JP3794235B2 - 水素の選択的酸化触媒、水素の選択的酸化方法及び炭化水素の脱水素方法 - Google Patents

水素の選択的酸化触媒、水素の選択的酸化方法及び炭化水素の脱水素方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭化水素を脱水素して、脱水素された炭化水素を製造する際に、生成した混合ガス中に存在する水素を選択的に酸化する触媒、該触媒を使用する水素の選択的な酸化方法、さらには該触媒を使用した炭化水素の脱水素方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
炭化水素を脱水素して、脱水素された炭化水素を製造するプロセスは、従来多くの文献に記載されている。例えば、エチルベンゼンを脱水素してスチレンを合成するプロセスは、鉄系の触媒を用いて工業的に実施されている。しかしながら、一般に脱水素反応では、平衡の制約を強く受け高い収率を得ることができない。また、断熱反応器での反応においては、脱水素反応が吸熱反応であるため、反応温度が反応と共に低下してしまい高い収率で目的物を得ることが困難である。このような状況から、既にいくつかの方法が提案されている。例えば米国特許4,565,898号明細書において、エチルベンゼンを脱水素した後に、未反応エチルベンゼン、スチレン、及び水素を含む混合ガス中の水素を選択的に酸化するプロセス及び触媒が開示されている。その触媒は、白金、スズ及びリチウム等を担持した触媒である。この方法はスチレン合成に有効な方法であるものの、水素のみを酸化する性能は十分なものとは言えなかった。
また、特開平9−29095号公報には、同様のプロセスで酸化ニオブに白金を担持した触媒を用いる方法が開示されている。この酸化ニオブを用いた触媒の水素を選択的に酸化する性能は高く有効な触媒であるが、長時間の反応条件下での性能の安定性に問題があり、その性能は充分に満足できるとは言えなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、水素を選択的に酸化する性能が高く、かつ、長時間の反応条件下においても安定した性能を有する水素と炭化水素とを含有する混合ガス中に存在する水素を、より選択的に酸化できる新規な触媒を提供することであり、また、該触媒を使用して安定的に炭化水素の脱水素方法を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1は、水素及び炭化水素を含有する混合ガスを、酸素含有ガスと接触させて、該混合ガス中の水素を選択的に酸化するための触媒であって、白金族元素のうち少なくとも1種の元素と周期表第5族元素のうち少なくとも1種の元素、そしてアルカリ金属及びアルカリ土類金属のうち少なくとも1種の元素とを含有する水素の選択的酸化触媒に関する。
また、本発明の請求項7は、水素及び炭化水素を含有する混合ガスを、酸化触媒の存在下で酸素含有ガスと接触させて、該混合ガス中の水素を選択的に酸化させる方法において、酸化触媒として白金族元素のうち少なくとも1種の元素と周期表第5族元素のうち少なくとも1種の元素、そしてアルカリ金属及びアルカリ土類金属のうち少なくとも1種の元素とを含有する触媒を使用することに関する。
さらに、本発明の請求項9は、原料炭化水素を脱水素触媒の存在下で脱水素反応させることにより得られた脱水素された炭化水素、未反応原料炭化水素及び水素を含有する混合ガスを、酸化触媒の存在下で酸素含有ガスと接触させて、該混合ガス中の水素を選択的に酸化させ、前記酸化反応により得られた炭化水素含有ガスをさらに脱水素させる炭化水素の脱水素方法において、酸化触媒として白金族元素のうち少なくとも1種の元素と周期表第5族元素のうち少なくとも1種の元素、そしてアルカリ金属及びアルカリ土類金属のうち少なくとも1種の元素とを含有する触媒を使用することに関する。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられる水素の選択的酸化触媒は、白金族元素のうち少なくとも1種の元素と周期表第5族元素のうち少なくとも1種の元素、そしてアルカリ金属及びアルカリ土類金属のうち少なくとも1種の元素とを含有する触媒である。
白金族元素とは、白金、パラジウム、ルテニウム、イリジウム、ロジウム及びオスミウムより成る群のことであり、これらは単独でまたは2種以上で使用される。このうち白金及びパラジウムが好ましい。白金族元素の含有量は特に制限はないが、担持量が少なすぎると酸化反応の活性が低下する傾向があり、また多すぎても反応特性にほとんど影響を与えないので高価な白金族元素を多く使用することはコスト面で不利となるので、好ましくは触媒全体量に対し、白金族元素の金属量として0.001〜10重量%、さらに好ましくは0.05〜5重量%である。白金族元素を含有する触媒を調製する際に、白金族元素は原料塩として使用される。原料塩としては、特に制限はないが、酸化物、ハロゲン化物及び有機錯体等として用いることができる。
【0006】
次に、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のうち少なくとも1種の元素のうちのアルカリ金属とはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム及びフランシウムである。これらは単独でまたは2種以上で使用される。これらのうちリチウム、ナトリウム、カリウム及びセシウムが好ましい。アルカリ金属も触媒を調製する際に、原料塩として使用される。原料塩としては特に制限はなく、酸化物、ハロゲン化物、水酸化物、硫酸塩、炭酸塩及び有機塩等を用いることができる。
また、アルカリ土類金属とはベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びラジウムである。これらも単独でまたは2種以上で使用される。これらのうちカルシウム及びストロンチウムが好ましい。アルカリ土類金属も触媒を調製する際に、原料塩として使用される。原料塩としては特に制限はなく、酸化物、ハロゲン化物、水酸化物、硫酸塩及び有機塩等を用いることができる。
【0007】
アルカリ金属及びアルカリ土類金属の含有量は、特に制限はないが、好ましくは、触媒全体量に対し、金属量として、0.1〜30重量%、さらに好ましくは0.5〜20重量%である。
そして、周期表第5族元素とはIUPACの長周期型周期表の18族方式による第5族の元素であり、具体的にはバナジウム、ニオブ及びタンタルである。これらは単独でまたは2種以上で使用される。これらのうち好ましくはニオブ及びタンタルである。さらに、値段及び触媒性能の面からニオブが特に好ましい。周期表第5族元素も触媒を調製する際に、原料塩として使用される。原料塩としては特に制限はなく、酸化物、ハロゲン化物、水酸化物、硫酸塩及び有機塩等を用いることができる。
周期表第5族元素の含有量は、白金族元素と周期表第5族元素とアルカリ金属及びアルカリ土類金属のうち少なくとも1種の元素とからのみなる触媒の場合は、100重量%の内、白金族元素の必要量とアルカリ金属及びアルカリ土類金属のうち少なくとも1種の元素の必要量の残り重量%であればよく、好ましくは60〜99.899重量%、さらに好ましくは90〜99.499重量%である。
【0008】
上記成分よりなる本願発明の触媒を調製するには、従来公知の方法により調製することができる。具体的には、例えば、周期表第5族元素のうち少なくとも1種の元素の原料塩を適当な温度で焼成し、酸化物等の固体成分とした後、白金族元素のうち少なくとも1種の元素を含有する溶液を含浸し乾燥、焼成し調製することができる。白金族元素を担持した後に特に特別な処理は必要ではないが、水素含有ガスによる還元処理や還元性物質を含む溶液下の還元処理をしてもよい。本発明の触媒は、白金族元素のうち少なくとも1種の元素と周期表第5族元素のうち少なくとも1種の元素、そしてアルカリ金属及びアルカリ土類金属のうち少なくとも1種の元素とを含有していればよく、これらの元素から調製することはもちろん、これら元素を耐熱性無機担体に担持させて使用することもできる。耐熱性無機担体は、活性成分の希釈による発熱の適正化、高価元素の希釈による低価格化、触媒強度の向上等の目的で使用される。
耐熱性無機担体とは、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化チタン、酸化ゲルマニウム、酸化スズ及び酸化ガリウム等が挙げられる。これらのうち、好ましくは酸化アルミニウム、酸化珪素及び酸化チタンである。さらに好ましくは酸化アルミニウム及び酸化珪素である。これらの耐熱性無機担体は、2種以上を用いてもよい。
【0009】
ここで酸化アルミニウムは、アルミニウム3価の酸化アルミニウムが好ましく、結晶形はアルファ酸化アルミニウム、ガンマ酸化アルミニウム等が挙げられる。好ましくはアルファ酸化アルミニウムである。酸化珪素は、珪素4価の酸化珪素が好ましく、結晶形は無定形酸化珪素、結晶性酸化珪素等が使用できる。酸化チタンは、チタン4価の酸化チタンが好ましく、結晶形は無定形酸化チタン、結晶性酸化チタン等が使用できる。
耐熱性無機担体に担持される場合は、触媒全体量100重量%のうち、白金族元素の必要量とアルカリ金属及びアルカリ土類金属のうち少なくとも1種の元素の必要量の残りの重量%が、周期表第5族元素のうち少なくとも1種の元素と耐熱性無機担体との和となるようにすればよい。この場合、周期表第5族元素の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、更に好ましくは0.5重量%以上である。
【0010】
上記の元素を耐熱性無機担体に担持した触媒は様々な方法にて調製することができる。触媒の調製方法としては、例えば、耐熱性無機担体に白金族元素、周期表第5族元素と、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のうち少なくとも1種の元素とを一度に担持する方法、周期表第5族元素と耐熱性無機担体とを含有する固体成分に白金族元素とアルカリ金属及びアルカリ土類金属のうち少なくとも1種の元素とを一度に担持する方法、周期表第5族元素と耐熱性無機担体とを含有する固体成分に白金族元素を担持した後、さらにアルカリ金属及びアルカリ土類金属のうち少なくとも1種の元素を担持する方法など様々な方法をとることができる。
周期表第5族元素と耐熱性無機担体とを含有する固体成分の調製方法は、耐熱性無機担体に周期表第5族元素のうち少なくとも1種の元素の化合物溶液を含浸し、乾燥後焼成する方法、周期表第5族元素のうち少なくとも1種の元素の化合物と耐熱性無機担体とを混合し焼成する方法、また、これらを組み合わせた方法等がありいずれの方法も用いることができる。
【0011】
上記のような触媒の調製方法により得られた白金族元素と周期表第5族元素とアルカリ金属及びアルカリ土類金属のうち少なくとも1種の元素とを含有した触媒、及びこれら元素を耐熱性無機担体に担持した触媒における白金族元素の白金及びパラジウム等の状態は、2価または0価であり2価としては、通常、酸化物となっており、0価は、メタルまたは合金である。
また、周期表第5族元素のうち、バナジウムの状態としては、例えば、5価、4価及び3価よりなる群の1種以上を含有したものであり、好ましくは5価であり、この場合、通常、酸化物である。次に、ニオブ及びタンタルの状態としては、例えば、5価、4価、3価及び0価よりなる群の1種以上含有したものであり、好ましくは5価であり、この場合、通常、酸化物である。
更に、アルカリ金属の状態としては、例えば、1価及び0価よりなる群の1種以上を含有したものである。1価は通常酸化物であり、0価はメタルまたは合金である。アルカリ土類金属の状態としては、例えば、2価及び0価よりなる群の1種以上を含有したものである。2価は通常酸化物であり、0価はメタルまたは合金である。
【0012】
本発明の酸化触媒は、水素及び炭化水素を含有する混合ガスを、酸素含有ガスと接触させて、該混合ガス中の水素を選択的に酸化する反応に用いられる。前記の反応は、温度が高すぎると水素の選択率が減少し、炭化水素の燃焼が多くなる傾向があり、温度が低すぎる場合には、選択率にはあまり影響を与えないが、活性が低下する可能性があるので、300〜800℃で行われることが好ましく、さらに好ましくは400〜700℃の温度範囲である。
水素及び炭化水素を含有する混合ガスとは、原料炭化水素を脱水素触媒により脱水素反応させて得られる脱水素された炭化水素、未反応原料炭化水素及び水素からなるものである。また、酸素含有ガスとは、分子状酸素を1〜100%含有するガスが用いられ、具体的には空気、酸素富化空気、不活性ガスで希釈した空気などが好適に用いられる。また、酸素含有ガスに水蒸気を含有させることもできる。
通常のプロセスにおいて炭化水素と酸素を導入して、反応器内にて反応させ酸素を全て消費するプロセスでは、触媒上にコーキングが起こることが知られている。本発明の酸化触媒も、水素を選択的酸化方法及び炭化水素の脱水素方法に用いて酸素を全て消費させた場合には、触媒上にコーキングが起こるが、水素を選択的に酸化する選択性においては劣ることがなく問題なく使用できる。
【0013】
本発明の選択的酸化触媒及び選択的酸化方法が適用される代表的なプロセスは次のようなものである。例えば、第1段反応器において脱水素触媒により原料炭化水素の脱水素反応を行った後に、この1段の反応層から出る脱水素された炭化水素、未反応原料炭化水素及び水素を含む混合ガスは第2段の反応層へ送られる。この第2段反応層において、本発明の選択的酸化触媒の存在下で、新たに導入された酸素含有ガスを用いて、水素の選択的酸化を行う。これにより、第1段の、吸熱反応である脱水素反応により低下した温度を発熱反応により上昇させ、かつ、水素を消費することにより脱水素反応の平衡的制約を除去する。さらに、この第2段反応層から出たガスを第1段反応層と同様の第3段脱水素反応層に送り、未反応の炭化水素の脱水素を実施する。既に第2段反応層において反応に必要な温度が回復されており、かつ平衡的制約も解除されているので、第3脱水素反応層においてさらに高い収率を得ることができる。
また、必要に応じて更に上記の選択的酸化反応層と脱水素反応層との組み合わせを追加して反応を実施することもできる。一般に脱水素反応では水蒸気を共存させることが多いが、上記反応プロセスにおいても水蒸気を共存させることもできる。本発明の炭化水素とは、芳香環を有しさらに脱水素可能な炭化水素鎖を有する化合物である。好ましくは、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、エチルナフタレン、ジエチルナフタレン等である。
【0014】
上記脱水素プロセスの代表的具体例としてエチルベンゼンの脱水素プロセスを挙げることができる。これは例えば、エチルベンゼンと水蒸気の混合ガスを鉄とアルカリ金属を主要活性成分とした鉄系触媒が存在する第1段反応層に送り、500℃〜800℃の範囲の温度、0.05〜10気圧の範囲の圧力で脱水素反応を行い、この後、未反応エチルベンゼン、生成したスチレン、水素、水蒸気の混合ガスを第2段反応層へ送る。第2段反応層で本発明の酸化触媒の存在下で新たに導入された酸素含有ガスを用いて水素の選択的酸化を行う。次に、この反応ガスを第3反応層へ送り、ここで再び鉄系触媒により未反応のエチルベンゼンの脱水素を行いより高い収率でスチレンを得る。このように本発明の方法を用いれば、平衡的制約が除かれ、かつ反応温度の低下を回復することができるため、通常の脱水素反応に比較して遥かに高い収率でスチレンを得ることができる。
【0015】
【実施例】
以下に示す実施例及び比較例により、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例及び比較例に限定されるものではない。
実施例1
(触媒調製)
五酸化ニオブ(Nb25)70gにイオン交換水100gを加えて、混練し乾燥後、直径3mmのペレットに押出し成型した。成型品は、乾燥器中120℃にて3時間乾燥し、さらにマッフル炉にて1200℃で3時間焼成した。得られた成型体を折り長さ1mmから5mmにそろえた。続いて、白金0.14gを含有する塩化白金酸(H2PtCl6・6H2O)水溶液21mlに浸漬後、ロータリーエバポレーターにて減圧下60℃にて1時間乾燥後、乾燥器にて120℃で3時間乾燥した。その後、空気下650℃で3時間焼成した。その後、リチウム1.4gを含有する硝酸リチウム(LiNO3)水溶液21mlに浸漬後、ロータリーエバポレーターにて減圧下60℃にて1時間乾燥後、乾燥器にて120℃で3時間乾燥した。その後、空気下650℃にて3時間焼成して、白金/リチウム/酸化ニオブ触媒を得た。担持組成は、白金0.2重量%、リチウム2重量%、他は酸化ニオブである。
【0016】
(反応)
上記のようにして調製した触媒2mlを上下に触媒と略同粒径の石英チップを充填した内径6.7mmの石英製反応管に充填した後、10%の水素を含有する、水素と窒素の混合ガス流通下600℃で1時間還元処理を施した。次いで、スチレン、エチルベンゼン、水、水素、及び空気の混合ガスを反応管に導入して反応を開始した。混合ガス組成は、
【0017】
【数1】
エチルベンゼン/スチレン/水/水素/酸素/窒素
=1/0.4/11.5/0.43/0.18/0.69(モル比)
【0018】
であった。また、反応器におけるガス換算の空間速度(SV)は、SV=6550hr-1(0℃、1気圧換算)であった。630℃で、反応開始から5時間後に反応管出口のガス及び液受器でトラップされた液についてガスクロマトグラフで分析を行った結果は、水素転化率81.1%、酸素転化率100%、スチレン及びエチルベンゼン燃焼率0.81%であった。ここでスチレン及びエチルベンゼン燃焼率とは反応層に供給されたスチレンとエチルベンゼンのモル比に対して燃焼反応で消失したスチレンとエチルベンゼンのモル数の比率を示すものである。さらに630℃で、反応開始から100時間後に同様に分析を行った結果は、水素転化率79.3%、酸素転化率100%、スチレン及びエチルベンゼン燃焼率0.83%であった。
【0019】
実施例2
(触媒調製)
実施例1の触媒調製において、リチウム1.4gを含有する硝酸リチウム(LiNO3)水溶液21mlを、カリウム3.5gを含有する炭酸カリウム(K2CO3)水溶液21mlに代えた他は、実施例1と同様な方法で、白金/カリウム/酸化ニオブ触媒を得た。担持組成は、白金0.2重量%、カリウム5重量%、他は酸化ニオブである。
(反応)
得られた触媒を、実施例1と同様の方法にて反応試験を実施した。630℃で、反応開始から5時間後に反応管出口のガス及び液受器でトラップされた液についてガスクロマトグラフで分析を行った結果は、水素転化率75.3%、酸素転化率100%、スチレン及びエチルベンゼン燃焼率0.89%であった。さらに630℃で、反応開始から100時間後に同様に分析を行った結果は、水素転化率74.9%、酸素転化率100%、スチレン及びエチルベンゼン燃焼率0.91%であった。
【0020】
実施例3
(触媒調製)
実施例1の触媒調製において、リチウム1.4gを含有する硝酸リチウム(LiNO3)水溶液21mlを、ナトリウム1.4gを含有する炭酸ナトリウム(Na2CO3)水溶液21mlに代えた他は、実施例1と同様な方法で、白金/ナトリウム/酸化ニオブ触媒を得た。担持組成は、白金0.2重量%、ナトリウム2重量%、他は酸化ニオブである。
(反応)
得られた触媒を、実施例1と同様の方法にて反応試験を実施した。630℃で、反応開始から5時間後に反応管出口のガス及び液受器でトラップされた液についてガスクロマトグラフで分析を行った結果は、水素転化率73.9%、酸素転化率100%、スチレン及びエチルベンゼン燃焼率0.74%であった。さらに630℃で、反応開始から100時間後に同様に分析を行った結果は、水素転化率73.3%、酸素転化率100%、スチレン及びエチルベンゼン燃焼率0.71%であった。
【0021】
実施例4
(触媒調製)
実施例1の触媒調製において、リチウム1.4gを含有する硝酸リチウム(LiNO3)水溶液21mlを、セシウム1.4gを含有する硝酸セシウム(CsNO3)水溶液21mlに代えた他は、実施例1と同様な方法で、白金/セシウム/酸化ニオブ触媒を得た。担持組成は、白金0.2重量%、セシウム2重量%、他は酸化ニオブである。
(反応)
得られた触媒を、実施例1と同様の方法にて反応試験を実施した。630℃で、反応開始から5時間後に反応管出口のガス及び液受器でトラップされた液についてガスクロマトグラフで分析を行った結果は、水素転化率75.3%、酸素転化率100%、スチレン及びエチルベンゼン燃焼率0.69%であった。さらに630℃で、反応開始から100時間後に同様に分析を行った結果は、水素転化率74.1%、酸素転化率100%、スチレン及びエチルベンゼン燃焼率0.69%であった。
【0022】
実施例5
(触媒調製)
実施例1の触媒調製において、リチウム1.4gを含有する硝酸リチウム(LiNO3)水溶液21mlを、カルシウム1.4gを含有する硝酸カルシウム(Ca(NO32・4H2O)水溶液21mlに代えた他は、実施例1と同様な方法で、白金/カルシウム/酸化ニオブ触媒を得た。担持組成は、白金0.2重量%、カルシウム2重量%、他は酸化ニオブである。
(反応)
得られた触媒を、実施例1と同様の方法にて反応試験を実施した。630℃で、反応開始から5時間後に反応管出口のガス及び液受器でトラップされた液についてガスクロマトグラフで分析を行った結果は、水素転化率68.9%、酸素転化率100%、スチレン及びエチルベンゼン燃焼率0.99%であった。さらに630℃で、反応開始から100時間後に同様に分析を行った結果は、水素転化率71.3%、酸素転化率100%、スチレン及びエチルベンゼン燃焼率0.78%であった。
【0023】
実施例6
(触媒調製)
実施例1の触媒調製において、リチウム1.4gを含有する硝酸リチウム(LiNO3)水溶液21mlを、ストロンチウム1.4gを含有する硝酸ストロンチウム(Sr(NO32)水溶液21mlに代えた他は、実施例1と同様な方法で、白金/ストロンチウム/酸化ニオブ触媒を得た。担持組成は、白金0.2重量%、ストロンチウム2重量%、他は酸化ニオブである。
(反応)
得られた触媒を、実施例1と同様の方法にて反応試験を実施した。630℃で、反応開始から5時間後に反応管出口のガス及び液受器でトラップされた液についてガスクロマトグラフで分析を行った結果は、水素転化率60.7%、酸素転化率100%、スチレン及びエチルベンゼン燃焼率0.90%であった。さらに630℃で、反応開始から100時間後に同様に分析を行った結果は、水素転化率71.9%、酸素転化率100%、スチレン及びエチルベンゼン燃焼率0.74%であった。
【0024】
実施例7
(触媒調製)
五酸化ニオブ(Nb25)70gにイオン交換水100gを加えて、混練し乾燥後、直径3mmのペレットに押出し成型した。成型品は、乾燥器中120℃にて3時間乾燥し、さらにマッフル炉にて1200℃で3時間焼成した。得られた成型体を折り長さ1mmから5mmにそろえた。続いて、白金0.14gを含有する塩化白金酸(H2PtCl6・6H2O)及びカリウム3.5gを含有する炭酸カリウム(K2CO3)両方を含有する水溶液21mlに浸漬後、ロータリーエバポレーターにて減圧下60℃にて1時間乾燥後、乾燥器にて120℃で3時間乾燥した。その後、空気下650℃で3時間焼成して白金/カリウム/酸化ニオブ触媒を得た。担持組成は、白金0.2重量%、カリウム5重量%、他は酸化ニオブである。
(反応)
得られた触媒を、実施例1と同様の方法にて反応試験を実施した。630℃で、反応開始から5時間後に反応管出口のガス及び液受器でトラップされた液についてガスクロマトグラフで分析を行った結果は、水素転化率71.8%、酸素転化率100%、スチレン及びエチルベンゼン燃焼率0.76%であった。さらに630℃で、反応開始から100時間後に同様に分析を行った結果は、水素転化率74.3%、酸素転化率100%、スチレン及びエチルベンゼン燃焼率0.69%であった。
【0025】
比較例1
(触媒調製)
五酸化ニオブ(Nb25)70gにイオン交換水100gを加えて、混練し乾燥後、直径3mmのペレットに押出し成型した。成型品は、乾燥器中120℃にて3時間乾燥し、さらにマッフル炉にて1200℃で3時間焼成した。得られた成型体を折り長さ1mmから5mmにそろえた。続いて、白金0.14gを含有する塩化白金酸(H2PtCl6・6H2O)水溶液21mlに浸漬後、ロータリーエバポレーターにて減圧下60℃にて1時間乾燥後、乾燥器にて120℃で3時間乾燥した。その後、空気下650℃で3時間焼成した。担持組成は、白金0.2重量%、他は酸化ニオブである。
(反応)
得られた触媒を、実施例1と同様の方法にて反応試験を実施した。630℃で、反応開始から5時間後に反応管出口のガス及び液受器でトラップされた液についてガスクロマトグラフで分析を行った結果は、水素転化率74.7%、酸素転化率100%、スチレン及びエチルベンゼン燃焼率0.86%であった。さらに630℃で、反応開始から100時間後に同様に分析を行った結果は、水素転化率68.8%、酸素転化率100%、スチレン及びエチルベンゼン燃焼率0.99%であった。
【0026】
【表1】
Figure 0003794235
【0027】
表1より、本発明の触媒を使用した反応では、比較例の触媒を使用した反応に比べて、安定した運転時間における水素転化率が高く、また共存するスチレン及びエチルベンゼンの燃焼率が小さく、反応により得られたスチレン及び原料のエチルベンゼンの消失が低いことが分かる。
【0028】
【発明の効果】
本発明の酸化触媒を使用すると、水素を選択的に酸化することができ炭化水素の脱水素方法に好適に使用することができる。また、共存する炭化水素類の燃焼による消失を実質上問題のないレベルに低く押さえ、高い水素転化率で安定した運転を提供することができる。

Claims (10)

  1. 水素及び炭化水素を含有する混合ガスを、酸素含有ガスと接触させて、該混合ガス中の水素を選択的に酸化するための触媒であって、白金族元素のうち少なくとも1種の元素と周期表第5族元素のうち少なくとも1種の元素、そしてアルカリ金属及びアルカリ土類金属のうち少なくとも1種の元素とを含有することを特徴とする水素の選択的酸化触媒。
  2. 触媒全体における白金族元素の含有量が、0.001〜10重量%である請求項1に記載の触媒。
  3. 触媒全体におけるアルカリ金属及びアルカリ土類金属のうち少なくとも1種の元素の含有量が0.1〜30重量%である請求項1または2に記載の触媒。
  4. 白金族元素が白金及びパラジウムのうち少なくとも1種であり、周期表第5族元素がニオブである請求項1ないし3のいずれか1項に記載の触媒。
  5. 白金族元素のうち少なくとも1種の元素と周期表第5族元素のうち少なくとも1種、そしてアルカリ金属及びアルカリ土類金属のうち少なくとも1種の元素とを耐熱性無機担体に担持した請求項1ないし4のいずれか1項に記載の触媒。
  6. 耐熱性無機担体が酸化アルミニウム及び酸化珪素のうち少なくとも1種である請求項5に記載の触媒。
  7. 水素及び炭化水素を含有する混合ガスを、酸化触媒の存在下で酸素含有ガスと接触させて、該混合ガス中の水素を選択的に酸化させる方法において、酸化触媒として請求項1ないし6のいずれか1項に記載の触媒を使用することを特徴とする水素の選択的酸化方法。
  8. 300〜800℃の温度範囲で炭化水素と水素との混合ガスと酸素含有ガスとを接触させる請求項7に記載の方法。
  9. 原料炭化水素を脱水素触媒の存在下で脱水素反応させることにより得られた脱水素された炭化水素、未反応の原料炭化水素及び水素を含有する混合ガスを、酸化触媒の存在下で酸素含有ガスと接触させて、該混合ガス中の水素を選択的に酸化させ、前記酸化反応により得られた炭化水素含有ガスをさらに脱水素させる炭化水素の脱水素方法において、酸化触媒として請求項1ないし6のいずれか1項に記載の触媒を用いることを特徴とする炭化水素の脱水素方法。
  10. 原料炭化水素がエチルベンゼンであり、脱水素された炭化水素がスチレンである請求項9に記載の方法。
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