JP3795553B2 - 新規4,5−ビス(2−置換エテニル)−1,2−ジ置換ベンゼン、その製造方法、及び紫外線吸収剤 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、新規な4,5-ビス(2-置換エテニル)-1,2-ジ置換ベンゼン、その製造方法およびこの化合物を有効成分とする紫外線吸収剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
太陽からの放射線のうち、約240〜約400nmの範囲の波長を有する電磁波を一般に紫外線という。紫外線はその波長領域によって3帯域に分けられる。即ちサンタン波長と言われる320〜400nmに長波長の紫外線(UV-A)、サンバーン波長と言われる280〜320nmの紫外線(UV-B)、および地球のオゾン層で吸収され、地表にはほとんど到達しない240〜280nmの紫外線(UV-C)である。紫外線は強いエネルギーを持ち、これを受けた化合物は分解または不安定化する。したがって、紫外線は多くの商業製品の変退色を引き起こし、その価値を低下させる原因となっている。
【0003】
紫外線吸収剤は、日光や蛍光灯による変退色の少ない耐光性(耐候性)材料を提供するために、繊維、塗料、プラスチックのような合成高分子材料、感熱記録シートのような記録シートおよびインキや電子写真用トナーなどの情報記録材料、または液晶表示材料等に添加され、また、紫外線や放射線から人体を保護するために、化粧品、プラスチックレンズ、溶接マスクおよびフィルタ等に用いられてきた。また近年では、昆虫の飛来を防止するために蛍光灯やショウウインドなどのコーティング材料、積層フィルムにも使用されている。
【0004】
そのような紫外線吸収剤としては、従来から、例えば、サリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、ヒダントイン誘導体、およびヒンダードアミン系(光安定剤)の化合物が知られている。
【0005】
しかしながら、これらの多くは波長290〜380nmの領域内の紫外線吸収性を示すものであり、波長280〜420nmの範囲の吸収性が不充分である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の問題を解決するものであり、その目的とするところは、波長280〜420nmの範囲に充分な吸収性を有する化合物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、式
【0008】
【化4】
【0009】
[式中、Xは、それぞれ独立してハロゲン原子またはシアノ基であり、Rは非置換もしくは置換フェニル基、または炭素数3〜20の非置換もしくは置換アルキル基であり、そしてnは0または1である。]
で表わされる4,5-ビス(2-置換エテニル)-1,2-ジ置換ベンゼンを提供するものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0010】
本発明の4,5-ビス(2-置換エテニル)-1,2-ジ置換ベンゼンは、式(I)で示す構造を有する化合物である。
【0011】
Xは、それぞれ独立してフッ素、塩素、臭素およびヨウ素のようなハロゲン原子またはシアノ基である。好ましくは臭素またはシアノ基である。Xは、合成の便宜上同一であることが好ましいが異なるものでもよい。
【0012】
Rは、非置換もしくは置換フェニル基、または炭素数3〜20の非置換もしくは置換アルキル基である。
【0013】
Rが非置換もしくは置換フェニル基である場合、フェニル基を置換するのに好ましい置換基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、アミル、イソアミル、ヘキシル、ヘプチル、2-エチルヘキシル、オクチルおよびt-オクチル基のような炭素数1〜8のアルキル基;塩素およびフッ素のようなハロゲン原子;およびメトキシおよびエトキシのような炭素数1〜4のアルコキシ基等が挙げられる。
【0014】
Rが非置換もしくは置換アルキル基である場合、好ましい非置換アルキル基としては、アミル、イソアミル、ヘキシル、ヘプチル、2-エチルヘキシル、オクチルおよびt-オクチルのような炭素数5〜8の直鎖又は分岐鎖アルキル基が挙げられる。アルキル基を置換するのに好ましい置換基としては、塩素およびフッ素のようなハロゲン原子;およびメトキシおよびエトキシのような炭素数1〜4のアルコキシ基等が挙げられる。
【0015】
Rは、ベンゼン環の4位及び5位に置換したエテニル基もしくは1,3-ブタジエニル基の末端に結合して2-置換エテニル基を形成する。2-置換エテニル基の具体例には、フェニルエテニル基、ヘプチルエテニル基およびスチリルエテニル基等が挙げられる。
【0016】
本発明の4,5-ビス(2-置換エテニル)-1,2-ジ置換ベンゼンは、当業者に周知の種々の方法で合成可能である。高収率で合成可能な特に好ましい製造方法の例には、式
【0017】
【化5】
【0018】
[式中、Xは上記と同意義であり、R'は、それぞれ独立して炭素数1〜4の直鎖もしくは分枝鎖アルキル基である。]
で表わされる4,5-ビス(ジアルキルホスホリルメチル)-1,2-ジ置換ベンゼンと、式
【0019】
【化6】
【0020】
[式中、Rおよびnは上記と同意義である。]
で表わされるアルデヒドとを、エーテル系有機溶媒中、アルコラートの存在下で反応させる工程を包含する方法が挙げられる。
【0021】
本発明の4,5-ビス(2-置換エテニル)-1,2-ジ置換ベンゼン(I)の製造方法において出発物質として用いる4,5-ビス(ジアルキルホスホリルメチル)-1,2-ジ置換ベンゼン(II)の好ましい具体例は、4,5-ビス(ジアルキルホスホリルメチル)-1,2-ジブロモベンゼン及び4,5-ビス(ジアルキルホスホリルメチル)-1,2-ジシアノベンゼンである。
【0022】
4,5-ビス(ジアルキルホスホリルメチル)-1,2-ジブロモベンゼンの合成法を以下に説明する。
【0023】
まず、o-キシレンの4位および5位を臭素化して4,5-ジブロモ-o-キシレンを得る。この反応は、o-キシレンをI2/Fe粉触媒の存在及び窒素気流下に冷却し、ここに臭素を滴下させて行う。反応の詳細は、例えば、M.ハナク(Hannack)ら、「合成(Synthesis)」、1987年、第703頁に記載されている。
【0024】
次に、4,5-ジブロモ-o-キシレンの1位および2位のメチル基を臭素化してα,α',4,5-テトラブロモ-o-キシレンを得る。この反応は、m-クロロ過安息香酸および四塩化炭素溶媒中で、4,5-ジブロモ-o-キシレンとN-ブロモスクシン酸イミド(NBS)とを水銀灯照射して行う。詳細は、例えば、「合成」、1993年、第4巻、第387頁 に記載されている。
【0025】
次に、α,α',4,5-テトラブロモ-o-キシレンの1位および2位のブロモメチレン基をリン酸エステル化することにより4,5-ビス(ジアルキルホスホリルメチル)-1,2-ジブロモベンゼンを得る。この反応は、α,α',4,5-テトラブロモ-o-キシレンとトリアルキルホスファイト(例えばトリエチルホスファイト、トリメチルホスファイト)とを窒素雰囲気で加熱して行われる。
【0026】
尚、本発明の方法における出発物質として、臭素以外のハロゲンを有する4,5-ビス(ジアルキルホスホリルメチル)-1,2-ジ置換ベンゼンを合成する場合は、o-キシレンの4位および5位を臭素以外のハロゲンで置換すればよい。このような置換方法は当業者に周知である。
【0027】
他方、出発物質として4,5-ビス(ジアルキルホスホリルメチル)-1,2-ジシアノベンゼンを合成する場合は、まず、上述の方法により4,5-ジブロモ-o-キシレンを得る。次いで、4,5-ジブロモ-o-キシレンの4位および5位の臭素をシアノ基で置換して4,5-ジシアノ-o-キシレンを得る。この反応は、4,5-ジブロモ-o-キシレンとシアン化剤(例えば、シアン化銅)とを、DMFのような有機溶媒中、窒素雰囲気で加熱して行われる。詳細は、例えば、M.ハナクら、Recl. Trav. Chim. Pays-Bas、1986年、第105号、第427頁に記載されている。
【0028】
次いで、上述と同様にして、4,5-ジシアノ-o-キシレンの1位および2位のメチル基を臭素化してα,α'-ジブロモ-4,5-ジシアノ-o-キシレンを得、これをトリアルキルホスファイト反応させて、4,5-ビス(ジアルキルホスホリルメチル)-1,2-ジシアノベンゼンが得られる。
【0029】
本発明の方法では、この出発物質4,5-ビス(ジアルキルホスホリルメチル)-1,2-ジ置換ベンゼン(II)をアルデヒド(III)と反応させる。
【0030】
好ましいアルデヒドには、ベンズアルデヒド、o-,m-,p-アニスアルデヒド、2,3-ジメトキシベンズアルデヒド、3,4,5-トリメトキシベンズアルデヒド、o-,m-,p-エトキシベンズアルデヒド、o-,m-,p-トルアルデヒド、p-(iso-プロピル)ベンズアルデヒド、o-,m-,p-クロロベンズアルデヒド、o-,m-,p-クロロトルアルデヒド、p-フルオロベンズアルデヒドおよびp-トリフルオロメチルベンズアルデヒドのような芳香族アルデヒド;ブチルアルデヒド、アミルアルデヒドおよびヘプチルアルデヒド、オクチルアルデヒド(「オクタナール」とも言う。)及びドデシルアルデヒドのような脂肪族アルキルアルデヒド;およびシンナムアルデヒド等が例示できる。好ましくは、ベンズアルデヒド、アニスアルデヒド、オクタナール及びシンナムアルデヒドである。
【0031】
この反応はエーテル系溶媒(例えばTHFのような環状エーテル、エチルエーテルのようなアルキルエーテル)中、アルコラート(例えば、27%メチラート)の存在下で加熱して行われる。この反応は、一般に、ウィッティッヒ-ホーナー-エモンズ(Wittig-Horner-Emonds)反応と呼ばれる。
【0032】
上述の本発明の方法によれば、式(I)において種々の置換基Xを有する4,5-ビス(2-置換エテニル)-1,2-ジ置換ベンゼンを合成できる。出発物質として異なる置換基を有する4,5-ビス(ジアルキルホスホリルメチル)-1,2-ジ置換ベンゼンを用いればそれぞれ対応する置換基を有する4,5-ビス(2-置換エテニル)-1,2-ジ置換ベンゼンが得られるからである。
【0033】
例えば、4,5-ビス(ジアルキルホスホリルメチル)-1,2-ジブロモベンゼンを出発物質として用いると、4,5-ビス(2-置換エテニル)-1,2-ジブロモベンゼンが得られる。また、4,5-ビス(ジアルキルホスホリルメチル)-1,2-ジシアノベンゼンを出発物質として用いると、4,5-ビス(2-置換エテニル)-1,2-ジシアノベンゼンが得られる。
【0034】
式(I)において種々の置換基Xを有する4,5-ビス(2-置換エテニル)-1,2-ジ置換ベンゼンを合成する他の方法として、特定の置換基を有する本発明の4,5-ビス(2-置換エテニル)-1,2-ジ置換ベンゼンを合成し、この置換基を他の置換基に変換する方法もある。この場合、特定の置換基を有する本発明の4,5-ビス(2-置換エテニル)-1,2-ジ置換ベンゼンは、他の本発明の化合物を調製するための中間体として用いる。
【0035】
例えば、本発明の化合物である4,5-ビス(2-置換エテニル)-1,2-ジブロモベンゼンは、式
【0036】
【化7】
【0037】
[式中Rおよびnは上記と同意義である。]
で示すように、ジメチルホルムアミド(DMF)のような溶媒中でシアン化剤(例えば、シアン化銅)と反応させて、その1,2-位のジブロモ基がシアノ基に変換される。当業者に周知の方法により、4,5-ビス(2-置換エテニル)-1,2-ジブロモベンゼンの1,2-位のジブロモ基を他のハロゲンに変換することもできる。
【0038】
式(I)で示す本発明の4,5-ビス(2-置換エテニル)-1,2-ジ置換ベンゼンにおいて、-Xで表わされる1,2-位置換基および-CH=CH-(CH=CH)n-Rで表わされる4,5-位置換基は、本発明の化合物の紫外線吸収特性に影響を及ぼす。分子内の共役系が、両者の相互作用によって増幅されうるからである。
【0039】
例えば、Xとしてシアノ基を有する化合物は、Xが共にハロゲン原子、例えば臭素であるものに比べて、長波長域に紫外線吸収を示す。また、nが1である化合物は、nが0であるものよりも長波長域に紫外線吸収を示す。
【0040】
より具体的には、Xが共にシアノ基であり、nが1である本発明の化合物は、長波長紫外線領域であるUV-A領域に最大吸収波長を有する。Xの一方がシアノ基であり、nが1である本発明の化合物は、UV-B乃至UV-Aの領域に最大吸収波長を有する。そして、nが0である本発明の化合物は、Rが非置換もしくは置換フェニル基である場合はUV-B乃至UV-Aの領域に、そしてRが非置換もしくは置換アルキル基である場合はUV-Cの領域に最大吸収波長を有する。
【0041】
1,2-位の置換基及び4,5-位の置換基を適当に組合せることで、本発明の4,5-ビス(2-置換エテニル)-1,2-ジ置換ベンゼンに所望の紫外線吸収特性を付与することができ、その結果、280〜420nmの範囲に充分な吸収性を有する化合物を提供できる。
【0042】
本発明の4,5-ビス(2-置換エテニル)-1,2-ジ置換ベンゼンは、紫外線波長領域に分子吸光係数εの大きい吸収ピークを有する。また、本発明の4,5-ビス(2-置換エテニル)-1,2-ジ置換ベンゼンは、各種の紫外線吸収用途に使用される溶媒、樹脂、ワックス等に一般に良分散性もしくは可溶性を示し、そして各種の有機物質、光および熱に対して優れた安定性を有する。
【0043】
したがって、本発明の化合物は、繊維、塗料およびプラスチックのような合成高分子材料、感熱記録シートのような記録シート、およびインキや電子写真用トナーのような情報記録材料、液晶表示材料、化粧品、プラスチックレンズ、溶接マスクおよびフィルタ、および蛍光灯やショウウインドなどのコーティング材料のための紫外線吸収剤として有用である。
【0044】
本発明の紫外線吸収剤は、粉末、水および有機溶媒での分散体もしくは溶液、又は樹脂溶液として使用される。
【0045】
本発明の紫外線吸収剤が微分散もしくは溶解される溶媒としては、トルエン、キシレンおよびシクロヘキサンのような炭化水素、塩化メチレンおよび塩化エチレンのようなハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノールのようなアルコール、エチレングリコールモノエチルエーテルのようなセロソルブ、酢酸エチルのようなエステル、およびメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトンが例示できる。これらの溶媒は、塗料などの各種用途の樹脂に単独、好ましくは混合して用いられる。
【0046】
本発明の紫外線吸収剤を用い得る樹脂としては、塗料用の樹脂(例えば、アクリル系、塩化ビニル系、ポリオレフィン系、ポリエステル系およびポリアミド系の熱可塑性樹脂、およびフェノール系、エポキシ系、およびポリエステル系の熱硬化性樹脂)、塗膜形成用樹脂(例えば、酢酸セルロースのような天然樹脂またはエチレンオキサイド樹脂、ブチラール樹脂、ビニル樹脂、アルキッド樹脂およびアクリル樹脂)、熱転写用バインダー樹脂(例えば、ポリビニルブチラール、エチルヒドロキシエチルセルロース、スチレン-マレイン酸共重合体、メチルメタクリレート樹脂、ポリエステル樹脂およびワックス)、電子写真用トナーの結着樹脂(例えば、スチレン樹脂、スチレン-アクリル樹脂、スチレン-ブタジエン樹脂、スチレン-ビニルメチルエーテル樹脂およびポリエステル)、プラスッチクレンズ用のアクリル樹脂、ポリカーボネート、アリルジグリコールカーボネート樹脂、および成形用プラスチックおよびプラスチックフィルム用樹脂が挙げられる。その他高分子液晶等にも好適に用いることができる。
【0047】
本発明の紫外線吸収剤を上記の各種用途の組成物に配合する場合に、配合量は所望の程度の安定化もしくは光吸収を行うに充分な量であれば特に限定されない。一般に、本発明の紫外線吸収剤は、有機物質の固体含有量当たり0.001〜2%の量で使用し得る。
【0048】
ディッピング法で染色性プラスチック基板などに染着する場合においては表面染着と見做せるので、実質的には極く微量の使用であっても効果が得られる。2重量%を越えると分散不良、有機着色物質や樹脂組成物の色障害など発生して好ましくない。また、吸収効果についても2重量%以上添加しても適性量に比べて大きな差はなく、実用上コストが高くなるため好ましくない。
【0049】
本発明の紫外線吸収剤は、従来よく知られたUV-Bの紫外線吸収剤と悪影響なく併用し得る。さらに、本発明の紫外線吸収剤には、用途および目的に応じて、蛍光増白剤、およびラジカル捕捉剤などを添加することができる。
【0050】
また、本発明の化合物である4,5-ビス(2-置換エテニル)-1,2-ジシアノベンゼンは、有機溶剤に対して高い溶解性を示す高溶解性フタロシアニンの原料として有用である。高溶解性フタロシアニンは、情報記録などオプトエレクトロニクス関連に重要な役割を果たす近赤外吸収材料及びそれを用いて作製される光カードのような光記録媒体として近年注目されている化合物である。
【0051】
例えば、4,5-ビス(2-フェニルエテニル)-1,2-ジシアノベンゼンを縮合することにより、光学特性に優れたフタロシアニンが高収率で得られる。
【0052】
本発明の化合物の非限定的な例を以下に列挙する。
【0053】
【化8】
【0054】
【化9】
【0055】
【化10】
【0056】
【化11】
【0057】
【化12】
【0058】
【化13】
【0059】
【化14】
【0060】
【化15】
【0061】
【化16】
【0062】
【化17】
【0063】
【化18】
【0064】
【化19】
【0065】
【化20】
【0066】
【化21】
【0067】
【化22】
【0068】
【化23】
【0069】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0070】
実施例1
4,5-ビス(ジエチルホスホリルメチル)-1,2-ジブロモベンゼン[C16H25O6Br2P2=535.8]の合成
α,α',4,5-テトラブロモ-o-キシレン21.1g(50mmol)、トリエチルホスファイト17.2ml(100mmol)を3口フラスコに仕込み、窒素雰囲気下で徐々に加熱し、1時間をかけて150℃にした。この間に副成する塩化エチルを、反応系外へ除去した。さらに150℃で1時間加熱撹拌を行った後、反応混合物を氷/水バスを用いて0〜5℃に冷却して水30mlを加えることにより反応を完結させた。
【0071】
得られた反応混合物から有機物を50mlのエーテルを用いて3回抽出し、エーテル層を水と飽和食塩水で洗浄して、無水硫酸ナトリウム上で乾燥後、溶媒を留去して黄色固体を得た。この固体を熱ヘキサン100mlを用いて洗浄して精製した。以下の分析結果からこのものは、式
【0072】
【化24】
【0073】
で示す、4,5-ビス(ジエチルホスホリルメチル)-1,2-ジブロモベンゼンであることを確認した。収量は22.0g(41.1mmol)、収率は82.1%であった。
【0074】
【表1】
1H-NMR(CDCl3,89.5MHz)
δ=1.23(t, 12H, JHH=7.0MHz)
δ=3.29(d, 4H, JHP=20.4Hz)
δ=4.00(dq, 8H, JHH=7.0Hz, JHP=7.0Hz)
δ=7.46(s, 2H)
13C-NMR(CDCl3,22.4MHz)
δ=16.2,30.4(d,Jcp=138.3Hz),62.1,122.8,132.3,135.8
IR(KBr,cm-1)
ν=2978,2915,1464(m),1244,1047,1016,958,935(s),530(m)
MS:m/z=536
m.p.=84-85℃
【0075】
実施例2
4,5-ビス(2-フェニルエテニル)-1,2-ジブロモベンゼン(2a)[C22H16Br2=439.8]の合成
実施例1で得た4,5-ビス(ジエチルホスホリルメチル)-1,2-ジブロモベンゼン5.36g(10mmol)とテトラヒドロフラン(THF)30ml(100mmol)との混合液にナトリウムメチラート5.8g(28%メタノール溶液、30mmol)を-15〜-20℃で加え、1時間この温度で撹拌した。次いで、この混合溶液にベンズアルデヒド2.3ml(22mmol)を-15〜-20℃でゆっくり加え、室温で5時間撹拌した。反応を完了後、反応溶液を飽和塩化アンモニウム水溶液(sat.NH4Cl)30mlを用いて冷却した。
【0076】
得られた反応混合物から生成物を50mlのエーテルを用いて3回抽出し、得られたエーテル層を水、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水の順で洗浄した。引続き無水硫酸ナトリウム上で乾燥後、溶媒を留去して固体を得、この固体を熱ヘキサン(100ml)中ですりつぶして、精製した。以下の分析結果からこのものは、式
【0077】
【化25】
【0078】
で示す、4,5-ビス(2-フェニルエテニル)-1,2-ジブロモベンゼンであることを確認した。収量は3.93g、収率は89.4%であった。
【0079】
【表2】
1H-NMR(CDCl3, 89.5MHz)
δ=6.85(m, 16H)
13C-NMR(CDCl3, 22.4MHz)
δ=123.5,124.1,126.8,128.3,128.8,131.1,131.3,132.8,136.6,136.7
IR(KBr,cm-1)
ν=3037,3021,1630,1599,1576,1495,1456,1122,960,951,918,895,746,685,
509
m.p.=118.5-120℃
【0080】
表9および図1に、得られた化合物の紫外線吸収特性を示す。尚、吸収スペクトルの測定は、メタノール溶媒を用いて行った。
【0081】
実施例3
4,5-ビス(2-p-メトキシフェニルエテニル)-1,2-ジブロモベンゼン(2b)[C24H20O2Br2=499.8]の合成
実施例2で用いた4,5-ビス(ジエチルホスホリルメチル)-1,2-ジブロモベンゼン5.36g(10mmol)及びベンズアルデヒド2.3ml(22mmol)を、4,5-ビス(ジエチルホスホリルメチル)-1,2-ジブロモベンゼン1.07g(2.0mmol)及びアニスアルデヒド0.47ml(4.4mmol)に代え、実施例2と全く同様な操作を施し精製した。以下の分析結果から、得られたものは、式
【0082】
【化26】
【0083】
で示す、4,5-ビス(2-p-メトキシフェニルエテニル)-1,2-ジブロモベンゼンであることを確認した。収量は0.8g(1.6mmol)、収率は80.0%であった。
【0084】
【表3】
1H-NMR(CDCl3, 89.5MHz)
δ=3.83(s, 6H),6.85-7.76(m,14H)
13C-NMR(CDCl3, 22.4MHz)
δ=55.2,55.5,114.3,122.1,123.0,128.1,130.0,130.9,131.1,132.2,136.7,
159.8
IR(KBr,cm-1)
ν=3035,3002,2951,2929,2906,2833,1604,1576,1510,1458,1282,1252,1174,
1120,1031,957,812,536
m.p.=118-119℃
【0085】
表9および図2に、得られた化合物の紫外線吸収特性を示す。尚、吸収スペクトルの測定は、メタノール溶媒を用いて行った。
【0086】
実施例4
4,5-ビス(2-スチリルエテニル)-1,2-ジブロモベンゼン(2c)[C26H20Br2=491.8]の合成
実施例2で用いた4,5-ビス(ジエチルホスホリルメチル)-1,2-ジブロモベンゼン5.36g(10mmol)及びベンズアルデヒド2.3ml(22mmol)を、4,5-ビス(ジエチルホスホリルメチル)-1,2-ジブロモベンゼン10.7g(20.0mmol)及びシンナムアルデヒド5.8ml(44mmol)に代え、実施例2と全く同様な操作を施し精製した。以下の分析結果から、得られたものは、式
【0087】
【化27】
【0088】
で示す、4,5-ビス(2-スチリルエテニル)-1,2-ジブロモベンゼンであることを確認した。収量は8.6g(17.5mmol)、収率は87.4%であった。
【0089】
【表4】
1H-NMR(CDCl3, 89.5MHz)
δ=6.76-7.77(m,20H)
13C-NMR(CDCl3, 22.4MHz)
δ=123.4,126.6,127.6,128.0,128.7,130.8,133.0,134.6,136.1,137.0
IR(KBr,cm-1)
ν=3022,1606,1491,1444,1363,1219,1122,982,922,889,744,687,513,476
m.p.=166-167℃
【0090】
表9および図3に、得られた化合物の紫外線吸収特性を示す。尚、吸収スペクトルの測定は、メタノール溶媒を用いて行った。
【0091】
実施例5
4,5-ビス(2-ヘプチルエテニル)-1,2-ジブロモベンゼン(2d)[C24H36Br2=483.8]の合成
実施例2で用いた4,5-ビス(ジエチルホスホリルメチル)-1,2-ジブロモベンゼン5.36g(10mmol)及びベンズアルデヒド2.3ml(22mmol)を、4,5-ビス(ジエチルホスホリルメチル)-1,2-ジブロモベンゼン10.7g(20.0mmol)及びオクチルアルデヒド5.63ml(44mmol)に代え、実施例2と全く同様な操作を施し、クロマト精製した。以下の分析結果から、得られたものは、式
【0092】
【化28】
【0093】
で示す、4,5-ビス(2-ヘプチルエテニル)-1,2-ジブロモベンゼンであることを確認した。収量は3.4g(7.02mmol)、収率は36.2%であった。
【0094】
【表5】
1H-NMR(CDCl3, 89.5MHz)
δ=0.86(t,6H,JH-H=5,9Hz),1.31(br-s,20H),2.16(m,4H),5.94-6.51(m,4H),
7.35-7.66(m,2H)
13C-NMR(CDCl3, 22.4MHz)
δ=14.1,22.7,29.2,31.9,33.3,121.7,122.5,122.6,122.8,125.8,126.0,
130.1,130.4,131.0,131.2,134.0,135.0,136.1,136.1,136.5,136.7
IR(KBr,cm-1)
ν=2956,2925,2854,1647,1624,1456,1377,1358,1119,962,918,891,723,658
MS:m/z=484
m.p.=N/A
【0095】
表9および図4に、得られた化合物の紫外線吸収特性を示す。尚、吸収スペクトルの測定は、メタノール溶媒を用いて行った。
【0096】
実施例6
4,5-ビス(2-フェニルエテニル)-1,2-ジシアノベンゼン(3a)[C24H16N2=332.0]の合成
4,5-ビス(2-フェニルエテニル)-1,2-ジブロモベンゼン(2a)2.64g(5.96mmol)とシアン化銅1.62g(18mmol)との混合物をDMF中、8時間還流した。反応混合物を冷却後、濃いアンモニア水(conc.NH4OH)100mlに投入して、水蒸気を通して12時間バブルした。反応物を濾過してクロロホルム50mlを用いて3回抽出した。得られた有機層を薄いアンモニア水で洗浄し、次いで水洗し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥後、溶媒を留去して固体を得た。この固体を熱ヘキサン中ですりつぶして精製した。以下の分析結果からこのものは、式
【0097】
【化29】
【0098】
で示す、4,5-ビス(2-フェニルエテニル)フタロニトリルであることを確認した。収量は1.12g、収率は56.6%であった。
【0099】
【表6】
1H-NMR(CDCl3, 89.5MHz)
δ=7.01-7.96(m,16H)
13C-NMR(CDCl3, 22.4MHz)
δ=113.5,115.6,122.7,127.2,129.0,129.4,131.6,135.8,136.4,140.6
IR(KBr,cm-1)
ν=3059,3026,2229,1624,1589,1576,1529,1496,1448,958,748,690,515
m.p.=183-184℃
【0100】
実施例7
4,5-ビス(2-p-メトキシフェニルエテニル)フタロニトリル(3b)[C26H24O2N2=396]の合成 4,5-ビス(2-p-メトキシフェニルエテニル)-1,2-ジブロモベンゼン(2b)0.40g(0.8mmol)とシアン化銅0.25g(2.4mmol)との混合物をDMF中、8時間還流した。反応混合物を冷却後、濃いアンモニア水(conc.NH4OH)50mlに投入して、水蒸気を通して12時間バブルした。反応物を濾過して塩化メチレン50mlを用いて3回抽出した。得られた有機層を薄いアンモニア水で洗浄し、次いで水洗し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥後、溶媒を留去して固体を得た。この固体を熱メタノール中ですりつぶして精製した。以下の分析結果からこのものは、式
【0101】
【化30】
【0102】
で示す、4,5-ビス(2-p-メトキシフェニルエテニル)フタロニトリルであることを確認した。収量は0.16g、収率は51.0%であった。
【0103】
【表7】
1H-NMR(CDCl3, 89.5MHz)
δ=3.86ppm(s,6H)
δ=6.89-7.92ppm(m,14H)
13C-NMR(DMSO-d6)
δ=55.3,111.7,114.3,116.4,120.0,129.1,129.2,131.4,135.7,140.1,160.1
IR(KBr,cm-1)
ν=3002,2943,2839(w),2231(m),1250,1174(s),1020(m),976(w),962(m),
825(w),818(m),779,524(w)
m.p.=178-179℃
【0104】
表9および図6に、得られた化合物の紫外線吸収特性を示す。尚、吸収スペクトルの測定は、メタノール溶媒を用いて行った。
【0105】
実施例8
4,5-ビス(2-スチリルエテニル)フタロニトリル(3c)[C28H20N2=384.0]の合成 4,5-ビス(2-フェニルエテニル)-1,2-ジブロモベンゼン(2a)を、4,5-ビス(2-スチリルエテニル)-1,2-ジブロモベンゼン7.4g(15.0mmol)に代え、実施例6と同様な操作を施し精製した。以下の分析結果から、得られたものは、式
【0106】
【化31】
【0107】
で示す、4,5-ビス(2-スチリルエテニル)フタロニトリルであることを確認した。収量は4.06g(10.6mmol)、収率は70.5%であった。
【0108】
【表8】
1H-NMR(CDCl3, 89.5MHz)
δ=6.90-7.88(m,20H)
13C-NMR(CDCl3, 22.4MHz)
δ=113.1,115.7,125.8,126.9,127.9,128.9,131.1,131.3,136.3,136.4,137.3,
139.9
IR(KBr,cm-1)
ν=3055,3026,2231,1606,1581,1525,1483,1446,1396,1288,1273,1261,1228,
1178,1169,1157,985,904,748,690,532,476
m.p.=187-188.5℃
表9および図7に、得られた化合物の紫外線吸収特性を示す。尚、吸収スペクトルの測定は、メタノール溶媒を用いて行った。
【0109】
実施例9
4,5-ビス(2-ヘプチルエテニル)フタロニトリル(3d)[C26H36N2=376.0]の合成
4,5-ビス(2-フェニルエテニル)-1,2-ジブロモベンゼン(2a)を、4,5-ビス(2-ヘプチルエテニル)-1,2-ジブロモベンゼン3.4g(7.03mmol)に代え、実施例6と同様な操作を施し精製した。以下の分析結果から、得られたものは、式
【0110】
【化32】
【0111】
で示す、4,5-ビス(2-ヘプチルエテニル)フタロニトリルであることを確認した。収量は1.65g(4.39mmol)、収率は62.4%であった。
【0112】
【表9】
1H-NMR(CDCl3, 89.5MHz)
δ=0.89(t,6H,JH-H=5,9Hz),1.33(br-s,20H),2.26(m,4H),5.77-6.68(m,4H),
7.53-7.85(m,2H)
13C-NMR(CDCl3, 22.4MHz)
δ=13.9,22.6,29.1,31.7,33.4,112.9,113.6,115.7,124.5,124.8,125.0,
131.3,131.5,134.6,137.6,139.0,139.3,140.3,140.5,141.7
IR(KBr,cm-1)
ν=2922,2856,2233,1645,1620,1591,1531,1485,1466,1379,1261,964,910,
739,723,532
MS:m/z=376
m.p.=N/A
【0113】
表9および図8に、得られた化合物の紫外線吸収特性を示す。尚、吸収スペクトルの測定は、メタノール溶媒を用いて行った。
【0114】
実施例 10
4,5-ビス(2-スチリルエテニル)-1-ブロモ-2-シアノベンゼン(3c')[C27H20NBr=437.9]の合成
4,5-ビス(2-スチリルエテニル)-1,2-ジブロモベンゼン(2c)7.37g(15mmol)とシアン化銅1.35g(15mmol)との混合物をDMF中、8時間還流した。反応混合物を冷却後、濃いアンモニア水(conc.NH4OH)100mlに投入して、水蒸気を通して12時間バブルした。反応物を濾過してクロロホルム50mlを用いて3回抽出した。得られた有機層を薄いアンモニア水で洗浄し、次いで水洗し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥後、溶媒を留去して固体を得た。この固体を少量のクロロホルムに溶解させ、カラムクロマトグラフィーによって単離精製することにより、式
【0115】
【化33】
【0116】
で示す4,5-ビス(2-スチリルエテニル)-1-ブロモ-2-シアノベンゼンを得た。収量は3.51g、収率は53.5%であった。
【0117】
表9及び図9に、得られた化合物の紫外線吸収特性を示す。尚、吸収スペクトルの測定は、メタノール溶媒を用いて行った。
【0118】
実施例 11
実施例2で得られた4,5-ビス(2-フェニルエテニル)-1,2-ジブロモベンゼン(2a)と実施例7で得られた4,5-ビス(2-スチリルエテニル)フタロニトリル(3c)とを1:1の重量比で混合し、メタノール溶媒を用いてこの混合物の紫外線吸収スペクトルを測定した。結果を表9および図10に示す。
【0119】
実施例 12
実施例2で得られた4,5-ビス(2-フェニルエテニル)-1,2-ジブロモベンゼン(2a)と実施例10で得られた4,5-ビス(2-スチリルエテニル)-1-ブロモ-2-シアノベンゼン(3c')とを1:1の重量比で混合し、メタノール溶媒を用いてこの混合物の紫外線吸収スペクトルを測定した。結果を表9および図11に示す。
【0120】
比較例1
メタノール溶媒を用いて1,2-ジフェニルエテニルベンゼンの紫外線吸収スペクトルを測定した。結果を表9に示す。
【0121】
比較例2
メタノール溶媒を用いて4,5-ジメチルフタロニトリルの紫外線吸収スペクトルを測定した。結果を表9に示す。
【0122】
【表10】
【0123】
実施例A
プラスチックレンズ
レンズ用モノマーであるアクリルジグリコールカーボネート(徳山層達社製、「CR-39」)に、実施例4で得られた化合物2cをモノマー全量に対して0.01重量%の量で添加、溶解し、キャスト成形法にて重合形成し、厚さ2.5mmの透明な重合板を得た。400nmでの透過率を測定したところ0.1%であった。
【0124】
実施例B
紫外線遮断材
メタアクリレート樹脂(PMMA)1000g、実施例7で得られた化合物3cの0.05g及び実施例2で得られた化合物例2aの0.05gをステンレス製タンブラーで1時間よく撹拌した。この混合物をベント式押出機を使い、240℃で溶融混合し、常法にて成形用ペレットを作製した。次にこのペレットを80℃で3時間乾燥処理した後、射出成形機を使用して厚さ3mmの成形板を得た。400nmでの透過率を測定したところ0%であった。
【0125】
実施例C
紫外線遮断保護部材
ダイヤナールLR-1065(三菱レイヨン社製、アクリル樹脂の40%MEK溶液)100g及び実施例9で得られた化合物2c'の0.5gからなる透明塗料を100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に乾燥膜厚が30μm程度となるようにバーコータを用いて塗布した。ついで、これを乾燥してPETフィルム上に転写層を形成し、転写剥離型の紫外線遮断保護部材を得た。次いでインクジェットプリンターを用いてインククジェット記録用紙にマゼンタ色のベタ印字を行い、これにラミネータを用いて、先に作製した保護部材を、その転写層が記録面を覆うようにラミネートして、その後、PETフィルムを記録面から剥離することによりラミネート試料を得た。
【0126】
ラミネート試料と、紫外線遮断保護部材をラミネートしないこと以外は、同様にして作製した比較試料とを、耐光性試験をして評価した。耐光性試験は、試料を日光の当たる窓ガラスに張り、2ヶ月間の試験を行った。
【0127】
その結果、試料Aでは、マゼンタ印字部の試験前後での変退色が僅か認められたが、比較試料では、変退色が顕著であった。
【0128】
【発明の効果】
本発明の化合物は、波長280〜420nmの範囲に分子吸光係数の大きい極大吸収波長を有し、種々の有機物に対して安定であり、光および熱に対しても安定である。したがって、本発明の化合物は長波長紫外線紫外線吸収剤として有用である。また、本発明の4,5-ビス(2-置換エテニル)-1,2-ジシアノベンゼンは、長波長シフト化可能な高溶解性フタロシアニンの原料としても有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例2で得られた化合物2aの紫外線吸収スペクトルである。
【図2】実施例3で得られた化合物2bの紫外線吸収スペクトルである。
【図3】実施例4で得られた化合物2cの紫外線吸収スペクトルである。
【図4】実施例5で得られた化合物2dの紫外線吸収スペクトルである。
【図5】実施例6で得られた化合物3aの紫外線吸収スペクトルである。
【図6】実施例7で得られた化合物3bの紫外線吸収スペクトルである。
【図7】実施例8で得られた化合物3cの紫外線吸収スペクトルである。
【図8】実施例9で得られた化合物3dの紫外線吸収スペクトルである。
【図9】実施例10で得られた化合物3c'の紫外線吸収スペクトルである。
【図10】実施例11で得られた混合物2a+3cの紫外線吸収スペクトルである。
【図11】実施例11で得られた混合物2a+3c'の紫外線吸収スペクトルである。
【産業上の利用分野】
本発明は、新規な4,5-ビス(2-置換エテニル)-1,2-ジ置換ベンゼン、その製造方法およびこの化合物を有効成分とする紫外線吸収剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
太陽からの放射線のうち、約240〜約400nmの範囲の波長を有する電磁波を一般に紫外線という。紫外線はその波長領域によって3帯域に分けられる。即ちサンタン波長と言われる320〜400nmに長波長の紫外線(UV-A)、サンバーン波長と言われる280〜320nmの紫外線(UV-B)、および地球のオゾン層で吸収され、地表にはほとんど到達しない240〜280nmの紫外線(UV-C)である。紫外線は強いエネルギーを持ち、これを受けた化合物は分解または不安定化する。したがって、紫外線は多くの商業製品の変退色を引き起こし、その価値を低下させる原因となっている。
【0003】
紫外線吸収剤は、日光や蛍光灯による変退色の少ない耐光性(耐候性)材料を提供するために、繊維、塗料、プラスチックのような合成高分子材料、感熱記録シートのような記録シートおよびインキや電子写真用トナーなどの情報記録材料、または液晶表示材料等に添加され、また、紫外線や放射線から人体を保護するために、化粧品、プラスチックレンズ、溶接マスクおよびフィルタ等に用いられてきた。また近年では、昆虫の飛来を防止するために蛍光灯やショウウインドなどのコーティング材料、積層フィルムにも使用されている。
【0004】
そのような紫外線吸収剤としては、従来から、例えば、サリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、ヒダントイン誘導体、およびヒンダードアミン系(光安定剤)の化合物が知られている。
【0005】
しかしながら、これらの多くは波長290〜380nmの領域内の紫外線吸収性を示すものであり、波長280〜420nmの範囲の吸収性が不充分である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の問題を解決するものであり、その目的とするところは、波長280〜420nmの範囲に充分な吸収性を有する化合物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、式
【0008】
【化4】
【0009】
[式中、Xは、それぞれ独立してハロゲン原子またはシアノ基であり、Rは非置換もしくは置換フェニル基、または炭素数3〜20の非置換もしくは置換アルキル基であり、そしてnは0または1である。]
で表わされる4,5-ビス(2-置換エテニル)-1,2-ジ置換ベンゼンを提供するものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0010】
本発明の4,5-ビス(2-置換エテニル)-1,2-ジ置換ベンゼンは、式(I)で示す構造を有する化合物である。
【0011】
Xは、それぞれ独立してフッ素、塩素、臭素およびヨウ素のようなハロゲン原子またはシアノ基である。好ましくは臭素またはシアノ基である。Xは、合成の便宜上同一であることが好ましいが異なるものでもよい。
【0012】
Rは、非置換もしくは置換フェニル基、または炭素数3〜20の非置換もしくは置換アルキル基である。
【0013】
Rが非置換もしくは置換フェニル基である場合、フェニル基を置換するのに好ましい置換基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、アミル、イソアミル、ヘキシル、ヘプチル、2-エチルヘキシル、オクチルおよびt-オクチル基のような炭素数1〜8のアルキル基;塩素およびフッ素のようなハロゲン原子;およびメトキシおよびエトキシのような炭素数1〜4のアルコキシ基等が挙げられる。
【0014】
Rが非置換もしくは置換アルキル基である場合、好ましい非置換アルキル基としては、アミル、イソアミル、ヘキシル、ヘプチル、2-エチルヘキシル、オクチルおよびt-オクチルのような炭素数5〜8の直鎖又は分岐鎖アルキル基が挙げられる。アルキル基を置換するのに好ましい置換基としては、塩素およびフッ素のようなハロゲン原子;およびメトキシおよびエトキシのような炭素数1〜4のアルコキシ基等が挙げられる。
【0015】
Rは、ベンゼン環の4位及び5位に置換したエテニル基もしくは1,3-ブタジエニル基の末端に結合して2-置換エテニル基を形成する。2-置換エテニル基の具体例には、フェニルエテニル基、ヘプチルエテニル基およびスチリルエテニル基等が挙げられる。
【0016】
本発明の4,5-ビス(2-置換エテニル)-1,2-ジ置換ベンゼンは、当業者に周知の種々の方法で合成可能である。高収率で合成可能な特に好ましい製造方法の例には、式
【0017】
【化5】
【0018】
[式中、Xは上記と同意義であり、R'は、それぞれ独立して炭素数1〜4の直鎖もしくは分枝鎖アルキル基である。]
で表わされる4,5-ビス(ジアルキルホスホリルメチル)-1,2-ジ置換ベンゼンと、式
【0019】
【化6】
【0020】
[式中、Rおよびnは上記と同意義である。]
で表わされるアルデヒドとを、エーテル系有機溶媒中、アルコラートの存在下で反応させる工程を包含する方法が挙げられる。
【0021】
本発明の4,5-ビス(2-置換エテニル)-1,2-ジ置換ベンゼン(I)の製造方法において出発物質として用いる4,5-ビス(ジアルキルホスホリルメチル)-1,2-ジ置換ベンゼン(II)の好ましい具体例は、4,5-ビス(ジアルキルホスホリルメチル)-1,2-ジブロモベンゼン及び4,5-ビス(ジアルキルホスホリルメチル)-1,2-ジシアノベンゼンである。
【0022】
4,5-ビス(ジアルキルホスホリルメチル)-1,2-ジブロモベンゼンの合成法を以下に説明する。
【0023】
まず、o-キシレンの4位および5位を臭素化して4,5-ジブロモ-o-キシレンを得る。この反応は、o-キシレンをI2/Fe粉触媒の存在及び窒素気流下に冷却し、ここに臭素を滴下させて行う。反応の詳細は、例えば、M.ハナク(Hannack)ら、「合成(Synthesis)」、1987年、第703頁に記載されている。
【0024】
次に、4,5-ジブロモ-o-キシレンの1位および2位のメチル基を臭素化してα,α',4,5-テトラブロモ-o-キシレンを得る。この反応は、m-クロロ過安息香酸および四塩化炭素溶媒中で、4,5-ジブロモ-o-キシレンとN-ブロモスクシン酸イミド(NBS)とを水銀灯照射して行う。詳細は、例えば、「合成」、1993年、第4巻、第387頁 に記載されている。
【0025】
次に、α,α',4,5-テトラブロモ-o-キシレンの1位および2位のブロモメチレン基をリン酸エステル化することにより4,5-ビス(ジアルキルホスホリルメチル)-1,2-ジブロモベンゼンを得る。この反応は、α,α',4,5-テトラブロモ-o-キシレンとトリアルキルホスファイト(例えばトリエチルホスファイト、トリメチルホスファイト)とを窒素雰囲気で加熱して行われる。
【0026】
尚、本発明の方法における出発物質として、臭素以外のハロゲンを有する4,5-ビス(ジアルキルホスホリルメチル)-1,2-ジ置換ベンゼンを合成する場合は、o-キシレンの4位および5位を臭素以外のハロゲンで置換すればよい。このような置換方法は当業者に周知である。
【0027】
他方、出発物質として4,5-ビス(ジアルキルホスホリルメチル)-1,2-ジシアノベンゼンを合成する場合は、まず、上述の方法により4,5-ジブロモ-o-キシレンを得る。次いで、4,5-ジブロモ-o-キシレンの4位および5位の臭素をシアノ基で置換して4,5-ジシアノ-o-キシレンを得る。この反応は、4,5-ジブロモ-o-キシレンとシアン化剤(例えば、シアン化銅)とを、DMFのような有機溶媒中、窒素雰囲気で加熱して行われる。詳細は、例えば、M.ハナクら、Recl. Trav. Chim. Pays-Bas、1986年、第105号、第427頁に記載されている。
【0028】
次いで、上述と同様にして、4,5-ジシアノ-o-キシレンの1位および2位のメチル基を臭素化してα,α'-ジブロモ-4,5-ジシアノ-o-キシレンを得、これをトリアルキルホスファイト反応させて、4,5-ビス(ジアルキルホスホリルメチル)-1,2-ジシアノベンゼンが得られる。
【0029】
本発明の方法では、この出発物質4,5-ビス(ジアルキルホスホリルメチル)-1,2-ジ置換ベンゼン(II)をアルデヒド(III)と反応させる。
【0030】
好ましいアルデヒドには、ベンズアルデヒド、o-,m-,p-アニスアルデヒド、2,3-ジメトキシベンズアルデヒド、3,4,5-トリメトキシベンズアルデヒド、o-,m-,p-エトキシベンズアルデヒド、o-,m-,p-トルアルデヒド、p-(iso-プロピル)ベンズアルデヒド、o-,m-,p-クロロベンズアルデヒド、o-,m-,p-クロロトルアルデヒド、p-フルオロベンズアルデヒドおよびp-トリフルオロメチルベンズアルデヒドのような芳香族アルデヒド;ブチルアルデヒド、アミルアルデヒドおよびヘプチルアルデヒド、オクチルアルデヒド(「オクタナール」とも言う。)及びドデシルアルデヒドのような脂肪族アルキルアルデヒド;およびシンナムアルデヒド等が例示できる。好ましくは、ベンズアルデヒド、アニスアルデヒド、オクタナール及びシンナムアルデヒドである。
【0031】
この反応はエーテル系溶媒(例えばTHFのような環状エーテル、エチルエーテルのようなアルキルエーテル)中、アルコラート(例えば、27%メチラート)の存在下で加熱して行われる。この反応は、一般に、ウィッティッヒ-ホーナー-エモンズ(Wittig-Horner-Emonds)反応と呼ばれる。
【0032】
上述の本発明の方法によれば、式(I)において種々の置換基Xを有する4,5-ビス(2-置換エテニル)-1,2-ジ置換ベンゼンを合成できる。出発物質として異なる置換基を有する4,5-ビス(ジアルキルホスホリルメチル)-1,2-ジ置換ベンゼンを用いればそれぞれ対応する置換基を有する4,5-ビス(2-置換エテニル)-1,2-ジ置換ベンゼンが得られるからである。
【0033】
例えば、4,5-ビス(ジアルキルホスホリルメチル)-1,2-ジブロモベンゼンを出発物質として用いると、4,5-ビス(2-置換エテニル)-1,2-ジブロモベンゼンが得られる。また、4,5-ビス(ジアルキルホスホリルメチル)-1,2-ジシアノベンゼンを出発物質として用いると、4,5-ビス(2-置換エテニル)-1,2-ジシアノベンゼンが得られる。
【0034】
式(I)において種々の置換基Xを有する4,5-ビス(2-置換エテニル)-1,2-ジ置換ベンゼンを合成する他の方法として、特定の置換基を有する本発明の4,5-ビス(2-置換エテニル)-1,2-ジ置換ベンゼンを合成し、この置換基を他の置換基に変換する方法もある。この場合、特定の置換基を有する本発明の4,5-ビス(2-置換エテニル)-1,2-ジ置換ベンゼンは、他の本発明の化合物を調製するための中間体として用いる。
【0035】
例えば、本発明の化合物である4,5-ビス(2-置換エテニル)-1,2-ジブロモベンゼンは、式
【0036】
【化7】
【0037】
[式中Rおよびnは上記と同意義である。]
で示すように、ジメチルホルムアミド(DMF)のような溶媒中でシアン化剤(例えば、シアン化銅)と反応させて、その1,2-位のジブロモ基がシアノ基に変換される。当業者に周知の方法により、4,5-ビス(2-置換エテニル)-1,2-ジブロモベンゼンの1,2-位のジブロモ基を他のハロゲンに変換することもできる。
【0038】
式(I)で示す本発明の4,5-ビス(2-置換エテニル)-1,2-ジ置換ベンゼンにおいて、-Xで表わされる1,2-位置換基および-CH=CH-(CH=CH)n-Rで表わされる4,5-位置換基は、本発明の化合物の紫外線吸収特性に影響を及ぼす。分子内の共役系が、両者の相互作用によって増幅されうるからである。
【0039】
例えば、Xとしてシアノ基を有する化合物は、Xが共にハロゲン原子、例えば臭素であるものに比べて、長波長域に紫外線吸収を示す。また、nが1である化合物は、nが0であるものよりも長波長域に紫外線吸収を示す。
【0040】
より具体的には、Xが共にシアノ基であり、nが1である本発明の化合物は、長波長紫外線領域であるUV-A領域に最大吸収波長を有する。Xの一方がシアノ基であり、nが1である本発明の化合物は、UV-B乃至UV-Aの領域に最大吸収波長を有する。そして、nが0である本発明の化合物は、Rが非置換もしくは置換フェニル基である場合はUV-B乃至UV-Aの領域に、そしてRが非置換もしくは置換アルキル基である場合はUV-Cの領域に最大吸収波長を有する。
【0041】
1,2-位の置換基及び4,5-位の置換基を適当に組合せることで、本発明の4,5-ビス(2-置換エテニル)-1,2-ジ置換ベンゼンに所望の紫外線吸収特性を付与することができ、その結果、280〜420nmの範囲に充分な吸収性を有する化合物を提供できる。
【0042】
本発明の4,5-ビス(2-置換エテニル)-1,2-ジ置換ベンゼンは、紫外線波長領域に分子吸光係数εの大きい吸収ピークを有する。また、本発明の4,5-ビス(2-置換エテニル)-1,2-ジ置換ベンゼンは、各種の紫外線吸収用途に使用される溶媒、樹脂、ワックス等に一般に良分散性もしくは可溶性を示し、そして各種の有機物質、光および熱に対して優れた安定性を有する。
【0043】
したがって、本発明の化合物は、繊維、塗料およびプラスチックのような合成高分子材料、感熱記録シートのような記録シート、およびインキや電子写真用トナーのような情報記録材料、液晶表示材料、化粧品、プラスチックレンズ、溶接マスクおよびフィルタ、および蛍光灯やショウウインドなどのコーティング材料のための紫外線吸収剤として有用である。
【0044】
本発明の紫外線吸収剤は、粉末、水および有機溶媒での分散体もしくは溶液、又は樹脂溶液として使用される。
【0045】
本発明の紫外線吸収剤が微分散もしくは溶解される溶媒としては、トルエン、キシレンおよびシクロヘキサンのような炭化水素、塩化メチレンおよび塩化エチレンのようなハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノールのようなアルコール、エチレングリコールモノエチルエーテルのようなセロソルブ、酢酸エチルのようなエステル、およびメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトンが例示できる。これらの溶媒は、塗料などの各種用途の樹脂に単独、好ましくは混合して用いられる。
【0046】
本発明の紫外線吸収剤を用い得る樹脂としては、塗料用の樹脂(例えば、アクリル系、塩化ビニル系、ポリオレフィン系、ポリエステル系およびポリアミド系の熱可塑性樹脂、およびフェノール系、エポキシ系、およびポリエステル系の熱硬化性樹脂)、塗膜形成用樹脂(例えば、酢酸セルロースのような天然樹脂またはエチレンオキサイド樹脂、ブチラール樹脂、ビニル樹脂、アルキッド樹脂およびアクリル樹脂)、熱転写用バインダー樹脂(例えば、ポリビニルブチラール、エチルヒドロキシエチルセルロース、スチレン-マレイン酸共重合体、メチルメタクリレート樹脂、ポリエステル樹脂およびワックス)、電子写真用トナーの結着樹脂(例えば、スチレン樹脂、スチレン-アクリル樹脂、スチレン-ブタジエン樹脂、スチレン-ビニルメチルエーテル樹脂およびポリエステル)、プラスッチクレンズ用のアクリル樹脂、ポリカーボネート、アリルジグリコールカーボネート樹脂、および成形用プラスチックおよびプラスチックフィルム用樹脂が挙げられる。その他高分子液晶等にも好適に用いることができる。
【0047】
本発明の紫外線吸収剤を上記の各種用途の組成物に配合する場合に、配合量は所望の程度の安定化もしくは光吸収を行うに充分な量であれば特に限定されない。一般に、本発明の紫外線吸収剤は、有機物質の固体含有量当たり0.001〜2%の量で使用し得る。
【0048】
ディッピング法で染色性プラスチック基板などに染着する場合においては表面染着と見做せるので、実質的には極く微量の使用であっても効果が得られる。2重量%を越えると分散不良、有機着色物質や樹脂組成物の色障害など発生して好ましくない。また、吸収効果についても2重量%以上添加しても適性量に比べて大きな差はなく、実用上コストが高くなるため好ましくない。
【0049】
本発明の紫外線吸収剤は、従来よく知られたUV-Bの紫外線吸収剤と悪影響なく併用し得る。さらに、本発明の紫外線吸収剤には、用途および目的に応じて、蛍光増白剤、およびラジカル捕捉剤などを添加することができる。
【0050】
また、本発明の化合物である4,5-ビス(2-置換エテニル)-1,2-ジシアノベンゼンは、有機溶剤に対して高い溶解性を示す高溶解性フタロシアニンの原料として有用である。高溶解性フタロシアニンは、情報記録などオプトエレクトロニクス関連に重要な役割を果たす近赤外吸収材料及びそれを用いて作製される光カードのような光記録媒体として近年注目されている化合物である。
【0051】
例えば、4,5-ビス(2-フェニルエテニル)-1,2-ジシアノベンゼンを縮合することにより、光学特性に優れたフタロシアニンが高収率で得られる。
【0052】
本発明の化合物の非限定的な例を以下に列挙する。
【0053】
【化8】
【0054】
【化9】
【0055】
【化10】
【0056】
【化11】
【0057】
【化12】
【0058】
【化13】
【0059】
【化14】
【0060】
【化15】
【0061】
【化16】
【0062】
【化17】
【0063】
【化18】
【0064】
【化19】
【0065】
【化20】
【0066】
【化21】
【0067】
【化22】
【0068】
【化23】
【0069】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0070】
実施例1
4,5-ビス(ジエチルホスホリルメチル)-1,2-ジブロモベンゼン[C16H25O6Br2P2=535.8]の合成
α,α',4,5-テトラブロモ-o-キシレン21.1g(50mmol)、トリエチルホスファイト17.2ml(100mmol)を3口フラスコに仕込み、窒素雰囲気下で徐々に加熱し、1時間をかけて150℃にした。この間に副成する塩化エチルを、反応系外へ除去した。さらに150℃で1時間加熱撹拌を行った後、反応混合物を氷/水バスを用いて0〜5℃に冷却して水30mlを加えることにより反応を完結させた。
【0071】
得られた反応混合物から有機物を50mlのエーテルを用いて3回抽出し、エーテル層を水と飽和食塩水で洗浄して、無水硫酸ナトリウム上で乾燥後、溶媒を留去して黄色固体を得た。この固体を熱ヘキサン100mlを用いて洗浄して精製した。以下の分析結果からこのものは、式
【0072】
【化24】
【0073】
で示す、4,5-ビス(ジエチルホスホリルメチル)-1,2-ジブロモベンゼンであることを確認した。収量は22.0g(41.1mmol)、収率は82.1%であった。
【0074】
【表1】
1H-NMR(CDCl3,89.5MHz)
δ=1.23(t, 12H, JHH=7.0MHz)
δ=3.29(d, 4H, JHP=20.4Hz)
δ=4.00(dq, 8H, JHH=7.0Hz, JHP=7.0Hz)
δ=7.46(s, 2H)
13C-NMR(CDCl3,22.4MHz)
δ=16.2,30.4(d,Jcp=138.3Hz),62.1,122.8,132.3,135.8
IR(KBr,cm-1)
ν=2978,2915,1464(m),1244,1047,1016,958,935(s),530(m)
MS:m/z=536
m.p.=84-85℃
【0075】
実施例2
4,5-ビス(2-フェニルエテニル)-1,2-ジブロモベンゼン(2a)[C22H16Br2=439.8]の合成
実施例1で得た4,5-ビス(ジエチルホスホリルメチル)-1,2-ジブロモベンゼン5.36g(10mmol)とテトラヒドロフラン(THF)30ml(100mmol)との混合液にナトリウムメチラート5.8g(28%メタノール溶液、30mmol)を-15〜-20℃で加え、1時間この温度で撹拌した。次いで、この混合溶液にベンズアルデヒド2.3ml(22mmol)を-15〜-20℃でゆっくり加え、室温で5時間撹拌した。反応を完了後、反応溶液を飽和塩化アンモニウム水溶液(sat.NH4Cl)30mlを用いて冷却した。
【0076】
得られた反応混合物から生成物を50mlのエーテルを用いて3回抽出し、得られたエーテル層を水、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水の順で洗浄した。引続き無水硫酸ナトリウム上で乾燥後、溶媒を留去して固体を得、この固体を熱ヘキサン(100ml)中ですりつぶして、精製した。以下の分析結果からこのものは、式
【0077】
【化25】
【0078】
で示す、4,5-ビス(2-フェニルエテニル)-1,2-ジブロモベンゼンであることを確認した。収量は3.93g、収率は89.4%であった。
【0079】
【表2】
1H-NMR(CDCl3, 89.5MHz)
δ=6.85(m, 16H)
13C-NMR(CDCl3, 22.4MHz)
δ=123.5,124.1,126.8,128.3,128.8,131.1,131.3,132.8,136.6,136.7
IR(KBr,cm-1)
ν=3037,3021,1630,1599,1576,1495,1456,1122,960,951,918,895,746,685,
509
m.p.=118.5-120℃
【0080】
表9および図1に、得られた化合物の紫外線吸収特性を示す。尚、吸収スペクトルの測定は、メタノール溶媒を用いて行った。
【0081】
実施例3
4,5-ビス(2-p-メトキシフェニルエテニル)-1,2-ジブロモベンゼン(2b)[C24H20O2Br2=499.8]の合成
実施例2で用いた4,5-ビス(ジエチルホスホリルメチル)-1,2-ジブロモベンゼン5.36g(10mmol)及びベンズアルデヒド2.3ml(22mmol)を、4,5-ビス(ジエチルホスホリルメチル)-1,2-ジブロモベンゼン1.07g(2.0mmol)及びアニスアルデヒド0.47ml(4.4mmol)に代え、実施例2と全く同様な操作を施し精製した。以下の分析結果から、得られたものは、式
【0082】
【化26】
【0083】
で示す、4,5-ビス(2-p-メトキシフェニルエテニル)-1,2-ジブロモベンゼンであることを確認した。収量は0.8g(1.6mmol)、収率は80.0%であった。
【0084】
【表3】
1H-NMR(CDCl3, 89.5MHz)
δ=3.83(s, 6H),6.85-7.76(m,14H)
13C-NMR(CDCl3, 22.4MHz)
δ=55.2,55.5,114.3,122.1,123.0,128.1,130.0,130.9,131.1,132.2,136.7,
159.8
IR(KBr,cm-1)
ν=3035,3002,2951,2929,2906,2833,1604,1576,1510,1458,1282,1252,1174,
1120,1031,957,812,536
m.p.=118-119℃
【0085】
表9および図2に、得られた化合物の紫外線吸収特性を示す。尚、吸収スペクトルの測定は、メタノール溶媒を用いて行った。
【0086】
実施例4
4,5-ビス(2-スチリルエテニル)-1,2-ジブロモベンゼン(2c)[C26H20Br2=491.8]の合成
実施例2で用いた4,5-ビス(ジエチルホスホリルメチル)-1,2-ジブロモベンゼン5.36g(10mmol)及びベンズアルデヒド2.3ml(22mmol)を、4,5-ビス(ジエチルホスホリルメチル)-1,2-ジブロモベンゼン10.7g(20.0mmol)及びシンナムアルデヒド5.8ml(44mmol)に代え、実施例2と全く同様な操作を施し精製した。以下の分析結果から、得られたものは、式
【0087】
【化27】
【0088】
で示す、4,5-ビス(2-スチリルエテニル)-1,2-ジブロモベンゼンであることを確認した。収量は8.6g(17.5mmol)、収率は87.4%であった。
【0089】
【表4】
1H-NMR(CDCl3, 89.5MHz)
δ=6.76-7.77(m,20H)
13C-NMR(CDCl3, 22.4MHz)
δ=123.4,126.6,127.6,128.0,128.7,130.8,133.0,134.6,136.1,137.0
IR(KBr,cm-1)
ν=3022,1606,1491,1444,1363,1219,1122,982,922,889,744,687,513,476
m.p.=166-167℃
【0090】
表9および図3に、得られた化合物の紫外線吸収特性を示す。尚、吸収スペクトルの測定は、メタノール溶媒を用いて行った。
【0091】
実施例5
4,5-ビス(2-ヘプチルエテニル)-1,2-ジブロモベンゼン(2d)[C24H36Br2=483.8]の合成
実施例2で用いた4,5-ビス(ジエチルホスホリルメチル)-1,2-ジブロモベンゼン5.36g(10mmol)及びベンズアルデヒド2.3ml(22mmol)を、4,5-ビス(ジエチルホスホリルメチル)-1,2-ジブロモベンゼン10.7g(20.0mmol)及びオクチルアルデヒド5.63ml(44mmol)に代え、実施例2と全く同様な操作を施し、クロマト精製した。以下の分析結果から、得られたものは、式
【0092】
【化28】
【0093】
で示す、4,5-ビス(2-ヘプチルエテニル)-1,2-ジブロモベンゼンであることを確認した。収量は3.4g(7.02mmol)、収率は36.2%であった。
【0094】
【表5】
1H-NMR(CDCl3, 89.5MHz)
δ=0.86(t,6H,JH-H=5,9Hz),1.31(br-s,20H),2.16(m,4H),5.94-6.51(m,4H),
7.35-7.66(m,2H)
13C-NMR(CDCl3, 22.4MHz)
δ=14.1,22.7,29.2,31.9,33.3,121.7,122.5,122.6,122.8,125.8,126.0,
130.1,130.4,131.0,131.2,134.0,135.0,136.1,136.1,136.5,136.7
IR(KBr,cm-1)
ν=2956,2925,2854,1647,1624,1456,1377,1358,1119,962,918,891,723,658
MS:m/z=484
m.p.=N/A
【0095】
表9および図4に、得られた化合物の紫外線吸収特性を示す。尚、吸収スペクトルの測定は、メタノール溶媒を用いて行った。
【0096】
実施例6
4,5-ビス(2-フェニルエテニル)-1,2-ジシアノベンゼン(3a)[C24H16N2=332.0]の合成
4,5-ビス(2-フェニルエテニル)-1,2-ジブロモベンゼン(2a)2.64g(5.96mmol)とシアン化銅1.62g(18mmol)との混合物をDMF中、8時間還流した。反応混合物を冷却後、濃いアンモニア水(conc.NH4OH)100mlに投入して、水蒸気を通して12時間バブルした。反応物を濾過してクロロホルム50mlを用いて3回抽出した。得られた有機層を薄いアンモニア水で洗浄し、次いで水洗し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥後、溶媒を留去して固体を得た。この固体を熱ヘキサン中ですりつぶして精製した。以下の分析結果からこのものは、式
【0097】
【化29】
【0098】
で示す、4,5-ビス(2-フェニルエテニル)フタロニトリルであることを確認した。収量は1.12g、収率は56.6%であった。
【0099】
【表6】
1H-NMR(CDCl3, 89.5MHz)
δ=7.01-7.96(m,16H)
13C-NMR(CDCl3, 22.4MHz)
δ=113.5,115.6,122.7,127.2,129.0,129.4,131.6,135.8,136.4,140.6
IR(KBr,cm-1)
ν=3059,3026,2229,1624,1589,1576,1529,1496,1448,958,748,690,515
m.p.=183-184℃
【0100】
実施例7
4,5-ビス(2-p-メトキシフェニルエテニル)フタロニトリル(3b)[C26H24O2N2=396]の合成 4,5-ビス(2-p-メトキシフェニルエテニル)-1,2-ジブロモベンゼン(2b)0.40g(0.8mmol)とシアン化銅0.25g(2.4mmol)との混合物をDMF中、8時間還流した。反応混合物を冷却後、濃いアンモニア水(conc.NH4OH)50mlに投入して、水蒸気を通して12時間バブルした。反応物を濾過して塩化メチレン50mlを用いて3回抽出した。得られた有機層を薄いアンモニア水で洗浄し、次いで水洗し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥後、溶媒を留去して固体を得た。この固体を熱メタノール中ですりつぶして精製した。以下の分析結果からこのものは、式
【0101】
【化30】
【0102】
で示す、4,5-ビス(2-p-メトキシフェニルエテニル)フタロニトリルであることを確認した。収量は0.16g、収率は51.0%であった。
【0103】
【表7】
1H-NMR(CDCl3, 89.5MHz)
δ=3.86ppm(s,6H)
δ=6.89-7.92ppm(m,14H)
13C-NMR(DMSO-d6)
δ=55.3,111.7,114.3,116.4,120.0,129.1,129.2,131.4,135.7,140.1,160.1
IR(KBr,cm-1)
ν=3002,2943,2839(w),2231(m),1250,1174(s),1020(m),976(w),962(m),
825(w),818(m),779,524(w)
m.p.=178-179℃
【0104】
表9および図6に、得られた化合物の紫外線吸収特性を示す。尚、吸収スペクトルの測定は、メタノール溶媒を用いて行った。
【0105】
実施例8
4,5-ビス(2-スチリルエテニル)フタロニトリル(3c)[C28H20N2=384.0]の合成 4,5-ビス(2-フェニルエテニル)-1,2-ジブロモベンゼン(2a)を、4,5-ビス(2-スチリルエテニル)-1,2-ジブロモベンゼン7.4g(15.0mmol)に代え、実施例6と同様な操作を施し精製した。以下の分析結果から、得られたものは、式
【0106】
【化31】
【0107】
で示す、4,5-ビス(2-スチリルエテニル)フタロニトリルであることを確認した。収量は4.06g(10.6mmol)、収率は70.5%であった。
【0108】
【表8】
1H-NMR(CDCl3, 89.5MHz)
δ=6.90-7.88(m,20H)
13C-NMR(CDCl3, 22.4MHz)
δ=113.1,115.7,125.8,126.9,127.9,128.9,131.1,131.3,136.3,136.4,137.3,
139.9
IR(KBr,cm-1)
ν=3055,3026,2231,1606,1581,1525,1483,1446,1396,1288,1273,1261,1228,
1178,1169,1157,985,904,748,690,532,476
m.p.=187-188.5℃
表9および図7に、得られた化合物の紫外線吸収特性を示す。尚、吸収スペクトルの測定は、メタノール溶媒を用いて行った。
【0109】
実施例9
4,5-ビス(2-ヘプチルエテニル)フタロニトリル(3d)[C26H36N2=376.0]の合成
4,5-ビス(2-フェニルエテニル)-1,2-ジブロモベンゼン(2a)を、4,5-ビス(2-ヘプチルエテニル)-1,2-ジブロモベンゼン3.4g(7.03mmol)に代え、実施例6と同様な操作を施し精製した。以下の分析結果から、得られたものは、式
【0110】
【化32】
【0111】
で示す、4,5-ビス(2-ヘプチルエテニル)フタロニトリルであることを確認した。収量は1.65g(4.39mmol)、収率は62.4%であった。
【0112】
【表9】
1H-NMR(CDCl3, 89.5MHz)
δ=0.89(t,6H,JH-H=5,9Hz),1.33(br-s,20H),2.26(m,4H),5.77-6.68(m,4H),
7.53-7.85(m,2H)
13C-NMR(CDCl3, 22.4MHz)
δ=13.9,22.6,29.1,31.7,33.4,112.9,113.6,115.7,124.5,124.8,125.0,
131.3,131.5,134.6,137.6,139.0,139.3,140.3,140.5,141.7
IR(KBr,cm-1)
ν=2922,2856,2233,1645,1620,1591,1531,1485,1466,1379,1261,964,910,
739,723,532
MS:m/z=376
m.p.=N/A
【0113】
表9および図8に、得られた化合物の紫外線吸収特性を示す。尚、吸収スペクトルの測定は、メタノール溶媒を用いて行った。
【0114】
実施例 10
4,5-ビス(2-スチリルエテニル)-1-ブロモ-2-シアノベンゼン(3c')[C27H20NBr=437.9]の合成
4,5-ビス(2-スチリルエテニル)-1,2-ジブロモベンゼン(2c)7.37g(15mmol)とシアン化銅1.35g(15mmol)との混合物をDMF中、8時間還流した。反応混合物を冷却後、濃いアンモニア水(conc.NH4OH)100mlに投入して、水蒸気を通して12時間バブルした。反応物を濾過してクロロホルム50mlを用いて3回抽出した。得られた有機層を薄いアンモニア水で洗浄し、次いで水洗し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥後、溶媒を留去して固体を得た。この固体を少量のクロロホルムに溶解させ、カラムクロマトグラフィーによって単離精製することにより、式
【0115】
【化33】
【0116】
で示す4,5-ビス(2-スチリルエテニル)-1-ブロモ-2-シアノベンゼンを得た。収量は3.51g、収率は53.5%であった。
【0117】
表9及び図9に、得られた化合物の紫外線吸収特性を示す。尚、吸収スペクトルの測定は、メタノール溶媒を用いて行った。
【0118】
実施例 11
実施例2で得られた4,5-ビス(2-フェニルエテニル)-1,2-ジブロモベンゼン(2a)と実施例7で得られた4,5-ビス(2-スチリルエテニル)フタロニトリル(3c)とを1:1の重量比で混合し、メタノール溶媒を用いてこの混合物の紫外線吸収スペクトルを測定した。結果を表9および図10に示す。
【0119】
実施例 12
実施例2で得られた4,5-ビス(2-フェニルエテニル)-1,2-ジブロモベンゼン(2a)と実施例10で得られた4,5-ビス(2-スチリルエテニル)-1-ブロモ-2-シアノベンゼン(3c')とを1:1の重量比で混合し、メタノール溶媒を用いてこの混合物の紫外線吸収スペクトルを測定した。結果を表9および図11に示す。
【0120】
比較例1
メタノール溶媒を用いて1,2-ジフェニルエテニルベンゼンの紫外線吸収スペクトルを測定した。結果を表9に示す。
【0121】
比較例2
メタノール溶媒を用いて4,5-ジメチルフタロニトリルの紫外線吸収スペクトルを測定した。結果を表9に示す。
【0122】
【表10】
【0123】
実施例A
プラスチックレンズ
レンズ用モノマーであるアクリルジグリコールカーボネート(徳山層達社製、「CR-39」)に、実施例4で得られた化合物2cをモノマー全量に対して0.01重量%の量で添加、溶解し、キャスト成形法にて重合形成し、厚さ2.5mmの透明な重合板を得た。400nmでの透過率を測定したところ0.1%であった。
【0124】
実施例B
紫外線遮断材
メタアクリレート樹脂(PMMA)1000g、実施例7で得られた化合物3cの0.05g及び実施例2で得られた化合物例2aの0.05gをステンレス製タンブラーで1時間よく撹拌した。この混合物をベント式押出機を使い、240℃で溶融混合し、常法にて成形用ペレットを作製した。次にこのペレットを80℃で3時間乾燥処理した後、射出成形機を使用して厚さ3mmの成形板を得た。400nmでの透過率を測定したところ0%であった。
【0125】
実施例C
紫外線遮断保護部材
ダイヤナールLR-1065(三菱レイヨン社製、アクリル樹脂の40%MEK溶液)100g及び実施例9で得られた化合物2c'の0.5gからなる透明塗料を100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に乾燥膜厚が30μm程度となるようにバーコータを用いて塗布した。ついで、これを乾燥してPETフィルム上に転写層を形成し、転写剥離型の紫外線遮断保護部材を得た。次いでインクジェットプリンターを用いてインククジェット記録用紙にマゼンタ色のベタ印字を行い、これにラミネータを用いて、先に作製した保護部材を、その転写層が記録面を覆うようにラミネートして、その後、PETフィルムを記録面から剥離することによりラミネート試料を得た。
【0126】
ラミネート試料と、紫外線遮断保護部材をラミネートしないこと以外は、同様にして作製した比較試料とを、耐光性試験をして評価した。耐光性試験は、試料を日光の当たる窓ガラスに張り、2ヶ月間の試験を行った。
【0127】
その結果、試料Aでは、マゼンタ印字部の試験前後での変退色が僅か認められたが、比較試料では、変退色が顕著であった。
【0128】
【発明の効果】
本発明の化合物は、波長280〜420nmの範囲に分子吸光係数の大きい極大吸収波長を有し、種々の有機物に対して安定であり、光および熱に対しても安定である。したがって、本発明の化合物は長波長紫外線紫外線吸収剤として有用である。また、本発明の4,5-ビス(2-置換エテニル)-1,2-ジシアノベンゼンは、長波長シフト化可能な高溶解性フタロシアニンの原料としても有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例2で得られた化合物2aの紫外線吸収スペクトルである。
【図2】実施例3で得られた化合物2bの紫外線吸収スペクトルである。
【図3】実施例4で得られた化合物2cの紫外線吸収スペクトルである。
【図4】実施例5で得られた化合物2dの紫外線吸収スペクトルである。
【図5】実施例6で得られた化合物3aの紫外線吸収スペクトルである。
【図6】実施例7で得られた化合物3bの紫外線吸収スペクトルである。
【図7】実施例8で得られた化合物3cの紫外線吸収スペクトルである。
【図8】実施例9で得られた化合物3dの紫外線吸収スペクトルである。
【図9】実施例10で得られた化合物3c'の紫外線吸収スペクトルである。
【図10】実施例11で得られた混合物2a+3cの紫外線吸収スペクトルである。
【図11】実施例11で得られた混合物2a+3c'の紫外線吸収スペクトルである。
Claims (3)
- 請求項1記載の4,5-ビス(2-置換エテニル)-1,2-ジ置換ベンゼンを有効成分とする紫外線吸収剤。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP13684195A JP3795553B2 (ja) | 1995-06-02 | 1995-06-02 | 新規4,5−ビス(2−置換エテニル)−1,2−ジ置換ベンゼン、その製造方法、及び紫外線吸収剤 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP13684195A JP3795553B2 (ja) | 1995-06-02 | 1995-06-02 | 新規4,5−ビス(2−置換エテニル)−1,2−ジ置換ベンゼン、その製造方法、及び紫外線吸収剤 |
Publications (2)
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JPH08325180A JPH08325180A (ja) | 1996-12-10 |
JP3795553B2 true JP3795553B2 (ja) | 2006-07-12 |
Family
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Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP13684195A Expired - Fee Related JP3795553B2 (ja) | 1995-06-02 | 1995-06-02 | 新規4,5−ビス(2−置換エテニル)−1,2−ジ置換ベンゼン、その製造方法、及び紫外線吸収剤 |
Country Status (1)
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Families Citing this family (1)
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-
1995
- 1995-06-02 JP JP13684195A patent/JP3795553B2/ja not_active Expired - Fee Related
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Publication number | Publication date |
---|---|
JPH08325180A (ja) | 1996-12-10 |
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