JP3796426B2 - 磁気共鳴撮像装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水または脂肪の位相識別方法、画像生成方法および磁気共鳴撮像装置に関し、さらに詳しくは、磁気共鳴を利用して撮像した複素数画像中の水または脂肪の位相を識別する水または脂肪の位相識別方法、水画像または脂肪画像を生成する画像生成方法、および、それらの方法を好適に実施する磁気共鳴撮像装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
特開2001−204711号公報には、水と脂肪が位相差を持つように磁気共鳴を利用して複素数画像を撮像し、その複素数画像中の独立した信号領域を抽出し、各信号領域における位相ヒストグラムを求め、それら位相ヒストグラムを基に水と脂肪の位相を識別する方法が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
特開2001−204711号公報に開示の従来技術では、複素数画像中の独立した信号領域を抽出する処理を行っている。
しかし、信号領域の面積は、画像に依存するため、不定である。ここで、信号領域の面積が小さすぎると、その信号領域に含まれるデータ点数が少なすぎ且つノイズの影響を無視できなくなることにより有効な位相ヒストグラムが得られなくなり、逆に信号領域の面積が大きすぎると、静磁場不均一の影響が無視できなくなりやはり有効な位相ヒストグラムが得られなくなる。そして、有効な位相ヒストグラムが得られなければ、水と脂肪の位相を好適に識別できなくなる。
そこで、本発明の目的は、複素数画像中の独立した信号領域を抽出する処理を行うことなく、水または脂肪の位相を好適に識別できるようにした水または脂肪の位相識別方法、水画像または脂肪画像を生成する画像生成方法、および、それらの方法を好適に実施する磁気共鳴撮像装置を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
第1の観点では、本発明は、水と脂肪が位相差を持つように磁気共鳴を利用して複素数画像を撮像し、前記複素数画像を多数の区画に分割し、前記各区画で位相ヒストグラムを求め、着目する区画の位相ヒストグラムから水または脂肪の位相を識別可能か識別不可能かを判定し、識別可能の場合は着目する区画の位相ヒストグラムから該区画における水または脂肪の位相を求め、識別不可能の場合は着目する区画の近傍の所定範囲の区画の位相ヒストグラムを加算して加算位相ヒストグラムを求め、前記加算位相ヒストグラムから前記区画における水または脂肪の位相を求めることを特徴とする水または脂肪の位相識別方法を提供する。
上記第1の観点による水または脂肪の位相識別方法では、複素数画像を多数の区画に分割し、一つの区画の位相ヒストグラムで水または脂肪の位相を識別可能なら該区画の位相ヒストグラムから水または脂肪の位相を求め、識別不可能なら近傍の所定範囲の区画の位相ヒストグラムを加算してその加算位相ヒストグラムで水または脂肪の位相を求める。このように、位相ヒストグラムを得る面積を自動的に変えるため、水と脂肪の位相を好適に識別することが出来る。
【0005】
第2の観点では、本発明は、水と脂肪が位相差を持つように磁気共鳴を利用して複素数画像を撮像し、前記複素数画像を多数の区画に分割し、前記各区画で位相ヒストグラムを求め、着目する区画の位相ヒストグラムから水または脂肪の位相を識別可能か識別不可能かを判定し、識別可能の場合は着目する区画の位相ヒストグラムから該区画における水または脂肪の位相を求め、識別不可能の場合は着目する区画の近傍の所定範囲の区画の位相ヒストグラムを加算して加算位相ヒストグラムを求め、前記加算位相ヒストグラムから水または脂肪の位相を識別可能か識別不可能かを判定し、識別可能の場合は前記加算位相ヒストグラムから前記着目する区画における水または脂肪の位相を求め、識別不可能の場合は前記所定範囲を段階的に広げながら前記処理を繰り返して前記区画における水または脂肪の位相を求めることを特徴とする水または脂肪の位相識別方法を提供する。
上記第2の観点による水または脂肪の位相識別方法では、複素数画像を多数の区画に分割し、一つの区画の位相ヒストグラムで水または脂肪の位相を識別可能なら該区画の位相ヒストグラムから水または脂肪の位相を求め、識別不可能なら近傍の所定範囲の区画の位相ヒストグラムを加算してその加算位相ヒストグラムで水または脂肪の位相を識別可能なら該加算位相ヒストグラムから水または脂肪の位相を求め、識別不可能なら所定範囲を順に広げながら同じ処理を繰り返す。このように、位相ヒストグラムを得る面積を自動的に変えるため、水と脂肪の位相を好適に識別することが出来る。
【0006】
第3の観点では、本発明は、上記構成の水または脂肪の位相識別方法において、前記所定範囲を所定の限界範囲まで広げても識別不可能であった場合は、前記処理の繰り返しを止めて、水または脂肪の位相を求めることが出来た他の区画の水または脂肪の位相に基づいて着目する区画における水または脂肪の位相を求めることを特徴とする水または脂肪の位相識別方法を提供する。
上記第3の観点による水または脂肪の位相識別方法では、位相ヒストグラムを得る面積を広げることを所定の限界範囲までで止め、水または脂肪の位相を求めることが出来た他の区画の水または脂肪の位相に基づいて着目する区画における水または脂肪の位相を求める。これにより、処理時間が徒に延びることを回避できる。
【0007】
第4の観点では、本発明は、上記構成の水または脂肪の位相識別方法において、前記所定範囲は、i(=1,2,…)番目に広げた時は着目する区画を他の区画がi重に囲む範囲であることを特徴とする水または脂肪の位相識別方法を提供する。
上記第4の観点による水または脂肪の位相識別方法では、着目する区画を他の区画が囲むように位相ヒストグラムを得る面積を広げるので、着目する区画が中心になり、区画間に一次の位相ずれがあっても、キャンセルすることが出来る。
【0008】
第5の観点では、本発明は、水と脂肪が位相差を持つように磁気共鳴を利用して複素数画像を撮像し、前記複素数画像を多数の区画に分割し、前記各区画で位相ヒストグラムを求め、着目する区画の位相ヒストグラムから水または脂肪の位相を識別可能か識別不可能かを判定し、識別可能の場合は着目する区画の位相ヒストグラムから該区画における水または脂肪の位相を求め、識別不可能の場合は着目する区画の近傍の区画であって水または脂肪の位相を求めることが出来た区画の水または脂肪の位相に基づいて着目する区画における水または脂肪の位相を求めることを特徴とする水または脂肪の位相識別方法を提供する。
上記第5の観点による水または脂肪の位相識別方法では、複素数画像を多数の区画に分割し、一つの区画の位相ヒストグラムで水または脂肪の位相を識別可能なら該区画の位相ヒストグラムから水または脂肪の位相を求め、識別不可能なら水または脂肪の位相を求めることが出来た他の区画の水または脂肪の位相に基づいて着目する区画における水または脂肪の位相を求める。これにより、処理時間を短縮できる。
【0009】
第6の観点では、本発明は、上記構成の水または脂肪の位相識別方法において、前記複素数画像をグリッド状に分割することを特徴とする水または脂肪の位相識別方法を提供する。
上記第6の観点による水または脂肪の位相識別方法では、複素数画像を機械的に分割するので、画像を解析する必要がなく、処理時間を短縮できる。
【0010】
第7の観点では、本発明は、上記構成の水または脂肪の位相識別方法において、一つの区画に64個以上、4096個以下のデータ点が含まれるように分割することを特徴とする水または脂肪の位相識別方法を提供する。
上記第7の観点による水または脂肪の位相識別方法では、一つの区画に64個以上、4096個以下のデータ点が含まれるように分割するので、位相ヒストグラムを得る面積が小さすぎたり、大きすぎたりすることがない。
【0011】
第8の観点では、本発明は、水と脂肪が90゜の位相差を持つように磁気共鳴を利用して複素数画像を撮像し、前記複素数画像を多数の区画に分割し、前記各区画における水の位相を求め、前記複素数画像の各データ点から対応する区画の水の位相を減算した後の複素数画像の実部より水画像を得ることを特徴とする画像生成方法を提供する。
上記第8の観点による水または脂肪の位相識別方法では、複素数画像の各データ点から対応する区画の水の位相を減算するため、水の位相が“0”となる。よって、減算後の複素数画像の実部を採れば、水画像が得られる。
【0012】
第9の観点では、本発明は、水と脂肪が90゜の位相差を持つように磁気共鳴を利用して複素数画像を撮像し、前記複素数画像を多数の区画に分割し、前記各区画における水の位相を求め、前記複素数画像の各データ点から対応する区画の水の位相を減算した後の複素数画像の虚部より脂肪画像を得ることを特徴とする画像生成方法を提供する。
上記第9の観点による水または脂肪の位相識別方法では、複素数画像の各データ点から対応する区画の水の位相を減算するため、脂肪の位相が“90゜”となる。よって、減算後の複素数画像の虚部を採れば、脂肪画像が得られる。
【0013】
第10の観点では、本発明は、水と脂肪が位相差を持つように磁気共鳴を利用して複素数画像を撮像する撮像手段と、前記複素数画像を多数の区画に分割し各区画で位相ヒストグラムを求めるヒストグラム算出手段と、着目する区画の位相ヒストグラムから水または脂肪の位相を識別可能か識別不可能かを判定する第1の判定手段と、識別可能の場合は着目する区画の位相ヒストグラムから該区画における水または脂肪の位相を求める第1の位相取得手段と、識別不可能の場合は着目する区画の近傍の所定範囲の区画の位相ヒストグラムを加算して加算位相ヒストグラムを求める加算位相ヒストグラム取得手段と、前記加算位相ヒストグラムから水または脂肪の位相を求める第2の位相取得手段とを具備したことを特徴とする磁気共鳴撮像装置を提供する。
上記第10の観点による磁気共鳴撮像装置では、前記第1の観点による水または脂肪の位相識別方法を好適に実施できる。
【0014】
第11の観点では、本発明は、水と脂肪が位相差を持つように磁気共鳴を利用して複素数画像を撮像する撮像手段と、前記複素数画像を多数の区画に分割し各区画で位相ヒストグラムを求めるヒストグラム算出手段と、着目する区画の位相ヒストグラムから水または脂肪の位相を識別可能か識別不可能かを判定する第1の判定手段と、識別可能の場合は着目する区画の位相ヒストグラムから該区画における水または脂肪の位相を求める第1の位相取得手段と、識別不可能の場合は着目する区画の近傍の所定範囲の区画の位相ヒストグラムを加算して加算位相ヒストグラムを求める加算位相ヒストグラム取得手段と、前記位相ヒストグラムから水または脂肪の位相を識別可能か識別不可能かを判定する第2の判定手段と、識別可能の場合は前記加算位相ヒストグラムから前記区画における水または脂肪の位相を求める第2の位相取得手段と、識別不可能の場合は前記所定範囲を段階的に広げながら前記処理を繰り返して前記区画における水または脂肪の位相を求める反復手段とを具備したことを特徴とする磁気共鳴撮像装置を提供する。
上記第11の観点による磁気共鳴撮像装置では、前記第2の観点による水または脂肪の位相識別方法を好適に実施できる。
【0015】
第12の観点では、本発明は、上記構成の磁気共鳴撮像装置において、前記反復手段は、前記所定範囲を前記限界範囲まで広げても識別不可能であった場合は、前記処理の繰り返しを止めると共に、水または脂肪の位相を求めることが出来た他の区画の水または脂肪の位相に基づいて着目する区画における水または脂肪の位相を求める第3の位相取得手段を具備したことを特徴とする磁気共鳴撮像装置を提供する。
上記第12の観点による磁気共鳴撮像装置では、前記第3の観点による水または脂肪の位相識別方法を好適に実施できる。
【0016】
第13の観点では、本発明は、上記構成の磁気共鳴撮像装置において、前記所定範囲は、i(=1,2,…)番目に広げた時は着目する区画を他の区画がi重に囲む範囲であることを特徴とする位相磁気共鳴撮像装置を提供する。
上記第13の観点による磁気共鳴撮像装置では、前記第4の観点による水または脂肪の位相識別方法を好適に実施できる。
【0017】
第14の観点では、本発明は、水と脂肪が位相差を持つように磁気共鳴を利用して複素数画像を撮像する撮像手段と、前記複素数画像を多数の区画に分割し各区画で位相ヒストグラムを求めるヒストグラム算出手段と、着目する区画の位相ヒストグラムから水または脂肪の位相を識別可能か識別不可能かを判定する第1の判定手段と、識別可能の場合は着目する区画の位相ヒストグラムから該区画における水または脂肪の位相を求める第1の位相取得手段と、識別不可能の場合は着目する区画の近傍の区画であって水または脂肪の位相を求めることが出来た区画の水または脂肪の位相に基づいて着目する区画における水または脂肪の位相を求める第3の位相取得手段とを具備したことを特徴とする磁気共鳴撮像装置を提供する。
上記第14の観点による磁気共鳴撮像装置では、前記第5の観点による水または脂肪の位相識別方法を好適に実施できる。
【0018】
第15の観点では、本発明は、上記構成の磁気共鳴撮像装置において、前記複素数画像をグリッド状に分割することを特徴とする磁気共鳴撮像装置を提供する。
上記第15の観点による磁気共鳴撮像装置では、前記第6の観点による水または脂肪の位相識別方法を好適に実施できる。
【0019】
第16の観点では、本発明は、上記構成の磁気共鳴撮像装置において、一つの区画に64個以上のデータ点が含まれるように分割することを特徴とする磁気共鳴撮像装置を提供する。
上記第16の観点による磁気共鳴撮像装置では、前記第7の観点による水または脂肪の位相識別方法を好適に実施できる。
【0020】
第17の観点では、本発明は、水と脂肪が90゜の位相差を持つように磁気共鳴を利用して複素数画像を撮像する撮像手段と、前記複素数画像を多数の区画に分割し各区画における水の位相を求める位相取得手段と、前記複素数画像の各データ点から対応する区画の水の位相を減算した後の複素数画像の実部より水画像を得る水画像取得手段とを具備したことを特徴とする磁気共鳴撮像装置を提供する。
上記第17の観点による磁気共鳴撮像装置では、前記第8の観点による水または脂肪の位相識別方法を好適に実施できる。
【0021】
第18の観点では、本発明は、水と脂肪が90゜の位相差を持つように磁気共鳴を利用して複素数画像を撮像する撮像手段と、前記複素数画像を多数の区画に分割し各区画における水の位相を求める位相取得手段と、前記複素数画像の各データ点から対応する区画の水の位相を減算した後の複素数画像の虚部より脂肪画像を得る脂肪画像取得手段とを具備したことを特徴とする磁気共鳴撮像装置を提供する。
上記第18の観点による磁気共鳴撮像装置では、前記第9の観点による水または脂肪の位相識別方法を好適に実施できる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、図に示す実施の形態により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【0023】
−第1の実施形態−
図1は、本発明の一実施形態に係る磁気共鳴撮像装置を示すブロック図である。
この磁気共鳴撮像装置100において、マグネットアセンブリ1は、内部に被検体を挿入するための空間部分(孔)を有し、この空間部分を取りまくようにして、被検体に一定の主磁場を印加する永久磁石1pと、X軸,Y軸,Z軸の勾配磁場を発生するための勾配磁場コイル1gと、被検体内の原子核のスピンを励起するためのRFパルスを与える送信コイル1tと、被検体からのNMR信号を検出する受信コイル1rとが配置されている。前記勾配磁場コイル1gは、勾配磁場駆動回路3に接続されている。前記送信コイル1tは、RF電力増幅器4に接続されている。前記受信コイル1rは、前置増幅器5に接続されている。
【0024】
シーケンス記憶回路8は、計算機7からの指令に従い、記憶しているパルスシーケンスに基づいて勾配磁場駆動回路3を操作し、前記マグネットアセンブリ1の勾配磁場コイル1gから勾配磁場を発生させると共に、ゲート変調回路9を操作し、RF発振回路10の搬送波出力信号を所定タイミング・所定包絡線形状のパルス状信号に変調し、それをRFパルスとしてRF電力増幅器4に加え、RF電力増幅器4でパワー増幅した後、前記マグネットアセンブリ1の送信コイル1tに印加し、所望の関心領域を選択励起する。
【0025】
前置増幅器5は、マグネットアセンブリ1の受信コイル1rで検出された被検体からのNMR信号を増幅し、位相検波器12に入力する。位相検波器12は、RF発振回路10の搬送波出力信号を参照信号とし、前置増幅器5からのNMR信号を位相検波して、A/D変換器11に与える。A/D変換器11は、位相検波後のアナログ信号をディジタルデータに変換して、計算機7に入力する。
【0026】
計算機7は、A/D変換器11からディジタルデータを読み込み、画像再構成演算を行って前記関心領域の複素数画像を生成する。また、複素数画像から水画像や脂肪画像などを生成する。さらに、計算機7は、操作卓13から入力された情報を受け取るなどの全体的な制御を受け持つ。
前記複素数画像や水画像や脂肪画像などは、表示装置6にて表示される。
【0027】
図2は、上記磁気共鳴撮像装置100による水または脂肪の位相識別処理を示すフロー図である。
ステップJ1では、水と脂肪が位相差90゜を持つように磁気共鳴を利用して撮像し、複素数画像を生成する。この撮像方法は、例えば「SMRM85 vol.1 pp.172-173:Zvi Paltiel, Amir Ban (Elscint MRI Center)」や特願平11−177658号に記載されているものを利用できる。
図4に、複素数画像G1を例示する。水領域wと脂肪領域f以外はノイズ領域であるとする。
【0028】
ステップJ2では、複素数画像をグリッド状に多数の区画に分割する。
図5に、グリッド状に多数の区画に分割した複素数画像G1を例示する。例えば複素数画像G1が256個×256個のデータ点からなるとき、32×32の区画に分割すると、1区画には8個×8個のデータ点が含まれることになる。
なお、もっと細かく分割したり、もっと粗く分割してもよい。好ましくは、1つの区画に64個以上、4096個以下のデータ点が含まれるように分割する。
【0029】
ステップJ3では、各区画で位相ヒストグラムを求める。すなわち、一つの区画に含まれるデータ点についての位相のヒストグラムを求める。
【0030】
ステップJ4では、まだ着目していない区画の中から一つの区画を選び、着目した区画とする。
ステップJ5では、着目した区画の位相ヒストグラムから水または脂肪の位相を識別可能か判定し、識別可能ならステップJ6へ進み、識別不可能ならステップJ10へ進む。
例えば、図6の着目した区画Saの場合、水領域wと脂肪領域fだけを含んでおり、その位相ヒストグラムは、図7に示すように、ノイズNは小さく、水の位相の第1ピークPwと脂肪の位相の第2ピークPfを見つけ易いものとなるので、水または脂肪の位相を識別可能と判定する。
一方、図8の着目した区画Sbの場合、ノイズ領域だけを含んでおり、その位相ヒストグラムは、図9に示すように、ノイズNが大きく、水の位相のピークや脂肪の位相のピークを見つけ難いものとなるので、水または脂肪の位相を識別不可能と判定する。
【0031】
図2に戻り、ステップJ6では、着目した区画の位相ヒストグラムから水または脂肪の位相を求める。例えば図7に示す位相ヒストグラムの場合、水の位相は“30゜”、脂肪の位相は“120゜”となる。
【0032】
ステップJ7では、未着目の区画が残っているなら前記ステップJ4に戻り、全ての区画について着目済みならステップJ20へ進む。
【0033】
ステップJ10では、着目した区画および着目した区画を1重に囲む周囲8区画の位相ヒストグラムを加算し、加算位相ヒストグラムを求める。
例えば、図10の着目した区画Sbの場合は、1重範囲B1の9個の区画の位相ヒストグラムを加算し、加算位相ヒストグラムを求める。
【0034】
ステップJ11では、加算位相ヒストグラムから水または脂肪の位相を識別可能か判定し、識別可能ならステップJ12へ進み、識別不可能なら図3のステップJ13へ進む。
例えば、図10の着目した区画Sbの場合、1重範囲B1に水領域wと脂肪領域fを含んでおり、加算位相ヒストグラムは、図11に示すように、水の位相の第1ピークPwと脂肪の位相の第2ピークPfを見つけ出せるものとなるので、水または脂肪の位相を識別可能と判定する。
一方、図12の着目した区画Scの場合、水領域wだけを含んでおり、その位相ヒストグラムは、図13に示すように、1つのピークしかないので、水の位相か脂肪の位相かを識別不可能であり、さらに1重範囲C1にも脂肪領域fを十分に含まないので、加算位相ヒストグラムは、図14に示すように、1つのピークしかないので、水の位相または脂肪の位相を識別不可能と判定する。
【0035】
図2に戻り、ステップJ12では、加算位相ヒストグラムから水または脂肪の位相を求める。例えば図11に示す加算位相ヒストグラムの場合、水の位相は“60゜”、脂肪の位相は“150゜”となる。
この後、前記ステップJ7に戻る。
【0036】
図3のステップJ13では、着目した区画および着目した区画を2重に囲む周囲24区画の位相ヒストグラムを加算し、加算位相ヒストグラムを求める。
例えば、図12の着目した区画Scの場合は、2重範囲C2の25個の区画の位相ヒストグラムを加算し、加算位相ヒストグラムを求める。
【0037】
ステップJ14では、加算位相ヒストグラムから水または脂肪の位相を識別可能か判定し、識別可能ならステップJ15へ進み、識別不可能ならステップJ16へ進む。
例えば、図12の着目した区画Scの場合、2重範囲C2に水領域wと脂肪領域fを含んでおり、加算位相ヒストグラムは、図15に示すように、水の位相の第1ピークPwと脂肪の位相の第2ピークPfを見つけ出せるものとなるので、水または脂肪の位相を識別可能と判定する。
一方、図16の着目した区画Sdの場合、2重範囲D2に脂肪領域fを含むが水領域wを含まないので、加算位相ヒストグラムは、図17に示すように、1つのピークしか現れないため、水の位相または脂肪の位相を識別不可能と判定する。
【0038】
ステップJ15では、加算位相ヒストグラムから水または脂肪の位相を求める。例えば図15に示す加算位相ヒストグラムの場合、水の位相は“−30゜”、脂肪の位相は“60゜”となる。
この後、前記ステップJ7に戻る。
【0039】
ステップJ16では、着目した区画を未取得の区画として記憶し、前記ステップJ7に戻る。
【0040】
図2のステップJ20では、未取得の区画が記憶されていないなら処理を終了し、記憶されているなら図3のステップJ21へ進む。
【0041】
図3のステップJ21では、まだ着目していない未取得の区画の中から一つの未取得の区画を選び、着目した未取得の区画とする。
ステップJ22では、水または脂肪の位相が既に求められた区画であって着目した未取得の区画に最も近い区画における水または脂肪の位相を基に着目した未取得の区画の水または脂肪の位相を求める。
例えば、図18に示すように、着目した未取得の区画Sdに対する2重範囲D2に存在し且つ水または脂肪の位相を取得済みの区画Se〜Sjにおける水または脂肪の位相を平均して、着目した未取得の区画Sdにおける水または脂肪の位相を求める。
ステップJ23では、未着目の未取得の区画が残っていないなら処理を終了し、残っているなら前記ステップJ21に戻る。
【0042】
上記説明では、範囲(B1,C1,C2)を等方向性に拡大したが、異方向性に拡大してもよい。例えば、静磁場不均一が等方向性なら範囲も等方向性に拡大し、静磁場不均一が異方向性なら範囲も異方向性に拡大する(静磁場不均一が大きい方向に大きく拡大する)とよい。
【0043】
図19は、上記磁気共鳴撮像装置100による水画像および脂肪画像生成処理を示すフロー図である。
ステップR1では、複素数画像の各データ点の位相から対応する区画の水の位相を減算する。
ステップR2では、水の位相を減算後の複素数画像の各データ点の実部から水画像を生成する。
ステップR3では、水の位相を減算後の複素数画像の各データ点の虚部から脂肪画像を生成する。
そして、処理を終了する。
【0044】
図20の(a)に複素数画像G1から生成した水画像Gwを例示する。また、、図20の(b)に複素数画像G1から生成した脂肪画像Gfを例示する。
【0045】
−第2の実施形態−
第2の実施形態は、上記第1の実施形態を簡単化した実施形態である。
【0046】
図21は、第2の実施形態にかかる水または脂肪の位相識別処理を示すフロー図である。
ステップK1では、水と脂肪が位相差90゜を持つように磁気共鳴を利用して撮像し、複素数画像を生成する。
ステップK2では、複素数画像をグリッド状に多数の区画に分割する。
ステップK3では、各区画で位相ヒストグラムを求める。
【0047】
ステップK4では、まだ着目していない区画の中から一つの区画を選び、着目した区画とする。
【0048】
ステップK5では、着目した区画の位相ヒストグラムから水または脂肪の位相を識別可能か判定し、識別可能ならステップK6へ進み、識別不可能ならステップK7へ進む。
ステップK6では、着目した区画の位相ヒストグラムから水または脂肪の位相を求める。そして、ステップK8へ進む。
【0049】
ステップK7では、着目した区画を未取得の区画として記憶し、ステップK8へ進む。
【0050】
ステップK8では、未着目の区画が残っているなら前記ステップK4に戻り、全ての区画について着目済みならステップK10へ進む。
【0051】
ステップK10では、未取得の区画が記憶されていないなら処理を終了し、記憶されているならステップK11へ進む。
【0052】
ステップK11では、まだ着目していない未取得の区画の中から一つの未取得の区画を選び、着目した未取得の区画とする。
ステップK12では、水または脂肪の位相が既に求められた区画であって着目した未取得の区画に最も近い区画における水または脂肪の位相を基に着目した未取得の区画の水または脂肪の位相を求める。
ステップK13では、未着目の未取得の区画が残っていないなら処理を終了し、残っているなら前記ステップK11に戻る。
【0053】
【発明の効果】
本発明の水または脂肪の位相識別方法、画像生成方法および磁気共鳴撮像装置によれば、複素数画像中の独立した信号領域を抽出する処理を行うことなく、水または脂肪の位相を好適に識別でき、水画像または脂肪画像を生成できようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る磁気共鳴撮像装置を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る水または脂肪の位相識別処理を示すフロー図である。
【図3】図2の続きのフロー図である。
【図4】複素数画像の例示図である。
【図5】複素数画像をグリッド状に分割した区画の例示図である。
【図6】自己の位相ヒストグラムから水と脂肪の位相を識別可能な区画の例示図である。
【図7】図6に示す区画の位相ヒストグラムの例示図である。
【図8】自己の位相ヒストグラムから水と脂肪の位相を識別不可能な区画の例示図である。
【図9】図8に示す区画の位相ヒストグラムの例示図である。
【図10】1重範囲の加算位相ヒストグラムから水と脂肪の位相を識別可能な区画の例示図である。
【図11】図10に示す1重範囲の加算位相ヒストグラムの例示図である。
【図12】2重範囲の加算位相ヒストグラムから水と脂肪の位相を識別可能な区画の例示図である。
【図13】図12に示す区画の位相ヒストグラムの例示図である。
【図14】図12に示す1重範囲の加算位相ヒストグラムの例示図である。
【図15】図12に示す2重範囲の加算位相ヒストグラムの例示図である。
【図16】2重範囲の加算位相ヒストグラムからでも水と脂肪の位相を識別不可能な区画の例示図である。
【図17】図16に示す2重範囲の加算位相ヒストグラムの例示図である。
【図18】未取得の区画の水または脂肪の位相を識別するための近傍の区画の例示図である。
【図19】本発明の一実施形態に係る水画像および脂肪画像生成処理を示すフロー図である。
【図20】水画像および脂肪画像の例示図である。
【図21】本発明の第2の実施形態に係る水または脂肪の位相識別処理を示すフロー図である。
【符号の説明】
100 磁気共鳴撮像装置
1 マグネットアセンブリ
1g 勾配磁場コイル
1t 送信コイル
1p 永久磁石
1r 受信コイル
6 表示装置
7 計算機
8 シーケンス記憶回路

Claims (9)

  1. 水と脂肪が位相差を持つように磁気共鳴を利用して複素数画像を撮像する撮像手段と、
    前記複素数画像を多数の区画に分割し各区画で位相ヒストグラムを求めるヒストグラム算出手段と、
    着目する区画の位相ヒストグラムから水または脂肪の位相を識別可能か識別不可能かを判定する第1の判定手段と、
    識別可能の場合は着目する区画の位相ヒストグラムから該区画における水または脂肪の位相を求める第1の位相取得手段と、
    識別不可能の場合は着目する区画の近傍の所定範囲の区画の位相ヒストグラムを加算して加算位相ヒストグラムを求める加算位相ヒストグラム手段と、
    前記加算位相ヒストグラムから水または脂肪の位相を求める第2の位相取得手段とを具備したことを特徴とする磁気共鳴撮像装置。
  2. 水と脂肪が位相差を持つように磁気共鳴を利用して複素数画像を撮像する撮像手段と、
    前記複素数画像を多数の区画に分割し各区画で位相ヒストグラムを求めるヒストグラム算出手段と、
    着目する区画の位相ヒストグラムから水または脂肪の位相を識別可能か識別不可能かを判定する第1の判定手段と、
    識別可能の場合は着目する区画の位相ヒストグラムから該区画における水または脂肪の位相を求める第1の位相取得手段と、
    識別不可能の場合は着目する区画の近傍の所定範囲の区画の位相ヒストグラムを加算して加算位相ヒストグラムを求める加算位相ヒストグラム取得手段と、
    前記位相ヒストグラムから水または脂肪の位相を識別可能か識別不可能かを判定する第2の判定手段と、
    識別可能の場合は前記加算位相ヒストグラムから前記区画における水または脂肪の位相を求める第2の位相取得手段と、
    識別不可能の場合は前記所定範囲を段階的に広げながら前記処理を繰り返して前記区画における水または脂肪の位相を求める反復手段とを具備したことを特徴とする磁気共鳴撮像装置。
  3. 請求項2に記載の磁気共鳴撮像装置において、
    前記反復手段は、前記所定範囲を前記限界範囲まで広げても識別不可能であった場合は、前記処理の繰り返しを止めると共に、水または脂肪の位相を求めることが出来た他の区画の水または脂肪の位相に基づいて着目する区画における水または脂肪の位相を求める第3の位相取得手段を具備したことを特徴とする磁気共鳴撮像装置。
  4. 請求項2または請求項3に記載の磁気共鳴撮像装置において、
    前記所定範囲は、i(=1,2,・・・)番目に広げた時は着目する区画を他の区画がi重に囲む範囲であることを特徴とする磁気共鳴撮像装置。
  5. 水と脂肪が位相差を持つように磁気共鳴を利用して複素数画像を撮像する撮像手段と、
    前記複素数画像を多数の区画に分割し各区画で位相ヒストグラムを求めるヒストグラム算出手段と、
    着目する区画の位相ヒストグラムから水または脂肪の位相を識別可能か識別不可能かを判定する第1の判定手段と、
    識別可能の場合は着目する区画の位相ヒストグラムから該区画における水または脂肪の位相を求める第1の位相取得手段と、
    識別不可能の場合は着目する区画の近傍の区画であって水または脂肪の位相に基づいて着目する区画における水または脂肪の位相を求める第3の位相取得手段とを具備したことを特徴とする磁気共鳴撮像装置。
  6. 請求項1から請求項5のいずれかに記載の磁気共鳴撮像装置において、
    前記複素数画像をグリッド状に分割することを特徴とする磁気共鳴撮像装置。
  7. 請求項1から請求項6のいずれかに記載の磁気共鳴撮像装置において、
    一つの区画に64個以上のデータ点が含まれるように分割することを特徴とする磁気共鳴撮像装置。
  8. 請求項1から請求項7のいずれかに記載の磁気共鳴撮像装置において、
    前記撮像手段は、水と脂肪が90°の位相差を持つように磁気共鳴を利用して複素数画像を撮像し、
    前記第1の位相取得手段、第2の位相取得手段又は第3の位相取得手段は、前記複素数画像を多数の区画に分割し各区画における水の位相を求め、
    前記複素数画像の各データ点から対応する区画の水の位相を減算した後の複素数画像の実部より水画像を得る水画像取得手段を具備したことを特徴とする磁気共鳴撮像装置。
  9. 請求項1から請求項7のいずれかに記載の磁気共鳴撮像装置において、
    前記撮像手段は、水と脂肪が90°の位相差を持つように磁気共鳴を利用して複素数画像を撮像し、
    前記第1の位相取得手段、第2の位相取得手段又は第3の位相取得手段は、前記複素数画像を多数の区画に分割し各区画における水の位相を求め、
    前記複素数画像の各データ点から対応する区画の水の位相を減算した後の複素数画像の虚部より脂肪画像を得る脂肪画像取得手段を具備したことを特徴とする磁気共鳴撮像装置。
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