつ、{554}<225>、{11
1}<112>および{111}<110>の3つの結
晶方位のX線ランダム強度比の平均値が3.5以下であ
り、さらに、圧延方向のr値および圧延方向と直角方向
のr値のうち少なくとも1つが0.7以下であることを
特徴とする形状凍結性に優れた鋼板。 203√C+15.2Ni-44.7Si-104V-31.5Mo+30Mn+11Cr+20Cu-700P-200Al<30 …(1) 44.7Si+700P+200Al>40 …(2) - 【請求項2】 更に、 Ti:0.2%以下、 Nb:0.2%以下、及び、 B:0.007%以下 の1種又は2種以上を含有する請求項1に記載の形状凍
結性に優れた鋼板。 - 【請求項3】 質量%でC:0.04〜0.25%、 Si:0.001〜2.5%、 Mn:0.01〜2.5%、 P:0.005〜0.20%、 S:0.03%以下、 Al:0.01〜2.0%、 N:0.01%以下、 O:0.01%以下、 を含有し、(1)式と(2)式に示した質量%で表現し
た鋼の成分より求まる関係をいずれも満足し、残部は鉄
および不可避的不純物よりなり、かつ、少なくとも1/
2板厚における板面の{100}<011>〜{22
3}<110>方位群のX線ランダム強度比の平均値が
3.0以上で、かつ、{554}<225>、{11
1}<112>および{111}<110>の3つの結
晶方位のX線ランダム強度比の平均値が3.5以下であ
り、さらに、圧延方向のr値および圧延方向と直角方向
のr値のうち少なくとも1つが0.7以下であることを
特徴とする形状凍結性に優れた鋼板。 203√C+15.2Ni-44.7Si-104V-31.5Mo+30Mn+11Cr+20Cu-700P-200Al<30 …(1) 44.7Si+700P+200Al>40 …(2) - 【請求項4】 更に、 Ti:0.2%以下、 Nb:0.2%以下、 V:0.2%以下、 Cr:1.5%以下、及び、 B:0.007%以下 の1種又は2種以上を含有する請求項3に記載の形状凍
結性に優れた鋼板。 - 【請求項5】 更に、 Mo:1%以下、 Cu:2%以下、 Ni:1%以下、及び、 Sn:0.2%以下 の1種又は2種以上を含有する請求項1〜4の何れか1
項に記載の形状凍結性に優れた鋼板。 - 【請求項6】 請求項1〜5の何れか1項に記載の鋼板
にめっきを施したことを特徴とする形状凍結性に優れた
鋼板。 - 【請求項7】 請求項1〜6の何れか1項に記載の鋼板
を製造するに当たり、粗圧延をAr3変態温度超で行
い、引き続き、仕上圧延をAr3変態温度以下で行い、
仕上温度600℃以上Ar3変態温度未満で圧延を終了
し、600〜900℃で巻き取り、熱延鋼板とすること
を特徴とする形状凍結性に優れた鋼板の製造方法。 - 【請求項8】 600℃以上Ar3変態温度以下におい
て、少なくとも1パス以上を摩擦係数が0.2以下とな
るように仕上圧延を行うことを特徴とする請求項7に記
載の形状凍結性に優れた鋼板の製造方法。 - 【請求項9】 請求項7または8に記載の鋼板を酸洗
し、80%未満の冷間圧延を施した後、600℃〜(A
c3+100)℃の温度範囲に加熱し、冷却し、冷延鋼
板とすることを特徴とする形状凍結性に優れた鋼板の製
造方法。
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