JP3796935B2 - 燃料噴射弁 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、弁体の前後差圧を利用して弁体を開閉させるようにした燃料噴射弁の改良技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、例えば、内燃機関の燃料噴射弁として、特開平6−280711号公報に開示されるようなものがある。
このものは、図4に示すように、
図示しない燃料ポンプ等を介して所定圧に調整された燃料を、燃料噴射弁100の本体101、ディスタンスピース102、ノズルボディ103を通じて設けられた燃料通路104を介して、燃料溜まり105へ供給し、この燃料溜まり105に供給された燃料の圧力により、ニードル弁106に設けられた受圧部106Aを図中下方から上方へ向けて押圧可能になっている。
【0003】
前記ニードル弁106は、前記ノズルボディ103内に上下方向に摺動自在に嵌挿保持され、スプリング107により図中下方へ向けて閉弁付勢される一方で、その上端面は、差圧室108に臨ませられている。
そして、前記差圧室108は、容積可変に構成されている。即ち、印加電圧を制御することでピエゾ素子109の伸縮量を制御し、これにより、前記ピエゾ素子109に連接されたピストン部材110を図中上下方向に移動させることで、差圧室108の容積を可変に制御可能、延いては差圧室108内の燃料圧力を可変に制御することができるようになっている。
【0004】
なお、前記差圧室108は、作動流体で満たされている。
そして、燃料噴射停止時は、前記ピエゾ素子109を伸長側(差圧室108の容積を小さくする側)に制御して、前記差圧室108内圧力を上昇させることで、前記スプリング107の弾性力と相まって、前記受圧部106Aに作用する燃料の押圧力に抗し、前記ニードル弁106をノズルボディ103のシート部103Aへ着座維持させ、燃料が噴孔103Bから噴射されないようにする。
【0005】
一方、燃料噴射時は、前記ピエゾ素子109を収縮側(差圧室108の容積を大きくする側)に制御して、前記差圧室108内圧力を低下させることで、前記受圧部106Aに作用する燃料の押圧力(図中上方への押圧力)が、前記差圧室108内圧力と前記スプリング107の弾性力との合力を上回るようにし、ニードル弁106を図中上方へリフトさせ、以って燃料を噴孔103Bから噴射させるようになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の燃料噴射弁において、前記差圧室108内に満たされる作動流体を燃料とし、この燃料を、例えば、前記燃料溜まり105等からニードル弁106とノズルボディ103との間隙(或いはオリフィス)等を介して差圧室108内へ流入させるようにした場合には、以下のような事態が生じる惧れある。
【0007】
即ち、
機関停止中は、燃料ポンプが非作動であるので、前記燃料溜まり105や前記差圧室108内の圧力は、比較的低圧な状態となっている(例えば、機関停止から所定時間経過後には大気圧程度まで低下する)。
そして、機関始動時に、燃料ポンプの作動を開始して、燃料通路104から供給されてくる燃料圧力が上昇をし始めると、それに連れて、前記燃料溜まり105内の燃料圧力は早期に上昇するが、前記差圧室108内の燃料圧力の上昇は、ニードル弁106とノズルボディ103との間隙(或いはオリフィス)等を介して燃料がリークしてくる間待たされることになるので、始動後所定期間、前記差圧室108内の燃料圧力は低圧に維持されることになる。即ち、差圧室108内の燃料圧力の上昇は、前記燃料溜まり105内の燃料圧力の上昇に対して所定の遅れ時間を持つことになる。
【0008】
このため、前記所定の遅れ期間内においては、例え前記ピエゾ素子109を伸長側(差圧室108の容積を小さくする側)に制御したとしてもそれには限界があるため、前記受圧部106Aに作用する燃料の押圧力(図中上方への押圧力)が、前記差圧室108内圧力と前記スプリング107の弾性力との合力を上回ってしまう惧れがあり、延いては常にニードル弁106がリフトされてしまい、燃料を噴孔103Bから常時噴射(噴射させるべき時期ではないのに不正に噴射)させてしまう惧れがある。
【0009】
即ち、機関始動開始後所定期間は、不正噴噴射が生じる惧れがあり、延いては機関吸入混合気の空燃比がリッチ化し過ぎて、始動性や排気性能を低下させてしまう惧れがあった。
なお、前記燃料溜まり105等からニードル弁106とノズルボディ103との間隙(或いはオリフィス)等を介して差圧室108内へ燃料を流入させるものに限らず、例えば、燃料ポンプ30から直接差圧室108内へ燃料を流入させる場合等でも、燃料流路の流路抵抗(長さや内径)によっては、差圧室108内の圧力上昇が遅れる惧れがあり、上記と同様の事態が生じる惧れがある。また、上記の惧れは、内燃機関の燃料噴射弁に限らず、他の燃焼機関に用いられる或いは他の用途に用いられる燃料噴射弁(弁体の前後差圧を利用して弁体を開閉させる所謂差圧式の燃料噴射弁)においても同様に生じる惧れがある。
【0010】
本発明は、かかる従来の実情に鑑みなされたもので、弁体の前後差圧を利用して弁体を開閉させる所謂差圧式の燃料噴射弁において、始動時の燃料噴射特性を改善することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
このため、請求項1に記載の発明では、
通電状態に応じて伸縮する電歪アクチュエータと、
該電歪アクチュエータの伸縮に応じて移動するピストン部材と、
該ピストン部材の移動に応じて容積変化され該容積内部の燃料の圧力を可変制御される差圧室と、
該差圧室内の燃料の圧力により閉弁方向力を受ける一方、燃料ポンプから供給される燃料の圧力により開弁方向力を受ける弁体と、を含んで構成され、
燃料噴射時には、前記差圧室の容積を大きくなる側に制御して該差圧室内の燃料の圧力を低下させて前記弁体を開弁させる一方、燃料噴射停止時には、前記差圧室の容積を小さくなる側に制御して該差圧室内の燃料の圧力を上昇させて前記弁体を閉弁させるようにした燃料噴射弁であって、
一端側の端面に燃料ポンプから供給される燃料の圧力が作用されると共に、これとは反対の他端側の端面に前記差圧室内の燃料の圧力が作用され、両圧力に応じて移動して前記差圧室の燃料の圧力を変化させる昇圧用ピストン部材を含んで構成するようにした。
【0012】
かかる構成とすれば、以下のような作用を奏することができる。
即ち、
機関始動時に、燃料ポンプの作動を開始して、燃料ポンプから当該燃料噴射弁に供給されてくる燃料の圧力が上昇をし始めると、それに連れて、前記開弁方向力は上昇する。
【0013】
一方、前記差圧室内の燃料圧力の上昇は、弁体とこれを摺動自由に保持する部材(ノズルボディ)との間隙(或いはオリフィス)等を介して燃料がリークしてくる間待たされることになるので、始動後所定期間、前記差圧室内の燃料圧力は低圧に維持され前記閉弁方向力は小さくなり、従来同様の構成であれば、不正噴射が生じる惧れがある。
【0014】
しかしながら、上記構成を備えた本発明では、前記昇圧用ピストン部材の一端側の端面に前記燃料ポンプから供給される燃料の圧力を作用させる一方、昇圧用ピストン部材の他端側の端面に前記差圧室内の燃料の圧力を作用させ、両圧力に応じて昇圧用ピストン部材を移動させることができるので、機関始動時の燃料ポンプの作動開始に伴う燃料圧力の上昇に応じ、昇圧用ピストン部材を差圧室側へ移動させ、前記差圧室側の容積を燃料圧力の上昇と共に小さくすることができるので、延いては機関始動時においても、差圧室内の燃料圧力を十分上昇させることができることになる。
【0015】
従って、例え始動時であっても、前記開弁方向力より、前記閉弁方向力を大きく維持することができるので、従来のように始動時に弁体が不正に開弁されることを回避することができる。
即ち、本発明によれば、機関始動時であっても、従来のような不正噴射を回避でき、延いては始動性や排気性能を良好に維持することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明では、前記昇圧用ピストン部材を移動自由に収容する収容部を備え、前記他端側を収容する側の収容部が、前記差圧室に連通される構成とした。
請求項3に記載の発明では、前記昇圧用ピストン部材を前記他端側前記電歪アクチュエータの基端部に連接すると共に、前記電歪アクチュエータ及び前記ピストン部材を前記昇圧用ピストン部材の移動に応じて移動可能に支持することで、前記差圧室内の燃料の圧力を、前記ピストン部材を介して当該昇圧用ピストン部材の他端側の端面に作用させるように構成した。
【0017】
かかる構成とすれば、請求項2に記載の発明の構成に対し、前記電歪アクチュエータ、前記ピストン部材を、前記昇圧用ピストン部材の他端側の一部材として機能させることができるので、構成の簡略化を促進することができる。
請求項4に記載の発明では、前記昇圧用ピストン部材において、前記一端側の端面に前記燃料ポンプから供給される燃料の圧力が作用する面積が、前記他端側の端面に前記差圧室内の燃料の圧力が作用する面積より大きく形成されるようにした。
【0018】
かかる構成とすれば、確実に、機関始動時における差圧室内の燃料圧力(延いては閉弁方向力)を十分上昇させることができると共に、通常時(始動時以外)においても、昇圧用ピストン部材を所定位置に固定することなどが可能となるので、(差圧室内の圧力の変動の少ない)安定した燃料噴射を達成することができることとなる。
【0019】
【発明の効果】
請求項1や請求項2に記載の発明によれば、機関始動時であっても、従来のような不正噴射を回避でき、延いては始動性や排気性能を良好に維持することができる。即ち、始動時の燃料噴射特性を改善することができる。
請求項3に記載の発明によれば、前記電歪アクチュエータ、前記ピストン部材を、前記昇圧用ピストン部材の他端側の一部材として機能させることができるので、構成の簡略化を促進することができる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、確実に、機関始動時における差圧室内の燃料圧力(延いては閉弁方向力)を十分上昇させることができると共に、通常時(始動時以外)においても、昇圧用ピストン部材を所定位置に固定することなどが可能となるので、(差圧室内の圧力の変動の少ない)安定した燃料噴射を達成することができることとなる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を、添付の図面に基づき説明する。
図1には本発明の第1の実施形態にかかるシステム構成図を示す。
図1において、エンジン(内燃機関)の各気筒に対応して設けられた燃料噴射弁1は、燃料供給管27を介して各気筒共通の燃料ギャラリ26に接続されている。この燃料ギャラリ26には供給管28を介して燃料ポンプ30が接続されている。
【0022】
前記燃料ポンプ30は、燃料タンク31から燃料フィルタ32を介して吸入された燃料を所定の圧力に昇圧し、前記燃料ギャラリ26に供給する。なお、前記燃料ギャラリ26内の燃料圧力は、プレッシャーレギュレータバルブ29等を介して所定圧に調整される。また、前記燃料ポンプ30には、ポンプ負荷を軽減するために、所定圧で開弁して吐出燃料をリリーフするリリーフバルブ33が設けられるようになっている。
【0023】
上記のようにして、燃料ポンプ30等を介して所定圧に調整された燃料は、前記燃料供給管27等を介して、図2に示すように、燃料噴射弁1の本体2に設けられる燃料通路5に供給される。
図2に示すように、更に、本実施形態においては、前記燃料供給管27から燃料が、後述する昇圧室9に油密性を維持されつつ摺動自在に嵌挿される昇圧用ピストン部材10の背面10Aにも供給されるようになっている。
【0024】
なお、前記燃料通路5は、燃料溜まり6に連通されており、該燃料溜まり6に供給された燃料の圧力により、ニードル弁(弁体)4に設けられた受圧部4Aを図2中下方から上方へ向けて押圧可能になっている。
前記ニードル弁4は、前記ノズルボディ3内に上下方向に摺動自在に嵌挿保持され、スプリング7により図2中下方へ向けて閉弁付勢される一方で、その上端面は、差圧室8に臨ませられている。なお、差圧室8は、ニードル弁4とノズルボディ3との間隙(或いはオリフィス)等を介してリークしてくる燃料で満たされるようになっている。
【0025】
そして、前記差圧室8は、従来同様に、容積可変に構成されている。即ち、印加電圧を制御することでピエゾ素子14の伸縮量を制御し、これにより、前記ピエゾ素子14に連接されたピストン部材15を図2中上下方向に移動させることで、差圧室8の容積を可変に制御可能、延いては差圧室8内の燃料圧力を可変に制御することができるようになっている。前記ピエゾ素子14は、円板状セラミクス圧電素子を多数積層した所謂電歪アクチュエータとして機能するものであれば良く、従ってピエゾ素子以外の電歪アクチュエータを用いることもできる。
【0026】
なお、図2中符号16は、ピストン部材15を所定位置へ戻すためのリターンスプリングである。図2では、スプリング16として、皿バネを用いているが、これに限らず、コイルスプリング、ゴム等の他の弾性体であっても良いものである。
更に、本実施形態における燃料噴射弁1は、機関始動時における不正噴射を抑制するために、以下の構成を備えている。
【0027】
即ち、
本体2に、前記差圧室8と連通路11を介して連通する昇圧室9が設けられるようになっている。この昇圧室9は、連通路11の反対側で、大径部と小径部とを有する昇圧用ピストン部材10の大径部を摺動自在に嵌挿保持する収容部9Aに連通されている。なお、収容部9Aと、昇圧用ピストン部材10の大径部と、の間には、O−リングやピストンリング等のシールリング13が介され、油密性が維持されるようになっている。
【0028】
また、前記昇圧用ピストン部材10の小径部は、前記昇圧室9に、O−リングやピストンリング等のシールリング14等を介して油密性を維持しながら摺動自在に嵌挿保持される。
そして、前記昇圧室9内の前記昇圧用ピストン部材10の背面10A側には、前記燃料供給管27から燃料が供給されるようになっている。なお、背面10Aに作用する燃料圧力に抗する方向に、昇圧用ピストン部材10を押圧付勢するリターンスプリング12が、前記昇圧用ピストン部材10と、本体2と、の間に配設されている。
【0029】
そして、上記構成を備えた本実施形態にかかる燃料噴射弁1は、機関始動時における不正噴射を抑制するために、機関始動時には、以下のように動作することとなる。
即ち、
機関始動時に、燃料ポンプ30の作動を開始して、前記燃料供給管27から燃料通路5へ供給されてくる燃料圧力が上昇をし始めると、それに連れて、前記燃料溜まり6内の燃料圧力は上昇する。
【0030】
一方、前記差圧室8内の燃料圧力の上昇は、ニードル弁4とノズルボディ3との間隙(或いはオリフィス)等を介して燃料がリークしてくる間待たされることになるので、従来同様の構成であれば、始動後所定期間、前記差圧室8内の燃料圧力は低圧に維持されることになる。
しかしながら、本実施形態では、前記昇圧室9内の前記昇圧用ピストン部材10の背面10Aに、前記燃料供給管27から供給されてくる燃料の圧力を作用させるようにしているので、昇圧用ピストン部材10は、機関始動時の燃料ポンプ30の作動開始に伴う燃料圧力の上昇に応じ、昇圧用ピストン部材10を図2中左方へ弾性付勢するリターンスプリング12に抗して、図2中右方向へ(例えばストッパ部9Bまで)移動されることとなる。
【0031】
このため、前記収容部9Aの容積、延いてはこれと連通する差圧室8の容積は燃料圧力の上昇と共に小さくなるので、機関始動時においても、差圧室8内の燃料圧力を十分上昇させることができることになる。
従って、例え始動時であっても、前記受圧部4Aに作用する燃料の押圧力(開弁方向力;図2中上方への押圧力)より、前記差圧室8内圧力と前記スプリング7の弾性力との合力(閉弁方向力;図2中下方への押圧力)を大きく維持することができるので、従来のように始動時にニードル弁3が不正に開弁されることを回避することができる。
【0032】
即ち、本実施形態によれば、機関始動時であっても、従来のような不正噴射を回避でき、延いては始動性や排気性能を良好に維持することができる。
なお、機関始動後所定時間経過した後は、ニードル弁4とノズルボディ3との間隙(或いはオリフィス)等を介してリークしてくる燃料によって、差圧室8内の燃料の圧力が上昇することになるが、この場合でも、昇圧用ピストン部材10の背面10A(大径部)の断面積を、収容部9A側の断面積(小径部)より十分大きく設定してあるので、前記燃料供給管27から供給されてくる燃料の圧力によって、前記ストッパ部9Bに、昇圧用ピストン部材10を当接保持できるようになっている。従来と同様に良好に燃料噴射を行なえることになる。
【0033】
つまり、本実施形態にかかる燃料噴射弁1は、電子制御ユニット34からの駆動信号を受けて、通常時には、以下のように動作される。
即ち、燃料噴射時は、従来同様、前記電子制御ユニット34を介して、運転状態等に応じて予め設定されたタイミングで前記ピエゾ素子14への印加電圧を高圧とすることで、前記ピエゾ素子14を収縮側(差圧室8の容積を大きくする側)に制御して、前記差圧室8内圧力を低下させ、前記受圧部4Aに作用する燃料の押圧力(図2中上方への押圧力)が、前記差圧室8内圧力と前記スプリング7の弾性力との合力を上回るようにし、ニードル弁4を開弁(図2中上方へリフト)させ、以って燃料を噴孔3Bから噴射させる。
【0034】
一方、前記電子制御ユニット34では、運転状態等に応じて設定される噴射期間が経過したら(運転状態等に応じて設定された燃料供給量を供給できるように)、燃料噴射を終了させるべく、前記ピエゾ素子14への印加電圧を上昇させて、前記ピエゾ素子14を伸長側に制御し、前記差圧室8内圧力を上昇させることで、スプリング7の弾性力と相まって、前記受圧部4Aに作用する燃料の押圧力に抗し、ニードル弁4を閉弁(ノズルボディ3のシート部3Aへ着座)させ、燃料が噴孔3Bから噴射されないようにする。
【0035】
ところで、上記実施形態では、燃料圧力の作用する面積の大小関係を利用して昇圧効果を高めるために、昇圧用ピストン部材10を大径部と小径部とを有する構成として説明したが、燃料圧力や収容部9Aの容積や差圧室8の容積の関係によっては、全長に亘って同一径(即ち単一径)のピストンとすることもできるものである。
【0036】
また、上記実施形態では、昇圧用ピストン部材10の背面10Aへ、燃料供給管27から燃料を供給する構成としたが、これに限定されるものではなく、燃料通路5を本体2内で分岐させ、該分岐された通路を本体2内で前記背面10Aまで通じさせて燃料を供給する構成とすることもできる。
また、上記実施形態では、各ピストン部材10、15の摺動部には、O−リング等を介装しているが、所定の油密性を維持できれば(例えば嵌合精度で所定の油密性を維持できれば)、かかるO−リング等は省略することは可能である。
【0037】
次に、本発明にかかる第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態では、図3に示すように、本体2内に収容されるピエゾ素子14を摺動自在に本体2に嵌挿保持させる構成を採用し、ピエゾ素子14の基端部に連結された昇圧用ピストン部材10の背面10Aに、燃料圧力を作用させることで、始動時における不正噴射を回避する構成となっている。なお、図3において、第1の実施形態における要素と同一の機能を奏する要素には、図2で示した第1の実施形態における要素と同一符号を付すこととして、詳細な説明は省略し、異なる部分について主に説明することにする。
【0038】
即ち、第2の実施形態では、前記摺動自在に嵌挿保持されたピエゾ素子14の基端部(上面)に、昇圧用ピストン部材10が連結されている。なお、該昇圧用ピストン部材10の外径は、燃料圧力の作用する面積の大小関係を利用して差圧室8の昇圧効果を高めるために、ピエゾ素子14やピストン部材15の外径より大きく設定されている。
【0039】
また、前記昇圧用ピストン10は、本体2に設けられた収容部9A内に摺動自在にO−リングやピストンリング等のシールリングを介して嵌挿保持されている。
そして、前記昇圧室9の基端面には、前記燃料供給管27から供給されてくる燃料を本体2内に導く燃料通路5が開口されている。そして、燃料通路5’が、前記昇圧室9の側面であって少なくとも前記昇圧用ピストン10に燃料圧力が作用したときに閉塞されない位置に開口され、本体2の周壁部分、ノズルボディ3等を通って燃料溜まり6へ至っている。
【0040】
上記構成を備えた第2の実施形態にかかる燃料噴射弁1は、機関始動時における不正噴射を抑制するために、機関始動時には、以下のように動作することとなる。
即ち、
機関始動時に、前記昇圧室9内の昇圧用ピストン部材10の背面10Aに、前記燃料供給管27から供給されてくる燃料の圧力を作用させるようにしているので、昇圧用ピストン部材10は、機関始動時の燃料ポンプ30の作動開始に伴う燃料圧力の上昇に応じ、スプリング16、スプリング17の弾性力に抗して、図3中下方向へ(例えばストッパ部9Bまで)移動されることとなる。
【0041】
このため、前記差圧室8の容積は燃料圧力の上昇と共に小さくなるので、機関始動時においても、差圧室8内の燃料圧力を十分上昇させることができることになる。なお、本実施形態におては、ピストン部材15の下端面と、差圧室8の上端面と、の間隙部分(即ち、スプリング16が収容されている収容部であって、燃料噴射や停止時においてピエゾ素子14の伸長を利用して差圧室8の圧力を調整するための調整用室18)が、第1の実施形態における昇圧室9としての機能も兼ね備えることになる。
【0042】
従って、例え始動時であっても、前記受圧部4Aに作用する燃料の押圧力(開弁方向力;図3中上方への押圧力)より、前記差圧室8内圧力と前記スプリング7の弾性力との合力(閉弁方向力;図3中下方への押圧力)を大きく維持することができるので、従来のように始動時にニードル弁3が不正に開弁されることを回避することができる。
【0043】
つまり、第2の実施形態によれば、第1の実施形態に対してより簡単な構成で、機関始動時であっても、従来のような不正噴射を回避でき、延いては始動性や排気性能を良好に維持することができる。
ところで、機関始動後所定時間経過すると、ニードル弁4とノズルボディ3との間隙(或いはオリフィス)等を介してリークしてくる燃料によって、差圧室8内は昇圧された燃料で満たされることになるが、本実施形態では、十分昇圧用ピストン部材10の背面10Aの面積を大きく設定してあるので、前記燃料供給管27から供給されてくる燃料の圧力によって、前記ストッパ部9Cに、昇圧用ピストン部材10を当接保持できるようになっている。従って、通常運転時は、従来と同様に良好に燃料噴射を行なえることになる。
【0044】
なお、通常時における動作は、第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。
なお、スプリング16、17は、ピストン部材15や昇圧用ピストン部材10を、所定位置へ戻すためのリターンスプリングであり、図3では、皿バネを用いているが、これに限らず、コイルスプリング、ゴム等の他の弾性体であっても良いものである。
【0045】
また、上記実施形態においても、各ピストン部材10、15の摺動部には、O−リング等を介装しているが、所定の油密性を維持できれば(例えば嵌合精度で所定の油密性を維持できれば)、かかるO−リング等は省略することは可能である。
ところで、上記各実施形態では、内燃機関の燃料噴射弁に関して説明してきたが、本発明はこれに限らず、他の燃焼機関に用いられる或いは他の用途に用いられる差圧式の燃料噴射弁においても適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施形態にかかるシステム構成図。
【図2】 同上実施形態にかかる燃料噴射弁の構造を示す断面図。
【図3】 本発明の第2の実施形態にかかる燃料噴射弁の構造を示す断面図。
【図4】 従来の差圧式燃料噴射弁の構造例を説明する断面図。
【符号の説明】
1 燃料噴射弁
2 本体
3 ノズルボディ
4 ニードル弁(弁体)
5 燃料通路
5’ 燃料通路
6 燃料溜まり
8 差圧室
9 昇圧室(昇圧用ピストン部材の収容部)
10 昇圧用ピストン部材
10A 昇圧用ピストン部材の背面
14 ピエゾ素子(電歪アクチュエータ)
15 ピストン部材

Claims (4)

  1. 通電状態に応じて伸縮する電歪アクチュエータと、
    該電歪アクチュエータの伸縮に応じて移動するピストン部材と、
    該ピストン部材の移動に応じて容積変化され該容積内部の燃料の圧力を可変制御される差圧室と、
    該差圧室内の燃料の圧力により閉弁方向力を受ける一方、燃料ポンプから供給される燃料の圧力により開弁方向力を受ける弁体と、を含んで構成され、
    燃料噴射時には、前記差圧室の容積を大きくなる側に制御して該差圧室内の燃料の圧力を低下させて前記弁体を開弁させる一方、燃料噴射停止時には、前記差圧室の容積を小さくなる側に制御して該差圧室内の燃料の圧力を上昇させて前記弁体を閉弁させるようにした燃料噴射弁であって、
    一端側の端面に燃料ポンプから供給される燃料の圧力が作用されると共に、これとは反対の他端側の端面に前記差圧室内の燃料の圧力が作用され、両圧力に応じて移動して前記差圧室の燃料の圧力を変化させる昇圧用ピストン部材を含んで構成したことを特徴とする燃料噴射弁。
  2. 前記昇圧用ピストン部材を移動自由に収容する収容部を備え、前記他端側を収容する側の収容部が、前記差圧室に連通されることを特徴とする請求項1に記載の燃料噴射弁。
  3. 前記昇圧用ピストン部材を前記他端側前記電歪アクチュエータの基端部に連接すると共に、前記電歪アクチュエータ及び前記ピストン部材を前記昇圧用ピストン部材の移動に応じて移動可能に支持することで、前記差圧室内の燃料の圧力を、前記ピストン部材を介して当該昇圧用ピストン部材の他端側の端面に作用させるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の燃料噴射弁。
  4. 前記昇圧用ピストン部材において、前記一端側の端面に前記燃料ポンプから供給される燃料の圧力が作用する面積が、前記他端側の端面に前記差圧室内の燃料の圧力が作用する面積より大きく形成されることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1つに記載の燃料噴射弁。
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