JP3794390B2 - 保湿組成物及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セリシン由来の浸透性の優れた保湿組成物に関する。
詳しくは、ペプチドのN末端アミノ酸にセリンを有し、アミノ酸数が5個以下のオリゴペプチド又はそのナトリウム塩を含有する保湿組成物に関する。
また、本発明の保湿組成物は、皮膚や毛髪に浸透性の優れた保湿剤又は加工食品に浸透性の優れた食品保湿剤として有用である。
【0002】
【従来の技術】
従来、保湿剤は、(1)肌荒れを防ぐ、(2)肌にはりを与える、(3)皮膚に潤いを与える、(4)皮膚の柔軟性を保つ、(5)皮膚の皺を目立たなくする等に重要な機能を果たしている。この目的に用いる保湿剤としては、グリセリン、プロピレングリ
コール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、
乳酸ナトリウム、2−ピロリドン−5−カルボン酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、コラーゲンなどが知られている。セリシンは保湿剤として有望であるが、膠質の物質で原料のままでは化粧料の主剤にはなり得なかった。絹の産業より排出されるセリシンについて、廃棄物の資源有効利用としてセリシンの回収技術を開発されており、セリシンの保湿効果を活用する高度な利用が産業再生の面から強く期待されている。
【0003】
セリシンの利用形態の例として、例えば特開昭62-036308号公報では、絹の精錬廃液より得られるセリシン及び米ぬか溶液を配合した化粧料が、特開平8-133963号公報では、セリシンを含有した浴用剤が入浴後の素肌の保湿効果とカサツキ改善に有効であるとされている。また、特開2001−017097号公報では、生米に蚕、繭、絹の成分を含有させて、炊き上げると食味を向上することも報告されている。
しかしながら、セリシンの保湿性を活用する利用技術は上記現状に留まっており、先の保湿剤に望まれる特性を全て満たすような高度利用の技術は未だ知られていなかった。
【0004】
従来の保湿剤では、肌の表面に塗布して、皮膚の外側表面に潤いを与えていたが、最近の研究では、肌の角質の下にある表皮から真皮に浸透させて、皮膚の内部から作用させる保湿剤として注目されている。しわの改善に対して皮膚のしわ内部の陥没部から修復するのが一般的方法である。
この目的のためには、コラーゲンやポリペプチド自体では、皮膚の表皮、真皮には浸透しないので、本発明者らは、ペプチド分子を短く切断してアミノ酸重合度を3量体にして、かつN末端アミノ酸に機能性を期待するアミノ酸を有するように設計することにより浸透性と機能性を得ることに着目した。
【0005】
例えば、豚由来のコラーゲンの場合、N末端アミノ酸にグリシンを有し、アミノ酸が3個よりなるトリプペプチドの開発が参考とした。この開発では、選択的に主鎖を切断できる酵素を発見して、該酵素によりコラーゲンを分解して、〔Gly-x-y〕が規則正しく並んでいるコラーゲン・トリペプチド(CTP)を製造することが可能となった。得られたCTPは、皮膚の内部から作用して保湿効果を得る新規な保湿剤として注目されているが、これはCTPが皮膚に対する浸透性が優れ、角質を通り表皮から真皮に浸透することによることが確認されている(FRAGRANCE JOURNAL 10月号2001)。
【0006】
また、特開平11-92564号公報により、繭糸を構成しているセリシンの平均分子量は、60,000〜300,000(SDS電気泳動により測定)であると知られているが、現実に利用されているセリシンは、例えば特開平10-245345号公報のように平均分子量20,000程度である。セリシンの加水分解を進めると、特開平4-202435号公報の記載の如く、300〜50,000あるいは5,000〜50,000と分子量は広い範囲になる。
セリシンの分解には酸加水分解法と酵素法が知られている。
例えば酸加水分解法は、アミノ酸まで更にアミノ酸が分解される比率が高く、5量体以下を収率よく得ることは従来法では困難であった。また、酵素法は、酸加水分解法よりも大きな長さに切断するのに適するが、酵素の種類によって切断場所が決まるのでセリシンを所望に切断するには酵素の探索が必要であり、仮に探索できてもその酵素を工業的に手当できる保証はないことから容易ではない。
【0007】
蛋白質を水熱反応による分解法が開発されているが、特開平9-268166号公報では、300〜400℃、221〜1000気圧、1〜40秒の反応による方法が知られており、特開2000-241290号公報では、繭、生糸、フィプロイン、セリシン、蛹、の少なくとも1つを含むものを亜臨界水領域では、反応が激しくて、秒単位の短時間で反応するために、本発明で目的とするペプチドを製造することはできない。
【0008】
保湿効果に有効なアミノ酸としては、グリシンよりもセリンの方が優れている。
セリンは、セリシンにのみ多量に含まれる特殊なアミノ酸であり、豚のコラーゲンや海洋コラーゲンからはセリンは得ることができない。他方、BSE問題等から牛由来のCTPも敬遠されるようになってきており、牛由来の原料の使用を極力避けようとする社会ニーズも顕在化している。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
昆虫の蚕の繭より得られる生糸より、除去廃棄されるセリシンを回収して、薬品や酵素を用いることなく、水のみで高温高圧の水熱反応によってセリシンを分解して、分子のN末端アミノ酸にセリンを有し、重合度が5以下のオリゴペプチドを製造することができれば、原料蛋白質も反応技術も製品もクリーンである。
そこで、本発明者らは、セリシンを原料として、N末端アミノ酸にセリンを配したアミノ酸重合度が5以下のオリゴペプチドを製造することができれば、浸透性の優れた保湿剤として、化粧料として皮膚、毛髪分野に利用される他に、すし、おにぎり、パン、ピザ等の加工食品の硬化を防止して味覚を保持するという高度利用に結びつくことを考えた。
本発明では、セリシンを原料として、分子のN末端アミノ酸にセリンを有し重合度5以下のオリゴペプチドを得ることにより、セリン単独に用いるよりも肌、毛髪、加工食品に対して優れた保湿性を与える保湿組成物を提供することを課題とする。
【0010】
セリシンを構成するアミノ酸の種類と含有量を表1に示す。
ただし、トリプトファンの測定は高速液体クロマトグラフにより行い、他のアミノ酸は自動アミノ酸測定装置により測定した。
【0011】
【表1】
Figure 0003794390
【0012】
表1よりセリシンのアミノ酸としてはセリンが最も多いことが特徴的であり、このようなセリンの多い蛋白質を他の動物に求めることはできない。
【0013】
また、皮膚におけるセリンの位置づけを、NMF(natural moisturizing factor)により示したのが、表2である。
【0014】
【表2】
Figure 0003794390
【0015】
表2によれば、NMFの中でセリンの含有率が最も多いことがわかる。このことは、セリンが肌の保湿性に重要な機能を果たして、肌荒れや老化防止に役立つことを示すものである。
【0016】
【特許文献】
【文献1】
特開平10-245345号公報
【文献2】
特開昭62-036308号公報
【文献3】
特開平08-133963号公報
【文献4】
特開2001-0179097号公報
【文献5】
特開平11-92564号公報
【文献6】
特開平4-202435号公報
【文献7】
特開平9-268166号公報
【文献8】
特開2002-241290号公報
【非特許文献】
FRAGRANCE JOURNAL 65頁、10月号、2001年
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明では、オリゴペプチドのN末端アミノ酸にセリンを有し、アミノ酸数が5個以下のオリゴペプチド又は該オリゴペプチドのナトリウム塩を0.1重量%以上含有することによって、化粧料又は加工食品に有効利用できる保湿組成物を得ることを特徴とするものである。
本発明では、水熱反応によりセリシンが分解するが、その際、分子のN末端アミノ酸としてセリンを有し、かつアミノ酸数がが5個以下のオリゴペプチドとすることによって保湿組成物を製造することをも特徴とするものである。
【0018】
本発明は、基本的には以下の構成によりなるものである。
(1)オリゴペプチドのN末端アミノ酸にセリンを有し、アミノ酸数が5個以下のオリゴペプチド又は該オリゴペプチドのナトリウム塩を0.1重量%以上含有することを特徴とする保湿組成物。
(2)化粧料に使用することを特徴とする(1)の保湿組成物。
(3)消炎剤、紫外線防止剤又は美白剤から選ばれた少なくとも一成分を含有する化粧料に配合することを特徴とする(2)の保湿組成物。
(5)加工食品に配合することを特徴とする(1)の保湿組成物。
(4)水熱反応によりセリシンが分解されてなり、分子のN末端アミノ酸としてセリンを有し、かつアミノ酸数が5個以下のオリゴペプチドであることを特徴とする保湿組成物を製造する方法。
(6)セリシン水溶液に、150℃〜200℃の温度で7気圧〜20気圧の圧力による水熱反応処理を行って、分子のN末端アミノ酸にセリンを有し、アミノ酸数が5個以下のオリゴペプチドとすることを特徴とする保湿組成物を製造する方法。
(7)原料セリシンの分子量に応じて水熱反応の温度・圧力・時間を設定することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の保湿組成物を製造する方法。
【0019】
本発明で原料として用いるセリシンは、蚕の繭や生糸から精錬や熱湯処理によって溶出するセリシンを回収して用いるが、セリシンを含有する水溶液は、腐敗しやすく保存が難しいので凍結乾燥や噴霧乾燥により粉末状にして、使用時に水溶液として用いることが好ましい。
本発明に用いるセリシンの分子量は特定されるものではなく、セリシンの回収により部分加水分解したものでよい。
【0020】
本発明の実施例において用いた原料セリシンについて、ペプチド鎖中のN末端アミノ酸の結合順序をアミノ酸配列分析装置によって分析した結果を表3に示す。
【0021】
【表3】
Figure 0003794390
表3中、横軸は、アミノ酸の配列順序であり、例えば「5」とは、「末端より5番目」の位置にあるアミノ酸名を意味する
縦軸は、アミノ酸の種類と存在比率を示す。
アミノ酸としては、圧倒的にセリンが各配列に多く含まれているが、多種類のアミノ酸が配列していることがわかる。
【0022】
水熱反応を行う条件として、「臨界水」や「亜臨界水」中で行うことが知られている。水の温度・圧力を375℃、22MPa(217気圧)まで上げると、水でもない蒸気でもない均一な流体となり、この状態は「臨界水」と呼ばれている。臨界水以上の状態を「超臨界水」と呼び、臨界水よりも低い状態を「亜臨界水」という。亜臨界水では、200℃、100〜200気圧の状態をいう。
本発明は、亜臨界水として使われている条件より緩やかな領域であり、150〜200℃で飽和蒸気圧以上の圧力を用いることができ、30気圧以下でよく、条件的には穏やかな加圧、加熱条件であり、経済的に得られる条件であることが本発明における最も重要な特徴である。
【0023】
本発明では、原料セリシンの分子量に応じて水熱反応の温度、圧力及び時間を以下のように設定する。セリシンの分子量が、10,000以上では、180℃、12気圧以上、あるいは200℃、20気圧以下の範囲が好ましい。分子量が、10,000以下では、150℃、7気圧以上、あるいは180℃、15気圧以下の範囲で行う。分解する分子長を所望の長さに調節するには反応時間を30〜60分程度の範囲内で行う。
150℃以下では、水熱反応による分解が低いので適さない。200℃以上は、水熱反応が激しくて、分解が進み2〜3量体が得られ難く、条件的に適さない。
【0024】
水熱反応で分解処理するセリシン水溶液の濃度は1〜6重量%の範囲、特に2〜4重量% が好ましい。6重量%でも、反応は可能であるが、着色が著しくなる。1重量%以下では、反応効率が著しく低下する。
製造したペプチドは、0.1重量%以上であれば、保湿効果に有効であり、この濃度に化粧料に対する配合を調整すればよい。
水熱反応による着色は、珪藻土、酸性白土、ゼオライト、活性アルミナ等を用いて脱色することができる。化粧料の配合適性によりペプチドをナトリウム塩とする。また、加工食品には味の好みによりナトリウム塩を使用する。
【0025】
本発明による保湿組成物は、N末端にセリンを有するペプチドで、セリン単独よりも優れた保湿性を発揮するものであり、グリシン・トリペプチドと類型の2〜3量体のペプチドから類型として浸透性の優れることが期待される。皮膚の内部から作用する新規な保湿組成物として、ドライスキン用、中高年向けスキンケア剤、毛髪用に用いることができて、「敏感肌」のスキンケアにも有効である。
消炎剤としては、アラントイン又はその誘導体、グリチルリチン又はその誘導体、ビタミンE、より選ばれた消炎剤と本発明の保湿組成物を組み合わせた配合により消炎効果が相乗的に向上する。
紫外線防止剤としては、パラアミノ安息香酸(PABA)、PABAの誘導体、アントラニル系の紫外線防止剤、サリチル酸系紫外線防止剤、桂皮酸系紫外線防止剤又はベンゾフェノン系紫外線防止剤より選ばれた紫外線防止剤と本発明の保湿組成物を組合わせた配合により紫外線遮断効果が高くなり肌荒れを防止することができる。
美白剤として、コウジ酸又はその誘導体、ビタミンC又はその誘導体と本発
明の保湿組成物を組合わせた配合により、美白効果を高め、しみやそばかすの美白に有効となる。
加工食品では、にぎりすし、おむすび、豆腐、パン、ピザの味覚保持と硬化防止に有効である。ご飯を炊く時に、本発明の保湿組成物米重量当たり0.1%〜0.5%添加して炊き上げると、ご飯の味覚を維持し、固くなるのを防止することができる。
【0026】
本発明による保湿組成物の効果は、次の試験によって測定することができる。
「皮膚浸透性」;
剃毛したラット背部中央に、試験試料液をトリチウム標識法により、ピリジン・トリチウム水・無水酢酸の混合液を作用させて、銀粒子(グレイン)を標識として皮膚に塗布する。8時間後にラットの皮膚を摘出して、該皮膚をミクロオートラジオグラフィー法によって、顕微鏡下で皮膚組織中に銀粒子(グレイン)を追跡して見出すことで、本保湿組成物の皮膚に対する浸透性を確認評価することができる。
【0027】
「皮膚保湿性」;
パネラーの前腕屈側部に、10%ドデシル硫酸ナトリウム溶液を1時間塗布して肌荒れ状態を作成する。この部分に試料を1時間後及び3時間後に塗布する。次いで2時間後に角質の水分量をインピーダンスメーター(SKICON-200 IBS社製)により測定する。荒れ肌における測定値を100として角質の水分率の増加率を求めて皮膚保湿性を示す。水分の増加率の多い程保湿性は優れる。
【0028】
「肌荒れ改善性」;
パネラーの前腕屈側部に、10%ドデシル硫酸ナトリウム溶液を1時間塗布して肌荒れ状態を作成する。次いで、該肌荒れ部に毎日朝晩2回試験試料を該肌荒れモデル部に塗布して29日間継続する。試験をスタートしてから経日的にTEWAMETER TM-210によりTEWL値を測定して経表皮水分損失を求めて肌荒れの回復率として肌荒れの改善性を示すことができる。
【0029】
本発明について実施例により具体的に説明する。
【実施例1】
表1に示したセリシンを用いて、精製水に溶解して3重量%の溶液とした。該溶液を500mlの容器に充填して、密閉し180℃で、13気圧の下に1時間の水熱反応を行った。冷却後に酸性白土と活性炭を用いて1時間脱色処理をして濾過して濾液を回収して実施例1のペプチドとした。
得られたペプチドをアミノ酸配列分析装置によって分析した結果は表4の通りである。
【0030】
【表4】
Figure 0003794390
【0031】
N末端アミノ酸にセリンを有することが示されている。
実施例1のペプチドについて、ゲル濾過クロマトグラフィ(GPC)によって分子量分布を調べた結果を図1に示す。
図1の縦軸は、ペプチド含有量を示す検出器の応答の大きさを示し、横軸は、ペプチドの分子量に対応する溶出液量を示
す。
【0032】
ゲル濾過クロマトグラフィの測定条件は以下の通りである。
Figure 0003794390
【0033】
図1のゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)によるチャートでは、セリシンの分子量は、6000付近に大きなピークがあるのが、水熱反応により180℃、200℃ともに分子量6000付近のピークは消えて、分子量200付近のピーク、分子量400 付近に最大ピークがあることを示している。
このことは、分子量6000のセリシンが分解して4量体〜2量体のオリゴペプチドを生成していることを示しているものと認められる。
【0034】
【実施例2】
図1のゲル濾過クロマトグラフィーに示したセリシンを原料として、精製水に溶解して3重量%の溶液とした。該溶液を500mlの容器に充填して、密閉し200℃で18気圧のもとで1時間の水熱反応を行った。冷却後に珪藻土と活性炭を用いて1時間脱色処理をして濾過して濾液を回収して実施例2のペプチドとした。
実施例2のペプチドをアミノ酸配列分析装置によって分析した結果は、表5の通りである。
【0035】
【表5】
Figure 0003794390
【0036】
表5によれば、N末端アミノ酸にセリンを有することが示されている。
実施例2のペプチドについて、ゲル濾過クロマトグラフィにより分子量分布を調べたところ、図1と同様のものが測定できた。
前記アミノ酸配列のペプチドは、4量体〜2量体が生成されているものと認められる。
【0037】
【実施例3】
実施例1、実施例2で得られたオリゴペプチド水溶液を用いて、(1)皮膚浸透性、(2)皮膚保湿性、(3)肌荒れ改善性、の効果を測定した結果は次の通りである。
「皮膚浸透性効果」;
前記の皮膚浸透性試験方法によりペプチド0.5重量%液の効果を試験した。ラット皮膚組織について顕微鏡でグレインを探して浸透性を調べた結果、実施例1、実施例2のペプチドは角質のしたにある組織の表皮から更に真皮にまでグレインが確認された。これに対して原料としたセリシンでは、角質には存在したがそれ以下の組織には浸透が認められなかった。
【0038】
「皮膚保湿性効果」;
前記の皮膚保湿性試験方法により、実施例によるペプチドの保湿効果を測定した。インピダンスメーターによる皮膚深度15μm部の水分率の変化は表6の通りである。本発明のペプチドが0.1重量%以上において優れた保湿性を有することが確認された。
【0039】
【表6】
Figure 0003794390
【0040】
「肌荒れ改善性効果」;
前記の肌荒れ改善試験方法により、実施例によるペプチドの肌荒れ改善効果を測定して表7に示した。本発明のペプチドが0.1重量%以上において肌荒れ改善効果が顕著であると判定される。
【0041】
【表7】
Figure 0003794390
【0042】
【実施例4】
実施例1で得られたオリゴペプチドを水酸化ナトリウムを用いて、ナトリウム塩とした。米をといだ後で、米重量に対して0.2重量%を配合してご飯を炊いた。おにぎりを作って室温20℃、湿度65%に3日間放置した。通常の水のみのものはご飯が硬化してバリバリになった。本発明のペプチドを配合した場合には、しっとりとして柔軟性が保持されて保湿効果がよかった。
比較試験として、原料セリシンを用いた試験では、しっとり感と保湿性はやや保たれていたが油しみた味覚で好ましくなかった。セリンを用いた場合には味が劣り好ましくなかった。
【0043】
【発明の効果】
本発明においては、昆虫の蚕の繭より得られる生糸より、除去廃棄されるセリシンを回収して、薬品や酵素を用いることなく、水のみで高温高圧の水熱反応によってセリシンを分解して、分子のN末端アミノ酸にセリンを有し、重合度が2〜3のオリゴペプチドを製造する技術でセリシンを原料として、N末端アミノ酸にセリンを配した重合度が5以下のオリゴペプチドを製造することができるので浸透性の優れた保湿剤として、化粧料として皮膚、毛髪分野に利用される。
また、その外にすし、おにぎり、パン、ピザ等の加工食品の硬化を防止して味覚を保持するという顕著な効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1のペプチドについて、ゲル濾過クロマトグラフィ(GPC)によって分子量分布を調べた結果を示す。

Claims (5)

  1. セリシン水溶液を温度150〜200℃及び圧力7〜20気圧の条件で水熱反応処理して得られる、分子のN末端アミノ酸にセリンを有するオリゴペプチドを0.1重量%以上含有することを特徴とする保湿組成物。
  2. 分子量10,000以上の原料セリシンを、温度180℃〜200℃及び圧力12〜20気圧の条件で水熱処理して得られてなるオリゴペプチドであることを特徴とする請求項1の保湿組成物。
  3. 分子量10,000以下の原料セリシンを温度150〜180℃及び気圧7〜15気圧で水熱処理して得られてなるオリゴペプチドであることを特徴とする請求項1記載の保湿組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項記載の保湿組成物を使用したことを特徴とする化粧料。
  5. 請求項1〜3のいずれか1項記載の保湿組成物を使用したことを特徴とする加工食品。
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