JP3794675B2 - 冷凍・解凍しても粘度低下せず、食品素材からの肉汁の流出を防止する液体調味料組成物 - Google Patents

冷凍・解凍しても粘度低下せず、食品素材からの肉汁の流出を防止する液体調味料組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、液体調味料を生肉・生魚などの肉汁の流出し易い食品素材へ、からめることで使用する半加工食品を開発する場合において冷解凍時に素材からの肉汁の流出を防止すると同時に、液体調味料の流れ落ちの問題を解決し、商品価値を高める液体調味料組成に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
畜肉・水産物の加工品を流通する場合の一般的な流通方法はチルドもしくは冷凍である。特に、冷凍による流通手段は、菌数の増加を抑制することが出来ることから、年々需要が高まってきている。
【0003】
冷凍で流通する加工食品の中で、たれ漬した焼肉や魚切身の醤油漬けなどのように、生肉・生魚に液体調味料をからめた状態で冷凍流通する商品では、商品の解凍時にいくつかの重要な問題が生じていた。その一つは冷解凍することによって素材から生じる肉汁の流出、もう一つは液体調味料そのものの素材からの流れ落ちである。これらの問題を解決するために、従来から行われていた方法は、液体調味料の25℃での粘性を、18,000〜20,000mPa・S(同筒回転粘度計使用、以下mPa・Sの単位はすべてこれに準ずる)にまで著しく増加させることである。しかしながらこの方法では、液体調味料を素材にからめる工程中の作業性が非常に悪く、その付着量も不均一であり、素材からの肉汁の流出を完全に防止できるものではない。
【0004】
さらに、このような素材からの肉汁の流出を防止する方法として、素材そのものに脱水処理や塩水処理などを施す方法もあるが、生肉・生魚などの持つ柔らかな食感やジューシー感が損われてしまう。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような背景から、冷解凍時における素材からの肉汁の流出を防止する方法、さらには液体調味料の流れ落ちの問題を解決する方法としては、からめる液体調味料の粘性を特殊な機能性を持ったものに改善する必要がある。
【0006】
すなわち、本発明は、からめる工程では比較的滑らかで作業性が良く、冷凍・解凍による粘度の低下を起こさず、解凍した時には高粘度に変化し、肉汁の流出と調味料の流れ落ちを防止できる粘性を持った液体調味料組成物を調整することを目的とする。
【0007】
【問題点を解決するための手段】
一般的にこのような高粘度の液体調味料に粘性を付与させる場合、コーンスターチなどの天然澱粉を使用するが、冷凍での保管流通中に澱粉の老化が起こり、粘度の低下が起こる可能性が多分にあるため、本発明では、化工澱粉で増粘させることで問題の解決を図った。また、増粘多糖類を安定剤として加えることで粘性の補強を行った。さらに、解凍後の冷蔵保存時に、素材をしっかりとコーティングできるような高粘度になるようにゼラチンを添加することで、肉汁の流出と調味料の流れ落ちを効果的に防止することに成功した。
【0008】
本発明における加工澱粉とは、天然澱粉をリン酸で架橋し、変性エーテル、エステル置換した澱粉誘導体であり、冷凍での経時変化による澱粉の老化を起こしにくくいため、冷凍・解凍した時の粘度低下もほとんど無い。この化工澱粉を液体調味料に2〜5%添加し増粘させる。
【0009】
本発明における増粘多糖類とは、キサンタンガム、グアガム、タマリンドガム、カラギーナンなどであるが、これに限定するものではなく、これら増粘多糖類を澱粉により増粘させた液体調味料の安定剤として0.05〜0.5%添加する。
【0010】
本発明におけるゼラチンとは、牛骨、牛皮などより調整されたものであり、20℃〜30℃位の温度帯では8,000〜12,000mPa・Sくらいの適度な流動性を示し、冷凍・解凍後に冷蔵保存する際の2℃〜10℃の温度帯では30,000〜50,000mPa・Sくらいの非常に高い粘度を生じるように液体調味料へ0.4%〜0.6%添加しておく。
【0011】
化工澱粉・増粘多糖類・ゼラチンは、醤油・味醂・糖類などを配合した液体調味料に良く溶解させ、95℃まで加熱膨潤させる。
【0012】
ゼラチンを添加してゲル化させた液体を冷解凍する場合には、大きな問題が生じる。一般的にはゼラチンのゲル構造が冷凍により崩壊し、解凍後のゼラチンは離水し、ぼろぼろと壊れもろい物性へと変化してしまう。本発明ではこの問題を、ゼラチンを添加する液体調味料の糖度を調整し、自由水の割合を減らすことで解決した。
【0013】
すなわち、液体調味料の糖度をぶどう糖果糖液糖・水飴・砂糖などの糖類を添加することによって45〜55%に調整することで、ゼラチンによって得られたゲル構造に冷凍耐性を付与することに成功した。
【0014】
【作用】
生肉・生魚などの細胞中の組織液は、冷凍することによって体積が増加・凝集し、氷結晶を生じる。生じた氷結晶は細胞の組織からは遊離しているため、解凍した際に肉汁となって細胞外へ流出する。この肉汁の流出によって生肉・生魚などの商品外観が損なわれるばかりか、素材の美味しさの源である旨味成分の流出をも招き、商品価値としては著しく低下する。本発明は、化工澱粉・増粘多糖類の増粘剤の組み合わせに、ゲル化剤として少量のゼラチンを添加し、冷蔵状態での粘度を著しく上げてやることで、素材からの肉汁の流出と調味料の流れ落ちを防止できる液体調味料組成を提供するものである。本発明により提供される液体調味料を生肉・生魚などにからめて冷凍流通・解凍し冷蔵にて保管することで、商品価値を損なわずに販売が可能となった。
【0015】
【実施例1】
以下に、実施例としてたまり醤油漬けのたれのレシピーを記載する。このたれをブリ切身重量に対し20%量からめ、冷凍・解凍して肉汁の流出、たれの流れ落ちを観察したところ、良好な結果が得られた。下記条件配合を95℃加熱後冷却して試験を行なった。
Figure 0003794675
試験結果
配合1 冷凍・解凍後多量の肉汁の流出、たれの流れ落ちが見られた。
配合2 冷凍・解凍後若干の肉汁の流出、たれの流れ落ちが見られた。
配合3 冷凍・解凍後肉汁の流出、たれの流れ落ちが見られず、冷凍前と同じ状態であった。
【0016】
【実施例2】
次にゼラチンによって付与した粘性の冷凍耐性試験を行なった結果を記載する。糖度を変えて試験を行ない冷凍・解凍後の粘性の変化を確認した。下記レシピーの配合品を80℃まで加熱した後、粗熱をとり冷凍・解凍試験に使用した。試験の結果より糖度については配合4、配合5の結果が最も好ましい物であった。よってゼラチンによって得られたゲル構造に冷凍耐性を持たせられる糖度として45%〜53%の間がもっとも好ましいものと考えられる。
【0017】
【本発明の効果】
本発明により提供された液体調味料を生肉・生魚などの肉汁の流出し易い食品素材へからめて、冷凍流通・冷蔵販売する場合において、冷解凍時に素材からの肉汁の流出を防止すると同時に、液体調味料のそのものの素材からの流れ落ちを防止することにより、商品価値を損なわずに販売が可能となる。また従来の液体調味料と異なり、素材にからめる工程の作業性を落とさず、付着量も均一にすることが可能となる。

Claims (1)

  1. 増粘剤として化工澱粉を2〜5重量%および増粘多糖類0.05〜5重量%およびゼラチン0.4〜0.6重量%を含み、糖度を45〜53%に調整することにより、ゼラチンによるゲル構造に冷凍耐性を付与した液体調味料。
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