JP3800124B2 - ガルバノスキャナ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、レーザ光等の光ビームを反射させるガルバノミラーの回動角度を測定しながらガルバノミラーを任意角度に回動させるガルバノスキャナに関するものである。特に、この発明のガルバノスキャナは、レーザ加工機用等のガルバノスキャナとして使用されるものである。
【0002】
【従来の技術】
レーザ光等の光ビームを反射させるとともに任意の角度に偏向させるガルバノミラーは、ガルバノスキャナによって必要な角度に回動される。このガルバノスキャナは、ガルバノミラーを必要な角度に回動させるために、ガルバノミラーの角度を測定する角度センサを備えている。かかる角度センサとしては、従来、静電容量式の位置センサが用いられていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、静電容量式の位置センサは、湿度変化に伴うドリフトがあるために、気温の変化やガルバノミラーが受ける光ビームの熱による温度上昇に伴って測定誤差が生じ、特に、ガルバノミラーの高速動作に時においては測定精度の点で問題があった。
そこで、この発明においては、湿度変化等の影響を受けることなくガルバノミラーの高速動作時においても高精度の角度測定を可能とするガルバノスキャナを提供することを課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
この発明の構成によるガルバノスキャナは、光ビームを反射させると共に任意の角度に偏向させるガルバノミラーと、このガルバノミラーが固定されるシャフトと、このシャフトを回動させる回動手段と、所定間隔で放射状に設けられた複数の第1放射状パターンを有すると共に上記シャフトに固定される回動板と、所定間隔で放射状に設けられた複数の第2放射状パターンを有する固定板と、第1放射状パターンに光を照射する発光部と、第1及び第2放射状パターンを透過した光または、第1放射状パターンから反射すると共に第2放射状パターンを透過した光を受光する受光部とを備え、前記回動板は、マウントに固定されるとともに、面倒れ周波数がガルバノスキャナの位置決め周波数の1.05〜1.6倍である。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下。図面に基づいて、この発明の実施の形態について説明する。なお、図中の同一または相当する部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。
実施の形態1.
この発明の実施の形態1について、図1〜図3を参照して説明する。
図1は、この発明の実施の形態1によるガルバノスキャナの内部構成を示す斜視図である。
図1に示されるように、このガルバノスキャナ1においては、光ビームLを反射して偏向させるガルバノミラー2を、ミラーマウント3を介してシャフト4に固定している。このシャフト4は、2つの軸受け5によって図示しないガルバノスキャナ1の筐体に回動自在に支持されており、これら2つの軸受け5の間において可動コイル6がシャフト4に固定されている。さらに可動コイル6を挟んで、極性の異なる1対の永久磁石7が配置されている。即ち、可動コイル6は永久磁石7の磁界中に設置されており、可動コイル6と永久磁石7とによりシャフト4の回動手段が構成されている。可動コイル6はシャフト4をまたぐように矩形状に巻回され構成されているがコイルは省略している。
【0006】
そして、ミラーマウント3と片方の軸受け5との間において、所定間隔で放射状に設けられた多数の第1放射状パターンを有する回動板10がマウント10Mによりシャフト4に固定されている。この回動板10を正面からみた構成を図2に示す。回動板10はマウント10Mによりシヤフト4に固定されている。回動板10をガルバノミラー2の近傍に配置すると、回動板10をシャフト4の反対側端部近傍に固定した場合に比べて、シャフト4のねじれによる測定誤差が生ずる恐れがないという利点がある。したがって、シャフト4に固定されている回動板10は、ガルバノミラー2の近傍に配置するのが望ましい。実施の形態1においては、ミラーマウント3とシャフト4の片方の軸受け5までを略20mm以下とすると、シャフト4のねじれによる測定誤差が生ずる恐れが少ないという実験結果を得た。
【0007】
この回動板10は、質量が小さく、小形の工業用プラスチックからなり、板面上には第1放射状パターンとして、円弧に沿って多数のスリット12が放射状に設けられたもので、図2に示すようにスリット12は光を透過する細隙で構成されている。シャフト4と一体に、即ち、ガルバノミラー2と一体に回動する。このとき、重心位置はシャフト4の軸心にある。回動板10の手前側には、多数のスリット12に対向する位置にLED(発光ダイオード)13が固定されて発光部を構成しており、LED13には電力を供給してLED13を発光させるLEDドライバ14が接続されている。このLED13から発せられた光の一部は、回動板10のスリット12を通過して、背面側に設けられた固定板15に入射し、この固定板15のスリットをも通過した光がPD(フォトダイオード)16によって受光される。固定板15は回動板の第1放射状パターンと対向する位置に固定配置されており、第1放射状パターンと同一の第2放射状パターン17が形成されている。PD16によって受光された光は電流に変換されてアンプ18で増幅され、カウンタ19によってカウントされて角度の値に変換される。
【0008】
一方、角度指令発生手段20から出力された角度指令のデータはサーボアンプ21に入力され、カウンタ19から入力されたガルバノミラー2の角度のデータと比較されて、目的の角度にガルバノミラー2を回動させるように制御される。即ち、目的の角度にガルバノミラー2を回動させるのに必要な電力がサーボアンプ21からリード線22を介して可動コイル6に入力される。この電力によって、可動コイル6から磁力が発生し、この磁力によって1対の永久磁石7との間で反発力または吸引力が生じ、可動コイル6と一体にシャフト4が回動してガルバノミラー2を目的の角度に回動させる。このようにして、ガルバノスキャナ1によってガルバノミラー2が目的の角度に制御される。
ここで、回動板10、LED13、LEDドライバ14、固定板15、PD16によって光学式ロータリエンコーダ23が構成されている。光学式ロータリエンコーダによる角度測定の原理は、回動板10が回動すると固定スリット板14を通過してPD16に達する光量は周期的に変化するので、この光量の周期的変化がアンプ18で増幅されて、カウンタ19で回動角度としてカウントされるものである。
なお、回動板10は、図3に示すストッパの作用により所定角度だけ回動するように構成されている。図3において、24はシャフトの端部に設置された一対のピンである。25はピン24が当接して回動板10の回動を所定角度で止める一対の突起であり、ピン24の軸方向に対して左右対称に、駆動コイル6、永久磁石7等のカバー(図示せず)の壁面26に設けられている。ピン25が回動板10とともにピン25に当接するまで回動すると回動板10の放射状パターン12の端部付近にLED13が対向するように、ピン25に対し突起24が配置されている。
【0009】
光学式ロータリエンコーダ23は、ガルバノミラー2と一体に回動板10が回動すると、固定板15を通過してPDに到達する光量が周期的に変化するのでこの光量の周期的変化をアンプ18で増幅して、カウンタ19により回動角度としてカウントしており、回動板10と固定板15のスリットのピッチを同じとして細かくすると非常に高精度の角度測定が可能となる。また、湿度変化等によるドリフト現象等もなく、高速動作時においても安定して角度測定を行うことができる。このようにして、湿度変化等の影響を受けることなくガルバノミラー2の高速動作時においても高精度の角度測定を可能とするガルバノスキャナ1となる。
いわゆる回転円板スリットを備えた通常の光学式ロータリエンコーダを用いると、ガルバノスキャナは、回動部分のイナーシャ(慣性モーメント)が大きくなる。具体的な数値例を挙げれば、シャフト4と可動コイル6のロータ部分が8g・cm2、ガルバノミラー2が小型のもので3g・cm2、大型のもので12g・cm2、ミラーマウント3が1〜1.5g・cm2、そして、回転円板スリットが6g・cm2であり、合計で18〜27.5g・cm2に達する。このように回動部分のイナーシャが大きくなるため、高速動作には向かないものとなり、例えばレーザ加工機において1000回/秒というようなガルバノミラー2の高速位置決めができないという問題点があった。そこで、実施の形態1では回動板10も軽量なエンジニアリングプラスチックからなり、第1放射状パターンは図2に示すように約45度の回動角度範囲を有している。
【0010】
実施の形態1にかかるガルバノスキャナ1は、レーザ加工機等に用いられるものであって、ガルバノミラー2の回動角度範囲は±8度即ち16度であるが、図2に示すような約45度の角度範囲を有する回転板10用いたこと、すなわち、、実施の形態1では、ガルバノミラー面の法線方向を0度とした場合、スリットの長手方向が±45度以内になるように、シャフトに取り付けているのは、以下のような理由からである。
即ち、第1に機械的強度を確保するため、第2にガルバノスキャナ1のトルクが最大となる駆動系の中心と回動板10のストローク中心を一致させるのが困難なので取り付け誤差を吸収するため、第3に回動板10は従来の回転円板スリットを切断して作成していることから両端は機械的歪があるので使用しないように余裕をとっているため、第4に将来的にガルバノミラー2の回動角度範囲を広げる可能性があるためである。
それでも、回動板10の回動する角度範囲は、回動板10の約8分の1になっている。これによって、回動部分のイナーシャは、回転円板スリットが6g・cm2であったのに比べて1g・cm2となり、小型のガルバノミラー2(イナーシャ3g・cm2)を用いた場合、シャフト4と可動コイル6のロータ部分の8g・cm2、ミラーマウント3の1g・cm2を加えて、回動部分のイナーシャは13g・cm2まで減少する。
その結果、従来の回転円板スリットに大型ガルバノミラー2を用いた場合(回動部部のイナーシャ27.5g・cm2)の最大位置決め速度が約400回/秒であったのが、実施の形態1のガルバノスキャナ31においては、約1000回/秒の最大位置決め速度が達成された。また、ガルバノミラー2として大型ガルバノミラー2を用いた場合(回動部分のイナーシャ22.5g・cm2)においても、最大位置決め速度として約700回/秒の値が得られており、回動板10を用いた効果が顕著に表れている。
このように、回動部分を軽量としイナーシャを小さくすると、ガルバノスキャナ1の高速動作が可能になるのは、回動部分の固有振動数が高くなるため、サーボアンプ21によるサーボ制御のゲインを上げることができるようになるためである。
【0011】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2について、図4を参照して説明する。
図4は、この発明の実施の形態2にかかるガルバノスキャナの内部構成を示す斜視図である。なお、図1と同一の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
実施の形態2にかかるガルバノスキャナ1が実施の形態1のガルバノスキャナ1と異なるのは、回動板10がガルバノミラー2と反対側に配置されていることであり、図4に示すように上記反対側においてシャフト4の端部近傍にマウント10Mにより固定されている点が相違する。光学式ロータリエンコーダ23はガルバノミラー2と反対側のシャフト4の端部近傍に設けられる。
実施の形態1のように回動板10をガルバノミラー2の近傍においてシャフト4に固定すると、図1に示されるようにガルバノミラー2の近傍に光学式ロータリエンコーダ23の構成部品が集まって、ガルバノスキャナ1のこの部分が嵩高くなる。このとき、レーザ加工機のように2つのガルバノミラーを近接させて用いる場合には、一方のガルバノミラーと他方のガルバノスキャナが干渉してしまう事態も生じ得る。また、ガルバノミラー2の近傍に光学式ロータリエンコーダ23を構成すると、ガルバノミラーの2の受ける光ビームLの熱の影響を受け易くなる。
【0012】
そこで、実施の形態2に示されるように、回動板10をガルバノミラー2と反対側のシャフト4の端部近傍に固定することによって、光学式ロータリエンコーダ23をガルバノミラー2から離して構成することができ、他のガルバノミラーが干渉したり、光ビームLの熱の影響を受けたりすることなく、より安定して高精度に角度測定を行うことができる。
実施の形態2においては、シャフト4の片方の軸受け5とシャフト4の端部までを略10mm以下とすると、シャフト4のねじれによる測定誤差が生ずる恐れが少ないという実験結果を得た。また、シャフト4の両端の荷重により、シャフト4の長さ方向の重心位置が可動コイル6の中心付近にあり、変化しにくいという効果が得られる。
【0013】
ガルバノスキャナは、回動板の第1放射状パターン12の回動する角度範囲を上記軽量な回動板の機械的強度が保てる範囲内でできるだけ上記ガルバノミラーの回動角度範囲に近づけるように小さくしいる。
回動板10の第1放射状パターンの回動する角度範囲をガルバノミラーの回動角度範囲ぎりぎりの角度範囲とすると、シャフトへの取り付け時の誤差等によって、第1放射状パターンがガルバノミラーの回動角度範囲からずれてしまう恐れがある。こうなると発光ダイオードの光が回動板に当たらない範囲が生じ、その範囲では角度測定ができなくなってしまう。そこで、回動板の取り付け誤差を考慮しても、回動板をガルバノミラーの回動角度範囲に加えて左右5度程度ずつの余裕を持たせた角度範囲のものとすれば、角度測定ができなくなるという不具合は防止できる。しかし、上述したレーザ加工機におけるガルバノミラーのように、回動角度範囲が約16度のものでは左右に5度程度ずつの余裕を持たせても僅か約26度となり、高速回動時の機械的強度に不安が残る。
そこで、回動板の角度範囲を機械的強度が保てる範囲内でできるだけガルバノミラーの回動角度範囲に近づけることとすれば、機械的強度についても心配がなくしかも必要最小限の大きさとすることができる。このようにして、湿度変化等の影響を受けることなく高精度の角度測定を可能とするととともに、高速回動時の角度測定が確実にできる範囲で回動部分のイナーシャを低減することによってガルバノミラーの高速動作を可能とするガルバノスキャナとなる。
【0014】
実施の形態3.
実施の形態3のガルバノスキャナ1に用いられる軽量な回動板10の形状の変形例について、図5参照して説明する。
図5の(a)に示される回動板10は、図1、図2に示された実施の形態1、2のガルバノスキャナ23に用いられる回動板10と同一形状のものである。
この回動板10には、扇形の円弧に沿って多数のスリット12が設けられており、第1放射パターンが形成されている。30は、シャフトへ取り付けるためのシャフト孔である。
これらのスリット12が設けられている角度範囲は僅か約45度であり、従来のいわゆる回転円板スリットの約8分の1である。したがって、シャフト4が貫通するシャフト孔30の周辺部分の重量を加えても、上述したように回動板の6g・cm2に対して1g・cm2という6分の1のイナーシャ低減を実現している。
回動板をガルバノミラーの回動角度範囲に加えて左右に余裕を持たせた角度範囲のものとするとともに、その形状をシャフトへの取り付け部分を含めて略扇形とすることによって、必要最小限の大きさにすることができ、回動板のイナーシャを最小とすることができる。このようにして、湿度変化等の影響を受けることなく高精度の角度測定を可能とするとともに、回動部分のイナーシャを最小とすることによってガルバノミラーの高速動作を可能とするガルバノスキャナとなる。
【0015】
図5の(b)に示す回動板31は、(a)の変形例である。この変形例においても、多数のスリット12が設けられている角度範囲は約45度であり、回動板9の形状は略扇形であるが、シャフト4が貫通するシャフト孔30の周辺部分の形状が直線状であり、(a)のような切り欠き状になっていないので、強度的により優れている。ただし、それとは裏腹に重量は少々重くなっている。
【0016】
図5の(c)の回動板32は、シャフト4が貫通するシャフト孔30の周辺部分の形状が長円形状であって、機械的強度がより大きくなっているので、多数のスリット12が設けられている角度範囲は約35度と小さくなっている。このように、回動板の他の変形例においては、その角度範囲を回動板の機械的強度が保てる範囲内で、できるだけガルバノミラー2の回動角度範囲(16度)に近づけるように小さくしている。
【0017】
図5の(d)の回動板33はシャフト4が貫通するシャフト孔30の周辺部分の形状がより大きくなるように膨らんだ円形状であって、機械的な強度を向上させている。
【0018】
実施の形態4.
次に、この発明の実施の形態4について、図6を参照して説明する。
図6は、この発明の実施の形態4にかかるガルバノスキャナに用いられる回動板34の構成を示す正面図である。
実施の形態4の回動板34も軽量なエンジニアリングプラスチックからなり、回動板34を平行な2本の直線で切断した形状をしており、シャフト4が貫通するシャフト孔30を中心として軸対称の形状となっている。向かい合った2つの円弧に沿ってそれぞれ多数のスリット12が設けられて第1放射状パターンを形成している。これらのスリット12が設けられている角度範囲はそれぞれ約45度である。なお、光学式エンコーダとしては図示上方のスリット12のみが使用され、図示下方のスリット12は実際には角度測定には関与しない。
【0019】
図5に示される実施の形態4にかかる回動板のように、LED8の光の当たる側のみを残した回動板では、シャフト4に固定したときに回動部分の重量のバランスがくずれることとなる。このような片側のみの回動板がシャフト4に取り付けられていると、バランスのくずれからガルバノミラー2の回動時に面倒れ共振現象を起こす恐れがある。
面倒れ共振現象とは、ガルバノミラーが高速で回動を繰り返す際に共振周波数に近づいたときに、共振を起こしてガルバノミラーの反射面が前後に反るように振動する現象をいう。この面倒れ共振現象が起こると、光ビームがガルバノミラーの偏向方向とは垂直な方向にぶれることになり、偏向ずれが生ずる。
そこで、実施の形態4における回動板34のように、LED8の光の当たる側と軸対称になるように反対側にも回転部分スリットを残すことによって、バランスを保つことができ、ガルバノミラー2の回動時に面倒れ共振現象を起こす恐れがなくなる。このようにして、実施の形態4の回動板34を用いることによって、シャフト4回りの重量バランスを保って面倒れ共振現象を確実に防止しつつ、回動部分のイナーシャを低減することによってガルバノミラー2の高速動作を可能とするガルバノスキャナとなる。
【0020】
実施の形態5.
図7の(a)は実施の形態5を説明するため、図3のガルバノミラー、シャフト、回動板の構成部分を示す斜視図である。Pはミラーの法線を示す。Qは図7の(a)のように回動板10の長径方向の中心線を示す。MはPと平行な方向、RはMおよびシャフト4の軸方向と90度の角度をなす方向を示す。Aはミラー2の面倒れ振動共振現象の振動(以下、面倒れ振動と略す)の方向示す。Bは回動板10の面倒れ振動の方向を示す。
【0021】
図7の(b)は(a)の側面図である。図7の(a)(b)では回動板10のシャフト4への取り付け角がPとQがほぼ平行になるように取り付けられている場合を示している。
【0022】
図8の(a)は回動板10の取り付け角度がQとRとが平行になるように取り付けられた以外は、図7(a)と同じである。図8の(b)は図8の(a)の側面図である。なお、図7、図8で記載されている回動板10は、図5の(c)の形状と同一のものを一部変形して構成している。
【0023】
図7の(a)においては、ミラー2が回転すると、ミラーの取り付け誤差等により芯ずれが起こり、ミラー2は軸受け5を起点にミラー面の法線P方向に振動する面倒れ振動を発生する。面倒れ現象が発生するとミラーの先端部はA方向に振動する。図7の(b)では、ミラーはA方向に上下に振動していることを示す。図7(b)において、ミラー2がAの方向に振動すると、シャフト4が両端のベアリング5を基点に上下にたわみ、その影響が回動板10に伝わり、回動板10はB方向に面倒れ振動を起こす。このような角度で回動板10を取り付けると、回動板10のイナーシャがミラーの面倒れ振動を抑えるように有効に働くので、ミラー2の面倒れ振動は小さいものとなる。
【0024】
一方、図8の(a)のように回動板10をQとRとが垂直になるようにシャフト4に取り付けられた場合、図7と同様、ミラー2が回動すると、ミラー2は面倒れ現象を発生し、同様に回動板10はB方向に面倒れ振動を起こすが、この場合、回動板10の長径方向の中心線Qは、ほとんど振動しないので、回動板10のイナーシャはミラーの面倒れ振動を抑えるように働かず、ミラー2の面倒れ振動の振幅は大きいものとなる。従って、回動板10の取り付け角度は、図7のように、ミラー面の法線Pと回動板10の長径方向の中心線Qが平行となるようにシャフト4に固定すれば、ミラー面倒れが少なくなるので、良好な高精度な光ビーム位置制御が可能となる。
ミラーの面倒れ抑制に効果がある面倒れ振動抑制有効角度は、法線Pと中心線Qが平行となる回動板10の取り付け角を0度とした場合、取り付け角が±45度以内であれば、ミラー2の面倒れ振動を抑える効果がある実験結果を得た。
【0025】
実施の形態6.
図9から図12は実施の形態6を説明するための構成図である。図9から図12は、図3における回動板10の取り付け部分の拡大図である。図9の(a)、図10の(a)、図11の(a)、図12の(a)は取り付け部分を横方向からみた図、図9の(b)、図10の(b)、図11の(b)、図12の(b)は図9の(a)の右側面図である。図10、図11、図12は、図9の回動板の取り付け剛性を高くするように改善した構造を説明する図である。
なお、図9の回動板10は、図5における(c)の形状のものを一部変形した構成のもので説明している。外形が3つの直線部分からなっており、図5の(c)の構造よりも製造しやすいというメリットがある。
【0026】
図9の(a)のd1は回動板10の厚み、l1はマウント10Mの長さを示す。図9でシャフト4がある周波数で回動運動を行った場合、回動板10はB方向に面倒れ振動を発生することがある。この面倒れ振動の周波数を面倒れ周波数と呼ぶが、回動板10の厚みd1が小さいあるいはマウント10Mから先端部分までの距離が長い場合、面倒れ周波数は低くなり、ガルバノスキャナが高速に駆動できなくなる。
今、ガルバノスキャナを1秒間に1000点の位置決めを行わせる場合、1秒間に1000回、回動、停止の動作の繰り返しが行われる。この制御は、いわゆるpoint to point制御(PTP制御)と呼ばれるものである。この場合、ガルバノスキャナの位置決め周波数は1000Hzといい、シャフト4も1000Hzで力が伝えられ、回動板10にも1000Hzで回動力が加わる。もし、回動板10の面倒れ周波数が1000Hzの場合、面倒れ振動の振幅が増大し、図示しないLED13からの光が第1放射パターン12を正常に通過するとこができず、結果的に図示しない光学式ロータリエンコーダ23はシャフトの回転角を計測できなくなるという問題が生じる。そこで、面倒れ周波数をガルバノミラーの回動周波数より高くするための改善方法を以下に説明する。
【0027】
図10は図9のマウント10Mの大きさを変えて、マウント10Mの長さをl1からl2のように長くして回動板10の面倒れ周波数を高く改善した例である。マウント10Mの長さにほぼ反比例の関係で回動板の面倒れ周波数をガルバノミラーの回動周波数より高くすることができる。
【0028】
図11は図9の回動板10の厚さd1を大きくし、回動板10の面倒れ周波数を高く改善した例である。回動板の厚さd1をd2と厚くすることで、回動板10の面倒れ周波数をガルバノミラーの回動周波数より高くすることができる。回動板10の面倒れ周波数は厚みにほぼ比例して高くすることができる。
【0029】
図12は図9の回動板10の形状を幅広くすることで、回動板10の面倒れ周波数を高く改善した例である。図12の(b)のように回動板10の形状を幅広くすることで、回動板10の面倒れ周波数は高くすることができる。
上記改善を行えば回動板10の面倒れ周波数をガルバノミラーの回動周波数よりも高くすることができ、ガルバノスキャナの位置決めを高速に行うことができる。なお、回動板10の面倒れ周波数を高くすればするほど、回動方向のイナーシャが増加する。従って、回動板10の面倒れ周波数はガルバノスキャナの位置決め周波数の1.05倍〜1.6倍程度にすることが望ましい。ガルバノスキャナはもっとも大きなミラーを用いる場合、位置決め周波数が400Hzとなる可能性がある。この場合、回動板10の面倒れ周波数は少なくとも、420Hz以上となるように、回動板10の厚み、形状およびマウント10Mの形状を調整する。
【0030】
上記の各実施の形態においては、第1放射状パターン12、第2放射状パターン17はスリットで構成された場合を説明したが、光を透過する回動板10に印刷されたパターンあるいは溝であっても構わない。
また、第1放射状パターン12、第2放射状パターン17は、光を透過する透過型光ロータリエンコーダの場合を説明したが、光を反射する回動板10を用いた場合は、第1の放射状パターンは回動板10に印刷されたパターンあるいは溝を用い、LED13から発せられた光の一部が、回動板10の第1放射状パターン12で反射し、固定板15に入射するように構成される反射型光ロータリエンコーダであっても同様な効果があり、本発明の範囲に含まれる。
また、ロータリエンコーダはインクリメンタル型であっても絶対値型であつても同様な効果があり、本発明の範囲に含まれる。
また、シャフト4は可動コイルを用いた可動コイル型ガルバノスキャナの場合を説明したが、シャフト4に永久磁石を固定し、この永久磁石の磁力と吸引あるいは反発力が発生するように、前記永久磁石の周りに矩形状に巻回された固定コイルをもち、固定コイルに電流を流すことでシャフト4を回転させる可動マグネット型ガルバノスキャナであっても構わない。
また、シャフト4に鉄心を固定し、この鉄心を駆動するように配置された固定電磁石をもった可動鉄心型ガルバノスキャナもあつても同様な効果があり、本発明の範囲に含まれる。
また、上記の各実施の形態においては、ガルバノスキャナをレーザ加工機に用いる場合について説明したが、本発明のガルバノスキャナはその他にもレーザ光またはレーザ光以外の光ビームを偏向するあらゆる装置用いることができる。
また、上記各実施の形態においては、軽量な回動板の素材をエンジニアリングプラスチックとした例について説明したが、回動板の素材はその他の合成樹脂やシリコン、アルミニウム、ベリリウムを始めとする金属等、一定の機械的強度と加工性がある素材であれば、どのようなものを用いても良い。
ガルバノスキャナにおけるその他の部分の構成、形状、材料、大きさ、数量、接続関係等についても、上記各実施の形態に限定されるものではない。
【0031】
【発明の効果】
この発明の構成によれば、光ビームを反射させると共に任意の角度に偏向させるガルバノミラーと、このガルバノミラーが固定されるシャフトと、このシャフトを回動させる回動手段と、所定間隔で放射状に設けられた複数の第1放射状パターンを有すると共に上記シャフトに固定される回動板と、所定間隔で放射状に設けられた複数の第2放射状パターンを有する固定板と、第1放射状パターンに光を照射する発光部と、第1及び第2放射状パターンを透過した光または、第1放射状パターンから反射すると共に第2放射状パターンを透過した光を受光する受光部とを備え、前記回動板は、マウントに固定されるとともに、面倒れ周波数がガルバノスキャナの位置決め周波数の1.05〜1.6倍であるようにしたことにより、回動板の面倒れ周波数をガルバノミラーの回動周波数よりも高くすることができ、ガルバノスキャナの位置決めを高速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1によるガルバノスキャナの内部構成を示す斜視図である。
【図2】 この発明の実施の形態1における回動板の構造を説明する正面図である。
【図3】 この発明の実施の形態1によるストッパの構成を示す正面図である。
【図4】 この発明の実施の形態2によるガルバノスキャナの内部構成を示す斜視図である。
【図5】 この発明の実施の形態3による回動板を示す構成図である。
【図6】 この発明の実施の形態4による回動板を示す構成図である。
【図7】 この発明の実施の形態5を説明する構成図である。
【図8】 この発明の実施の形態5を説明する構成図である。
【図9】 この発明の実施の形態6による回動板及びマウントを示す構成図である。
【図10】 この発明の実施の形態6による回動板及びマウントを示す構成図である。
【図11】 この発明の実施の形態6による回動板及びマウントを示す構成図である。
【図12】 この発明の実施の形態6による回動板及びマウントを示す構成図である。
【符号の説明】
2 ガルバノミラー、 4 シャフト、 6 駆動コイル、7 永久磁石、10 回動板、12 第1放射状パターン、13 発光部、 15、固定板、
16 受光部、17 第2放射状パターン。
Claims (1)
- 光ビームを反射させると共に任意の角度に偏向させるガルバノミラーと、このガルバノミラーが固定されるシャフトと、このシャフトを回動させる回動手段と、所定間隔で放射状に設けられた複数の第1放射状パターンを有すると共に上記シャフトに固定される回動板と、所定間隔で放射状に設けられた複数の第2放射状パターンを有する固定板と、第1放射状パターンに光を照射する発光部と、第1及び第2放射状パターンを透過した光または、第1放射状パターンから反射すると共に第2放射状パターンを透過した光を受光する受光部とを備え、前記回動板は、マウントに固定されるとともに、面倒れ周波数がガルバノスキャナの位置決め周波数の1.05〜1.6倍であることを特徴とするガルバノスキャナ。
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