JP3800194B2 - 結晶性1,2−ポリブタジエンの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、結晶性1,2−ポリブタジエンの製造方法に関し、さらに詳細には、得られる重合体のビニル結合含量が高く、分子量の調節ができる、特定の触媒系を用いた、高い結晶化度を有する1,2−ポリブタジエンの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、結晶性を有する1,2−ポリブタジエンは、コバルト塩のホスフィン錯体とトリアルキルアルミニウムと水からなる触媒(特許文献1,特許文献2)、または、コバルト塩のホスフィン錯体とメチルアルミノキサンからなる触媒(特許文献3)により得られている。
これらに記述される触媒系では、34%以上の結晶化度を有する1,2−ポリブタジエン系重合体を製造するにおいては、芳香族基を3つ有するホスフィン化合物が実質必要であることは類推できるものの、それらのホスフィン化合物を使用する際は、重合温度を低くしなければならず、析出を防止するための溶媒使用量の増大、および、発熱反応である1,2−ポリブタジエン系重合体の製造には、重合反応器に、より高い冷却能力が必要とされる等、エネルギーの損失が大きくなる問題がある。
なお、上記特許文献1(特公昭44−32425公報)において、脂肪族基が1つ、および、芳香族基が2つのホスフィン化合物として、ジフェニルエチルホスフィンの使用例が記載されてはいるものの、当該ホスフィン化合物使用時には、無定形(すなわち結晶化度0%)の重合体が得られると記述されており、当該公報において、具体的に例示されているようなホスフィンの範疇、すなわち、脂肪族基を1つ、および芳香族基を2つ有するホスフィン化合物では、34%以上の結晶化度を有する1,2−ポリブタジエン系重合体の製造を類推することは困難である。
また、これらの先行技術では、触媒系にハロゲン含有化合物や重合溶媒にハロゲン含有系炭化水素溶媒を用いているため、得られる1,2−ポリブタジエン中のハロゲン原子の含有量は、通常、300〜2,000ppmと多く、これが環境問題などに悪影響を及ぼす恐れがある。
【0003】
【特許文献1】
特公昭44−32425公報
【特許文献2】
特開平1−249788公報
【特許文献3】
特開平8−59733公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来技術の課題を背景になされたもので、特定のホスフィン化合物を含む触媒系を用いた、得られる重合体のビニル結合含量が高く、分子量の調節ができる高い結晶化度を有する1,2−ポリブタジエンの製造方法に関する。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(A)コバルト塩、(B)炭素数3以上の分岐を有する脂肪族基または炭素数5以上の脂環族基を1つと芳香族基を2つ有するホスフィン化合物、および(C)有機アルミニウム化合物、を含有する触媒系を使用して、1,3−ブタジエンを炭化水素溶媒中で重合することを特徴とする結晶性1,2−ポリブタジエンの製造方法に関する。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の触媒に使用される(A)コバルト塩は、塩化コバルト、臭化コバルト、ヨウ化コバルトや、オクチル酸コバルト、バーサチック酸コバルト、ナフテン酸コバルトなどの有機酸コバルト塩などであり、ハロゲン原子を含有しない点から、オクチル酸コバルト、バーサチック酸コバルト、ナフテン酸コバルトなどの有機酸コバルト塩が好ましい。
また、(B)炭素数3以上の分岐を有する脂肪族基または炭素数5以上の脂環族基を1つと芳香族基を2つ有するホスフィン化合物としては、例えば、式(1)に示すジフェニルシクロヘキシルホスフィン、式(2)に示すジフェニルイソプロピルホスフィン、式(3)に示すジフェニルイソブチルホスフィン、式(4)に示すジフェニルt−ブチルホスフィン、式(5)に示すジフェニルシクロペンチルホスフィン、式(6)に示すジフェニル(4−メチルシクロヘキシル)ホスフィン、式(7)に示すジフェニルシクロヘプチルホスフィン、式(8)に示すジフェニルシクロオクチルホスフィンなどの、炭素数3以上の分岐を有する脂肪族基または炭素数5以上の脂環族基を一つとフェニル基などの芳香族基を二つ有するホスフィン化合物が好ましく用いられる。
【0007】
【化1】
【0008】
【化2】
【0009】
【化3】
【0010】
【化4】
【0011】
【化5】
【0012】
【化6】
【0013】
【化7】
【0014】
【化8】
【0015】
この(A)コバルト塩、(B)炭素数3以上の分岐を有する脂肪族基または炭素数5以上の脂環族基を1つとおよび芳香族基を2つ有するホスフィン化合物、および(C)有機アルミニウム化合物からなる触媒系を用いるに際しては、(A)〜(C)成分の混合系を使用してもよいが、好ましくは(A)成分と(B)成分とからなるコバルト塩のホスフィン錯体に(C)成分を併用することが好ましい。(A)成分と(B)成分からなるコバルト塩のホスフィン錯体成分の使用に際しては、あらかじめ合成したものを使用してもよいし、あるいは、重合系中で(A)コバルト塩と(B)炭素数3以上の分岐を有する脂肪族基または炭素数5以上の脂環族基を1つおよび芳香族基を2つ有するホスフィン化合物を接触させる方法でもよい。
【0016】
好ましい(A)コバルト塩、および(B)炭素数3以上の分岐を有する脂肪族基または炭素数5以上の脂環族基を1つと芳香族基を2つ有するホスフィン化合物、からなるコバルト塩のホスフィン錯体の具体例としては、コバルトビス(ジフェニルシクロヘキシルホスフィン)ジクロライド、コバルトビス(ジフェニルシクロヘキシルホスフィン)ジブロマイド、コバルトビス(ジフェニルイソプロピルホスフィン)ジクロライド、コバルトビス(ジフェニルイソプロピルホスフィン)ジブロマイド、コバルトビス(ジフェニルイソブチルホスフィン)ジクロライド、コバルトビス(ジフェニルイソブチルホスフィン)ジブロマイド、コバルトビス(ジフェニルt−ブチルホスフィン)ジクロライド、コバルトビス(ジフェニルt−ブチルホスフィン)ジブロマイドなどが挙げられ、好ましくはコバルトビス(ジフェニルシクロヘキシルホスフィン)ジクロライド、コバルトビス(ジフェニルシクロヘキシルホスフィン)ジブロマイドである。
【0017】
また、本発明に用いられる(C)有機アルミニウム化合物としては、メチルアルミノキサン、またはトリアルキルアルミニウムと水を接触してなる化合物が挙げられる。このうち、メチルアルミノキサンは、あらかじめ合成したものを使用してもよいし、あるいは、重合系中で合成したものでもよい。
また、上記トリアルキルアルミニウムは、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムなどであり、水はトリアルキルアルミニウムのアルミニウム原子に対するモル比で、0.2〜1.0、好ましくは0.3〜0.75の量を使用する。
トリアルキルアルミニウムと水の接触方法は、トリアルキルアルミニウムの不活性有機溶媒溶液に対して、水を蒸気、液体、および、固体(氷)のいずれの状態で接触させてもよい。また、不活性有機溶媒への溶解状態、分散状態、あるいは、乳化状態として、もしくは、不活性ガス中に存在するガス状態、ミスト状態として接触させてもよい。
【0018】
本発明に使用される触媒において、(A)コバルト塩と(B)ホスフィン化合物の使用割合は、(A)コバルト塩1モルに対し、(B)ホスフィン化合物が好ましくは1〜5モルである。
また、(A)〜(B)成分からなるコバルト塩のホスフィン錯体の使用量は、1,3−ブタジエンと該ホスフィン錯体中のコバルト原子のモル比(1,3−ブタジエン/Co)で5,000〜150,000、好ましくは10,000〜100,000の範囲である。1,3−ブタジエン/Co(モル比)が、5,000未満では得られる重合体の機械的強度が劣り、一方150,000を超えると重合活性が低下する。
さらに、(C)成分(有機アルミニウム化合物)の使用量は、1,3−ブタジエンと(C)成分中のアルミニウム原子のモル比(1,3−ブタジエン/Al)で500〜4,000、好ましく800〜2,000の範囲である。1,3−ブタジエン/Al(モル比)が、500未満では経済的に不利であり、一方4,000を超えると重合活性が低下する。なお、(A)〜(B)成分からなるコバルト塩のホスフィン錯体のコバルト原子に対する(C)成分のアルミニウム原子の比(Al/Co)としては、通常、5〜300、好ましくは7.5〜100程度である。Al/Co(原子比)が、5未満では重合活性が低下し、一方300を超えると経済的に不利である。
【0019】
本発明に使用される触媒は、触媒成分を任意の順序で、不活性有機溶媒中で混合されることによって調製される。好ましくは、図1に示すように、不活性有機溶媒中で、(A)コバルト塩と(B)ホスフィン化合物とを反応させて、コバルト塩のホスフィン錯体を形成させたのち、これに(C)成分を加えて、本発明の触媒とし、この触媒を用いて、1,3−ブタジエンを炭化水素溶媒中で重合することにより、結晶性の1,2−ポリブタジエンを得る。
上記触媒調製に用いられる不活性有機溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、ブタン、ブテン、ペンタン、ペンテン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼンなどの塩素化炭化水素、および、これらの混合物を使用することができる。
なお、触媒調製に用いられる不活性有機溶媒としては、重合溶媒と同じ溶媒を使用することも好ましい。
また、触媒は、これを本発明の1,3−ブタジエンに接触させる前にあらかじめ各成分を混合して調製しておいてもよく、また、重合反応器中で共役ジエンの存在下で各成分を混合して調製することもできる。
【0020】
本発明では、1,3−ブタジエンを、(A)、(B)、および(C)成分を主成分とする触媒を用い、炭化水素溶媒中で重合することにより、好ましくは30%以上、さらに好ましくは34%以上の結晶化度を有する1,2−ポリブタジエンを製造する。
【0021】
なお、本発明では、1,3−ブタジエン以外の共役ジエンを10重量%以下程度併用することもできる。本発明で用いられる1,3−ブタジエン以外の共役ジエンとしては、4−アルキル置換−1,3−ブタジエン、2−アルキル置換−1,3−ブタジエンなどが挙げられる。このうち、4−アルキル置換−1,3−ブタジエンとしては、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−ヘプタジエン、1,3−オクタジエン、1,3−ノナジエン、1,3−デカジエンなどが挙げられる。また、2−アルキル置換−1,3−ブタジエンの代表的なものは、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−プロピル−1,3−ブタジエン、2−イソプロピル−1,3−ブタジエン、2−ブチル−1,3−ブタジエン、2−イソブチル−1,3−ブタジエン、2−アミル−1,3−ブタジエン、2−イソアミル−1,3−ブタジエン、2−ヘキシル−1,3−ブタジエン、2−シクロヘキシル−1,3−ブタジエン、2−イソヘキシル−1,3−ブタジエン、2−ヘプチル−1,3−ブタジエン、2−イソヘプチル−1,3−ブタジエン、2−オクチル−1,3−ブタジエン、2−イソオクチル−1,3−ブタジエンなどが挙げられる。これらの共役ジエンのなかで、1,3−ブタジエンと混合して用いられる好ましい共役ジエンとしては、イソプレン、1,3−ペンタジエンが挙げられる。
【0022】
重合溶媒として用いられる炭化水素溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、ブタン、ブテン、ペンタン、ペンテン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼンなどの塩素化炭化水素、および、これらの混合物が挙げられる。好ましくは、シクロヘキサン、ヘプタン、トルエン、塩化メチレンなどが挙げられる。さらに好ましくは、非ハロゲン系という点から、シクロヘキサン、ヘプタン、トルエンなどの非ハロゲン系炭化水素溶媒である。
【0023】
重合温度は、通常、−20℃〜80℃であり、好ましくは、10℃〜60℃である。重合反応は、回分式でも、連続式でもよい。なお、溶媒中の単量体濃度は、通常、5〜80重量%、好ましくは、8〜25重量%である。
また、重合体を製造するためには、本発明の触媒および重合体を失活させないために、重合系内に酸素、水、あるいは炭酸ガスなどの失活作用のある化合物の混入を極力なくすよう配慮が必要である。
重合反応が所望の段階まで進行したら、反応混合物をアルコールなどの重合停止剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを添加し、次いで、通常の方法に従って生成した重合体を分離、洗浄、乾燥して目的の1,2−ポリブタジエンを得ることができる。
【0024】
本発明の製造方法によって得られる1,2−ポリブタジエンは、ビニル結合含量が85%以上、好ましくは90%以上である。
また、本発明で得られる1,2−ポリブタジエンの結晶化度は、好ましくは30%以上、さらに好ましくは34%〜40%で示される。30%未満では、耐摩耗性が低下する。なお、40%を超えると、成形時のゲル生成量が増加する。結晶化度は、重合温度などにより調整することができる。
さらに、本発明で得られる1,2−ポリブタジエンの分子量は、ポリスチレン換算の重量平均分子量で、通常、10万〜60万である。10万 未満では、強度的性質に劣り、一方、60万を超えると加工性が劣るようになる。分子量は、アルミニウム原子/コバルト原子の比率により調整することができる。
【0025】
このようにして得られる本発明の1,2−ポリブタジエン中のハロゲン原子含有量は、環境問題の点から、低ハロゲンであることが好ましく、200ppm以下、さらに好ましくは100ppm以下、特に好ましくは50ppm以下である。200ppmを超えると、焼却時における環境ホルモン該当物質の発生量が増加することがある。
ここで、得られる重合体のハロゲン原子含有量は、用いられる触媒系、特に(B)成分において非ハロゲン系のコバルト塩を用いるとともに、触媒調製用溶媒や重合溶媒として上記非ハロゲン系の炭化水素溶媒を用いることにより、容易に200ppm以下とすることができる。
【0026】
本発明により得られる結晶性1,2−ポリブタジエンは、単独で、または、他の合成樹脂、合成ゴム、もしくは、天然ゴムとブレンドし原料樹脂、もしくは、原料ゴムとして配合して、さらに必要ならば、プロセス油で油展し、次いでカーボンブラックなどの充填剤、加硫剤、および、加硫促進剤などの通常の加硫ゴム配合剤を加えてゴム組成物として加硫することにより、機械的特性および耐摩耗性が要求される用途、例えば、タイヤ、ホース、ベルト、スポンジ、履物素材、シート、フィルム、チューブ、包装材、樹脂改質剤、感光性材料、その他の各種工業用品に用いることができる。
【0027】
【実施例】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に何ら制約されるものではない。
なお、実施例中、部、および、%は特に断らない限り、重量基準である。
また、実施例中の各種の測定は、下記の方法によった。
【0028】
1,2−ポリブタジエンのビニル結合含量(1,2−結合含量)は、赤外吸収スペクトル法(モレロ法)によって求めた。
1,2−ポリブタジエンの結晶化度は、結晶化度0%の1,2−ポリブタジエンの密度を0.889g/cm3、結晶化度100%の1,2−ポリブタジエンの密度を0.963g/cm3として、水中置換法により測定した密度から換算した。
重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、40℃、テトラヒドロフランを溶媒として測定した。
ハロゲン原子の含有量は、蛍光X線測定(FP法)により求めた。
【0029】
実施例1
コバルトビス(ジフェニルシクロヘキシルホスフィン)ジクロライド溶液の調製:
乾燥窒素雰囲気中で、300ml耐圧ビンに、無水塩化コバルト2.2g、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン8.0g、塩化メチレン125gを加え、35℃の恒温水槽中で4時間攪拌した後、沈殿を分離し、コバルトビス(ジフェニルシクロヘキシルホスフィン)ジクロライドの8%塩化メチレン溶液を得た。この溶液を、塩化メチレンで希釈し、0.4%溶液として使用した。
【0030】
1,3−ブタジエンの重合:
乾燥窒素雰囲気中で、300ml耐圧ビンに、1,3−ブタジエン(BD)25g、シクロヘキサン125gを入れ、得られたコバルトビス(ジフェニルシクロヘキシルホスフィン)ジクロライド0.4%溶液、メチルアルミノキサン1%(Al原子として)トルエン溶液を、それぞれ、BD/Co(モル比)=30,000、Al/Co(原子比)=20になるように加え、50℃の恒温水槽中で120分間重合した。
反応停止は、停止剤として少量のエタノールを加えることによって行った。
次いで、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールを重合体100部に対して0.3部加え、ホットプレート上で加熱し、溶媒を除去することで、重合体を得、収量から重合転化率を求めた。また、重合体中のハロゲン含有量を測定した。結果を表1に示す。
【0031】
実施例2〜7
実施例1と同様の手法を用いて、表1に示すコバルト塩およびホスフィン化合物によりコバルト塩のホスフィン錯体溶液を調製し、BD/Co比およびAl/Co比を、表1に示す条件として1,3−ブタジエンの重合を行った。結果を表1に示す。
【0032】
比較例1〜4
実施例1と同様の手法を用いて、表1に示すコバルト塩およびホスフィン化合物によりコバルト塩のホスフィン錯体溶液を調製し、BD/Co比およびAl/Co比を、表1に示す条件として1,3−ブタジエンの重合を行った。結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
表1から明らかなように、実施例1〜7では、50℃の重合温度において、高い結晶化度の重合体を得ることができるが、比較例1および比較例3では、高い結晶化度の重合体が得られないことが分かる。また、比較例2および比較例4においては、実施例1〜7と同等の結晶化度を得るためには、重合温度を30℃まで低下させなければならないことが分かる。このため、実施例1〜7では重合時間が短くてすむが、比較例2,4では、重合時間が長く、実用上、問題がある。
【0035】
実施例8
ホスフィン錯体溶液の調製:
実施例1と同様の手法を用いて、表2に示すコバルト塩およびホスフィン化合物によりコバルト塩のホスフィン錯体溶液を調製した。
1,3−ブタジエンの重合:
乾燥窒素雰囲気中で、300ml耐圧ビンに、1,3−ブタジエン(BD)25g、塩化メチレン250gを入れ、系中の水分が、水/Al(モル比)=0.7となるように調整し、10℃に冷却した状態で、トリイソブチルアルミニウム8%塩化メチレン溶液を、BD/Co(モル比)=20,000、Al/Co(原子比)=20となるように加え、よく攪拌し、次いで、得られたコバルト塩のホスフィン錯体溶液を、BD/Co(モル比)=20,000となるように加えた後、すみやかに20℃の恒温水槽に入れ、60分間重合した。
反応停止は、停止剤として少量のエタノールを加えることによって行った。次いで、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールを重合体100部に対して0.3部加え、ホットプレート上で加熱し、溶媒を除去することで、重合体を得、収量から重合転化率を求めた。結果を表2に示す。
【0036】
比較例5〜7
実施例8と同様の手法を用いて、表2に示すコバルト塩およびホスフィン化合物によりコバルト塩のホスフィン錯体溶液を調製し、BD/Co比およびAl/Co比を、表2に示す条件として1,3−ブタジエンの重合を行った。結果を表2に示す。
【0037】
【表2】
【0038】
表2から明らかなように、実施例8において20℃の重合温度で高い結晶化度の重合体が得られているが、比較例5,7では、20℃の重合温度では、低い結晶化度の重合体となることが分かる。一方、比較例6においては、同等の結晶化度を得るためには、重合温度を−5℃まで低下させなければならないことが分かる。このため、実施例8では重合時間が短くてすむが、比較例6では、重合時間が長く実用上、問題が残る。
【0039】
以上のように、特公昭44−32425公報、特開平1−249788公報、および特開平8−59733公報の記載より類推できる方法、すなわち、ホスフィン化合物として芳香族基を3つ有するホスフィン化合物を使用した場合には、同等の重合条件下では、より低い結晶化度となり、同程度の結晶化度の重合体を得ようとすれば、重合温度を低いものとしなければならず、析出を防止するための溶媒使用量の増大、および発熱反応である1,2−ポリブタジエンの製造には、重合反応器に、より高い冷却能力が必要とされるなど、エネルギーの損失が大きくなるため、工業的に不利益であることは明白である。
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば、触媒系として、(A)コバルト塩、(B)炭素数3以上の分岐を有する脂肪族基または炭素数5以上の脂環族基を1つおよび芳香族基を2つ有するホスフィン化合物、ならびに(C)有機アルミニウム化合物を使用することにより、高い結晶化度を有する1,2−ポリブタジエンを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の結晶性1,2−ポリブタジエンを得るための好ましい製造方法を示すフローチャートである。
Claims (10)
- (A)コバルト塩、(B)炭素数3以上の分岐を有する脂肪族基または炭素数5以上の脂環族基を1つと芳香族基を2つ有するホスフィン化合物、および(C)有機アルミニウム化合物、を含有する触媒系を使用して、1,3−ブタジエンを炭化水素溶媒中で重合することを特徴とする結晶性1,2−ポリブタジエンの製造方法。
- 触媒系が、(A)成分と(B)成分を混合して得られるコバルト塩のホスフィン錯体、および(C)成分、を含有する請求項1記載の結晶性1,2−ポリブタジエンの製造方法。
- (A)成分が塩化コバルト、臭化コバルト、オクチル酸コバルト、バーサチック酸コバルトおよびナフテン酸コバルトの群から選ばれた少なくとも1種である請求項1または2記載の結晶性1,2−ポリブタジエンの製造方法。
- (B)成分がジフェニルシクロヘキシルホスフィンである請求項1または2記載の結晶性1,2−ポリブタジエンの製造方法。
- (A)成分1モルに対する(B)成分の使用割合が1〜5モルである請求項1〜4いずれかに記載の結晶性1,2−ポリブタジエンの製造方法。
- (C)成分の使用量が、1,3−ブタジエンと(C)成分中のアルミニウム原子のモル比(1,3−ブタジエン/Al)で500〜4,000の範囲である請求項1〜5いずれかに記載の結晶性1,2−ポリブタジエンの製造方法。
- 炭化水素溶媒がシクロヘキサンおよび/または塩化メチレンである請求項1〜6いずれかに記載の結晶性1,2−ポリブタジエンの製造方法。
- 重合温度が−20℃〜+80℃である請求項1〜7いずれかに記載の結晶性1,2−ポリブタジエンの製造方法。
- 得られる1,2−ポリブタジエンの結晶化度が30%以上である請求項1〜8いずれかに記載の結晶性1,2−ポリブタジエンの製造方法。
- 得られる1,2−ポリブタジエン中のハロゲン原子の含有量が100ppm以下である請求項1〜9いずれかに記載の結晶性1,2−ポリブタジエンの製造方法。
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