JP3803837B2 - 電気コネクタおよび金属シェル - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は外側に金属シェルが嵌装された電気コネクタおよびその金属シェルに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電気コネクタを使用する環境において、外部からの電磁誘導によってノイズが電気コネクタ内を通る信号線路に混入したり、信号線路から外部への電磁放射によって他の機器に対するノイズの原因となる、いわゆるEMI障害を除くために、電気コネクタを金属シェルで囲んで電磁波を遮蔽することが行われている。前記金属シェルは、一般的には、複数の端子が装着された絶縁ハウジングの外壁を覆うように設けられるもので、絶縁ハウジングの前端(嵌合端)と端子のテール部が延びる後端が開放された角筒状とされ、絶縁ハウジングの外側に嵌装されたものが知られている。このように角筒状とされた金属シェルは、通常、帯状の金属板を用いてその端縁を突き合わせて角筒状に成形したり、或は、金属板の端縁部を重合し、重合部分をスポット溶接で接合して側壁が全周に亘って連続する角筒状に成形されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記のように角筒状に成形された金属シェルにおいて、金属板の端縁を突き合わせたものは、突き合わせ部分に隙間が形成されることを免れず、この隙間から電気コネクタ内部に、周囲の結露などによる水滴や塵埃が侵入する問題点があり、また、電気コネクタをプリント回路基板へ実装するための、半田を溶融させる高温槽における処理に際して、絶縁ハウジングの熱膨張によって、可及的に狭くした前記隙間が永久に広がってしまう問題点があった。また、金属板の端縁部を重合してスポット溶接したものにおいては、隙間の形成が避けられるものであったが、成形工程の他に溶接工程を必要とし、かつ、重合部分が金属板の略2倍の厚さとなるため金属シェルの外部または内部に重合による突出部分が形成される問題点があった。
【0004】
本発明は斯かる問題点に鑑みてなされたもので、壁面に隙間がなく、しかも、外部または内部に金属板の重合による突出部分が形成されない金属シェルを備えた電気コネクタと、成形工程のみで壁面に隙間がなく製造できる金属シェルを提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記の目的のもとになされた本発明は、金属シェルを構成する金属板の端縁部を重ねて隙間のない接合部とし、かつ、この接合部を金属板と略同一の厚さに成形したものである。
【0006】
即ち本発明の電気コネクタは、複数の端子が装着された絶縁ハウジングの外側に金属シェルが嵌装してある電気コネクタにおいて、前記金属シェルが、金属板の両端部にプレス圧縮により形成した段状の接合端縁部を相互に重ねて圧縮しつつ、かしめ状態とし、さらに一方の接合端縁部の端縁と他方の接合端縁部の段部の対向部の少なくとも一部に金属板の厚さ方向で潰された圧縮部を設けることにより対向部の間隙を減少させて、形成された接合部を介在させて無端環状に成形されていることを特徴とする電気コネクタである。
【0007】
また、複数の端子が装着された絶縁ハウジングの外側に金属シェルが嵌装してある電気コネクタにおいて、前記金属シェルが、金属板の両端部に形成した段状の接合端縁部を相互に重ねて圧縮しつつ、かしめ状態とし、さらに一方の接合端縁部の端縁と他方の接合端縁部の段部の対向部が封止材で封止されることにより対向部の間隙を減少させて形成された接合部を介在させて無端環状に成形されていることを特徴とする電気コネクタである。
【0008】
一方、本発明の金属シェルは、複数の端子が装着された絶縁ハウジングの外側に嵌装される電気コネクタの金属シェルにおいて、金属板の両端部にプレス圧縮により形成した段状の接合端縁部を相互に重ねて圧縮しつつかしめ状態とし、さらに一方の接合端縁部の端縁と他方の接合端縁部の段部の対向部の少なくとも一部に金属板の厚さ方向で潰された圧縮部を設けることにより対向部の間隙を減少させて形成された接合部を介在させて無端環状に成形されていることを特徴とする金属シェルである。
【0009】
また、複数の端子が装着された絶縁ハウジングの外側に嵌装される電気コネクタの金属シェルにおいて、金属板の両端部に形成した段状の接合端縁部を相互に重ねて圧縮しつつかしめ状態とし、さらにかつ、一方の接合端縁部の端縁と他方の接合端縁部の段部の対向部が封止材で封止されることにより対向部9の間隙を減少させて形成された接合部を介在させて無端環状に成形されていることを特徴とする金属シェルである。
【0010】
【作用】
本発明の電気コネクタによれば、壁面に隙間がなく、しかも、内部または外部に突出する重合部分のない金属シェルを備えた電気コネクタを提供することができる。また、本発明の金属シェルによれば、溶接工程を要することなく、成形工程のみで金属板の接合端縁部を重ねて結合した金属シェルを提供することができる。
【0011】
【実施例】
以下、本発明の実施例を添付の図を参照して説明する。
【0012】
図1乃至図5に示したのが実施例の電気コネクタ1であって、複数の端子2が所定のピッチで並列に装着された絶縁ハウジング3の外側に金属シェル4が嵌装された構造をしている。図5に示すように、それぞれの端子2は、ピン状のコンタクト部2aが相手側の電気コネクタ(図示していない)と係合するために、絶縁ハウジング3の嵌合端(図5において左側)内部に臨ませてあると共に、ソルダテール部2bが絶縁ハウジング3の後端(図5において右側)から外部に延び、先端部分が金属シェル4の底壁4aと略面一となるように、L字状に屈曲されている。
【0013】
前記金属シェル4は、帯状の金属板5(図6乃至図9参照)を角筒状に屈曲成形したもので、絶縁ハウジング3の嵌合端および後端の部分を開口させている。即ち、帯状の金属板5で金属シェル4の頂壁4bおよび対向する左右の側壁4cを構成すると共に、金属板5の両端部5aを重ねた接合部6が介在する底壁4aが構成されて、金属板5が頂壁4bから側壁4c、底壁4a、側壁4cと、全周に亘って無端環状に連続している。底壁4aに介在させた接合部6は、各端部5aを重ねてあると共に、その厚さを金属板5の厚さと略同一の厚さに成形されている。
【0014】
前記接合部6は、図6乃至図9に示したように、一方の端部5aを金属板5の厚さtの半分の厚さにプレス成形した段状の接合端縁部6aを成形する(図6)と共に、他方の端部5aも同様に金属板5の厚さtの半分の厚さにプレス成形した段状の接合端縁部6bを成形し(図7)、これらの接合端縁部6a、6bを図8に示したように重ねて互いに接合することによって構成されており、接合部6の厚さを金属板5の厚さtと略同一の厚さとしてある。一方の接合端縁部6a内にはプレス成形によって凸部7が設けられ、他方の接合端縁部6b内には、凸部7と密嵌合する穴8で成る凹部がプレス成形によって設けられて、これらの凸部7と穴8を接合端縁部6a、6bを重ねる際に互いに嵌合させ、両接合端縁部6a、6bを厚さ方向で圧縮することによって凸部7と穴8をかしめ状態とし、両接合端縁部6a、6bが分離しないようにしてある。更に、このようにかしめを行った後、図9に示したように、接合部6の表裏に形成される接合端縁部6a、6bの端縁15と段部16の対向部9に金属板5の厚さ方向で潰した圧縮部10を形成して、対向部9の間隙が可及的に狭くなるようにしてある。前記凸部7は、穴8の深さに比べて長い場合には、図10に示したように、凸部7の先端部が穴8の周縁に被さるように変形する。また、穴8の深さが凸部7の長さに比べて深い場合には、図11に示したように、穴8の周縁が凸部7の端面に被さるように変形する。尚、前記圧縮部10の形成に代えて、対向部9の間隙に封止材を充填して対向部9を封止することもできる。
【0015】
金属シェル4の頂壁4bの後端側両側には、片持ち状の係止爪片11が嵌合端に向かって設けられていると共に、両側壁4cの中央部分には、片持ち状の係止爪片12が後端に向かって設けられている。これらは、金属シェル4を絶縁ハウジング3の外側に嵌装した際に、絶縁ハウジング3の外壁と係止するもので、互いに逆方向に延びる片持ち状の係止爪片11、12とすることによって、絶縁ハウジング3と金属シェル4が、嵌装後に前後方向で相対移動しないようにしてある。また、金属シェル4の底壁4aの両側部には、底壁4aと面一で外方に延びる半田付け片13が設けられていると共に、底壁4aの下方に延びる位置決めピン14が設けてられている。
【0016】
上記実施例の電気コネクタ1をプリント回路基板(図示していない)上に表面実装するには、前記位置決めピン14を介して電気コネクタ1のプリント回路基板上での位置を決めた後、高温槽内で半田リフロー処理を行い、端子2のソルダテール部2bとプリント回路基板内の対応する導電パッドを半田付けすると同時に、前記半田付け片13とプリント回路基板内の固定パッドを半田付けする。高温槽内での処理では、絶縁ハウジング3が加熱によって熱膨張することになるが、絶縁ハウジング3の外側に嵌装した金属シェル4が、前記の通り、頂壁4bから側壁4c、底壁4a、側壁4cと全周に亘って金属板5が連続する無端環状とされて拡大しない構造となっているため、絶縁ハウジング3の熱膨張による応力に対抗することができる。この結果、ソルダテール部2bおよび半田付け片13がプリント回路基板に対して移動するのが防止され、それぞれ、導電パッドまたは固定パッドに正しく半田付けすることが可能である。
【0017】
また、金属シェル4に着目すると、接合部6が金属板5と略同一の厚さに構成されて、内外に端縁部5aの重合による突出部分が形成されないので、金属シェル4は、その底壁4aをプリント回路基板に全面を密着させて実装することができると共に、絶縁ハウジング3側には、重合による突出部分に対応するスペースを確保する必要をなくし、かつ、絶縁ハウジング3への嵌装をし易くすることができる。そして、接合部6には金属シェル4を内外に貫通して絶縁ハウジング3に達する隙間が形成されないので、電気コネクタ1内部に周囲から水滴や塵埃が侵入するのを防止することができる。
【0018】
金属シェル4の製造は、金属板5の形成、接合端縁部6a、6bの形成、金属板5の角筒状への成形、接合端縁部6a、6bを重ねた接合部6の構成、更には、頂壁4bおよび側壁4cの係止爪片11、12並びに底壁4aの半田付け片13、位置決めピン14の形成の全てが、金属板材料の打ち抜きと成形の技術によって行える構造であるので、プレス金型を介した連続工程で能率良く製造を進めることができる。
【0019】
尚、実施例の金属シェル4は、接合部6を底壁4a内に介在させたが、底壁4aに介在させるのに代えて、頂壁4bや側壁4cに介在させることも可能である。また、電気コネクタ1を構成している端子2のソルダテール部2bはプリント回路基板上に表面半田付けされる形状のものとしたが、プリント回路基板に設けられるスルーホールに挿通して半田付けされる形状、即ち、金属シェル4の底壁4aの下方に向かって真直に延びる形状とすることも可能である。
【0020】
【発明の効果】
以上に説明の通り、本発明の電気コネクタによれば、壁面に隙間がなく、しかも、内部または外部に突出する重合部分のない金属シェルを備えているので、結露による水滴や塵埃が周囲から侵入するのを防止できると共に、プリント回路基板上への実装時には、絶縁ハウジングの熱膨張による応力に対向し、そりや設置位置のズレを防止し、正しい実装を確実にすることができる。接合部を構成している一方の接合端縁部の端縁と他方の接合端縁部の段部の対向部を封止すれば、水滴や塵埃の侵入の防止効果を一層向上することができる。また、本発明の金属シェルによれば、溶接工程を必要としないで、成形工程のみで製造することができるので、能率良く、コストをかけずに製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例の正面図である。
【図2】 同じく実施例の底面図である。
【図3】 同じく実施例の平面図である。
【図4】 同じく実施例の側面図である。
【図5】 図1のA−A線における拡大断面図である。
【図6】 実施例の金属シェルを構成した金属板の一方の端部に成形した接合端縁部の斜視図である。
【図7】 同じく金属板の他方の端部に成形した接合端縁部の斜視図である。
【図8】 同じく金属板の接合端縁部を重ねて接合部を構成する状態を説明する正面図である。
【図9】 同じく金属板の接合端縁部を重ねた接合部の平面図である。
【図10】 同じく接合端縁部の凸部と穴の嵌合状態の一つを説明する図である。
【図11】 同じく接合端縁部の凸部と穴の他の嵌合状態の一つを説明する図である。
【符号の説明】
1 電気コネクタ
2 端子
2a コンタクト部
2b ソルダテール部
3 絶縁ハウジング
4 金属シェル
4a 金属シェルの底壁
4b 金属シェルの頂壁
4c 金属シェルの側壁
5 金属板
5a 金属板の端部
6 接合部
6a、6b 接合端縁部
7 凸部
8 穴
9 対向部
10 圧縮部
11、12 係止爪片
13 半田付け片
14 位置決めピン
15 接合端縁部の端縁
16 接合端縁部の段部
Claims (5)
- 複数の端子2が装着された絶縁ハウジング3の外側に金属シェル4が嵌装してある電気コネクタ1において、
前記金属シェル4は、金属板5の両端部5aにプレス圧縮により形成した段状の接合端縁部6a、6bを相互に重ねて圧縮しつつ、かしめ状態とし、
さらに一方の接合端縁部6a、6bの端縁15と他方の接合端縁部6a、6bの段部16の対向部9の少なくとも一部に金属板5の厚さ方向で潰された圧縮部10を設けることにより対向部9の間隙を減少させて形成された接合部6を介在させて無端環状に成形されていることを特徴とする電気コネクタ。 - 複数の端子2が装着された絶縁ハウジング3の外側に金属シェル4が嵌装してある電気コネクタ1において、
前記金属シェル4が、金属板5の両端部5aにプレス成型により形成した段状の接合端縁部6a、6bを相互に重ねて圧縮しつつ、かしめ状態とし、
さらに一方の接合端縁部6a、6bの端縁15と他方の接合端縁部6a、6bの段部16の対向部9が封止材で封止されることにより対向部9の間隙を減少させて形成された接合部6を介在させて無端環状に成形されていることを特徴とする電気コネクタ。 - 金属板5の両端部5aに形成した段状の接合端縁部6a、6bは、一方の接合端縁部6a内に設けた凸部7と、他方の接合端縁部6b内に設けた穴8を互いに嵌合させてかしめることにより結合されている請求項1または2に記載の電気コネクタ。
- 複数の端子2が装着された絶縁ハウジング3の外側に嵌装される電気コネクタ1の金属シェル4において、
金属板5の両端部5aにプレス圧縮により形成した段状の接合端縁部6a、6bを相互に重ねて圧縮しつつ、かしめ状態とし、
さらに、一方の接合端縁部6a、6bの端縁15と他方の接合端縁部6a、6bの段部16の対向部9の少なくとも一部に金属板5の厚さ方向で潰された圧縮部10を設けることにより対向部9の間隙を減少させて形成された接合部6を介在させて無端環状に成形されていることを特徴とする金属シェル。 - 複数の端子2が装着された絶縁ハウジング3の外側に嵌装される電気コネクタ1の金属シェル4において、
金属板5の両端部5aに形成した段状の接合端縁部6a、6bを相互に重ね圧縮しつつ、かしめ状態とし、
さらに、一方の接合端縁部6a、6bの端縁15と他方の接合端縁部6a、6bの段部16の対向部9が封止材で封止されることにより対向部9の間隙を減少させて形成された接合部6を介在させて無端環状に成形されていることを特徴とする金属シェル。
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