JP3797106B2 - モーターファン制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両のラジエーターとコンデンサーに送風してエンジン冷却水とエアコン(空調装置)冷媒を冷却するためのモーターファンの制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両前部に設置されるラジエーターとコンデンサーに送風し、エンジン冷却水とエアコン冷媒を冷却するためのモーターファンの回転を制御する装置が知られている。このモーターファン制御装置では、図3に示すように車速Vsp、コンプレッサー・クラッチの締結と解放(ON、OFF)、エアコン冷媒圧力Pdおよびエンジン冷却水温Twに基づいてモーターファンの運転と停止(ON、OFF)を制御している。
【0003】
また、車両に設置されるエアコンは、冷媒圧力異常時または回転速度異常時にコンプレッサーを保護するために、図4に示すようにエンジン回転速度Neとエアコンの冷媒圧力Pdに基づいてコンプレッサー・クラッチの締結と解放を制御している。
【0004】
図4において、エンジン回転速度Ne[rpm]が低速設定値Ne1以下または高速設定値Ne4(>Ne1)以上になると、コンプレッサー・クラッチを解放してコンプレッサーの運転を禁止し、エンジン回転速度Neが低速設定値Ne2(>Ne1)より高くなるか、または高速設定値Ne3(<Ne4)より低くなると、エンジン回転速度Neによるコンプレッサーの運転禁止を解除している。また、エアコンの高圧側冷媒圧力Pdが低圧設定値Pd1以下または高圧設定値Pd4以上になると、コンプレッサー・クラッチを解放してコンプレッサーの運転を禁止し、冷媒圧力Pdが低圧設定値Pd2(>Pd1)より高くなるかまたはPd3(<Pd4)より低くなると、冷媒圧力Pdによるコンプレッサーの運転禁止を解除している。つまり、図4の領域Bではエアコンの運転が許可され、領域A、B、C以外の領域ではエアコンの運転が禁止される。なお、領域AおよびCはヒステリシス領域である。
【0005】
ここで、エアコンのコンプレッサーはエンジンにより駆動されるから、コンプレッサーの回転速度はエンジンの回転速度Neに比例する。また、エンジンの回転速度やトルクを制御するために、エンジンには回転速度Neを検出するためのセンサーが設置される。そのため、エンジン回転速度Neに基づいてコンプレッサー・クラッチの締結と解放を制御するのが一般的であるが、コンプレッサーの回転速度を直接検出し、エンジン回転速度Neに代えてコンプレッサーの回転速度に基づいてコンプレッサー・クラッチの締結と解放を制御することもできる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来のモーターファン制御装置では、特定の条件を満たすと次のような不具合が生じる。例えば、停車中や極低車速時でエンジン冷却水温Twが低く、かつエアコンの冷媒圧力PdがPd3≦Pd<Pd4の範囲にあるときに、空ふかしなどによってエンジン回転速度NeがNe4を超えると、図4に示すようにコンプレッサー保護のためにコンプレッサー・クラッチが解放される。空ふかしが終わってエンジン回転速度NeがNe3より低くなっても、冷媒圧力PdがPd3以上であるからコンプレッサー・クラッチは直ちに締結されない。しかも、エンジン冷却水温Twが低いからモーターファンは停止されており、モーターファンによるコンデンサーの冷却は行われず、さらに、停車中や極低車速時には走行風圧によるコンデンサーの冷却も期待できないから、コンデンサーにおけるエアコン冷媒の冷却が不充分となる。したがって、冷媒圧力PdがいつまでもPd3より低くならず、図4の領域Aに長い時間留まってコンプレッサー・クラッチが解放されたままとなり、長時間にわたってエアコンが運転されないという問題が発生する。
【0007】
このような問題を解決するために、コンプレッサー・クラッチの締結と解放に連動してモーターファンの運転と停止を行う代わりに、エアコンの入/切を操作するエアコン・スイッチの状態に連動してモーターファンの運転と停止を制御することが考えられる。ところがそうすると、冷媒圧力異常によりコンプレッサー・クラッチが解放されたときに、モーターファンは運転し続けるから冷媒圧力が速やかに低下し、冷媒圧力異常によるコンプレッサーの運転禁止が解除され、クラッチが締結されてコンプレッサーの運転が再開されてしまう。これではコンプレッサーの保護機能が損なわれてしまうから、エアコン・スイッチに連動してモーターファンの運転と停止を制御するのは不適切である。
【0008】
また、エアコンの運転禁止制御を、図4に示すようなエンジン回転速度Neと冷媒圧力Pdとに応じたマップ制御とせず、エンジン回転速度Neに基づく制御ロジックと、冷媒圧力Pdに基づく制御ロジックとに分けて制御することも考えられるが、制御ロジックが複雑になって調整が煩雑になり、総合的にコストアップするという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、エアコン冷媒圧力が特定の範囲にあるときにエンジン回転速度異常によりコンプレッサーの運転が禁止されても、回転速度異常による運転禁止が解除されたら速やかにコンプレッサーの運転を再開させることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
一実施の形態のモーターファン制御マップ例を示す図3とコンプレッサー・クラッチの制御マップ例を示す図4に対応づけて本発明を説明すると、
(1) 請求項1の発明は、エンジン回転速度(Ne)が設定値x1(Ne4)以上、またはエアコン冷媒圧力(Pd)が設定値y1(Pd4)以上でコンプレッサー・クラッチを解放し、エンジン回転速度(Ne)が設定値x2(Ne3)(<x1)より低くなり、かつエアコン冷媒圧力(Pd)が設定値y2(Pd3)(<y1)より低くなったらコンプレッサー・クラッチを締結する制御装置であって、車両のラジエーターとコンデンサーに送風してエンジン冷却水とエアコン冷媒を冷却するためのモーターファンの回転を制御するモーターファン制御装置に適用され、エンジン回転速度(Ne)が設定値x1(Ne4)以上となってコンプレッサー・クラッチが解放された後に、エアコン冷媒圧力(Pd)がy2(Pd3)以上y1(Pd4)未満の範囲にあって、かつエンジン回転速度(Ne)がx2(Ne3)より低い場合はモーターファンを運転することにより、上記目的を達成する。
(2) また、請求項2にモーターファン制御装置は、車速を検出する車速検出手段を備え、車速検出値が所定値以上の場合はモーターファンを停止するようにしたものである。
【0011】
上述した課題を解決するための手段の項では、説明を分かりやすくするために一実施の形態の図を用いたが、これにより本発明が一実施の形態に限定されるものではない。
【0012】
【発明の効果】
(1) 請求項1の発明によれば、例えば、停車中や極低車速時でエンジン冷却水温が低く、かつ冷媒圧力がy2以上y1未満の範囲にあるときに、空ふかしなどによりエンジン回転速度が設定値x1以上になると、コンプレッサー保護のためにコンプレッサー・クラッチが解放されるが、空ふかしが終わった後に、冷媒圧力がy2以上y1未満の範囲にあって、かつエンジン回転速度がx2未満の場合はモーターファンを運転するようにしたので、コンデンサーにおけるエアコン冷媒の冷却が促進され、冷媒圧力が速やかに設定値y2より低くなってコンプレッサー・クラッチの締結条件を満たし、短時間でエアコン運転を再開することができる。
(2) 請求項2に発明によれば、車速検出値が所定値以上の場合はモーターファンの運転を停止する。車速検出値が所定値以上の高速走行中の場合は、走行風圧によりラジエーターとコンデンサーを通過する風量が多くなり、モーターファンを運転しなくてもエンジン冷却水とエアコン冷媒を十分に冷却できる。したがって、このような場合にモーターファンを停止することによって電力消費を節約することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は一実施の形態の構成を示す図である。エンジン・コントローラー1はマイクロコンピューター1aとメモリ1bなどの周辺部品から構成され、エンジンの吸入空気量制御、燃料噴射制御、点火制御などを行うとともに、エアコンとモーターファンの運転、停止を制御する。車速センサー2は車速Vsp[km/h]を検出し、エンジン回転センサー3はエンジンの回転速度Ne[rpm]を検出する。エアコン・コントローラー4は、車室内へ吹き出す空調風の温度、吹き出し口などを制御する。エアコン・コントローラー4にはエアコンの入/切を操作するエアコン・スイッチ5が接続されており、エアコン・スイッチ5の操作状態に応じたエアコン・スイッチ信号がエンジンコントローラー1へ送られる。
【0014】
リレー6はエアコン・コンプレッサー7のクラッチ7aの締結と解放を行うリレーであり、エンジン・コントローラー1がイグニッション電源8によりリレーコイル6aを励磁すると、イグニッション電源8からリレー接点6bを介してクラッチ7aへ通電され、クラッチ7が締結される。これにより、コンプレッサー7がエンジンにより駆動されてエアコンが運転される。以下、リレー・コイルを励磁することを「リレーをオンする」という。
【0015】
リレー9はモーターファン10の運転と停止を行うリレーであり、エンジン・コントローラー1がイグニッション電源8によりリレーコイル9aを励磁すると、イグニッション電源8からリレー接点9bを介してモーターファン10へ通電され、モーターファン10が回転する。これにより、コンデンサー11へ送風され、コンプレッサー7から吐出された高圧、高温の冷媒が冷却される。
【0016】
なお、カップリングを介してエンジンにより直接、駆動されるファンでラジエーターのエンジン冷却水とコンデンサーのエアコン冷媒を冷却する方式の車両があるが、本願発明は、モーターにより駆動されるファンでラジエーターとコンデンサーを冷却する方式の車両を適用対象とするものであり、この明細書では、モーターにより駆動されるファンという意味でモーターファンと呼び、エンジンにより駆動されるファンと区別する。
【0017】
コンプレッサー7からコンデンサー11までの高圧パイプ12には圧力センサー13が設けられており、冷媒の高圧側圧力Pdを検出する。なお、エアコンの冷凍圧縮サイクルの詳細については本願発明と直接に関係しないので説明を省略する。
【0018】
図2はモーターファン制御プログラムを示すフローチャートである。エンジン・コントローラー1のマイクロコンピューター1aは、エアコン・コントローラー4からエアコン・スイッチ5のON信号を受信するとこの制御プログラムの実行を開始する。
【0019】
ステップ1において、図4に示すように、冷媒圧力Pdが予め設定された高圧設定値Pd4(例えば2.74MPa)以上か、またはエンジン回転速度Neが予め設定された高回転速度Ne4(例えば5400rpm)以上かどうかを確認する。Pd≧Pd4の冷媒圧力異常、またはNe≧Ne4のエンジン回転速度異常のどちらも検出されなければステップ6へ進み、リレー6をオンしてコンプレッサー・クラッチ7aを締結し、コンプレッサー7を運転してエアコン運転を開始する。
【0020】
続くステップ7で、図3に示すモーターファン制御マップを参照してモーターファン10を制御する。すなわち、現在の車速Vspが予め設定した低速設定値Vsp1(例えば50km/h)未満の低速走行中のときはステップ9へ進み、リレー9をオンしてモーターファン10を運転する。また、現在の車速Vspが低速設定値Vsp1以上でかつ中速設定値Vsp2(例えば80km/h)未満の中速走行中のときはステップ8へ進み、冷媒圧力Pdが予め設定された値Pd5(例えば1.68MPa)以上かどうかを確認する。冷媒圧力Pdが設定値Pd5以上の場合はステップ9へ進み、リレー9をオンしてモーターファン10を運転し、一方、冷媒圧力Pdが設定値Pd5未満の場合はステップ10へ進み、リレー9をオフしてモーターファン10を停止する。さらに、現在の車速Vspが中速設定値Vsp2以上の高速走行中のときはステップ10へ進み、リレー9をオフしてモーターファン10を停止する。
【0021】
一方、ステップ1で冷媒圧力異常またはエンジン回転速度異常が検出された場合はステップ2へ進み、リレー6をオフしてコンプレッサー・クラッチ7aを解放し、コンプレッサー7を停止する。
【0022】
続くステップ3〜4の処理は従来のモーターファン制御にはなかった処理であり、本願発明の特徴的な処理である。ステップ3において、冷媒圧力Pdが設定値Pd3(例えば1.56MPa)以上、高圧設定値Pd4未満の範囲にあり、かつエンジン回転速度Neが設定値Ne3(例えば4900rpm)未満かどうかを確認する。Pd3≦Pd<Pd4でかつNe<Ne3の場合はステップ4へ進み、リレー9をオンしてモーターファン10を運転する。一方、ステップ3の上記条件を満たさない場合はステップ10へ進み、リレー9をオフしてモーターファン10を停止する。
【0023】
ステップ5では、冷媒圧力Pdが設定値Pd3未満で、かつエンジン回転速度Neが設定値Ne3未満かどうかを確認する。Pd<Pd3かつNe<Ne3の場合はステップ6へ進み、リレー6をオンしてコンプレッサー・クラッチ7aを締結し、コンプレッサー7を運転する。一方、Pd<Pd3かつNe<Ne3でない場合はステップ2へ戻り、上述した処理を繰り返す。
【0024】
上述したように、停車中や極低車速時でエンジン冷却水温Twが低く、かつ冷媒圧力PdがPd3≦Pd<Pd4の範囲にあるときに、空ふかしなどによりエンジン回転速度Neが設定値Ne4以上になると、コンプレッサー7の保護のためにコンプレッサー・クラッチ7aが解放される。空ふかしが終わってエンジン回転速度Neが設定値Ne3より低くなっても、冷媒圧力PdがPd3以上であるからコンプレッサー・クラッチ7aは直ちに締結されない。しかも、エンジン冷却水温Twが低いからモーターファン10は停止されており、モーターファン10によるコンデンサー11の冷却は行われず、さらに、停車中や極低車速時には走行風圧によるコンデンサー11の冷却も期待できないから、コンデンサー11におけるエアコン冷媒の冷却が不充分となり、冷媒圧力PdがいつまでもPd3より低くならず、図4に示すヒステリシス領域Aに長い時間留まってコンプレッサー・クラッチ7aが解放されたままとなり、長時間にわたってエアコンが運転されない。
【0025】
この一実施の形態によれば、エアコン冷媒の圧力異常またはエンジンの回転速度異常が発生して、コンプレッサー保護のためにコンプレッサー・クラッチ7aが解放された後に、冷媒圧力PdがPd3≦Pd<Pd4の範囲にあって、かつエンジン回転速度NeがNe3未満の場合は、車速Vspおよびエンジン冷却水温Twに拘わらずモーターファン10を運転するようにしたので、コンデンサー11におけるエアコン冷媒の冷却が促進され、冷媒圧力Pdが速やかに設定値Pd3より低くなってコンプレッサー・クラッチ7aの締結条件を満たし、短時間でエアコン運転を再開することができる。
【0026】
また、この実施の形態によれば、車速検出値Vspが所定値Vsp2以上の場合はモーターファン10の運転を停止する。車速検出値Vspが所定値Vsp2以上の高速走行中の場合は、走行風圧によりラジエーターとコンデンサーを通過する風量が多くなり、モーターファン10を運転しなくてもエンジン冷却水とエアコン冷媒を十分に冷却できる。したがって、このような場合にモーターファン10を停止することによって電力消費を節約することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 一実施の形態の構成を示す図である。
【図2】 一実施の形態のモーターファン制御プログラムを示すフローチャートである。
【図3】 車速Vsp、コンプレッサー・クラッチの締結と解放(ON、OFF)、エアコン冷媒圧力Pdおよびエンジン冷却水温Twに基づいてモーターファンの運転と停止(ON、OFF)を制御するための制御マップ例を示す図である。
【図4】 回転速度Neとエアコンの冷媒圧力Pdに基づいてコンプレッサー・クラッチの締結と解放を制御するための制御マップ例を示す図である。
【符号の説明】
1 エンジン・コントローラー
1a マイクロコンピューター
1b メモリ
2 車速センサー
3 エンジン回転センサー
4 エアコン・コントローラー
5 エアコン・スイッチ
6,9 リレー
6a,9a 励磁巻線
6b,9b 接点
7 コンプレッサー
8 イグニッション電源
10 モーターファン
11 コンデンサー
12 高圧パイプ
13 圧力センサー
Claims (2)
- エンジン回転速度が設定値x1以上、またはエアコン冷媒圧力が設定値y1以上でコンプレッサー・クラッチを解放し、エンジン回転速度が設定値x2(<x1)より低くなり、かつエアコン冷媒圧力が設定値y2(<y1)より低くなったらコンプレッサー・クラッチを締結する制御装置であって、車両のラジエーターとコンデンサーに送風してエンジン冷却水とエアコン冷媒を冷却するためのモーターファンの回転を制御するモーターファン制御装置において、
エンジン回転速度が設定値x1以上となってコンプレッサー・クラッチが解放された後に、エアコン冷媒圧力がy2以上でy1未満の範囲にあって、かつエンジン回転速度がx2より低い場合はモーターファンを運転することを特徴とするモーターファン制御装置。 - 請求項1に記載のモーターファン制御装置において、
車速を検出する車速検出手段を備え、
車速検出値が所定値以上の場合はモーターファンを停止することを特徴とするモーターファン制御装置。
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