JP3794929B2 - 光拡散シート形成用樹脂粒子、樹脂組成物及び光拡散シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光拡散シート形成用樹脂粒子、樹脂組成物及び光拡散シートに関する。更に詳しくは、本発明は、液晶表示装置のバックライトや、プロジェクター方式の表示装置等に用いられる光拡散シート、光拡散シート形成用樹脂粒子及び樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、光拡散シートは、液晶表示装置において液晶パネルのバックライトから発せられる光を均一に拡散させる等、透明樹脂を透過する光を多方向に拡散させるために用いられている。光拡散シートとしては仕上げ加工の際に加熱・加圧によってシート表面に凹凸をつける、いわゆるエンボス加工を施したものや、酸化チタン、ガラスビーズ、シリカ等の無機粉体を含有した光拡散層をシート表面に形成させたもの、又はアクリル樹脂、ポリスチレン等からなる樹脂粒子を含む光拡散層をシート表面に形成させたもの等が使用されている。この中でも樹脂粒子を用いた光拡散シートは、透明性と光拡散性が両立しており、優れた光拡散シートである。
樹脂粒子を含む光拡散層を形成した光拡散シートとしては、例えば、特開平7−27904号公報において、バインダー樹脂内に樹脂粒子を分散させ、これを基材シートにコーティングすることによって得られた光拡散シートが報告されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、樹脂粒子を含む光拡散層を形成することによって得られた光拡散シートは、樹脂粒子と、バインダー樹脂及び基材樹脂とのなじみの悪さから、樹脂粒子が光拡散層から脱落してしまうという現象が起きることがある。この現象が原因で光拡散シートに傷がつく等して不都合が生じ、生産効率が悪化することとなる。
従って、本発明では光拡散シートにおける光拡散層から脱落し難い樹脂粒子を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、以下方法により光拡散層から樹脂粒子が脱落し難い樹脂粒子、該樹脂粒子を含む樹脂組成物及び該樹脂粒子を使用した光拡散シートを見出した。
かくして本発明によれば、カルボキシル基含有メタクリル酸エステルとそれ以外の他のビニル系単量体を含む単量体組成物を懸濁重合することによって得られた樹脂粒子であって、前記カルボキシル基含有メタクリル酸エステル由来のカルボキシル基が少なくとも表面に存在することを特徴とする光拡散シート形成用樹脂粒子が提供される。
また、本発明によれば、上記樹脂粒子と、透明バインダー樹脂との混合物からなる光拡散シート形成用樹脂組成物が提供される。
更に、本発明によれば、上記樹脂粒子が、透明バインダー樹脂により透明基材シートの少なくとも一方の面に固定されてなる光拡散シートが提供される。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について説明する。
本発明の樹脂粒子は、カルボキシル基(以下、親水性基とも称する)を分子中に含むビニル系単量体であるメタクリル酸エステル(以下、親水性基含有ビニル系単量体とも称する)由来のカルボキシル基が表面に存在することを特徴の1つとしている。ここで、本発明の樹脂粒子は、親水性基含有ビニル系単量体単独又は、親水性基含有ビニル系単量体とそれ以外の他のビニル系単量体の混合物を懸濁重合させることにより得られた粒子である。
【0006】
親水性基含有ビニル系単量体としては、例えば、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルマレイン酸等のカルボン酸含有メタクリル酸エステル化合物等が挙げられる。これら単量体は1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0007】
他のビニル系単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル系単量体、酢酸ビニル等が挙げられる。これらの単量体は単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、(メタ)アクリルは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0008】
また、三次元(架橋)構造を有する樹脂粒子を得ようとする場合には、重合性二重結合基を分子中に複数個有する架橋性単量体を他の重合性単量体として用いることで実現することができる。架橋性単量体としては、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸ジエチレングリコール、ジメタクリル酸1,3−ブチレン、メタクリル酸アリル、テトラメタクリル酸ペンタエリスリトール等の(メタ)アクリル酸系単量体、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン及びこれらの誘導体である芳香族ジビニル化合物等が挙げられる。
【0009】
親水性基含有ビニル単量体と他のビニル単量体は、1〜0.001:1(重量比)の割合で使用することが好ましい。より好ましくは、0.2〜0.005:1である。親水性基含有ビニル単量体の割合が0.001より小さい場合、光拡散シートの製造時又はその後に樹脂粒子が脱落する恐れがあるため好ましくない。一方、1より大きい場合、より大きな効果が得られるわけでもないので好ましくない。
【0010】
本発明の樹脂粒子は、1〜100μm程度の平均粒子径を有していることが好ましく、3〜50μm程度であることが更に好ましい。ここで、粒子の一般的な製造方法である懸濁重合は、数μmから数十μmの大きさの粒子を簡便に得ることできるため、平均粒子径はこの範囲であることが好ましい。ただし、平均粒子径は、樹脂粒子が使用される光拡散シートの光拡散層の厚みや基材シートの厚さ等により適宜選択されるべきものであり、前記の範囲に特に限定されるものではない。
【0011】
上記樹脂粒子は、懸濁重合により製造することが好ましい。
樹脂粒子は、まず懸濁安定剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の界面活性剤、第三リン酸カルシウム、複分解ピロリン酸マグネシウム等の無機物等)を溶解又は懸濁させた水と、重合開始剤(例えば、アゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ化合物、過酸化ベンゾイルのような過酸化物等)を含む親水性基含有ビニル単量体と任意に他のビニル単量体混合物とからなる単量体組成物とを混合し、この混合液に機械的剪断を与えることによって所望の液滴径を持つO/W型エマルジョンを調製し、次いで重合(例えば50〜150℃で)を行うことにより得ることができる。液滴径を調製する装置としては、剪断の強さを調節可能な分散装置が特に制限なく使用できる。分散装置としては、例えば高圧ホモジナイザー、ホモミキサー、超音波分散装置あるいはナノマイザー、マイクロフルイダイザー等の高圧型分散装置等が挙げられる。
【0012】
次に、本発明によれば、光拡散シート形成用樹脂組成物が提供される。この樹脂組成物は、上記樹脂粒子を、透明バインダー樹脂に配合したものである。
透明バインダー樹脂は、耐光性、耐熱性等の特性をも備えていることが好ましい。例えば、アクリル樹脂、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン等が挙げられる。この樹脂組成物は、エマルジョン、ディスパージョン、溶剤溶液等塗布できる形態であることが好ましい。そのような形態にするために、通常溶媒(例えば、水、アルコール、)が添加される。また、樹脂組成物には、適宜、硬化剤、染料等を添加してもよい。
バインダー樹脂と樹脂粒子との混合割合は、得ようとする光拡散性により適宜選択するべきものであり、特に限定するものではない。例えば、バインダー樹脂10〜99重量部に対して樹脂粒子1〜90重量部程度が好ましく、バインダー樹脂50〜5重量部に対して樹脂粒子5〜60重量部程度が更に好ましい。
【0013】
次に、本発明の光拡散シートは、透明基材シートの少なくとも片面に、樹脂粒子と透明バインダー樹脂との混合層が積層されている。
透明基材シートとしては、耐光性、耐熱性、耐溶剤性等の特性をも備えていることが好ましい。透明基材シートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド等の合成樹脂シート、透明なガラスシート等が挙げられ、これらから適宜選択して使用することができる。また、その厚さは特に限定されるものではないが、加工のしやすさやハンドリング性を考慮して50〜500μm程度が好ましい。
透明基材シートに透明バインダー樹脂と樹脂粒子の混合層を形成する方法については、リバースロールコート法、グラビアコート法、ダイコート法、コンマコート法、スプレーコート法等の公知の方法を用いることができる。
樹脂粒子と透明バインダー樹脂との混合層の厚みは、特に限定されるものではないが、光拡散性、膜強度等を考慮して、1〜100μm程度が好ましく、より好ましくは3〜30μm程度である。
【0014】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を何ら限定するものではない。なお、各実施例における光拡散シートからの樹脂粒子の脱落性の評価、光拡散シートのヘイズ及び光拡散シートを用いた場合の輝度の測定は以下の方法により行った。また以下に述べる実施例において記載する「部」は、いずれも重量部を表すものである。
【0015】
{樹脂粒子の脱落性の評価}
バインダー樹脂を介して樹脂粒子を基材シートにコーティングして作製した光拡散シートの塗膜表面を20回擦り、塗膜から脱落して布に付着した白い樹脂粒子が多量に観察されるものを×、少量観察されるものを△、観察されないものを○とした。
【0016】
{ヘイズ測定方法}
光拡散シートのヘイズ値をヘイズメーター(日本電色製、商品名:NDH−2000)を用いて測定した。
【0017】
{輝度測定方法}
端部に冷陰極管が1灯設置された液晶表示板用バックライトモジュールの導光板上に、光拡散シートを溝状の凹部の方向が冷陰極管と平行となるようにのせ、輝度計(ミノルタ製、商品名:CS−100)を光拡散シートの表面から距離30cm離れたところに設置し、輝度を測定した。
【0018】
(実施例1−参考例)
攪拌機、温度計を備えた重合器にラウリル硫酸ナトリウム0.05部を溶解させた脱イオン水500部を入れ、そこへ第三リン酸カルシウム50部を分散させた。これに予め調製しておいたメタクリル酸メチル80部、トリアクリル酸トリメチロールプロパン15部、メタクリル酸2−ヒドロキシブチル5部の重合性単量体成分に過酸化ベンゾイル0.5部、アゾビスイソブチロニトリル0.5部を溶解させた混合液を入れて、T.K.ホモミキサー(特殊機化工業社製)にて液滴径を8μm程度に調製した。次に、重合器を65℃に加熱して攪拌しながら懸濁重合を行った後冷却した。ここで得られた懸濁液を濾過、洗浄した後乾燥して水酸基含有樹脂粒子を得た。
この水酸基含有樹脂粒子を用いて、厚さ100μmのポリエステルフィルム上にポリエステル系樹脂をバインダー樹脂としてダイコート法により光拡散シートを作製した。この光拡散シートにおける樹脂粒子の脱落性及び輝度を測定した。その結果を表1に示す。
【0019】
(実施例2)
攪拌機、温度計を備えた重合器にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部を溶解させた脱イオン水300部を入れ、そこへ複分解ピロリン酸マグネシウム8部を分散させた。これに予め調製しておいたメタクリル酸メチル67部、ジメタクリル酸エチレングリコール30部、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸3部の重合性単量体成分に過酸化ベンゾイル0.5部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.5部を溶解させた混合液を入れて、T.K.ホモミキサー(特殊機化工業製)にて液滴径を5μm程度に調製した。次に、重合器を60℃に加熱して攪拌しながら懸濁重合を行った後冷却した。ここで得られた懸濁液を濾過、洗浄した後乾燥してカルボキシル基含有樹脂粒子を得た。
このカルボキシル基含有樹脂粒子を用いて、厚さ100μmのポリエステルフィルム上にポリエステル系樹脂をバインダー樹脂としてダイコート法により光拡散シートを作製した。この光拡散シートにおける樹脂粒子の脱落性及び輝度を測定した。その結果を表1に示す。
【0020】
(実施例3)
攪拌機、温度計を備えた重合器にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.2部を溶解させた脱イオン水500部を入れ、そこへ複分解ピロリン酸マグネシウム10部を分散させた。これに予め調製しておいたメタクリル酸メチル87部、ジメタクリル酸エチレングリコール5部、メタクリル酸2−ヒドロキシブチル3部、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸5部の重合性単量体成分に過酸化ベンゾイル0.5部、アゾビスイソブチロニトリル0.5部を溶解させた混合液を入れて、T.Kホモミキサー(特殊機化工業製)にて液滴径を15μm程度に調製した。次に、重合器を60℃に加熱して攪拌しながら懸濁重合を行った後冷却した。ここで得られた懸濁液を濾過、洗浄した後乾燥してカルボキシル基含有樹脂粒子を得た。
このカルボキシル基含有樹脂粒子を用いて、厚さ100μmのポリエステルフィルム上にポリエステル系樹脂をバインダー樹脂としてダイコート法により光拡散シートを作製した。この光拡散シートにおける樹脂粒子の脱落性及び輝度を測定した。その結果を表1に示す。
【0021】
(比較例1)
重合性単量体成分としてメタクリル酸2−ヒドロキシブチルを用いないこと以外は、実施例1と同様にして樹脂粒子を得た。
この樹脂粒子を用いて、厚さ100μmのポリエステルフィルム上にポリエステル系樹脂をバインダー樹脂としてダイコート法により光拡散シートを作製した。この光拡散シートにおける樹脂粒子の脱落性及び輝度を測定した。その結果を表1に示す。
【0022】
(比較例2)
重合性単量体成分として2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸を用いないこと以外は、実施例2と同様にして樹脂粒子を得た。
この樹脂粒子を用いて、厚さ100μmのポリエステルフィルム上にポリエステル系樹脂をバインダー樹脂としてダイコート法により光拡散シートを作製した。この光拡散シートにおける樹脂粒子の脱落性及び輝度を測定した。その結果を表1に示す。
【0023】
(比較例3)
重合性単量体成分としてメタクリル酸2−ヒドロキシブチル及び2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸を用いないこと以外は、実施例3と同様にして樹脂粒子を得た。
この樹脂粒子を用いて、厚さ100μmのポリエステルフィルム上にポリエステル系樹脂をバインダー樹脂としてダイコート法により光拡散シートを作製した。この光拡散シートにおける樹脂粒子の脱落性及び輝度を測定した。その結果を表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
上記表1からも明らかなように、各実施例で得られた光拡散シートは、塗膜からの樹脂粒子の脱落がなく、輝度及びヘイズについては水酸基やカルボキシル基を含まない樹脂粒子を使った光拡散フィルムと同等レベルであった。
【0026】
【発明の効果】
本発明によれば、光拡散シートの生産、輸送等の際に生じる傷付きを防ぐことで生産効率を向上させることができる光拡散シート、及びこのような光拡散シートを得るために用いられる樹脂粒子を得ることができる。
Claims (4)
- カルボキシル基含有メタクリル酸エステルとそれ以外の他のビニル系単量体を含む単量体組成物を懸濁重合することによって得られた樹脂粒子であって、前記カルボキシル基含有メタクリル酸エステル由来のカルボキシル基が少なくとも表面に存在することを特徴とする光拡散シート形成用樹脂粒子。
- 前記カルボキシル基含有メタクリル酸エステルが、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸及び2−メタクリロイルオキシエチルマレイン酸から選択される請求項1に記載の樹脂粒子。
- 請求項1又は2に記載の樹脂粒子と、透明バインダー樹脂との混合物からなる光拡散シート形成用樹脂組成物。
- 請求項1又は2に記載の樹脂粒子が、透明バインダー樹脂により透明基材シートの少なくとも一方の面に固定されてなる光拡散シート。
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