JP3801466B2 - 曲げ加工方法および曲げ加工装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、突当て部材に板状のワークを突き当てた状態で型を移動させてワークを折り曲げる曲げ加工方法と、その曲げ加工方法を実施するためのプレスブレーキのような曲げ加工装置とに関する。
【0002】
【従来の技術】
典型的なプレスブレーキは、図5および図6に示すように、プレス機本体1と、プレス機本体1の背後に配置されるバックゲージ機構2とで構成される。プレス機本体1は、上型3を保持するラム5と下型4を支持するテーブル6とを上下に対向位置させて成る。ラム5は油圧シリンダやサーボモータを駆動源とする往復動機構により上下に駆動される。往復動機構を駆動して上型3を下降動作させ、ワークWを下型4のV字状の溝内へ所定の量だけ押し込むことによりワークWは所定の曲げ角度に折り曲げられる。
【0003】
前記バックゲージ機構2は、ワークWの後端縁が突き当てられる左右一対の突当て部材9,10を有する。各突当て部材9,10は前後方向A、横方向E、および上下方向Cに移動可能である。同図中、11は突当て部材9,10を横方向Eへ往復摺動可能に支持するスライドガイドである。スライドガイド11の両端部はボールねじ機構のような駆動機構12,13にそれぞれ接続されている。曲げ作業に先立ち、左右の駆動機構12,13を駆動させて各突当て部材9,10の前後方向Aの位置を定める。ワークWはプレス機本体1の上型3と下型4との間へ送り込まれ、後端縁が各突当て部材9,10に突き当てられる。この突当て状態でワークWを折り曲げることで、所定の曲げ寸法となる。
【0004】
図7および図8は、板状のワークWを折り曲げたときの状態を示す。図7において、ワークWの後端縁15と曲げ位置16との距離B1を一般に「曲げの絶対寸法」と呼ぶ。また、図8において、折り曲げられたワークWの後端縁15とワークWの外面の交点P0との距離Lを「曲げの外寸法」、ワークWの後端縁15とワークWの内面の交点Piとの距離B2を「曲げの内寸法」と呼ぶ。なお、曲げ角度が90度のときの前記外寸法Lおよび内寸法B2は図9に示したとおりである。
【0005】
一般に外寸法Lは絶対寸法B1より大きく、その差は「伸び量」と呼ばれる。この外寸法の伸び量は、曲げ角度やワークWの板厚を含む曲げ条件に依存する。一般に「曲げ寸法」といえば、外寸法Lを意味する場合が多い。これは板金の図面に外寸法Lが記入されることが多く、また、曲げ加工後にノギスなどの計測器具によりワークWを測定する場合に外寸法Lの測定が最も容易であるからである。従って、ここでは「曲げ寸法」とは外寸法Lを意味するものとする。
【0006】
通常、曲げ加工を行うときには、予めワークWの材質や板厚、金型などに関する曲げ条件、曲げ寸法の目標値、および曲げ角度の目標値が与えられる。曲げ寸法は、曲げ条件と曲げ角度の目標値とから伸び量を計算し、曲げ寸法の目標値から前記伸び量を差し引いて絶対寸法B1を求めた後、図10に示すように、上型3の刃先3aとバックゲージ機構2の突当て部材9,10との距離Sを絶対寸法B1と同一にすることによって決められる。また、曲げ角度は、図11に示すように、下型4の溝4a内へのワークWの押込み量、すなわち、上型3のワークWとの当接位置Y1から下降終端位置Y2までの移動距離(以下、これを「動作量」という。)dによって決められる。この動作量は、与えられた曲げ条件と曲げ角度の目標値とから予め計算により求められる。
【0007】
上記した構成のプレスブレーキにより板状のワークWを曲げ加工するに際し、目標とする曲げ寸法と曲げ角度とが得られるかどうかは、ワークWの試し曲げにより確認される。
まず、曲げの伸び量を算出し、その算出値と曲げ寸法の目標値とに基づいてバックゲージ機構2の突当て部材9,10を位置決めする。つぎに、上型3の動作量dを算出し、その算出値に応じて上型3を移動させることにより、バックゲージ機構2により位置決めされたワークWを折り曲げる。
【0008】
この試し曲げの後、ワークWを取り出して曲げ角度を分度器などで実測し、曲げ角度の実測値が目標値と一致していれば、つぎに曲げ寸法もノギスなどで実測する。もし、曲げ角度の実測値が目標値と一致していなければ、曲げ寸法は実測しない。曲げの伸び量は曲げ角度に依存するものであり、曲げ角度の実測値が目標値と一致していなければ、曲げ寸法の実測によって目標の曲げ寸法との差異を知ることができないからである。
【0009】
曲げ角度の実測値が目標値と一致しない場合には、その誤差に応じて上型3の動作量を補正する。この補正後に再度、試し曲げを行って、曲げ角度の実測値が目標値と一致するのを確認してもよい。
曲げ角度の実測値が目標値と一致したとき、曲げ寸法をノギスなどで実測し、その実測値が目標値と一致しなければ、その誤差に応じて突当て部材9,10の位置を修正する。この修正後に再度、試し曲げを行って、曲げ寸法の実測値が目標値と一致するのを確認してもよい。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
一般的に、演算で得られた伸び量と動作量とに基づいて曲げ作業を行っただけでは、目標とする曲げ角度と曲げ寸法とは得られない。従って、上記した調整方法によると、まず、目標とする曲げ角度を得るためにプレス機本体1の調整を行い、その後に、目標とする曲げ寸法を得るためにバックゲージ機構2の調整を行うことになり、目標とする曲げ角度を得るための調整で少なくとも1回の試し曲げが、つぎに、目標とする曲げ寸法を得るための調整で少なくとも1回の試し曲げが、それぞれ必要であり、合計で少なくとも2回の試し曲げを実施する必要がある。
【0011】
この発明は、上記問題に着目してなされたもので、試し曲げを1回行うだけで、目標とする曲げ角度と曲げ寸法とが得られる曲げ加工方法および曲げ加工装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
この発明による曲げ加工方法は、突当て部材に板状のワークを突き当てた状態で型を移動させてワークを折り曲げるものであり、曲げ角度の目標値から型の動作量を算出する初期演算工程と、曲げ寸法の目標値に応じて突当て部材を位置決めする準備工程と、前記突当て部材にワークを突き当てた状態で型を前記初期演算工程で求めた動作量に応じて移動させてワークを折り曲げる試し曲げ工程と、試し曲げ工程で折り曲げられたワークの曲げ角度と曲げ寸法とを実測する計測工程と、ワークの曲げ角度の実測値が目標値と一致しないとき、前記曲げ角度の実測値を目標値としたときの型の動作量と前記初期演算工程で求めた型の動作量との差によって前記初期演算工程で求めた型の動作量を補正する補正演算と、曲げ条件と曲げ角度の目標値とから算出される曲げ寸法の伸び量と曲げ条件と曲げ角度の実測値とから算出される曲げ寸法の伸び量との差を前記曲げ寸法の実測値に加算して曲げ寸法の予測値を算出する予測演算とを実行する演算工程と、突当て部材の位置を前記予測演算で算出された曲げ寸法の予測値に応じて修正する修正工程と、前記突当て部材にワークを突き当てた状態で型を前記補正演算で補正された動作量に応じて移動させてワークを折り曲げる曲げ加工工程とを実施してワークを曲げ加工することを特徴とする。
【0013】
また、この発明による曲げ加工装置は、型を往復動させる往復動機構と板状のワークが突き当てられる突当て部材を有するバックゲージ機構とを備え、前記突当て部材にワークを突き当てた状態で型を移動させてワークを折り曲げるものであり、曲げ角度および曲げ寸法の各目標値を含む曲げ加工条件に関わるデータと試し曲げで得られたワークの曲げ角度および曲げ寸法の各実測値とを入力するためのデータ入力手段と、前記データ入力手段により曲げ加工条件に関わるデータが入力されたとき、その入力データに基づいて型の動作量を算出する初期演算を実行し、前記データ入力手段により試し曲げで得られたワークの曲げ角度の実測値と曲げ寸法の実測値とが入力されたとき、前記曲げ角度の実測値を目標値としたときの型の動作量と前記初期演算工程で求めた型の動作量との差によって前記初期演算工程で求めた型の動作量を補正する補正演算と、曲げ条件と曲げ角度の目標値とから算出される曲げ寸法の伸び量と曲げ条件と曲げ角度の実測値とから算出される曲げ寸法の伸び量との差を前記曲げ寸法の実測値に加算して曲げ寸法の予測値を算出する予測演算とを実行する演算手段と、型の動作量に応じて前記往復動機構の駆動を制御するとともに、曲げ寸法の予測値に応じてバックゲージ機構の駆動を制御する制御手段とを備えて成る。
【0014】
上記において、「型」とは、上型を下降させてワークを曲げ加工する曲げ加工装置では「上型」を、下型を上昇させて曲げ加工する曲げ加工装置では「下型」を、それぞれ意味する。「往復動機構」は、1軸駆動でも2軸駆動でもよく、その駆動源は油圧シリンダでもサーボモータでもよい。
【0015】
上記の「曲げ加工条件に関わるデータ」には、ワークに関するデータ、型の形状に関するデータ、曲げ角度および曲げ寸法の各目標値などが含まれる。
「データ入力手段」は典型的にはキーボードや操作盤などに設けられるキースイッチである。「演算手段」および「制御手段」は、専用のハードウェア回路によって実現することができ、また、プログラムされたコンピュータによっても実現することができる。
【0016】
曲げ加工に先立ち、作業者はデータ入力手段により曲げ加工条件に関わるデータを入力する。演算手段は入力データに基づいて初期演算を実行し、型の動作量を算出する。制御手段はバックゲージ機構の駆動を制御し、曲げ寸法の目標値に応じた位置に突当て部材を位置決めする。突当て部材にワークの後端縁を突き当てた状態で往復動機構を駆動させると、制御手段は往復動機構の駆動を制御し、型を前記初期演算で求めた動作量に応じて移動させ、ワークが折り曲げられる。
上記の試し曲げの終了後、作業者は、ワークの曲げ角度と曲げ寸法とを適当な測定器具を用いて実測する。作業者が各実測値をデータ入力手段により入力すると、演算手段は補正演算を実行して、曲げ角度の実測値を目標値としたときの型の動作量と前記初期演算で求めた型の動作量との差によって前記初期演算で求めた型の動作量を補正するとともに、予測演算を実行して、曲げ条件と曲げ角度の目標値とから算出される曲げ寸法の伸び量と曲げ条件と曲げ角度の実測値とから算出される曲げ寸法の伸び量との差を曲げ寸法の実測値に加算して曲げ寸法の予測値を算出する。制御手段はバックゲージ機構の駆動を制御し、予測演算で算出された曲げ寸法の予測値に応じて突当て部材の位置を修正する。突当て部材にワークの後端縁を突き当てた状態で往復動機構を駆動させると、制御手段は往復動機構の駆動を制御し、型を補正演算で補正された動作量に応じて移動させ、ワークが曲げ加工される。
【0017】
この発明によると、試し曲げを1回行うだけで、ワークを目標とする曲げ角度および曲げ寸法に曲げ加工でき、曲げ作業の効率を向上し得、材料の無駄を少なくできる。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明の一実施例であるプレスブレーキの外観を示す。
図示例のプレスブレーキは、一側面に電気制御ボックス20が設けれらたプレス機本体1と、このプレス機本体1の背後に配置されるバックゲージ機構2とで構成される。バックゲージ機構2は、前後、左右、上下の各方向へ移動可能な一対の突当て部材9,10を有する。
【0019】
プレス機本体1は、ベッド21上に下型4を支持するためのテーブル6が取り付けられ、このテーブル6の上方にラム5がガイド22,22に沿って昇降可能に配置されて成る。ラム5の下端には、ホルダ23を介して上型3が取り付けられる。下型4は上面にV字状の溝を有し、上型3の加圧力をワークに作用させてワークを下型4の溝内へ押し込み、所望の曲げ角度に折り曲げる。
ベッド21の前面下部にはフットスイッチ24が配備される。作業者はフットスイッチ24を踏み操作してラム5を昇降動作させる。
【0020】
ラム5とフレーム25との間には、ラム5の昇降動作位置を検出するための位置検出器26が設けてある。この実施例では、位置検出器26としてリニアセンサが用いてあり、フレーム25の側にスケール27が、ラム5の側に可動ヘッド28が、それぞれ取り付けられる。
可動ヘッド28は、スケール27上をラム5と一体に昇降動作し、位置検出信号としてパルス信号を出力する。位置検出信号は、電気制御ボックス20内の制御装置60(図2,3に示す。)に取り込まれて計数され、その計数値によりラム5の昇降動作位置が検出される。
【0021】
上型3は油圧シリンダ30を駆動源とする往復動機構7によりラム5と一体に昇降動作される。油圧シリンダ30は、前記フレーム25に支持されており、下方へ突出するピストンロッド31の下端にラム5が支持される。
なお、図示例の往復動機構7は1個の油圧シリンダ30を駆動源とするが、これに限らず、2個、さらには2個以上の油圧シリンダを駆動源としてもよい。
【0022】
油圧シリンダ30の内部には、図2に示すように、ピストン32が往復動可能に配備されている。ピストン32と一体のピストンロッド31は外部へ突出し、ラム5を支持する。油圧シリンダ30の内部は、ピストン32より下方の空間を第1のシリンダ室33、ピストン32より上方の空間を第2のシリンダ室34とする。第1、第2の各シリンダ室33,34には作動油を導出入するための導出入口35,36が設けられている。この導出入口35,36を介して第1、第2の各シリンダ室33,34に対する作動油の導出入を行うことにより、油圧シリンダ30のピストン32が往復動作する。
【0023】
往復動機構7は、上記の油圧シリンダ30と、油圧シリンダ30の各シリンダ室33,34に対して作動油を導出入するための油圧回路40と、油圧回路40へ作動油を供給するポンプ41と、ポンプ41を駆動する交流サーボモータ42とを含む。この往復動機構7は図3の制御装置60により駆動が制御され、油圧シリンダ30のピストン32が往復動作して上型3が昇降動作する。
【0024】
図3に示される制御装置60は、前記電気制御ボックス20に組み込まれており、マイクロコンピュータをもって構成され、制御および演算の主体であるCPU61と、プログラムや固定データなどが格納されるROM62と、演算結果などのデータの読み書きに用いられるRAM63とを含んでいる。電気制御ボックス20の外面には、表示部64や入力部65が設けられており、入力部65には機械動作の設定やデータ入力に供される各種のキースイッチが配備されている。
【0025】
CPU61には、バックゲージ機構2の駆動機構12,13が電気接続されている。各駆動機構12,13はボールネジ機構より成るもので、CPU61は、各駆動機構12,13における駆動モータ66への出力をサーボアンプ67へ与え、サーボアンプ67はこれを増幅して駆動モータ66へ与える。各駆動モータ66にはロータリエンコーダ68が接続されている。ロータリエンコーダ68は駆動モータ66の回転角度、すなわち駆動機構12,13の動作量を検出してその値をCPU61へ出力する。
【0026】
CPU61には、プレス機本体1の往復動機構7が電気接続されている。CPU61は、往復動機構7の交流サーボモータ42への出力をサーボアンプ70へ与え、サーボアンプ70はこれを増幅して交流サーボモータ42へ与える。なお、図中、71,72は前記油圧回路40の適所に設けられた電磁切換弁であり、油圧回路40における作動油の経路を切り換える。CPU61は各電磁切換弁71,72の電磁ソレノイドの駆動を制御するための駆動信号を出力する。
【0027】
図4は、上記構成のプレスブレーキによる曲げ加工方法の手順を示す。なお、図中、「ST」は「STEP」(ステップ)の略である。
同図の手順の開始に先立ち、ワークの曲げ角度の目標値θと曲げ寸法の目標値Lとが定められる。いま仮に、曲げ角度の目標値θを90度、曲げ寸法の目標値Lを50mmであるとする。
【0028】
まず、同図のST1において、作業者が曲げ角度および曲げ寸法の各目標値θ,Lを含む曲げ加工条件に関わるデータを入力部65により入力すると、制御装置60のCPU61は、入力されたデータを取り込んでつぎの(1)式の初期演算を実行し、曲げ角度の目標値θを得るための上型3の動作量d、すなわち、下型4の溝4a内へのワークの押込量を算出する。いま仮に、上型3の動作量dを5mmであるとする。
d=f(θ,M1,・・・,Mn,D1,・・・,Dn)・・・(1)
【0029】
上式において、M1〜Mnは抗張力、板厚、板長さなどのワークに関するデータであり、また、D1〜Dnは上型3の先端アールや下型4の溝の幅、溝肩アールなどの型の形状に関するデータであり、上型3の動作量dは、これらのデータと曲げ角度の目標値θとの関数となる。
【0030】
つぎのST2では、制御装置60はバックゲージ機構2の駆動機構12,13の駆動を制御し、曲げ寸法の目標値Lから演算により求まる曲げの伸び量を差し引いた値に相当する位置に突当て部材9,10を位置決めする。
【0031】
つぎのST3では、作業者はプレス機本体1の上型3と下型4との間へワークを挿入して、ワークの後端縁を突当て部材9,10に突き当て、この状態でフットスイッチ24を踏操作して往復動機構7を駆動させる。制御装置60は往復動機構7の駆動を制御して上型3を下降させ、上型3がワークに当接したとき、その当接位置から前記初期演算で求めた動作量dだけ上型3を移動させることによりワークWを下型4の溝内へ押し込んで折り曲げる。
【0032】
上記した試し曲げが終了した後、つぎのST4では、作業者は、ワークWをプレス機本体1より取り出し、曲げ角度と曲げ寸法とを適当な測定器具を用いて実測する。いま仮に、曲げ角度の実測値θ′が92度、曲げ寸法の実測値L′が50.1mmであったとする。
【0033】
つぎのST5において、作業者が曲げ角度と曲げ寸法との各実測値θ′,L′を入力部65により入力すると、制御装置60のCPU61は、前記曲げ角度の実測値θ′を目標値としたときの上型3の動作量d′を前記した(1)式の演算によって算出した後、初期演算で求められた上型3の動作量dと前記上型3の動作量d′との差Δdを求める。いま仮に、上型3の動作量d′が4.8mmであったとすると、前記の差Δdは、Δd=d−d′=5mm−4.8mm=0.2mmとなる。
つぎにCPU61は、上型3の動作量dに前記の差Δdを加算して上型3の動作量dを補正する。具体例では、上型3の動作量dが5mm、差Δdが0.2mmであるから、補正された上型3の動作量dは、5mm+0.2mm=5.2mmとなる。
【0034】
つぎにCPU61は、つぎの(2)(3)式の演算を実行して、曲げ角度の目標値θに対する曲げ寸法の伸び量hと曲げ角度の実測値θ′に対する曲げ寸法の伸び量h′とを算出する。
h=(Ri+t)・tan{(180−θ)/2}−π・(Ri+λt)・{(180−θ)/360}・・・(2)
h′=(Ri+t)・tan{(180−θ′)/2}−π・(Ri+λt)・{(180−θ′)/360}・・・(3)
なお、上式において、Riはワークの曲げ部分における内側のアールの半径であり、下型4の溝幅a、ワークの肉厚t、およびワークの抗張力σの関数で与えられる。また、λは係数であり、λ=0.42+0.035・(Ri/t−1)で与えられる。
【0035】
つぎにCPU61は、曲げ角度の目標値θに対する曲げ寸法の伸び量hと曲げ角度の実測値θ′に対する曲げ寸法の伸び量h′との差Δhを求める。いま仮に、曲げ角度の目標値θに対する曲げ寸法の伸び量hが2mm、曲げ角度の実測値θ′に対する曲げ寸法の伸び量h′が1.9mmであったとすると、前記の差Δhは、h−h′=2mm−1.9mm=0.1mmである。
つぎにCPU61は、曲げ寸法の実測値L′に前記の差Δhを加算して曲げ寸法の予測値BBを算出する。いま仮に、曲げ寸法の実測値L′が50.1mmであったとすると、具体例では、曲げ寸法の目標値Bは50mmであるから、算出された曲げ寸法の予測値BBは、BB=L′+Δh=50.1mm+0.1mm=50.2mmとなる。
【0036】
つぎのST6では、制御装置60はバックゲージ機構2の駆動機構12,13の駆動を制御し、算出された曲げ寸法の予測値BBに応じて突当て部材9,10の位置を修正する。
【0037】
つぎのST7では、作業者はプレス機本体1の上型3と下型4との間へワークを挿入して、ワークの後端縁を突当て部材9,10に突き当て、この状態でフットスイッチ24を踏操作して往復動機構7を駆動させる。制御装置60は往復動機構7の駆動を制御して上型3を下降させ、上型3がワークに当接したとき、その当接位置から前記補正演算で求めた動作量dだけ上型3を移動させることによりワークWを下型4の溝内へ押し込んで折り曲げる。
【0038】
なお、上記の実施例では、試し曲げ工程でワークの曲げ角度と曲げ寸法とをワークの1ヶ所(例えばワークの中心位置)で計測して、上型3の動作量を補正しかつ曲げ寸法の予測値を算出しているが、往復動機構7の駆動源として2個の油圧シリンダを用いた2軸駆動の機種では、試し曲げ工程でワークの曲げ角度と曲げ寸法とをワークの両端部でそれぞれ計測して、上型3の動作量と曲げ寸法の予測値とをそれぞれ軸毎に求めてもよい。
【0039】
【発明の効果】
この発明によれば、試し曲げを1回行うだけで、ワークを目標とする曲げ角度および曲げ寸法に曲げ加工できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例であるプレスブレーキの外観を示す正面図である。
【図2】往復動機構の構成を示す説明図である。
【図3】制御装置の電気的な構成を示すブロックである。
【図4】曲げ加工方法の手順を示すフローチャートである。
【図5】プレスブレーキの概略構成を示す側面図である。
【図6】バックゲージ機構の概略構成を示す平面図である。
【図7】板状のワークを折り曲げたときの状態を示す斜視図である。
【図8】ワークの曲げ形態を示す側面図である。
【図9】曲げ角度が90度である場合のワークの曲げ形態を示す側面図である。
【図10】曲げ寸法の設定方法を示す上下型の側面図である。
【図11】曲げ角度および曲げ寸法の概念を説明するための上下型の側面図である。
【符号の説明】
1 プレス機本体
2 バックゲージ機構
3 上型
4 下型
7 往復動機構
9,10 突当て部材
60 制御装置
61 CPU
65 入力部
Claims (2)
- 突当て部材に板状のワークを突き当てた状態で型を移動させてワークを折り曲げる曲げ加工方法であって、
曲げ角度の目標値から型の動作量を算出する初期演算工程と、
曲げ寸法の目標値に応じて突当て部材を位置決めする準備工程と、
前記突当て部材にワークを突き当てた状態で型を前記初期演算工程で求めた動作量に応じて移動させてワークを折り曲げる試し曲げ工程と、
試し曲げ工程で折り曲げられたワークの曲げ角度と曲げ寸法とを実測する計測工程と、
ワークの曲げ角度の実測値が目標値と一致しないとき、前記曲げ角度の実測値を目標値としたときの型の動作量と前記初期演算工程で求めた型の動作量との差によって前記初期演算工程で求めた型の動作量を補正する補正演算と、曲げ条件と曲げ角度の目標値とから算出される曲げ寸法の伸び量と曲げ条件と曲げ角度の実測値とから算出される曲げ寸法の伸び量との差を前記曲げ寸法の実測値に加算して曲げ寸法の予測値を算出する予測演算とを実行する演算工程と、
突当て部材の位置を前記予測演算で算出された曲げ寸法の予測値に応じて修正する修正工程と、
前記突当て部材にワークを突き当てた状態で型を前記補正演算で補正された動作量に応じて移動させてワークを折り曲げる曲げ加工工程とを実施してワークを曲げ加工することを特徴とする曲げ加工方法。 - 型を往復動させる往復動機構と板状のワークが突き当てられる突当て部材を有するバックゲージ機構とを備え、前記突当て部材にワークを突き当てた状態で型を移動させてワークを折り曲げる曲げ加工装置であって、
曲げ角度および曲げ寸法の各目標値を含む曲げ加工条件に関わるデータと試し曲げで得られたワークの曲げ角度および曲げ寸法の各実測値とを入力するためのデータ入力手段と、
前記データ入力手段により曲げ加工条件に関わるデータが入力されたとき、その入力データに基づいて型の動作量を算出する初期演算を実行し、前記データ入力手段により試し曲げで得られたワークの曲げ角度の実測値と曲げ寸法の実測値とが入力されたとき、前記曲げ角度の実測値を目標値としたときの型の動作量と前記初期演算で求めた型の動作量との差によって前記初期演算で求めた型の動作量を補正する補正演算と、曲げ条件と曲げ角度の目標値とから算出される曲げ寸法の伸び量と曲げ条件と曲げ角度の実測値とから算出される曲げ寸法の伸び量との差を前記曲げ寸法の実測値に加算して曲げ寸法の予測値を算出する予測演算とを実行する演算手段と、
型の動作量に応じて前記往復動機構の駆動を制御するとともに、曲げ寸法の予測値に応じてバックゲージ機構の駆動を制御する制御手段とを備えて成る曲げ加工装置。
Priority Applications (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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